説明

吸収性物品

【課題】折り癖がついていても長手方向のスリットによる股下のフィット性向上効果が良好に発現して、優れたフィット性や漏れ防止性が得られる吸収性物品を提供すること。
【解決手段】液透過性の表面シート2、液不透過性又は液難透過性の裏面シート3、及び両シート間に位置する液保持性の吸収性コア40を備え、背側部Bと腹側部Aとその間に位置する股下部Cとを有する吸収性物品1であって、長手方向に2つ折り又は3つ折りにされており、吸収性コア40には、複数本の貫通又は非貫通のスリット70が、それぞれ長手方向(Y方向)に延びて形成されており、スリット70は、少なくとも股下部Cにおいて互いに連設されておらず、且つ、前記2つ折り又は3つ折りの折り位置10と異なる位置にスリット幅の広い幅広部71A〜71Cを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸収性物品、特に使い捨ておむつにおいて、特許文献1のように、吸収性コアに長手方向のスリットを設けて吸収性コアの両側部を折り曲げ易くすることにより、股下のフィット性を高めて漏れ防止性を高める技術が知られている。
【0003】
また、使い捨ておむつの吸収性コアに貫通又は非貫通のスリットを設ける技術としては、吸液性コアを、おむつ長手方向に延びる仮想線に沿って分割すると共に該幅方向の仮想線に沿っても分割する(吸液性コアに、長手方向のスリットと幅方向のスリットを両方設ける)ものが提案されている(特許文献2)。特許文献2のおむつは、股下部において、長手方向の複数のスリットと交差するように幅方向のスリットが設けられている。
また、使い捨ておむつのセルロース繊維製パットの表面に、パット縦軸上にある2つの貯蔵部を結ぶ連結チャネルを備えたものも提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許平3−123553号公報
【特許文献2】特開平11−216161号公報
【特許文献3】特開昭59−207150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、おむつ等の吸収性物品は、流通(市販等)させる際には、包装袋に、長手方向に2つ折り又は3つ折りされた状態で圧縮充填されていることが多いため、消費者が包装袋から取り出したときには、2つ折りや3つ折りの折り癖が付いていることが多い。そのため、吸収性コアに長手方向のスリットを設けても、当該スリットを設けたことによる股下のフィット性向上効果が十分に発揮されない場合がある。
【0006】
また、特許文献2のおむつは、股下部において、長手方向の複数のスリットと幅方向のスリットとが交差している。そのため、そのおむつは、装着時に、当該幅方向のスリットに沿って折れ曲がり、それにより、当該幅方向のスリットと交差する箇所においては、長手方向のスリットに沿って折れ曲がりにくくなってしまう。即ち、特許文献2のおむつでは、長手方向のスリットを設けたことによるフィット性向上効果が、幅方向のスリットによって阻害されてしまう。
また、特許文献3のおむつでは、連結チャネルはパット幅方向中央の1本のみであるため、おむつ装着時にパットが幅方向に2つに折れ曲がってしまい、股下のフィット性が低下する。
【0007】
従って、本発明の課題は、折り癖がついていても長手方向のスリットによる股下のフィット性向上効果が良好に発現して、優れたフィット性や漏れ防止性が得られる吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、液透過性の表面シート、液不透過性又は液難透過性の裏面シート、及び両シート間に位置する液保持性の吸収性コアを備え、背側部と腹側部とその間に位置する股下部とを有する吸収性物品であって、長手方向に2つ折り又は3つ折りにされており、前記吸収性コアには、複数本の貫通又は非貫通のスリットが、それぞれ物品の長手方向に延びて形成されており、前記スリットは、少なくとも前記股下部において互いに連設されておらず、且つ、前記2つ折り又は3つ折りの折り位置と異なる位置にスリット幅の広い幅広部を有する、吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吸収性物品によれば、折り癖がついていても長手方向のスリットによる股下のフィット性向上効果が良好に発現して、優れたフィット性や漏れ防止性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である使い捨ておむつを示す平面図である。
