説明

吸収性物品

【課題】SAPの膨潤及びこれに伴う吸収体の膨張を妨げず、十分な吸収性能を発揮することができる吸収性物品を提供する。
【解決手段】フラッフパルプと高吸水性ポリマーを含む吸収体22Aと、吸収体22Aの表面S1、側面S3,S4及び裏面S2を被包する吸収体被包シート50Aを備え、吸収体被包シート50Aのうち、少なくとも吸収体22Aの側面S3,S4を被包する部分が伸縮性材料からなる伸縮性シート58Aにより構成されている吸収性物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラッフパルプと高吸水性ポリマーを含む吸収体と、前記吸収体の表面、両側面及び裏面を被包する吸収体被包シートを備えた吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、吸収性物品を構成する吸収体としては、フラッフパルプと高吸水性ポリマー(Super Absorbent Polymer;以下、「SAP」と記す場合がある。)を含む吸収体が用いられてきた。
【0003】
フラッフパルプは単位体積当たりの吸収量は小さいものの即時の吸収性(吸収速度)に優れる。一方、SAPは吸収速度の面ではフラッフパルプに劣るものの単位体積当たりの吸収量が大きく、体積の約50倍の水分を吸収することができる。従って、フラッフパルプとSAPを組み合わせた吸収体は、着用者が一時に多量の排泄物を排泄した場合でもその排泄物をフラッフパルプに吸収させてトラップした後、SAPに徐々に移行させることが可能である。即ち、前記吸収体は吸収速度と吸収量の双方に優れるという特徴がある。
【0004】
前記吸収体においては、粒状、粉末状のSAPが吸収性物品の外部に漏れることを防止し、また、吸収体の型崩れを防止する目的で吸収体をティシュ等で被包することが行われている。例えば図2A及び図2Bに示すように吸収体122の表面S1、両側面S3,S4及び裏面S2がティシュ150(上ティシュ152及び下ティシュ154)によって被包された吸収性物品が知られている(特許文献1又は2参照)。
【0005】
前記のような吸収性物品では前記のような吸収体の型崩れを防止する目的で、図2Bに示すようにティシュ150を吸収体122の表面S1、両側面S3,S4及び裏面S2に対して密着させて配置し、ティシュ150により吸収体122をしっかり包む形態が一般的である。
【0006】
ところで、近年、吸収性物品には排泄物の吸収性に優れ、漏れがないといった基本的な機能に加えて、着用感や装着時の外観の向上が求められている。そこで、吸収性物品の構成部材の中で比較的嵩高い吸収体を薄型化することが提案されている(特許文献3参照)。吸収体を薄型化することで、吸収性物品が着用者の身体に対してフィットし易くなり、吸収性物品が着用者の衣服内にすっきり収まる。従って、着用感が向上する。また、吸収性物品が着用者の衣服内にすっきり収まることによって、衣服外から見た際に吸収性物品が目立たなくなる。従って、装着時の外観も向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−33056号公報
【特許文献2】特開2003−284743号公報
【特許文献3】特開2004−24569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、吸収体を薄型にすると吸収材の量が減り、吸収体の吸収量が不十分となるおそれがある。薄型の吸収体においても吸収量を維持する方法としては、吸収体中のSAPの比率を増やし、フラッフパルプの比率を減ずる方法が考えられる。この方法によれば嵩高いフラッフパルプを減量することができるため、吸収体を薄型化することができる。また、吸収量が大きいSAPの比率を増やすことにより、吸収体全体の吸収量を維持することもできる。従って、吸収体全体の吸収量を維持しつつ、吸収体を薄型化し得る。
【0009】
ところが、SAPは排泄物を吸収するとその体積が50倍程度にまで膨潤するという特性がある。従って、特許文献3に記載の吸収性物品のようにティシュ等により吸収体をしっかり包む形態を採用した場合には以下に掲げるような課題があった。
【0010】
まず、1)吸収体がティシュ等によってしっかり被包されているため、SAPの膨潤が妨げられ、SAPの吸収性能を十分に発揮させることが困難であるという課題があった。逆に、2)SAPの膨潤に伴う吸収体の膨張によって、吸収体を被包するティシュ等が破断され、又はティシュ等同士を接合する接合部が剥がれてしまう場合もあった。2)の場合には、吸収体がティシュ等によって完全に被包されていない状態となり、吸収体をティシュで包む効果(吸収体の型崩れを防止する効果等)が減殺されるという課題があった。前記1)、2)の課題は吸収体の薄型化が進行し、SAPの量及び比率が増加すると更に顕在化することが予想される。
