説明

吸収性物品

【課題】堰き止め効果が高く、肌にフィットしやすくしたループ状の立体ギャザーを備えることによって横漏れを防止する。
【解決手段】立体ギャザーBSは、ナプキン1の幅方向中央側に位置する内側ギャザー面20と、肌当接面側に位置する上側ギャザー面21と、ナプキン1の幅方向外側に位置する外側ギャザー面22とによって断面が中空に画成され、少なくとも排血口部Hに対応する領域の前後にそれぞれ、内側ギャザー面20と上側ギャザー面21との隅部において立体ギャザーBSの内面同士を接合することにより立体ギャザーBSの外方側に突出させた突出部24を形成するとともに、少なくとも上側ギャザー面21と外側ギャザー面22との隅部、突出部24の頂部及び内側ギャザー面20の中間部にそれぞれ、ナプキン1の長手方向に沿って弾性伸縮部材26…を配設することによって、突出部24、24間の立体ギャザーBSの中空断面を略方形状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌当接面側の両側部にそれぞれ長手方向に沿って断面が中空のループ状立体ギャザーが形成された吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッドなどの吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンラミネートシート不織布などの不透液性バックシートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性トップシートとの間に綿状パルプ等からなる吸収体を介在したものが知られている。
【0003】
この種の吸収性物品においては、体液の横漏れを防止するため、種々の形態で立体ギャザーが形成されている。例えば、下記特許文献1では、肌当接面を形成する表面シート、非肌当接面を形成する裏面シート及び両シート間に介在する吸収体を有する縦長の吸収性本体と、該吸収性本体の長手方向両側部それぞれに帯状の伸縮性シートを接合して形成された中空のループ状の防漏壁とを備えた吸収性物品が開示されている。
【0004】
このように立体ギャザーを中空のループ状とした場合には、着用者の肌に優しくフィットすることができるという特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−110558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のループ状の立体ギャザー50は、図9に示されるように、断面が半円弧状に形成されるものが多く、このため、吸収性物品の幅方向中央側に面する内側ギャザー面51が上方に向かって外側になだらかに湾曲する断面曲線状に形成されるので、吸収性物品の表面シートの表面を幅方向中央側から外側に向かって流れる経血が、内側ギャザー面51の表面を伝って立体ギャザー50の外側に流れやすく、堰き止め効果が十分に発揮されずに横漏れを生じる場合があった。
【0007】
また、半円弧状に形成された立体ギャザー50の場合、肌当接面側に面する上側ギャザー面52と肌との接触はほぼ点状(図9の接触点)となるため、立体ギャザーと肌との接触面積が小さく、肌に対してフィットし難く隙間が生じやすくなっていた。このため、肌を伝う経血を立体ギャザー50で捕捉できず、横漏れを生じる場合があった。
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、堰き止め効果が高く、肌にフィットしやすくしたループ状の立体ギャザーを備えることによって横漏れを防止した吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、肌当接面側の両側部にそれぞれ長手方向に沿って断面が中空のループ状の立体ギャザーが形成された吸収性物品において、
前記立体ギャザーは、吸収性物品の幅方向中央側に位置する内側ギャザー面と、肌当接面側に位置する上側ギャザー面と、吸収性物品の幅方向外側に位置する外側ギャザー面とによって断面が中空に画成され、
少なくとも排血口部に対応する領域の前後にそれぞれ、前記内側ギャザー面と上側ギャザー面との隅部において前記立体ギャザーの内面同士を接合することにより立体ギャザーの外方側に突出させた突出部を形成するとともに、少なくとも前記上側ギャザー面と外側ギャザー面との隅部、前記突出部及び前記内側ギャザー面の中間部にそれぞれ、吸収性物品の長手方向に沿って弾性伸縮部材を配設することによって、前記突出部間の立体ギャザーの中空断面が略方形状に形成されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0010】