【図2】図2は、図1に示すおむつにおけるスリット及びその幅広部の形成位置や寸法を説明するための模式図である。
【図3】図3(a)は、図1のI−I線断面図、図3(b)は図1のII−II線断面図である。
【図4】図4は、図1のおむつが二つ折りされた状態を示す斜視図である。
【図5】図5(a)は、図1のおむつの装着状態を示す斜視図であり、図5(b)は、従来のおむつの装着状態を示す斜視図である。
【図6】図6(a)は、図1のおむつの装着状態における長手方向の断面を示す概略断面図であり、図6(b)は従来のおむつの装着状態における長手方向の断面を示す概略断面図である。
【図7】図7(a)は、図1のおむつの装着状態における幅方向の断面を示す概略断面図であり、図7(b)は、従来のおむつの装着状態における幅方向の断面を示す概略断面図である。
【図8】図8(a)(b)は、第2実施形態のおむつを示す図であり、図8(a)は、図3(a)相当図、図8(b)は、図3(b)相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
本発明の一実施形態としての使い捨ておむつ1(以下、単におむつ1ともいう)は、図4に示すように、長手方向中心線CL2の位置で、長手方向に2つ折りにされている。また、おむつ1は、図1に示すように、液透過性の表面シート2、液不透過性又は難透過性の裏面シート3、及び両シート間に位置する液保持性の吸収性コア40を備え、また、その長手方向に、背側部Bと腹側部Aとその間に位置する股下部Cを有する。吸収性コア40には、複数本の貫通又は非貫通のスリット70が、それぞれおむつ1の長手方向に延びて形成されている。スリット70,70は、少なくとも股下部Cにおいて互いに連設されておらず、且つ、前記2つ折りの折り位置10と異なる位置にスリット幅の広い幅広部71を有する。
【0012】
本実施形態において、おむつ1の長手方向とは、おむつ着用時に、着用者の前後方向と一致する方向であり、図1中、Y方向である。また、おむつ1の幅方向とは、おむつを、図1に示すように平面状に広げた状態において、おむつ1の長手方向と直交する方向であり、図1中、X方向である。
また、幅方向中心線CL1は、Y方向に延び且つおむつ1を幅方向に二等分(おむつ1のX方向長さを二等分)する線であり、長手方向中心線CL2は、X方向に延び且つおむつ1を長手方向に二等分する線である。
また、2つ折りの折り位置は、2つ折りにされたおむつが折り曲げられている位置であり、本実施形態では、折り位置10は長手方向中心線CL2と同位置にある。3つ折りの場合の折り位置は、おむつの長手方向に離間した2箇所に存在し、通常、一方は、長手方向中心線CL2より腹側部側に位置し、他方は、長手方向中心線CL2より背側部側に位置する。
【0013】
腹側部Aは、着用時に着用者の腹側に配される部分であり、背側部Bは、着用者の背側に配される部分であり、股下部Cは、長手方向(Y方向)における、腹側部Aと背側部Bとの間に位置する部分である。
本実施形態では、腹側部A、股下部C、背側部Bは、それぞれおむつ1を長手方向(Y方向)に三等分した各領域である。
【0014】
本実施形態のおむつ1は、図1に示すように、展開型の使い捨ておむつであり、背側部Bの両側縁部にファスニングテープ5,5が設けられ、腹側部Aの外表面にファスニングテープ5,5を止着するランディングゾーン53が設けられている。
また、おむつ1は、股下部Cの両側縁が円弧状に形成されており、全体として、長手方向中央部が括れた砂時計状の形状を有している。
裏面シート3は、おむつの外形形状に一致する砂時計状の外形を有している。表面シート2は、裏面シート3より幅が狭く、裏面シート3の幅方向中央部上に配されている。表面シート2と裏面シート3との間には、おむつ1の長手方向と同方向(Y方向)に長い形状の吸収体4が介在している。吸収体4は、股下部Cにおける両側縁が略円弧状をしており全体としては長手方向中央部が括れた砂時計状の平面視形状をしている。表面シート2及び裏面シート3は、それぞれ、吸収体4の両側縁及び両端縁から外方に延出し、それらの延出部において互いに接合されている。
