説明

吸収性物品

【課題】吸収体の中央領域の隆起するような変形を促進することにより肌との密着度を高めるとともに、ショーツのヨレなどによる密着度の低下を防止する。
【解決手段】透液性表面シート3と裏面シート2との間に吸収体4が介在され、前記裏面シート2の非肌当接面側にズレ止め粘着剤層10が形成された生理用ナプキン1である。前記吸収体4の非肌当接面側であって生理用ナプキン1の幅方向中央部に長手方向に沿ってエンボス溝Eを形成し、前記エンボス溝Eを含む中央部領域Mには前記ズレ止め粘着剤層を形成せず、その両側に生理用ナプキン1の長手方向に沿ってズレ止め粘着剤層10、10を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経血やおりものなどを吸収するための生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品に係り、装着時に肌との密着度を向上した吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パンティライナー、生理用ナプキン、おりものシート、失禁パッド、トイレタリーなどの吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に綿状パルプ等からなる吸収体を介在したものが知られている。
【0003】
この種の吸収性物品にも幾多の改良が重ねられ、体液漏れを防止するための手段が種々講じられている。特に、夜用ナプキンなどにおいては、漏れの原因の一つとして臀部の谷間や排血口部とナプキン表面との間に隙間が生じることによる伝い漏れがある。このため、ナプキン中央部を長手方向に沿って肌面側に隆起させ、肌に密着させるようにしたものが開発されている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、吸収性物品の少なくとも後方中央部分に、前記吸収性物品の長手方向に延びるとともに、肌当接面側に隆起する吸収体中高部を有し、かつ前記吸収体中高部に対応する吸収体の非肌当接面側に前記吸収性物品の長手方向に沿って断続的な凹状溝が形成された吸収性物品が開示されている。かかる吸収性物品では、装着状態で、断続的に形成された凹状溝間の部分(無加工部分)を通る多数の横断方向軸が可撓軸となって角折れするように変形し、臀部の丸みに沿うように身体にフィットするとなるとともに、前記凹状溝の形成列を軸とする可撓軸(長手方向可撓軸)により吸収体中高部をさらに隆起させるように変形するため、臀部中央の窪み部分に吸収体中高部を密着させることができるというものである。
【0005】
また、下記特許文献2には、一対のウイング部が吸収性本体を横断させて該吸収性本体に伸張状態で固定した弾性伸縮性シートの両端部分より形成されており、前記弾性伸縮性シートの前記吸収性本体に対する固定部が、少なくとも前記吸収性本体の長手方向の両側における前記吸収体の両側縁よりも幅方向内方の位置にそれぞれ形成され、前記吸収性本体は、二つの前記固定部間において、前記弾性伸縮性シートの収縮により幅方向に収縮している吸収性物品が開示されている。かかる吸収性物品は、吸収性本体が弾性伸縮性シートにより連動して積極的に収縮し、予め予定されていた収縮形状となるため、吸収性本体が不規則に収縮することによるナプキンのヨレが防止できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−263205号公報
【特許文献2】特開2002−369837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1記載の吸収性物品では、不透液性裏面シートの非使用面側(外面)に装着時に下着に接着固定するための粘着剤層を形成した場合、ズレ止め粘着剤層を設ける位置によっては吸収体の隆起するような変形が抑制されるおそれがある。例えば、吸収性物品の幅方向中央部に長手方向に沿ってズレ止め粘着剤層が設けられる場合、脚圧や就寝時の寝相などによる下着のヨレの影響を受けやすく、吸収体の隆起部分にもヨレが生じ肌との密着度が低下する。また、吸収性物品が下着に接着固定されることにより、吸収体の隆起するような変形が起こり難くなり、肌との密着度の低下の原因となっていた。
【0008】
一方、上記特許文献2記載の吸収性物品のように、弾性伸縮性シートの収縮によって固定部間の吸収性本体を表面側に隆起させるようにした場合、弾性伸縮性シートの外面側に配設される裏面シートも収縮するため、この裏面シートに設けられる粘着剤層と下着との接着が剥離してズレ止めの効果が低下し、吸収性物品がズレることによって肌との密着度が低下するおそれがある。
【0009】
そこで本発明の主たる課題は、吸収体の中央領域の隆起するような変形を促進することにより肌との密着度を高めるとともに、ショーツのヨレなどによる密着度の低下を防止した吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在され、前記裏面シートの非肌当接面側にズレ止め粘着剤層が形成された吸収性物品において、
