説明

吸収性物品

【課題】表面シート側からのpH指示体の視認性が低下した場合であっても、体液のpH値に基づいて着用者が健康状態を把握することができる吸収性物品を提供する。
【解決手段】本発明に係る吸収性物品1は、液透過性の表面シート2と、液不透過性の裏面シート3と、表面シート2と裏面シート3との間に配置される吸収体4とを有し、裏面シート3と吸収体4との間には、着用者の体液のpH値に応じて呈色反応するpH指示体50が配置されており、pH指示体50よりも吸収体4側に、着用者の体液を裏面シート3側に透過させる高液透過部71と、高液透過部71よりも体液を透過させ難い低液透過部72と、を有する液透過層7が設けられており、高液透過部71は、pH指示体50に対応する領域に配置され、低液透過部72は、高液透過部71の周囲に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に配置される吸収体とを有する吸収性物品であって、表面シートの肌当接面側又は吸収体に、リトマス溶液が塗布されている吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】CN201414880Y
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リトマス溶液は、着用者の体液が接触することにより、体液の水素イオン濃度(pH値)に応じて呈色反応する。具体的には、体液がアルカリ性の場合には青色に変化し、体液が酸性の場合には赤色に変化する。したがって、上述の吸収性物品によれば、着用者の体液が酸性であるか、アルカリ性であるか、あるいは中性であるかを検出することができる。体液は、健康状態に応じてpH値が変化することが知られている。よって、着用者は、体液のpH値に基づいて、自身の健康状態を把握することができる。
【0005】
しかし、例えば、月経中においては、表面シートの肌当接面側に経血が付着するため、表面シートの肌当接面側からリトマス溶液を視認し難いことがある。リトマス溶液は、色によってpH値を示すため、着用者は、リトマス溶液を視認できないと、pH値に基づいて健康状態を把握することができない。
【0006】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、表面シート側からのリトマス溶液等pH指示体の視認性が低下した場合であっても、体液のpH値に基づいて着用者の健康状態を把握することができる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴は、液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置される吸収体とを有する吸収性物品であって、前記裏面シートと前記吸収体との間には、着用者の体液のpH値に応じて呈色反応するpH指示体が配置されており、前記pH指示体は、前記裏面シートを介して前記吸収性物品の外側から視認可能に構成されており、前記pH指示体よりも前記吸収体側に、着用者の体液を前記裏面シート側に透過させる高液透過部と、前記高液透過部よりも体液を透過させ難い低液透過部と、を有する液透過層が設けられており、前記高液透過部は、前記pH指示体に対応する領域に配置され、低液透過部は、高液透過部の周囲に配置されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る吸収性物品は、着用者の体液の水素イオン濃度(pH値)に応じて呈色反応するpH指示体を備えており、pH指示体が裏面シートを介して視認可能であるため、着用者は、裏面シートを介して、吸収性物品の外部からpH指示体を視認することができる。よって、着用者は、表面シートに経血等の体液が付着して表面シート側からのpH指示体の視認性が低下した場合であっても、体液のpH値に基づいて自身の健康状態を把握することができる。
【0009】
また、pH指示体よりも吸収体側に液透過層が設けられる。液透過層のpH指示体に対応する領域には、液透過性が比較的高い高液透過部が配置されている。吸収体に吸収された体液は、高液透過部を介してpH指示体に浸透し易くなる。着用者は、このように構成されたpH指示体を視認することにより、体液のpH値に基づいて自身の健康状態を把握することができる。また、高液透過部の周囲に低液透過部を配置することにより、pH指示体の周囲に体液が透過することを抑制し、pH指示体の視認性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る吸収性物品の肌当接面側から見た平面図である。
【図2】図1に示す吸収性物品の下着当接面側から見た平面図である。
【図3】図1に示す吸収性物品のa−a断面図である。
【図4】変形例に係る吸収性物品の下着当接面側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明の第1の実施形態)
図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る吸収性物品1について説明する。例えば、本実施形態に係る吸収性物品1は、パンティライナーや失禁パッドや生理用ナプキン等である。
【0012】
本実施形態に係る吸収性物品1は、液透過性の表面シート2と、液不透過性の裏面シート3と、表面シート2と裏面シート3との間に配置される吸収体4とを有する。表面シート2は、着用者の肌当接面側に配置され、裏面シート3は、下着当接面側に配置される。なお、本実施形態に係る吸収性物品1において、表面シートと吸収体との間に、セカンドシートが配置されていてもよい。
