説明

吸収性物品

【課題】ウイング部の裏面シート側への折り曲げが容易で、着用時のフィット性に優れ、着用時の違和感が少ない吸収性物品を提供すること。
【解決手段】本発明の吸収性物品1は、表面シート2、裏面シート及びこれら両シート間に配された吸収体4を具備する縦長の本体部5、並びに本体部の両側縁51,51から延出する一対のウイング部6,6を有している。ウイング部は、表面シート及び裏面シートとは別体のウイング部形成材62の本体部側に位置する一側縁63側を、これら両シート間に固定して形成されている。一対のウイング部及びこれらに挟まれた部位からなるウイング部形成領域Aにおいて、表面シートの側縁21aは、本体部幅方向Yの内方に凸状に湾曲し且つその凸の頂部21tが、該領域Aにおける裏面シートの側縁31aよりも本体部幅方向Yの内方に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン、パンティライナ(おりものシート)、失禁パッド、陰唇間パッド等の吸収性物品(女性用吸収性物品)に関し、特にウイング部を有する吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ウイング部を有する吸収性物品は、表面シート、裏面シート及びこれら両シート間に配された吸収体を具備する本体部及び該本体部の両側縁から延出する一対のウイング部を有しており、その使用時には、一対のウイング部を、裏面シート側に折り曲げ、折り曲げたウイング部を、ショーツのクロッチ部の非肌対向面等に粘着剤等で固定して使用する。
【0003】
また、ウイング部に用いるシート材の使用量を低減する観点等から、ウイング部を有する吸収性物品の製造方法として、表面シートや裏面シート等の原反とは異なる原反から、ウイング部に近い形状のウイング部材を形成し、そのウイング部材を、表面シートや裏面シート等の本体部の構成材料と接合し、本体部の両側部に固定する方法が提案されている。例えば特許文献1には、液体不透過性シートからなるピース(ウイング部材)を、本体部の表面シート上に配置固定することが記載されている。
【0004】
また特許文献2及び3には、ウイング部材の一側縁側を、本体部を構成する表面シートと裏面シートとの間に接着剤により固定し、該ウイング部材の他側縁側を該表面シート及び該裏面シートそれぞれの側縁より外方に延出するようにした吸収性物品が記載されている。特許文献2及び3に記載の吸収性物品においては、そのウイング部形成領域(一対のウイング部及び該一対のウイング部に挟まれた部位からなる領域)において、表面シートの幅方向の寸法を、裏面シートの幅方向の寸法よりも広く形成することが記載されている。特許文献2及び3によれば、ウイング部形成領域における表面シート2及び裏面シート3の幅方向の寸法をこのように規定することで、ウイング部と本体部との接合強度(引裂強度)が高まると共に、ウイング部が裏面シート側に折り曲げ易くなるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3419476号公報
【特許文献2】特許第3748015号公報
【特許文献3】特許第4230480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3に記載の吸収性物品においては、ウイング部形成領域において、表面シート及び裏面シートそれぞれの本体部長手方向に沿う両側縁が直線状であるため、吸収性物品の使用時において一対のウイング部を裏面シート側に折り曲げたときに、各ウイング部は、これら両シートあるいはこれらの一方における直線状の側縁に沿って折り曲げられ易く、該側縁に沿って直線状の折曲縁が形成されるところ、このような直線状の折曲縁では、ショーツのクロッチ縁の曲線に沿い難く、着用者の身体と吸収性物品との間に隙間が生じ易く、吸収性物品のフィット性の低下を招くおそれがある。また、吸収性物品に直線状の折曲縁が形成されると、該直線状の折曲縁とショーツのクロッチ縁との間に、ウイング部の構成材料や吸収性物品本体の一部が固定されないまま余った状態で存するようになるため、ウイング部をショーツに取り付ける際に吸収性物品にシワが発生したり、着用中に吸収性物品に発生したシワが、漏れを誘発したり着用者の違和感を招く原因となるおそれがある。
【0007】
