説明

吸収性物品

【課題】確実に前漏れを防止するとともに、逆戻りを生じない吸収性物品を提供する。
【解決手段】表面側の両側部に夫々長手方向に沿ってサイド立体ギャザーSG、SGを備えるとともに、表面側の前端部に幅方向に沿ってフロント立体ギャザーFGを備え、前記フロント立体ギャザーFGには、液不透過性の素材9を配設する。これにより、一気に多量の尿が排泄されても、サイド立体ギャザーSG及びフロント立体ギャザーFGによって堰き止められ、確実に吸収体4に吸収され前漏れが防止できる。フロント立体ギャザーFGに液不透過性素材9が配設されているため、このフロント立体ギャザーFGによって堰き止められた多量の尿がフロント立体ギャザーFG近傍の吸収体4に集中的に吸収されても、液不透過性素材9によって覆われるため逆戻りが防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿などを吸収するための失禁パッド、パンティライナー、生理用ナプキン等の吸収性物品に係り、特に前漏れを効果的に防止した吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、かかる吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に綿状パルプ等からなる吸収体を介在したものが知られている。
【0003】
かかる吸収性物品を尿失禁症状の人が使用する場合、尿は経血と異なり粘性を有していないため、吸収性物品の表面を伝って一気に多量の尿が外部に流れ出てしまうことが少なくなく、このような尿失禁症状の人にとっては尿漏れを生じる悩みが多くあった。特に、従来の吸収性物品では、排尿部より前方には一時的に尿を保持できる機能を有していないため、前漏れを生じるケースが多かった。
【0004】
この種の吸収性物品にも幾多の改良が重ねられ、尿漏れを防止するための手段が種々講じられている。例えば、下記特許文献1には、弾性体部材が、吸収体の少なくともある面積上に少なくとも一つの実質的に連続的にカーブした部分で延びており、前記弾性体部材が、収縮作用及びそれらのシートの一つとの接触によって弾性体部材の曲率中心に向かった方向でシート上に張力を作用させている使い捨て液体吸収物品が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、腹側サイドフラップと本体とを、少なくとも腹側サイドフラップによって覆われる吸収体の端部及び外縁部を含む接合領域において互いに接合し、外縁部よりも内側では腹側サイドフラップと本体とを接合しないことによって、腹側サイドフラップの吸収体の上に位置する端部の中央部分が表面シートから浮き上がりやすくなり、腹側サイドフラップと吸収体の肌側の表面に空間(ポケット)が形成される使い捨ておむつが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平10−503942号公報
【特許文献2】特開2011−72737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1記載の使い捨て液体吸収物品においては、表面シートの内面側に糸ゴム状の弾性体を円弧状に配置することによって、弾性体がプールの上縁を形成するような表面シートの壁を形成しているため、弾性体による壁が山なりになり、しかもそれほど高い壁が形成されるとは期待できず、多量の尿が排泄された場合には、プール壁を越えて前側にまで漏れ出るおそれがあった。
【0008】
また、プール壁近傍のプール内側では、プール壁によって堰き止められた尿が吸収体に大量に吸収されるが、上記特許文献1記載の物品においては、透液性の表面シートによってプール壁を形成しているため、プール壁近傍の吸収体に吸収された多量の尿の逆戻りが懸念される。
【0009】
また、上記特許文献2記載の使い捨ておむつにおいては、吸収体と腹側サイドフラップとの接合部である外縁部を支点として、腹側サイドフラップの吸収体の上に位置する端部の中央部分が表面シートから浮き上がってポケットが形成されるようになっているが、腹側サイドフラップが肌面側に積極的に浮き上がる構成とはなっていないため、腹側サイドフラップが浮き上がらない場合には、尿が腹側サイドフラップの上面を伝って前方に漏れるおそれがあり、必ずしも十分な前漏れ防止とはなっていなかった。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、確実に前漏れを防止するとともに、逆戻りを生じない吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
表面側の両側部に夫々長手方向に沿ってサイド立体ギャザーが備えられるとともに、表面側の前端部に幅方向に沿ってフロント立体ギャザーが備えられ、前記フロント立体ギャザーには、液不透過性の素材が配設されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明では、表面側の両側部に夫々長手方向に沿って形成されるサイド立体ギャザーに加え、表面側の前端部に幅方向に沿って形成されるフロント立体ギャザーを設けてあるため、一気に多量の尿が排泄されても、サイド立体ギャザー及びフロント立体ギャザーによって堰き止められ、確実に吸収体に吸収され前漏れが防止できるようになっている。
