説明

吸収性物品

【課題】吸収性能を確保しつつ、フィット性や装着感を向上させることができる吸収性物品を提供する。
【解決手段】本発明に係る吸収性物品1は、液透過性の表面シート10、液不透過性の裏面シート20、及び吸収体30を有し、吸収体は、排泄口当接領域の中心を含む中央領域A1と、中央領域の周囲において中央領域と隣接して配置された周囲領域A2と、を有する、周囲領域の吸収体の密度は、中央領域の吸収体の密度よりも低く、中央領域には、吸収体が厚み方向に圧搾された中央圧搾部61が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に配置される吸収体とを有する吸収性物品としての生理用ナプキンにおいて、表面シートと吸収体とが厚み方向に圧搾された凹部を有する生理用ナプキンが記載されている。この吸収性物品の凹部は、吸収体の全面に亘って複数形成されている。よって、吸収性物品の厚みは、厚み方向に圧搾された凹部が形成されていない吸収性物品よりも薄くなる。したがって、例えば、吸収体の目付を高めて吸収性能を向上させる場合であっても、吸収体の厚みを比較的薄くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−291473号公報(図1、図4(b)等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の吸収性物品には、以下の問題があった。上述の吸収性物品の吸収体は、凹部が形成されることによって密度が高くなるため、吸収体全体の密度が高くなる。よって、吸収体が硬くなり、着用者に対しての肌触りが悪くなり、装着感が悪化することがある。
【0005】
また、吸収性物品を装着した着用者が両脚を閉じた状態等、吸収性物品の幅方向両外側から内側に向かって力が掛かった場合に、吸収体が硬く曲線状に曲がり難いため、吸収体の幅方向における中央が長手方向に沿って凸状に変形することがある。例えば、比較的厚みが薄い(例えば、3mm以下)吸収性物品においては、吸収体の幅方向における中央が凸状に変形すると、変形した凸状部分が鋭くなり易い。よって、凸状部分が着用者に当たったときに痛みを感じたり、凸状部分が肌を刺激したりするおそれがあり、装着感が悪化するおそれがある。また、凸状部分が長手方向に沿って形成されると、前後方向において身体の外形に沿って吸収体が曲がり難くなり、フィット性が低下することがある。更に、長手方向に沿った凸状部分に沿って体液が流れてしまうことがあり、体液が拡散したり、液漏れが発生したりするおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、吸収性能を確保しつつ、フィット性や装着感を向上させることができる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明に係る吸収性物品は、液透過性の表面シート(表面シート10)、液不透過性の裏面シート(裏面シート20)、及び前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置される吸収体(吸収体30)を有する吸収性物品であって、前記吸収体は、排泄口当接領域の中心を含む中央領域(中央領域A1)と、前記中央領域の周囲において前記中央領域と隣接して配置された周囲領域(周囲領域A2)と、を有し、前記周囲領域の前記吸収体の密度は、前記中央領域の前記吸収体の密度よりも低く、前記中央領域には、前記吸収体が厚み方向に圧搾された中央圧搾部(中央圧搾部61)が設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る吸収性物品は、吸収体の中央領域の周囲に、中央領域よりも密度の低い周囲領域が設けられているため、吸収性物品が幅方向外側から内側に押圧された際に、周囲領域が変形して外力を吸収し、中央領域の変形を少なくすることができる。よって、中央領域を排泄口に対向した状態で維持し易くなる。排泄口が当接し易い吸収体の中央に、周囲領域よりも密度が高い中央領域が配置されているため、中央領域において体液を引き込みやすくなる。更に、中央領域には、中央圧搾部が設けられているため、排泄口近傍に接しやすい吸収体の中央近傍の厚みを薄くすることができ、装着感を向上させることができる。また、周囲領域が変形することにより、密度の高い中央領域の変形を少なくすることができ、比較的硬い中央領域が身体側に折れ曲がることによる装着感の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る吸収性物品の肌当接面側から見た平面図である。