従って、本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、表面シート、裏面シート及びこれら両シート間に配された吸収体を具備する縦長の本体部、並びに該本体部の両側縁から延出する一対のウイング部を有する吸収性物品であって、前記ウイング部は、前記表面シート及び前記裏面シートとは別体のウイング部形成材の前記本体部側に位置する一側縁側を、これら両シート間に固定して形成されており、前記一対のウイング部及び該一対のウイング部に挟まれた部位からなるウイング部形成領域において、前記表面シートの側縁は、本体部幅方向内方に凸状に湾曲し且つその凸の頂部が、該ウイング部形成領域における前記裏面シートの側縁よりも本体部幅方向内方に位置している吸収性物品を提供することにより、前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吸収性物品は、ウイング部形成領域における表面シートの側縁の形状や位置の工夫により、ウイング部の裏面シート側への折り曲げが容易で、着用時のフィット性に優れ、着用時の違和感が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である生理用ナプキンを表面シート側から見た平面図である。
【図2】図2は、図1のI−I線断面を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、図1に示す生理用ナプキンのウイング部を裏面シート側に折り曲げた状態を示す平面図である。
【図4】図4は、図1に示す生理用ナプキンの製造過程で得られる中間体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本発明の好ましい一実施形態である生理用ナプキン1(以下、ナプキン1ともいう)は、図1及び図2に示すように、縦長の本体部5及び該本体部5の本体部長手方向Xに沿う両側縁51,51から延出する一対のウイング部6,6を有する。本体部5は、図1中X方向に長い形状を有し、その裏面には、該本体部5を、ショーツ等の着衣のクロッチ部の肌対向面(着用者の肌側に向けられる面)に固定するための本体粘着部(図示せず)が形成されており、ウイング部6の裏面には、各ウイング部6を、ショーツのクロッチ部の非肌対向面(着用者の肌側とは反対側に向けられる面)に固定するためのウイング部粘着部61が形成されている。クロッチ部の非肌対向面には、上層及び下層を有する二重構造のクロッチ部の下層側の面も含まれる。
【0012】
本明細書において、長手方向は、吸収性物品(生理用ナプキン)又はその構成部材(例えば本体部)の長辺に沿う方向であり、幅方向は、該長手方向と直交する方向である。図中、符号Xで示す方向は、ナプキン1(本体部5)の長手方向(本体部長手方向)であり、符号Yで示す方向は、ナプキン1(本体部5)の幅方向(本体部幅方向)である。また、肌対向面は、吸収性物品(生理用ナプキン)又はその構成部材における、吸収性物品(生理用ナプキン)の着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、非肌対向面は、吸収性物品(生理用ナプキン)又はその構成部材における、吸収性物品(生理用ナプキン)の着用時に肌側とは反対側(着衣側)に向けられる面である。
【0013】
ナプキン1は、図1に示すように、本体部長手方向Xに、左右両側方にウイング部6,6を有する中央部Aと、ナプキン1の着用時に中央部Aよりも着用者の腹側に配される前方部Bと、ナプキン1の着用時に中央部Aよりも着用者の背中側に配される後方部Cとに区分される。中央部Aは、一対のウイング部6,6及び該一対のウイング部6,6に挟まれた部位からなるウイング部形成領域であり、ナプキン1の着用時には、本体部5における該一対のウイング部6,6に挟まれた部位が、着用者の液排出部(膣口等)に対向配置される。
【0014】
本体部5は、図1及び図2に示すように、液透過性の表面シート2、液不透過性又は撥水性の裏面シート3及びこれら両シート2,3間に配された液保持性の吸収体4を具備する。表面シート2、裏面シート3及び吸収体4は、何れも、本体部長手方向Xに長い縦長の形状を有している。表面シート2及び裏面シート3は、それぞれ、図1に示すように、本体部5の前方部B及び後方部Cにおいては、本体部5の輪郭と一致する輪郭を有している。
【0015】
ナプキン1における一対のウイング部6は、図1及び図2に示すように、表面シート2及び裏面シート3とは別体の一対のウイング部形成材62の本体部5側に位置する一側縁63側を、これら両シート2,3間に固定して形成されている。即ち、各ウイング部6は、ウイング部形成材62を、本体部5側に位置する一側縁63側が、表面シート2と裏面シート3との間に固定され、他側縁64側が、表面シート2の本体部長手方向Xに沿う側縁21(21a,21b,21c)及び裏面シート3の本体部長手方向Xに沿う側縁31(31a,31b,31c)のそれぞれより外方(本体部長手方向Xの外方)に延出するように固定して形成されている。ウイング部形成材62は、図1に示すように、本体部幅方向Yの中央側に配される内側縁63が、本体部長手方向Xに沿って延びる直線状をなしており、本体部幅方向Yの外方側に配される外側縁64が、ナプキン1の輪郭に一致する形状を有しており、その長さ方向(本体部長手方向X)の中央部が外方に突出した形状を有している。