【0013】
また、フロント立体ギャザーには、液不透過性の素材が配設されているため、尿がギャザーを透過せずに確実に堰き止められるとともに、このフロント立体ギャザーによって堰き止められた多量の尿がフロント立体ギャザー近傍の吸収体に集中的に吸収されても、その上面が液不透過性素材によって覆われるため逆戻りが防止でき、確実に吸収体に保持されるようになる。
【0014】
請求項2に係る本発明として、前記フロント立体ギャザーは、幅方向に沿って多重に設けられている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0015】
上記請求項2記載の発明では、フロント立体ギャザーを幅方向に沿って二重や三重などの多重に設けることによって、堰き止め効果を高め、より確実に前漏れを防止している。
【0016】
請求項3に係る本発明として、前記吸収体は、前記フロント立体ギャザーが配設された幅方向に沿う前端部の厚みが、他の部分に比べ相対的に薄く形成されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0017】
上記請求項3記載の発明では、フロント立体ギャザーが配設された幅方向に沿う前端部の吸収体厚を、他の部分に比べ相対的に薄く形成することによって、フロント立体ギャザーを形成したことによる装着感の悪化を低減している。
【0018】
請求項4に係る本発明として、前記吸収体は、前記フロント立体ギャザーが配設された前端部の幅方向両側部の厚みが、他の部分に比べ相対的に薄く形成されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0019】
上記請求項4記載の発明では、フロント立体ギャザーとサイド立体ギャザーとが重なり合う前端部の幅方向両側部の吸収体厚を、他の部分に比べ相対的に薄く形成することによって、多くのシートが重なって装着感が悪化するのを低減するとともに、前端部を肌当接面側に凹となるように湾曲させやすくして股間部から下腹部にかけての身体の丸みに沿いやすくしている。
【0020】
請求項5に係る本発明として、前記サイド立体ギャザーには糸状弾性伸縮部材が配設され、この糸状弾性伸縮部材は、排尿部に対応する領域から前記フロント立体ギャザーにかかる位置まで配設されている請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0021】
上記請求項5記載の発明では、サイド立体ギャザーを起立させるための糸状弾性伸縮部材を、排尿部に対応する領域からフロント立体ギャザーにかかる位置まで連続的に配設することによって、吸収性物品の前端部を身体の丸みに沿って変形させやすくしている。即ち、吸収性物品の前端部において、フロント立体ギャザーによって幅方向中央部に向かう収縮力が作用するとともに、その両側部ではサイド立体ギャザーによって長手方向中央部に向かう収縮力が作用するため、肌当接面側に凹となる形状で湾曲変形するようになる。従って、股間部から下腹部にかけての身体の凸形状の丸みに沿いやすくなる。
【0022】
請求項6に係る本発明として、前記フロント立体ギャザーとサイド立体ギャザーとが重なり合う吸収性物品の前端部の両側部において、前記フロント立体ギャザーは、前記サイド立体ギャザーの上面側に配設されている請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0023】
上記請求項6記載の発明では、フロント立体ギャザーをサイド立体ギャザーの上面側に配設することによって、両側部から前端部にかけての立体ギャザーの連続性が確保でき、前漏れだけでなく、斜め前漏れや前側での横漏れも確実に防止することができるようになる。
【発明の効果】
【0024】
以上詳説のとおり本発明によれば、確実に前漏れを防止するとともに、逆戻りを生じない吸収性物品が提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る吸収性物品1の展開図である。
【図2】そのII−II線矢視図である。
【図3】図1のIII−III線矢視図である。
【図4】使用状態における図1のIII−III線矢視図である。
【図5】フロント立体ギャザーFGの形態例を示す断面図である。
【図6】液不透過性素材9の形態例を示す断面図である。
【図7】他の形態例を示す図1のIII−III線矢視図である。
【図8】吸収体4の平面図である。
【図9】前端部の力の作用状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0027】