上記請求項1記載の発明では、内側ギャザー面、上側ギャザー面及び外側ギャザー面によって断面が中空に画成された立体ギャザーであって、少なくとも排血口部に対応する領域の前後にそれぞれ、前記内側ギャザー面と上側ギャザー面との隅部において立体ギャザーの内面同士を接合することにより立体ギャザーの外方側に突出させた突出部を形成するとともに、少なくとも上側ギャザー面と外側ギャザー面との隅部、前記突出部及び前記内側ギャザー面の中間部にそれぞれ、吸収性物品の長手方向に沿って弾性伸縮部材を配設することによって、前記突出部間の立体ギャザーの中空断面が略方形状に形成される立体ギャザーとしている。即ち、吸収性物品の幅方向中央側に位置する内側ギャザー面が吸収性物品の表面に対してほぼ垂直に起立するとともに、この内側ギャザー面の上端に立体ギャザーの外方側に突出する突出部が設けられるため、前記内側ギャザー面によって吸収性物品の表面シートの表面を幅方向中央側から外側に向かって流れる経血を確実に堰き止めることができるとともに、例え内側ギャザー面を上方に伝う経血があったとしても、前記突出部によって流れの方向が折り返されるので、経血の横漏れが防止できるようになる。
【0011】
さらに、前記立体ギャザーは、上側ギャザー面がほぼ平坦に形成されているため、肌との接触面積を大きくすることができ、肌に対してフィットしやすく隙間が生じにくくなるので、肌を伝う経血を確実に捕捉でき、経血の横漏れが防止できるようになる。
【0012】
請求項2に係る本発明として、前記突出部の内面同士を接合した接合部は、前記突出部の基端側に設け、先端側には設けていない請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0013】
上記請求項2記載の発明では、前記突出部の内面同士を接合した接合部の位置について規定してあり、突出部の基端側に設け、先端側には設けないことが好ましく、これによって突出部が肌に当たったときの柔らかさを維持することができるようになる。
【0014】
請求項3に係る本発明として、前記突出部は、吸収性物品の幅方向線に対して立体ギャザーの外側上方に向けて10〜80度の角度で突出している請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0015】
上記請求項3記載の発明では、突出部の突出方向とその角度について規定してあり、吸収性物品の幅方向線に対して立体ギャザーの外側上方に向けて10〜80度の角度で傾斜して設けるようにすることが好ましい。これによって、前後の突出部間の立体ギャザーの中空断面が確実に略方形状に形成されるとともに、確実に経血の漏れが防止できるようになる。
【0016】
請求項4に係る本発明として、前記立体ギャザーは、前記内側ギャザー面の前記吸収体表面からの起立高さと前記外側ギャザー面の前記吸収体表面からの起立高さとがほぼ同一に形成されるとともに、前記上側ギャザー面の幅方向長さと前記内側ギャザー面及び外側ギャザー面の基端部の離隔幅とがほぼ同一に形成されている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0017】
上記請求項4記載の発明では、立体ギャザーの断面形状について規定してあり、内側ギャザー面と外側ギャザー面の吸収体表面からの起立高さをほぼ同一に形成するとともに、上側ギャザー面の幅方向長さと内側ギャザー面及び外側ギャザー面の基端部の離隔幅とをほぼ同一に形成することによって立体ギャザーの中空断面をきっちりと略方形状としたものである。
【0018】
請求項5に係る本発明として、前記突出部は、前記吸収性物品の個装時に吸収性物品を幅方向線で長手方向に折り畳む際の前記幅方向線の近傍に設けられ、前記幅方向線上には設けられていない請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0019】
上記請求項5記載の発明では、突出部を吸収性物品の個装時に吸収性物品を幅方向線で長手方向に折り畳む際の幅方向線の近傍に設け、幅方向線上には設けていないため、個装時の吸収性物品の折り癖によって立体ギャザーが所定の形状に起立しないことを防止したものである。
【0020】
請求項6に係る本発明として、前記吸収性物品の長手方向両端部において、前記立体ギャザーは、少なくとも前記内側ギャザー面を高さ方向の中間部で中空断面の内側に折り畳んだ状態で、前記吸収体の上面側に接合されている請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0021】
上記請求項6記載の発明では、吸収性物品の長手方向両端部における立体ギャザーの固定状態について規定してあり、少なくとも内側ギャザー面を高さ方向の中間部で中空断面の内側に折り畳んだ状態で、吸収体の上面側に接合しておくことによって、個装時などにおいても立体ギャザーの形状が崩れにくく、立体ギャザーの起立時に確実に略方形状の中空断面となるようにしている。
【0022】
請求項7に係る本発明として、前記突出部は、少なくとも排血口部に対応する領域の前後にそれぞれ、吸収性物品の長手方向に3mm以上の長さで設けられている請求項1〜6いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0023】
上記請求項7記載の発明では、前記突出部を形成する吸収性物品の長手方向長さについて規定してあり、少なくとも排血口部に対応する領域の前後にそれぞれ、3mm以上の長さで設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