【0015】
吸収体4は、解繊パルプ等の繊維材料からなる繊維集合体又はこれに吸水性ポリマーの粒子等の機能性材料を保持させてなる吸収性コア40と、該吸収性コア40を被覆するコアラップシートからなる。コアラップシートとしては、各種公知のものを用いることができ、例えばティッシュペーパのような薄紙や透水性の不織布等が好ましく用いられる。吸収性コア40は、吸収体4と略同じ平面視形状をしている。吸収体4の両側縁は、吸収性コア40の両側縁41,41と略同位置である。コアラップシートは、吸収性コア40の長手方向の両端縁42a,42bと同位置、又は該両端縁42a,42bよりY方向に延出した位置にY方向の端縁を有している。
【0016】
また、おむつ1の股下部Cの両側部には、レッグ部弾性部材9が伸長状態で配されている。レッグ部弾性部材9は、おむつ1の長手方向両側にそれぞれ複数本配されている。レッグ部弾性部材9は、裏面シート3と立体ギャザー6,6形成用のシート材62との間に接着剤を介して固定された状態で、吸収体4の側縁41,41の位置よりもX方向外方において吸収体4の側縁41,41に沿って配設されている。レッグ部弾性部材9は、着用者の脚廻りに配されるレッグ部に位置し、当該レッグ部にレッグギャザーを形成する。
【0017】
また、図1及び図3に示すように、おむつ1における長手方向の両側には、一対の立体ギャザー6,6が形成されている。各立体ギャザー6は、弾性部材61を有する立体ギャザー形成用のシート材62を、表面シート2の両側縁の外方から内方に亘るようにおむつ長手方向の両側部に配設固定して形成されている。立体ギャザー6は、吸収性コア40の側縁近傍に、Y方向に延びる直線状の固定端94を有し、幅方向中心線CL1側に自由端63を有している。裏面シート3の長手方向の両側部は、表面シート2の両側縁から幅方向外方に延出しており、その延出部分に、立体ギャザー形成用のシート材62が積層接着されている。シート材62には、自由端63と略平行に複数本の糸状の弾性部材61が配設されており、おむつ着用時に、弾性部材61の収縮により立体ギャザー6が着用者の肌に向かって起立する。
【0018】
本実施形態のおむつ1においては、吸収性コア40に、長手方向(Y方向)に延びるスリット70が2本形成されている。2本のスリット70,70は、Y方向の長さが同じであり、いずれもY方向に平行である。2本のスリット70,70は、X方向に間隔を開けて形成され、幅方向中心線CL1に対して対称な形状をしている。
なお、図3に示すように、おむつ1における吸収性コア40は、スリット70以外の部分において略均一な厚みを有している。また、スリット70の、後述の幅広部71A〜71C以外の部分におけるスリット幅R1(X方向の寸法、図2参照)は、Y方向に沿って略一定である。
【0019】
スリット70における、幅広部71A〜71C以外の部分のスリット幅R1は、スリットによる幅方向の良好な折れ曲がり〔図7(a)参照〕を実現する観点から1〜10mmであることが好ましく、より好ましくは1〜5mmである。また、スリット70,70のX方向の離間距離R2(中心間距離、図2参照)は、長手方向中心線CL2上における吸収性コア40の幅(側縁41,41間の距離)の10〜70%であることが好ましく、より好ましくは20〜50%である。また、同離間距離R2(中心間距離、図2参照)は、吸収性コア40の全幅(X方向の最大幅、図1に示す例では、吸収性コア40の長手方向の両端部における側縁41,41間距離)の10〜50%であることが好ましく、より好ましくは20〜30%である。また、幼児用おむつの場合、前記離間距離R2は、10〜50mm、特に20〜30mmであることが好ましい。
【0020】
吸収性コア40は、腹側部A側(以下、腹側とも記載する)の端縁42aからスリット70の腹側端部までのY方向距離R3(図2参照)が、吸収性コア40のY方向の全長の10〜40%、特に20〜30%であることが好ましい。前記距離R3を上記数値範囲内とすることで、スリット70は、腹側において、着用者と密着する領域まで延在し易くなる。
また、吸収性コア40は、背側部B側(以下、背側とも記載する)の端縁42bからスリット70の背側端部までのY方向距離R4(図2参照)が、吸収性コア40のY方向の全長の15〜45%、特に30〜40%であることが好ましい。前記距離R4を上記数値範囲内とすることで、スリット70は、背側において、着用者と密着する領域まで延在し易くなる。