【0011】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、吸収体の型崩れを防止することができ、SAPの膨潤を妨げず、十分な吸収性能を発揮することができる吸収性物品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、前記のような従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、吸収体を被包するシート材(吸収体被包シート)のうち吸収体の両側縁を被包する部分を伸縮性を有するシート材によって構成し、SAPの膨潤に伴って吸収体が膨張してもこれに応じて吸収体被包シートが伸張するように構成することによって、前記課題が解決されることに想到し、本発明を完成させた。具体的には、本発明により、以下の吸収性物品が提供される。
【0013】
[1]フラッフパルプと高吸水性ポリマーを含む吸収体と、前記吸収体の表面、両側面及び裏面を被包する吸収体被包シートを備え、前記吸収体被包シートのうち、少なくとも前記吸収体の両側面を被包する部分が伸縮性材料からなる伸縮性シートにより構成されている吸収性物品。
【0014】
[2]前記伸縮性シートが伸縮性不織布である前記[1]に記載の吸収性物品。
【0015】
[3]前記吸収体被包シートのうち、前記伸縮性不織布により構成された部分以外の部分については非伸縮性親水性シートにより構成されている前記[2]に記載の吸収性物品。
【0016】
[4]前記吸収体被包シートが、前記吸収体の表面を被包する上シートと、前記吸収体の両側面及び裏面を被包する下シートとからなり、前記上シートが非伸縮性の材料からなる非伸縮性シートにより構成され、前記下シートが前記伸縮性シートにより構成されている前記[1]〜[3]のいずれかに記載の吸収性物品。
【0017】
[5]前記吸収体被包シートの全部が、前記伸縮性シートにより構成されている前記[1]〜[3]のいずれかに記載の吸収性物品。
【0018】
[6]前記吸収体被包シートが、前記吸収体の表面を被包する上シートと、前記吸収体の両側面を被包する横シートと、前記吸収体の裏面を被包する下シートとからなり、前記上シート及び前記下シートが非伸縮性の材料からなる非伸縮性シートにより構成され、前記横シートが前記伸縮性シートにより構成されている前記[1]〜[3]のいずれかに記載の吸収性物品。
【発明の効果】
【0019】
本発明の吸収性物品は、吸収体の型崩れを防止することができ、SAPの膨潤を妨げず、十分な吸収性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】本発明の吸収性物品の一の実施形態を模式的に示す概略平面図であり、吸収性物品を展開し、トップシート方向から見た状態を示すものである。
【図1B】図1Aに示す吸収性物品のA−A’切断端面を模式的に示す概略端面図である。
【図1C】図1Aに示す吸収性物品を展開し、カバーシート方向から見た状態を模式的に示す概略平面図である。
【図1D】図1Aに示す吸収性物品における吸収体及び吸収体被包シートの実施形態を模式的に示す概略平面図である。
【図1E】図1Dに示す吸収体及び吸収体被包シートのB−B’切断端面を模式的に示す概略端面図である。
【図1F】排泄物を吸収した状態における図1Dに示す吸収体及び吸収体被包シートのB−B’切断端面を模式的に示す概略端面図である。
【図2A】従来の吸収性物品における吸収体及び吸収体被包シートの実施形態を模式的に示す概略平面図である。
【図2B】図2Aに示す吸収性物品のC−C’切断端面を模式的に示す概略端面図である。
【図3A】本発明の吸収性物品における吸収体及び吸収体被包シートの別の実施形態を模式的に示す概略平面図である。
【図3B】図3Aに示す吸収体及び吸収体被包シートのD−D’切断端面を模式的に示す概略端面図である。
【図4A】本発明の吸収性物品における吸収体及び吸収体被包シートの更に別の実施形態を模式的に示す概略平面図である。
【図4B】図4Aに示す吸収体及び吸収体被包シートのE−E’切断端面を模式的に示す概略端面図である。
【図5A】本発明の吸収性物品における吸収体及び吸収体被包シートの更にまた別の実施形態を模式的に示す概略平面図である。
【図5B】図5Aに示す吸収体及び吸収体被包シートのF−F’切断端面を模式的に示す概略端面図である。
【図6A】本発明の吸収性物品における吸収体及び吸収体被包シートの別の実施形態を模式的に示す概略平面図である。
【図6B】図6Aに示す吸収体及び吸収体被包シートのG−G’切断端面を模式的に示す概略端面図である。
