説明

吸収性物品

【課題】排泄された排尿を瞬時に吸収することができると共に、適切な交換時期を判断することができる吸収性物品を提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態であるおむつ1Aは、表面シート2と、裏面シート3と、これらのシート2,3間に配された長方形状の吸収体4とを備えている。おむつ1Aは、裏面シート3と吸収体4との間に、色の変化により排尿を知らせるインジケーター7が配されている。おむつ1Aの吸収体4は、長手方向(Y方向)に筋状に延びる溝40を有している。おむつ1Aには、吸収体4の溝40とインジケーター7との間に、インジケーター7を覆う液透過性の開孔フィルムが8配されている。開孔フィルム8は、複数の開孔81を有し、開孔81それぞれの開孔径が50〜600μmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、装着者が排泄したか否かを色により判断するインジケーターを備えた使い捨ておむつが知られている。例えば、特許文献1には、尿が排泄されたことを母親に知らせるためのインジケーターが、裏面シートとコアとの間に介在した使い捨ておむつであって、コアを局部的に圧搾して複数の条溝を形成し、コア部の外面側で条溝とインジケーターとが交叉している使い捨ておむつが記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の使い捨ておむつの条溝は、コアを局部的に圧搾して形成したものであるため、排泄された排尿を瞬時に吸収することができず、特許文献1に記載の使い捨ておむつは、瞬時の吸収性能に問題があった。
【0004】
また、特許文献2には、吸収体と液不透過性シートとの間に、排泄液分との接触により変色する排泄表示部を設け、吸収体の幅方向中央部に、吸収素材を有しない無目付け部のポケットを設けた使い捨ておむつが記載されている。特許文献2に記載の使い捨ておむつは、吸収体に吸収素材を有しない無目付け部のポケットを有しているため、排泄された排尿を瞬時に吸収することができる。しかしながら、特許文献2に記載の使い捨ておむつは、瞬時に吸収された少量の排尿と排泄表示部が接触し、排泄表示部の変色が早く起こってしまい、母親がおむつの交換時期を間違ってしまう場合があった。従って、特許文献2に記載の使い捨ておむつでは、おむつの適切な交換時期を判断することが難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−140742号公報
【特許文献2】特開2010−75464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、液透過性の表面シートと、液難透過性の裏面シートと、これらのシート間に配された長方形状の吸収体とを備え、該裏面シートと該吸収体との間に、色の変化により排尿を知らせるインジケーターが配された吸収性物品であって、前記吸収体は、長手方向に筋状に延びる溝を有し、前記吸収体の前記溝と前記インジケーターとの間に、該インジケーターを覆う液透過性の開孔フィルムが配されている吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吸収性物品によれば、排泄された排尿を瞬時に吸収することができると共に、適切な交換時期を判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態である展開型の使い捨ておむつを表面シート側から見た平面図である。
【図2】図2は、図1のX1−X1線断面図である。
【図3】図3(a)は、図1の使い捨ておむつを構成する開孔フィルムの平面図であり、図3(b)は、図3(a)の開孔フィルムを接着剤を介してアクリル板に貼り付け、該開孔フィルムの有する開孔の1つを断面視した断面図である。
【図4】図4は、本発明の第2実施形態である展開型の使い捨ておむつを表面シート側から見た平面図である。
【図5】図5は、図4のX2−X2線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の吸収性物品を、その好ましい第1実施形態に基づき、図1〜図2を参照しながら説明する。
【0011】
第1実施形態の使い捨ておむつ1A(以下、「おむつ1A」ともいう。)は、図1に示すように、液透過性の表面シート2と、液難透過性の裏面シート3と、これらのシート2,3間に配された長方形状の吸収体4とを備えており、裏面シート3と吸収体4との間に、色の変化により排尿を知らせるインジケーター7が配されている。おむつ1Aは、図1に示すように、中心線CLに対して左右対称に形成されている。従って以下の説明では、左右対称な部分については、主に、右側について説明する。