【0016】
裏面シート3は、図1に示すように、本体部5の中央部Aにおいては、前方部B及び後方部Cにおける本体部5の輪郭の両側縁51,51の位置から本体部幅方向Yの外方に延出し、ウイング部6,6内に入り込んでいる。即ち、中央部Aにおける裏面シート3の両側縁31a,31aは、それぞれ、図1に示すように、ウイング部6の延出方向(本体部幅方向Y)における基端と先端との間に位置しており、より詳しくは、ウイング部6の延出方向において、該基端と該先端との間の中央位置より該基端側に位置し、当該位置において本体部長手方向Xに沿って直線状に延びている。尚、ウイング部6の延出方向の基端は、前方部B及び後方部Cそれぞれにおける本体部5の輪郭の側縁51の位置、即ち、前方部Bにおける表面シート2の側縁21b及び裏面シート3の側縁31b並びに後方部Cにおける表面シート2の側縁21c及び裏面シート3の側縁31cそれぞれの位置と同位置である。
【0017】
本実施形態のナプキン1の主たる特長の1つとして、図1に示すように、一対のウイング部6,6及び該一対のウイング部6,6に挟まれた部位からなるウイング部形成領域である、中央部Aにおいて、表面シート2の側縁21aが、本体部幅方向Yの内方に凸状に湾曲し且つその凸の頂部21tが、中央部Aにおける裏面シート3の側縁31aよりも本体部幅方向Yの内方に位置している点が挙げられる。本実施形態においては、中央部Aにおける表面シート2の湾曲した側縁21aの全体が、中央部Aにおける裏面シート3の側縁31aよりも本体部幅方向Yの内方に位置している。
【0018】
このように、中央部A(ウイング部形成領域)における表面シート2の側縁21aが本体部幅方向Yの内方に凸状に湾曲し、且つその凸の頂部21tが中央部Aにおける裏面シート3の側縁31aよりも本体部幅方向Yの内方に位置していることにより、図3に示すように、ナプキン1の使用時(ショーツへの装着時)において一対のウイング部6,6を裏面シート3側に折り曲げたときに、各ウイング部6が中央部Aにおける表面シート2の湾曲した側縁21aに沿って折り曲げられ、該側縁21aに沿って内方に凸状に湾曲した折曲縁(円弧状の折曲縁)が形成されるため、特許文献1〜3に記載の吸収性物品のように該折曲縁が湾曲しておらず直線である場合に懸念される、「表面シートの張力によるウイング部の動きの自由度の低下」や「(ウイング部6の裏面シート3側への折り曲げ等による)表面シート2の引き戻し」が効果的に抑えられ、それによって、折り曲げられたウイング部6がナプキン着用者の動きに追従し、そのため、ナプキン1は着用者の身体に対するフィット性に優れる。即ち、ナプキン1が装着されるショーツの股下部(クロッチ部)は通常、円弧状に括れた形状になっているところ、ナプキン1においては、この円弧状のクロッチ部に則するように、ウイング部6が折り曲げ易くなっている。ナプキン1の着用時には着用者の脚繰りがショーツ股下部の円弧状と対になるかのようにショーツ股下部側に迫り出すことから、ウイング部6を裏面シート3側に折り曲げるための折曲線も円弧状に形成されることが、自然な折り曲げライン(前述した、凸状に湾曲した折曲縁)の形成を助長し易い。
【0019】
また、本実施形態においては、中央部Aにおいて表面シートの側縁21aの全体が裏面シート3の側縁31aよりも本体部幅方向Yの内方に位置しており、着用者の液排出部に対向配置される中央部Aでは、表面シート2が裏面シート3よりも幅(本体部幅方向Yの長さ)が短く形成されているため、ウイング部6の中央部Aにおいて表面シート2を伝ってナプキン1の厚み方向の下方に向かって透過する液は、必ず液不透過性又は撥水性の裏面シート3で受け止められる。そのため、ナプキン1は、ウイング部6においてその非肌対向面からの液の滲みを効果的に防止することができ、防漏性に優れる。
【0020】
また、本実施形態においては、中央部Aでは、前述したように表面シート2が裏面シート3よりも幅狭に形成されているが、中央部Aを挟んで本体部長手方向Xの前後に位置する領域である前方部B及び後方部Cでは、図1に示すように、表面シート2と裏面シート3とで幅が同じであるため、図3に示すように一対のウイング部6,6を裏面シート3側に折り曲げてナプキン1を使用した場合でも、表面シート2が着用者の肌に接し、裏面シート3は着用者の肌に接し難いため、着用時の違和感を覚え難く、良好な着用感が得られる。この種の生理用ナプキンにおいては通常、表面シートは、不織布等の比較的肌触りの良いシート材を含んで構成されているのに対し、裏面シートは、樹脂製フィルム等の比較的べた付いた肌触り感のシート材を含んで構成されているため、裏面シートが着用者の肌に接しないようにすることが望ましい。
