説明

吸収性物品

【課題】溝部が形成された吸収体であっても,溝部が延設された方向と直交する方向に,液体を好適に拡散させることができる吸収性物品を提供する。
【解決手段】吸収体3の溝部14の近傍に吸収速度の遅い高吸収性ポリマー22aを配設し,吸収体の溝部から遠隔の位置に吸収速度の早い高吸収性ポリマー22bを配設することにより,液体を吸収体の溝部近傍の領域から溝部遠隔の領域に向かって徐々に浸透させ,吸収体による液体の拡散性を向上させることができるという知見に基づく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,液体を吸収し保持するための吸収性物品に関する。具体的に説明すると,本発明は,例えば使い捨ておむつや尿パッドのような着用者の排泄物を受取り保持するための吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から,例えば使い捨ておむつや尿パッドのような,トップシートと,バックシートと,これらのシート間に介在する吸収体を含む吸収性物品が知られている。また,上記構成の吸収性物品において,吸収体の両側縁部を,弾性部材の収縮力を利用して,着用者の肌に沿うように起立させ,着用者の排泄物が吸収体の外方へ漏れ出すことを防止するための防漏壁として機能させるようにした吸収性物品が知られている。このような吸収体の両側縁部を起立させる構成の場合,一般的に,吸収体には,その長手方向に延びる溝部(スリット)が形成されている(特許文献1)。
【0003】
吸収体に形成された溝部は,吸収体の両側縁部を立ち上がらせる際の折れ目となるため,吸収体の両側縁部が立ち上がり易くなる。また,吸収体に溝部が形成されていることにより,吸収体の両側縁部が立ち上がった際に,吸収体が歪むことを防止できる。さらに,吸収体に溝部を設けることにより,吸収体が受けた尿などの液体を,溝部を通して吸収体の長手方向に拡散させることができる。このため,吸収体は,液体を直接的に受けた箇所だけでなく,溝部が延設された箇所においても,液体を吸収保持することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−206539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし,従来の溝部が形成された吸収体は,上述したとおり,溝部に流入した液体を,溝部が形成された方向(吸収体の長手方向)に拡散させることができる一方で,溝部が形成された方向と直交する方向(吸収体の短手方向)に液体を拡散させることは困難であった。
【0006】
つまり,一般的な吸収体は,高吸収性ポリマーや繊維材料を含む吸収性コアを,コアラップシートで被覆することにより構成される。そして,吸収性コアを貫通して,コアラップシート同士を接着することにより溝部が形成されている。このため,吸収体の溝部には,液体が一気に流れ込みやすくなっており,溝部に流れ込んだ液体は,溝部近傍に位置する吸収性コア(特に高吸収性ポリマー)によって一気に吸収され保持される。
【0007】
ここで,高吸収性ポリマーは,繊維材料(粉砕パルプ)よりも液体の吸収力や保水力がはるかに強いことから,吸収性コアが吸水保持した液体を再び離水してしまう現象を防止するためには効果的であることが知られている。
【0008】
しかしながら,上述したように,吸収性コアが,溝部に流入した液体を一気に吸収すると,溝部近傍に配置されている高吸収性ポリマーが急激に膨潤し,液体が拡散する前に,隣接し合う高吸収性ポリマー同士が結合して,溝部近傍にゲルブロックが形成され易くなる。ゲルブロックが形成された状態は,高吸収性ポリマーによる吸水量が飽和した状態に近い状態であるといえる。このため,溝部近傍にゲルブロックが形成されると,溝部が延設された方向と直行する方向(吸収体の短手方向)に存在する吸収性コアにまで液体が拡散され難くなるという事態が生じていた。
【0009】
このように,溝部が形成された吸収体では,溝部近傍のみに偏って液体が吸収されてしまい,溝部が延設された方向と直交する方向(吸収体の短手方向)に拡散させることは困難である。液体が拡散されないと,吸収体の溝部には,尿などの液体が長く残留し続けることとなる。吸収体の表面(溝部)に液体が残留していると,その残留した液体に触れた着用者の肌がかぶれてしまう等の衛生的な問題が存在する。さらに,吸収体の溝部に吸収されなかった液体が残留すると,液体が溝部に沿って流れるため,吸収性物品から液体が漏れ出すという事態にも繋がる。
【0010】
従って,現在,溝部が形成された吸収体であっても,溝部が延設された方向と直交する方向に,液体を好適に拡散させることができる技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで,本発明者は,上記従来技術の問題を解消するために鋭意検討した結果,吸収体の溝部の近傍に吸収速度の遅い高吸収性ポリマーを配設し,吸収体の溝部から遠隔の位置に吸収速度の早い高吸収性ポリマーを配設することにより,液体が吸収体の溝部近傍の領域から溝部遠隔の領域に向かって徐々に浸透するため,吸収体による液体の拡散性を向上させることができるという知見を得た。そして,本発明者は,上記知見に基づけば,従来の課題を解決することができることに想到し,本発明を完成させた。
具体的に,本発明は,以下の構成を有する。
【0012】
本発明は,液透過性のトップシート1と,液不透過性のバックシート2と,トップシート1とバックシート2の間に介在する吸収体3を有する吸収性物品である。