【0013】
図1に、本発明の第1の実施形態に係る吸収性物品の肌当接面側から見た平面図を示す。図2に、本発明の第1の実施形態に係る吸収性物品の下着当接面側(非肌当接面側)から見た平面図を示す。図3に、図1に示す吸収性物品のa−a断面図を示す。
【0014】
吸収体は、粉砕パルプ及び高分子吸収ポリマーと両者を包み込むコアラップとによって構成されている。ここで、高分子ポリマーは、ポリアクリル酸をナトリウムで部分中和した架橋体の粒状のポリマーである。
【0015】
また、コアラップは、液体を吸収する任意の材料のシートである。例えば、コアラップとして、ティッシュを用いてもよいし、親水性繊維や粉砕パルプをエアレイド法によってシート状にしたエアレイドシートを用いてもよい。
【0016】
また、本実施形態に係る吸収性物品1には、図1に示すように、複数の圧搾溝21、22、23が設けられていてもよい。ここで、圧搾溝及21、22、23は、図3に示すように、表面シートから吸収体までを圧搾するように構成されている。
【0017】
また、本実施形態に係る吸収性物品1は、図1に示すように、吸収性物品1の幅方向Wの両外側に延出するように形成されている1対のウィング部41を有していてもよい。さらに、本実施形態に係る吸収性物品1は、吸収性物品1の長手方向Lにおいて、ウィング部41の後方に、1対のヒップフラップ部42を有していてもよい。
【0018】
ここで、ウィング部41及びヒップフラップ部42では、裏面シートの衣服当接面側に、吸収性物品1を下着に固定するための粘着剤43が塗布されている。粘着剤43は、裏面シート3の長手方向Lに沿って複数ライン状に塗布される。ウィング部41及びヒップフラップ部42において、ショーツと接触する下着当接面にもまた、粘着剤43が塗布される。使用前の状態では、粘着剤43には粘着性を保持するための保護シート(図示せず)が接着されている。保護シートは、使用時に着用者によって剥離される。
【0019】
着用者は、吸収性物品1を下着に着用する際に、ウィング部41を下着のクロッチに巻き込み、ヒップフラップ部42を下着の上に広げて、吸収性物品1を下着に固定する。
【0020】
また、本実施形態に係る吸収性物品1は、図2及び図3に示すように、裏面シート3と吸収体4との間に、pH指示体50が配置されている。pH指示体50は、シート状であって、体液のpH値によって呈色反応する酸塩基指示溶液が染みこんでいる。pH指示体50は、吸収体4によって吸収された体液のpH値に応じて色が変化する。なお、pH指示体50は、吸収体4よりも幅方向Wの長さ及び長手方向Lの長さが短く構成されているが、幅方向Wの長さ及び/又は長手方向Lの長さが吸収体4と同じであってもよい。
【0021】
pH指示体50に染みこませる酸塩基指示溶液としては、例えば、リトマスゴケから採取したリトマスを水等の溶媒に溶かしたリトマス溶液、ブロモチモールブルーを溶媒に溶かしたブロモチモールブルー溶液(BTB溶液)、フェノールフタレインを溶媒に溶かしたフェノールフタレイン溶液、メチルオレンジ、紫キャベツ液、及び複数の酸塩基指示溶液を混合した液体を例示できる。
【0022】
pH値は、水素イオン濃度を表す数値であって、物質の酸性及びアルカリ性の度合いを示す。具体的には、0〜14の範囲の数値であって、pH=7の場合は中性であり、pH値が小さくなればなるほど酸性が強いことを示し、pH値が大きくなればなるほどアルカリ性が強いことを示す。
【0023】
着用者は、pH指示体50の色に基づいて自身の健康状態を把握することができる。例えば、健康状態の膣内のpH値は、4.5〜5.0の弱酸性である。したがって、着用者は、pH指示体50が弱酸性を示す色に変化することによって、自身が健康であることを把握することができる。
【0024】
また、例えば、軽微な異常が生じた状態の膣内のpH値は、6.0〜8.0の中性である。したがって、着用者は、pH指示体50が中性を示す色に変化することによって、若干の異常が生じている可能性があることを把握することができる。更に、病気等、何らかの異常が生じた状態の膣内のpH値は、アルカリ性である。したがって、着用者は、pH指示体50がアルカリ性を示す色に変化することによって、病気等の異常が生じている可能性があることを把握することができる。
【0025】
更に、体液のpH値は、月経の周期において変化したり、妊娠することによって変化したりするため、健康状態のみならず、月経の周期等を把握することも可能となる。
【0026】
また、尿のpH値に基づいて、健康状態を把握することも可能である。具体的には、酸性尿(pH 6.0 未満)が継続する場合には、尿酸結石等の病気の可能性がある。また、アルカリ尿(pH 7.0を超える)が継続する場合には、リン酸カルシウム結石、尿素分解菌による尿路感染症、リン酸マグネシウムアンモニウム結石等の病気の可能性がある。着用者は、尿のpH値を日々確認することにより、健康状態を把握することができる。
【0027】
吸収体4の裏面シート側には、液透過層7が設けられている。液透過層7は、液不透過性のフィルムによって構成され、複数の開口部が形成されている。液透過層7は、吸収体に吸収された体液を裏面シート側へ透過させ易い高液透過部71と、高液透過部71よりも液を透過させ難い低液透過部72と、を有する。高液透過部71は、複数の開口部によって形成されており、pH指示体50に対応する領域の一部に配置される。pH指示体50に対応する領域とは、図2に示す斜線領域であり、図2に示す平面視においてpH指示体50と重なる領域である。低液透過部72は、高液透過部71の周囲に配置されている。