以上詳説のとおり本発明によれば、堰き止め効果が高く、肌にフィットしやすくしたループ状の立体ギャザーを備えることによって横漏れを防止した吸収性物品が提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
【図2】そのII−II線矢視図である。
【図3】図1のIII−III線矢視図である。
【図4】生理用ナプキン1の装着状態を示す横断面図である。
【図5】立体ギャザーBSの拡大断面図である。
【図6】他の形態例に係る生理用ナプキン1の横断面図である。
【図7】弾性伸縮部材26の配設例を示す立体ギャザーBSの横断面図である。
【図8】排血口部H近傍を拡大した生理用ナプキン1の平面図である。
【図9】従来のループ状立体ギャザー50と経血の流れを示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0027】
〔生理用ナプキン1の基本構造〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、ポリエチレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、この吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞するクレープ紙5と、前記吸収体4の略側縁部を起立基端とし、かつ少なくとも体液排出部Hから前後方向に所定の区間内において表面側(肌当接面側)に突出して設けられた左右一対のループ状の立体ギャザーBS、BSを形成するギャザー形成用不織布6とから主に構成され、かつ前記吸収体4の周囲においては、その上下端縁部では前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と、ギャザー形成用不織布6とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、これら不透液性裏面シート2とギャザー形成用不織布6とによる積層シート部分によって側方に突出するウイング状フラップW、Wが形成されているとともに、これよりも臀部側に位置する部分に第2ウイング状フラップW、Wが形成されている。
【0028】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。前記不透液性裏面シート2の非肌当接面側(外面)には1または複数条の粘着剤層(図示せず)が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着に固定するようになっている。前記不透液性裏面シート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0029】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。前記透液性表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、経血やおりもの等(以下、まとめて体液という。)が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。
【0030】
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえばフラッフ状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。本例のように、吸収体4を囲繞するクレープ紙5を設ける場合には、結果的に透液性表面シート3と吸収体4との間にクレープ紙5が介在することになり、吸収性に優れる前記クレープ紙5によって体液を速やかに拡散させるとともに、これら経血等の逆戻りを防止するようになる。前記吸収体4の目付としては、パルプは200g/m〜1000g/mが好ましく、290g/m〜900g/mがより好ましい。また、ポリマーは10g/m〜500g/mが好ましく、15g/m〜400g/mがより好ましい。
【0031】
本生理用ナプキン1の表面には、適宜の形状で圧搾溝8を形成することができる。図1に示される例では、ナプキン1の長手方向に細長く、かつ周方向に閉合する圧搾溝8が形成されている。
【0032】
前記透液性表面シート3の幅寸法は、図示例では、図2及び図3の横断面図に示されるように、吸収体4の幅よりも若干長めとされ、吸収体4を覆うだけに止まり、前記立体ギャザーBS、BSは前記透液性表面シート3とは別のギャザー形成用不織布6によって形成され、立体ギャザーBS、BSの外側には、前記不透液性裏面シート2の表面側に外側に延びるギャザー形成用不織布6が積層されている。これらギャザー形成用不織布6は、経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成され、好ましくは撥水処理を施した不織布素材を用いるのが良い。かかる不織布6としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を13〜25g/mとして作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。また、3層構造や4層構造の不織布、例えばスパンボンド−メルトブローン−スパンボンド不織布(SMS不織布)、スパンボンド−スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド不織布(SSMS不織布)、スパンボンド−メルトブローン−メルトブローン−スパンボンド不織布(SMMS不織布)などを使用することもできる。
