吸収性物品
【課題】排泄物の肌への再付着を防止し、かつ、内腿の窪みや裏腿の窪みに対するフィット性を向上させた吸収性物品を提供する。
【解決手段】上記課題は、下層吸収部10及びその上に位置する上層吸収部20を有し、上層吸収部20は、前後方向に沿って、幅方向中央で左側部分20L及び右側部分20Rに分かれており、これら左側部分20L及び右側部分20Rが先端部弾性伸縮部材35L,35Rの収縮作用により装着者の肌側に盛り上がるようになっている。さらに、上層吸収部20は、尾骨対向部より前側に位置する上層前側部分20Fと、尾骨対向部を含み、上層前側部分より後側に位置する上層後側部分20Bに分けられ、上層前側部分20Fにおいては、その後端を除き、左側部分20Lの幅方向中央側の側縁と右側部分20Rの幅方向中央側の側縁とが幅方向に離間しており、上層後側部分20Bにおいては、左側部分20Lの幅方向中央側の側縁と右側部分の幅方向中央側の側縁とが略一致している。
【解決手段】上記課題は、下層吸収部10及びその上に位置する上層吸収部20を有し、上層吸収部20は、前後方向に沿って、幅方向中央で左側部分20L及び右側部分20Rに分かれており、これら左側部分20L及び右側部分20Rが先端部弾性伸縮部材35L,35Rの収縮作用により装着者の肌側に盛り上がるようになっている。さらに、上層吸収部20は、尾骨対向部より前側に位置する上層前側部分20Fと、尾骨対向部を含み、上層前側部分より後側に位置する上層後側部分20Bに分けられ、上層前側部分20Fにおいては、その後端を除き、左側部分20Lの幅方向中央側の側縁と右側部分20Rの幅方向中央側の側縁とが幅方向に離間しており、上層後側部分20Bにおいては、左側部分20Lの幅方向中央側の側縁と右側部分の幅方向中央側の側縁とが略一致している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内腿の窪みや裏腿の窪みに対するフィット性を向上させた吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特に夜間に使用する吸収性物品は、長時間にわたり排泄物を保持した状態で着用されていることが多く、排泄物の臀部、股間部等への再付着が、着用者の不快感やカブレ、褥瘡などの要因となりやすい、という問題があった。
このような再付着を防止するために、排泄物を保持するポケットを設けた吸収性物品(例えば特許文献1,2)が提案されている。
しかし、拘縮等が原因で、寝たきりの人や車いすが手放せない人、自分では体の向きや位置を変えられない人においては、太腿が痩せて、内腿の窪みや裏腿に窪みを生じており、このような着用者においては、従来の吸収性物品の立体ギャザー構造では、内腿の窪みや腿外側の窪みに対しては十分なフィット性が得られず、脚周りからの漏れが発生することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−279004号公報
【特許文献2】特開2009−125203号公報
【特許文献3】特開2006−174966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の主たる課題は、排泄物の肌への再付着を防止し、かつ、内腿の窪みや裏腿の窪みに対するフィット性を向上させた吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
尾骨対向部と、尾骨対向部の前側をなす物品前側部分と、この物品前側部分よりも後側であって尾骨対向部を含む物品後側部分とを有し、
下層吸収部、及びその上に位置する上層吸収部が、それぞれ物品前側部分から物品後側部分にかけて前後方向に延在し、前記下層吸収部は少なくとも上層吸収部側の面から、及び前記上層吸収部は少なくとも下層吸収部側の面から、それぞれ排泄物を吸収するように構成され、
前記上層吸収部は、尾骨対向部の前側をなす上層前側部分と、上層前側部分よりも後側であって尾骨対向部を含む上層後側部分とから構成され、
前記上層吸収部は、その前後方向全体が、幅方向中央に対して左側に位置する左側部分、及び右側に位置する右側部分からなり、
前記左側部分及び右側部分は、幅方向外側の側縁部が前後方向全体にわたり前記下層吸収部の表面に対して固定され、この固定部よりも幅方向中央側の部分のうち、前端部及び後端部は前記下層吸収部の表面に対して固定され、前端部及び後端部以外の部分は前記下層吸収部の表面に対して固定されていない自由部分とされ、且つこの自由部分の幅方向中央側の縁部に、先端部弾性伸縮部材が各縁部に沿う方向に伸長した状態で固定されており、
少なくとも展開状態において、上層吸収部の左側部分の幅方向中央側の側縁と右側部分の幅方向中央側の側縁とが、上層前側部分では対応する下層吸収部が露出するように幅方向に離間し、かつ上層後側部分では前後方向全体にわたり一致している、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0006】
(作用効果)
本発明では、上層吸収部と下層吸収部を有する吸収性物品において、上層吸収部をその前後方向全体にわたり左側部分と右側部分とに分離し、左側部分及び右側部分における幅方向中央側の縁部に沿うように先端部弾性伸縮部材を配した。加えて、少なくとも展開状態において、上層吸収部の左側部分の幅方向中央側の側縁と右側部分の幅方向中央側の側縁とが、上層前側部分では対応する下層吸収部が露出するように幅方向に離間し、かつ上層後側部分では前後方向全体にわたり一致する構成とした。このような構成とすることで、上層吸収部における左側部分及び右側部分が、先端部弾性伸縮部材の収縮作用により、装着者の肌側に盛り上がり、物品前側部分は内腿の窪みや裏腿の窪みに対してフィットし、物品後側部分は臀裂の形状にフィットするだけでなく、吸収性物品の着用者の排泄口に当接する部分には左側部分及び右側部分の離間部が位置し、その後側では左側部分及び右側部分が閉じた状態で臀裂にフィットした状態となる。よって、吸収性物品の着用者の排泄口に当接する部分においては、直接排泄物が下層吸収部より吸収され、かつ、吸収された排泄物が物品の後側へ移行したとしても、上層吸収部が障壁となって着用者の臀部に付着しにくい、という効果を奏する。
【0007】
さらに、上層吸収部が前後方向全体にわたり左側部分及び右側部分に分離されていると、装着位置が多少前方にずれた場合でも、装着状態では股間部の表面形状に沿って物品が変形する結果、左側部分及び右側部分の離間開始位置が後方にずれて上層後側部分の前端部に位置するようになる。よって、尾骨の前後に対するフィット性が損なわれず、また前述の排泄物の吸収保持機能も維持される。
【0008】
<請求項2記載の発明>
前記左側部分及び右側部分は、前端部において、幅方向中央側端部が幅方向外側に一部肌側に向かって折り返された状態で前記下層吸収部の表面に固定されている、請求項1記載の吸収性物品。
【0009】
(作用効果)
このように、上層吸収部の前端部においては、左側部分、右側部分ともにその幅方向中央側端部を一部、肌側に折り返した状態で下層吸収部の表面に固定する構成とすると、内蔵吸収体によりクッション性に優れる折り返し部分が三角形の面状で鼠径部及びその内側近傍に接するため、線状で接した場合と比して着用者の内腿の窪みにフィットしやすくなる。
【0010】
<請求項3記載の発明>
前記下層吸収部の吸収体の幅が、前記上層吸収部の吸収体のなす幅よりも狭い、請求項1または2に記載の吸収性物品。
【0011】
(作用効果)
下層吸収部の吸収体の幅が、上層吸収部の吸収体の幅よりも狭いと、特に股間部においては、装着者の股間が狭い場合や脚の動きにより股間が狭くなり、これに伴い物品の股間部が装着者の股間に挟まれて狭くなったとき、上層前側部分の両側部が下層吸収部の両脇に逃げ出て落ち込むことにより、左側部分及び右側部分が盛り上がりによる窪みに対するフィット性を維持したまま、脚周りに追従して姿勢変化及び位置変化することができる。その結果、内腿の窪みや裏腿の窪みに起因する漏れの防止効果に優れるようになる。
【0012】
また、股間部以外においても、上層吸収部の吸収体の幅方向端部を下層吸収部の吸収体の幅方向外側の表面に固定することとなり、上層吸収部が、幅方向端部より中央部に向かって立ち上がる構造となる。上層吸収部の幅方向端部の立ち上がりにより、上層吸収部がより、恥骨による凹凸や臀裂にフィットしやすくなり、漏れ防止効果を高めることができる。
【0013】
<請求項4記載の発明>
前記上層吸収部の、少なくとも上層前側部分における前記左側部分及び右側部分が幅方向にアーチ状をなしている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0014】
(作用効果)
上層前側部分がこのようなアーチ状をなしていることによって、左側部分及び右側部分が裏腿の窪みに対して良好にフィットするようになる。
【0015】