【図6C】図6Aに示す吸収体及び吸収体被包シートの変形例について、その一部を拡大して模式的に示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の吸収性物品を実施するための形態について、テープ型使い捨ておむつの例により具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備える吸収性物品(例えば、パンツ型使い捨ておむつ、尿取りパッド等)を広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。なお、同一形態の部材については図面において同一の符号を付し、本明細書においてその説明を省略する。
【0022】
[1]本発明の吸収性物品の基本的な構成:
本発明は、図1A〜図1Cに示す吸収性物品1Aのような吸収体22Aと吸収体22Aを被包する吸収体被包シート50Aを備える吸収性物品に関するものである。本発明の吸収性物品は、図1D及び図1Eに示すようにフラッフパルプと高吸水性ポリマーを含む吸収体22Aと、吸収体22Aの表面S1、両側面S3,S4及び裏面S2を被包する吸収体被包シート50Aを備えるものである。
【0023】
[1−1]吸収体:
「吸収体」は、着用者の排泄物(尿等)を吸収し保持する部材であり、吸収材によって構成されている。通常の吸収性物品の場合、尿等の排泄物を吸収する性質がある限り、吸収材の種類について制限はない。但し、本発明の吸収性物品に用いる吸収体はフラッフパルプと高吸水性ポリマーの双方を含んでいる必要がある。吸収速度と吸収量の双方に優れた吸収性物品とするためである。
【0024】
「フラッフパルプ」とはパルプを綿状に解繊したものである。解繊するパルプは木材パルプでも非木材パルプでもよい。木材パルプとしては、針葉樹由来のパルプが好ましい。但し、広葉樹、わら、竹又はケナフ等に由来するパルプを用いることもできる。
【0025】
「高吸水性ポリマー」とは、架橋構造を持つ親水性のポリマーで、自重の10倍以上の吸水力があり、圧力をかけても離水し難いものを指す(Super Absorbent Polymer:以下「SAP」と記す)。
【0026】
SAPとしては、従来公知のSAP、例えば、A)デンプン系(デンプン−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、デンプン−アクリル酸エチルグラフト共重合体のケン化物等);B)セルロース系(ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物等);C)合成樹脂系(アクリル酸(塩)重合体、ポリビニルアルコール−無水マレイン酸反応物の架橋物等)等を用いることができる。これらは単独で又は二種以上を混合して用いることができる。前記SAPの中でも、吸水性能が高いポリアクリル酸ナトリウムを用いることが好ましい。
【0027】
フラッフパルプの量について特に制限はない。但し、50〜250g/mとすることが好ましい。50g/m以上とすることにより、即時の吸収性(吸収速度)に優れる吸収性物品を構成することができる。一方、250g/m以下とすることにより、吸収体を薄型化することができる。これらの効果をより確実に得たい場合には、フラッフパルプの量を50〜150g/mとすることが更に好ましい。
【0028】
SAPの量も特に限定されない。但し、フラッフパルプ100質量部に対して80〜500質量部(フラッフパルプ:SAP=1:0.8〜5)とすることが好ましい。80質量部以上とすることにより、フラッフパルプの量を減じても吸収体全体の吸収量が低下し難い。一方、500質量部以下とすることにより、吸収体の吸収速度が極端に低下し難い。これらの効果をより確実に得たい場合には、120〜500質量部(フラッフパルプ:SAP=1:1.2〜5)とすることが更に好ましい。
【0029】
なお、本発明において用いる吸収体は、フラッフパルプとSAPを含む限り、他の吸収材を更に含んでいてもよい。他の吸収材としては、ティシュ、吸収紙、親水化処理を行った不織布等の親水性シートを用いることができる。
【0030】
吸収体におけるSAPとフラッフパルプの配置形態としては、A)フラッフパルプのマット内部にSAPを分散させる、B)フラッフパルプのマットが複数積層された積層体において前記マットの層間にSAPを層状に配置する等の形態を採用することができる。
【0031】
吸収体の厚さは特に限定されない。但し、1〜6mmとすることが好ましい。1mm以上とすることにより、吸収体に十分な吸収性能を発揮させることができる。一方、6mm以下とすることにより吸収体を薄型化することができる。これらの効果をより確実に得たい場合には、吸収体の厚さを1〜3mmとすることが更に好ましい。