【0012】
第1実施形態のおむつ1Aについて、詳述すると、おむつ1Aは、図1に示すように、長手方向(以下「Y方向」ともいう。Y方向:中心線CLに平行な方向をいう。)に、腹側部A、背側部B及びこれらA,Bの間に位置する股下部Cを有している。腹側部Aは、おむつ着用時に着用者の腹側に位置する部位であり、背側部Bは、着用者の背側に位置する部位であり、股下部Cは、着用者の股下に位置する部位である。股下部Cは、おむつ1Aの長手方向(Y方向)中央部に位置している。尚、長手方向(Y方向)に直交する方向を、おむつ1Aの幅方向(以下「X方向」ともいう。)として説明する。
本明細書において、「肌対向面」とは、表面シート2などの各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側に配される面であり、「非肌対向面」とは、表面シート2などの各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面である。
【0013】
おむつ1Aは、図1に示すように、股下部Cの両側縁が幅方向(X方向)内方に向かって円弧状に湾曲しており、全体として長手方向(Y方向)中央部が内方に括れた形状を有している。表面シート2及び裏面シート3はそれぞれ、吸収体4の左右両側縁及び前後両端部から外方に延出している。表面シート2は、図2に示すように、その幅方向(X方向)の寸法が、裏面シート3の幅方向(X方向)の寸法より小さくなっている。表面シート2及び裏面シート3はそれぞれ、吸収体4の周縁から外方に延出した延出部において直接的に又は他の部材を介在させて互いに接合されており、吸収体4を挟持・固定している。
【0014】
おむつ1Aは、図1に示すように、いわゆる展開型のおむつであり、背側部Bの左右両側縁部に一対のファスニングテープ5,5設けられ、腹側部Aの外表面(非肌対向面)に、該ファスニングテープ5,5を止着させるランディングテープ(図示略)が設けられている。図1に示すように、おむつ1Aの長手方向(Y方向)両側部それぞれには、Y方向に伸長状態で固定された弾性部材61を有する立体ギャザー形成用シート62が、表面シート2の側部に配され固定されており、これによって一対の立体ギャザー6,6(図2参照)が形成されている。また、図1に示すように、おむつ1Aの長手方向(Y方向)両側部それぞれには、レッグギャザー形成用の複数本のレッグ弾性部材63がY方向に伸長状態に配されており、レッグ弾性部材63の収縮によりレッグギャザーが形成される。また、おむつ1Aの長手方向(Y方向)両端部それぞれには、ウエストギャザー形成用のウエスト部弾性部材(不図示)がX方向に伸長状態に配されており、ウエスト部弾性部材(不図示)の収縮によりウエストギャザーが形成される。
【0015】
吸収体4は、長手方向(Y方向)に筋状に延びる溝40を有している。吸収体4は、おむつ1Aにおいては、図1,図2に示すように、幅方向(X方向)の中央に、筋状に延びる溝40を1本有している。吸収体4は、おむつ1Aにおいては、図2に示すように、縦長で液保持性の吸収性コア41を液透過性の被覆シート42で被覆して形成されている。ここで、「溝」とは、パルプ繊維や高吸収性ポリマー等の吸収性物質が全て欠落して何ら積繊されていない状態に加え、10g/m2程度に若干積繊されている状態も、同様な効果を有しうることから含む意味である。但し、確実な効果を得るためには5g/m2以下の積繊状態であることが好ましい。
【0016】
上記坪量の測定は、例えば、以下のようにして測定される。おむつ1Aから吸収体4を取り出し、取り出された吸収体4から被覆シート42を取り除き吸収性コア41を取り出す。取り出された吸収性コア41から溝40を含む部位を所定幅の大きさでカットして取り出し、これを溝40のカットサンプルとする。このカットサンプルの重量を最小表示1mgの電子天秤を用いて測定し、坪量に換算することで求める。尚、坪量の測定精度を高めるために、複数のおむつ1Aよりカットサンプルを採取し、5点以上の計測値の平均を求めることが好ましい。
【0017】
溝40を除いた吸収性コア41の坪量は、250〜500g/m2であることが好ましく、300〜400g/m2であることが更に好ましい。これら坪量の測定は、例えば、上段で説明した坪量の測定に基づいて測定される。
【0018】
