説明

吸収性物品

【課題】トップシートと吸収体との間隔が広く確保され、吸収速度が顕著に向上するものでありながら、構造が簡素で、製造も容易である吸収性物品を提供する。
【解決手段】上記課題は、トップシート3と吸収体4,5との間における少なくとも排泄口対向部6Mに中間シート6を介在させるとともに、中間シート6の少なくとも排泄口対向部6Mに、トップシート側に起立する起立縁部を有する開孔60と、吸収体側に起立する起立縁部を有する開孔62とを、それぞれ多数形成することにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経血やおりものなどを吸収するための生理用ナプキン、パンティライナー、尿吸収パッド、使い捨ておむつ等の使い捨て吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パンティライナー、生理用ナプキン、失禁パッドなどの吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性バックシートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性トップシートとの間に綿状パルプ等からなる圧縮復元性を有する吸収体や、エアレイド吸収体を介在したものが用いられている。
また、一般的な吸収性物品においては、排泄物の吸収後でも乾燥した肌触りが要求されるようになっており、そのための一つの解決手段として、トップシートと吸収体との間に中間シートを介在させることが知られている。中間シートとしては、嵩高い不織布等、種々の素材が提案されているが、トップシートと吸収体との間隔が広く確保され、吸収速度が顕著に向上するものとして、側壁に開孔を有する凹部が多数形成された穴開き三次元成形フィルムが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−148861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の穴開き三次元成形フィルムは、構造が複雑なため製造が困難である、という問題点がある。
そこで本発明の主たる課題は、トップシートと吸収体との間隔が広く確保され、吸収速度が顕著に向上するものでありながら、構造が簡素で、製造も容易である吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
肌当接面をなす液透過性のトップシートと、液不透過性シートと、これらの間に介在された吸収体と、前記トップシートと前記吸収体との間における少なくとも排泄口対向部に介在された中間シートと、を備えており、
前記中間シートにおける少なくとも排泄口対向部に、前記トップシート側に起立する起立縁部を有する開孔が多数形成されている、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0006】
(作用効果)
本発明は、中間シートを単なる穴開きシートとするのではなく、中間シートにおける少なくとも排泄口対向部に、トップシート側に起立する起立縁部を有する開孔を多数形成したところに特徴を有するものであり、これにより、トップシート側に起立する起立縁部がトップシートを持上げ、その周囲にトップシートと中間シートとの隙間を形成することになるため、トップシートと吸収体との間隔が広く確保されるとともに、吸収速度が顕著に向上するものとなる。さらに、構造が簡素であり、中間シートの基材に、吸収体側からトップシート側へピンを刺し通す等の外力を加え、当該外力付加部分の中央を開孔しつつその周囲を外力の方向に導出する(換言すればバリが形成されるように開孔する)だけで製造できるため、製造も容易である。
【0007】
<請求項2記載の発明>
前記中間シートは樹脂フィルムであり、前記中間シートにおける少なくとも排泄口対向部に、トップシート側に起立する起立縁部を有する開孔と吸収体側に起立する起立縁部を有する開孔とがそれぞれ多数形成されている、請求項1記載の吸収性物品。
【0008】
(作用効果)
中間シートが樹脂フィルムであると、素材としては液保持し難いため好ましいが、排泄口対向部の開孔がトップシート側に起立する起立縁部を有する開孔だけであると、開孔の周囲の隙間に導入された排泄物が吸収体側へ移動し難くなり、トップシートの表面に逆戻りするおそれがある。そこで、上述のように、トップシート側に起立する起立縁部を有する開孔だけでなく、吸収体側に起立する起立縁部を有する開孔も形成するのは好ましい。これにより、トップシート側に起立する起立縁部を有する開孔の周囲の隙間に導入された排泄物は、吸収体側に起立する起立縁部を有する開孔を通じて吸収体側へ容易に移動するため、トップシートの表面に逆戻りするおそれが少なくなるとともに、吸収量が多い場合でも吸収速度が低下し難くなる。なお、この形態でも、中間シートの基材に対して表裏両側からピンを刺し通す等の外力を加え、当該外力付加部分の中央を開孔しつつその周囲を外力の方向に導出する(換言すればバリが形成されるように開孔する)だけで製造できるため、製造容易性は損なわれない。