<請求項5記載の発明>
前記上層前側部分は、後端部から前側に向かうにつれて前記左側部分の幅方向中央側の側縁及び右側部分の幅方向中央側の側縁の離間距離が拡大しつつ装着者の脚の付け根に沿って鼠径部に達するように形成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0016】
(作用効果)
本項記載の発明では、上層吸収部における左側部分及び右側部分の幅方向中央側の側縁は、後端部では一致又は近接し、後端部から前側に向かうにつれて離間距離が拡大するように形成されており、また、これら左側部分と右側部分との離間部分を入口とするポケットが、上層後側部分と下層吸収部との間に形成される。よって、このポケットの入口縁部は、上層前側部分における左側部分及び右側部分の幅方向中央側の側縁により形成され、その後端部では両側縁が一致又は近接することにより山状をなして肛門又はその近傍にフィットし、後端部から前側では両側縁が装着者の各脚の付け根に沿って鼠径部までフィットするようになる。その結果、股間部においても上層吸収部が身体表面にフィットし、肌を伝う尿もポケットへ導入して、上層吸収部及び下層吸収部の少なくとも一方により吸収することができ、褥瘡が発生し易い尾骨部及び仙骨部の尿汚染を低減することができる。
【0017】
<請求項6記載の発明>
前記上層吸収部は、上層吸収体と、上層吸収体における下層吸収部側の反対側を覆う液不透過性シートとを有するものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0018】
(作用効果)
このように、上層吸収体における下層吸収部側の反対側の面を覆うように液不透過性シートを設けると、下層吸収体に吸収された排泄物が上層吸収部を透過して装着者の肌に逆戻りするのを防止できるため好ましい。
【発明の効果】
【0019】
以上のとおり、本発明によれば、仙骨部や尾骨部の尿汚染の防止性能が向上する等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】吸収パッドの展開状態を示す平面図である。
【図2】下層吸収部のみを示す平面図である。
【図3】上層吸収部のみの展開状態を示す一部破断平面図である。
【図4】図1のX−X断面図である。
【図5】図1のY−Y断面図である。
【図6】図1のZ−Z断面図である。
【図7】上層前側部分の盛り上がり状態を示す股間部断面図である。
【図8】吸収性物品の斜視図である。
【図9】上層後側部分の盛り上がり状態を示す股間部断面図である。
【図10】他の形態の上層前側部分の盛り上がり状態を示す股間部断面図である。
【図11】他の形態の上層吸収部のみを示す一部破断平面図である。
【図12】他の形態の上層吸収部のみを示す一部破断平面図である。
【図13】他の形態の吸収性物品の斜視図である。
【図14】股間部に対する上層前側部分のフィット性を説明するための概略図である。
【図15】他の形態の上層吸収部のみを示す一部破断平面図である。
【図16】他の形態の下層吸収部のみを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら詳説する。なお、「尾骨対向部」、「仙骨対向部」、「股間部」とは、使用時に身体の尾骨、仙骨、股間と対向する部分を意味し、製品によって異なるものである。また、断面図における点模様は、ホットメルト接着剤による接着、あるいは素材の融着により形成される固定部を示している。
【0022】
図1〜図7は、本発明に係る吸収パッド例200を示している。この吸収パッド200は、尾骨対向部Cと、尾骨対向部Cの前側をなす物品前側部分Fと、この物品前側部分Fよりも後側であって尾骨対向部Cを含む物品後側部分Bとを有するものである。各部の寸法は適宜定めることができ、例えば、物品全長(前後方向長さ)L1は350〜700mm程度、全幅W1は130〜400mm程度とすることができ、この場合における前側部分Fの前後方向長さは150〜400mm程度、及び後側部分Bの前後方向長さは200〜300mm程度、尾骨対向部Cの前後方向長さは40〜100mm程度、とすることができる。
【0023】
吸収パッド200は、下層吸収部10、及びその上に位置する上層吸収部20が、それぞれ物品前側部分Fから物品後側部分Bにかけて前後方向に延在しているものである。図示例では、下層吸収部10及び上層吸収部20ともに、物品全長全体にわたり設けられているが、いずれか一方を他方より短く、例えば下層吸収部10よりも上層吸収部20を短く構成することもできる。
【0024】
(下層吸収部)
下層吸収部10は、下層裏面側シート11の内面と下層表面側シート13との間に、下層吸収体14が介在された基本構造を有している。
より詳細には、下層吸収体14としては、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて粒子状等の高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子を混合する場合等、必要に応じて、下層吸収体14はクレープ紙等の液透過性包装シート(図示せず)により包むことができる。
【0025】
下層吸収体14における繊維目付け及び高吸収性ポリマーの目付けは適宜定めることができるが、繊維目付けは100〜600g/m2程度とするのが好ましく、また吸収性ポリマーの目付けは0〜400g/m2程度とするのが好ましい。
【0026】
また、下層吸収体14の形状は、図示例のように股間部がその前後両側よりも幅の狭い括れ部分14Nとなる形状の他、前側の部分が後側の部分よりも相対的に幅広な帯状、あるいは長方形状、台形状等、適宜の形状とすることができる。下層吸収体14の寸法は適宜定めることができるが、前後方向長さL2は、物品全長L1の85〜95%程度とすることができ、下層吸収体14の幅W2は、物品幅W1の70〜95%程度とすることができる。また、括れ部分14Nの最小幅W4は、下層吸収体幅W2の35〜65%程度であるのが好ましい。また、物品前端を0%とし物品後端を100%としたとき、括れ部分14Nの前端は10〜25%の範囲に位置しているのが好ましく、括れ部分14Nの後端は40〜65%の範囲に位置しているのが好ましく、括れ部分14Nの最小幅W4となる部位(最小幅部位)は25〜50%の範囲に位置しているのが好ましい。
【0027】
下層吸収体14には、図2、4に示すように、スリット部40を設けることが好ましい。スリット部は図示例のように、表面側から裏面側まで貫通する形態としてもよいが、表面側のみに部分的に配される形態としてもよい。スリット部は、下層吸収体の括れ部14Nにほぼ平行な形状で、括れ部14Nより幅方向内側に配されるのが好ましい。このような形態とすることで、図示例において下層吸収体14は、折れ線α、β及びγの位置で、折れやすくなる。下層吸収体14を折れ線αの位置で折れやすくすることで、吸収体前端側が恥骨の形状に沿うように立ち上がりやすくなる。また、折れ線β,γにより、下層吸収体14と、それに追従する上層吸収部が脚回りにフィットしやすい形状となる。なお、スリット部の別の形状を、図16(A)〜(D)に例示する。
【0028】
下層吸収体の幅W2及びW4は、それぞれ当接する下層吸収体のなす幅W3,W5より狭くなっていることが好ましい。特に、括れ部分14Nの存在によって、下層吸収部10における股間部の幅W4が、上層吸収部20の上層前側部分20Fにおける股間部の幅W3よりも狭くなっていることが好ましい。股間部においてのみ、下層吸収体の幅が上層吸収体のなす幅より狭くなっている場合、このW4<W3となる部分の前後方向長さは、物品全長L1の20〜55%程度とするのが好ましい。
【0029】
下層吸収体14の裏面側には、下層裏面側シート11が下層吸収体14の周縁から食み出るように設けられている。下層裏面側シート11としては、液不透過性シートの他、製品によっては液透過性シートを用いることもできる。液不透過性シートとしてはポリエチレンフィルム等の樹脂フィルムの他、ムレ防止の点から遮水性を損なわずに透湿性を備えたシートも用いることができる。この遮水・透湿性シートとしては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートの他、不織布にシリコンなどにより撥水処理を施した撥水性不織布を用いることができる。
【0030】
また、下層裏面側シート11の外面の一部又は全体は、不織布からなる外装シート12により覆うことができる。外装シート12としてはスパンボンド不織布等、公知の不織布を用いることができる。不織布の繊維素材としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0031】