【0028】
液透過層7のpH指示体50に対応する領域は、液透過層7の他の領域よりも液透過率が高く、吸収体4に吸収された体液が裏面シート3側に透過し易く構成されている。したがって、吸収体4に吸収された体液を、pH指示体50に浸透させ易くすることができる。
【0029】
また、裏面シート側から視認した際に高液透過部71の周囲には、低液透過部72が配置されている。高液透過部71の周囲に低液透過部72を配置することにより、pH指示体50の周囲に体液が透過することを抑制し、pH指示体50の視認性を高めることができる。具体的には、例えば、pH指示体50に対応する領域の周囲に多くの体液が浸透すると、周囲に浸透した体液によってpH指示体50の視認性が低下するおそれがある。しかし、pH指示体50に対応する領域の周囲に低液透過部72を配置することにより、体液の浸透による視認性の低下を抑制することができる。
【0030】
裏面シート3は、JISK7105(プラスチックの光学的特性試験方法)に基づく全光線透過率が40%〜80%となるように構成されている。したがって、着用者は、裏面シート3を介して吸収性物品1の外側からpH指示体50を視認できる。裏面シート3の表面には、表面シート2の表面と異なり、体液等が直接付着せず、体液によって視認性が低下するおそれがない。したがって、着用者は、吸収性物品1の裏面シート3側から確実にpH指示体50を視認して、表示部60を参照することにより、自身の健康状態を容易に把握することができる。
【0031】
なお、液透過層7は、全光線透過率が少なくとも裏面シートよりも低く構成されていてもよい。液透過層7の全光線透過率を比較的低く構成することにより、pH指示体以外の部分で浸透した体液の視認性を低下させることができ、相対的にpH指示体50の視認性を高めることができる。
【0032】
また、液透過層7は、一部に高液透過部として親水性の不織布を設けた疎水性不織布によって構成されていてもよいし、高液透過部としてスリットや複数の穴部を設けた不液透過性のシートによって構成されていてもよい。
【0033】
(変更例1)
以下、図4を参照して、本発明の変更例1に係る吸収性物品1について、上述の第1の実施形態に係る吸収性物品1との相違点に着目して説明する。
【0034】
図4に示すように、本変更例1に係る吸収性物品1は、吸収体4の裏面シート側の面に、pH指示体50として酸塩基指示溶液が塗布されている。すなわち、pH指示体50は、吸収体4及び裏面シート3と別個に設けられていてもよいし、吸収体4又は裏面シート3の一部として設けられていてもよい。なお、変形例1に係る吸収性物品1は、吸収体4に酸塩基指示溶液が塗布されているが、裏面シート3の吸収体4側の面に、酸塩基指示溶液が塗布されていてもよい。
【0035】
液透過層7の高液透過部71は、円形状であって、pH指示体50に対応する領域において間欠的に複数配置されている。高液透過部71は、pH指示体50に対応する領域の全領域に設けられていてもよいし、pH指示体50に対応する領域の一部の領域に設けられていてもよい。
【0036】
また、液透過層7は、吸収体4の一部として設けられていてもよいし、吸収体4と裏面シート3との間に設けられたシートの一部として設けられていてもよいし、吸収体4及びシートと別個に設けられていてもよい。
【0037】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。従って、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【符号の説明】
【0038】
1…吸収性物品
2…表面シート
3…裏面シート
4…吸収体
7…液透過層
21、22、23…圧搾溝
41…ウィング部
42…ヒップフラップ部
43…粘着剤
50…pH指示体
71…高液透過部
72…低液透過部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置される吸収体とを有する吸収性物品であって、
前記裏面シートと前記吸収体との間には、着用者の体液のpH値によって呈色反応するpH指示体が配置されており、
前記pH指示体は、前記裏面シートを介して前記吸収性物品の外側から視認可能に構成されており、
前記pH指示体よりも前記吸収体側に、着用者の体液を前記裏面シート側に透過させる高液透過部と、前記高液透過部よりも体液を透過させ難い低液透過部と、を有する液透過層が設けられており、
前記高液透過部は、前記pH指示体に対応する領域に配置され、前記低液透過部は、前記高液透過部の周囲に配置されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記高液透過部は、前記液透過層に形成された開口部である、請求項1に記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−152398(P2012−152398A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14461(P2011−14461)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】