前記吸収体の非肌当接面側であって前記吸収性物品の幅方向中央部に長手方向に沿ってエンボス溝が形成され、前記エンボス溝を含む中央部領域には前記ズレ止め粘着剤層が形成されず、その両側に前記吸収性物品の長手方向に沿ってズレ止め粘着剤層が形成されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0011】
上記請求項1記載の発明では、吸収体の非肌当接面側であって吸収性物品の幅方向中央部に長手方向に沿ってエンボス溝を形成してあるため、このエンボス溝が他の部分よりも薄肉化され、剛性(断面二次モーメント)が低下することにより、両側からの脚の圧力が作用したときに、このエンボス溝を可撓軸として吸収体の隆起するような変形が促進されるため肌との密着度を高めることができるようになる。
【0012】
また、前記エンボス溝を含む中央領域にはズレ止め粘着剤層を形成せず、その両側に吸収性物品の長手方向に沿ってズレ止め粘着剤層を形成してあるため、吸収体の中央領域の隆起するような変形がズレ止め粘着剤層によって阻害されるような事態が防止できるとともに、両側からの脚圧や就寝時の寝相などによってショーツにヨレが生じた場合でも、隆起する中央領域はヨレの影響を受けず、肌との密着状態が維持できる。さらに、前記中央領域の両側にズレ止め粘着剤層を形成してあるため、この部分が吸収体の隆起部の基点となって、吸収体の中央領域の隆起するような変形が促進されるようになるとともに、下着への接着固定が図れるようになる。
【0013】
請求項2に係る本発明として、排血口部を含む股間部に、前記吸収体の非肌当接面側であって前記吸収性物品の幅方向中央部に長手方向に沿って股間部用エンボス溝が形成されるとともに、この股間部用エンボス溝より離隔した後部側に、前記吸収体の非肌当接面側であって前記吸収性物品の幅方向中央部に長手方向に沿って断続的な臀部用エンボス溝が形成され、
少なくとも前記股間部用エンボス溝及び臀部用エンボス溝を含む中央領域には前記ズレ止め粘着剤層が形成されていない請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0014】
上記請求項2記載の発明は、請求項1の「エンボス溝」を具体的に規定したものであり、「エンボス溝」とは、排血口を含む股間部に、前記吸収体の非肌当接面側であって吸収性物品の幅方向中央部に長手方向に沿って形成される股間部用エンボス溝と、この股間部用エンボス溝より離隔した後部側に、前記吸収体の非肌当接面側であって吸収性物品の幅方向中央部に長手方向に沿って断続的に形成される臀部用エンボス溝とを含むものである。また、前記股間部用エンボス溝及び臀部用エンボス溝を含む中央領域には、前記ズレ止め粘着剤層が形成されていない。
【0015】
請求項3に係る本発明として、前記吸収体の非肌当接面側に、排血口部より後方の幅方向中央部の交点から斜め前方の両側に向けて形成された左右一対の前方溝と、前記交点から前記吸収性物品の長手方向に沿う後方に向けて形成された後方溝とから成るY字状の会陰部用エンボス溝が形成され、
少なくとも前記後方溝を含む中央領域には前記ズレ止め粘着剤層が形成されていない請求項1,2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0016】
上記請求項3記載の発明は、請求項1の「エンボス溝」を具体的に規定したものであり、上記請求項2記載の股間部用エンボス溝と臀部用エンボス溝との中間部に会陰部用エンボス溝を設けたものである。前記会陰部用エンボス溝は、吸収体の非肌当接面側に、排血口部より後方の幅方向中央部の交点から斜め前方の両側に向けて形成された左右一対の前方溝と、前記交点から吸収性物品の長手方向に沿う後方に向けて形成された後方溝とから成るY字状のエンボス溝であって、吸収体に両側からの脚圧が作用したときに、該会陰部用エンボス溝を可撓軸として前記交点を頂点とする三角錐状の隆起部を形成するためのものである。
【0017】
請求項4に係る本発明として、前記会陰部用エンボス溝の前方溝の先端部は、前記ズレ止め粘着剤層と重なる領域に形成されている請求項3記載の吸収性物品が提供される。
【0018】
上記請求項4記載の発明では、Y字状の会陰部用エンボス溝の前方溝の先端部を、ズレ止め粘着剤層に重なる領域に形成することにより、Y字状のエンボス溝の先端部が安定して下着側に固定され、会陰部用エンボス溝に沿って吸収体が三角錐状に隆起するような変形が生じやすくなる。
【0019】
請求項5に係る本発明として、少なくとも前記エンボス溝の両側に、前記吸収性物品の肌当接面側から前記吸収性物品の略長手方向に沿って左右一対のフィットエンボスが形成されるとともに、前記フィットエンボスは、前記ズレ止め粘着剤層と重なる領域に形成されている請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0020】