【0032】
吸収体の平面形状は特に限定されない。従来公知の吸収性物品と同様の形状を採用することができる。例えば図1Dに示すような矩形状の吸収体22A、図6Aに示すような砂時計型の吸収体22B等を挙げることができる。「砂時計型」とは、砂時計を正面側から平面視した場合の平面形状の意である。即ち、吸収体を平面視した場合に長手方向の両端部が幅広く、長手方向の中央部が括れて幅狭くなっている形状を指す。
【0033】
[1−2]吸収体被包シート:
「吸収体被包シート」は、吸収体の型崩れを防止する目的で、吸収体を被包するシート材である。
【0034】
吸収体被包シートは、尿等の排泄物を吸収体に吸収させるため、少なくとも一部が液透過性を有している必要がある。液不透過性材料からなるシート材に孔を穿設した穿孔シートも液透過性を有するため吸収体被包シートとして用いることができる。但し、通常は、吸収体の項で例示した親水性シート、後にトップシートの項で説明する液透過性シート等と同様の材質が用いられる。
【0035】
図1Bに示すように、吸収体被包シート50Aは吸収体22Aの表面S1、両側面S3,S4及び裏面S2を被包している。「表面」とは吸収体の外面のうち、吸収性物品の使用時に着用者の股下と対向する側の面を指す。通常はトップシートと対向する面となる。「裏面」とは吸収体の外面のうち、吸収性物品の使用時に着用者の股下と背向する側の面を指す。通常はバックシートと対向する面となる。「両側面」とは吸収体の外面のうち、吸収性物品の幅方向の外側(右側及び左側)に向く面を指す。
【0036】
吸収体被包シートは、吸収体の少なくとも表面、両側面及び裏面を被包するものであればよい。但し、図1D及び図1Eに示すように吸収体22Aの表面S1、両側面S3,S4及び裏面S2に加えて、吸収体22Aの両端面S5,S6を被包するものであってもよい。「両端面」とは吸収体の外面のうち、吸収性物品の装着時に吸収性物品の前後方向(幅方向と直交する方向)の前側ないし後側を向く面を指す。
【0037】
図1D及び図1Eに示す例では積層された吸収体被包シート50Aの両端部を接合部62によって接合し封着している。これにより、吸収体22Aの両端面S5,S6が露出しないように被包される。
【0038】
[2]本発明の吸収性物品の特徴的な構成:
従来の吸収性物品の場合、図2Bに示すように吸収体被包シート(ティシュ150)を吸収体122の表面S1、両側面S3,S4及び裏面S2に対して密着させて配置し、ティシュ150により吸収体122をしっかり包む形態が一般的であった。しかし、この形態を薄型吸収体等のSAP比率が高い吸収体に適用した場合、SAPの膨潤が妨げられたり、SAPの膨潤に伴う吸収体の膨張によって吸収体被包シートが破断されたりするおそれがある。
【0039】
そこで、本発明の吸収性物品においては、図1D及び図1Eに示すように吸収体被包シート50Aのうち、少なくとも吸収体22Aの両側面S3,S4を被包する部分を伸縮性材料からなる伸縮性シート58Aにより構成することとした。
【0040】
前記のような構造とすれば、図1Fに示すようにSAPの膨潤に伴って吸収体22Aが膨張しても伸縮性シート58Aが伸張し、膨張した吸収体22Aの形状に追従するように変形する。従って、1)SAPの膨潤が妨げられて、SAPの吸収性能を十分に発揮することができなくなる、2)SAPの膨潤に伴う吸収体22Aの膨張によって吸収体被包シート50Aが破断される、等の不具合を有効に防止することができる。
【0041】
本発明の吸収性物品は、SAPが湿潤し、膨潤する前の状態においては、図1Bに示すように吸収体被包シート50A(この場合は下シート54A。即ち伸縮性シート58A)が、吸収体22Aの両側面S3,S4と密着するように、吸収体22Aを押さえつけている。従って、吸収体22Aの型崩れを防止する効果がある。一方、尿等の排泄物によってSAPが湿潤して膨潤し、これに伴って吸収体が膨張すると、図1Fに示すように膨張した吸収体22Aによって伸縮性シート58Aが押し広げられ伸張する。即ち、膨張した吸収体22Aの形状に追従するように伸縮性シート58Aが変形するため、SAPの膨潤及びこれに伴う吸収体22Aの膨張が妨げられることがない。
【0042】
「伸縮性シート」とは、伸縮性材料から構成されたシート材である。例えばエラストマー繊維から形成されたエラスチック不織布、エラストマーからなるフィルム、ゴムからなるシート等を挙げることができる。前記エラストマーとしてはウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー、メタロセンPEエラストマー等を挙げることができる。前記ゴムとしては天然ゴム、合成ゴム、ウレタンゴム、スチレン−ブタジエンゴム等を挙げることができる。