本発明に係る吸収性物品1は、図1〜図3に示されるように、ポリエチレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、この吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞する被包シート5と、前記透液性表面シート3と吸収体4との間に少なくとも幅方向中央部に長手方向に沿って配設された親水性繊維シート6と、前記吸収体4の略側縁部を起立基端とし、かつ少なくとも体液排出部を含むように前後方向(長手方向)に所定の区間内において表面側に突出して設けられた左右一対のサイド立体ギャザーSG、SGを形成するサイド不織布7、7と、前記吸収体4の略前端部を起立基端とし幅方向に沿って表面側に突出して設けられたフロント立体ギャザーFGを形成するフロント不織布8と、このフロント立体ギャザーFGの所定位置に配設された液不透過性素材9とから主に構成され、かつ前記吸収体4の周囲においては、その上下端縁部では前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部の後方の臀部側に位置する部分では吸収体4よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と、前記立体ギャザーBSを形成しているサイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、これら不透液性裏面シート2とサイド不織布7とによる積層シート部分によって側方に突出する臀部ウイング状フラップW、Wが形成されている。
【0028】
以下、さらに前記吸収性物品1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。前記不透液性裏面シート2の非使用面側(外面)には1または複数条の粘着剤層(図示せず)が形成され、身体への装着時に吸収性物品1を下着に固定するようになっている。前記不透液性裏面シート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0029】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。前記透液性表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、尿や経血、おりもの等(以下、まとめて体液という。)が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。
【0030】
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえばフラッフ状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。本例のように、吸収体4を囲繞するクレープ紙5を設ける場合には、結果的に透液性表面シート3と吸収体4との間にクレープ紙5が介在することになり、吸収性に優れる前記クレープ紙5によって体液を速やかに拡散させるとともに、これら経血等の逆戻りを防止するようになる。吸収体4の目付は、パルプが150g/m〜600g/m、好ましくは200g/m〜450g/m程度とし、ポリマーが100g/m〜500g/m、好ましくは130g/m〜400g/m程度とするのが良い。
【0031】
前記吸水性ポリマーは、吸収体4の厚み方向に対しほぼ均等に分散するように配合しても良いが、吸収体4への体液の吸収スピード低下を防止するため、吸収体4の厚み方向に対し、中層もしくは下層に層状に配置することが好ましい。また、吸収体4の長手方向に対しては、前側の吸収量を上げるため、前側のポリマー量を相対的に増やすことが好ましい。
【0032】
前記吸収体4には、合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0033】
一方、前記透液性表面シート3の幅寸法は、図示例では、図2の横断面図に示されるように、吸収体4の幅よりも若干長めとされ、吸収体4を覆うだけに止まり、前記サイド立体ギャザーSGは前記透液性表面シート3とは別のサイド不織布7、具体的には尿等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されている。
【0034】
かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、目付を5〜25g/m、好ましくは10〜20g/mとして作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。また、3層構造や4層構造の不織布、例えばスパンボンド−メルトブローン−スパンボンド不織布(SMS不織布)、スパンボンド−スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド不織布(SSMS不織布)、スパンボンド−メルトブローン−メルトブローン−スパンボンド不織布(SMMS不織布)などを使用することもできる。
【0035】