上記請求項5記載の発明は、吸収性物品の肌当接面側に形成されるフィットエンボスと裏面シートの非肌当接面側に形成されるズレ止め粘着剤層との相対的位置関係について規定したものであり、前記フィットエンボスとしては、少なくともエンボス溝の両側に吸収性物品の肌当接面側から吸収性物品の略長手方向に沿って左右一対で形成し、前記フィットエンボスをズレ止め粘着剤層と重なる領域に形成するようにしたものである。これにより、ズレ止め粘着剤層によって下着に接着固定された部分に形成されるフィットエンボスを基点として、吸収体の中央領域が肌当接面側に隆起するような変形が生じやすくなる。
【0021】
請求項6に係る本発明として、前記中央領域の前側及び後側であって、前記エンボス溝が形成されない領域にズレ止め粘着剤層が形成されている請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0022】
上記請求項6記載の発明では、ズレ止め粘着剤層を形成しない中央領域の前側及び後側であって、前記エンボス溝が形成されない領域にズレ止め粘着剤層を形成することにより、吸収性物品の前後のめくれを防止できるとともに、前後方向からの下着のヨレが中央領域まで進展するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上詳説のとおり本発明によれば、吸収体の中央領域の隆起するような変形を促進することにより肌との密着度を高めるとともに、ショーツのヨレなどによる密着度の低下を防止した吸収性物品が提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る生理用ナプキン1の展開図である。
【図2】その裏面図である。
【図3】図1のIII−III線矢視図である。
【図4】図1のIV−IV線矢視図である。
【図5】装着状態の生理用ナプキン1を示す拡大断面図である。
【図6】股間部構造を示す人体の下面図である。
【図7】吸収体欠損部22の平面図である。
【図8】他の形態に係る吸収体欠損部22の平面図及び断面図である。
【図9】他の形態に係る生理用ナプキン1の裏面図である。
【図10】他の形態に係る生理用ナプキン1の裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0026】
〔生理用ナプキン1の基本構造〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、図1〜図4に示されるように、ポリエチレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4、6と、この吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞する被包シート5と、前記吸収体4の略側縁部を起立基端とし、かつ少なくとも体液排出部を含むように前後方向に所定の区間内において表面側に突出して設けられた左右一対の立体ギャザーBS、BSとから主に構成され、かつ前記吸収体4の周囲においては、その上下端縁部では前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接合手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と、前記立体ギャザーBSを形成しているサイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接合手段によって接合され、これら不透液性裏面シート2とサイド不織布7とによる積層シート部分によって側方に突出するウイング状フラップW、Wが形成されているとともに、これよりも臀部側に位置する部分に第2ウイング状フラップW、Wが形成されている。
【0027】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。前記不透液性裏面シート2の非使用面側(外面)には1または複数条の粘着剤層(図示せず)が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着に固定するようになっている。前記不透液性裏面シート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0028】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。前記透液性表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、経血やおりもの等(以下、まとめて体液という。)が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。
【0029】
前記吸収体4としては、体液を吸収・保持し得るものであれば良く、通常はフラッフ状パルプ中に吸水性ポリマー粉末を混入したものが吸収機能および価格の点から好適に使用される。前記吸収体4は形状保持等のために被包シート5によって囲繞するのが望ましい。前記被包シート5としては、クレープ紙、親水性の不織布などを用いることができる。
【0030】
前記吸収体4及び/又は後述の吸収体中高部6には、合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0031】