下層吸収体14の表面側は下層表面側シート13により覆われている。図示形態では下層表面側シート13が下層吸収体14を完全に覆うように配されているが、下層表面側シート13の幅を狭めて、下層表面側シート13の側縁から下層吸収体14が一部食み出る構成としてもよい。下層表面側シート13としては、有孔または無孔の不織布や穴あきプラスチックシート等の液透過性シートを用いることができ、不織布としてはエアスルー不織布やスパンレース不織布等、公知の不織布を用いることができる。不織布の繊維素材としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0032】
下層表面側シート13と下層吸収体14との間には、図示しない中間シートを介在させることができる。この中間シートは、下層吸収体14により吸収した尿の逆戻りを防止するために設けられるものであり、保水性が低く、且つ透液性の高い素材、例えば嵩の高い不織布、メッシュフィルム等を用いるのが望ましい。下層表面側シート13の前端を0%とし下層表面側シート13の後端を100%としたとき、中間シートの前端は0〜11%の範囲に位置しているのが好ましく、中間シートの後端は92〜100%の範囲に位置しているのが好ましい。また、中間シートの幅は物品幅W1の30〜65%程度であるのが好ましい。
【0033】
(上層吸収部)
上層吸収部20は、幅方向中央に対して左側に位置する左側部分20L、及び右側に位置する右側部分20Rから構成されている。左側部分20L、及び右側部分20Rは、上層裏面側シート21L,21Rと上層表面側シート23L,23Rとの間に、上層吸収体24L,24Rがそれぞれ介在された基本構造を有している。
【0034】
上層裏面側シート21L,21R及び上層表面側シート23L,23Rとしては、下層表面側シート13と同様の素材の中から適宜選択することができ、下層表面側シート13と同一の素材を用いることも、異なる素材を用いることもできる。
【0035】
また、上層吸収体24L,24Rとしては、下層吸収体14と同様の素材の中から適宜選択することができ、下層吸収体14と同一の素材を用いることも、異なる素材を用いることもできる。
【0036】
さらに、図示形態のように、上層吸収体24L,24Rと上層表面側シート23L,23Rとの間に、液不透過性シート25L,25Rを介在させると好ましい。これに代えて又はこれとともに、上層表面側シートを液不透過性シートで構成することもできる。これらの場合における液不透過性シート25L,25Rとしては、下層裏面側シート11と同様の素材の中から適宜選択することができ、下層裏面側シート11と同一の素材を用いることも、異なる素材を用いることもできる。
【0037】
上層吸収部20の前後端部は、上層裏面側シート21L,21R及び上層表面側シート23L,23Rが上層吸収体24L,24Rの前後端よりも前後両側にそれぞれ延出して貼り合わされることにより形成されており、一方、下層吸収部10の前後端部は、下層裏面側シート11、外装シート12および下層表面側シート13が下層吸収体14の前後端よりも前後両側にそれぞれ延在されて貼り合わされることにより形成されており、吸収性物品200の前後端部には、これら下層吸収部10の前後端部と上層吸収部20の前後端部とが貼りあわされて形成された、上層吸収体24L,24R及び下層吸収体14の無いエンドフラップ部EFとなっている。
【0038】
また、上層吸収部20の両側部は、上層裏面側シート21L,21R及び上層表面側シート23L,23Rが上層吸収体24L,24Rの両側縁よりも側方にそれぞれ延出して貼り合わされることにより形成されており、一方、下層吸収部10の両側部は、下層裏面側シート11、外装シート12および下層表面側シート13が下層吸収体14の両側縁よりも側方にそれぞれ延在されて貼り合わされることにより形成されており、吸収性物品200の両側部には、これら下層吸収部10の両側部と上層吸収部20の両側部とが貼りあわされて形成された、上層吸収体24L,24R及び下層吸収体14の無いサイドフラップ部SFとなっている。
【0039】
特徴的には、上層吸収部20は、尾骨対向部の前側をなす上層前側部分20Fと、上層前側部分20Fよりも後側であって尾骨対向部を含む上層後側部分20Bとから構成されており、図示例では、上層前側部分20Fの前端部は物品前端部まで達しており、後端部は物品後端部まで達している。
【0040】
上層吸収部20のみを展開した状態を図3に示す。上層前側部20Fにおいて、左側部分20Lの幅方向中央側の側縁及び右側部分20Rの幅方向中央側の側縁は、後端では一致又は近接するとともに、後端から前側に向かうにつれて離間距離が拡大しつつ装着者の脚の付け根に沿って鼠径部に達するように形成されており、これら左側部分20Lの幅方向中央側の側縁及び右側部分20Rの幅方向中央側の側縁の離間部分には、下層吸収部10が露出している。これら左側部分20L及び右側部分20Rの幅方向中央側の各側縁は、図示例では直線状をなしている(両側縁がV字状をなしている)が、曲線状をなしていても良い。これら側縁の交差角(内角)θ3は適宜定めることができるが、10〜30度程度が好適である。
【0041】
上層前側部分20Fの前端部32は、下層表面側シート13に固定される。上層前側部分20Fの左側部分20L及び右側部分20Rは、その幅方向中央側の側縁が肌側に向かって一部折り返され、前端部32L,32Rは折り畳まれた状態で下層表面側シート13上に固定されるのが好ましい(図6)。図示例においては、上層前側部20Fの両側縁が前後方向全体的に折り返されており、この場合、折り返される側縁の内角θ2は、2〜10度とすることが好ましい。また、折り返されることにより生じる、左側部分20L及び右側部分20Rのなす幅方向中央側の内角θ1は、10〜30度程度が好適である。このように、折返し・折り畳み構造とすることで、後述の中央側縁部の弾性部材35L,35Rによる上層吸収部の立ち上がりとともに、前端部の立体的立ち上がりを容易とすることができる。弾性部材35L,35Rによる立ち上がりのみでは、上層吸収部の中央側縁部は線状に肌に当たりやすいのに対し、側縁を折り返すことにより、特に前端部(鼠径部周辺)において肌へ当たる部分が面状となり、より体型にフィットしやすい。なお、折り返し部分39L,39Rは、図示例のように上層前側部20Fの前後方向全体全体にわたって設けてもよく、また、前端側の一部のみに設けてもよい。
【0042】
一方、上層後側部分20Bにおいては、左側部分20L及び右側部分20Rの幅方向中央側の側縁は、前後方向に沿って延在しており、左側部分20Lの幅方向中央側の側縁と右側部分20Rの幅方向中央側の側縁とが略一致する。左側部分20Lと右側部分20Rとの側縁部を一致させることで、物品前側部分で下層吸収部に吸収された排泄物が物品後方に移行したとしても、着用者の肌に排泄物が触れにくい構成とした。
【0043】
上層前側部分20Fの左側部分20L及び右側部分20Rは、幅方向外側の側縁部31L,31Rが下層吸収部10の表面に対して固定され、この固定部31L,31Rよりも幅方向中央側の部分では前端部32L,32Rは前述のように折り畳まれて固定されるものの、前端部以外の部分33L,33Rは下層吸収部10の表面に対して固定されていない自由部分とされている。固定部31L,31Rの幅方向中央側の側縁は、図4に示すように、上層吸収体24L,24Rの幅方向外側の側縁より幅方向中央側に位置しているのが好ましいが、上層吸収体24L,24Rの幅方向外側の側縁と同じか又はより幅方向外側に位置させることも可能である。この固定部31L,31Rは、ホットメルト接着剤による接着、あるいは素材の融着により形成することができる。
【0044】
一方、上層後側部分20Bは、両側部37L,37R及び後端部38L,38Rが下層吸収部10の表面に固定され、これら固定部37,38により囲まれる部分は非固定とされる。上層後側部分20Bの固定部も、ホットメルト接着剤による接着、あるいは素材の融着により形成することができ、特に、両側部の固定部37は上層前側部分20Fの左右両側の固定部31L,31Rとそれぞれ連続するように形成するのが望ましい。
【0045】
そして、上層吸収部20の左側部分20L及び右側部分20Rには、自由部分33L,33Rの幅方向中央側の縁部に、先端部弾性伸縮部材35L,35Rが各縁部に沿う方向に伸長した状態でホットメルト接着剤等により固定されている。この先端部弾性伸縮部材35L,35Rとしては、糸状、紐状、帯状等に形成された、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム等を用いることができる(後述の基端部弾性伸縮部材も同様)。図示例では、左側部分20L及び右側部分20Rの幅方向中央側の縁部における上層吸収体24の無い縁部に設けられているが、上層吸収体24の幅方向中央側の端部の表面側又は裏面側に設けることもできる。
【0046】