吸収体3は,液体を吸収保持するための吸収性コア11と,吸収性コア11をトップシート1側から被覆する上層コアラップシート12と,吸収性コア11をバックシート2側から被覆する下層コアラップシート13とを有する。
また,上層コアラップシート12と下層コアラップシート13は,吸収性コア11を吸収体3の厚み方向に貫通して接着されることにより,少なくとも上層コアラップシート12側に,吸収体3の長手方向に延びた溝部14が形成される。
吸収性コア11は,繊維材料21と,繊維材料21に混合された吸収性ポリマー22を備え,高吸収性ポリマー22は,液体の吸収速度が異なる複数種類の高吸収性ポリマーを含む。
そして,吸収性コア11のうち,溝部14が形成された位置から吸収体3の平面方向に少なくとも10mm離れた位置までの領域を溝部近傍領域31とした場合に,
溝部近傍領域31には,複数種類の高吸収性ポリマーのうち,最も液体の吸収速度が遅い種類の第1の高吸収性ポリマー22aが,その他のいずれの種類の高吸収性ポリマーよりも,その重量において2倍以上多く分布されている。
なお,この場合において,第1の高吸収性ポリマーは,溝部近傍領域31に含まれる高吸収性ポリマーの全重量のうち,50重量パーセント以上含まれている。また,高吸収性ポリマーの種類としては,吸収性コア11に含まれる高吸収性ポリマーの全重量のうち5重量パーセント未満のものは,一種類とは認定しない。
【0013】
このように,本発明においては,溝部の近傍(溝部から少なくとも10mm以内)の領域に,液体の吸収速度が遅い集中的に高吸収性ポリマーが配置されているため,溝部近傍の吸収コアが液体を一気に吸収することを防止できる。具体的に説明すると,本発明によれば,溝部近傍吸収性コアに含まれる吸収性コアが急激に膨潤し,液体が拡散する前にゲルブロックとなる事態を防止できるため,吸収体による液体の拡散性が損なわれることがない。
【0014】
本発明では,吸収性コア11のうち溝部近傍領域31以外の領域を溝部遠隔領域32とした場合に,溝部遠隔領域32には,第1の高吸収性ポリマー22a以外の種類の高吸収性ポリマーが,第1の高吸収性ポリマー22aよりも,その重量において2倍以上多く分布されていることが好ましい。
つまり,溝部遠隔領域32においては,第1の高吸収性ポリマー22a以外の種類の高吸収性ポリマーの重量を全て合計した値が,第1の高吸収性ポリマーの重量の値よりも,2倍以上大きくなっている。
【0015】
このように,溝部から遠隔の領域に,第1の高吸収性ポリマーより液体の吸収速度が早い高吸収性ポリマーを集中的に配置することにより,溝部から離れた吸収体の両縁部付近においては,液体を素早く吸収させることができる。このため,本発明の好ましい形態によれば,吸収体による液体の拡散性を向上させると共に,吸収体の両縁部付近における防漏性を高めることができる。
【0016】
本発明では,高吸収性ポリマー22が,液体の吸収速度が遅い第1の高吸収性ポリマー22aと,液体の吸収速度が早い第2の高吸収性ポリマー22bの2種類からなり,第1の高吸収性ポリマー22aが60以上120以下の吸収速度を有し,第2の高吸収性ポリマー22bが15以上50以下の吸収速度を有することが好ましい。
なお,第1の吸収性ポリマーと第2の吸収性ポリマーによって,吸収コア11に含まれる高吸収性ポリマーのうち,95重量パーセント以上を占めるものであればよく,5重量パーセント未満含まれる種類の高吸収性ポリマーは,一種類とは認定しない。
【0017】
このように,溝部近傍に配された高吸収性ポリマー(第1の高吸収性ポリマー)の吸収速度が,60以上120以下であることにより,急激に膨潤する事態を防止できる。また,溝部遠隔に配された高吸収性ポリマー(第2の高吸収性ポリマー)の吸収速度が,15以上50以下であることにより,吸収体の両縁部付近における防漏性を高めることができる。特に,液体の吸収速度が遅い高吸収性ポリマーと,液体の吸収速度が早い高吸収性ポリマーの吸収速度の差が,少なくとも10以上あることにより,吸収体における液体の拡散性をより向上させることができる。なお,「吸収速度」の測定は,後述するDW(Demand Wettability)法を採用して行ったものである。
【0018】
本発明では,溝部近傍領域31に存在する高吸収性ポリマー22のうち,第1の高吸収性ポリマー22aが,90重量パーセント以上100重量パーセント以下含まれることが好ましい。
【0019】
このように,本発明にとって理想的には,溝部近傍の領域に,実質的に,吸収速度の最も遅い第1の高吸収性ポリマーのみが配設されていることが好ましい。
【0020】
また,本発明では,溝部近傍領域31と溝部遠隔領域32の境界の位置に,液透過性の境界シート15が配設されていることが好ましい。
【0021】
本発明にとって,溝部近傍の領域には実質的に第1の高吸収性ポリマーのみが配されていることが理想であることは上述したが,吸収性物品の製造過程や搬送過程において,高吸収性ポリマーが混ざり合ってしまう事態が想定される。そこで,溝部近傍の領域と遠隔の領域の境界位置に,液透過性の境界シート(例えばティッシュペーパ)を配設することにより,高吸収性ポリマーが混ざり合う事態を防止できる。
【0022】
本発明では,溝部近傍領域31であり,かつ,吸収性コア11の厚み方向の半分の位置より上層コアラップシート12側の領域に,第1の高吸収性ポリマー22aが,その他のいずれの種類の高吸収性ポリマーよりも,その重量において2倍以上多く分布されていることとしてもよい。