【図2】図1に示す吸収性物品の背面図である。
【図3】図1に示す吸収体の肌当接面側から見た平面図である。
【図4】図1に示すA−A断面の模式断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る吸収性物品の製造方法を説明するための図である。
【図6】図1に示す吸収性物品の製造方法における吸収体成型第2工程を模式的に示した図である。
【図7】図6に示す吸収体成型工程の圧縮ロールの部分拡大断面図である。
【図8】図6に示す吸収性物品の製造方法において成型された吸収体を模式的に示した断面図である。
【図9】第2の実施形態に係る吸収性物品の製造工程における吸収体第2成型工程の圧縮ロールの部分拡大断面図である。
【図10】図9に示す吸収性物品の製造方法において成型された吸収体を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
図1及び図2を参照して、本発明の第1の実施形態に係る吸収性物品について説明する。図1は、吸収性物品の平面図であり、図2は、吸収性物品の背面図である。本実施形態に係る吸収性物品1は、例えば、生理用ナプキンである。
【0011】
吸収性物品1は、着用者の肌に当接する表面シート10と、液体を透過しない液不透過性の裏面シート20と、吸収体30とを有する。吸収体30は、表面シート10と裏面シート20との間に配設される。従って、吸収体30は、図1において破線で示される。吸収体30は、吸収性物品1の長手方向L及び幅方向Wにおける中央部分に配設される。また、吸収性物品1は、図1に示す平面視にて、長手方向Lに直交する幅方向Wにおいて吸収体30の外側に設けられるウイング部43,44を備える。更に、吸収性物品1は、幅方向Wにおいて吸収体30の外側に設けられるサイドシート41,42を備える。
【0012】
表面シート10は、体液等の液体を透過する液透過性のシートである。表面シート10は、少なくとも吸収体30の表面を覆う。表面シート10は、不織布、織布、有孔プラスチックシート、メッシュシート等、液体を透過する構造のシート状の材料であれば、特に限定されない。織布や不織布の素材としては、天然繊維、化学繊維のいずれも使用できる。
【0013】
裏面シート20は、表面シート10の長さと略同一の長さを有する。裏面シート20は、ポリエチレンシート、ポリプロピレン等を主体としたラミネート不織布、通気性の樹脂フィルム、スパンボンド、又はスパンレース等の不織布に通気性の樹脂フィルムが接合されたシートなどを用いることができる。裏面シート20は、着用時の違和感を生じさせない程度の柔軟性を有する材料とすることが好ましい。裏面シート20は、不透液性且つ透湿性であることが望ましく、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂に無機充填剤を溶融混練したものを延伸処理した微多孔性シートによって構成することができる。
【0014】
吸収体30は、親水性繊維、パルプを含む。吸収体30は、経血などの体液を吸収可能な材料によって形成される。吸収体30は、親水性繊維又は粉体をエアレイド法によって積層して形成されてもよいし、親水性繊維又は粉体をエアレイド法によってシート状に成形したエアレイドシートでもよいし、ティッシュ(例えば、目付15g/m)上に高吸収ポリマーを混入した粉砕パルプを配置し、ティッシュで包むことによって形成されていてもよい。
【0015】
本実施の形態に係る吸収体30は、綿状パルプや合成パルプ等を坪量100〜300g/m程度に積層したパルプ8を保護紙(図示せず)で包むことによって構成されている。吸収体30の幅方向における中央に位置するコア部31(例えば、図3参照)の厚みは、幅方向における両側部の厚みよりも厚い。吸収体30は、後述する吸収体第2成型加工前の状態においては、全面ほぼ均一な厚みであってもよいし、非均一な厚みであってもよい。保護紙は、パルプの形状を保持すると共に吸収した体液の拡散を防止するためのものであり、例えばクレープ紙などを用いることができる。
【0016】