【0033】
前記ギャザー形成用不織布6は、図2に示されるように、不透液性裏面シート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着し、これら前記ギャザー形成用不織布6と不透液性裏面シート2との積層シート部分により、ほぼ体液排出部に相当する吸収体側部位置に左右一対のウイング状フラップW、Wを形成するとともに、これより臀部側位置に第2ウイング状フラップW、Wを形成している。これらウイング状フラップW、Wおよび第2ウイング状フラップW、Wの外面側にはそれぞれ粘着剤層10…,11…を備え、ショーツに対する装着時に、前記ウイング状フラップW、Wを折返し線RL位置にて反対側に折り返し、ショーツのクロッチ部分に巻き付けて止着するようになっている。
【0034】
前記ギャザー形成用不織布6は、ナプキン1の幅方向内側部分が二重に折り返され、この二重シート部分を適宜折り返して断面が中空のループ状の立体ギャザーBS、BSを形成している。以下、このループ状の立体ギャザーBSについて詳述する。
【0035】
〔立体ギャザーBSについて〕
前記立体ギャザーBSは、図2に示されるように、生理用ナプキン1の幅方向中央側に位置する内側ギャザー面20と、肌当接面側に位置する上側ギャザー面21と、生理用ナプキン1の幅方向外側に位置する外側ギャザー面22と、吸収体4側に接合された下側ギャザー面23とによって断面が中空に画成されている。そして、図1に示されるように、排血口部Hに対応する領域の前後にそれぞれ、図2に示されるように、内側ギャザー面20と上側ギャザー面21との隅部において立体ギャザーBSの内面同士を接合部25で接合することにより立体ギャザーBSの外方側に突出させた突出部24を形成するとともに、少なくとも上側ギャザー面21と外側ギャザー面22との隅部、突出部24の頂部及び内側ギャザー面20の中間部にそれぞれ、生理用ナプキン1の長手方向に沿って弾性伸縮部材26、26…を配設している。前記突出部24を形成することによって、内側ギャザー面20及び上側ギャザー面21がこれら各面の隅部側に引っ張られて各面がほぼ平坦な平面状に形成されるとともに、前記弾性伸縮部材26…の伸縮力によって、立体ギャザーBSが肌当接面側に起立するため、生理用ナプキン1の長手方向に設けられた前後の突出部24、24間において立体ギャザーBSの中空断面が略方形状に形成されるようになる。
【0036】
ここで、立体ギャザーの中空断面が「略方形状」に形成されるとは、図9に示されるように断面が半円弧状ではなく、突出部24及び上側ギャザー面21と外側ギャザー面22との隅部に配設された弾性伸縮部材26を隅部としてほぼ四角形と認識できる程度の中空断面が形成されていればよく、各辺(内側ギャザー面20、上側ギャザー面21、外側ギャザー面22)の途中が外側に膨出した曲線状に形成されていても構わない。
【0037】
このように立体ギャザーBSの中空断面を略方形状に形成することによって、図4に示されるように、内側ギャザー面20が生理用ナプキン1の表面(透液性表面シート3の表面)に対してほぼ垂直に起立するとともに、その上端にギャザー外方側に突出した突出部24が設けられているため、生理用ナプキン1の透液性表面シート3の表面を幅方向中央側から外側に伝う経血を内側ギャザー面20によって確実に堰き止めることができるとともに、例え内側ギャザー面20を上方に伝う経血があったとしても、突出部24によって経血の流れの方向が折り返されるため、経血の横漏れが防止できるようになる。
【0038】
さらに、立体ギャザーBSは、上側ギャザー面21がほぼ平坦に形成されているため、肌に対して大きな接触面積でフィットするので隙間が生じにくくなり、肌を伝う経血を確実に捕捉でき、横漏れが防止できるようになる。
【0039】
前記突出部24に形成される接合部25は、突出部24の基端側に設け、先端側には設けないようにすることが好ましい。これによって、突出部24が肌に当たったときの柔らかさを維持することができるようになる。この接合部25の具体的な位置については後段で詳述する(図8参照)。
【0040】
図5に示されるように、前記突出部24は、内面同士を接合した接合面の方向が、生理用ナプキン1の幅方向線WLに対して、立体ギャザーBSの外側上方に向けた角度αが10〜80度の方向になるように形成することが好ましい。この方向に突出部24を形成することによって立体ギャザーBSの中空断面が確実に略方形状に形成されるとともに、内側ギャザー面20の上端に伝う経血の流れを制御でき、外側への漏れが確実に防止できるようになる。