吸収体4の吸収性コア41は、おむつ1Aにおいては、図1に示すように、長手方向(Y方向)中央部が内方に括れた砂時計型の形状を有している。吸収性コア41の溝40は、吸収性コア41の幅方向(X方向)中央に、長手方向(Y方向)向かって筋状に延びて形成されている。おむつ1Aの溝40は、図2に示すように、幅方向(X方向)においては、おむつ1Aを断面視して、後述するインジケーター7の幅以内に配されている。尚、溝40は、おむつ1Aにおいては、インジケーター7の幅以内に配されているが、おむつ1Aを断面視して、インジケーター7と重なる位置に配されていてもよい。また、おむつ1Aの溝40は、長手方向(Y方向)においては、少なくとも股下部Cに配されていればよく、インジケーター7のY方向の全長に亘って形成されていてもよく、吸収性コア41のY方向の全長に亘って形成されていてもよい。溝40から表面シート2への液戻りと、インジケーター7の視認性の観点からは、おむつ1Aの溝40は、幅方向(X方向)においては、インジケーター7の幅以内に配され、長手方向(Y方向)においては、インジケーターの長さよりも短く配されていることが好ましい。
【0019】
吸収性コア41を被覆する被覆シート42は、吸収性コア41の保形性を保ち、また、高吸収性ポリマー等の該吸収性コア41の構成成分の脱落を防止するものである。
被覆シート42は、おむつ1Aにおいては、図2に示すように、寸法の異なる2枚のシートから構成されている。1枚は、吸収性コア41のY方向及びX方向の長さ(ここでいう吸収性コア41のX方向の長さは、X方向の最大長さを意味する)と同一寸法の上部被覆シート42aであり、他の1枚は、長手方向の長さは上部被覆シート42a(吸収性コア41)の長手方向の長さと同一であるが、上部被覆シート42aよりX方向に長い下部被覆シート42bである。上部被覆シート42aは、吸収性コア41の肌対向面側と対向して配されている。下部被覆シート42bは、吸収性コア41の非肌対向面側と対向して配され、且つ吸収性コア41の両側縁から延出した部分が、吸収性コア41の肌対向面側を被覆する上部被覆シート42a上に巻き上げられている。このようにして吸収体4が形成されている。
【0020】
股下部Cにおける吸収性コア41(吸収体4の幅と略同じ)の幅(W)は、50〜150mmであることが好ましい。
吸収性コア41の溝40の幅(W1)は、1〜10mmであることが好ましく、溝40から表面シート2への液戻りの観点から、1〜5mmであることが更に好ましい。
吸収性コア41の幅(W)に対する溝40の幅(W1)の比(W1/W)は、0.006〜0.2であることが好ましく、0.01〜0.05であることが更に好ましい。
【0021】
本発明においては、裏面シート3と吸収体4との間に、色の変化により排尿を知らせるインジケーター7が配されている。インジケーター7は、おむつ1Aにおいては、図2に示すように、吸収体4の被覆材42と裏面シート3との間に配されており、裏面シート3の肌対向面上に配されている。インジケーター7の色の変化は、裏面シート3越しに外部から視認可能になっている。おむつ1Aのインジケーター7は、幅方向(X方向)においては、おむつ1Aを断面視して、幅方向(X方向)中央に配されている。また、おむつ1Aのインジケーター7は、長手方向(Y方向)においては、股下部Cを越えて背側部A及び股下部Bに至るまで直線状に配されている。より具体的には、幅方向(X方向)に3本の細長い線が等間隔を開けて並列するように配されている。尚、おむつ1Aのインジケーター7は、長手方向(Y方向)においては、股下部Cを越えて背側部A及び股下部Bに至るまで直線状に配されているが、少なくとも股下部Cに配されていればよく、吸収性コア41のY方向の全長に亘って形成されていてもよい。吸収体全体からおむつ交換の時期がわかり易い観点から、吸収体長手方向に溝41よりインジケーター7が長く配されていることが好ましい。
【0022】
インジケーター7の幅(W2)(本実施形態においては3本のインジケーターの合計幅)は、2〜10mmであることが好ましく、3〜6mmであることが更に好ましい。
上述したように、おむつ1Aの溝40は、幅方向(X方向)においては、インジケーター7の幅以内に配されており、インジケーター7の幅(W2)に対する吸収体4の溝40の幅(W1)の比(W1/W2)は、溝40から表面シート2への液戻りと尿の拡散性、インジケーター7の視認性との観点から、0.1〜5.0であることが好ましく、0.3〜2.0であることが更に好ましい。
インジケーター7の長さ(L1)は、50〜400mmであることが好ましく、100〜300mmであることが更に好ましい。
【0023】
本発明においては、吸収体4の溝40とインジケーター7との間に、インジケーター7を覆う液透過性の開孔フィルム8が配されている。