【0021】
前述した、中央部Aにおける表面シート2の湾曲した側縁21aによる作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、側縁21aの凸の頂部21tと、中央部Aにおける裏面シート3の側縁31aとの離間距離L1(図2参照)は、好ましくは1〜15mm、更に好ましくは1〜5mmである。
【0022】
中央部Aにおける表面シート2の湾曲した両側縁21a,21aは、それぞれ、その全体が、本体部5の側縁51の位置(本体部5とウイング部6との境界線)よりも本体部幅方向Yの内方に配されていても良く(即ち、側縁21aの全体が本体部5内に配されていても良く)、あるいは外方に配されていても良い(即ち、側縁21aの全体がウイング部6内に配されていても良い)。あるいは、中央部Aにおける表面シート2の側縁21aは、本体部5の側縁51の位置を跨ぐように配されていても良く、即ち、側縁21aの一部(頂部21tを除く部分の全部又は一部)がウイング部6内に配されていても良い。
【0023】
中央部Aにおける表面シート2の湾曲した側縁21aは、ナプキン1の製造工程において、両側縁が湾曲せずに直線状である表面シート2の一部を切除して得ることも可能ではあるが、本実施形態においては、そのような表面シート2の切除を行わずに、表面シート2の直線状の側縁の一部をナプキン1の製造工程において湾曲させることによって、本体部幅方向Yの内方に凸状に湾曲した側縁21aを得ている。そのような表面シート2の湾曲を可能にする重要な手段の1つが、本体部5の肌対向面(表面シート2の肌対向面2a)に形成された溝7である。
【0024】
溝7について更に説明すると、図1及び図2に示すように、中央部A(ウイング部形成領域)における吸収体4の左右両側部には、表面シート2及び該吸収体4が裏面シート3側に向かって一体的に凹陥した、本体部長手方向Xに延びる線状の溝7が形成されている。ここで、「線状」とは、溝(凹陥部)の形状が平面視において直線に限られず、曲線を含み、各線は、連続線でも破線でも良い。線状の溝7においては、表面シート2及び吸収体4が熱融着等により一体化している。線状の溝7の形成は、経血等の排泄液の拡散防止、装着時の身体に対する密着性の向上等に特に有効である。線状の溝7は、熱を伴うか又は伴わないエンボス、あるいは超音波エンボス等のエンボス加工により常法に従って形成することができる。
【0025】
ナプキン1(本体部5)の肌対向面(表面シート2の肌対向面2a)には、線状の溝7として、平面視して本体部幅方向Yの外方に凸状に湾曲する一対の第1の溝71,71が形成されていると共に、一対の該第1の溝71,71それぞれの本体部幅方向Yの外方に、平面視して本体部幅方向Yの外方に凸状に湾曲する一対の第2の溝72,72が形成されている。溝71及び溝72は、図1に示すように、それらの凸の頂部71t,72tの本体部長手方向Xにおける位置を一致させて、本体部幅方向Yに所定間隔を置いて形成されている。溝71の頂部71t及び溝72の頂部72tは、本体部5(ウイング部6)を本体長手方向Xに二分する仮想直線(図示せず)上に位置している。溝71及び溝72は、何れも中央部Aの本体部長手方向Xの全長に亘って形成されている。
【0026】
また、本実施形態においては、線状の溝7として、本体部長手方向Xに延びる左右二対の溝71,72に加えて更に、図1に示すように、本体部幅方向Yに延びる一対の第3の溝73,73が形成されており、一対の第1の溝71,71と一対の第3の溝73,73とがそれぞれの端部で繋がって環状の溝を形成している。ナプキン1の使用時において、着用者の液排出部(膣口等)は、通常、この環状の溝で包囲された領域に対向配置される。
【0027】
本実施形態においては、ナプキン1の製造工程において、このように、中央部A(ウイング部形成領域)の肌対向面2aの左右両側部それぞれに、本体部幅方向Yの外方に凸状に湾曲する2本の溝71,72を本体部幅方向Yに所定間隔を置いて形成することにより、前述したように、表面シート2の一部切除を行わずに該表面シート2の直線状の側縁の一部を湾曲させ、それにより、本体部幅方向Yの内方に凸状に湾曲した側縁21aを得ている。
【0028】