【0023】
吸収性物品の構造上,液透過性を有するトップシートが,着用者の肌に接する面となる。従って,吸収体は,上層コアラップシート側から,尿などの液体を受ける。このため,最も液体を吸収し膨潤しやすいのは,溝部近傍領域であり,かつ,吸収性コアの厚み方向の半分の位置より上層コアラップシート側の領域に配された高吸収性ポリマーである。そこで,この領域に,吸収速度の遅い高吸収性ポリマーを集中的に配することにより,本発明は,より効果的に液体拡散効果を発揮できる。
【0024】
本発明では,上層コアラップシート12と下層コアラップシート13が,吸収性コア11を吸収体3の厚み方向に貫通して接着されることにより,少なくとも上層コアラップシート12側に,吸収体3の長手方向に延びた2本の溝部が形成されていることとしてもよい。そして,溝部が2本形成された場合においては,2本の溝部14の間の領域である溝部間領域33に存在する高吸収性ポリマーのうち,第1の高吸収性ポリマー22aが,90重量パーセント以上100重量パーセント以下含まれることが好ましい。
【0025】
このように,まず,吸収体上に溝部を2本形成することにより,吸収体の長手方向への液体拡散性を向上させることができる。また,2本の溝部の間の溝部間領域に,吸収速度の遅い高吸収性ポリマーを集中的に配することにより,この溝部間領域に配された高吸収性ポリマーが偏って液体を吸収保持する事態を効果的に防止できる。さらには,溝部が2本形成されているため,これらの溝部の間の溝部間領域においては,高吸収性ポリマーが混ざり合う事態を防止できる。このため,溝部間領域には,実質的に,吸収速度の遅い高吸収性ポリマーのみを配することが可能である。
【0026】
(吸収速度の測定方法)
本発明では,「吸収速度」を測定する方法として,DW(Demand Wettability:デマンドウォータビリティ)法を採用した。DW法による吸水速度(単位:秒)は,DW法を実施する装置として一般的に知られている装置(Demand Wettability Tester)を用いて測定される。具体的には説明すると,DW法実施装置において,生理食塩水の液面をポリマー散布台〔70mmφ,No.2濾紙をガラスフィルターNo.1上に置いた台〕の表面と等水位にセットし,ポリマー散布台の表面上に測定対象の高吸水性ポリマーを0.5g散布する。高吸水性ポリマーを散布した時点の吸水量を0とし,生理食塩水の現状量が10mlになるまでの時間を測定する。この吸水量は,生理食塩水の水位の低下量を示すビュレットの目盛りで測定される。そして,得られた値をDW法による吸水速度とする。DW法による吸水速度は,高吸水性ポリマーの形状,粒径,かさ比重,架橋度等によって設計することができる。なお,吸水速度の測定は,温度が23±2℃であり,湿度が50±5%である環境で行い,測定の前に試料を同環境で24時間以上保存した上で測定した。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は,本発明の一実施形態に係る吸収性物品の展開図であり,吸収性物品をトップシート側からみた平面図である。
【図2】図2は,吸収体の構造の例を示す概要図であり,吸収体を上層コアラップシート側から見た平面図である。
【図3】図3は,図2に示されたA−Aの線分において,吸収体を短手方向に切断した状態の例を示す概略断面図である。
【図4】図4は,本発明の第2の実施形態を説明するための概略断面図である。
【図5】図5は,本発明の第3の実施形態を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0029】
(1.吸収性物品の全体構成)
図1は,本発明の一実施形態に係る吸収性物品10の展開図であり,吸収性物品をトップシート1側からみた平面図である。具体的に説明すると,図1に示された吸収性物品は,テープ付きの使い捨ておむつである。テープ付きの使い捨ておむつは,液透過性のトップシート1,液不透過性のバックシート2,及び両シートの間に配置された吸収体3を基本構成とする。また,テープ付きの使い捨ておむつは,前身頃5から後身頃6にかけて長手方向に起立可能な一対の立体ギャザー4が形成されていることとしてもよい。さらに,テープ付きの使い捨ておむつは,後身頃6の両側縁に延出するサイドフラップの側縁部に,ファスニングテープ8が取付けられている。テープ付きの使い捨ておむつは,前身頃5を着用者の腹部に,後身頃6を着用者の背部に,股下部7を着用者の股下にあてがい,後身頃6に取り付けられているファスニングテープ8を前身頃5に貼り付けることにより,着用者に装着される。
【0030】
図1に示されるように,吸収体3は,平面視において前身頃5及び後身頃6寄りの幅が中間部の幅よりも広くなっている形状(いわゆる,砂時計型の形状)吸収性コア11を有する。そして,吸収体3には,前身頃5から後身頃6にかけて,溝部14が形成されている。図1に示された例では,吸収体3に形成された溝部14は,吸収性物品10の両側縁部に平行な1本の直線で形成されているが,溝部14の形状はこれに限定されるものではない。つまり,溝部14は,吸収体3の長手方向に延びて形成されているものであればよく,例えば,1本の直線が湾曲した形状,平行線が2本並列する形状,2本の直線が交差した形状(X字型形状),1本の直線がその途中で2手に別れた形状(Y字型形状)であってもよい。
【0031】