開孔フィルム8は、幅方向(X方向)においては、おむつ1Aを断面視して、インジケーター7を覆うように、インジケーター7の幅(W2)よりも広ければ、吸収性コア41の全幅を覆うように、吸収性コア41(吸収体4の幅と略同じ)の幅(W)よりも広くてもよい。溝40における尿の拡散性と開孔フィルムの尿の透過性との観点から、吸収体幅より狭くインジケーター7より広く配されていることが好ましい。尚、おむつ1Aの開孔フィルム8は、幅方向(X方向)においては、吸収性コア41(吸収体4の幅と略同じ)の幅(W)よりは狭く、インジケーター7の幅(W2)(本実施形態においては3本のインジケーターの合計幅)よりも広く配されている。
また、開孔フィルム8は、長手方向(Y方向)においては、股下部Cに位置するインジケーター7を少なくとも覆っていればよく、インジケーター7のY方向の全長に亘って配されていてもよく、おむつ1AのY方向の全長に亘って配されていてもよい。溝40における尿の拡散性と開孔フィルムの尿の透過性との観点から、溝40の長さよりも長く配されていることが好ましい。尚、おむつ1Aの開孔フィルム8は、長手方向(Y方向)においては、おむつ1AのY方向の全長に亘って配されている。
【0024】
開孔フィルム8の長さ(L2)は、50〜500mmであることが好ましく、100〜300mmであることが更に好ましい。
インジケーター7の長さ(L1)に対する開孔フィルム8の長さ(L2)の比(L2/L1)は、溝40における尿の拡散性と開孔フィルムの尿の透過性と吸収体全体からおむつ交換の時期がわかり易い観点から、0.1〜1.0であることが好ましく、0.2〜0.6であることが更に好ましい。
開孔フィルム8の幅(W3)は、5〜60mmであることが好ましく、10〜30mmであることが更に好ましい。
インジケーター7の幅(W2)に対する開孔フィルム8の幅(W3)の比(W3/W2)は、溝40における尿の拡散性と開孔フィルムの尿の透過性と吸収体全体からおむつ交換の時期がわかり易い観点から、1〜10であることが好ましく、2〜4であることが更に好ましい。
【0025】
おむつ1Aを構成する開孔フィルム8は、図3(a)に示すように、開孔フィルムは複数の開孔81を有している。開孔フィルム8の開孔81は、おむつ1Aにおいては、図3(b)に示すように、開孔81の周壁が、開孔フィルム8の肌対向面から非肌対向面を越えて非肌対向面上に突出しており、開孔フィルム8は凹凸形状を有している。
【0026】
複数の開孔81それぞれの開孔径は、50〜600μmであり、尿の拡散性と開孔フィルムの尿の透過性の観点から、100〜400μmであることが好ましい。
複数の開孔81の開孔数は、20〜500個/cm2であることが好ましく、尿の拡散性と開孔フィルムの尿の透過性の観点から、200〜500個/cm2であることが更に好ましい。
【0027】
開孔フィルム8は、例えば、特開平05−168661、特開平05−208033、特開平05−285171などに開示されている方法で製造することができる。具体的には、例えば、スパイラル編みの金編みからなる開孔フィルム成形用型の一方の面部に開孔フィルム形成用樹脂を供給した後、上記開孔フィルム成形用型の他方の面部から減圧吸引を行い且つ上記開孔フィルム形成用樹脂の供給側からエアーを吹きつけて、上記開孔フィルム形成用樹脂を、上記開孔フィルム成形型の表面形状に沿った形状を有し且つ上記金編みの線材間の空間に対応する位置に孔部を有するシートに形成することにより製造することができる。
【0028】
おむつ1Aは、図2に示すように、表面シート2と吸収体4の上部被覆シート42aとの間、上部被覆シート42aと吸収性コア41の肌対向面との間、吸収体4の下部被覆シート42bと吸収性コア41の非肌対向面との間が、ホットメルト粘着剤等の公知の接合手段をスパイラルパターン等の間欠パターンで塗布して、接合されて形成されている。
また、おむつ1Aは、図2に示すように、吸収体4の下部被覆シート42bの非肌対向面上に開孔フィルム8が配され、裏面シート3の肌対向面上にインジケーター7が配されており、開孔フィルム8を配した下部被覆シート42bとインジケーター7を配した裏面シート3との間が、ホットメルト粘着剤等の公知の接合手段をスパイラルパターン等の間欠パターンで塗布して、接合されて形成されている。
【0029】
第1実施形態の使い捨ておむつ1Aの形成材料について説明する。
表面シート2、裏面シート3、立体ギャザー形成用シート62としては、通常、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート2としては、液透過性の不織布や、開孔フィルム、これらの積層体等を用いることができ、裏面シート3としては、樹脂フィルムや樹脂フィルムと不織布の積層体等を用いることができる。立体ギャザー形成用シート62としては、伸縮性のフィルム、不織布、織物またはそれらの積層シート等を用いることができる。
