説明

吸収性物品

【課題】臀部の動きに伴う臀部の溝形状の変化に追従しやすくするとともに、後部側への伝い漏れを防止する。
【解決手段】吸収体4は、生理用ナプキン1の後部側において、幅方向中央部に長手方向に沿って肌当接面側に隆起する中央凸部20と、その両側にそれぞれ離間して長手方向に沿って肌当接面側に隆起する両側凸部21、21とを備える。これにより、寝返りをうったときなど、装着時に臀部の溝の幅が広く深さが浅くなった場合には、中央凸部20及び両側凸部21がそのままの状態で臀部の溝にフィットするとともに、仰向けに寝ているときなど、装着時に臀部の溝の幅が狭く深さが深くなった場合には、幅方向両側部からの脚圧により、吸収体4の後部側が肌当接面側に隆起するように変形し、中央凸部20を頂点としてその両側に両側凸部21、21が接続するように全体として鋭角な山状の状態で変形して、臀部の溝の奥にまでフィットする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経血やおりものなどを吸収するための生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品に係り、臀部の動きに追従して臀部の溝に密着する吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パンティライナー、生理用ナプキン、失禁パッドなどの吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に綿状パルプ等からなる吸収体を介在したものが知られている。
【0003】
この種の吸収性物品にも幾多の改良が重ねられ、臀部の溝に密着させるための手段が種々講じられている。例えば、下記特許文献1では、吸収体として、吸収性物品の前方部及び後方部における肌当接面側に、該吸収体より幅狭で且つ肌当接面側に凸状に突出する前方中高部及び後方中高部を有し、吸収性物品の長手方向に延びる中心線に線対称的に設けられる一対の前方溝を前記前方中高部の側部に沿って形成し且つ吸収性物品の幅方向外方に凸状に形成し、前記前方中高部と後方中高部との間に、吸収性物品の幅方向に延び且つ後方中高部に向かって凸状に形成された中間溝を形成することによって、吸収性物品の前方部又は後方部の何れか一方に中高部を変形させる力が発生しても、その変形させる力が他方に伝わらず、装着時に前方中高部との間に隙間を生じないように、臀部の溝への密着性を高めた吸収性物品が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2では、縦方向中心線から左右両側に離れた位置に、液吸収層が圧縮されて肌側表面から着衣側表面に向けて窪む一対の圧縮溝が縦方向に延びて形成され、一対の圧縮溝は、その間隔が横方向基準線において最も狭くなり、横方向基準線から前後に離れた位置でその間隔が拡がるパターンで形成されており、液吸収層に、着衣側表面から肌側表面に向けて窪む可撓部が設けられており、この可撓部は、横方向基準線から離れた位置を基端として吸収性物品の端縁に向かって延びており、前記可撓部の少なくとも一部が前記圧縮溝と圧縮溝との間に位置していることによって、後方部分では、可撓部の両側に圧縮溝が位置しているため、大腿部からの圧力が圧縮溝に伝達されてこの圧縮溝の間隔を狭めるように作用し、その力が可撓部に伝わるようになるため、可撓部を有する部分が臀部の溝内に密着するように曲がり変形できるようにした吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−131297号公報
【特許文献2】特開2004−208919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、2記載の吸収性物品では、脚を動かしたときに臀部の溝の幅や深さが変化するような動きに対して追従することが難しく、就寝中に寝返りをうったときや歩行のときなどに臀部の溝の幅が広く深さが浅くなった場合(臀部の溝が開いた場合)には吸収性物品と臀部の溝との間に隙間が生じて経血が伝い漏れてしまうおそれがあった。
【0007】
そこで本発明の主たる課題は、臀部の動きに伴う臀部の溝形状の変化に追従しやすく、後部側への伝い漏れを防止した吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
前記吸収体は、吸収性物品の後部側において、幅方向中央部に長手方向に沿って肌当接面側に隆起する中央凸部と、その両側にそれぞれ離間して長手方向に沿って肌当接面側に隆起する両側凸部とを備えていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0009】