【0009】
<請求項3記載の発明>
前記中間シートは、排泄口対向部と、その幅方向両側に延在する側部とを有しており、この側部に、吸収体側に起立する起立縁部を有する開孔が多数形成されている、請求項2記載の吸収性物品。
【0010】
(作用効果)
排泄口対向部において、トップシート側に起立する起立縁部を有する開孔の周囲の隙間に導入された排泄物は吸収体側へ移動し難いため、寝返りを打った時や横臥時等、吸収性物品が横に傾いた時に、中間シート上に溜まった排泄物が中間シート上を横方向に移動した後、トップシートの表面に逆戻りし、所謂横漏れを発生させるおそれがある。そこで、上述のように、中間シートを排泄口対向部の幅方向両側まで延在させ、その延在部(側部)に吸収体側に起立する起立縁部を有する開孔を形成するのは好ましい。これにより、中間シート上に溜まった排泄物が中間シート上を横方向に移動しても、中間シートの側部における吸収体側に起立する起立縁部を有する開孔を通じて吸収体側へ容易に移動するため、トップシートの表面に逆戻りするおそれが少なくなる。なお、この形態でも、中間シートの基材に対して、中間シートの側部を排泄口体口部に向かって折り返した後、トップシート側から吸収体側へピンを刺し通す等の外力を加え、当該外力付加部分の中央を開孔しつつその周囲を外力の方向に導出し(換言すればバリが形成されるように開孔する)折り返したシートを開くだけで製造できるため、製造容易性は損なわれない。
【0011】
<請求項4記載の発明>
前記中間シートは、排泄口対向部と、その前後方向両側に延在する前後部とを有しており、この前後部に、トップシート側に起立する起立縁部を有する開孔が多数形成されており、
前記中間シートの前後部におけるトップシート側に起立する起立縁部を有する開孔は、個々の開孔の面積が、前記中間シートの排泄口対向部におけるトップシート側に起立する起立縁部を有する開孔より小さく、かつ厚みが前記中間シートの排泄口対向部におけるトップシート側に起立する起立縁部を有する開孔より薄い、
請求項3記載の吸収性物品。
【0012】
(作用効果)
このように、中間シートを排泄口対向部の前後方向両側に延在させ、その延在部(前後部)に、排泄口対向部と同様に、トップシート側に起立する起立縁部を有する開孔を多数形成させることにより、排泄口対向部及びその前後両側においてトップシートが浮き上がり、身体の股間及びその前後両側に続く窪みに対するフィット性が向上する。さらに、中間シートの前後部におけるトップシート側に起立する起立縁部を有する開孔は、排泄口対向部におけるトップシート側に起立する起立縁部を有する開孔よりも開孔径を小さくしているため、厚みが薄くなり、トップシートは排泄口対向部においてその前後よりも浮き上がり、排泄口に対して良好にフィットする。しかも、中間シートの前後部におけるトップシート側に起立する起立縁部を有する開孔は、個々の開孔の面積が排泄口対向部におけるトップシート側に起立する起立縁部を有する開孔より小さいため、当該開孔通じた排泄物の逆戻りが発生し難い。なお、開孔の厚みとはトップシート側に起立する起立縁部又は吸収体側に起立する起立縁部の最大厚みを意味する。
【0013】
<請求項5記載の発明>
前記排泄口対向部におけるトップシート側に起立する起立縁部を有する開孔は、個々の開孔の面積が0.5〜2.0mm2、開孔数が10〜100個/cm2、かつ厚みが0.2〜1.0mmであり、
前記排泄口対向部における吸収体側に起立する起立縁部を有する開孔は、個々の開孔の面積が0.01〜0.3mm2、開孔数が300〜500個/cm2、かつ厚みが0.02〜0.3mmであり、
前記側部における吸収体側に起立する起立縁部を有する開孔は、個々の開孔の面積が0.01〜0.3mm2、開孔数が300〜500個/cm2、かつ厚みが0.02〜0.3mmであり、
前記前後部におけるトップシート側に起立する起立縁部を有する開孔は、個々の開孔の面積が0.1〜1.5mm2、開孔数が50〜200個/cm2、かつ厚みが0.05〜0.75mmである、請求項4記載の吸収性物品。
【0014】
(作用効果)
本発明では、各部の開孔の寸法等はこのような範囲内にあるのが好ましい。なお、開孔の面積とは、開孔の直径が最小となる部分の面積を意味し、開孔数とは、各部の単位面積あたりの開孔の数を意味する。
【発明の効果】
【0015】