ファスニングテープ5としては、通常、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、「マジックテープ(登録商標)」(クラレ社製)、「クイックロン(登録商標)」(YKK社製)、「マジクロス(登録商標)」(カネボウベルタッチ社製)等におけるオス部材等を用いることができる。
【0030】
吸収体4を構成する吸収性コア41としては、パルプ繊維等の繊維の集合体(不織布であっても良い)又はこれに吸水性ポリマーの粒子を保持させたもの等を用いることができる。吸収体4を構成する被覆シート42としては、透水性の薄紙や不織布からなるコアラップシート等を用いることができる。
立体ギャザー形成用の弾性部材61、レッグ弾性部材63、及びウエスト部弾性部材(不図示)としては、天然ゴム、ポリウレタン、ポリスチレン−ポリイソプレン共重合体、ポリスチレン−ポリブタジエン共重合体、アクリル酸エチル−エチレン等のポリエチレン−αオレフィン共重合体等からなる糸状の伸縮性材料を用いることができる。
【0031】
インジケーター7としては、通常、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、裏面シート3とは別のフィルム若しくは不織布等のシート材、又は裏面シート3に直接、排泄物と接触することにより発色、変色又は消色する色材を塗布したものを用いることができる。例えば、色材としては、pH指示薬と酸化化合物の混合物等を用いることができる。
【0032】
上述した本発明の第1施形態の使い捨ておむつ1Aを使用した際の作用効果について説明する。
おむつ1Aは、図1,図2に示すように、吸収体4が長手方向(Y方向)に筋状に延びる溝40を有しているので、排泄された排尿を瞬時に吸収することができる。また、おむつ1Aは、図2に示すように、吸収体4の溝40とインジケーター7との間に、インジケーター7を覆う液透過性の開孔フィルム8が配されているので、瞬時に吸収された排尿が少量である場合には、排尿が開孔フィルム8でX方向に広がり、排尿の裏面シート3側への移行が開孔フィルム8により妨げられるので、インジケーター7が視覚的に変化しない。このように、排尿の裏面シート3側への移行を開孔フィルム8によりコントロールすることにより、排尿とインジケーター7との接触する時間を調整することが可能となり、おむつの適切な交換時期を判断することができる。
【0033】
また、おむつ1Aにおいては、図2に示すように、インジケーター7の幅(W2)以内に一本の溝40が配されているので、一本の溝40だと、液の吸収がしやすい。
【0034】
また、おむつ1Aにおいては、図3に示すように、インジケーター7を覆う液透過性の開孔フィルム8の開孔81が、開孔フィルム8の肌対向面から非肌対向面を越えて非肌対向面上に突出するように形成されているので、開孔フィルム8と裏面シート3との間に空間が形成されることによりインジケーター7をむらなく変色させることができる。
【0035】
次に、本発明の第2実施形態の使い捨ておむつについて、図4,図5に基づいて説明する。
第2実施形態の使い捨ておむつ1B(以下、「おむつ1B」ともいう)については、第1実施形態の使い捨ておむつ1Aと異なる点について説明する。特に説明しない点は、おむつ1Aと同様であり、おむつ1Aの説明が適宜適用される。また、図4〜図5において、図1〜図2と同じ部分には同じ符号を付してある。
【0036】
吸収体4は、おむつ1Bにおいては、図4,図5に示すように、幅方向(X方向)の中央に、筋状に延びる溝40を2本有している。即ち、吸収体4の吸収性コア41に、2本の溝40が形成されている。おむつ1Bの吸収体4は、2本の溝40が形成された吸収性コア41を被覆シート42で被覆して形成されている。
【0037】
裏面シート3と吸収体4との間に配されるインジケーター7は、おむつ1Bにおいては、図5に示すように、幅方向(X方向)においては、2本の溝40,40どうしの間の領域以内に配されている。ここで、2本の溝40,40どうしの間の領域とは、図5に示すように、各溝40の中心線CL側の側縁40aどうしの間の領域を意味する。
【0038】
2本の溝40,40どうしの間の領域の幅(W4)は、10〜50mmであることが好ましく、液の溝40への導入の観点から、15〜40mmであることが更に好ましい。