図1に示される吸収体3の短手方向の長さ(横幅)は,例えば,70mm〜150mm,80mm〜130mm,又は90mm〜110mmであり,特に95mm〜105であることが好ましい。また,吸収体3の長手方向の長さ(縦幅)は,例えば300mm〜500mm,320mm〜480mm,又は340mm〜460mmであり,特に390mm〜410mmであることが好ましい。
なお,本明細書において,「A〜B」とは「A以上B以下」であることを意味する。
【0032】
(2.吸収性物品の具体的構成)
以下,本発明に係る吸収性物品10の実施形態について,使い捨ておむつを例として,具体的に説明する。上述したとおり,本発明に係る吸収性物品10は,液透過性のトップシート1,液不透過性のバックシート2,及び両シートの間に配置された吸収体3を基本構成とする。ただし,本発明は,使い捨てのおむつに限定されるものではなく,例えば尿パッドにも適用可能である。要するに,本発明は,液体を吸収保持するための吸収体3を有する吸収性物品に広く適用可能である。
【0033】
(2−1.トップシート)
トップシート1は,着用者の股下の肌に直接接し,尿などの液体を吸収体3に透過させるための部材である。このため,トップシート1は,柔軟性が高い液透過性材料で構成されることが好ましい。トップシート1は,吸収体3の表面を被覆するように配置される。
【0034】
トップシート1を構成する液透過性材料の例は,織布,不織布,又は多孔性フィルムである。また,例えばポリプロピレンやポリエチレン,ポリエステル,ナイロンのような熱可塑性樹脂の繊維を親水化処理してさらに不織布にしたものを用いることとしてもよい。
【0035】
(2−2.バックシート)
バックシート2は,トップシート1を透過し,吸収体3に吸収保持された液体が,吸収性物品の外部に漏出することを防止するための部材である。このため,バックシート2は,液不透過性材料によって構成される。そして,バックシート2は,吸収体3の底面からの液漏れを防止するため,吸収体3の底面を被覆するように配置される。
【0036】
バックシート2を構成する液不透過材料の例は,ポリエチレン樹脂からなる液不透過性のフィルムである。特に,0.1〜0.4μmの微細な孔が複数形成された微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。
【0037】
バックシート2の外表面には,バックシート2を補強しその手触りを良くするために,カバーシート(図示省略)を貼り合わせることとしても良い。カバーシートを構成する材料としては,織布や不織布が用いられる。特に,カバーシートを構成する材料として,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエステルのような熱可塑性樹脂からなる不織布又は湿式不織布を用いることが好ましい。
【0038】
(2−3.吸収体)
図2は,吸収体3の例を示す図であり,吸収体3を上層コアラップシート12側から見た平面図である。図2において,破線は,上層コアラップシート12に被覆された吸収性コア11を示し,一点鎖線は,吸収性コア11の溝部近傍領域31を示している。また。図2では,上層コアラップシート12の一部を透過させ,上層コアラップシート12に被覆された吸収性コア11,及び吸収性コア11を底面から被覆する下層コアラップシート13が見えるよう作図を行った。
【0039】
吸収体3は,尿などの液体を吸収し,吸収した液体を保持するための部材である。吸収体3は,液透過性のトップシート1と,液不透過性のバックシート2の間に配置される。吸収体3は,図2に示されるように,液体を吸収保持する機能のある吸収性コア11を有する。吸収性コア11は,トップシート1側の面から上層コアラップシート12によって被覆されている。また,吸収性11は,バックシート側の面から下層コアラップシート13によって被覆されている。上層コアラップシート12と下層コアラップシート13は,吸収性コア11の周囲を包囲するように周縁部が接合されており,吸収性コア11が外部に進出することを防止する。
【0040】
また,吸収体3の中央部には,吸収体3の長手方向に延びて形成された溝部14が設けられている。溝部14は,少なくとも上層コアラップシート12側に形成されており,吸収体3が上層コアラップシート12側から受けた液体を,吸収体3の前身頃方向及び後身頃方向に拡散させる。溝部14の長手方向の長さは,適宜調節可能であり,少なくとも吸収性物品10の股下部7以上の長さを有することが好ましい。
【0041】
図3は,図2に示されたA−Aの線分において,吸収体3を短手方向に切断した状態の例を示す概略断面図である。図3に示されるように,上層コアラップシート12及び下層コアラップシート13(以下,これらを合せたものを単にコアラップシートと称す)に周囲を包囲されるようにして吸収性コア11が配設されている。
【0042】
また,吸収体3の短手方向の中央には,溝部14が形成されている。溝部14は,上層コアラップシート12と下層コアラップシート13が,吸収性コア11を厚み方向に貫通して接着されることにより,形成されている。このため,一般的に,溝部14において,接着されたコアラップシートの間には,吸収性コア11は介在しない。図3に示される例において,溝部14を形成するために,上層コアラップシート12が押し下げられ,下層コアラップシート13が押し上げられることにより,吸収体3の厚さ方向の中央付近において接着されている。従って,溝部14は,上層コアラップシート12側及び下層コアラップシート13側の両面において形成されている。また,溝部14は,上層コアラップシート12のみが押し下げられ,下層コアラップシート13に接着することにより,上層コアラップシート側12のみに形成されることとしてもよい。