前記吸収体4の使用面側には、幅方向中央部にナプキン長手方向に細長く、長手方向に延び肌当接面側に隆起する吸収体中高部6を形成することができる。この吸収体中高部6は、図1に示されるように、幅方向中央部に、装着者の排血口部Hを含むとともに後述の会陰部用エンボス溝23に対応する部分を含む股間部6Aと、この股間部6Aの後端から連続する後方部6Bとに亘って細長く形成されている。前記吸収体中高部6のうち、股間部6Aは、吸収量や排血口への密着を維持するために所定の高さで設けることが望ましいが、後方部6Bは、後述のエンボスによる変形の妨げとならないよう、前記股間部6Aより薄くする又は無くすことが好ましい。前記吸収体中高部6の厚みは、股間部6Aが3〜20mm、好ましくは5〜15mmであり、後方部6Bが0〜10mm、好ましくは0〜3mmである。また、前記後方部6Bの吸収体中高部6を薄くした又は無くしたことにより装着者に不安を感じさせないよう、図4に示されるように、この後方部6Bの肌当接面側に嵩高のセカンドシート6aを配設することができる。このセカンドシート6aは、吸収体4、6の変形に影響を与えない程度にクッション性の高い素材を用いることが好ましい。また、前記吸収体中高部6は、前方部6Aより後方部6Bが幅狭に形成され、前方部6Aと後方部6Bとの境界では、後方に向けて幅及び/又は厚みが漸次縮小するように形成されている。この幅及び/又は厚みが漸次縮小する境界範囲は、前側の開始位置が後段で詳述する会陰部用エンボス溝23の交点Cに対応する部分より若干後側とし、後側の終了位置が後段で詳述する会陰部用エンボス溝23の後方溝25の後端に対応する部分より若干後側とすることが好ましい。これにより、股間部6Aと後方部6Bとの境界部分のフィット性が向上するようになる。
【0032】
一方、前記透液性表面シート3の幅寸法は、図示例では、図3および図4の横断面図に示されるように、吸収体4の幅よりも若干長めとされ、吸収体4、6を覆うだけに止まり、前記立体ギャザーBSは前記透液性表面シート3とは別のサイド不織布7、具体的には経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されている。かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を13〜23g/mとして作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0033】
前記サイド不織布7は、図3および図4に示されるように、幅方向中間部より外側部分を吸収体4の内側位置から吸収体側縁を若干越えて不透液性裏面シート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着し、これら前記サイド不織布7と不透液性裏面シート2との積層シート部分により、ほぼ体液排出部に相当する吸収体側部位置に左右一対のウイングフラップW、Wを形成するとともに、これより臀部側位置に第2ウイング状フラップW、Wを形成している。
【0034】
図2に示されるように、前記透液性表面シート3と不透液性裏面シート2との間に吸収体4が介在された本体部分の非肌当接面には、下着に対する固定のために適宜の塗布パターンによって本体ズレ止め粘着剤層10…,11…が形成されている。また、前記ウイング状フラップW、Wの不透液性裏面シート2側の面にはウイングズレ止め粘着剤層8、8が形成されるとともに、前記第2ウイング状フラップW、Wの不透液裏面シート2側の面にはウイングズレ止め粘着剤層9、9が形成されている。前記ウイングズレ止め粘着剤層8、8は、ショーツに対する装着時に、前記ウイング状フラップW、Wを折返し線RL位置にて反対側に折り返し、ショーツのクロッチ部分に巻き付けて止着するようになっている。なお、これらズレ止め粘着剤層8〜11は図示しない剥離材によって覆われている。
【0035】
前記ズレ止め粘着剤層8〜11を形成する粘着剤としては、たとえばスチレン系ポリマー、粘着付与剤、可塑剤のいずれかが主成分であるものが好適に使用される。前記スチレン系ポリマーとしては、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体等が挙げられるが、これらのうち1種のみを使用しても、二種以上のポリマーブレンドであってもよい。この中でも熱安定性が良好であるという点で、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体が好ましい。また、前記粘着付与剤および可塑剤としては、常温で固体のものを好ましく用いることができ、粘着付与剤ではたとえばC5系石油樹脂、C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、ロジン系石油樹脂、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられ、前記可塑剤では例えば、リン酸トリフレシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のモノマー可塑剤の他、ビニル重合体やポリエステルのようなポリマー可塑剤が挙げられる。