2本の溝40,40どうしの間の領域の幅(W4)に対するインジケーター7の幅(W2)の比(W2/W4)は、液の導入とインジケーター7をむらなく変色させる観点から、0.15〜0.75であることが好ましく、0.19〜0.50であることが更に好ましい。
【0039】
おむつ1Bの開孔フィルム8は、図5に示すように、幅方向(X方向)においては、おむつ1Bを断面視して、インジケーター7を覆うように、吸収体4の2本の溝40,40を越える位置まで延在している。
【0040】
おむつ1Bにおいては、図5に示すように、吸収体4と開孔フィルム8との間に、接着剤を全面塗工して形成された接着剤層9を備えている。おむつ1Bの接着剤層9は、開孔フィルム8と略同形同大に形成されている。尚、おむつ1Bにおいては、接着剤層9が、開孔フィルム8と略同形同大に形成されているが、同形同大でなくてもよく、幅方向(X方向)においては、2本の溝40,40どうしの間の領域の幅(W4)よりも広ければよく、長手方向(Y方向)においては、股下部Cに位置するインジケーター7を少なくとも覆っていればよく、インジケーター7のY方向の全長に亘って配されていてもよく、おむつ1BのY方向の全長に亘って配されていてもよい。吸収体のよれなど低減させる観点から、幅方向(X方向)においては、接着剤層9の幅を開孔フィルム8より広く配されていることが好ましく、長手方向(Y方向)においては、接着剤層9の幅を開孔フィルム8よりも長くに配されていることが好ましい。
【0041】
接着剤層9の全面塗工とは、塗工面(接着剤が塗工されてなる面)の全面に満遍なく接着剤が塗工されており、接着剤が塗工されていない非塗工部が存在していない塗工状態(ベタ塗工)を意味し、例えばスパイラルパターンのような、非塗工部の存在する間欠塗工パターンで接着剤が塗工されてなる塗工状態は、全面塗工には含まれない。全面塗工の塗工法としては、例えば、スロットコーターを用いた塗工法が挙げられる。
【0042】
接着剤層9の接着剤の塗工量は、均一であってもよいが、おむつ1Bにおいては、図5に示すように、吸収体4の溝40に位置する接着剤層9の接着剤の塗工量が、吸収体4の溝40以外の部位に位置する接着剤層9の接着剤の塗工量よりも少なくなるように塗工されている。吸収体4の溝40に位置する接着剤層9の坪量(接着剤の固形分換算での塗工量)は、5〜50g/m2であることが好ましく吸収体から開孔フィルム8への液の透過性を調整する観点から、10〜30g/m2であることが更に好ましい。
また、吸収体4の溝40以外の部位に位置する接着剤層9の坪量(接着剤の固形分換算での塗工量)は、10〜100g/m2であることが好ましく、吸収体と開孔フィルム8の剥離と開孔フィルム8近辺の剛性をたかめる観点から、20〜50g/m2であることが更に好ましい。
尚、接着剤層9の接着剤の塗工量が均一である場合には、5〜150g/m2であることが好ましく、吸収体から開孔フィルム8への液の透過性を調整し吸収体と開孔フィルム8の剥離と開孔フィルム8近辺の剛性をたかめるバランス観点から、20〜60g/m2であることが更に好ましい。
【0043】
開孔フィルム8と吸収体4(下部被覆シート42b)との間に位置する接着剤層9を設ける際は開孔フィルム8の肌対向面に接着剤を塗工してもよく、あるいは下部被覆シート42bの非肌対向面に接着剤を塗工してもよい。
【0044】
第2実施形態の使い捨ておむつ1Bの形成材料について説明する。第2実施形態のおむつ1Bについては、第1実施形態の使い捨ておむつ1Aの形成材料と異なる点について説明する。特に説明しない点は、おむつ1Aの形成材料と同様であり、おむつ1Aの形成材料が適宜適用される。
【0045】
接着剤層9は、ホットメルト型接着剤からなることが好ましい。該ホットメルト型接着剤としては、この種のおむつにおいて従来用いられている各種のものを用いることができる。好ましいホットメルト型接着剤としては、ゴム系、オレフィン系ホットメルト接着剤が挙げられる。
【0046】
上述した本発明の第2実施形態の使い捨ておむつ1Bを使用した際の作用効果について説明する。
第2実施形態のおむつ1Bの効果については、第1実施形態のおむつ1Aの効果と異なる点について説明する。特に説明しない点は、おむつ1Aの効果と同様であり、おむつ1Aの効果の説明が適宜適用される。
【0047】
第2実施形態のおむつ1Bにおいては、インジケーター7が、図5に示すように、2本の溝40,40どうしの間の領域の幅(W4)以内に配されており、溝40の真下に配されていないので、瞬時に吸収された排尿が少量である場合には、排尿の裏面シート3側への移行が開孔フィルム8により妨げられ、排尿とインジケーター7との接触する時間を調整することが可能となる。