【0043】
これらの下層コアラップシート12及び上層コアラップシート13としては,従来から,使い捨ておむつや尿パッドのような吸収性物品の構成材料として用いられているシート材を用いることができる。コアラップシートとしては,例えば,ティッシュペーパのような紙であってもよいし,不織布であってもよい。不織布としては,例えば,スパンボンド不織布,ニードルパンチ不織布,スパンレース不織布,エアースルー不織布を採用することとしてもよい。
【0044】
吸収性コア11は,図3に示されるように,親水性の繊維材料21と,粒状の高吸収性ポリマー22(SAP:Super Absorbent Polymer)が混合されることにより形成される。繊維材料21は,極細の繊維が絡まり合って形成されており,高吸収性ポリマー22は,繊維材料21に混合されることにより,繊維材料21に埋没保持されている。
【0045】
繊維材料21としては,例えば,パルプ繊維,レーヨン繊維,又はコットン繊維のようなセルロース系の繊維や,例えばポリエチレン,ポリプロピレン,又はポリエチレンテレフタレートのような合成繊維に親水化処理を施したものであってもよい。これらの繊維は,1種を単独で用いてもよいし,2種以上を組み合わせて,用いることとしてもよい。
【0046】
高吸収性ポリマー22としては,従来から,使い捨ておむつや尿パッドのような吸収性物品における吸収体の材料として用いられている各種のものを用いることができる。特に本発明においては,吸収速度が異なる複数種類の高吸収性ポリマーが用いられる。なお,高吸収性ポリマー22としては,例えば,自重の5倍以上1000倍以下の水を吸収し保持することが可能なものが採用される。高吸収性ポリマー22としては,例えば,デンプン系,セルロース系,又は合成ポリマー系の物を用いることとしてもよい。高吸収性ポリマー22は,例えばデンプン−アクリル酸(塩)グラフト共重合体,デンプン−アクリロニトリル共重合体のケン化物,ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物,又はアクリル酸(塩)重合体からなるものであってもよい。高吸収性ポリマー31aの製造方法としては,例えば特表2005−536598号公報によって既に公知となっている方法を使用することができる。
【0047】
吸収性コア11における繊維材料と比較した高吸収性ポリマー22の混合比率(SAP重量/(SAP重量+繊維材料重量)×100)は,40パーセント〜80パーセント,45パーセント〜75パーセント,又は50パーセント〜70パーセントであり,特に55パーセント〜65パーセントことが好ましい。
【0048】
本発明に係る吸収性コア11において,高吸収性ポリマー22は,吸水速度が異なる複数種類のものが用いられる。高吸収性ポリマー22の吸水速度は,上述したDM法により測定される。高吸収性ポリマー22は,例えば吸水速度が15以上120以下の種類から適宜選択して用いればよい。吸収性コア11には,吸水速度が異なる2種類の高吸収性ポリマー22を用いることが好ましいが,高吸収性ポリマー22の種類は,3種以上であってもよい。
【0049】
なお,本明細書においては,吸収性コア11に用いられるそれぞれ吸収速度が異なる高吸収性ポリマーのうち,最も吸収速度が遅いものを第1の高吸収性ポリマーと称し,最も吸収速度が早いものを第2の高吸収性ポリマーと称す。
また,ここで,吸収性コア11に含まれる高級吸収性ポリマーの種類として,吸収性コア11に含まれる高吸収性ポリマーの全重量の5重量パーセント未満のものは,一種類とは認定しない。従って,例えば,吸収性コア11に含まれる高吸収性ポリマーの全重量の5重量パーセント未満の高吸収性ポリマーの種類は,第1の高吸収性ポリマーや第2の高吸収性ポリマーとは認定しない。
【0050】
図3には,本発明の第1の実施形態を説明するための概念図が示されている。第1の実施形態では,吸収性コア11として,吸収速度が異なる2種類の高吸収性ポリマー22a,22bが配設されている。図3において,黒丸で示された高吸収性ポリマー22aは,吸収速度が遅い第1の高吸収性ポリマーであり,白丸で示された高吸収性ポリマー22bが,吸収速度の早い第2の高吸収性ポリマーである。
【0051】
本発明の第1の実施の形態においては,図3に示されるとおり,吸収性コア11が,第1の高吸収性ポリマー22a及び第2の高吸収性ポリマーの2種類からなる。なお,「吸収性コア11が,第1の高吸収性ポリマー22a及び第2の高吸収性ポリマーの2種類からなる」とは,実質的に上記2種類の高吸収性ポリマーのみを含むものであればよい。具体的に説明すると,「実質的に上記2種類の高吸収性ポリマーのみを含む」とは,第1の吸収性ポリマーと第2の吸収性ポリマーによって,吸収コア11に含まれる高吸収性ポリマーのうち,95重量パーセント以上を占めるものであればよく,5重量パーセント未満含まれる種類の高吸収性ポリマーは,一種類とは認定しない。
【0052】
図3(a)(b)に示されるように,吸収性コア11のうち,吸収体3に形成された溝部14近傍の領域が溝部近傍領域31であり,溝部近傍領域31以外の領域が溝部遠隔領域32となっている。そして,溝部近傍領域31においては,第1の高吸収性ポリマー22aが,第2の高吸収性コポリマー22bと比較して,その重量において多く配設される。