前記透液性表面シート3と吸収体4との間に配置される親水性繊維シート6は、体液に対して親水性を有するものであればよい。具体的には、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることにより素材自体に親水性を有するものを用いるか、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維を親水化剤によって表面処理し親水性を付与した繊維を用いることができる。前記親水性繊維シート6としては、繊維層を有するものであれば限定はないが、好ましくは不織布をそのまま用いることができる。不織布は製法によってスパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、ニードルパンチ不織布、エアスルー不織布等、種々の不織布が存在するが、これらの不織布の中でもエアスルー不織布を使用するのが望ましい。図示例では、幅方向中央部に所定の幅で配設されているが、吸収体4と同等の幅で配設するようにしてもよい。
【0036】
前記サイド不織布7は、図2に示されるように、幅方向中間部より外側部分を吸収体4の内側位置から吸収体側縁を若干越えて不透液性裏面シート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着し、これら前記サイド不織布7と不透液性裏面シート2との積層シート部分により、体液排出部Hより臀部側位置に左右一対の臀部ウイング状フラップW、Wを形成している。この臀部ウイング状フラップW、Wの外面側(不透液性裏面シート2の外面側)にはそれぞれ粘着剤層を備え(図示せず)、ショーツに対する装着時に、ショーツに止着できるようにしている。なお、図示しないが、前記サイド不織布7と不透液性裏面シート2との積層シート部分により、ほぼ体液排出部Hに相当する吸収体側部位置に左右一対のウイング状フラップW、Wを形成してもよい。このウイング状フラップW、Wの外面側(不透液性裏面シート2の外面側)には同じく粘着剤層が備えられ、ショーツに対する装着時に、ウイング状フラップを基端部の折返し線位置にて反対側に折り返すことにより、ショーツのクロッチ部分に巻き付けて止着できるようにしている。
【0037】
一方、前記サイド不織布7の内方側部分はほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部に、起立基端部の近傍位置に両端または長手方向の適宜の位置が固定された糸状弾性伸縮部材10が配設されるとともに、その高さ方向中間部に複数本の、図示例では3本の糸状弾性伸縮部材11,11…が両端または長手方向の適宜の位置が固定された状態で配設されている。この二重シート部分は、後部及び前端縁部で断面Z状に折り畳んで積層された状態で吸収体4側に接着されることによって、複数本の糸状弾性伸縮部材11…のうち下端側の糸状弾性伸縮部材11配設部位を屈曲点として、断面く字状に内側に開口を向けたポケットP、Pを形成しながら表面側に起立するサイド立体ギャザーSG、SGが形成されている。
【0038】
かかるサイド立体ギャザーSGは、図1に示されるように、体液排出部Hを含む領域から吸収性物品1のほぼ前端部にかけて起立するように、糸状弾性伸縮部材10、11…をそれぞれ吸収性物品1の前端部にまで、即ちフロント立体ギャザーにかかる位置まで延在して配設することが好ましい。これにより、図4に示されるように、吸収性物品1の前端部がサイド立体ギャザーSGに配設された糸状弾性伸縮部材10、11…の収縮作用により肌当接面側に起立するように湾曲変形し、フロント立体ギャザーFGが肌面に密着しやすくなって前漏れが防止できるようになる。
【0039】
一方、前記フロント立体ギャザーFGを形成するフロント不織布8は、前記サイド不織布7と同様のものを用いることができ、具体的には尿等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されている。具体的な素材としては上記サイド不織布7と同様のものを用いることができる。
【0040】
前記フロント不織布8は、図3に示されるように、吸収性物品1の前端部を吸収体4の前側位置から吸収体前端縁を越えて不透液性裏面シート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって透液性表面シート3側に接着されている。
【0041】
前記フロント不織布8の内方側部分はほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に複数本の、図示例では4本の糸状弾性伸縮部材12、12…が両端または長手方向の適宜の位置が固定された状態で配設されている。この二重シート部分は、適宜折り返されて積層されるか折り返されない状態で不透液性裏面シート2側に両側縁部が接着されることによって、内側に開口を向けたポケットQを形成しながら表面側に起立するフロント立体ギャザーFGが形成されている(図4参照)。
【0042】
前記フロント立体ギャザーFGは、吸収性物品1の前端部に幅方向に沿って設けられることが望ましい。なお、本明細書で「幅方向に沿って」とは、図1に示されるように、吸収性物品1の前端縁が曲線状に設けられる場合、フロント立体ギャザーFGは、この曲線状の前端縁と平行するように曲線状に設ける態様(厳密には幅方向ではないが配向方向が概ね幅方向である)と、前記フロント立体ギャザーFGを曲線状に配置することが製作上の理由で困難である等との理由により幅方向に沿って直線状に配置する態様とを含むものである。
【0043】