吸収体30は、前後方向に延びる形状であり、裏面シート20よりも略一回り程度小さい。吸収体30の幅方向Wの長さは、成人女性の股間隔に対応しており、概ね50〜80mmである。吸収体30は、ホットメルトなどの接着剤によって裏面シート20に接着される。吸収体30については、後述にて詳細に説明する。
【0017】
サイドシート41,42は、表面シート10の両側に配設される。サイドシート41,42は、表面シート10と同様の材料から選ぶことができる。但し、サイドシート41,42を乗り越えて吸収性物品1外方へ経血が流れることを防止するためには、疎水性又は撥水性を有することが好ましい。サイドシート41,42は、吸収体30の側縁の一部及びウイング部43,44を覆う。
【0018】
吸収性物品1では、表面シート10、サイドシート41,42、及び裏面シート20の周縁が接合されて、吸収体30が内封される。表面シート10と裏面シート20との接合方法としては、ヒートエンボス加工、超音波、又はホットメルト型接着剤のいずれか一つ、又は複数を組み合わせることが可能である。
【0019】
裏面シート20において、下着と接触する表面には、複数の領域において接着剤50が塗布されている(図2参照)。接着剤50は、裏面シート20の長手方向Lに沿って間欠的に配置されている。接着剤50は、ウイング部43及びウイング部44において、下着と接触する表面にも設けられる。使用前の状態では、接着剤50は、図示しない剥離シートに接しており、剥離シートによって使用前に接着剤が劣化するのを防止している。そして、使用時に着用者によって剥離シートが剥離される。なお、剥離シートを有しない吸収性物品においては、吸収体を個別に包装する包装シートによって使用前に接着剤が劣化するのを防止するように構成されていてもよい。接着剤と包装シートが接する場合には、包装シートの表面には、接着剤の粘着力を低下させることなく接着剤を剥離可能にする処理を施すことが望ましい。
【0020】
次いで、図3及び図4に基づいて、吸収体30の構成について詳細に説明する。図3は、図1に示す吸収性物品から表面シート10、裏面シート20及びサイドシート41,42を外した状態の吸収体30の肌当接面側からみた平面図である。図4は、図1に示すA−A断面の断面図である。吸収体30は、図3に示す平面視にて、吸収体30の排泄口当接領域の中心を含む中央領域A1と、中央領域A1の周囲において中央領域A1と隣接して配置された周囲領域A2と、周囲領域A2の周囲において周囲領域に隣接して配置された薄層領域A3とを有する。図3に示す楕円形の2点鎖線は、中央領域A1の外縁を示しており、2点鎖線よりも外側が周囲領域A2となる。図3に示す楕円形の1点鎖線は、周囲領域A2の外縁を示しており、1点鎖線よりも外側が薄層領域A3となる。中央領域A1及び周囲領域A2は、吸収体30の厚みが厚いコア部31に対応する領域であり、着用者の排泄口が当接する排泄口当接領域である。
【0021】
排泄口当接領域の中心とは、着用者の排泄口が当接する領域の長手方向及び幅方向の中心である。例えば、ウイング部を有する吸収性物品においては、ウイング部の長手方向の中心が、排泄口当接領域の長手方向の中心となる。また、ウイング部を有しない吸収性物品においては、吸収体の幅方向の長さ寸法が最も短い位置が、排泄口当接領域の長手方向の中心となる。排泄口当接領域は、着用者の股間部と当接する領域に含まれており、着用者の両脚の間に位置する。中央領域A1は、排泄口当接領域の中心を少なくとも含む領域であればよく、中央領域A1の中心が排泄口当接領域の中心であってもよいし、中央領域A1の中心と排泄口当接領域の中心とがずれていてもよい。
【0022】
図1及び図4に示すように、周囲領域A2の外縁には、吸収体30と表面シート10とが厚み方向Tに圧搾された周囲圧搾部62が形成されている。周囲領域A2の外縁とは、周囲領域A2と薄層領域A3との境界部分であり、境界上のみならず、境界近傍となる内側部分及び外側部分を含む部分である。周囲圧搾部62は、コア部31に対応する中央領域A1及び周囲領域A2と、薄層領域A3とを区別するように周囲領域A2を囲むように設けられている。また、周囲圧搾部62は、コア部の長手方向Lにおける外側となる薄層領域A3にも複数設けられている。
【0023】
中央領域A1は、排泄口当接領域の中心を含むように構成されている。中央領域A1には、吸収体30を厚み方向Tに圧搾した中央圧搾部61が複数形成されている。中央圧搾部61は、中央領域A1の全体に亘って複数形成されている。中央領域A1の全体に亘って中央圧搾部61が設けられていることにより、吸収体30の厚みを薄い状態で維持し易くなる。