【0036】
一方、前記サイド不織布7の内方側部分はほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された糸状弾性伸縮部材が配設され、表面側に起立する立体ギャザーBS、BSが形成されている。具体的には、図3及び図4に示されるように、起立状態で、吸収体4の側縁部又はその近傍から起立する側面起立部7aと、この側面起立部7aの先端から連続して形成されるとともに、ナプキン1の表面に対して略水平又は中心側に傾斜して形成される所定幅の肌当接面部7bとを有し、前記側面起立部7aが前記肌当接面部7bの外方側端縁より外側に位置するようになっている。前記側面起立部7a及び肌当接面部7bには、それぞれ、生理用ナプキン1の長手方向に沿って、1又は複数本の、図示例では各3本づつ糸状弾性伸縮部材12…、13…が配設されている。
【0037】
〔エンボス溝及びズレ止め粘着剤層等の構造〕
次に、吸収体4の非肌当接面側に形成されるエンボス溝及び生理用ナプキン1の肌当接面側に形成されるフィットエンボス並びに裏面シート2の非肌当接面側に形成されるズレ止め粘着剤層の構造について、以下に説明する。
【0038】
本生理用ナプキン1は、図1〜図4に示されるように、吸収体4の非肌当接面側であって生理用ナプキン1の幅方向中央部に長手方向に沿って形成されるエンボス部分を少なくとも一部に有する一又は複数のエンボス溝Eが形成され、前記エンボス溝Eを含む中央領域Mには前記本体ズレ止め粘着剤層が形成されず、その両側に生理用ナプキン1の長手方向に沿って本体ズレ止め粘着剤層10、10が形成されている。また、図示例では、中央領域Mの前側及び後側であって、前記エンボス溝Eが形成されない領域に本体ズレ止め粘着剤層11、11が形成されている。
【0039】
吸収体4の非肌当接面側から前記エンボス溝Eを形成することにより、図5に示されるように、このエンボス溝Eが他の部分よりも薄肉化され、剛性(断面二次モーメント)が低下するため、両側から脚の圧力が作用したときに、このエンボス溝Eを可撓軸として吸収体4の中央部分の隆起するような変形が促進され、排血口部や会陰部、臀部の溝部など身体の窪んだ部分の肌との密着度を高めることができるようになる。
【0040】
前記エンボス溝Eを含む中央領域Mにはズレ止め粘着剤層を形成していないため、生理用ナプキン1が下着に接着固定されることによる吸収体の中央領域の隆起する変形が生じ難くなるような事態が防止できるとともに、両側からの脚圧や就寝時の寝相などによってショーツにヨレが生じた場合でも、隆起する中央領域Mはヨレの影響を受けずに肌との密着状態が維持できるようになる。一方、この中央領域Mの両側にはズレ止め粘着剤層10、10を形成してあるため、この両側部分が吸収体の隆起部の基点となって、吸収体の中央領域Mの隆起するような変形が促進されるようになる。
【0041】
また、前記中央領域Mの前後の領域に本体ズレ止め粘着剤層11、11を形成してあるため、生理用ナプキン1の前後のめくれが防止できるとともに、前後方向からの下着のヨレが中央領域Mまで進展するのを防止できる。
【0042】
前記エンボス溝Eについて詳細に説明すると、前記エンボス溝Eとは、排血口部Hを含む股間部に、吸収体4の非肌当接面側であって生理用ナプキン1の幅方向中央部に長手方向に沿って形成される股間部用エンボス溝26と、この股間部用エンボス溝26より離隔した後部側に、吸収体4の非肌当接面側であって生理用ナプキン1の幅方向中央部に長手方向に沿って断続的に形成される臀部用エンボス溝20、20と、吸収体4の非肌当接面側に、排血口部Hより後方の幅方向中央部の交点Cから斜め前方の両側に向けて形成された左右一対の前方溝24、24と前記交点Cから生理用ナプキン1の長手方向に沿う後方に向けて形成された後方溝25とから成るY字状の会陰部用エンボス溝23とを含むものである。
【0043】
前記股間部用エンボス溝26は、股間部において吸収体の隆起するような変形を生じさせ表面を排血口部に密着させるために形成されるものである。前記股間部用エンボス溝26により、該股間部用エンボス溝26を可撓軸として吸収体4の幅方向中央部が長手方向に沿って表面側に隆起しやすくなり、生理用ナプキン1の表面を装着者の排血口部により確実に密着させることができる。
【0044】
前記臀部用エンボス溝20は、臀部において吸収体の隆起するような変形を生じさせ表面を臀部の谷間及び臀部の前後方向の丸みに沿って密着させるために形成されるものである。前記臀部用エンボス溝20は、凹状溝を連続的に形成してもよいが、比較的短い直線状の凹状エンボスと、エンボス無加工部分とが交互に列を成すような断続的なエンボス溝20、20を形成する方が臀部の前後方向の丸みに沿うことができるので好ましい。なお、前記臀部用エンボス溝20は、図示例では前後に2箇所形成されているが、3箇所以上形成することもできる。
【0045】