【0043】
また、伸縮性シートを複数の材料から構成してもよい。例えば複数の不織布シートの層間に伸張状態のゴムを配置・固定し、伸縮性を付与した不織布シートであってもよい。
【0044】
本発明の吸収性物品においては、吸収体被包シートのうち、少なくとも吸収体の両側面を被包する部分が伸縮性材料からなる伸縮性シートにより構成されていればよい。このような構成を採る限り、前記吸収体の両側面を被包する部分以外の部分(例えば吸収体の表面や裏面を被包する部分)の構成材料は特に限定されない。これらの部分については非伸縮性シートで構成されていてもよいし、伸縮性シートで構成されていてもよい。
【0045】
本発明の吸収性物品は、図1D及び図1Eに示すように吸収体被包シート50Aのうち、少なくとも吸収体22Aの側面S3,S4を被包する部分が伸縮性不織布により構成されていることが好ましい。図示の形態では伸縮性シート58Aが伸縮性不織布により構成されている。本発明においては伸縮性シートとしてエラストマーフィルムやゴムシート等を用いることもできるが、これらの伸縮性シートとしては多数の孔を穿設し、液透過性を付与した穿孔シートを用いることが好ましい。このような穿孔シートは当該孔から粒子状のSAPが漏れるおそれがある。これに対し、伸縮性不織布はそれ自体、液透過性を有するので穿孔シートとする必要がなく、SAP漏れを有効に防止することができる。
【0046】
また、本発明の吸収性物品は、図1D及び図1Eに示すように吸収体被包シート50Aのうち、伸縮性不織布により構成された部分以外の部分については非伸縮性親水性シートにより構成されていることが好ましい。このようなシートであれば、吸収体に排泄物がスムーズに移行するため、吸収体による排泄物の吸収が妨げられることがない。
【0047】
非伸縮性親水性シートとしては、従来、吸収体被包シートとして用いられてきたティシュ等の親水性シートやトップシートとして用いられてきた親水性不織布等を用いることができる。
【0048】
また、吸収体の被包の形態も特に限定されない。例えば以下に示すような形態を挙げることができる。
【0049】
本発明の吸収性物品においては、図3A及び図3Bに示すように吸収体被包シート50Bが、吸収体22Aの表面を被包する上シート52Aと、吸収体22Aの側面S3,S4を被包する横シート56A,56Bと、吸収体22Aの裏面S2を被包する下シート54Aとからなり、上シート52A及び下シート54Bが非伸縮性の材料からなる非伸縮性シートにより構成され、横シート56A,56Bが伸縮性シート58Bにより構成されていることが好ましい。このような形態は、ティシュ等の非伸縮性親水性シートと比較して高価な伸縮性シートの使用量を最小限とすることができ、原料費を低廉化することができる。
【0050】
また、本発明の吸収性物品においては、図1D及び図1Eに示すように吸収体被包シート50Aが、吸収体22Aの表面を被包する上シート52Aと、吸収体22Aの側面S3,S4及び裏面S2を被包する下シート54Aとからなり、上シート52Aが非伸縮性の材料からなる非伸縮性シート60Aにより構成され、下シート54Aが伸縮性シート58Aにより構成されていることが好ましい。このような形態は吸収体被包シート50Aを構成するシートが2枚であり、図3A及び図3Bに示す形態に比して部材の点数及び接合箇所が少ない。従って、図3A及び図3Bに示す形態よりも簡便に製造することができる。
【0051】
更に、本発明の吸収性物品においては、図4A及び図4Bに示す形態のように、吸収体被包シート50Cの全部が、伸縮性シート58Cにより構成されていることが好ましい。このような形態は吸収体22Aの表面S1、裏面S2及び側面S3,S4の全てが伸縮性シート58Cにより被包されているため吸収体被包シート50Cが伸縮性に富む。従って、SAPの膨潤に伴って吸収体22Aが大きく膨張しても吸収体被包シート50Cが破断される可能性が一層少なくなる。
【0052】
図4A及び図4Bに示す形態は、吸収体被包シート50Cを1枚の伸縮性シート58Cで構成し、その1枚の伸縮性シート58Cで吸収体22Aを包むように構成した形態である。このような形態は図1D及び図1Eに示す形態に比して更に部材の点数及び接合箇所が少ない。従って、図1D及び図1Eに示す形態よりも一層簡便に製造することができる。
【0053】
なお、吸収体被包シートの全部が、伸縮性シートにより構成されている形態は、図4A及び図4Bに示す形態に限られず、図5A及び図5Bに示すような形態であってもよい。図5A及び図5Bに示す形態は、図1D及び図1Eに示す形態と同様に吸収体被包シート50Dを上シート52Bと下シート54Aの2枚で構成している。そして、下シート54Aのみならず上シート52Bも伸縮性シート58Dで構成した例である。