【0041】
立体ギャザーBSの構造について具体的に説明すると、図2及び図5に示される例では、起立状態で、ギャザー形成用不織布6のナプキン1の幅方向内側部分を二重に折り返し、この二重シート部分を、吸収体4と透液性表面シート3とが積層された肌当接面側の両側部であって、前記透液性表面シート3の肌当接面側(表面側)において、ナプキン1の側方側から中心側方向に延在し中心側位置で側方側に折り返し、この折返し部を前記透液性表面シート3側にそれぞれ接合した折り畳み部を形成するとともに、この折り畳み部に連続してナプキン1の幅方向外側で肌当接面側に延在する外側ギャザー面22を形成し、この外側ギャザー面22に連続して肌当接面側位置で前記透液性表面シート3と略平行にナプキン1の中心側方向に延在する上側ギャザー面21を形成し、この上側ギャザー面21に連続して中心側位置で吸収体4側に延在する内側ギャザー面20を形成し、この内側ギャザー面20に連続して透液性表面シート3の表面側でナプキン1の側方側に延在し、この延在部分を前記折り畳み部の表面側に接合することによって、ループ状に形成されている。なお、内側ギャザー面20と上側ギャザー面21との隅部には前記突出部24が形成されている。
【0042】
また、立体ギャザーBSは、図2及び図5に示される形態に代えて、図6に示されるように種々の形態で形成することができる。図6(A)に示される例では、ギャザー形成用不織布6をナプキン1の側方側から吸収体4と裏面シート2との間の中心側方向に延在させるとともに、中心側位置で側方側に折り返し、吸収体4の側縁部で肌当接面側に延在させるとともに、この延在部分を二重に折り返し、この二重シート部分によって前記外側ギャザー面22、上側ギャザー面21、内側ギャザー面20の順に形成し、その先端部を透液性表面シート3の表面側でナプキン1の側方側に延在し、この延在部分を透液性表面シート3の表面側に接合することによって、ループ状に形成されている。なお、ギャザー形成用不織布6の二重シート部分は、吸収体4と裏面シート2との間の折り畳み部にまで延在して設けても良い。
【0043】
また、図6(B)に示される例では、ギャザー形成用不織布6によって立体ギャザーBSのみを形成し、この立体ギャザーBSよりナプキン1の側縁部には別体のシート材30を設けるようにしている。図示例では、立体ギャザーBSの外側端部を吸収体4と裏面シート2との間に介在させているが、透液性表面シート3の表面側に配設し、透液性表面シート3側に接合するようにしてもよい。
【0044】
前記ギャザー形成用不織布6の二重シート内部には、適宜の位置に弾性伸縮部材26が配設されている。この弾性伸縮部材26は、前述の通り、図7(B)に示されるように、少なくとも上側ギャザー面21と外側ギャザー面22の隅部、突出部24の頂部及び内側ギャザー面20の中間部の合計3本配設すればよいが、同図7(A)に示されるように、更に上側ギャザー面21の中間部に配設して合計4本としたもの、図2(図5)に示されるように、更に加えて上側ギャザー面21の突出部24の基端部近傍に配設して合計5本としたものなど、3本以上で配設することができる。ただし、外側ギャザー面22には弾性伸縮部材を配設しないことが望ましく、これにより外側ギャザー面22が相対的に柔軟性が高くなり、上側ギャザー面21を肌の接触角度に応じて傾斜して密着させることができるようになる。なお、図示例では、突出部24の頂部に弾性伸縮部材26が配設されているが、この弾性伸縮部材26は、突出部24であれば基端部から頂部のいずれに配設しても良い。
【0045】
前記弾性伸縮部材26としては、通常使用されるゴムやシリコンなどの素材を用いた糸状のものを使用することが好ましい。この糸ゴムの太さとしては、300dtex〜1000dtexが好ましく、400dtex〜550dtexがより好ましい。
【0046】
立体ギャザーBSの中空断面の形状は、図5に示されるように、内側ギャザー面20の透液性表面シート3の表面からの起立高さT1と、外側ギャザー面22の表面シート3の表面からの起立高さT2とをほぼ同一に形成するとともに、上側ギャザー面21の幅方向長さM1と、内側ギャザー面20及び外側ギャザー面22の基端部の離隔幅M2とをほぼ同一に形成することが好ましい。これによって、立体ギャザーBSの中空断面がきっちりと方形状に形成され、経血の漏れが確実に防止できるようになる。なお、前記T1(T2)は5mm〜25mm、より好ましくは10mm〜15mm、M1(M2)は9mm〜20mm、より好ましくは10mm〜13mmである。
【0047】
前記突出部24は、生理用ナプキン1の個装時に生理用ナプキン1を幅方向線で長手方向に3つ折り又は4つ折りなどで折り畳む際の前記幅方向線の近傍に設け、前記幅方向線にかかる位置には設けないようにすることが好ましい。これによって、生理用ナプキン1の個装時に折り畳むことによって折り癖が付き、生理用ナプキン1の装着時に立体ギャザーBSが所定の中空断面形状で起立しないような事態が防止できる。前記幅方向線は、吸収体4などの厚みによって3mm〜10mm程度の幅を有するため、この幅方向線の中心部から所定の長さだけ離した前後の近傍位置に前記突出部24を設けることが好ましい。また、突出部24、24間に折り癖を付けないために、前後の突出部24、24を幅方向線より内側に設けることが好ましい。