【0024】
中央圧搾部61の幅方向Wの長さW6は、中央圧搾部61の長手方向Lの長さL6よりも長い。中央圧搾部61の幅方向長さW6が比較的長く形成されているため、幅方向外側からの力に対する抵抗が大きくなる。よって、吸収性物品1を装着した着用者が両脚を閉じた状態等、吸収性物品1の幅方向両外側から内側に向かって力が掛かった場合に、中央領域A1の変形を抑制することができる。一方、中央圧搾部61の長手方向長さL6は、幅方向長さW6よりも短いため、吸収体30が前後方向に沿って変形し易くなる。したがって、吸収体30は、前後方向において着用者の身体の外形に沿って曲がり易くなり、吸収性物品のフィット性を向上させることができる。
【0025】
薄層領域A3には、吸収体30を厚み方向に圧搾した薄層圧搾部63が設けられている。薄層圧搾部63は、薄層領域A3の全体に亘って複数形成されている。薄層領域A3の全体に亘って薄層圧搾部63が設けられていることにより、薄層領域A3においても吸収体30の厚みを薄い状態で維持し易くなる。薄層圧搾部63は、長手方向の長さよりも幅方向の長さが長い第1薄層圧搾部63Aと、幅方向の長さよりも長手方向の長さが長い第2薄層圧搾部63Bとを有する。
【0026】
第1薄層圧搾部63Aは、中央圧搾部61と同じ形状である。第1薄層圧搾部63Aは、コア部31に対する長手方向外側に多数形成されている。よって、吸収体30の長手方向Lにおける両側部において、幅方向外側からの力に対する抵抗を大きくすることができ、幅方向外側から力による変形を抑制することができる。第2薄層圧搾部63Bは、コア部31に隣接する吸収体30の幅方向側端部に設けられている。コア部31に隣接する吸収体30の幅方向側端部は、着用者の股間部に対応する部分であり、着用者の股の内側部分が当たる部分である。着用者の股の内側部分が当たる部分の吸収体30の剛性が高すぎると、着用者に対する肌触りが悪くなり、装着感が悪化するおそれがある。しかし、コア部31に隣接する吸収体30の幅方向側端部には、第2薄層圧搾部63Bが形成されているため、長手方向に沿って吸収体が変形し易くなり、装着感の悪化を抑制することができる。
【0027】
なお、中央圧搾部61及び薄層圧搾部63は、吸収体30を厚み方向Tに圧搾されて形成されていればよく、種々の構成を採用することができる。例えば、プレス加工やエンボス加工によって形成することができ、その形状は、格子網やハニカム形状であってもよい。また、複数の中央圧搾部61及び薄層圧搾部63は、互いに接して配置されていてもよいし、互いに離間して配置されていてもよい。より好ましくは、複数の中央圧搾部61及び薄層圧搾部63は、吸収体の厚みを維持すること、折癖を残り難くすること、及びしなやかさを維持することを考慮すると、互いに離間して配置されていることが望ましい。吸収体の中央領域A1及び薄層領域A3に中央圧搾部61及び薄層圧搾部63を設けることにより、吸収体全体の厚みを薄くすることができる。したがって、例えば、吸収性能を高めるために吸収体の目付を高くした場合であっても、吸収体の厚みを薄い状態で維持することができる。例えば、本実施の形態に係る吸収体は、厚み3mm以下の吸収性物品において好適に用いることができる。
【0028】
図4に示すように、吸収体の厚みは、中央領域A1、周囲領域A2、及び薄層領域A3において各々異なっている。中央領域A1の厚みは、周囲領域A2の厚みよりも薄く、薄層領域A3よりも厚い。具体的には、中央領域A1の厚みは、2.0mmであり、周囲領域A2の厚みは、2.2mmであり、薄層領域A3の厚みは、1.0mmである。また、周囲領域A2と薄層領域A3との間に形成された周囲圧搾部62の厚みは、0.3mmである。
【0029】
排泄口に当接し易い中央部分の厚みが周囲領域の厚みよりも薄いため、着用者に吸収体30の厚みを感じさせ難くすることができ、装着感を向上させることができる。更に、中央領域A1及び周囲領域A2の裏面シート側の面は、薄層領域A3の裏面シート側の面よりも厚み方向外側に位置するように構成されている。中央領域A1及び周囲領域A2となるコア部31は、薄層領域A3と比べて厚いため、着用者が厚みを感じ易くなることがある。しかし、コア部31に対応する中央領域A1及び周囲領域A2の吸収体が、薄層領域A3の吸収体よりも裏面シート側に膨らんでいることにより、肌当接面側への膨らみを抑えることができ、表面シート側の見た目をすっきりさせて、着用者に厚みを感じさせ難くすることができる。
【0030】
なお、吸収体及び吸収性物品の厚みは、例えば、以下の方法で測定することができる。まず、吸収性物品を液体窒素に含浸させて、吸収性物品を凍結させる。次いで、剃刀によって凍結させた吸収性物品を切断した後、切断した吸収性物品を常温に戻して解凍する。そして、切断面における吸収性物品の厚みを電子顕微鏡(キーエンス社製 VE7800)によって測定する。
【0031】
中央領域A1の長手方向Lの中心における中央領域A1の幅方向の長さである中央領域中心幅W1は、中央領域A1の長手方向Lの中心における周囲領域A2の幅方向における長さである周囲領域中心幅W2よりも短くなるように構成されている。中央領域中心幅W1が周囲領域中心幅W2よりも長いため、体液を吸収する領域を確保することができ、体液の漏れを抑制することができる。
なお、周囲領域中心幅W2とは、中央領域A1の長手方向Lの中心を通り且つ幅方向Wに沿った仮想線上における周囲領域A2の幅である。本実施の形態においては、仮想線上における周囲領域A2は、中央領域A1を挟んで両側方に配置されており、中央領域A1の側方に配置された2つの周囲領域A2の幅を合わせた長さが、中央領域中心幅W1よりも長くなるように構成されている。
【0032】
本発明に係る吸収体は、中央領域A1に対する幅方向両側に周囲領域A2が配置されている場合には、少なくとも一方側の周囲領域A2の幅方向における長さが中央領域の幅方向の長さより短く構成されていればよい。しかし、より好ましくは、中央領域A1の幅方向外側に配置された2つの周囲領域A2の幅を合わせた長さが、中央領域A1の幅方向の長さより短く構成されていることが望ましい。中央領域A1の長手方向の長さ及び幅方向の長さが、コア部31の長手方向の長さ及び幅方向の長さに対して50%以上であることにより、着用者に対して厚みを感じさせ難くする効果を好適に発揮することができる。また、中央領域A1に対する幅方向の一方側のみに周囲領域A2が配置されている場合には、この周囲領域A2の幅方向における長さが中央領域の幅方向の長さより短く構成されていればよい。
【0033】
吸収体の密度は、中央領域A1、周囲領域A2、及び薄層領域A3において各々異なっている。周囲領域A2の吸収体30の密度は、中央領域A1の吸収体の密度よりも低く、薄層領域A3の吸収体の密度よりも低くなるように構成されている。中央領域A1の吸収体の密度は、薄層領域A3の吸収体の密度よりも高い。具体的には、中央領域A1の密度は、0.135g/cmであり、周囲領域A2の密度は、0.068g/cmであり、薄層領域A3の密度は、0.12g/cmである。また、周囲圧搾部の密度は、0.4g/cmである。
【0034】
中央領域A1は、周囲領域A2及び薄層領域A3よりも硬く、変形し難く構成されている。一方、中央領域A1の周囲には、中央領域A1及び薄層領域A3よりも密度の低い周囲領域A2が設けられているため、吸収性物品が幅方向外側から内側に押圧された際に、最も剛性が低い周囲領域A2が変形して外力を吸収し、中央領域A1の変形を少なくすることができる。よって、中央領域A1を排泄口に対向する面状の状態で維持し易くなり、排泄口に接する領域を確保し、吸収体の幅方向長さが短くなり過ぎるのを防ぐことができる。また、中央領域の変形を抑制することにより、比較的硬い中央領域A1が身体側に折れ曲がることによる装着感の悪化を抑制することができる。
【0035】
なお、吸収体及び吸収性物品の硬さは、例えば、JIS-1096に規定されているガーレー法を用いて測定することができる。また、本実施の形態に係る吸収体30は、薄層領域A3よりも中央領域A1の密度が高くなるように構成されているが、中央領域A1よりも薄層領域A3の剛性が高くなるように構成されていてもよい。
【0036】
吸収体の目付は、中央領域A1、周囲領域A2、及び薄層領域A3において各々異なっている。吸収体30は、吸収体の中央に位置する中央領域A1の目付が最も高くなるように構成されている。周囲領域A2の目付は、薄層領域A3の目付よりも高い。具体的には、中央領域A1の目付は、270g/cmであり、周囲領域A2の目付は、150g/cmであり、薄層領域A3の目付は、120g/cmである。また、周囲圧搾部の目付は、120g/cmである。排泄口が当接し易い吸収体の中央領域の目付及び密度を高く構成しているため、中央領域A1において体液を引き込み易くすることができる。また、中央領域A1よりも周囲領域A2の吸収体の密度を低く構成しているため、中央領域A1において吸収した液体を粗密勾配の影響で広がることを抑制することができる。
【0037】
なお、吸収体の目付及び密度は、例えば、以下の測定方法によって測定することができる。包装体によって包装された吸収性物品においては包装体を開封し、折り畳まれた吸収性物品を展開して、目付及び密度を測定する部分の厚み及び面積を測定する。次いで、目付及び密度を測定する部分を吸収性物品から切り出し、切り出した部分の重量を測定する。次いで、切り出した部分から表面シート及び裏面シート等、吸収体以外の部分を取り除き、吸収体の重量を測定する。吸収体の重量と、目付及び密度を測定する部分の面積とに基づいて目付を算出する。目付及び厚みに基づいて、密度を算出する。
【0038】
次に、図5を参照して、本実施形態に係る吸収性物品1の製造方法の一部について説明する。なお、図5に記載されていない方法については、既存の方法を用いることができる。吸収性物品の製造方法は、図5に示すように、ステップ101において、上層生成工程を行う。具体的には、上層生成工程において、表面シート10とサイドシート41,42とを、例えばホットメルト接着剤によって接着する。次いで、ステップ102において、吸収体第1成型工程を行う。具体的には、成型ドラムによって吸収体の材料となるパルプを成型して吸収体30A(図8(a)参照)を成型する。
【0039】
ステップ103において、吸収体第2成型工程を行う。具体的には、ステップ102において成型された吸収体30Aを一対の圧縮ロールによって厚み方向Tに圧縮加工し、中央領域A1、周囲領域A2、薄層領域A3を形成するとともに、中央圧搾部61及び薄層圧搾部63を形成して、吸収体30(図8(b)参照)を成型する。なお、ステップ101の上層生成工程と、ステップ102及びステップ103の吸収体第1成型工程及び吸収体第2成型工程との順序は、逆の順序であってもよい。
【0040】
ステップ104において、ステップ101において生成した上層と、ステップ103において成型した吸収体30Bとを接合する接合工程を行う。ステップ105において、圧搾工程を行う。具体的には、吸収体30Bと表面シート10とを厚み方向に圧縮して、周囲圧搾部62を形成する。ステップ106において、裏面シート接合工程を行う。具体的には、ステップ105において周囲圧搾部を形成した吸収体及び表面シートと、裏面シートとを接合する。なお、図5においては、図示しないが、裏面シートを接合した後、接着剤を塗布する工程を備える。
【0041】
次いで、図6に基づいて、ステップ103における吸収体成型第2工程について詳細に説明する。図6は、吸収体の吸収体成型第2工程を模式的に示した斜視図である。図7は、吸収体成型第2工程に用いられる圧縮ロールの断面図である。図7は、図6に示す圧縮ロールの上部ロールと下部ロールとの対向する部分における交差方向に沿い、かつ鉛直方向に沿った断面の断面図である。図8は、吸収体の模式断面図であり、(a)は、吸収体成型第2工程前の吸収体を示しており、(b)吸収体成型第2工程後の吸収体を示している。
【0042】
吸収体成型第2工程は、搬送方向MDに沿って連続して搬送される吸収体30Aを、一対の圧縮ロール間を通過させて厚み方向Tに圧縮加工する。圧縮ロール100は、互いに対向して配置された上部ロール101と下部ロール102とを有する。上部ロール101は、搬送される吸収体上に配置される。一方、下部ロール102は、搬送される吸収体下に配置される。上部ロール101及び下部ロール102の外周面には、吸収体30の外形に沿った型が形成されている。上部ロール101には、吸収体30の中央圧搾部61と薄層圧搾部63に対応する位置に、下部ロール側(径方向外側)に突出した圧縮刃101aが形成されている。圧縮刃101aの幅方向における長さW101aは、中央領域A1の幅方向における長さW1に対応している。下部ロール102には、上部ロールから離間する方向(径方向内側)に凹んだ凹み部102aが形成されている。凹み部102aの交差方向における長さW102aは、コア部31の幅方向Wにおける長さW4(図8(a)参照)に対応している。
【0043】
図8(b)に示すように、吸収体30Bの中央領域A1及び周囲領域A2の裏面シート側の面は、凹み部102aに対応して裏面シート側に膨らんでいる。このように、吸収体30の一部が裏面シート側に膨らんで形成されていることにより、中央領域と周囲領域の表面シート側の膨らみを減らすことができる。また、コア部31においては、中央領域A1に対応する部分のみ圧縮刃101aが形成され、周囲領域A2に対応する領域に圧縮刃101aが形成されていないため、中央領域A1のみに中央圧搾部61を形成し、かつ中央領域A1の厚みを周囲領域A2よりも薄く形成することができる。
【0044】
(第2の実施形態)
次いで、第2の実施形態に係る吸収性物品について、図9及び図10を参照して詳細に説明する。第2の実施形態に係る吸収性物品は、第1の実施形態と吸収体の構成が異なるが、その他の構成については同様である。図9は、第2の実施形態に係る吸収性物品の製造方法における吸収体成型第2工程に用いられる圧縮ロールの断面図である。図10は、第2の実施形態に係る吸収体32の模式断面図であり、(a)は、吸収体成型第2工程前の吸収体32Aを示しており、(b)吸収体成型第2工程後の吸収体32Bを示している。
【0045】
圧縮ロール200は、互いに対向して配置された上部ロール201と下部ロール202とを有する。上部ロール201は、搬送される吸収体上に配置される。一方、下部ロール202は、搬送される吸収体下に配置される。上部ロール201及び下部ロール202の外周面には、吸収体30の外形に沿った型が形成されている。上部ロール201には、吸収体の全幅にわたって下部ロール側(径方向外側)に突出した圧縮刃201aが形成されている。下部ロール202には、上部ロール201から離間する方向(径方向内側)に凹んだ凹み部202aが形成されている。凹み部202aの交差方向における長さW202aは、コア部31の幅方向の長さW4よりも長い。
【0046】
図8(b)に示すように、吸収体32Bの凹み部に対応する領域は、裏面シート側に膨らんでいる。コア部31は、全面に亘って同じ厚みとなるように圧縮されている。コア部31に対する幅方向外側の吸収体は、吸収体30Aの厚みがコア部31よりも薄いが、コア部31とともに凹み部202aに接するため、コア部31と比較して圧縮量が少ない。したがって、コア部31に対応する領域は、最も密度が高く、中央領域A1となる。中央領域A1に対する幅方向外側であって凹み部201aと接する部分は、中央領域A1よりも密度が低く、周囲領域A2となる。このように構成された吸収体を有する吸収性物品によっても、中央領域A1の周囲に比較的密度が低い周囲領域A2を設けることができるため、幅方向における外側から力がかかった際に周囲領域を変形させて、中央領域の変形を抑制することができる。更に、凹み部の幅方向Wにおける長さW202aは、コア部31の幅方向における長さW4よりも長いため、製造工程において吸収体の位置が交差方向において多少(例えば、10mm程度)ずれた場合であっても、中央領域と周囲領域とを形成することができる。
【0047】
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0048】
本発明に係る吸収性物品は、生理用ナプキン以外に、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッド、使い捨ておむつ等であってもよい。更に、例えば、図面に示した各実施の形態においては、中央圧搾部と薄層圧搾部の形状やサイズを同じとなるように構成したが、中央領域A1と薄層領域A3とにおいて求められる性能の違いに応じて、圧搾部の形状やサイズを異ならせるように構成してもよい。
【0049】
吸収体は、ポリマーを含むものであってもよいし、含まないものであってもよい。さらに、上記実施の形態における吸収体は、綿状パルプや合成パルプ等の坪量100〜300g/mに積層されて構成されているが、吸収体の坪量は、50〜400g/mの範囲で適宜調節してもよい。また、吸収性物品の裏面シートや吸収体の形状、及びこれらの材料等は、実施の形態に示したものに限られず、例えばサイドシートにギャザーが設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…吸収性物品、 10…表面シート、 20…裏面シート、 30,30A,30B,32,32A、32B…吸収体、 31…コア部、 41,42…サイドシード、 43,44…ウイング部、 50…接着剤、 61…中央圧搾部、 62…周囲圧搾部、63…薄層圧搾部、 75…粘着テープ、 A1…中央領域、 A2…周囲領域、 A3…薄層領域、 100,200…圧縮ロール、 101,201…上部ロール、 101a,201a…圧縮刃、 102,202…下部ロール、 102a,202a…凹み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性の表面シート、液不透過性の裏面シート、及び前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置される吸収体を有する吸収性物品であって、