また、少なくとも前記臀部用エンボス溝20、20間、即ち前記臀部用エンボス溝20の無加工部分に吸収体4を欠損させた吸収体欠損部22を形成することが好ましい。図示例では、臀部用エンボス溝20、20間に加えて、後段で詳述する会陰部用エンボス溝23と臀部用エンボス溝20との間にも設けられている。上述のように臀部用エンボス溝20、20の形成列を可撓軸として幅方向中央部を隆起させた上で、この隆起部分を臀部の前後方向の丸みに沿って湾曲させた場合において、前記吸収体欠損部22で吸収体4の圧縮方向や引張方向の変形が吸収され、肌当接面側に幅方向のシワ入りが生じ難くなり、臀部の細い谷間の奥にまで良好に密着できるようになる。
【0046】
このように吸収体4の非肌当接面側に臀部用エンボス溝20及び吸収体欠損部22を形成することにより、中央領域Mの後方部がナプキン長手方向に沿って隆起しやすくなり、且つこの隆起部分が臀部の前後方向の丸みに沿って湾曲しやすくなるため、臀部の谷間への密着性が向上し、体液の後漏れが防止できる。
【0047】
次に、前記会陰部用エンボス溝23は、生理用ナプキン1の表面を排血口部より後方の会陰部から臀部の谷間にかけての身体の形状にフィットさせるために形成されるものである。この会陰部用エンボス溝23を形成することにより、この会陰部用エンボス溝23が他の部分よりも薄肉化され、剛性(断面二次モーメント)が低下するため、両側からの脚の圧力が作用したときに、この会陰部用エンボス溝23を可撓軸として前記交点Cを頂点とする三角錐状の隆起部が形成される。この三角錐状の隆起部のうち、前記前方溝24、24による斜め前方の両側に延びるラインは、図6に示されるように、排血口部Hの後方部分から臀部の谷間の始まり部分にかけての会陰部に形成される臀部の谷間の始まり部分を基点として前方の両側に向けて延びる身体のラインLa、Laにフィットする。また、三角錐状の隆起部のうち、後方溝25による後方に延びるラインは、臀部の谷間の始まり部分から後方の臀部の谷間のラインLbにフィットする。このため、会陰部用エンボス溝23によって形成された三角錐状の隆起部が排血口部Hより後方の会陰部から臀部の谷間にかけての身体の形状に極めて良好にフィットし、体液の後方への伝い漏れが防止できるようになる。
【0048】
上記エンボス溝E(股間部用エンボス溝26、臀部用エンボス溝20、会陰部用エンボス溝23)の構造についてさらに詳しく説明すると、図1などに示されるように、生理用ナプキン1の中央部にナプキン長手方向に延びるとともに、肌当接面側に隆起する吸収体中高部6を形成した場合、前記股間部用エンボス溝26及び臀部用エンボス溝20は、前記吸収体中高部6に対応する吸収体4の非肌当接面側に形成され、前記会陰部用エンボス溝23は、前記吸収体中高部6及びその近傍に対応する吸収体4の非肌当接面側に形成されている。
【0049】
前記エンボス溝E(股間部用エンボス溝26、臀部用エンボス溝20及び会陰部用エンボス溝23)の深さは、吸収体4の厚みに対して30〜95%、好ましくは50〜90%の深さで形成するのが望ましい。エンボス溝Eの深さが30%未満の場合は、横断方向の変形性能はもとより長手方向の変形性能を確保することができない。前記エンボス溝Eの深さが95%を超える場合には、エンボス溝Eの剛性が高くなりすぎ、身体の前後方向の丸みに沿った湾曲が生じにくくなる。
【0050】
前記臀部用エンボス溝20の1本当たりの長さは、5mm〜30mmが好ましく、10mm〜20mmがより好ましい。臀部用エンボス溝20の長さは一定でなくてもよく、図示例では、前側より後側の臀部用エンボス溝20を長く形成してある。
【0051】
前記吸収体欠損部22は、生理用ナプキン1の幅方向に10mm〜20mm、長手方向に5mm〜15mmの範囲内に形成されるもので、図7に示されるように、(A)方形状、(B)菱形形状、(C)、(D)くさび形状の他、三角形状などのいずれかの形状で吸収体を欠損させたものである。また、その断面形状は、吸収体の厚み方向に同一形状としても良いが、図8に示されるように、吸収体4の厚み方向に形状を変化させた立体的形状としても良い。
【0052】
前記会陰部用エンボス溝23の前方溝24、24同士の成す角度αは、成人女性の会陰部に形成される身体のラインLa、Laの角度がほぼ70°以上の割合が高いため、この身体のラインに適合させるため、70°以上、180°未満とすることが好ましく、90°以上150°未満がより好ましい。70°以上とすることにより、両側からの脚圧がかかったときに、会陰部用エンボス溝23を可撓軸とする吸収体の隆起効果が向上する。
【0053】
前記会陰部用エンボス溝23の交点Cは、膣口から後方側の肛門付近にかけての会陰部へのフィット性を向上させるため、少なくとも生理用ナプキン1の幅方向中央部で、且つ排血口部Hの中心から生理用ナプキン1の後方に40mm〜60mmの間に設定される。
【0054】
前記前方溝24及び後方溝25は、前記交点Cからそれぞれ20mm〜40mmの長さで形成され、前方溝24と後方溝25の長さは同等であることが好ましいが、異なる長さで形成することもできる。
【0055】
なお、前記エンボス溝Eは、吸収体4単独、又は被包シート5で囲繞された吸収体4の段階で付与するのが望ましい。