【0048】
また、おむつ1Bにおいては、図5に示すように、吸収体4と開孔フィルム8との間に、接着剤を全面塗工して形成された接着剤層9を更に備えており、瞬時に吸収された排尿が少量である場合には、排尿の裏面シート3側への移行が接着剤層9及び開孔フィルム8によりコントロールされ、おむつの適切な交換時期を判断することができる。
【0049】
また、おむつ1Bにおいては、図5に示すように、吸収体4の溝40に位置する接着剤層9の接着剤の塗工量が、吸収体4の溝40以外の部位に位置する接着剤層9の接着剤の塗工量よりも少なくなるように塗工されているので、吸収体4から開孔フィルム8への液の透過性を調整でき、吸収体4と開孔フィルム8の剥離と、開孔フィルム8近辺の剛性とのバランスを調整できる。
【0050】
本発明の吸収性物品の一実施形態である使い捨ておむつは、上述の第1,第2実施形態の使い捨ておむつに何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。また、上述の第1,第2実施形態の使い捨ておむつにおける各構成要件は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、適宜組み合わせて実施できる。
【0051】
例えば、上述の第1,第2実施形態の使い捨ておむつは、図1,図3に示すように、展開型の使い捨ておむつであるが、パンツ型の使い捨ておむつでもよい。
【0052】
また、上述の第1,第2実施形態の使い捨ておむつにおいて、表面シート2と吸収体4との間に、サブレイヤーシートを備えていてもよい。サブレイヤーシートとして、例えば、Y方向に長い長方形状のシートであって、或る程度の厚みを有する嵩高なシートを用いることができる。サブレイヤーシートとしては、親水性不織布や親水性の短繊維集合体からなるものが挙げられる。
【0053】
また、吸収性物品は、幼児又は成人用の使い捨ておむつであってもよい。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
【0055】
〔実施例1〕
実施例1では、上述した図4,図5に示す第2実施形態に示す構造の使い捨ておむつを作製した。後述する吸収体4、開孔フィルム8及び接着剤層9以外の部材には、花王株式会社製のメリーズ(登録商標)さらさらエアスルー(Lサイズ)を用いた。
吸収体4について詳述すると、吸収体4の吸収性コア41における2本の溝40,40以外の部分の坪量は、486g/m2であった。吸収性コア41(吸収体4)の長手方向(Y方向)の長さは410mmであった。吸収性コア41(吸収体4)の股下部Cにおける幅(W)は70mmであり、腹側部Aにおける幅は120mmであり、背側部Bにおける幅は100mmであった。吸収性コア41に配された2本の溝40,40それぞれは、その長さが155mmであり、その幅(W1)が3mmであり、また2本の溝40,40どうしの間の領域の幅(W4)が20mmであった。尚、吸収性コア41の幅(W)に対する溝40の幅(W1)の比(W1/W)(1本の溝40)は、0.04であった。2本の溝40,40それぞれは、吸収性コア41の長手方向(Y方向)の前端から105mm離れた位置に形成し、股下部Cにおける幅方向(X方向)の側端から22mm離れた位置に形成した。
【0056】
Mサイズしか持っていなかったので下記インジケーター7の幅(W2)はMサイズの寸法です。Lサイズと異なる場合には修正下さい。(成瀬)
インジケーター7の幅(W2)(3本のインジケーターの合計幅)は8mmであった。2本の溝40,40どうしの間の領域(W4)に対するインジケーター7の幅(W2)の比(W2/W4)は0.4であった。
【0057】
開孔フィルム8は、その幅(W3)が70mmであり、その幅の開孔フィルム8を使い捨ておむつの全長に亘って配した。
開孔フィルム8は、複数の開孔81それぞれの開孔径が289μmであり、開孔数が471個/cm2であった。
実施例1の使い捨ておむつは、上述のような吸収性コア41を有する吸収体4と、上述のような開孔フィルム8との間に、スロットコーターを用いて接着剤を開孔フィルム8の表面に全面塗工(塗工量2.5g/m2)して接着剤層9を形成し、接着剤層9を介して吸収体4と開孔フィルム8とを固定し作製した。
【0058】
〔実施例2〕
実施例2では、実施例1と同様に、上述した図4,図5に示す第2実施形態に示す構造の使い捨ておむつを作製した。実施例2の使い捨ておむつにおいては、実施例1に用いた開孔フィルム8を、複数の開孔81それぞれの開孔径が545μmであり且つ開孔数が89個/cm2である開孔フィルム8に変更する以外は、実施例1と同様にして使い捨ておむつを作製した。