【0054】
前記の形態は、いずれも矩形状の吸収体を用いた形態である。しかし、本発明の構成は矩形状の吸収体を用いる場合のみならず、例えば図6A及び図6Bに示す形態のように砂時計型の吸収体22Bを用いる場合にも適用することができる。
【0055】
図6A及び図6Bに示す形態は砂時計型の吸収体22Bの長手方向中央部が幅方向中心側に向かって括れている。この部分においては、吸収体22Bの側面S3,S4に吸収体被包シート50Eが密着しておらず空間64A,64Bが形成されている。従って、股下部分の吸収体幅が狭く、着用者の身体にフィットし易い。更に、SAPが膨潤した際に、膨張した吸収体22Bを空間64A,64Bに収容し、その空間64A,64Bのスペースより大きく吸収体22Bが膨張した場合でも伸縮性シート58Aが伸張する。従って、吸収体被包シート50Eが破断される可能性を極力小さくすることができる。
【0056】
但し、図6A及び図6Bに示す形態と同様の形態において、空間64A,64Bを構成する吸収体被包シート50E同士を部分的に接合してもよい。
【0057】
例えば、図6Cの(a)図に示す形態は吸収体被包シート50Eに、吸収体22Bの側縁E1,E2から幅方向外側に向かう線状の接合部66A,66Bを形成し、吸収体22Bの括れ部分において吸収体被包シート50E同士を接合した形態である。また、図6Cの(b)図に示す形態は吸収体被包シート50Eに、吸収体22Bの側縁E1,E2に沿って前後方向に向かう線状の接合部68A,68Bを形成し、吸収体22Bの括れ部分において吸収体被包シート50E同士を接合した形態である。更に、図6Cの(c)図に示す形態は吸収体被包シート50Eに、吸収体22Bの側縁E1,E2に沿って略矩形状の接合部70A,70Bを間欠的に形成し、吸収体22Bの括れ部分において吸収体被包シート50E同士を接合した形態である。これらの形態においても図6A及び図6Bに示す形態と同様に膨張した吸収体22Bを空間64A,64Bに収容することができる。
【0058】
[3]その他:
本発明の吸収性物品の他の部分については、従来公知の吸収性物品と同様に構成すればよい。以下、図1A〜図1Cに示す吸収性物品1A(テープ型使い捨ておむつ)を例として説明する。
【0059】
図1A〜図1Cに示す吸収性物品1Aは、吸収体22Aがその表面側をトップシート18によって被覆されるとともに、その裏面側をバックシート20によって被覆されている。即ち、吸収体22Aがトップシート18とバックシート20の層間に配置されている。
【0060】
[3−1]トップシート:
トップシートは、吸収体の表面(吸収性物品の装着時に着用者の肌と対向する側の面)を被覆するように配置されるシート状部材である。着用者の尿等を透過させる必要から、その少なくとも一部(全部又は一部)が液透過性材料により構成される。
【0061】
前記液透過性材料としては、織布、不織布、多孔性フィルム等を挙げることができる。中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、脂肪族ポリアミド等の熱可塑性樹脂からなる不織布に親水化処理を施したものを用いることが好ましい。
【0062】
前記不織布としては、エアースルー(カード熱風)、カードエンボス等の製法によって製造された不織布を好適に用いることができる。前記親水化処理は、不織布の原綿に対して界面活性剤を塗布、スプレー、含浸等させることにより行うことができる。
【0063】
トップシートは「少なくとも一部」が液透過性材料によって構成されている。その位置については特に限定されないが、平面視した場合に股下部における吸収体の配置位置と重畳する部分が液透過性材料により構成されていることが好ましい。
【0064】
なお、本発明の吸収性物品は、着用者の肌と対向する側の面全てがトップシートによってカバーされている必要はない。例えば、テープ型使い捨ておむつにおいては、吸収性物品の幅方向中央部に液透過性材料からなるトップシートを配置し、吸収性物品の幅方向側縁部(サイドフラップ部分)には通気撥水性材料からなるサイドシートを配置する形態がよく用いられる。この際、前記通気撥水性材料としてはカードエンボス、スパンボンド等の製法により得られた不織布シート、特に防水性が高いSMS、SMMS等の不織布シートを用いることが好ましい。
【0065】
[3−2]バックシート:
バックシートは、吸収体の裏面(吸収性物品の装着時に着用者の肌と背向する側の面)を被覆するように配置されるシート状部材である。バックシートは、着用者の尿が吸収性物品外部に漏洩してしまうことを防止する必要から、液不透過性材料によって構成される。