また、図3及び図4に示されるように、フロント立体ギャザーFGは、前記フロント不織布8の上面側に配設される第2フロント不織布14によって第2フロント立体ギャザーFG’を形成するなどのように、幅方向に沿って二重や三重などの多重に設けることができる。フロント立体ギャザーFGを幅方向に沿って多重に設けることによって、堰き止め効果が高められ、より確実に前漏れが防止できるようになる。
【0044】
前記第2フロント不織布14は、図3に示されるように、内方側部分がほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に複数本の、図示例では3本の糸状弾性伸縮部材13、13…が両端または長手方向の適宜の位置が固定された状態で配設されている。この第2フロント不織布14は、フロント不織布8の上面に積層された状態で、吸収性物品1の前端縁部が前記フロント不織布8とともに不透液性裏面シート2側にヒートシールなどの接合手段によって接合されるとともに、前記フロント不織布8が折り返される場合にはフロント不織布8と第2フロント不織布14とを積層した状態で折り返し、吸収性物品1の両側縁部で前記接合手段によって接合されている。
【0045】
なお、吸収性物品1の製造において、透液性表面シート3と不透液性裏面シート2との間に吸収体4及び親水性繊維シート6を介在させ、表面側の両側部にサイド不織布7、7を貼着した後、さらに表面側の前端部にフロント不織布8及び第2フロント不織布14を貼着して全体を組み立てた状態で、吸収性物品1の周縁に全周に亘ってヒートシールを施すようにする。
【0046】
前記糸状弾性伸縮部材12、13としては、太さが300dtex〜1000dtex、好ましくは400dtex〜550dtexのものを使用するのがよい。フロント立体ギャザーFG、FG’に配設される糸状弾性伸縮部材12、13のテンションは、サイド立体ギャザーSGに配設される糸状弾性伸縮部材10、11のテンションよりも低く設定されている。
【0047】
フロント立体ギャザーFGに配設される液不透過性素材9は、ポリエチレンやポリプロピレン等の遮水性を有するプラスチックフィルムが用いられ、ムレ防止の観点から透湿性を有するものが好適に用いられる。目付は10〜30g/m、好ましくは15〜25g/mのものが用いられる。かかる液不透過性素材9は、フロント不織布8の折り畳み時に折り込まれるか、不織布とフィルムを貼り合わせたもの(ラミネート不織布)を使用するか、又はフロント立体ギャザーFGを組み立てた後、外側から液不透過性素材9を貼り付ける、などの方法によってフロント立体ギャザーFGに配設される。
【0048】
液不透過性素材9は、図5に示されるように、フロント立体ギャザーFGの所定位置に配設されている。図5(a)に示されるようにフロント不織布8を二重に折り返した二重シート内部に設けられるようにしてもよいし、同図(b)に示されるように二重シートの外面側にホットメルトなどの接着剤によって接着されるようにしてもよい。液不透過性素材9の配設範囲は、フロント不織布8の外縁近傍から表面側に起立する自由端より若干下側の所定位置まで設けられている。前記液不透過性素材9を設ける場合には、糸状弾性伸縮部材12の収縮力が低下しないように糸状弾性伸縮部材12と重ならない下側範囲に配設することが好ましい。
【0049】
前記フロント立体ギャザーFGは、図6に示されるように、種々の形態で設けることができる。図6(a)はギャザー自由端部分を折り返さずに両側部を接合したもの(1段ギャザー)、(b)はギャザー自由端部分を1回外側に折り返して両側部を接合したもの(2段ギャザー)である。(c)は1枚のフロント不織布8によって二重の2段ギャザーを形成したものであり、フロント不織布8の上面側中間部の折り返し部分によって第2フロント立体ギャザーFG’を形成するとともに、これに連続する先端部の折返し部分によってフロント立体ギャザーFGを形成したものであである。(d)は図3に示される形態であり、フロント不織布8によってフロント立体ギャザーFGを形成し、別体の第2フロント不織布14によって第2フロント立体ギャザーFG’を形成したものである。(e)はギャザー自由端部分を外側に折り返した後、さらにその自由端部分を内側に折り返して両側部を接合したもの(3段ギャザー)、(f)は3段ギャザーのさらに自由端部分を外側に折り返して両側部を接合したもの(4段ギャザー)、(g)はこの4段ギャザーの外側に第2フロント不織布14によって2段ギャザーの第2フロント立体ギャザーFG’を形成したものである。
【0050】
本吸収性物品1では、前端部にフロント立体ギャザーFGを形成しているので、このフロント立体ギャザーFGを形成したことによる装着感の悪化を低減するため、図7に示されるように、フロント立体ギャザーFGが配設された幅方向に沿う吸収体前端部4aの吸収体の厚さを他の部分に比べ相対的に薄く形成することが好ましい。
【0051】