以上のとおり本発明によれば、トップシートと吸収体との間隔が広く確保され、吸収速度が顕著に向上するものでありながら、構造が簡素で、製造も容易となる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】生理用ナプキンの展開図である。
【図2】図1のII−II線矢視図である。
【図3】図1のIII−III線矢視図である。
【図4】中間シートの斜視図である。
【図5】図4のV−V線矢視図、VI−VI線矢視図、VII−VII線矢視図である。
【図6】製造方法を示す概略断面図である。
【図7】製造方法を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
<生理用ナプキンの基本構造の一例>
図1は本発明に係る生理用ナプキン1の展開図であり、図2は図1のII−II線矢視図、図3は図1のIII−III線矢視図、図4は図1の要部拡大図である。この生理用ナプキン1は、ポリエチレンシートなどからなる不透液性バックシート2と、肌当接面3Fをなし、経血やおりものなどを速やかに透過させるトップシート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4,5と、トップシート3と吸収体4,5との間に、トップシート3の裏面に接するように配置された中間シート6と、吸収体4の略側縁部を起立基端とし、かつ少なくとも体液排出部を含むように前後方向に所定の区間内において表面側に突出して設けられた左右一対の立体ギャザーBS、BSとから主に構成されている。吸収体4の周囲においては、その上下端縁部では不透液性バックシート2とトップシート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している不透液性バックシート2と、立体ギャザーBSを形成しているサイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、これら不透液性バックシート2とサイド不織布7とによる積層シート部分によって側方に突出するウイング状フラップW,Wが形成されているとともに、これよりも臀部側に位置する部分に第2ウイング状フラップWB,WBが形成されている。
【0018】
不透液性バックシート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。不透液性バックシート2の非使用面側(外面)には1または複数条の粘着剤層(図示せず)が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着に固定するようになっている。不透液性バックシート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0019】
トップシート3としては、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。前記透液性トップシート3に多数の透孔を形成した場合には、経血やおりもの等(以下、まとめて体液という。)が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。
【0020】
吸収体4,5としては、体液を吸収・保持し得るものであれば良く、通常はフラッフ状パルプ中に吸水性ポリマー粉末を混入したものが吸収機能および価格の点から好適に使用される。但し、吸収体4,5として、例えばPE/PET等の化繊を混合しても良く、下層吸収体4としてはエアレイド吸収体を用いても良い。吸収体4,5は形状及びポリマー粉末保持等のためにクレープ紙等の液透過性の包装シート4L,5Lによって包装するのが望ましいが、クレープ紙の代わりに不織布で囲繞しても良い。図示例では、下層吸収体4の上側における幅方向中央部に沿って上層吸収体5が設けられているが、上層吸収体5及びその包装シート5Lを省略し、単一の吸収体4のみとする等、公知の吸収体構造を採用することができる。
【0021】
図示例では、トップシート3は吸収体4の幅よりも若干幅が広い程度とされ、吸収体4を覆うだけに止まり、トップシート3の幅方向外側は、トップシート3の両側部表面から延在するサイド不織布7(トップシートとは別の部材)により覆われている。サイド不織布7の幅方向中央側の部分は、立体ギャザーBSを形成している。サイド不織布7としては、経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いることができる。かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を13〜23g/m2として作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系や、パラフィン系等の撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0022】