なお、吸収性コア40のY方向の全長は、幼児用おむつにおいては、200〜500mm、特に300〜450mmであることが好ましい。また、スリット70の長さR5は、吸収性コア40の全長の30〜60%であることが好ましい。
【0021】
スリット70が、腹側及び/又は背側において、着用者と密着する領域まで延在することにより、スリット70によるフィット性向上効果を、腹側及び/又は背側の着用者と密着する領域に及ぼすことができ、排せつ物を、股下部Cに溜らせずにY方向に拡散させて、吸収性コア40のY方向全体の吸収性能を充分に発揮させることができる。
【0022】
図1に示す例においては、Y方向においてスリット70が、長手方向中心線CL2より背側に位置する部分よりも、長手方向中心線CL2より腹側に位置する部分が長く形成されており、スリット70は、腹側のみにおいて着用者と密着する領域まで延在している。
【0023】
スリット70は、その長手方向の一部に、スリット幅の広い幅広部71(71A〜71C)を有する。幅広部71は、スリット70の長手方向の所定箇所において、スリット70のスリット幅(X方向幅)を広げた部分である。
本実施形態のおむつ1においては、図2に示すように、スリット70の長手方向の3箇所に、左右に突出する突出部71aを設けて、幅広部71(71A〜71C)を形成してある。より具体的には、スリット70のY方向の3箇所のそれぞれにおいて、一対の突出部71a,71aが、X方向両側に同じ突出幅で突出しており、突出部の先端は半円状に形成されている。
2本のスリット70,70の幅広部同士はY方向における同位置に形成されており、そのため、幅方向中心線CL1を挟んで相対する2つの幅広部、又は該幅広部を形成する4つの突出部は、X方向に延びる同一直線上に位置している。
【0024】
幅広部71のY方向の長さR6(突出部71aの基端部のY方向幅,図2参照)は、2〜15mmであることが好ましく、より好ましくは、2〜7mmである。幅広部71の前記長さR6が2mm以上であることは、幅広部71のY方向の長さを確保して、吸収性コア40や吸収体4の長手方向の良好な折れ曲がりや股下における吸収性コア40や吸収体4の幅方向の良好な折れ曲がりを実現する観点から好ましく、15mm以下、特に7mm以下であることは、幅広部71のY方向幅を抑制して吸収性コア40の性能を低下させない観点から好ましい。
【0025】
おむつ1における2本のスリット70,70は、少なくとも股下部Cにおいて、互いに連設されておらず、独立して存在している。より具体的には、スリット70,70は、スリット70のY方向の全長において互いに連設されていない。即ち、一方のスリット70の幅広部と他方のスリット70の幅広部とが、吸収性コア40の幅方向中央部において繋がっておらず、スリット70,70間に位置する吸収性コア40の幅方向中央部44がスリット70の全長に沿ってY方向に連続している。
【0026】
各幅広部71A〜71CのX方向の長さR7(図2参照)は、長手方向中心線CL2上における吸収性コア40の幅(側縁41,41間の距離)の5〜45%であることが好ましく、より好ましくは5〜20%である。
また、幅広部71A〜71CのX方向の長さR7(図2参照)は、幅広部71A〜71C以外の部分のスリット幅R1に対する比(R7/R1)が、1.2〜5、特に1.5〜2.5であることが好ましい。
また、幅広部71A〜71CのX方向の長さR7(図2参照)は、幅広部71のそれぞれが位置するY方向の部位における吸収性コア40の幅(側縁41,41間の距離)の2〜45%であることが好ましく、より好ましくは2〜30%である。
【0027】
また、隣り合うスリット70,70の幅広部71,71同士の離間距離R12(図2参照)は、スリット70,70による吸収性コア40又は吸収体4の幅方向の折れ曲がり性を維持する観点等から、10〜50mm、特に15〜30mmであることが好ましい。また、同離間距離R12(図2参照)は、幅広部71のそれぞれが位置するY方向の部位における吸収性コア40の幅(側縁41,41間の距離)の10〜70%であることが好ましく、より好ましくは20〜50%である。
【0028】