【0053】
溝部近傍領域31は,吸収性コア11のうち,溝部14が形成された位置から,吸収体3の平面方向に少なくとも10mm離れた位置までの領域を意味する。なお,溝部近傍領域31は,図2においては一点鎖線で示されている。より具体的に説明すると,溝部近傍領域31は,吸収性コア11がコアラップシートに内包された空間のうち,溝部31を形成するためのコアラップシート同士の接着点に最も近い位置から,吸収体3の平面方向に少なくとも10mm離れた位置までの領域である。また,溝部近傍領域31は,溝部14が形成された位置から起算して,吸収体の平面方向に10mm以上離れた位置までを含むものであり,例えば12mm〜30mm,16mm〜26mm,又は20mm〜22mmであってもよい。ただし,溝部14が形成された位置から起算して,吸収体の平面方向に30mmより遠くに離れた位置までの領域は,溝部近傍領域とはいわない。従って,正確には,溝部近傍領域31とは,吸収性コア11のうち,溝部14が形成された位置から,吸収体3の平面方向に近くとも10mm遠くとも30mm離れた位置までの領域を意味する。
【0054】
図3(a)(b)に示されるように,溝部近傍領域31には,第1の高吸収性ポリマー22aが,第2の高吸収性ポリマー22bと比較し,その重量において,より多く分布されている。溝部近傍領域31に配された第1の高吸収性ポリマー22aの重量は,第2の高吸収性ポリマー22bの重量の2倍以上であればよく,例えば3倍〜100倍であってもよい。また,第1の高吸収性ポリマー22aは,溝部近傍領域31に存在する高吸収性ポリマー22のうち,90重量パーセント以上100重量パーセント以下含まれることが好ましい。
【0055】
一方,図3(a)(b)に示されるように,吸収性コア11のうち,溝部近傍領域31以外の領域である溝部遠隔領域31には,第2の高吸収性ポリマー22bが,第1の高吸収性ポリマー22aと比較し,その重量においてより多く分布されている。溝部遠隔領域32に配された第2の高吸収性ポリマー22bの重量は,第1の高吸収性ポリマー22aの重量の2倍以上であればよく,例えば3倍〜100倍であってもよい。特に,第2の高吸収性ポリマー22aは,溝部近傍領域31に存在する高吸収性ポリマー22のうち,90重量パーセント以上100重量パーセント以下含まれることが好ましい。
【0056】
また,第1の高吸収性ポリマー22aと,第2の高吸収性ポリマー22bの吸収速度は,DM法の測定値において10以上の差があることが好ましい。具体的に説明すると,第1の高吸収性ポリマー22aの吸収速度は,例えば60〜120であり,100〜110,80〜90であってもよく,特に90〜100であることが好ましい。一方,第2の高吸収性ポリマー22bの吸収速度は,例えば20〜70であり,30〜60,40〜60,50〜60であってもよく,特に45〜55であることが好ましい。
【0057】
このように,溝部近傍領域31には,実質的に第1の高吸収性ポリマー22aのみが配され,溝部遠隔領域32には実質的に第2の高吸収性ポリマー22bのみが配されており,第1の高吸収性ポリマー22aと第2の高吸収性ポリマー22bの吸収速度は,その差が大きいことが好ましい。これにより,溝部14の近傍においては,吸収速度の遅い第1の高吸収性ポリマー22aのみによって液体が吸収され,その後徐々に溝部14の遠隔の領域においても液体が吸収されることとなるため,吸収体3の液体拡散性を向上させることができる。
【0058】
図3(c)においては本発明の第1の実施形態の変形例が示されている。図3(c)に示される例において,溝部近傍領域31と溝部遠隔領域32の境界の位置には,液透過性の境界シート15が配設されている。境界性シート15は,溝部近傍領域31と溝部遠隔領域32の境界に沿って,溝部14を囲うように設けられている。境界シート15は,溝部近傍領域31と溝部遠隔領域32を,吸収性コア11の厚み方向に分断する。境界シート15は,上端縁側を上層コアラップシート12に,下端縁側を下層コアラップシート13に接着することにより,溝部近傍領域31と溝部遠隔領域32の境界の位置に保持される。
【0059】
そして,境界シート15を境界として,溝部14寄りの吸収性コア11の領域(溝部近傍領域)には,集中的に第1の高吸収性ポリマー22aが配設され,それ以外の領域(溝部遠隔領域)には集中的に第2の高吸収性ポリマー22bが配設される。境界シート15により仕切られた領域には,第1の高吸収性ポリマー22aと第2の高吸収性ポリマー22bが,それぞれ,90重量パーセント以上100重量パーセント以下含まれることが好ましい。
【0060】
境界シート15は,液透過性のシート材によって形成され,例えば,ティッシュペーパのような紙であってもよいし,不織布であってもよい。不織布としては,例えば,スパンボンド不織布,ニードルパンチ不織布,スパンレース不織布,エアースルー不織布を採用することとしてもよい。境界シート15は,境界シート15を越えて高吸収性ポリマーの粒子が混合しないよう,高吸収性ポリマーの粒子が透過しない程度の密度で形成される。
【0061】
図3(d)においては本発明の第1の実施形態のさらなる変形例が示されている。図3(d)に示された変形例においては,溝部近傍領域31であり,かつ,吸収性コア11の厚み方向の半分の位置より上層コアラップシート12側の領域(溝部近傍上層領域34)には,第1の高吸収性ポリマー22aが集中して配設されている。一方,溝部近傍上層領域34以外の領域には,第2の高吸収性ポリマー22bが,集中的に配設される。