サイド不織布7は、図2および図3に示されるように、幅方向中間部より外側部分を吸収体4の内側位置から吸収体側縁を若干越えて不透液性バックシート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着し、これらサイド不織布7と不透液性バックシート2との積層シート部分により、ほぼ体液排出部に相当する吸収体側部位置に左右一対のウイングフラップW、Wを形成するとともに、これより臀部側位置に第2ウイング状フラップWB、WBを形成している。これらウイング状フラップW、Wおよび第2ウイング状フラップWB、WBの外面側にはそれぞれ粘着剤層12…,13…を備え、ショーツに対する装着時に、ウイング状フラップW、Wが折返し線RL位置にて反対側に折り返し、ショーツのクロッチ部分に巻き付けて止着するようになっている。
【0023】
一方、サイド不織布7の内方側部分はほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された糸状弾性伸縮部材19が配設されるとともに、糸状弾性伸縮部材19の上側部位に複数本の、図示例では2本の糸状弾性伸縮部材20,20が両端または長手方向の適宜の位置が固定された状態で配設されている。この二重シート部分は前後端部では図3に示されるように、断面Z状に折り畳んで積層された状態で吸収体4側に接着されることによって、糸状弾性伸縮部材19配設部位を屈曲点として、断面くの字状に内側に開孔を向けたポケットを形成しながら表面側に起立する立体ギャザーBS、BSが形成されている。
【0024】
他方、本生理用ナプキン1においては、詳細には図4に示されるように、下層吸収体4の使用面側には、幅方向中央部にナプキン長手方向に細長く、かつ周方向に閉じた環状のエンボス凹部8によって区画される領域に、周囲に対して使用面側に高く隆起する上層吸収体5による中高部が形成されている。エンボス凹部8は、肌当接部部材3の表面から吸収体4内まで食い込むように形成されている。中高部の厚みは、厚くし過ぎると下層吸収体4の剛性が上がり身体への密着性が低下するため3〜20mm、好ましくは5〜15mmとするのが好ましい。また、使用面側にはエンボス凹部8とともに、エンボス凹部8の前端部を二重形状とするために前端部エンボス9が形成されるとともに、エンボス凹部8の後側に、エンボス凹部8に対して所定の間隔を空けて、略逆傘形状の後端独立エンボス10が形成されている。
【0025】
<特徴部分について>
特徴的には、図4に示すように、中間シート6における少なくとも排泄口対向部6Mに、縁部60eがトップシート3側に起立する起立縁部を有する開孔60が多数形成されている。このような中間シート6を用いることにより、図5に示すように、開孔60のトップシート側に起立する起立縁部60eがトップシート3を持上げ、その周囲にトップシート3と中間シート6との隙間を形成することになるため、トップシート3と吸収体4,5との間隔が広く確保されるとともに、吸収速度が顕著に向上するものとなる。
【0026】
中間シート6としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系樹脂のフィルムを好適に用いることができるが、液透過性を有するものであれば良く、各種の不織布、特に撥水処理された不織布を用いることもできる。
【0027】
中間シート6は、図示例では前後方向においてはトップシート3の全体にわたり設けられ、幅方向においては吸収体5とほぼ同幅に設けられているが、少なくとも排泄口対向部6Mに設けられる限り、トップシート3の前後方向中間部のみに設けても、吸収体5の幅方向中央部のみに設けても良い。中間シート6は、トップシート3の裏面にホットメルト又は熱融着(エンボス)により接合するのが望ましい。
【0028】
中間シート6が樹脂フィルムであると、素材としては液保持し難いため好ましいが、排泄口対向部6Mにトップシート側に起立する起立縁部60eの開孔60だけしか設けられないと、開孔60の周囲の隙間に導入された排泄物が吸収体4,5側へ移動し難くなり、トップシート3の表面に逆戻りするおそれがある。そこで、図示例のように、トップシート側に起立する起立縁部60eの開孔60だけでなく、縁部62eが吸収体4,5側に起立する起立縁部を有する開孔62も形成するのが好ましい。これにより、トップシート側に起立する起立縁部60eを有する開孔60の周囲の隙間に導入された排泄物は、吸収体側に起立する起立縁部62eを有する開孔62を通じて吸収体4,5側へ容易に移動するため、トップシート3の表面に逆戻りするおそれが少なくなるとともに、吸収量が多い場合でも吸収速度が低下し難くなる。