上述したように、スリット70は、2つ折りの折り位置10と異なる位置(換言すれば、おむつ1を2つ折りしている折れ線と重ならない位置)に、幅広部71を有する。
より具体的には、本実施形態のおむつ1は、幅広部71として、折り位置10より腹側部分に位置する2つの幅広部71B,71Cと、折り位置10より背側部分に位置する1つの幅広部71Aとを有している。幅広部71Aは、折り位置10の背側近傍に位置し、幅広部71Bは折り位置10の腹側近傍に位置する。幅広部71Aと幅広部71Bとは、折り位置10に対してY方向反対側にあることが、幅広部71A,71Bにより折り位置10における曲げを緩和しやすく(曲げ角度を広げやすく)する観点から好ましい。図1及び図2に示すように、幅広部71A及び幅広部71Bはいずれも股下部Cに位置する。また、幅広部71Bよりも腹側に位置する幅広部71Cは、腹側部A及び股下部Cの境界の近傍に位置する。
【0029】
着用者の背側におむつ1を良好に沿わせる点から折り位置10より背側に位置する幅広部71Aと折り位置10との距離R8(図2参照)は吸収性コア40のY方向全長の2〜20%であることが好ましく、より好ましくは5〜10%である。
着用者の腹側におむつ1を良好に沿わせる点から折り位置10より腹側に位置する幅広部71Bと折り位置10との距離R9(図2参照)は吸収性コア40のY方向全長の2〜20%であることが好ましく、より好ましくは5〜10%である。また、幅広部71Cと折り位置10との距離R10(図2参照)は、吸収性コア40のY方向の全長の10〜35%であることが好ましく、より好ましくは15〜25%である。
【0030】
図3に示すように、本実施形態におけるスリット70は、裏面シート3側のみに開口した非貫通のスリット(凹溝)であり、吸収性コア40は、スリット70の表面シート2側に形成された薄肉部80を有する。
このように、本発明における「スリット」は、吸収性コア40を貫通するものに限定されず、本実施形態のような細長い凹溝状のものも含まれる。本実施形態における非貫通のスリット70は、例えば、底面に細長形状の突起が設けられた型に原料(繊維材料、高吸収性ポリマーの粒子等)を堆積させることにより形成され、当該突起上に堆積した部分が薄肉部80となる。また当該突起が一部幅広な部分を有することにより、スリット70が幅広部71を有するものとなる。
スリット70による折れ曲がりを確実にする観点から、薄肉部80の厚みR11(図3参照)は吸収性コア40の厚みの5〜50%であることが好ましい。なお、吸収性コア40の厚みは2〜10mmであることが好ましい。
【0031】
本実施形態のおむつ1における幅広部71の断面視形状は、図3(b)に示す幅広部71Bの断面視形状のように、表面シート2側に凸の凸曲線からなる椀状をしている。これにより、幅広部71の深さは、突出部71a,71aの基端から先端に向かうにつれて徐々に浅くなるように形成されている。また、突出部71aの基端における幅広部71の深さは、スリット70の幅方向中央部分の深さ(幅広部以外の部分のスリットの深さに同じ)よりも若干浅く形成されている。これに代えて、幅広部71として、突出部71aの基端における深さが、スリット70の幅方向中央部分の深さ(幅広部以外の部分のスリットの深さに同じ)と同じ深さの幅広部を設けても良いし、深さが、幅広部71の全域において均一な幅広部を設けても良い。
なお、本実施形態のおむつ1においては、裏面シート3及び前述したコアラップシート(図示せず)が、スリット70内面形状に沿い、スリット70内部に入りこむように窪んでいる。
【0032】
おむつ1は、市販等される際の包装状態においては、図4に示すように、裏面シート3を外側にして、折り位置10において折り曲げられ、長手方向に二つ折りにされている。
おむつ1は、その折り畳み状態で包装袋等に圧縮充填されており、使用時には、吸収性コア40における折り位置10及びその近傍は、長手方向における剛性が低くなっている。おむつ1における、吸収性コア40が配されている部分のおむつ長手方向(Y方向)の剛性は、スリット70が形成されていない部分の剛性をG1、スリット70の幅広部71が形成されている部分の剛性をG2、スリット70の幅広部71以外の部分が形成されている部分の剛性をG3とすると、G2<G3<G1であることが好ましい。吸収体4や吸収性コア40自体の剛性も同様である。
【0033】