【0059】
〔比較例1〕
比較例1では、実施例1と同様に、上述した図4,図5に示す構造の使い捨ておむつを作製した。比較例1の使い捨ておむつにおいては、実施例1に用いた開孔フィルム8を、複数の開孔それぞれの開孔径が716μmであり且つ開孔数が88個/cm2である開孔フィルムに変更する以外は、実施例1と同様にして使い捨ておむつを作製した。
【0060】
〔比較例2〕
比較例2では、実施例1と同様の吸収体4を用いるが、開孔フィルム8及び接着剤層9を用いない以外は、実施例1と同様にして使い捨ておむつを作製した。
【0061】
〔評価〕
実施例1〜2、比較例1〜2の各使い捨ておむつについて、下記の方法により、インジケーターの過度の変色のし易さを評価した。インジケーターが過度に反応して変色が早く起こってしまうと、母親等がおむつの交換時期を間違ってしまい、おむつの適切な交換時期を判断することができないからである。これらの結果を下記表1に示す。
【0062】
<インジケーターの過度の変色の評価方法>
実施例1〜2、比較例1〜2の各使い捨ておむつの股下部における表面シート上に、イオン交換水5gを一括注入し、その2分後に、裏面シート側からインジケーターの変色を目視にて観察した。次に、インジケーターの色変化が大きいと判断した箇所について、日本電色工業(株)社製の簡易型分光色差計NF333(商品名)を用いて、L***表色系におけるb*値を測定した。
【0063】
【表1】

【0064】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜2の使い捨ておむつは何れも、比較例1〜2の使い捨ておむつに比べ、インジケーターが過度に変色し難いことが分かった。従って、おむつ交換の適切な時期の判断が期待できる。
【符号の説明】
【0065】
1A,1B 使い捨ておむつ
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
40 溝
40a 溝の中心線CL側の側縁
41 吸収体コア
42 被覆シート
42a 上部被覆シート
42b 下部被覆シート
5 ファスニングテープ
6 立体ギャザー
61 立体ギャザー形成用の弾性部材
62 立体ギャザー形成用シート
63 レッグ弾性部材
7 インジケーター
8 開孔フィルム
81 開孔
9 接着剤層
A 腹側部,B 背側部,C 股下部
CL おむつの長手方向に延びる中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性の表面シートと、液難透過性の裏面シートと、これらのシート間に配された長方形状の吸収体とを備え、該裏面シートと該吸収体との間に、色の変化により排尿を知らせるインジケーターが配された吸収性物品であって、
前記吸収体は、長手方向に筋状に延びる溝を有し、
前記吸収体の前記溝と前記インジケーターとの間に、該インジケーターを覆う液透過性の開孔フィルムが配されており、
前記開孔フィルムは複数の開孔を有し、該開孔それぞれの開孔径が50〜600μmである吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収体は、幅方向の中央に前記溝を1本有し、
前記インジケーターの幅以内に一本の前記溝が配されている請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収体は、前記溝を2本有し、
2本の前記溝どうしの間の領域以内に前記インジケーターが配されている請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記開孔の開孔数は、20〜500個/cm2である請求項1〜3の何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体と前記開孔フィルムとの間に、接着剤を全面塗工して形成された接着剤層を備え、
前記吸収体の前記溝に位置する前記接着剤層の接着剤の塗工量が、前記吸収体の前記溝以外の部位に位置する前記接着剤層の接着剤の塗工量よりも少ない請求項1〜4の何れか1項に記載の吸収性物品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−125452(P2012−125452A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280513(P2010−280513)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】