図4には、ナプキン1の製造過程で得られるナプキン中間体1’が示されている。ナプキン1の製造工程においては、左右両側縁が湾曲しておらず該両側縁が直線状である帯状(矩形形状)の表面シート2’(表面シート2の原反)を、その長手方向に走行させ、走行中の該表面シート2’に、該表面シート2’とは別体の一対のウイング部形成材62,62、吸収体4、及び該表面シート2’と同形状で且つ該表面シート2’よりも幅狭の裏面シート3’(裏面シート3の原反)を順次合流させ接着剤や融着加工等により所定部位を接合して複合シートを得、該複合シートにその表面シート2’側からエンボス加工を施して、二対の溝71,72を含む、溝7を形成し、図4に示す如きナプキン中間体1’を得ているところ、前記複合シートにおけるウイング部形成領域(中央部A)の左右両側部に二対の溝71,72を形成すると、該ウイング部形成領域に位置する、表面シート2’の直線状の両側縁21a’,21a’(図4中一点鎖線で示す)が、二対の溝71,72の形成時における該表面シート2’の押し込みにより、前記複合シートの幅方向Y(CD)の内方に引っ張られて湾曲し、これにより最終的に、ナプキン1の本体部幅方向Yの内方に凸状に湾曲した側縁21a,21aが形成される。その際、形成される二対の溝71,72はそれぞれ幅方向Yの外方に凸状に湾曲しているため、表面シート2’の直線状の側縁21a’において、両溝71,72の凸の頂部71t,72tに最も近接している部位(側縁21a’の長さ方向の中央部)が、幅方向Yの内方に最も強く引っ張られ、最終的に表面シート2の凸状に湾曲した側縁21aの頂部21tとなる。一方、前記複合シートにおけるウイング部形成領域(中央部A)を挟んで該複合シートの長手方向X(MD)の前後に位置する領域(前方部B及び後方部C)には、幅方向Yに連なる二対の溝は形成されないため、該領域に位置する表面シート2’は、幅方向Yの内方に引っ張られること無く、該表面シート2’が本来有している幅を実質的に保っており、該領域においては、図4に示すように、相対的に幅広の表面シート2’の両側縁21b’,21b’,21c’,21c’が、相対的に幅狭の裏面シート3’の両側縁31b’,31b’,31c’,31c’から幅方向Yの外方に延出している。
【0029】
図4に示す如きナプキン中間体1’を得た後、該ナプキン中間体1’に、最終製造物であるナプキン1の輪郭に沿ってヒートシールや超音波シール等の融着加工を施して、相対向する表面シート2’と裏面シート3’とを接合し、ナプキン1(本体部5)の周縁部を構成するラウンドシール部としての融着部11,12(図1参照)を形成する。本実施形態においては、通常不織布を含んで構成されている表面シート2’が、通常樹脂製フィルムを含んで構成されている裏面シート3’よりも幅広であるため、融着加工において、被融着部における裏面シート3’が融着加工機に融着してライントラブルを起こすおそれが少なく、加工性に優れている。融着加工後、融着部11,12の外周縁に沿って余剰のシート2’,3’を切除することにより、図1に示す如きナプキン1が得られる。
【0030】
中央部Aにおける表面シート2の側縁21aを本体部幅方向Yの内方に凸状に湾曲させて、前述した作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、溝7の配置位置等は次のように設定することが好ましい。
第1の溝71と第2の溝72との間隔(頂部71tと頂部72tとの間隔)L2(図2参照)は、好ましくは2〜15mm、更に好ましくは3〜10mmである。
中央部Aにおける第2の溝72(中央部Aにおいて本体部幅方向Yの最外方に位置する溝)と吸収体4の本体部長手方向Xに沿う側縁41との離間距離L3(図2参照)は、好ましくは1〜15mm、更に好ましくは2〜10mmである。
溝7の幅(溝の線状方向と直交する方向の長さ)は、好ましくは0.2〜5mm、更に好ましくは0.5〜2mmである。
【0031】
本体部5に対するウイング部形成材62の固定形態について説明すると、ウイング部形成材62は、図1に示すように、ウイング部6の付け根80において、ヒートシールや超音波シール等の融着加工によって表面シート2及び裏面シート3に接合されており、付け根80には、これら3つの部材2,62,3が互いに融着された融着部11が形成されている。融着加工は、表面シート2等の被融着材に含まれる合成樹脂を溶融固化させて、複数の被融着材が融着した融着部を形成させる公知の接合加工である。尚、ウイング部6の付け根80は、本体部5の側縁部(本体部5の側縁51及びその近傍)とウイング部6の周縁部(ウイング部6の周縁及びその近傍)との連接部及びその近傍であり、ナプキン1の周縁部における、本体部5からウイング部6に続く部位である。
【0032】