【0066】
バックシートの配置位置については特に制限はない。吸収体に吸収された尿の漏れを防止するという観点から、少なくとも吸収体の配置位置をカバーするようにバックシートが配置されていることが好ましい。
【0067】
前記液不透過性材料としては、例えば、ポリエチレン等の樹脂からなる液不透過性フィルム等を挙げることができる。中でも、微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。この微多孔性ポリエチレンフィルムは0.1〜数μmの微細な孔が多数形成されたフィルムであり、液不透過性ではあるが透湿性を有する。従って、防漏性を確保しつつ吸収性物品内部の蒸れを防止することができる。
【0068】
テープ型使い捨ておむつにおいては、図1Cに示すようにバックシート20の外表面側にカバーシート24を貼り合わせる形態がよく用いられる。このカバーシートは、バックシートを補強し、バックシートの手触り(触感)を良好なものとするために用いられる。
【0069】
カバーシートを構成する材料としては、例えば、織布、不織布等を挙げることができる。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂からなる乾式不織布、湿式不織布を用いることが好ましい。
【0070】
[3−3]各種伸縮材:
本発明の吸収性物品には、ウエスト伸縮材に加えて、レッグ伸縮材等の伸縮材を配置することが好ましい。
【0071】
レッグ伸縮材は、レッグギャザーを形成するための伸縮材である。テープ型使い捨ておむつの場合、図1A〜図1Cに示すレッグ伸縮材40のように少なくとも股下部4に左右複数対の線状伸縮材を平行する直線状に配置する形態がよく用いられる。
【0072】
伸縮材としては、天然ゴムからなる平ゴムや合成ゴム(ウレタンゴム等)の弾性糸からなる糸ゴムの他、伸縮性ネット、伸縮性フィルム、伸縮性フォーム(ウレタンフォーム等)等を好適に用いることができる。
【0073】
伸縮材は、着用者に対して過度の締め付け力を作用させることなく、十分な伸縮力を作用させるため、伸張状態で固定する。伸縮材は、例えば、ホットメルト接着剤、その他の流動性の高い接着剤を用いた接着、ヒートシールをはじめとする熱や超音波等による溶着によって固定することができる。
【0074】
「伸張状態で固定」とは、伸縮材が伸張率120%以上に伸張された状態で、被固定体となるシート材に接合、固着等されていることを意味する。中でも、伸張率が200〜400%であることが好ましく、250〜350%であることが更に好ましい。なお、「伸張率」とは、非伸張状態の伸縮材の長さ(原寸)に対する伸張状態の伸縮材の長さの百分率を示すものとする。
【0075】
テープ型使い捨ておむつの場合、図1A〜図1Cに示すようにトップシート18(又はサイドシート19)とバックシート20(又はカバーシート24)の層間に、伸張状態の線状伸縮材を挟み込むように固定する等の方法でレッグ伸縮材40を配置することができる。
【0076】
また、図1A〜図1Cに示すようにトップシート18(又はサイドシート19)とバックシート20(又はカバーシート24)の層間に、伸張状態の面状伸縮材(伸縮性フォーム等)を挟み込むように固定する等の方法でウエスト伸縮材42を配置することができる。
【0077】
[3−4]立体ギャザー:
立体ギャザーは、従来の吸収性物品に準じて構成することができる。図1A〜図1Cに示すように、吸収体22Aの両側に配置された左右一対の立体ギャザー26(26a,26b)を備えていることが好ましい。
【0078】
テープ型使い捨ておむつの場合、図1A〜図1Cに示すように撥水性シート32からなるサイドシート19の一部によって立体ギャザー26を構成する形態が多く用いられる。
【0079】
この場合、撥水性シート32の層間に伸張状態の立体ギャザー伸縮材36を挟み込んで固定すればよい。撥水性シートとしては、カードエンボス、スパンボンド等の製法により得られた不織布シート、特に防水性が高いSMS、SMMS等の不織布シートを用いることが好ましい。
【0080】
立体ギャザーの種類としては、内倒しギャザー、外倒しギャザー、高さ方向の一部に、曲げ部や折り返し部を形成したC折りギャザーやZ折りギャザー等を挙げることができる。これらの中では、防漏性が高い点において、例えば、図5B及び図5Dに示す立体ギャザー26A,26Bのような内倒しギャザーが好ましい。
【0081】
[3−5]止着テープ:
テープ型使い捨ておむつの場合、図1A〜図1Cに示すように後身頃6の左右の各側縁6a,6bから延出するように配置された、前身頃2と後身頃6とを固定するための止着テープ11を備えたものが好適に用いられる。