【0048】
一方、図3に示されるように、生理用ナプキン1の長手方向両端部では、ギャザー形成用不織布6が、少なくとも内側ギャザー面20を高さ方向の中間部で中空断面の内側で二重に折り畳んだ状態で、吸収体4の上面側に固定されている。図3では、外側ギャザー面22も中空断面の内側に折り畳んであるが、外側ギャザー面22は外側に折り畳んでもよい。内側ギャザー面20を長手方向両端部でこのような折り畳み状態とすることによって、生理用ナプキン1の個装状態で長手方向中間部でも同様の折り畳み状態が形成されやすくなり、装着時に立体ギャザーBSの形状が維持されやすくなる。
【0049】
図8に示されるように、前記突出部24を形成する接合部25は、少なくとも排血口部Hに対応する領域の前後にそれぞれ、生理用ナプキン1の長手方向に沿う長さS1が3mm以上となるように設けることが好ましい。また、前記突出部24を形成する接合部25の幅S2は1〜3mmであることが好ましく、突出部24の頂部までの長さS3は3〜5mmとすることが好ましい。この突出部24を形成する接合部25は、ナプキン1の長手方向に沿って間欠的に設けることができ、このときの間欠ピッチは50〜120mmとすることが好ましい。さらに、前記接合部25は、排血口部Hに対応する領域を除く前後に端部まで連続的に設けることもできるし、排血口部Hに対応する領域も含めた長手方向の全長に亘って設けることもできる。
【符号の説明】
【0050】
1…生理用ナプキン、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…クレープ紙、6…ギャザー形成用不織布、20…内側ギャザー面、21…上側ギャザー面、22…外側ギャザー面、24…突出部、25…接合部、26…弾性伸縮部材、BS…立体ギャザー、W…ウイング状フラップ、W…第2ウイング状フラップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、肌当接面側の両側部にそれぞれ長手方向に沿って断面が中空のループ状の立体ギャザーが形成された吸収性物品において、
前記立体ギャザーは、吸収性物品の幅方向中央側に位置する内側ギャザー面と、肌当接面側に位置する上側ギャザー面と、吸収性物品の幅方向外側に位置する外側ギャザー面とによって断面が中空に画成され、
少なくとも排血口部に対応する領域の前後にそれぞれ、前記内側ギャザー面と上側ギャザー面との隅部において前記立体ギャザーの内面同士を接合することにより立体ギャザーの外方側に突出させた突出部を形成するとともに、少なくとも前記上側ギャザー面と外側ギャザー面との隅部、前記突出部及び前記内側ギャザー面の中間部にそれぞれ、吸収性物品の長手方向に沿って弾性伸縮部材を配設することによって、前記突出部間の立体ギャザーの中空断面が略方形状に形成されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記突出部の内面同士を接合した接合部は、前記突出部の基端側に設け、先端側には設けていない請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記突出部は、吸収性物品の幅方向線に対して立体ギャザーの外側上方に向けて10〜80度の角度で突出している請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記立体ギャザーは、前記内側ギャザー面の前記吸収体表面からの起立高さと前記外側ギャザー面の前記吸収体表面からの起立高さとがほぼ同一に形成されるとともに、前記上側ギャザー面の幅方向長さと前記内側ギャザー面及び外側ギャザー面の基端部の離隔幅とがほぼ同一に形成されている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記突出部は、前記吸収性物品の個装時に吸収性物品を幅方向線で長手方向に折り畳む際の前記幅方向線の近傍に設けられ、前記幅方向線上には設けられていない請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収性物品の長手方向両端部では、前記立体ギャザーを形成するシート材が、少なくとも前記内側ギャザー面を高さ方向の中間部で中空断面の内側に折り畳んだ状態で、前記吸収体の上面側に接合されている請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記突出部は、少なくとも排血口部に対応する領域の前後にそれぞれ、吸収性物品の長手方向に3mm以上の長さで設けられている請求項1〜6いずれかに記載の吸収性物品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate