説明

吸収性物品

【課題】前方向への排泄物の漏れを有効に防止し得る吸収性物品を提供する。
【解決手段】恥骨前部と対向する前端吸収部5Aと、この前端吸収部より後側に延在する主吸収部とを有する吸収性物品10において、前記前端吸収部5Aは、その前端から主吸収部側に向かって延在する分離部により、左側吸収部と右側吸収部とに分離されており、前記左側吸収部と右側吸収部とを互いに重ね合わせるか、又は互いに近づくように寄せることにより、前記前端吸収部5Aが前記主吸収部に対して上方に立ち上がるように構成された、ことを特徴とする吸収性物品10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経血、おりもの、尿などの排泄物を吸収するための生理用ナプキン、パンティライナー、尿吸収パッド等の使い捨て吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より使用される、パンティライナー、生理用ナプキン、失禁パッドなどの吸収性物品は、その前後端の形状が平坦であるものが多く、吸収性物品と身体形状の間に生じる空隙から前後方向に経血等の排泄物が漏れやすい、という問題があった。
【0003】
おもに後ろ方向への漏れを防止する手段として、特許文献1に示すような、着用者の陰唇間若しくは臀部の形状に合わせて変形させることが可能な吸収性物品が開示されている。
【0004】
しかし、経血等の排泄物の漏れは、着用者の恥骨前部(女性においては恥丘)の形状と吸収性物品との間の空隙より前方向にも生じ得るものであり、特許文献1に開示される吸収性物品は、その前端側の漏れを有効に防止し得るものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3614415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主たる課題は、前方向への排泄物の漏れを有効に防止し得る吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。なお、本発明において「前」及び「後ろ」とは、それぞれ着用者の腹側、背側を示し、「上方」とは着用者の頭側、「下方」とは「上方」の反対方向を示すものとする。また、「表面側」とは肌当接面側を、「裏面側」とはその反対側を示すものとする。
【0008】
<請求項1記載の発明>
恥骨前部と対向する前端吸収部と、この前端吸収部より後側に延在する主吸収部とを有する吸収性物品において、
前記前端吸収部は、その前端から主吸収部側に向かって延在する分離部により、左側吸収部と右側吸収部とに分離されており、
前記左側吸収部と右側吸収部とを互いに重ね合わせるか、又は互いに近づくように寄せることにより、前記前端吸収部が前記主吸収部に対して上方に立ち上がるように構成された、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0009】
(作用効果)
本発明では、前端吸収部を主吸収部に対して立ち上げることで、前端吸収部から主吸収部にかけての屈曲部が恥骨前部の形状に沿うようになり、恥骨前部と吸収体の間の空隙が少なくなり、前側への経血等の漏れが生じにくい、という効果を発揮する。
また、使用時に左側吸収部と右側吸収部とを重ね合わせることができるため、吸収体の重ね具合により、その形状を着用者にあわせて調整可能である。一方で、使用前の吸収性物品はフラットな形状であるため、輸送時にかさばらない、という利点を有する。
【0010】
<請求項2記載の発明>
前記前端吸収部及び主吸収部は、下着内面に固定される基部上に設けられており、前記主吸収部は前記基部に固定されるとともに、前記前端吸収部は前記基部に対して固定されずに自由に移動可能なように構成されている、請求項1記載の吸収性物品。
【0011】
(作用効果)
従来の吸収性物品の多くは下着の内面に粘着剤等により剥離可能に固定されるものが一般的であるが、その場合、物品の形状が下着により拘束されてしまうため、身体に対して下着がずれたときには、吸収性物品は身体ではなく下着に追従する結果、身体に対してはずれてしまう。これに対して、上述のように、下着内面に固定される基部に対して前端吸収部を固定せずに自由に移動可能とすると、身体に対して下着がずれ、これに伴い基部がずれたとしても、前端吸収部は身体に追従してフィットすることができる。
【0012】
<請求項3記載の発明>
前記基部のうち少なくとも前端吸収部の下側に位置する部分は、その上面から排泄物を吸収する下層吸収部として構成されている、請求項2記載の吸収性物品。
【0013】
(作用効果)
この場合、分離部や前端吸収部裏面から染み出した経血等を下層吸収部で吸収することが可能である。
【0014】
<請求項4記載の発明>
前記基部のうち少なくとも前端吸収部の下側に位置する部分上に、下層吸収部が設けられており、この下層吸収部は前記基部に対して固定されずに自由に移動可能なように構成されている、請求項2記載の吸収性物品。
【0015】
(作用効果)
下層吸収部が上層の前端吸収部と共に上方に立ち上がることにより、前端吸収部のスリット部分及び前端吸収部裏面より染み出す経血が、前端吸収部と下層吸収部との間隙から前方向にもれにくく、より確実に吸収することができる。
【0016】
<請求項5記載の発明>
前記分離部は、前端から主吸収部側に向かうにつれて幅が狭くなる略V字形状のスリット部であり、且つそのスリット部の長手方向の長さは物品全長の2.5〜35%であり、そのスリット部の幅方向の最大長さは製品の最大幅の2〜55%である、請求項1〜4のいずれかに記載の吸収性物品。
【0017】
(作用効果)
分離部をこのような形状、大きさとすることで、吸収体前端部をより着用者の身体に合わせた形状としやすい。
【0018】
<請求項6記載の発明>
前記前端吸収部の厚さが、前記主吸収部の厚さの20〜60%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0019】
(作用効果)
前端吸収部における左右の部分を重ね合わせた場合、重ね合わされた部分が嵩高となりやすく、着用感や恥骨前部へのフィット性に影響を与えるおそれがある。これに対して、前端吸収部の厚みを主吸収部より薄くすることにより、重ね合わされた部分の嵩高感を軽減することができる。
【0020】
<請求項7記載の発明>
前記左側吸収部と右側吸収部とが、幅方向に沿って伸長された弾性部材により繋がれており、この弾性部材の収縮力により前記左側吸収部と右側吸収部とが引き寄せられて接触又は重なるように構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0021】
(作用効果)
このような構成とすることにより、前端吸収部が自動的に立ち上がり、恥骨前部に沿う立体形状となるとともに、その形状が弾力的に維持されるため恥骨前部に対するフィット性にも優れたものとなる。
【0022】
<請求項8記載の発明>
前記左側吸収部及び右側吸収部のいずれか一方の裏面を、他方の表面に止着する止着手段を備えた、請求項1〜7のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0023】
(作用効果)
このような止着手段を備えることにより、前端吸収部の上方への立ち上がり構造を保持することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、吸収性物品において、吸収体の前端が恥骨前部の形状に沿って上方に立ち上がった形状となるため、吸収体と身体との間の間隙が小さくなり、前方向への経血等の漏れを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る生理用ナプキンの展開図である。
【図2】第1の実施形態の横断面図(図1のI−I線矢視図)である。
【図3】第1の実施形態の横断面図(図1のII−II線矢視図)である。
【図4】第1の実施形態の使用時の形状を示す斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の展開図である。
【図6】第2の実施形態の横断面図(図5のIII−III線矢視図)である。
【図7】第1の実施形態の横断面図(図5のIV−IV線矢視図)である。
【図8】本発明の第3の実施形態の展開図である。
【図9】第3の実施形態の横断面図(図8のV−V矢視図)である。
【図10】第3の実施形態の横断面図(図8のVI−VI矢視図)である。
【図11】本発明の第4の実施形態の展開図である。
【図12】本発明の第5の実施形態の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
<生理用ナプキンの基本構造>
図1は本発明に係る吸収性物品10の例として、生理用ナプキンの実施形態の一例を示した展開図である。図3は図1のII−II線矢視図である。生理用ナプキン10の基本構造は、不織布よりなる透液性のトップシート1A、吸収体3A及びポリエチレンシート等の不透液性シートからなるバックシート2がこの順に積層された構造である。
【0027】
不透液性バックシート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。バックシート2の非使用面側(外面)には1または複数条の粘着剤層(図示せず)が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン10を下着に固定するようになっている。バックシート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0028】
透液性トップシート1Aとしては、有孔または無効の不織布が用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。トップシート1Aに多数の透孔を形成した場合には、経血が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。なお、トップシート1Aとしてエアスルー不織布等の液保持性に富む素材を用いると、トップシート1Aに液残りを生じる恐れがあるため、疎水性の素材を使用する、撥水剤を塗布する等、撥水性を有するシートを好適に使用できる。
【0029】
吸収体3Aは経血を吸収・保持し得るものであれば良く、通常はフラッフ状パルプ中に吸水性ポリマー粉末を混入したものが吸収機能および価格の点から好適に使用される。また、吸収体3Aには合成繊維が含まれていてもよい。吸収体3Aは形状及びポリマー粉末保持等のために包装シートによって囲繞されていてもよい。包装シートは、クレープ紙、親水性不織布等の公知のシートを使用できるが、後述のエンボス処理に適するため、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等、もしくはその複合繊維、共重合体、ブレンド体といった熱融着性を有する合成繊維を混入させたシートとすることがより好ましい。熱融着繊維は、少なくともトップシートと直接接触する部分に混入させればよいが、製造効率等より、全体的に混入させることがより好ましい。
【0030】
また、トップシート1と吸収体3Aとの間に不繊布等からなるセカンドシートを積層し、体液の拡散性向上を図ることもできる。さらに、両側部上に、体液の横漏れ防止機能を有する起立ギャザーを設けてもよい。
【0031】
本形態の生理用ナプキン10は、吸収体3Aの両側端部かつ前後方向中央部に前後方向に向かう線を描くエンボスE1がトップシート1A上から付与されている。このエンボスE1の付与によって、体液の前後方向への拡散性が向上し、また、着用者の脚部の動きによる、長手方向中央部分の幅方向中央寄りの圧力がかかった場合に、このエンボスE1部分において、折れ曲がりやすく、不測の変形を引き起こさない、という利点がある。
【0032】
トップシート1A及びバックシート2は、吸収体3Aの前後方及び両側方まで延出している。この延出部分のうち、前方向以外の延出部分において、トップシート1及びバックシート2は、ホットメルト等の接着剤やヒートシール等によって接合され、それぞれ製品後縁又は側縁を規律するバックフラップ又はサイドフラップが形成される。
【0033】
ここで、トップシート1A及びバックシート2の延出は、前後方向中央部において幅方向に長くし、この長くなった部分で、肌着の裏側(外面側)に折り返されて止着される、いわゆるウィングを構成することもできる。
【0034】
バックシート2の裏面側には、通常、ショーツ等の肌着に対する止着部が設けられる。この止着部は、例えば、スチレン・ブタジエン共重合体やスチレン・オレフィン共重合体等からなる粘着剤を、前後方向に帯状に塗布して形成することができる。この止着部は、装着時において生理用ナプキン10を肌着に止着するためのものであるが、本生理用ナプキン10を需要者に提供する段階においては、個別包装のための剥離シートなどを止着しておくこともできる。この剥離シートは、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、ポリエチレンテレフタレートシート、ラミネート紙、等からなり、止着部に対して剥離可能とされる。
【0035】
本形態の生理用ナプキン10は、吸収体3Aの両側端部かつ前後方向中央部に前後方向に向かう線を描くエンボスE1がトップシート1A上から付与されている。このエンボスE1の付与によって、体液の前後方向への拡散性が向上し、また、着用者の脚部の動きによる、長手方向中央部分の幅方向中央寄りの圧力がかかった場合に、このエンボスE1部分において、折れ曲がりやすく、不測の変形を引き起こさない、という利点がある。
【0036】
<第1の実施形態>
第1の実施形態を図1〜図4に示す。図1は第1の実施形態において、生理用ナプキンの吸収体3Aの前端吸収部5AはV字状スリットSよりなる分離部を有し、右側吸収部と左側吸収部に分かれる。当該スリット当接部位のトップシートも同様の形状のスリットが配されている。図2は、図1のI−I断視図であり、Gはホットメルト接着剤等で固着されている固着部である。前端吸収部5Aの裏面側は、バックシート2に固着されず、間に介在された不織布4Aに固着されている。不織布4Aは、その後端側の一部のみがバックシート2に固定されており、その前端側はバックシート2に対して離間可能である。不織布4Aは、図示例のように、トップシート1Aのスリット両側部と同一形状を有し、間に吸収体3Aを介在して、トップシート1Aとその縁部が一致するように積層されている。更に、トップシート1Aと不織布4Aの後端側以外は吸収体3Aより前方向及び両側方に延出しており、当該延出部分において、トップシート1Aと不織布4Aはホットメルト接着剤等で直接固着されている。このように、吸収体3Aの前端側のスリットSの両側部は、その表面側及び裏面側が、それぞれトップシート1Aと不織布4Aで覆われており、その裏面側にバックシートに固着されない部分を有する。このバックシートに固着されない部分を前端吸収部5Aとする。図示例においては、スリットSは吸収体に1箇所にのみ配され、前端吸収部5Aは2つに分かれているが、右側吸収部、左側吸収部のどちらか一方または両方にスリットを配し、前端吸収部5Aが3つ以上の部分に分かれる構成としてもよい。
【0037】
V字状スリットSの長手方向の長さは、製品の長手方向の全長の2.5〜35%、特に5.0〜25%とし、幅方向の長さは、該当部分の製品幅の1.5〜55%、特に5.0〜35%とすることが好ましい。
【0038】
前端吸収部5Aの厚みは、吸収体3Aの前端吸収部以外の部分(主吸収部8)の厚みの20〜60%、特に25〜50%とすることが好ましい。前端吸収部5Aの右側吸収部と左側吸収部を重ねせたときに、主吸収部8と同等の厚みとすることで、前端吸収部5Aを嵩高にすることがないため、その着用感を損ないにくい。
【0039】
不織布4Aは、トップシート1Aと一体として配してもよいが、製造効率の観点から、別体として配するのがより好ましい。不織布4Aを形成する素材等は特に限定されないが、吸収体に吸収された経血等の裏面側への染み出しを少なくするため、撥水性を有することが好ましい。特にトップシート1Aを構成する不織布と同一素材の不織布を使用することが好ましい。
【0040】
前端吸収部5Aの右側吸収部及び左側吸収部の少なくとも1つの裏面側の不織布4Aには、係止手段6Aを配することが好ましい。係止手段としては、面ファスナーのフックテープ、粘着剤等が挙げられる。複数回の着脱が可能であること、後述のように、不織布よりなるトップシート1Aへの係止が容易であることから、特にフックテープを好適に使用することができる。
【0041】
使用時には、前端吸収部5Aの係止手段6Aを有する部分を、他方の部分の上に重ねて、係止手段6Aをトップシート1A上に係止させる構成とする。係止させた状態を図4に示す。図4において、前端吸収部5Aはバックシートより離間して、主吸収部8より斜め上方に立ち上がり、立体形状を構成する。前端吸収部5Aの後端には、前述の立ち上がりを容易とするため、エンボスE2を設けることが好ましい。
【0042】
バックシート2はそのまま露出させてもよいが、その見栄えや、スリット部からの肌側露出部分の肌あたりを良くするため、不織布4Aとバックシート2との間に、第2のトップシート1Bを配することが好ましい。第2のトップシート1Bはバックシートと同一の形状としてもよく、また図示例のように前端側に部分的に配してもよい。第2のトップシート1Bは、不織布4Aと一体的に配してもよいが、製造効率の観点より、別体として配するのが好ましい。また、第2のトップシート1Bは、トップシート1Aまたは不織布4Aと同一の不織布を使用してもよいが、前端吸収部5Aのスリット間や、前端吸収部5Aの裏面側より染み出した経血等を保液することが望ましい為、親水性の不織布を使用することがより好ましい。
【0043】
<第2の実施形態>
第2の実施形態を図5〜7に示す。第2の実施形態において、吸収体3Aと裏面側の下層吸収体3Bとが積層されている。吸収体3Aの前端はスリットを有し、バックシート2より離間可能であるが、下層吸収体3Bはバックシート2に全体的に固着され、その前端側は第2のトップシート1Bで覆われている。
【0044】
下層吸収体3Bとしては、吸収体3Aと同一の素材としてもよいが、吸収体3Aがある程度の嵩を有するため、全体としての嵩を抑えるため、エアレイド不織布等のシート状の吸収体を使用することが好ましい。
【0045】
吸収体3Aの裏面側に下層吸収体3Bを備えることで、前端吸収部5Aのスリット間や裏面側から染み出した経血等を吸収することが可能となる。なお、本形態においても、第2のトップシート1Bは親水性不織布を使用することが好ましい。
その他、トップシート1A,吸収体3A,前端吸収部5A、不織布4A、係止手段6A等の性状及び構造は第1の実施形態と同様である。
【0046】
<第3の実施形態>
第3の実施形態を図8〜10に示す。第3の実施形態において、下層吸収体3Bは、その前端部の、特に前端吸収部5Aの下部に相当する部分が、裏面側に不織布4Cが介在することにより、バックシート2に固定されず離間可能となっている。このバックシート2から離間可能な部分をまた、吸収体3Bの当該部分は、使用前の状態では、表面側においても、下層前端吸収部5Bとする。下層前端吸収部5Bは、下層吸収体3Bと上層の吸収体3Aとの間に不織布4Bが介在することにより、前端吸収部5Aにも固定されない状態となる。不織布4B,4Cは同一の形状とし、下層吸収体3Bを介在してその縁部が一致するように積層することが好ましい。不織布4B,4Cは、積層状態で吸収体3Bより前方及び両側方に延出しており、当該延出部分がホットメルト接着剤等で固着されている。このように、下層吸収体3Bの前端部は、その表側面、裏側面がそれぞれ不織布4B,4Cで覆われている。
吸収体3Bの、その前端部の、吸収体3Aの前端吸収部5Aの直下に相当する部分を下層前端吸収部5Bとする。
【0047】
不織布4B,4Cは一体の不織布を使用してもよいが、製造効率の観点から別体の不織布を使用することが好ましい。不織布4B,4Cの素材は特に限定されないが、撥水性の不織布とすることが好ましい。特にトップシート1Aと同一の不織布を好適に使用できる。
【0048】
図示例において、下層前端吸収部5Bはその前端中央部に係止手段6Bを有する。使用時において、前端吸収部5Aを係止手段6Aにより組み立て、バックシート2より離間させ、主吸収部8より立ち上がった状態とした後、係止手段6Bにより前端吸収部5Aの最裏面に下層前端吸収部5Bの表面側を係止することにより下層前端吸収部5Bもバックシート2から離間させ、立体的に立ち上がった状態とすることができる。なお、下層前端吸収部5Bに係止手段6Bを設けず、立ち上がった状態の前端吸収部5Aの最裏面に係止手段6Aが位置する構成としてもよい。このように、前端吸収部5Aの裏面側に下層前端吸収部5Bを係止可能な構成とすることで、使用時に前端吸収部5Aのスリット間や裏面から染み出した経血等が、吸収体3Aと3Bの空隙から前方に漏れだすのを軽減することが可能となる。
その他、トップシート1A,第2のトップシート1B、バックシート2、吸収体3A,吸収体3Bの他の部分、不織布4Aの性状及び構造は第2の実施形態と同様である。
【0049】
<第4の実施形態>
第4の実施形態の展開図を図11に示す。第4の実施形態においては、吸収体3Aの後端側にも前端側と同様の形態のスリットS、後端吸収部5C、その前端のエンボスE3、及び後端吸収部5Cの裏面に配された係止手段6Cを有する構成とする。後端吸収部5Cの裏面側には不織布4Dが配され、バックシート2の表面側には第3のトップシート1Cが配される。このような構成とすることで、前側のみでなく、後ろ側も着用者の身体の形状に合わせて立体的な形状とすることができる。
その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0050】
<第5の実施形態>
第5の実施形態の展開図を図12に示す。第5の実施形態においては、前端吸収部5AのスリットSを横断するように、トップシート1Aの吸収体側面に複数の弾性部材7,7…を設ける構成とする。弾性部材7,7…の収縮により、前端吸収部5Aの各部分が互いにその側辺を接するように、もしくは重ね合わされるように引き寄せられることで、前端吸収部5Aが主吸収部8より立ち上がった状態となる。
その他の構成は第1の実施形態と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、生理用ナプキン、パンティライナー、尿吸収パッド等の使い捨て吸収性物品に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10…吸収性物品、1A,1B,1C…透液性トップシート、2…不透液性バックシート、3A,3B…吸収体、4A,4B,4C,4D…不織布、5A…前端吸収部、5B…下層前端吸収部、5C…後端吸収部、6A,6B,6C…係止手段、7…弾性部材、E1,E2…エンボス、S…スリット、8…主吸収部、G…固着部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
恥骨前部と対向する前端吸収部と、この前端吸収部より後側に延在する主吸収部とを有する吸収性物品において、
前記前端吸収部は、その前端から主吸収部側に向かって延在する分離部により、左側吸収部と右側吸収部とに分離されており、
前記左側吸収部と右側吸収部とを互いに重ね合わせるか、又は互いに近づくように寄せることにより、前記前端吸収部が前記主吸収部に対して上方に立ち上がるように構成された、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記前端吸収部及び主吸収部は、下着内面に固定される基部上に設けられており、前記主吸収部は前記基部に固定されるとともに、前記前端吸収部は前記基部に対して固定されずに自由に移動可能なように構成されている、請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記基部のうち少なくとも前端吸収部の下側に位置する部分は、その上面から排泄物を吸収する下層吸収部として構成されている、請求項2記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記基部のうち少なくとも前端吸収部の下側に位置する部分上に、下層吸収部が設けられており、この下層吸収部は前記基部に対して固定されずに自由に移動可能なように構成されている、請求項2記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記分離部は、前端から主吸収部側に向かうにつれて幅が狭くなる略V字形状のスリット部であり、且つそのスリット部の長手方向の長さは物品全長の2.5〜35%であり、そのスリット部の幅方向の最大長さは製品の最大幅の2〜55%である、請求項1〜4のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記前端吸収部の厚さが、前記主吸収部の厚さの20〜60%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記左側吸収部と右側吸収部とが、幅方向に沿って伸長された弾性部材により繋がれており、この弾性部材の収縮力により前記左側吸収部と右側吸収部とが引き寄せられて接触又は重なるように構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記左側吸収部及び右側吸収部のいずれか一方の裏面を、他方の表面に止着する止着手段を備えた、請求項1〜7のいずれか1項に記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−29807(P2012−29807A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171062(P2010−171062)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】