【0082】
止着テープのファスニング部材は特に限定されない。但し、止着力が高く、複数回の脱着を行っても止着力が低下し難いメカニカルファスナー(面状ファスナー)を用いることが好ましい。図1A〜図1Cに示す吸収性物品1Aは、ファスニング部材46として止着テープ11の先端近傍にメカニカルファスナーのフック材47を付設している。一方、前身頃2にはメカニカルファスナーのループ材48からなるフロントパッチ13を付設している。
【0083】
止着テープの数は特に限定されず、着用者の体型(具体的には、ウエスト周り、脚周り等)の寸法に合わせて、適当な数の止着テープを付設すればよい。一般的には、乳幼児用の使い捨ておむつであれば一対(左右1個ずつ)、成人用の使い捨ておむつであれば二対(左右2個ずつ)が付設される。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の吸収性物品は、乳幼児用又は介護を必要とする高齢者や障害者等の成人用の吸収性物品、より具体的にはパンツ型使い捨ておむつ、テープ型使い捨ておむつ、尿パッドとして利用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1A:吸収性物品、2:前身頃、4:股下部、6:後身頃、6a,6b:側縁、11:止着テープ、13:フロントパッチ、18:トップシート、19:サイドシート、20:バックシート、22A,22B:吸収体、24:カバーシート、26,26a,26b:立体ギャザー、32:撥水性シート、36:立体ギャザー伸縮材、40:レッグ伸縮材、42:ウエスト伸縮材、46:ファスニング部材、47:フック材、48:ループ材、50A,50B,50C,50D,50E::吸収体被包シート、52A,52B:上シート、54A,54B:下シート、56A,56B:横シート、58A,58B,58C,58D:伸縮性シート、60A:非伸縮性シート、62:接合部、64A,64B:空間、66A,66B,68A,68B,70A,70B:接合部、122:吸収体、150:ティシュ、152:上ティシュ、154:下ティシュ、S1:表面、S2:裏面、S3,S4:側面、S5,S6:端面、E1,E2:側縁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラッフパルプと高吸水性ポリマーを含む吸収体と、前記吸収体の表面、両側面及び裏面を被包する吸収体被包シートを備え、
前記吸収体被包シートのうち、少なくとも前記吸収体の両側面を被包する部分が伸縮性材料からなる伸縮性シートにより構成されている吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収体被包シートのうち、少なくとも前記吸収体の両側面を被包する部分が伸縮性不織布により構成されている請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収体被包シートのうち、前記伸縮性不織布により構成された部分以外の部分については非伸縮性親水性シートにより構成されている請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体被包シートが、前記吸収体の表面を被包する上シートと、前記吸収体の両側面及び裏面を被包する下シートとからなり、
前記上シートが非伸縮性の材料からなる非伸縮性シートにより構成され、
前記下シートが前記伸縮性シートにより構成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体被包シートの全部が、前記伸縮性シートにより構成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収体被包シートが、前記吸収体の表面を被包する上シートと、前記吸収体の両側面を被包する横シートと、前記吸収体の裏面を被包する下シートとからなり、
前記上シート及び前記下シートが非伸縮性の材料からなる非伸縮性シートにより構成され、
前記横シートが前記伸縮性シートにより構成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸収性物品。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公開番号】特開2012−152506(P2012−152506A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16548(P2011−16548)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】