前記吸収体は、排泄口当接領域の中心を含む中央領域と、前記中央領域の周囲において前記中央領域と隣接して配置された周囲領域と、を有し、
前記周囲領域の前記吸収体の密度は、前記中央領域の前記吸収体の密度よりも低く、
前記中央領域には、前記吸収体が厚み方向に圧搾された中央圧搾部が設けられている、吸収性物品。
【請求項2】
前記中央圧搾部は、前記中央領域において複数設けられている、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記中央圧搾部の前記幅方向の長さは、前記中央圧搾部の前記長手方向の長さよりも長い、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体には、前記周囲領域よりも厚みが薄い薄層領域が前記周囲領域の周囲に設けられており、
前記中央領域及び前記周囲領域の前記吸収体は、前記前記薄層領域の前記吸収体よりも前記裏面シート側に膨らんでいる、請求項1から請求項3のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記周囲領域の外縁には、前記表面シートと前記吸収体とが厚み方向に圧搾された周囲圧搾部が設けられている、請求項1から請求項4のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記中央領域及び前記周囲領域は、前記長手方向に延びる楕円形状であり、
前記中央領域の前記長手方向の中心における前記中央領域の前記幅方向の長さを、中央領域中心幅とし、かつ前記中央領域の前記長手方向の中心における前記周囲領域の前記幅方向の長さを、周囲領域中心幅とした場合に、
前記中央領域中心幅は、前記周囲領域中心幅よりも長い、請求項1から請求項5のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項7】
液透過性の表面シート、液不透過性の裏面シート、及び前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置される吸収体を有する吸収性物品であって、
前記吸収体は、排泄口当接領域の中心を含む中央領域と、前記中央領域の周囲において前記中央領域と隣接して配置された周囲領域と、前記周囲領域の周囲に配置され且つ前記周囲領域よりも厚みが薄い薄層領域と、を有しており、
前記周囲領域の前記吸収体の密度は、前記中央領域の前記吸収体の密度よりも低く、
前記中央領域には、前記吸収体が厚み方向に圧搾された中央圧搾部が設けられており、
前記周囲領域の外縁には、前記表面シートと前記吸収体とを厚み方向に圧搾した周囲圧搾部が形成されており、
前記薄層領域には、前記吸収体を厚み方向に圧搾した薄層圧搾部が形成されており、
前記中央圧搾部の前記幅方向の長さは、前記中央圧搾部の前記長手方向の長さよりも長く、
前記薄層領域の前記薄層圧搾部のうち、前記周囲領域に対する長手方向外側に配置された前記薄層圧搾部の前記幅方向の長さは、前記薄層圧搾部の前記長手方向の長さよりも長く、
前記中央領域及び前記周囲領域は、前記長手方向に延びる楕円形状であり、
前記中央領域の前記長手方向の中心における前記中央領域の前記幅方向の長さを、中央領域中心幅とし、かつ前記中央領域の前記長手方向の中心における前記周囲領域の前記幅方向の長さを、周囲領域中心幅とした場合に、
前記中央領域中心幅は、前記周囲領域中心幅よりも長い、吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−187354(P2012−187354A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55580(P2011−55580)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】