具体的には、前記剛性G1〜G3は、後述する測定方法により測定した剛性を示す数値が以下の範囲となることが好ましい。G1は100〜150gであることが好ましい。G3は80〜130gであることが好ましく、G1との差が10g以上であることが好ましい。G2は60〜120gであることが好ましく、更に好ましくは60〜100gである。G2とG3との差は、10〜70gであることが好ましい。G2とG1との差は20g以上であることが好ましく、更に好ましくは30g以上である。G2とG1との差が30g以上であることは、幅広部71の効果を確実にしておむつ1を着用者に沿わせやすくする観点から好ましい。また、G3とG2との差が70g以下であることは、スリット70に沿う折れ曲がりを幅広部により邪魔しない観点から好ましい。
【0034】
<剛性の測定方法>
<試験片の準備>
折り畳み状態で包装袋に圧縮充填されていたおむつを、該包装袋から取り出し、そのおむつからギャザーを取り除き、吸収体幅の測定サンプルを作成した。
【0035】
〈剛性の計測方法〉
ハンドルオ・メーターを用いて吸収体の柔軟性を評価した。ハンドルオ・メーターによる柔軟性の評価は、日本工業規格「JIS L―1096(一般織物試験方法)」に準じて剛性を測定することにより行った。ハンドルオ・メーターの測定値は、その数値が小さい程、前述した曲げ変形が起こり易く、装着しやすさやフィット性が良好であることを示す。ハンドルオ・メーターによる測定方法は次の通りである。幅20mmの溝を刻んだ支持台上に、測定サンプルを、その長手方向を前記溝と直交する方向に向けて配置する。測定サンプルの長手方向は、おむつの長手方向と同方向である。また、測定サンプルは、剛性を測定したい部位が、溝の幅方向中央部(一方の縁と他方の縁との間の距離を2等分する位置)に位置するように配置する。また、その溝の幅方向中央部に厚み2mmのブレード(溝と同方向の長さは吸収体の幅以上)を位置させ、該ブレードを下降させて、測定サンプルを前記溝内に押し込む。ブレードが一定距離下降する際にブレードに加わる力の最大値をロードセルにて測定する。そして、3点の平均値を測定値とする。ハンドルオ・メーターとしては、例えば、大栄科学精機製作所製、風合い試験機(ハンドルオ・メーター法)、HOM−3型を好ましく用いることができる。
【0036】
本実施形態のおむつ1では、吸収体4(吸収性コア40)の長手方向において、幅広部71を有する部分が、スリット70の幅広部71がない部分に比べて剛性が低く長手方向に折り曲げやすくなっている。図5(a)に示すようにおむつ1の装着時には、幅広部71A,71A、幅広部71B,71B、及び幅広部71C,71Cの各位置において、おむつ1が長手方向に折り曲がりやすくなる。これにより、図6(a)に示すように、おむつ1の股下部Cは、着用者Mの外面に沿って湾曲し、折り位置10の近傍が上方に(着用者M側に)持ち上がり、折り位置10における屈曲角度が大きくなる。その状態で図5(a)及び図7(a)に示すように、着用者Mの両脚の締め付けにより、おむつ1の股下部Cに幅方向の力が加わると、スリット70,70に沿って吸収性コア40が幅方向に容易に折れ曲がり、吸収性コア40の両側部45,45が着用者の脚周りに密着しやすくなる。また、特に図5(a)及び図7(a)に示すように、吸収性コア40の幅方向中央部44が着用者M側に突出するように吸収性コア40が折れ曲がる場合は、その中央部44が着用者Mに密着する。このため、実施形態のおむつ1は、着用者の股下におけるフィット性が向上して漏れ防止性に優れたものとなる。
【0037】
一方、図5(b)に示すように、従来のおむつ100は、スリット70に幅広部を設けていない点で本実施形態のおむつ1と異なる。このため、図5(b)及び図6(b)に示すように、おむつ100の股下部Cは、装着されても折り位置10の屈曲角度があまり緩和(増大)されず、おむつ100の股下部Cは着用者Mの外面に十分に沿っていない。図5(b)及び図7(b)に示すように、この状態で幅広部Cが両脚で締め付けられると、折り位置10の折れ目が邪魔をして、スリット70,70に沿って吸収性コア40が折り曲がりにくく、スリット70,70による股下のフィット性効果が十分に得られない。
【0038】
このように、本実施形態の使い捨ておむつ1によれば、折り癖がついていても長手方向のスリット70,70による股下のフィット性向上効果が良好に発現して、優れたフィット性や漏れ防止性が得られる。