【0062】
溝部近傍上層領域34及びそれ以外の領域には,第1の高吸収性ポリマー22aと第2の高吸収性ポリマー22bが,それぞれ,他方の2倍以上含まれることが好ましい。特に,それぞれの領域において,第1の高吸収性ポリマー22aと第2の高吸収性ポリマー22bが,それぞれ,90重量パーセント以上100重量パーセント以下含まれることが好ましい。また,図示は省略するが,溝部近傍上層領域34及びそれ以外の領域を仕切るように,その境界に沿って,境界シートを設けることとしてもよい。
【0063】
図4には,本発明の第2の実施形態を説明するための概略図が示されている。第2の実施形態においては,主に第1の実施形態と異なる点について説明する。第2の実施形態は,吸収性コア11に,それぞれ吸収速度が異なる種類の高吸収性ポリマーが,3種類含まれている点において上述した第1の実施形態と異なる。図4において,第1の高吸収性ポリマーは黒丸,第2の高吸収性ポリマーは白丸,その他の高吸収性ポリマーは灰色の丸で表す。なお,第2の実施形態おいては,吸収性コア11に,吸収速度の異なる3種類に吸収性ポリマーが含まれているが,吸収性コアに11には,吸収速度の異なる吸収性ポリマーが4種類以上含まれていてもよい。
【0064】
第2の実施形態においては,図4(a)及び(b)に示されるように,溝部近傍領域31には,吸収速度の異なる3種類の高吸収性ポリマーのうち最も吸収速度が遅い第1の高吸収性ポリマー22aが,他のいずれの種類の高吸収性ポリマーよりも,その重量において2倍以上多く含まれている。すなわち,吸収性コア11に,複数種類の高吸収性ポリマーが含まれている場合には,第1の高吸収性ポリマー22aの重量と,その他種類の高吸収性ポリマーの重量をそれぞれ比較し,溝部近傍領域31に含まれている第1の高吸収性ポリマー22aの重量が,いずれの種類の高吸収性ポリマーの重量の2倍以上であればよい。
【0065】
一方,第2の実施形態においては,図4(a)及び(b)に示されるように,溝部遠隔領域32には,吸収速度の異なる3種類の高吸収性ポリマーのうち最も吸収速度が早い第2の高吸収性ポリマー22bが,他のいずれの種類の高吸収性ポリマーよりも,その重量において2倍以上多く含まれている。つまり,上述したのと同様に,吸収性コア11に,複数種類の高吸収性ポリマーが含まれている場合には,第2の高吸収性ポリマー22bの重量と,その他種類の高吸収性ポリマーの重量をそれぞれ比較し,溝部遠隔領域32に含まれている第2の高吸収性ポリマー22bの重量が,いずれの種類の高吸収性ポリマーの重量の2倍以上であればよい。
【0066】
図5には,本発明の第3の実施形態を説明するための概略図が示されている。図5に示された第3の実施形態は,第1の実施形態と異なり,吸収体3の少なくとも上層コアラップシート側に,2本の溝部14が形成されている。第3の実施形態は,主に第1の実施形態とは異なる点について説明する。
【0067】
第3の実施形態においては,上層コアラップシート12と下層コアラップシート13が,吸収性コア11を吸収体3の厚み方向に貫通して接着されることにより,少なくとも上層コアラップシート12側に,吸収体3の長手方向に延びた2本の溝部14が形成されている。そして,収性コア11のうち,これら2本の溝部14の間には,溝部間領域33が形成される。
【0068】
図5(a)に示されるとおり,溝部14が2本形成された場合であっても,吸収性コア11のうち,溝部14が形成された位置から吸収体3の平面方向に少なくとも10mm離れた位置まで溝部近傍領域31には,第1の高吸収性ポリマー22aが集中的に配設される。また,溝部近傍領域31以外の領域である溝部遠隔領域32には,第2の高吸収性ポリマー22bが集中的に配設される。
【0069】
また,図5(b)に示されるとおり,溝部14が2本形成された場合であっても,溝部近傍領域31と溝部遠隔領域32の境界の位置には,液透過性の境界シート15が配設することとしてもよい。このとき,境界性シート15は,溝部近傍領域31と溝部遠隔領域32の境界に沿って,2本の溝部14を囲うように設けられている。境界シート15は,溝部近傍領域31と溝部遠隔領域32を,吸収性コア11の厚み方向に分断する。
【0070】
また,図5(c)に示されるとおり,溝部14が2本形成された場合であっても,溝部近傍領域31であり,かつ,吸収性コア11の厚み方向の半分の位置より,上層コアラップシート12側の溝部近傍上層領域34に,第1の高吸収性ポリマー22aが集中的に配設することとしてもよい。そして,溝部近傍上層領域34以外の領域に,第2の高吸収性ポリマー22bが集中的に配設することとしてもよい。
【0071】
ここで,第3の実施形態においては,第1の実施形態と異なり,図5(d)に示されるように,吸収性コア11のうち,2本の溝部14の間の溝部間領域33にのみ,第1の高吸収性ポリマー22aを集中的に配設することとしてもよい。このとき,溝部間領域33に存在する高吸収性ポリマーのうち,第1の高吸収性ポリマー22aが,90重量パーセント以上100重量パーセント以下含まれることが好ましい。
【0072】
一方,図5(c)に示されるとおり溝部間領域33以外の領域には,第2の高吸収性ポリマー22bが,集中的に配設されることとしてもよい。この場合において,溝部近傍領域であっても,溝部間領域33に属さない領域には,第1の高吸収性ポリマーではなく,第2の高吸収性ポリマー22bを集中的に配設される。このとき,溝部間領域33以外の領域に存在する高吸収性ポリマーのうち,第2の高吸収性ポリマー22bが,90重量パーセント以上100重量パーセント以下含まれることが好ましい。