【0056】
一方、図1に示されるように、生理用ナプキン1の肌当接面側から、少なくとも前記エンボス溝Eの両側に生理用ナプキン1の略長手方向に沿って左右一対のフィットエンボスFが形成されている。前記「フィットエンボス」とは、表面材と吸収体4とを一体化するエンボス溝のことであり、透液性表面シート3の表面側から吸収体4の所定深さまで付与されるエンボス溝のことである。かかるフィットエンボスFは、前記本体ズレ止め粘着剤層10と重なる領域に形成されている。即ち、本体ズレ止め粘着剤層10によって下着に接着固定された領域にフィットエンボスFを形成することにより、このフィットエンボスFを基点として、吸収体の中央領域が肌当接面側に隆起するような変形を生じやすくしている。
【0057】
前記フィットエンボスFとしては、装着者の股間部に対応する領域に生理用ナプキン1の略長手方向に沿って左右一対で形成される股間部エンボス30、30、装着者の臀部に対応する領域に左右一対で形成される後方部エンボス31、31、並びに前記前記股間部エンボス30と後方部エンボス31との中間領域に、前記エンボス30、31と間を開けて左右一対で形成される中間部エンボス32が含まれる。
【0058】
また、前記股間部エンボス30の前側(図示例のように吸収体中高部6が設けられる場合には、この吸収体中高部6の前端より前側)であって前記中央領域Mより前側には、生理用ナプキン1の幅方向中央部に略傘形状の前端傘状エンボス33が形成されるとともに、さらにその前側の領域を囲むように前端デザインエンボス34が形成されている。一方、前記後方部エンボス31の後側(図示例のように吸収体中高部6が設けられる場合には、この吸収体中高部6の後端より後側)であって前記中央領域Mより後側には、生理用ナプキン1の幅方向中央部に略傘形状の後端傘状エンボス35が形成されるとともに、その更に後側に間を開けて後端デザインエンボス36が形成されている。
【0059】
図1及び図2に示される例では、前記本体ズレ止め粘着剤層10は、ほぼ前端デザインエンボス34の前端部から後端デザインエンボス36の後端部にかけて連続的に設けるようにすることが好ましい。また、前側の本体ズレ止め粘着剤層11は、前端デザインエンボス34の前端部から前端傘状エンボス33の後端部(吸収体中高部6の前端部)にかけて設けられ、後側の本体ズレ止め粘着剤層11は、後端デザインエンボス36の後端部から後端傘状エンボス35の前端部(吸収体中高部6の後端部)にかけて設けられている。
【0060】
前記股間部エンボス30は、排血口部Hを含み、後端が臀部の谷間の始まり部分にかかる範囲に、生理用ナプキン1の略長手方向に沿って左右一対で形成されている。その前端部は、若干両側に拡大するように屈曲した形状とされ、その傾斜角は前記前端デザインエンボス34の後端部とほぼ平行する角度で形成されている。
【0061】
また、前記股間部エンボス30の後端部は、前記会陰部用エンボス溝23と幅方向に重なり代を有する範囲において、幅方向中央部に傾斜した形状とされ、その傾斜角は、前記会陰部用エンボス溝23との関係で所定の傾斜角とされている。具体的には、股間部エンボス30の傾斜した後端部を延長した仮想線S1と、前記会陰部用エンボス溝23の前方溝24の前端と後方溝25の後端とを結ぶ仮想線S2とがほぼ平行するように形成されている。「ほぼ平行する」とは、仮想線S1、S2のナプキン長手方向線に対する傾斜角が完全に一致する場合の他、この傾斜角が±5°の角度差の範囲内で形成されている場合も含む。
【0062】
前記股間部エンボス30の後端部を上記傾斜角とすることにより、この股間部エンボス30の後端部によって、両側からの脚圧の作用方向を前方溝24の前端と後方溝25の後端とを結ぶ仮想線S2と直交する方向に変換することができ、両側からの脚圧によって会陰部用エンボス溝23の前方溝24と後方溝25とで囲まれた領域を隆起させやすくすることができる。
【0063】
前記後方部エンボス31は、臀部の谷間に対応する範囲に、生理用ナプキン1の略長手方向に沿って左右一対で形成され、後方部の吸収体の幅方向中央部を臀部の谷間に沿ってきっちりと隆起させるためのものである。後方部エンボス31は、略前側半分が外側に膨出する曲線によって形成され、残りの後側が内側に膨出する曲線によって形成されている。さらにその後端部は外側に向かって半円弧状に屈曲した形状で形成されている。
【0064】
また、前記後方部エンボス31には、前記吸収体欠損部22に対応する位置に、後方部エンボス31からナプキン幅方向中央側へ延びるフィットエンボス31a、31a…が形成されている。これにより、フィットエンボス31aが基点となって確実に吸収体欠損部22の形成位置で臀部の前後方向の丸みに沿って湾曲させることができるようになる。
【0065】
前記中間エンボス32は、前記仮想線S2と直交する方向に対し、前記股間部エンボス30の後端部と前端の一部が重なり代を有するように形成されている。これにより、前記仮想線S2と直交する方向に重なり代を有する股間部エンボス30と中間エンボス32との二重エンボス部分の吸収体4の剛性(コシ)が増すため、両側からの脚圧を会陰部用エンボス溝23の前方溝24と後方溝25とで囲まれた領域を隆起させる力に変換しやすくなる。