特に、おむつ1では、股下部Cにおいてスリット70,70が互いに連設されていないため、スリット70,70に沿う折れ曲がりが連設部分によって阻害されることはない。
【0039】
また、スリット70,70は、裏面シート3側のみに開口した非貫通のスリットであるため、おむつ1はスリット70に沿って折り曲がる際に、裏面シート3側を内側にするように曲がりやすい。このため、図5(a)及び図7(a)に示すように、おむつ1装着時、吸収性コア40の中央部44が着用者M側に近づくように盛り上がりやすく、股下のフィット性をより向上することができる。
【0040】
またおむつ1では、幅広部71B及び幅広部71Cが折り位置10より腹側部A側に設けられている。一般的にテープ止め式のおむつは、その腹側部側を寝ている状態の着用者に装着する際に、立体ギャザー弾性部材及びレッグ部弾性部材の収縮より、腹側部側が広がりにくく、おむつを着用者に当てにくい。しかし、本実施形態のおむつ1では、腹側部A側に幅広部からなる低剛性領域を設けることにより腹側部A側が広げやすく、着用者の腹部に沿わせて装着しやすくなる。
【0041】
更に、おむつ1では、スリット70,70のそれぞれが、2つ折りの折り位置10より腹側部側に複数の幅広部71B,71Cを有しているため、テープ止め式のおむつ1を寝ている状態の着用者Mに装着するときに、腹側部A側を更に広げやすく、着用者Mの腹部に沿わせて装着しやすい。
【0042】
また、幅広部71が折り位置10の背側部B側に比べて腹側部A側に多く存在しているため、テープ止め式のおむつ1を寝ている状態の着用者Mに装着するときに、腹側部A側を更に広げやすく、着用者Mの腹部に沿わせて装着しやすい。
【0043】
なお、本実施形態のおむつ1の形成材料については、表面シート2、裏面シート3、立体ギャザー6形成用の弾性部材61やレッグ部弾性部材9、吸収性コア40等について、使い捨ておむつ生理用ナプキン等の吸収性物品において従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。
【0044】
次に、本発明の第2実施形態である使い捨ておむつ1’について説明する。第2実施形態については、第1実施形態と異なる点について主として説明し、同様の点については、同一の符号を付して説明を省略する。特に言及しない点については、上述した使い捨ておむつ1に関する説明が適宜適用される。
【0045】
図8(a)、(b)に示すように、第2実施形態のおむつ1’においては、スリット70’が、表面シート2側及び裏面シート3側の両方に開口し、吸収性コア40’を厚み方向に貫通している。また、図8(b)に示すように、スリット70’の幅広部71’(図8には幅広部71B’を示す)は、平面方向の全域において吸収性コア40’を厚み方向に貫通している。なお、図8(b)では、おむつ1における幅広部71Bと同じ位置に形成された幅広部71B’の断面形状のみ示すが、おむつ1における幅広部71A,71Cと同位置に形成された他の幅広部71A’,71C’も同様である。すなわち、スリット70’は幅広部71B’も含めて、裏面シート3側に開口する開口部の形状と、表面シート2側に開口する開口部の形状が略同一である。
なお、第2実施形態では、吸収性コア40’を覆うコアラップシート、表面シート2及び裏面シート3は、スリット70’の開口を部分においてもほぼ平面状であり、スリット70’の内部に入り込むように窪んではいない。
【0046】
第2実施形態のおむつ1’は、第1実施形態のおむつ1に比べて、吸収性コア40が、その幅方向中央部44が着用者側へ盛り上がるように折れ曲がり易くする点では若干劣るものの、第1実施形態のおむつ1と略同様の効果が得られる。
【0047】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることなく、適宜変更可能である。
例えば、幅広部の平面視形状は、複数のスリットが互いに連設されていなければ、図2に示すものに限られない。
【0048】
また、上述したおむつ1においては、三つの幅広部71A〜71Cが、同一の形状をしていたが、その必要はない。例えば、おむつを大きく折り曲げたい位置にある幅広部は、X方向長さを大きくし、小さく折り曲げたい位置にある幅広部はX方向長さを小さくしてもよい。