融着部11は、ナプキン1の周縁部における、表面シート2、ウイング部形成材62及び裏面シート3が互いに融着された部位であり、同じくナプキン1の周縁部に形成された融着部12と共に、ラウンドシール部を形成している。融着部12は、本体部5の周縁部でウイング部形成材62が存していない部位における、部材どうしが互いに融着されて形成されており、融着部12においては、表面シート2と裏面シート3とが融着されている。また、ウイング部6におけるウイング部形成材62のみからなる部位(表面シート2及び裏面シート3が存していない部位)の周縁部には、融着部11,12を形成した融着加工の被加工部が形成されている。
【0033】
また、ウイング部形成材62は、図1に示すように、ウイング部6の付け根80以外の部位において、具体的には、本体部5の側縁部から本体部幅方向Yの内方に所定距離離間した位置にある、ウイング部形成材62の一側縁63(ウイング部形成材62の本体部5側に位置する側縁)の近傍において、ヒートシールや超音波シール等の融着加工によって表面シート2に接合されており、一側縁63の近傍には、これら2つの部材2,63が互いに融着された融着部13が形成されている。
【0034】
表面シート2とウイング部形成材62との融着部13は、図1に示すように、平面視して矩形形状の多数の小融着部13sから構成されている。多数の小融着部13sは、ウイング部形成材62の一側縁63(ウイング部形成材62の本体部5側に位置する側縁)の近傍に該一側縁63に沿って、該一側縁63の本体部長手方向Xの全長に亘って所定間隔を置いて多数形成されており、これにより融着部13は、本体部長手方向Xに延びる破線状の直線となっている。融着部13としては、このような、融着されていない部分を含む破線状ではなく、融着されていない部分を含まない連続線状とすることもできるが、前述したナプキン1の製造工程において、溝71,72の形成に先立って連続線状の融着部13を形成すると、その後の溝71,72の形成に起因する、中央部Aにおける表面シート2’の直線状の両側縁21a’,21a’の湾曲が阻害され、本体部幅方向Yの内方に凸状に湾曲した表面シート2の両側縁21a,21aが得られないおそれがある。そこで、融着部13としては、本実施形態のように破線状のものが好ましい。また、融着部13を、溝71,72の形成後の表面シート2の湾曲形状に対応した、曲線状に形成することも、表面シート2の浮きを防止する観点から好ましい。
【0035】
更に、ウイング部形成材62は、図2に示すように、融着部13よりも本体部幅方向Yの外方において、ホットメルト型接着剤14によって裏面シート3の本体部幅方向Yの側縁部(側縁31a及びその近傍)に接合されている。図示していないが、ホットメルト型接着剤14は、裏面シート3の側縁31aの略全長に亘って本体部長手方向Xに連続直線状に延びている。尚、ウイング部6がショーツの湾曲形状に沿って折り曲げられるときに形成される、凸状に湾曲した折曲縁が、連続直線状のホットメルト型粘着剤14と交差することによって、該接着剤14が、折り曲げられる部分と折り曲げられない部分とに分けられた場合でも、ウイング部形成材62(ウイング部6)は柔軟に変形できるため操作性に優れ、ウイング部6の折り曲げ等の操作に支障はない。
【0036】
このように、表面シート2及び裏面シート3とは別体のウイング部形成材62が、ウイング部6の付け根80及び該付け根80以外の部位(ウイング部形成材62の一側縁63の近傍)の少なくとも2箇所で他の部材に接合されていることにより、ウイング部形成材62が本体部5に強固に接合され、これにより、製品加工時及び使用時の両方においてウイング部形成材62が本体部5から脱落する不都合が効果的に防止される。
【0037】
また、本実施形態においては、表面シート2は、前方部B及び後方部C〔ウイング部形成領域(中央部A)を挟んで本体部長手方向Xの前後それぞれに位置する領域〕の両側縁部において、ウイング部形成材62を介して裏面シート3と接合されている。より具体的には、表面シート2は、図1に示すように、前方部B及び後方部Cそれぞれの本体部長手方向Xに沿う両側縁部における、ウイング部6の付け根80の近傍81において、ヒートシールや超音波シール等の融着加工によってウイング部形成材62及び裏面シート3に接合されており、付け根80の近傍81には、これら3つの部材2,63,3が互いに融着された融着部11が形成されている。ウイング部6の付け根80の近傍81は、通常、本体部5の本体部長手方向Xに沿う側縁部における、付け根80から好ましくは80mm以内、更に好ましくは40mm以内の部位である。
【0038】
このように、表面シート2がウイング部6の付け根80の近傍81にてウイング部形成材62を介して裏面シート3に接合されていることにより、特にナプキン1の使用時におけるウイング部形成材62の脱落が効果的に防止されると共に、該付け根80の近傍81を起点とする表面シート2の浮きやめくれが効果的に防止される。また、一般に、ウイング部6の付け根80の近傍81は、ナプキン1の着用者に違和感や不快感を与え易い部位であるところ、該近傍81の肌対向面が、通常比較的肌触りの良い不織布を含んで構成されている、表面シート2で形成されていることにより、着用者に違和感や不快感を与えにくくなる。