【0029】
また、排泄口対向部6Mにおいて、トップシート側に起立する起立縁部60eを有する開孔60の周囲の隙間に導入された排泄物は吸収体4,5側へ移動し難いため、寝返りを打った時や横臥時等、吸収性物品が横に傾いた時に、中間シート6上に溜まった排泄物が中間シート6上を横方向に移動した後、トップシート3の表面に逆戻りし、所謂横漏れを発生させるおそれがある。そこで、図示例のように、中間シート6を排泄口対向部6Mの幅方向両側まで延在させ、その延在部(側部6S)に、縁部63eが吸収体4,5側に起立する起立縁部を有する開孔63を形成するのは好ましい。これにより、中間シート6上に溜まった排泄物が中間シート6上を横方向に移動しても、中間シート6の側部6Sにおける吸収体側に起立する起立縁部63eを有する開孔63を通じて吸収体4,5側へ容易に移動するため、トップシート3の表面に逆戻りするおそれが少なくなる。
【0030】
また、図5に示すように、中間シート6を排泄口対向部6Mの前後方向両側に延在させ、その延在部(前後部6E)に、排泄口対向部6Mと同様に、縁部61eがトップシート側に起立する起立縁部を有する開孔61を多数形成させることにより、排泄口対向部6M及びその前後両側においてトップシート3が浮き上がり、身体の股間及びその前後両側に続く窪みに対するフィット性が向上するため好ましい。さらに、この場合において、中間シート6の前後部6Eにおけるトップシート側に起立する起立縁部を有する開孔61について、個々の開孔の面積s1を、排泄口対向部6Mにおけるトップシート側に起立する起立縁部を有する開孔60より小さくし、かつ厚みt1を排泄口対向部6Mにおけるトップシート側に起立する起立縁部を有する開孔60より薄くすると、トップシート3は排泄口対向部6Mにおいてその前後よりも浮き上がり、排泄口に対して良好にフィットする。しかも、中間シート6の前後部6Eにおけるトップシート側に起立する起立縁部を有する開孔61は、個々の開孔の面積s1が排泄口対向部6Mにおけるトップシート側に起立する起立縁部を有する開孔60より小さいため、当該開孔61通じた排泄物の逆戻りが発生し難い。
【0031】
各部の寸法・位置は、適宜定めることができるが、通常の場合、排泄口対向部6Mは幅方向中央に位置する部分であって長さ(前後方向)がウイング状フラップWの前後方向中央から前後70mm程度、幅が20〜50mm程度の部分であり、前後部6Eはその前後両側に隣接する部分であり、側部6Sは排泄口対向部6M及び前後部6Eの左右両側に隣接する部分であって、幅が5〜25mm程度の部分である。
【0032】
各部の開孔60〜63の配列は適宜定めることができ、千鳥状や行列状等の規則的配列とする他、不規則な散点状の配列とすることもできる。また、各部の開孔60〜63の形状は円形とする他、楕円形や多角形とすることもできる。
【0033】
さらに、各部の開孔60〜63の寸法、数、厚みは適宜定めることができるが、通常の場合、次の程度とするのが望ましい。
(排泄口対向部6Mにおけるトップシート側に起立する起立縁部を有する開孔60)
・個々の開孔の面積:0.5〜2.0mm2
・開孔数:10〜100個/cm2
・厚み:0.2〜1.0mm
(排泄口対向部6Mにおける吸収体側に起立する起立縁部を有する開孔62)
・個々の開孔の面積:0.01〜0.3mm2
・開孔数:300〜500個/cm2
・厚み:0.02〜0.3mm
(側部6Sにおける吸収体側に起立する起立縁部を有する開孔63)
・個々の開孔の面積:0.01〜0.3mm2
・開孔数:300〜500個/cm2
・厚み:0.02〜0.3mm
(前後部6Eにおけるトップシート側に起立する起立縁部を有する開孔61)
・個々の開孔の面積:0.1〜1.5mm2
・開孔数:50〜200個/cm2
・厚み:0.05〜0.75mm
【0034】
他方、以上に述べた中間シート6は、基材の表裏少なくとも一方側からピンを刺し通す、又は小孔から吸引若しくは噴射を行う等の外力を加え、当該外力付加部分の中央を開孔しつつその周囲を外力の方向に導出する(換言すればバリが形成されるように開孔する)ことにより、縁部(バリからなる部分)がトップシート側又は吸収体側に起立する起立縁部を有する開孔を容易に製造することができる。例えば、排泄口対向部6Mに、トップシート側に起立する起立縁部を有する開孔60及び吸収体側に起立する起立縁部を有する開孔62の両者を形成する場合には、図6に示すように、基材6の表裏いずれか一方側からピン70を刺し通す等により開孔60を形成した後、基材を反転させる等して、他方側からピン70を刺し通す等により開孔62を形成することができる。もちろん、両面側から同時に加工しても良い。