【0049】
また、上述した吸収性コア40,40’におけるスリットは、いずれも2本であったが、本発明における吸収性コアは、Y方向に延びる貫通又は非貫通のスリットを3本以上有していてもよい。例えば、3本のスリットとした場合は、中央の一本を除く両側2本のスリットにより、吸収性コアを幅方向中央部と両側部とに区画し、幅方向中央部に中央のスリットを形成するようにしてもよい。3本のスリットを非貫通のスリットとする場合、例えば、両側2本のスリットは裏面シート側に開口し、中央のスリットは表面シート側に開口するスリットとし、装着時に、股下部Cにおける吸収性コア40や吸収体4が、幅方向の断面形状がM字状になるように曲がりやすくしてもよい。
【0050】
また、上述したおむつ1等においては、幅広部がスリットの3箇所に設けられていたが、幅広部を設ける箇所は、スリットの長手方向の1又は2箇所でもよいし、4箇所以上でもよい。なお、実施形態のようにおむつが二つ折りにされる場合は、折り位置の腹側近傍及び背側近傍に1箇所ずつ形成されていることが、折り位置の折れを良好に緩和できる点から好ましい。
【0051】
また、上述したおむつ1は、二つ折りされていたが、三つ折りにされていてもよい。この場合、幅広部は、腹側部側の折り位置と背側部側の折り位置との間の1箇所のみに形成されていても良いし、2箇所の折り位置の長手方向外側に設けられているのでもよい。また、2箇所以上に設けても当然構わない。例えば、2箇所の折り位置それぞれの前後近傍に設けても良い。
【0052】
また、本発明の吸収性物品は、幼児用や成人用の展開式(テープ止め式)の使い捨ておむつの他、幼児用や成人用のパンツ型の使い捨ておむつや、ショーツ型の生理用ナプキン等であってもよい。
【0053】
上述した一の実施形態における説明省略部分及び一の実施形態のみが有する要件は、それぞれ他の実施形態に適宜適用することができ、また、各実施形態における要件は、適宜、実施形態間で相互に置換可能である。
【符号の説明】
【0054】
1,1A 使い捨ておむつ
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
40,40’ 吸収性コア
10 折り曲げ部
70,70’ スリット
71,71A〜71C,71’,71B’ 幅広部
A 腹側部
B 背側部
C 股下部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性の表面シート、液不透過性又は液難透過性の裏面シート、及び両シート間に位置する液保持性の吸収性コアを備え、背側部と腹側部とその間に位置する股下部とを有する吸収性物品であって、
長手方向に2つ折り又は3つ折りにされており、
前記吸収性コアには、複数本の貫通又は非貫通のスリットが、それぞれ物品の長手方向に延びて形成されており、
前記スリットは、少なくとも前記股下部において互いに連設されておらず、且つ、前記2つ折り又は3つ折りの折り位置と異なる位置にスリット幅の広い幅広部を有する、吸収性物品。
【請求項2】
前記スリットは、前記裏面シート側のみに開口した非貫通のスリットである、請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収性物品は、長手方向に2つ折りにされており、
前記幅広部が、前記2つ折りの折り位置より前記腹側部側に形成されている、請求項1又は2記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記幅広部が、前記2つ折りの折り位置より前記背側部側にも形成されている、請求項3記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記スリットそれぞれが、前記2つ折りの折り位置より前記腹側部側に、複数の幅広部を有している、請求項1〜4の何れか1項記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−157380(P2012−157380A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17053(P2011−17053)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】