【0039】
また、本実施形態においては、表面シート2は、図1に示すように、その肌対向面2aに線状の凹部20が格子状に形成されており、該線状の凹部20によって表面シート2が多数の領域に区画化されて区画領域22が形成されている。線状の凹部20は、肌対向面2aの全域に格子状に形成されている。個々の区画領域22は、平面視して菱形形状であり、その中央部は、当該区画領域22を囲む線状の凹部20に対して相対的に隆起して凸部となっている。
【0040】
線状の凹部20は、表面シート2の構成繊維が圧着又は接着されて形成されている。ここで、「線状」とは、凹部20の形状が平面視において直線に限られず、曲線を含み、各線は、連続線でも良く、あるいは平面視において長方形、正方形、菱形、円形、十字等の多数の窪み部(エンボス部)が間隔を置かずに連なって全体として連続線を形成していても良い。また、繊維を圧着する手段としては、熱を伴うか又は伴わないエンボス加工、超音波エンボス加工等が挙げられる。一方、繊維を接着する手段としてはホットメルトや各種接着剤による結合が挙げられる。線状の凹部20は、例えば、カード法によって形成した繊維ウエブ(表面シート2の原反)に熱エンボス加工を施して形成することができる。このようにして形成された線状の凹部20においては、表面シート2(不織布)の構成繊維である熱融着性繊維が熱融着により一体化している。
【0041】
表面シート2は、このような、線状の凹部20で囲まれた多数の区画領域22を有していることにより、低伸長性であり、本体部長手方向X及び本体部幅方向Yの両方向に引っ張っても伸びにくい。このような低伸長性の表面シート2を使用することにより、前述した、ナプキン1の製造工程における二対の溝71,72の形成に起因する、表面シートの湾曲が一層起こり易くなり、これにより、本実施形態のナプキン1の主たる特長の1つである、本体部幅方向Yの内方に凸状に湾曲した表面シート2の側縁21aがより確実に得られるようになる。
【0042】
このように、本実施形態においては、本体部幅方向Yの内方に凸状に湾曲した表面シート2の側縁21aを得るための工夫として、1)中央部A(ウイング部形成領域)における吸収体4の両側部に、平面視して本体部幅方向Yの外方に凸状に湾曲する二対の溝71,72を形成する、2)表面シート2とウイング部形成材62との融着部13を、連続直線状ではなく、破線状に形成する、3)表面シート2の肌対向面2aに線状の凹部20を格子状に形成する、の3つの手段を採用している。
【0043】
本実施形態のナプキン1における各部の形成材料について説明すると、表面シート2、裏面シート3、吸収体4としては、生理用ナプキン等の吸収性物品において従来用いられている各種の材料などを特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート2としては、単層又は多層構造の不織布や、開孔フィルム等を用いることができる。但し、着用感の向上の観点から、表面シート2としては、肌触りの良い不織布が好ましく、特にスパンボンド不織布、エアスルー不織布が好ましい。裏面シート3としては、液不透過性又は撥水性の樹脂フィルムや樹脂フィルムと不織布の積層体等を用いることができる。吸収体4としては、パルプ繊維等の繊維の集合体(不織布であっても良い)又はこれに吸水性ポリマーの粒子を保持させてなる吸収性コアを、透水性の薄紙や不織布からなるコアラップシートで被覆したものや、各種公知のポリマーシート等を用いることができる。
【0044】
ウイング部形成材62としては、単層又は多層の不織布や、該不織布と樹脂フィルムとの積層体等を用いることができる。イング部6や融着部11,12,13の柔軟性の観点からは、ウイング部形成材62として不織布のみを用いることが好ましく、ウイング部6における防漏性の観点からは、ウイング部形成材62として不織布と樹脂フィルムとの積層体を用いることが好ましい。単層の不織布としては、例えば、スパンボンド不織布、エアスルー不織布等が挙げられ、多層の不織布としては、スパンボンド−メルトブロー複合不織布(SM不織布)や、エアスルー不織布とスパンボンド不織布/SM不織布との貼り合せ等が挙げられる。不織布と樹脂フィルムとの積層体における不織布と樹脂フィルムとの間は、溶融樹脂をフィルムに塗工した後固化させて一体化されていても良いし、ホットメルト型接着剤等の接着剤を介して接合されていても良い。