さらに、図示例では、自由部分33L,33Rの幅方向外側の縁部における上層吸収体24の裏面側に、隆起用弾性伸縮部材36L,36Rが前後方向に伸長した状態でホットメルト接着剤等により固定されている。隆起用弾性伸縮部材36L,36Rは、自由部分33L,33Rの幅方向外側の縁部に設ける他、図10に示すように、自由部分33L,33Rの幅方向中間部にも設けることができる。隆起用弾性伸縮部材36L,36Rは、左側部分20L及び右側部分20Rの各自由部分のうち、内腿対向部IS及び裏腿対向部BSにのみ設けられている(つまり、両者の間又は前後両側には設けられていない)が、図11に示すように内腿対向部IS及び裏腿対向部BSのいずれか一方(図示例では内腿対向部IS)にのみ設けたり、図12に示すように内腿対向部IS及び裏腿対向部BSの両者にわたるように連続的に設けたりすることもできる。内腿対向部IS及び裏腿対向部BSの位置は製品により異なるが、通常の場合、内腿対向部ISは括れ部分14Nの前後方向中央から前側に20〜100mmの部位とし、裏腿対向部BSは括れ部分14Nの前後方向中央から後側に20〜100mmの部位とすることができる。また、各隆起用弾性伸縮部材36L,36Rの前後方向長さは、上層前側部分20Fの前後方向長さの10〜25%程度とするのが好ましい。
【0047】
以上のように構成された吸収性物品においては、図7に示すように、上層前側部分20Fにおける左側部分20L及び右側部分20Rが先端部弾性伸縮部材35L,35Rの収縮作用により装着者の肌側に盛り上がるとともに、内腿の窪みや裏腿の窪みに対してフィットするようになる。また、図8に示すように、上層後側部分20Bにおいては、左側部分20L及び右側部分20Rが臀裂の形状にフィットするように隆起する。この際、下層吸収体14の幅が、上層吸収部の吸収体24L,24Rのなす幅より狭いと、股間部においては、装着者の股間が狭い場合や脚の動きにより股間が狭くなり、これに伴い物品の股間部が装着者の股間に挟まれて狭くなったとき、上層前側部分20Fの両側部が下層吸収部10の両脇に逃げ出て落ち込むことにより、左側部分20L及び右側部分20Rが盛り上がりによる窪みに対するフィット性を維持したまま、脚周りに追従して姿勢変化及び位置変化することができる。その結果、内腿の窪みや裏腿の窪みに起因する漏れの防止効果に優れるようになる。また、股間部以外においても、上層吸収部20が立体的に立ち上がりやすくなることにより、より上層吸収部20が身体形状に追従しやすくなる。
【0048】
また、隆起用弾性伸縮部材36L,36Rが内腿対向部IS及び裏腿対向部BSにのみ作用するように前後方向に間欠的に設けられているため、図8に示されるように、左側部分20L及び右側部分20Rの内腿対向部IS及び裏腿対向部BSが、隆起用弾性伸縮部材36L,36Rの収縮作用により収縮方向(左側部分20L及び右側部分20Rの幅方向中央側の側縁に沿う方向)にアーチ状をなすように装着者の肌側にそれぞれ盛り上がり、図14に模式的に示すように、脚100の内腿の窪み101及び裏腿の窪み102に入り込んでフィットするようになる。その結果、漏れの防止効果がより一層のものとなる。これに対して、隆起用弾性伸縮部材36L,36Rが内腿対向部IS及び裏腿対向の両者にわたるように連続していると、図13に示すような形状となる。
【0049】
特に、図7に示されるように、上層前側部分20Fにおいて、左側部分20L及び右側部分20Rが全体的に、幅方向にアーチ状(幅方向外側から中央側に向かうほど傾きが減少する弓なり形状)をなし、上層前側部分20Fにおける左側部分20L及び右側部分20Rの身体側面が山状に隆起すると、図14に模式的に示すように、脚100の裏腿の窪み102に対するフィット性が更に向上する。この観点から、隆起用弾性伸縮部材36L,36Rは、図11に示すように内腿対向部ISにのみ設ける形態でも十分なフィット性向上を図ることができる。なお、図中の符号UPは排尿口、符号APは肛門、符号TPは尾骨対向部の位置を示している。
【0050】
上層前側部分20Fの後端部では両側縁が一致又は近接することにより山状をなして肛門又はその近傍にフィットし、上層前側部分20Fの後端部から前側では両側縁が装着者の各脚の付け根に沿って鼠径部までフィットするようになる。その結果、股間部においても上層吸収部20が身体表面にフィットし、肌を伝う尿も上層吸収部20と下層吸収部10の間へ導入して、上層吸収部20及び下層吸収部10の少なくとも一方により吸収することができ、尾骨部及び仙骨部の尿汚染を低減することができる。
【0051】
また、図示例のように、上層吸収体24L,24Rにおける下層吸収部10側の反対側の面を覆うように液不透過性シート25L,25Rを設けると、下層吸収部側に導入した排泄物が上層吸収部20を介して装着者の肌に逆戻りするのを防止できるようになり、尾骨部及び仙骨部の尿汚染を低減する効果がより一層のものとなる。
【0052】
図9に示すように、上層後側部分20Bにおける左側部分20L及び右側部分20Rの先端部弾性伸縮部材35L,35Rは、幅方向に間隔を空けて且つ幅方向中央側のものほど高い伸長率となるように複数本設けるのが好ましい。これにより、上層後側部分20Bの左側部分20L及び右側部分20Rは、幅方向外側から中央側に向かうほど傾きが増加するように(換言すれば、下層吸収部10側面が膨出するように)反り上がり、臀裂の形状に対するフィット性が顕著に向上する。
【0053】
なお、上層前側部分20Fにおいても、左側部分20L及び右側部分20Rが幅方向外側から中央側に向かうほど傾きが増加するように反り上がるような構成としてもよい。この場合、上層前側部分20Fの形状が肛門及びその周辺の形状にフィットしやすくなる、という利点を有する。
【0054】
<その他の形態>
(イ)図15に示すように、左側部分20L及び右側部分20Rの上層前側部分20Fの幅方向中央側の側縁20Le,20Reは前後方向に沿う直線状をなしていても良い。
(ロ)上層後側部分20Bは、両側部37及び後端部38が下層吸収部10の表面に固定され、これら固定部37,38により囲まれる部分は非固定となっているが、後端部38のみ等、前後方向の少なくとも一部が下層吸収部10の表面に対して固定されているだけでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、吸収パッド、パンツタイプ若しくはテープタイプ使い捨ておむつ等、吸収性物品全般に利用できるものである。
【符号の説明】
【0056】
10…下層吸収部、11…下層裏面側シート、12…外装シート、13…下層表面側シート、14…下層吸収体、20…上層吸収部、20L…左側部分、20R…右側部分、21…上層裏面側シート、23…上層表面側シート、24…上層吸収体、25…液不透過性シート、35,36…弾性部材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、内腿の窪みや裏腿の窪みに対するフィット性を向上させた吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特に夜間に使用する吸収性物品は、長時間にわたり排泄物を保持した状態で着用されていることが多く、排泄物の臀部、股間部等への再付着が、着用者の不快感やカブレ、褥瘡などの要因となりやすい、という問題があった。
このような再付着を防止するために、排泄物を保持するポケットを設けた吸収性物品(例えば特許文献1,2)が提案されている。
しかし、拘縮等が原因で、寝たきりの人や車いすが手放せない人、自分では体の向きや位置を変えられない人においては、太腿が痩せて、内腿の窪みや裏腿に窪みを生じており、このような着用者においては、従来の吸収性物品の立体ギャザー構造では、内腿の窪みや腿外側の窪みに対しては十分なフィット性が得られず、脚周りからの漏れが発生することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−279004号公報
【特許文献2】特開2009−125203号公報
【特許文献3】特開2006−174966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の主たる課題は、排泄物の肌への再付着を防止し、かつ、内腿の窪みや裏腿の窪みに対するフィット性を向上させた吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
尾骨対向部と、尾骨対向部の前側をなす物品前側部分と、この物品前側部分よりも後側であって尾骨対向部を含む物品後側部分とを有し、
下層吸収部、及びその上に位置する上層吸収部が、それぞれ物品前側部分から物品後側部分にかけて前後方向に延在し、前記下層吸収部は少なくとも上層吸収部側の面から、及び前記上層吸収部は少なくとも下層吸収部側の面から、それぞれ排泄物を吸収するように構成され、
前記上層吸収部は、尾骨対向部の前側をなす上層前側部分と、上層前側部分よりも後側であって尾骨対向部を含む上層後側部分とから構成され、
前記上層吸収部は、その前後方向全体が、幅方向中央に対して左側に位置する左側部分、及び右側に位置する右側部分からなり、
前記左側部分及び右側部分は、幅方向外側の側縁部が前後方向全体にわたり前記下層吸収部の表面に対して固定され、この固定部よりも幅方向中央側の部分のうち、前端部及び後端部は前記下層吸収部の表面に対して固定され、前端部及び後端部以外の部分は前記下層吸収部の表面に対して固定されていない自由部分とされ、且つこの自由部分の幅方向中央側の縁部に、先端部弾性伸縮部材が各縁部に沿う方向に伸長した状態で固定されており、
少なくとも展開状態において、上層吸収部の左側部分の幅方向中央側の側縁と右側部分の幅方向中央側の側縁とが、上層前側部分では対応する下層吸収部が露出するように幅方向に離間し、かつ上層後側部分では前後方向全体にわたり一致している、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0006】
(作用効果)
本発明では、上層吸収部と下層吸収部を有する吸収性物品において、上層吸収部をその前後方向全体にわたり左側部分と右側部分とに分離し、左側部分及び右側部分における幅方向中央側の縁部に沿うように先端部弾性伸縮部材を配した。加えて、少なくとも展開状態において、上層吸収部の左側部分の幅方向中央側の側縁と右側部分の幅方向中央側の側縁とが、上層前側部分では対応する下層吸収部が露出するように幅方向に離間し、かつ上層後側部分では前後方向全体にわたり一致する構成とした。このような構成とすることで、上層吸収部における左側部分及び右側部分が、先端部弾性伸縮部材の収縮作用により、装着者の肌側に盛り上がり、物品前側部分は内腿の窪みや裏腿の窪みに対してフィットし、物品後側部分は臀裂の形状にフィットするだけでなく、吸収性物品の着用者の排泄口に当接する部分には左側部分及び右側部分の離間部が位置し、その後側では左側部分及び右側部分が閉じた状態で臀裂にフィットした状態となる。よって、吸収性物品の着用者の排泄口に当接する部分においては、直接排泄物が下層吸収部より吸収され、かつ、吸収された排泄物が物品の後側へ移行したとしても、上層吸収部が障壁となって着用者の臀部に付着しにくい、という効果を奏する。
【0007】
さらに、上層吸収部が前後方向全体にわたり左側部分及び右側部分に分離されていると、装着位置が多少前方にずれた場合でも、装着状態では股間部の表面形状に沿って物品が変形する結果、左側部分及び右側部分の離間開始位置が後方にずれて上層後側部分の前端部に位置するようになる。よって、尾骨の前後に対するフィット性が損なわれず、また前述の排泄物の吸収保持機能も維持される。
【0008】
<請求項2記載の発明>
前記左側部分及び右側部分は、前端部において、幅方向中央側端部が幅方向外側に一部肌側に向かって折り返された状態で前記下層吸収部の表面に固定されている、請求項1記載の吸収性物品。
【0009】
(作用効果)
このように、上層吸収部の前端部においては、左側部分、右側部分ともにその幅方向中央側端部を一部、肌側に折り返した状態で下層吸収部の表面に固定する構成とすると、内蔵吸収体によりクッション性に優れる折り返し部分が三角形の面状で鼠径部及びその内側近傍に接するため、線状で接した場合と比して着用者の内腿の窪みにフィットしやすくなる。
【0010】
<請求項3記載の発明>
前記下層吸収部の吸収体の幅が、前記上層吸収部の吸収体のなす幅よりも狭い、請求項1または2に記載の吸収性物品。
【0011】
(作用効果)
下層吸収部の吸収体の幅が、上層吸収部の吸収体の幅よりも狭いと、特に股間部においては、装着者の股間が狭い場合や脚の動きにより股間が狭くなり、これに伴い物品の股間部が装着者の股間に挟まれて狭くなったとき、上層前側部分の両側部が下層吸収部の両脇に逃げ出て落ち込むことにより、左側部分及び右側部分が盛り上がりによる窪みに対するフィット性を維持したまま、脚周りに追従して姿勢変化及び位置変化することができる。その結果、内腿の窪みや裏腿の窪みに起因する漏れの防止効果に優れるようになる。
【0012】
また、股間部以外においても、上層吸収部の吸収体の幅方向端部を下層吸収部の吸収体の幅方向外側の表面に固定することとなり、上層吸収部が、幅方向端部より中央部に向かって立ち上がる構造となる。上層吸収部の幅方向端部の立ち上がりにより、上層吸収部がより、恥骨による凹凸や臀裂にフィットしやすくなり、漏れ防止効果を高めることができる。
【0013】
<請求項4記載の発明>
前記上層吸収部の、少なくとも上層前側部分における前記左側部分及び右側部分が幅方向にアーチ状をなしている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0014】
(作用効果)
上層前側部分がこのようなアーチ状をなしていることによって、左側部分及び右側部分が裏腿の窪みに対して良好にフィットするようになる。
【0015】
<請求項5記載の発明>
前記上層前側部分は、後端部から前側に向かうにつれて前記左側部分の幅方向中央側の側縁及び右側部分の幅方向中央側の側縁の離間距離が拡大しつつ装着者の脚の付け根に沿って鼠径部に達するように形成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0016】
(作用効果)
本項記載の発明では、上層吸収部における左側部分及び右側部分の幅方向中央側の側縁は、後端部では一致又は近接し、後端部から前側に向かうにつれて離間距離が拡大するように形成されており、また、これら左側部分と右側部分との離間部分を入口とするポケットが、上層後側部分と下層吸収部との間に形成される。よって、このポケットの入口縁部は、上層前側部分における左側部分及び右側部分の幅方向中央側の側縁により形成され、その後端部では両側縁が一致又は近接することにより山状をなして肛門又はその近傍にフィットし、後端部から前側では両側縁が装着者の各脚の付け根に沿って鼠径部までフィットするようになる。その結果、股間部においても上層吸収部が身体表面にフィットし、肌を伝う尿もポケットへ導入して、上層吸収部及び下層吸収部の少なくとも一方により吸収することができ、褥瘡が発生し易い尾骨部及び仙骨部の尿汚染を低減することができる。
【0017】
<請求項6記載の発明>
前記上層吸収部は、上層吸収体と、上層吸収体における下層吸収部側の反対側を覆う液不透過性シートとを有するものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0018】
(作用効果)
このように、上層吸収体における下層吸収部側の反対側の面を覆うように液不透過性シートを設けると、下層吸収体に吸収された排泄物が上層吸収部を透過して装着者の肌に逆戻りするのを防止できるため好ましい。
【発明の効果】
【0019】
以上のとおり、本発明によれば、仙骨部や尾骨部の尿汚染の防止性能が向上する等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】吸収パッドの展開状態を示す平面図である。
【図2】下層吸収部のみを示す平面図である。
【図3】上層吸収部のみの展開状態を示す一部破断平面図である。
【図4】図1のX−X断面図である。
【図5】図1のY−Y断面図である。
【図6】図1のZ−Z断面図である。
【図7】上層前側部分の盛り上がり状態を示す股間部断面図である。
【図8】吸収性物品の斜視図である。
【図9】上層後側部分の盛り上がり状態を示す股間部断面図である。
【図10】他の形態の上層前側部分の盛り上がり状態を示す股間部断面図である。
【図11】他の形態の上層吸収部のみを示す一部破断平面図である。
【図12】他の形態の上層吸収部のみを示す一部破断平面図である。
【図13】他の形態の吸収性物品の斜視図である。
【図14】股間部に対する上層前側部分のフィット性を説明するための概略図である。
【図15】他の形態の上層吸収部のみを示す一部破断平面図である。
【図16】他の形態の下層吸収部のみを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら詳説する。なお、「尾骨対向部」、「仙骨対向部」、「股間部」とは、使用時に身体の尾骨、仙骨、股間と対向する部分を意味し、製品によって異なるものである。また、断面図における点模様は、ホットメルト接着剤による接着、あるいは素材の融着により形成される固定部を示している。
【0022】
図1〜図7は、本発明に係る吸収パッド例200を示している。この吸収パッド200は、尾骨対向部Cと、尾骨対向部Cの前側をなす物品前側部分Fと、この物品前側部分Fよりも後側であって尾骨対向部Cを含む物品後側部分Bとを有するものである。各部の寸法は適宜定めることができ、例えば、物品全長(前後方向長さ)L1は350〜700mm程度、全幅W1は130〜400mm程度とすることができ、この場合における前側部分Fの前後方向長さは150〜400mm程度、及び後側部分Bの前後方向長さは200〜300mm程度、尾骨対向部Cの前後方向長さは40〜100mm程度、とすることができる。
【0023】
吸収パッド200は、下層吸収部10、及びその上に位置する上層吸収部20が、それぞれ物品前側部分Fから物品後側部分Bにかけて前後方向に延在しているものである。図示例では、下層吸収部10及び上層吸収部20ともに、物品全長全体にわたり設けられているが、いずれか一方を他方より短く、例えば下層吸収部10よりも上層吸収部20を短く構成することもできる。
【0024】
(下層吸収部)
下層吸収部10は、下層裏面側シート11の内面と下層表面側シート13との間に、下層吸収体14が介在された基本構造を有している。
より詳細には、下層吸収体14としては、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて粒子状等の高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子を混合する場合等、必要に応じて、下層吸収体14はクレープ紙等の液透過性包装シート(図示せず)により包むことができる。
【0025】
下層吸収体14における繊維目付け及び高吸収性ポリマーの目付けは適宜定めることができるが、繊維目付けは100〜600g/m2程度とするのが好ましく、また吸収性ポリマーの目付けは0〜400g/m2程度とするのが好ましい。
【0026】
また、下層吸収体14の形状は、図示例のように股間部がその前後両側よりも幅の狭い括れ部分14Nとなる形状の他、前側の部分が後側の部分よりも相対的に幅広な帯状、あるいは長方形状、台形状等、適宜の形状とすることができる。下層吸収体14の寸法は適宜定めることができるが、前後方向長さL2は、物品全長L1の85〜95%程度とすることができ、下層吸収体14の幅W2は、物品幅W1の70〜95%程度とすることができる。また、括れ部分14Nの最小幅W4は、下層吸収体幅W2の35〜65%程度であるのが好ましい。また、物品前端を0%とし物品後端を100%としたとき、括れ部分14Nの前端は10〜25%の範囲に位置しているのが好ましく、括れ部分14Nの後端は40〜65%の範囲に位置しているのが好ましく、括れ部分14Nの最小幅W4となる部位(最小幅部位)は25〜50%の範囲に位置しているのが好ましい。
【0027】
下層吸収体14には、図2、4に示すように、スリット部40を設けることが好ましい。スリット部は図示例のように、表面側から裏面側まで貫通する形態としてもよいが、表面側のみに部分的に配される形態としてもよい。スリット部は、下層吸収体の括れ部14Nにほぼ平行な形状で、括れ部14Nより幅方向内側に配されるのが好ましい。このような形態とすることで、図示例において下層吸収体14は、折れ線α、β及びγの位置で、折れやすくなる。下層吸収体14を折れ線αの位置で折れやすくすることで、吸収体前端側が恥骨の形状に沿うように立ち上がりやすくなる。また、折れ線β,γにより、下層吸収体14と、それに追従する上層吸収部が脚回りにフィットしやすい形状となる。なお、スリット部の別の形状を、図16(A)〜(D)に例示する。
【0028】
下層吸収体の幅W2及びW4は、それぞれ当接する下層吸収体のなす幅W3,W5より狭くなっていることが好ましい。特に、括れ部分14Nの存在によって、下層吸収部10における股間部の幅W4が、上層吸収部20の上層前側部分20Fにおける股間部の幅W3よりも狭くなっていることが好ましい。股間部においてのみ、下層吸収体の幅が上層吸収体のなす幅より狭くなっている場合、このW4<W3となる部分の前後方向長さは、物品全長L1の20〜55%程度とするのが好ましい。
【0029】
下層吸収体14の裏面側には、下層裏面側シート11が下層吸収体14の周縁から食み出るように設けられている。下層裏面側シート11としては、液不透過性シートの他、製品によっては液透過性シートを用いることもできる。液不透過性シートとしてはポリエチレンフィルム等の樹脂フィルムの他、ムレ防止の点から遮水性を損なわずに透湿性を備えたシートも用いることができる。この遮水・透湿性シートとしては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートの他、不織布にシリコンなどにより撥水処理を施した撥水性不織布を用いることができる。
【0030】
また、下層裏面側シート11の外面の一部又は全体は、不織布からなる外装シート12により覆うことができる。外装シート12としてはスパンボンド不織布等、公知の不織布を用いることができる。不織布の繊維素材としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0031】
下層吸収体14の表面側は下層表面側シート13により覆われている。図示形態では下層表面側シート13が下層吸収体14を完全に覆うように配されているが、下層表面側シート13の幅を狭めて、下層表面側シート13の側縁から下層吸収体14が一部食み出る構成としてもよい。下層表面側シート13としては、有孔または無孔の不織布や穴あきプラスチックシート等の液透過性シートを用いることができ、不織布としてはエアスルー不織布やスパンレース不織布等、公知の不織布を用いることができる。不織布の繊維素材としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0032】
下層表面側シート13と下層吸収体14との間には、図示しない中間シートを介在させることができる。この中間シートは、下層吸収体14により吸収した尿の逆戻りを防止するために設けられるものであり、保水性が低く、且つ透液性の高い素材、例えば嵩の高い不織布、メッシュフィルム等を用いるのが望ましい。下層表面側シート13の前端を0%とし下層表面側シート13の後端を100%としたとき、中間シートの前端は0〜11%の範囲に位置しているのが好ましく、中間シートの後端は92〜100%の範囲に位置しているのが好ましい。また、中間シートの幅は物品幅W1の30〜65%程度であるのが好ましい。
【0033】
(上層吸収部)
上層吸収部20は、幅方向中央に対して左側に位置する左側部分20L、及び右側に位置する右側部分20Rから構成されている。左側部分20L、及び右側部分20Rは、上層裏面側シート21L,21Rと上層表面側シート23L,23Rとの間に、上層吸収体24L,24Rがそれぞれ介在された基本構造を有している。
【0034】
上層裏面側シート21L,21R及び上層表面側シート23L,23Rとしては、下層表面側シート13と同様の素材の中から適宜選択することができ、下層表面側シート13と同一の素材を用いることも、異なる素材を用いることもできる。
【0035】
また、上層吸収体24L,24Rとしては、下層吸収体14と同様の素材の中から適宜選択することができ、下層吸収体14と同一の素材を用いることも、異なる素材を用いることもできる。
【0036】
さらに、図示形態のように、上層吸収体24L,24Rと上層表面側シート23L,23Rとの間に、液不透過性シート25L,25Rを介在させると好ましい。これに代えて又はこれとともに、上層表面側シートを液不透過性シートで構成することもできる。これらの場合における液不透過性シート25L,25Rとしては、下層裏面側シート11と同様の素材の中から適宜選択することができ、下層裏面側シート11と同一の素材を用いることも、異なる素材を用いることもできる。
【0037】
上層吸収部20の前後端部は、上層裏面側シート21L,21R及び上層表面側シート23L,23Rが上層吸収体24L,24Rの前後端よりも前後両側にそれぞれ延出して貼り合わされることにより形成されており、一方、下層吸収部10の前後端部は、下層裏面側シート11、外装シート12および下層表面側シート13が下層吸収体14の前後端よりも前後両側にそれぞれ延在されて貼り合わされることにより形成されており、吸収性物品200の前後端部には、これら下層吸収部10の前後端部と上層吸収部20の前後端部とが貼りあわされて形成された、上層吸収体24L,24R及び下層吸収体14の無いエンドフラップ部EFとなっている。
【0038】
また、上層吸収部20の両側部は、上層裏面側シート21L,21R及び上層表面側シート23L,23Rが上層吸収体24L,24Rの両側縁よりも側方にそれぞれ延出して貼り合わされることにより形成されており、一方、下層吸収部10の両側部は、下層裏面側シート11、外装シート12および下層表面側シート13が下層吸収体14の両側縁よりも側方にそれぞれ延在されて貼り合わされることにより形成されており、吸収性物品200の両側部には、これら下層吸収部10の両側部と上層吸収部20の両側部とが貼りあわされて形成された、上層吸収体24L,24R及び下層吸収体14の無いサイドフラップ部SFとなっている。
【0039】
特徴的には、上層吸収部20は、尾骨対向部の前側をなす上層前側部分20Fと、上層前側部分20Fよりも後側であって尾骨対向部を含む上層後側部分20Bとから構成されており、図示例では、上層前側部分20Fの前端部は物品前端部まで達しており、後端部は物品後端部まで達している。
【0040】
上層吸収部20のみを展開した状態を図3に示す。上層前側部20Fにおいて、左側部分20Lの幅方向中央側の側縁及び右側部分20Rの幅方向中央側の側縁は、後端では一致又は近接するとともに、後端から前側に向かうにつれて離間距離が拡大しつつ装着者の脚の付け根に沿って鼠径部に達するように形成されており、これら左側部分20Lの幅方向中央側の側縁及び右側部分20Rの幅方向中央側の側縁の離間部分には、下層吸収部10が露出している。これら左側部分20L及び右側部分20Rの幅方向中央側の各側縁は、図示例では直線状をなしている(両側縁がV字状をなしている)が、曲線状をなしていても良い。これら側縁の交差角(内角)θ3は適宜定めることができるが、10〜30度程度が好適である。
【0041】
上層前側部分20Fの前端部32は、下層表面側シート13に固定される。上層前側部分20Fの左側部分20L及び右側部分20Rは、その幅方向中央側の側縁が肌側に向かって一部折り返され、前端部32L,32Rは折り畳まれた状態で下層表面側シート13上に固定されるのが好ましい(図6)。図示例においては、上層前側部20Fの両側縁が前後方向全体的に折り返されており、この場合、折り返される側縁の内角θ2は、2〜10度とすることが好ましい。また、折り返されることにより生じる、左側部分20L及び右側部分20Rのなす幅方向中央側の内角θ1は、10〜30度程度が好適である。このように、折返し・折り畳み構造とすることで、後述の中央側縁部の弾性部材35L,35Rによる上層吸収部の立ち上がりとともに、前端部の立体的立ち上がりを容易とすることができる。弾性部材35L,35Rによる立ち上がりのみでは、上層吸収部の中央側縁部は線状に肌に当たりやすいのに対し、側縁を折り返すことにより、特に前端部(鼠径部周辺)において肌へ当たる部分が面状となり、より体型にフィットしやすい。なお、折り返し部分39L,39Rは、図示例のように上層前側部20Fの前後方向全体全体にわたって設けてもよく、また、前端側の一部のみに設けてもよい。
【0042】
一方、上層後側部分20Bにおいては、左側部分20L及び右側部分20Rの幅方向中央側の側縁は、前後方向に沿って延在しており、左側部分20Lの幅方向中央側の側縁と右側部分20Rの幅方向中央側の側縁とが略一致する。左側部分20Lと右側部分20Rとの側縁部を一致させることで、物品前側部分で下層吸収部に吸収された排泄物が物品後方に移行したとしても、着用者の肌に排泄物が触れにくい構成とした。
【0043】
上層前側部分20Fの左側部分20L及び右側部分20Rは、幅方向外側の側縁部31L,31Rが下層吸収部10の表面に対して固定され、この固定部31L,31Rよりも幅方向中央側の部分では前端部32L,32Rは前述のように折り畳まれて固定されるものの、前端部以外の部分33L,33Rは下層吸収部10の表面に対して固定されていない自由部分とされている。固定部31L,31Rの幅方向中央側の側縁は、図4に示すように、上層吸収体24L,24Rの幅方向外側の側縁より幅方向中央側に位置しているのが好ましいが、上層吸収体24L,24Rの幅方向外側の側縁と同じか又はより幅方向外側に位置させることも可能である。この固定部31L,31Rは、ホットメルト接着剤による接着、あるいは素材の融着により形成することができる。
【0044】
一方、上層後側部分20Bは、両側部37L,37R及び後端部38L,38Rが下層吸収部10の表面に固定され、これら固定部37,38により囲まれる部分は非固定とされる。上層後側部分20Bの固定部も、ホットメルト接着剤による接着、あるいは素材の融着により形成することができ、特に、両側部の固定部37は上層前側部分20Fの左右両側の固定部31L,31Rとそれぞれ連続するように形成するのが望ましい。
【0045】
そして、上層吸収部20の左側部分20L及び右側部分20Rには、自由部分33L,33Rの幅方向中央側の縁部に、先端部弾性伸縮部材35L,35Rが各縁部に沿う方向に伸長した状態でホットメルト接着剤等により固定されている。この先端部弾性伸縮部材35L,35Rとしては、糸状、紐状、帯状等に形成された、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム等を用いることができる(後述の基端部弾性伸縮部材も同様)。図示例では、左側部分20L及び右側部分20Rの幅方向中央側の縁部における上層吸収体24の無い縁部に設けられているが、上層吸収体24の幅方向中央側の端部の表面側又は裏面側に設けることもできる。
【0046】
さらに、図示例では、自由部分33L,33Rの幅方向外側の縁部における上層吸収体24の裏面側に、隆起用弾性伸縮部材36L,36Rが前後方向に伸長した状態でホットメルト接着剤等により固定されている。隆起用弾性伸縮部材36L,36Rは、自由部分33L,33Rの幅方向外側の縁部に設ける他、図10に示すように、自由部分33L,33Rの幅方向中間部にも設けることができる。隆起用弾性伸縮部材36L,36Rは、左側部分20L及び右側部分20Rの各自由部分のうち、内腿対向部IS及び裏腿対向部BSにのみ設けられている(つまり、両者の間又は前後両側には設けられていない)が、図11に示すように内腿対向部IS及び裏腿対向部BSのいずれか一方(図示例では内腿対向部IS)にのみ設けたり、図12に示すように内腿対向部IS及び裏腿対向部BSの両者にわたるように連続的に設けたりすることもできる。内腿対向部IS及び裏腿対向部BSの位置は製品により異なるが、通常の場合、内腿対向部ISは括れ部分14Nの前後方向中央から前側に20〜100mmの部位とし、裏腿対向部BSは括れ部分14Nの前後方向中央から後側に20〜100mmの部位とすることができる。また、各隆起用弾性伸縮部材36L,36Rの前後方向長さは、上層前側部分20Fの前後方向長さの10〜25%程度とするのが好ましい。
【0047】
以上のように構成された吸収性物品においては、図7に示すように、上層前側部分20Fにおける左側部分20L及び右側部分20Rが先端部弾性伸縮部材35L,35Rの収縮作用により装着者の肌側に盛り上がるとともに、内腿の窪みや裏腿の窪みに対してフィットするようになる。また、図8に示すように、上層後側部分20Bにおいては、左側部分20L及び右側部分20Rが臀裂の形状にフィットするように隆起する。この際、下層吸収体14の幅が、上層吸収部の吸収体24L,24Rのなす幅より狭いと、股間部においては、装着者の股間が狭い場合や脚の動きにより股間が狭くなり、これに伴い物品の股間部が装着者の股間に挟まれて狭くなったとき、上層前側部分20Fの両側部が下層吸収部10の両脇に逃げ出て落ち込むことにより、左側部分20L及び右側部分20Rが盛り上がりによる窪みに対するフィット性を維持したまま、脚周りに追従して姿勢変化及び位置変化することができる。その結果、内腿の窪みや裏腿の窪みに起因する漏れの防止効果に優れるようになる。また、股間部以外においても、上層吸収部20が立体的に立ち上がりやすくなることにより、より上層吸収部20が身体形状に追従しやすくなる。
【0048】
また、隆起用弾性伸縮部材36L,36Rが内腿対向部IS及び裏腿対向部BSにのみ作用するように前後方向に間欠的に設けられているため、図8に示されるように、左側部分20L及び右側部分20Rの内腿対向部IS及び裏腿対向部BSが、隆起用弾性伸縮部材36L,36Rの収縮作用により収縮方向(左側部分20L及び右側部分20Rの幅方向中央側の側縁に沿う方向)にアーチ状をなすように装着者の肌側にそれぞれ盛り上がり、図14に模式的に示すように、脚100の内腿の窪み101及び裏腿の窪み102に入り込んでフィットするようになる。その結果、漏れの防止効果がより一層のものとなる。これに対して、隆起用弾性伸縮部材36L,36Rが内腿対向部IS及び裏腿対向の両者にわたるように連続していると、図13に示すような形状となる。
【0049】
特に、図7に示されるように、上層前側部分20Fにおいて、左側部分20L及び右側部分20Rが全体的に、幅方向にアーチ状(幅方向外側から中央側に向かうほど傾きが減少する弓なり形状)をなし、上層前側部分20Fにおける左側部分20L及び右側部分20Rの身体側面が山状に隆起すると、図14に模式的に示すように、脚100の裏腿の窪み102に対するフィット性が更に向上する。この観点から、隆起用弾性伸縮部材36L,36Rは、図11に示すように内腿対向部ISにのみ設ける形態でも十分なフィット性向上を図ることができる。なお、図中の符号UPは排尿口、符号APは肛門、符号TPは尾骨対向部の位置を示している。
【0050】
上層前側部分20Fの後端部では両側縁が一致又は近接することにより山状をなして肛門又はその近傍にフィットし、上層前側部分20Fの後端部から前側では両側縁が装着者の各脚の付け根に沿って鼠径部までフィットするようになる。その結果、股間部においても上層吸収部20が身体表面にフィットし、肌を伝う尿も上層吸収部20と下層吸収部10の間へ導入して、上層吸収部20及び下層吸収部10の少なくとも一方により吸収することができ、尾骨部及び仙骨部の尿汚染を低減することができる。
【0051】
また、図示例のように、上層吸収体24L,24Rにおける下層吸収部10側の反対側の面を覆うように液不透過性シート25L,25Rを設けると、下層吸収部側に導入した排泄物が上層吸収部20を介して装着者の肌に逆戻りするのを防止できるようになり、尾骨部及び仙骨部の尿汚染を低減する効果がより一層のものとなる。
【0052】
図9に示すように、上層後側部分20Bにおける左側部分20L及び右側部分20Rの先端部弾性伸縮部材35L,35Rは、幅方向に間隔を空けて且つ幅方向中央側のものほど高い伸長率となるように複数本設けるのが好ましい。これにより、上層後側部分20Bの左側部分20L及び右側部分20Rは、幅方向外側から中央側に向かうほど傾きが増加するように(換言すれば、下層吸収部10側面が膨出するように)反り上がり、臀裂の形状に対するフィット性が顕著に向上する。
【0053】
なお、上層前側部分20Fにおいても、左側部分20L及び右側部分20Rが幅方向外側から中央側に向かうほど傾きが増加するように反り上がるような構成としてもよい。この場合、上層前側部分20Fの形状が肛門及びその周辺の形状にフィットしやすくなる、という利点を有する。
【0054】
<その他の形態>
(イ)図15に示すように、左側部分20L及び右側部分20Rの上層前側部分20Fの幅方向中央側の側縁20Le,20Reは前後方向に沿う直線状をなしていても良い。
(ロ)上層後側部分20Bは、両側部37及び後端部38が下層吸収部10の表面に固定され、これら固定部37,38により囲まれる部分は非固定となっているが、後端部38のみ等、前後方向の少なくとも一部が下層吸収部10の表面に対して固定されているだけでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、吸収パッド、パンツタイプ若しくはテープタイプ使い捨ておむつ等、吸収性物品全般に利用できるものである。
【符号の説明】
【0056】
10…下層吸収部、11…下層裏面側シート、12…外装シート、13…下層表面側シート、14…下層吸収体、20…上層吸収部、20L…左側部分、20R…右側部分、21…上層裏面側シート、23…上層表面側シート、24…上層吸収体、25…液不透過性シート、35,36…弾性部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
尾骨対向部と、尾骨対向部の前側をなす物品前側部分と、この物品前側部分よりも後側であって尾骨対向部を含む物品後側部分とを有し、
下層吸収部、及びその上に位置する上層吸収部が、それぞれ物品前側部分から物品後側部分にかけて前後方向に延在し、前記下層吸収部は少なくとも上層吸収部側の面から、及び前記上層吸収部は少なくとも下層吸収部側の面から、それぞれ排泄物を吸収するように構成され、
前記上層吸収部は、尾骨対向部の前側をなす上層前側部分と、上層前側部分よりも後側であって尾骨対向部を含む上層後側部分とから構成され、
前記上層吸収部は、その前後方向全体が、幅方向中央に対して左側に位置する左側部分、及び右側に位置する右側部分からなり、
前記左側部分及び右側部分は、幅方向外側の側縁部が前後方向全体にわたり前記下層吸収部の表面に対して固定され、この固定部よりも幅方向中央側の部分のうち、前端部及び後端部は前記下層吸収部の表面に対して固定され、前端部及び後端部以外の部分は前記下層吸収部の表面に対して固定されていない自由部分とされ、且つこの自由部分の幅方向中央側の縁部に、先端部弾性伸縮部材が各縁部に沿う方向に伸長した状態で固定されており、
少なくとも展開状態において、上層吸収部の左側部分の幅方向中央側の側縁と右側部分の幅方向中央側の側縁とが、上層前側部分では対応する下層吸収部が露出するように幅方向に離間し、かつ上層後側部分では前後方向全体にわたり一致している、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記左側部分及び右側部分は、前端部において、幅方向中央側端部が幅方向外側に一部肌側に向かって折り返された状態で前記下層吸収部の表面に固定されている、請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記下層吸収部の吸収体の幅が、前記上層吸収部の吸収体のなす幅よりも狭い、請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記上層吸収部の、少なくとも上層前側部分における前記左側部分及び右側部分が幅方向にアーチ状をなしている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記上層前側部分は、後端部から前側に向かうにつれて前記左側部分の幅方向中央側の側縁及び右側部分の幅方向中央側の側縁の離間距離が拡大しつつ装着者の脚の付け根に沿って鼠径部に達するように形成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記上層吸収部は、上層吸収体と、上層吸収体における下層吸収部側の反対側を覆う液不透過性シートとを有するものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項1】
尾骨対向部と、尾骨対向部の前側をなす物品前側部分と、この物品前側部分よりも後側であって尾骨対向部を含む物品後側部分とを有し、
下層吸収部、及びその上に位置する上層吸収部が、それぞれ物品前側部分から物品後側部分にかけて前後方向に延在し、前記下層吸収部は少なくとも上層吸収部側の面から、及び前記上層吸収部は少なくとも下層吸収部側の面から、それぞれ排泄物を吸収するように構成され、
前記上層吸収部は、尾骨対向部の前側をなす上層前側部分と、上層前側部分よりも後側であって尾骨対向部を含む上層後側部分とから構成され、
前記上層吸収部は、その前後方向全体が、幅方向中央に対して左側に位置する左側部分、及び右側に位置する右側部分からなり、
前記左側部分及び右側部分は、幅方向外側の側縁部が前後方向全体にわたり前記下層吸収部の表面に対して固定され、この固定部よりも幅方向中央側の部分のうち、前端部及び後端部は前記下層吸収部の表面に対して固定され、前端部及び後端部以外の部分は前記下層吸収部の表面に対して固定されていない自由部分とされ、且つこの自由部分の幅方向中央側の縁部に、先端部弾性伸縮部材が各縁部に沿う方向に伸長した状態で固定されており、
少なくとも展開状態において、上層吸収部の左側部分の幅方向中央側の側縁と右側部分の幅方向中央側の側縁とが、上層前側部分では対応する下層吸収部が露出するように幅方向に離間し、かつ上層後側部分では前後方向全体にわたり一致している、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記左側部分及び右側部分は、前端部において、幅方向中央側端部が幅方向外側に一部肌側に向かって折り返された状態で前記下層吸収部の表面に固定されている、請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記下層吸収部の吸収体の幅が、前記上層吸収部の吸収体のなす幅よりも狭い、請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記上層吸収部の、少なくとも上層前側部分における前記左側部分及び右側部分が幅方向にアーチ状をなしている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記上層前側部分は、後端部から前側に向かうにつれて前記左側部分の幅方向中央側の側縁及び右側部分の幅方向中央側の側縁の離間距離が拡大しつつ装着者の脚の付け根に沿って鼠径部に達するように形成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記上層吸収部は、上層吸収体と、上層吸収体における下層吸収部側の反対側を覆う液不透過性シートとを有するものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−70867(P2012−70867A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217160(P2010−217160)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】
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