【0066】
〔他の形態例〕
(1)図9に示されるように、本体ズレ止め粘着剤層10、10は、股間部の離隔幅が後方部の離隔幅より大きくなるように形成してもよい。股間部の離隔幅は、吸収体中高部6の股間部の幅以上とすることが好ましい。吸収体中高部6の厚みが厚い場合、吸収体の隆起するような変形が生じ難くなるので、このような場合に有効である。このとき、会陰部用エンボス溝23の前方溝24、24の先端部は、離隔幅を大きくした股間部の本体ズレ止め粘着剤層10、10と重なるようにし、安定して吸収体の会陰部を三角錐状に隆起させるようにする。
(2)また、図10に示されるように、本体ズレ止め粘着剤層10、10は、一部が透液性表面シート3と不透液性裏面シート2との間に吸収体4が介在された本体部分より外側に延在して形成されるようにしても良い。これにより、本体ズレ止め粘着剤層の下着への固定力を高めることができるようになる。ただし、ウイング状フラップW、Wの折返し線RL、RLを越えない範囲で形成することが好ましい。この折返し線RLを越えて本体ズレ止め粘着剤層10が形成されると、生理用ナプキン1の装着時にウイングズレ止め粘着剤層8と本体ズレ止め粘着剤層10とが接着しやすくなり、装着しにくくなる。また、本体部分を外側に越える長手方向範囲としては、前側の本体ズレ止め粘着剤層11の後端部から会陰部用エンボス溝23の後端部までであることが好ましい。この範囲を本体部分より外側に延在させることにより、排血口部から会陰部の下着との固定強度が高まり、この範囲の中央領域をしっかりと肌当接面側に隆起させることができ、肌との密着度を高めることができるようになる。
【符号の説明】
【0067】
1…生理用ナプキン、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…被包シート、6…吸収体中高部、7…サイド不織布、10・11…本体ズレ止め粘着剤層、20…臀部用エンボス溝、22…吸収体欠損部、23…会陰部用エンボス溝、24…前方溝、25…後方溝、26…股間部用エンボス溝、30…股間部エンボス、31…後方部エンボス、32…中間エンボス、C…交点、E…エンボス溝、F…フィットエンボス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在され、前記裏面シートの非肌当接面側にズレ止め粘着剤層が形成された吸収性物品において、
前記吸収体の非肌当接面側であって前記吸収性物品の幅方向中央部に長手方向に沿ってエンボス溝が形成され、前記エンボス溝を含む中央部領域には前記ズレ止め粘着剤層が形成されず、その両側に前記吸収性物品の長手方向に沿ってズレ止め粘着剤層が形成されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
排血口部を含む股間部に、前記吸収体の非肌当接面側であって前記吸収性物品の幅方向中央部に長手方向に沿って股間部用エンボス溝が形成されるとともに、この股間部用エンボス溝より離隔した後部側に、前記吸収体の非肌当接面側であって前記吸収性物品の幅方向中央部に長手方向に沿って断続的な臀部用エンボス溝が形成され、
少なくとも前記股間部用エンボス溝及び臀部用エンボス溝を含む中央領域には前記ズレ止め粘着剤層が形成されていない請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収体の非肌当接面側に、排血口部より後方の幅方向中央部の交点から斜め前方の両側に向けて形成された左右一対の前方溝と、前記交点から前記吸収性物品の長手方向に沿う後方に向けて形成された後方溝とから成るY字状の会陰部用エンボス溝が形成され、
少なくとも前記後方溝を含む中央領域には前記ズレ止め粘着剤層が形成されていない請求項1,2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記会陰部用エンボス溝の前方溝の先端部は、前記ズレ止め粘着剤層と重なる領域に形成されている請求項3記載の吸収性物品。
【請求項5】
少なくとも前記エンボス溝の両側に、前記吸収性物品の肌当接面側から前記吸収性物品の略長手方向に沿って左右一対のフィットエンボスが形成されるとともに、前記フィットエンボスは、前記ズレ止め粘着剤層と重なる領域に形成されている請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記中央領域の前側及び後側であって、前記エンボス溝が形成されない領域にズレ止め粘着剤層が形成されている請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−95685(P2012−95685A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243268(P2010−243268)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】