【0035】
また、図7に示すように、帯状の基材6をその長手方向に沿って搬送しつつその両側部6Sを幅方向中央側に折り返し(C折りし)、折り重なり部分に一体的に開孔60,63を形成した後に、折り重なり部分を展開することにより、幅方向中央部(排泄口対向部6M及び前後部6Eとなる)にトップシート側に起立する起立縁部を有する開孔60を形成するのと同時に、両側部6Sに吸収体側に起立する起立縁部を有する開孔63を形成することができる。この開孔形成の際、図示例のようにテーパー状のピン70を用いることにより、一方の開孔60(図示例では幅方向中央部)の開孔径を他方の開孔63より大きくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、経血やおりものなどを吸収するための生理用ナプキン、パンティライナー、尿吸収パッド、使い捨ておむつ等の使い捨て吸収性物品全般に利用可能なものである。
【符号の説明】
【0037】
1…生理用ナプキン、2…不透液性バックシート、3…トップシート、4…下層吸収体、5…上層吸収体、6…中間シート、7…サイド不織布、8…エンボス凹部、9…前端部エンボス、10…後端独立エンボス、60,61…トップシート側に起立する起立縁部を有する開孔、62,63…吸収体側に起立する起立縁部を有する開孔、BS…立体ギャザー、W…ウイング状フラップ、WB…臀部側ウイング状フラップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌当接面をなす液透過性のトップシートと、液不透過性シートと、これらの間に介在された吸収体と、前記トップシートと前記吸収体との間における少なくとも排泄口対向部に介在された中間シートと、を備えており、
前記中間シートにおける少なくとも排泄口対向部に、前記トップシート側に起立する起立縁部を有する開孔が多数形成されている、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記中間シートは樹脂フィルムであり、前記中間シートにおける少なくとも排泄口対向部に、トップシート側に起立する起立縁部を有する開孔と吸収体側に起立する起立縁部を有する開孔とがそれぞれ多数形成されている、請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記中間シートは、排泄口対向部と、その幅方向両側に延在する側部とを有しており、この側部に、吸収体側に起立する起立縁部を有する開孔が多数形成されている、請求項2記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記中間シートは、排泄口対向部と、その前後方向両側に延在する前後部とを有しており、この前後部に、トップシート側に起立する起立縁部を有する開孔が多数形成されており、
前記中間シートの前後部におけるトップシート側に起立する起立縁部を有する開孔は、個々の開孔の面積が、前記中間シートの排泄口対向部におけるトップシート側に起立する起立縁部を有する開孔より小さく、かつ厚みが前記中間シートの排泄口対向部におけるトップシート側に起立する起立縁部を有する開孔より薄い、
請求項3記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記排泄口対向部におけるトップシート側に起立する起立縁部を有する開孔は、個々の開孔の面積が0.5〜2.0mm2、開孔数が10〜100個/cm2、かつ厚みが0.2〜1.0mmであり、
前記排泄口対向部における吸収体側に起立する起立縁部を有する開孔は、個々の開孔の面積が0.01〜0.3mm2、開孔数が300〜500個/cm2、かつ厚みが0.02〜0.3mmであり、
前記側部における吸収体側に起立する起立縁部を有する開孔は、個々の開孔の面積が0.01〜0.3mm2、開孔数が300〜500個/cm2、かつ厚みが0.02〜0.3mmであり、
前記前後部におけるトップシート側に起立する起立縁部を有する開孔は、個々の開孔の面積が0.1〜1.5mm2、開孔数が50〜200個/cm2、かつ厚みが0.05〜0.75mmである、請求項4記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−50548(P2012−50548A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194225(P2010−194225)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】