【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係る吸収性物品は,例えば乳幼児や高齢者用の使い捨ておむつや尿パッドに適用することができる。そして,本発明によれば,液体漏れを効果的に防止でき,かつ衛生面においても優れた効果を発揮する吸収性物品を提供できる。従って,本発明は,育児及び介護に関する産業において利用し得る。
【符号の説明】
【0074】
1 トップシート
2 バックシート
3 吸収体
4 立体ギャザー
5 前身頃
6 後身頃
7 股下部
8 ファスニングテープ
10 吸収性物品
11 吸収性コア
12 上層コアラップシート
13 下層コアラップシート
14 溝部
15 境界シート
21 繊維材料
22 高吸収性ポリマー
22a 第1の高吸収性ポリマー
22b 第2の高吸収性ポリマー
31 溝部近傍領域
32 溝部遠隔領域
33 溝部間領域
34 溝部近傍上層領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシート(1)と,液不透過性のバックシート(2)と,前記トップシート(1)と前記バックシート(2)の間に介在する吸収体(3)を有する吸収性物品であって,
前記吸収体(3)は,
液体を吸収保持するための吸収性コア(11)と,
前記吸収性コア(11)を,前記トップシート(1)側から被覆する上層コアラップシート(12)と,
前記吸収性コア(11)を,前記バックシート(2)側から被覆する下層コアラップシート(13)とを有し,
前記上層コアラップシート(12)と前記下層コアラップシート(13)が,前記吸収性コア(11)を前記吸収体(3)の厚み方向に貫通して接着されることにより,少なくとも前記上層コアラップシート(12)側に,前記吸収体(3)の長手方向に延びた溝部(14)が形成され,
前記吸収性コア(11)は,繊維材料(21)と,前記繊維材料(21)に混合された吸収性ポリマー(22)を備え,
前記高吸収性ポリマー(22)は,液体の吸収速度が異なる複数種類の高吸収性ポリマーを含み,
前記吸収性コア(11)のうち,前記溝部(14)が形成された位置から,前記吸収体(3)の平面方向に少なくとも10mm離れた位置までの領域を溝部近傍領域(31)とした場合に,
前記溝部近傍領域(31)には,前記複数種類の高吸収性ポリマーのうち,最も液体の吸収速度が遅い種類の第1の高吸収性ポリマー(22a)が,その他のいずれの種類の高吸収性ポリマーよりも,その重量において2倍以上多く分布されている
吸収性物品。

【請求項2】
前記吸収性コア(11)のうち,前記溝部近傍領域(31)以外の領域を溝部遠隔領域(32)とした場合に,
前記溝部遠隔領域(32)には,前記第1の高吸収性ポリマー(22a)以外の種類の高吸収性ポリマーが,前記第1の高吸収性ポリマー(22a)よりも,その重量において2倍以上多く分布されている
請求項1に記載の吸収性物品。

【請求項3】
前記高吸収性ポリマー(22)は,液体の吸収速度が遅い第1の高吸収性ポリマー(22a)と,液体の吸収速度が早い第2の高吸収性ポリマー(22b)からなり,
前記第1の高吸収性ポリマー(22a)は,60以上120以下の吸収速度を有し,
前記第2の高吸収性ポリマー(22b)は,15以上50以下の吸収速度を有する
請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。

【請求項4】
前記溝部近傍領域(31)に存在する高吸収性ポリマー(22)のうち,前記第1の高吸収性ポリマー(22a)は,90重量パーセント以上100重量パーセント以下含まれる
請求項1から請求項3のいずれかに記載の吸収性物品。

【請求項5】
前記溝部近傍領域(31)と前記溝部遠隔領域(32)の境界の位置には,液透過性の境界シート(15)が配設されている
請求項2から請求項4のいずれかに記載の吸収性物品。

【請求項6】
前記溝部近傍領域(31)であり,かつ,吸収性コア(11)の厚み方向の半分の位置より,前記上層コアラップシート(12)側の領域には,
前記第1の高吸収性ポリマー(22a)が,その他のいずれの種類の高吸収性ポリマーよりも,その重量において2倍以上多く分布されている
請求項1に記載の吸収性物品。

【請求項7】
前記溝部(14)は,前記上層コアラップシート(12)と前記下層コアラップシート(13)が,前記吸収性コア(11)を前記吸収体(3)の厚み方向に貫通して接着されることにより,少なくとも前記上層コアラップシート(12)側に,前記吸収体(3)の長手方向に延びて2本形成されており,
前記吸収性コア(11)のうち,前記2本の溝部(14)の間の領域を溝部間領域(33)とした場合に,
前記溝部間領域(33)に存在する高吸収性ポリマーのうち,第1の高吸収性ポリマー(22a)が,90重量パーセント以上100重量パーセント以下含まれる
請求項1に記載の吸収性物品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−179286(P2012−179286A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45089(P2011−45089)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】