また、図8に示されるように、フロント立体ギャザーFGとサイド立体ギャザーSGとが重なり合う前端部の幅方向両側部4b、4bの吸収体厚を、他の部分に比べ相対的に薄く形成するか、この幅方向両側部4b、4bの吸収体をなくすようにしてもよい。これによって装着感が悪化するのを低減するとともに、吸収性物品1の前端部を肌当接面側に凹となるように湾曲させやすくし、股間部から下腹部にかけての身体の丸みに沿いやすくしている。この吸収体厚を薄くした幅方向両側部4b、4bの吸収性物品1の長手方向長さL1は、吸収体4の全長によって好適な長さは異なるが20mm〜70mm程度とするのがよい。また、吸収体前端部の吸収体厚を薄くしない部分の吸収性物品1の幅方向長さL2(幅方向両側部4b、4b間の吸収性物品1の幅方向の離隔幅)は、40mm〜60mm、好ましくは45mm〜55mmとするのがよい。
【0052】
なお、これらの吸収体厚を薄くした部分4a、4bには、ポリマーの量を相対的に増やして、フロント立体ギャザーFGによって堰き止められた尿を効果的に吸収保持できるようにしてもよい。
【0053】
本吸収性物品1では、図9に示されるように、フロント立体ギャザーFGとサイド立体ギャザーSGとが重なり合う前端部の両側部において、フロント立体ギャザーFGは、サイド立体ギャザーSG上面側に配設され、ホットメルト接着剤や超音波シールにより接合することが好ましい。これによって、両側部から前端部にかけての立体ギャザーの連続性が確保でき、前漏れだけでなく、斜め前漏れや前側での横漏れも確実に防止することができるようになる。
【0054】
フロント立体ギャザーFGの吸収性物品幅方向の長さは、80mm〜120mm程度であり、このうち吸収性物品の幅方向中央部において糸状弾性伸縮部材12の伸縮力が作用する長さは60mm〜120mmとすることが好ましい。
【0055】
また、フロント立体ギャザーFGをより湾曲させやすくするため、フロント立体ギャザーFGに配置される糸状弾性伸縮部材12…、13…の内、相対的に上部側に配置される糸状弾性伸縮部材と、相対的に下側に配置される糸状弾性伸縮部材とで弾性伸縮力を変化させるようにしてもよい。具体的には、フロント立体ギャザーFGに2本以上の糸状弾性伸縮部材が配置されている場合、最上部(最も先端側)に位置する最上糸状弾性伸縮部材の伸縮力と、最下部(最も基端側)に位置する最下糸状弾性伸縮部材の伸縮力とを対比した場合、最下糸状弾性伸縮部材の伸縮力が最上糸状弾性伸縮部材の伸縮力に対して1.1〜1.4倍、好ましくは1.1〜1.2倍となるようにする。前記最上糸状弾性伸縮部材と最下糸状弾性伸縮部材との間に糸状弾性伸縮部材が配置されている場合は、どちらか一方の伸縮力に合わせて配置するか、中間的な伸縮力で配置すればよいが、好ましい態様は複数本の糸状弾性伸縮部材を上部側と下部側とで概ね均等の本数となるように二分し、上部側グループと下部側グループとで夫々伸縮力を統一するのが望ましい。
【符号の説明】
【0056】
1…吸収性物品、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…被包シート、7…サイド不織布、8…フロント不織布、9…液不透過性素材、10・11・12・13…糸状弾性伸縮部材、14…第2フロント不織布、SG…サイド立体ギャザー、FG…フロント立体ギャザー、FG’…第2フロント立体ギャザー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
表面側の両側部に夫々長手方向に沿ってサイド立体ギャザーが備えられるとともに、表面側の前端部に幅方向に沿ってフロント立体ギャザーが備えられ、前記フロント立体ギャザーには、液不透過性の素材が配設されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記フロント立体ギャザーは、幅方向に沿って多重に設けられている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収体は、前記フロント立体ギャザーが配設された幅方向に沿う前端部の厚みが、他の部分に比べ相対的に薄く形成されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体は、前記フロント立体ギャザーが配設された前端部の幅方向両側部の厚みが、他の部分に比べ相対的に薄く形成されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記サイド立体ギャザーには糸状弾性伸縮部材が配設され、この糸状弾性伸縮部材は、排尿部に対応する領域から前記フロント立体ギャザーにかかる位置まで配設されている請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記フロント立体ギャザーとサイド立体ギャザーとが重なり合う吸収性物品の前端部の両側部において、前記フロント立体ギャザーは、前記サイド立体ギャザーの上面側に配設されている請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−48755(P2013−48755A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188715(P2011−188715)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】