【0045】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、前記実施形態では、ウイング部形成材62は、ウイング部6の付け根80以外の部位(ウイング部形成材62の一側縁63の近傍)において、ヒートシールや超音波シール等の融着加工によって表面シート2に接合されていたが、融着加工ではなく、ホットメルト型接着剤によって表面シート2と接合されていても良い。本発明で用いるホットメルト型接着剤としては、当該技術分野において公知のものを特に制限無く用いることができる。
【0046】
また、表面シート2の区画領域22(線状の凹部20に囲まれた領域)の平面視における形状は、図1に示す如き菱形に制限されず、例えば、長方形、正方形、平行四辺形、楕円形、三角形等の任意の形状とすることができる。また、一枚の表面シート2に、菱形形状の区画領域と平行四辺形状の区画領域とを組み合わせて設ける等、平面視形状の異なる複数種類の区画領域を設けることもできる。
【0047】
また、ウイング部は、粘着部を介してショーツに固定するものに限られず、機械的面ファスナーのオス部材からなる係合部を用いてショーツに固定するものや、粘着部や機械的面ファスナーからなる係合部を介してウイング部同士を連結して固定するもの等であっても良い。また、図4に示す如きナプキン中間体1’を最終製品1個分に相当する単位長さに切断しただけのものを、そのまま最終製品としてのナプキンとすることも可能である。即ち、本発明の吸収性物品には、図1に示すナプキン1に比して、前方部B及び後方部Cにおける表面シート2及び裏面シート3の本体部幅方向Yの長さ(吸収体4の本体部長手方向Xに沿う側縁41からの延出長さ)が長いものも含まれる。
【0048】
また、本発明の吸収性物品(女性用吸収性物品)は、生理用ナプキンの他、パンティライナ(おりものシート)、失禁パッド、陰唇間パッド等であっても良い。また、表面シート2として、全域が液透過性のものに代えて、液透過性の中央シートの両側それぞれに、撥水性の不織布からなるサイドシートが連結した構成の複合シートを用いることもできる。
【符号の説明】
【0049】
1 生理用ナプキン(吸収性物品)
2 表面シート
20 線状の凹部
21a,21b,21c 表面シートの側縁
22 区画領域
3 裏面シート
31a,31b,31c 裏面シートの側縁
4 吸収体
5 本体部
51 本体部の側縁
6 ウイング部
62 ウイング部形成材
7 線状の溝
71 第1の溝
72 第2の溝
11,12,13 融着部
80 ウイング部の付け根
A 中央部(ウイング部形成領域)
B 前方部
C 後方部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面シート、裏面シート及びこれら両シート間に配された吸収体を具備する縦長の本体部、並びに該本体部の両側縁から延出する一対のウイング部を有する吸収性物品であって、
前記ウイング部は、前記表面シート及び前記裏面シートとは別体のウイング部形成材の前記本体部側に位置する一側縁側を、これら両シート間に固定して形成されており、
前記一対のウイング部及び該一対のウイング部に挟まれた部位からなるウイング部形成領域において、前記表面シートの側縁は、本体部幅方向内方に凸状に湾曲し且つその凸の頂部が、該ウイング部形成領域における前記裏面シートの側縁よりも本体部幅方向内方に位置している吸収性物品。
【請求項2】
前記ウイング部形成材は、前記ウイング部の付け根において、融着加工によって前記表面シート及び前記裏面シートに接合されていると共に、該ウイング部の付け根以外の部位において、融着加工又はホットメルト型接着剤によって該表面シートに接合されている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記ウイング部形成領域における前記吸収体の両側部に、前記表面シート及び該吸収体が前記裏面シート側に向かって一体的に凹陥した、本体部長手方向に延びる線状の溝が形成されており、
前記線状の溝として、平面視して本体部幅方向外方に凸状に湾曲する一対の第1の溝が形成されていると共に、一対の該第1の溝それぞれの本体部幅方向外方に、平面視して本体部幅方向外方に凸状に湾曲する一対の第2の溝が形成されている請求項1又は2記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−85800(P2012−85800A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234742(P2010−234742)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】