上記請求項1記載の発明では、吸収体として、吸収性物品の後部側において、幅方向中央部に長手方向に沿って肌当接面側に隆起する中央凸部と、その両側にそれぞれ離間して長手方向に沿って肌当接面側に隆起する両側凸部とを備える構造のものを使用しているため、寝返りをうったときや歩行中など、装着時に臀部の溝の幅が広く深さが浅くなった場合(臀部の溝が開いた場合)には、前記中央凸部及び両側凸部がそのままの状態で臀部の溝にフィットするとともに、仰向けに寝ているときなど、装着時に臀部の溝の幅が狭く深さが深くなった場合(臀部の溝が閉じている場合)には、大腿部や臀部からの幅方向両側から内側に向かう圧力により、吸収体の後部側が肌当接面側に隆起するように変形し、前記中央凸部を頂点としてその両側に前記両側凸部が接続した全体として鋭角な山状に変形して臀部の溝の奥にまでフィットするようになる。ここで、中央凸部と両側凸部とが離間して設けられているため、両側凸部の変形自由度が高く、臀部の溝の開閉状態に応じて両側凸部が臀部の溝を埋めるように適切に変形できるようになっている。従って、臀部の動きに伴う臀部の溝形状の変化に追従しやすく、確実に後部側への伝い漏れが防止できるようになる。
【0010】
請求項2に係る本発明として、前記吸収体は、吸収性物品の後部側において、幅方向中央部に長手方向に沿って下着当接面側の面を窪ませた薄肉部を備えている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0011】
上記請求項2記載の発明では、吸収性物品の後部側において、幅方向中央部に長手方向に沿って下着当接面側の面を窪ませた薄肉部を備えた吸収体とすることによって、吸収体の変形時に中央凸部を頂点として肌当接面側に隆起した山状に変形しやすくしている。
【0012】
請求項3に係る本発明として、前記中央凸部は、前記両側凸部より隆起高さが高く形成されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0013】
上記請求項3記載の発明では、中央凸部を両側凸部より隆起高さが高く形成することによって、臀部の溝形状により適合するような吸収体の表面形状としている。
【0014】
請求項4に係る本発明として、前記吸収体は、吸収体本体の肌当接面側に別体の前記中央凸部及び両側凸部を配設することによって構成され、
前記吸収体本体には、前記中央凸部及び両側凸部の配設面に対し、それぞれ長手方向に沿って吸収体繊維を圧縮した圧縮部が設けられている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0015】
上記請求項4記載の発明では、吸収体を吸収体本体と中央凸部及び両側凸部とに分けて構成し、吸収体本体の中央凸部及び両側凸部の配設面に対し、それぞれ長手方向に沿って吸収体繊維を圧縮した圧縮部を設けることによって、中央凸部及び両側凸部が配設される部分の吸収体本体の剛性を高めることができ、吸収体本体のヨレが防止できるようになる。また、圧縮部の繊維密度が増すため、この圧縮部に沿った吸収性物品長手方向の液拡散性が向上し、例え吸収性物品幅方向や厚み方向の吸収限界を超えた量の体液が吸収されたとしても、漏れが生じることがなくなる。
【0016】
請求項5に係る本発明として、前記中央凸部及び両側凸部には捲縮繊維が含まれている請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0017】
上記請求項5記載の発明では、肌当接面側に隆起する中央凸部及び両側凸部に捲縮繊維を含ませることにより、中央凸部及び両側凸部の復元性を良くし、臀部の溝形状の変化に追従しやすくしている。
【0018】
請求項6に係る本発明として、前記吸収体の上面に前記透液性表面シートを配設した状態で、前記透液性表面シートの上面側から、前記両側凸部の幅方向外側にエンボスが付与されるか、前記両側凸部の幅方向外側にエンボスが付与されるとともに、前記中央凸部と両側凸部との間にエンボスが付与されている請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0019】
上記請求項6記載の発明では、吸収体の上面に透液性表面シートを配設した状態で、透液性表面シートの上面側から、前記中央凸部及び両側凸部の全体の幅方向外側にエンボスを付与するか、各凸部の両側にエンボスを付与している。このようなエンボスを付与することによって、エンボス部分での屈曲性が高くなり、より後部側の各凸部が隆起し易くなる。
【0020】
請求項7に係る本発明として、前記裏面シートの外面にズレ止め粘着剤層が形成され、
前記ズレ止め粘着剤層は、前記中央凸部及び両側凸部の配設領域に対応する領域には形成されていない請求項1〜6いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0021】
上記請求項7記載の発明では、中央凸部及び両側凸部の配設領域に対応する領域にはズレ止め粘着剤層を形成しないことによって、ショーツのヨレなどの影響を受けることなく、中央凸部及び両側凸部が適切に変形して臀部の溝にフィットしやすくなる。
【発明の効果】
【0022】
以上詳説のとおり本発明によれば、臀部の動きに伴う臀部の溝形状の変化に追従しやすく、後部側への伝い漏れを防止した吸収性物品が提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
【図2】そのII−II線矢視図である。
【図3】図1のIII−III線矢視図である。
【図4】吸収体4の変形状態を示す横断面図である。
【図5】吸収体4の寸法を示す横断面図である。
【図6】他の形態(その1)を示す吸収体4の横断面図である。
【図7】他の形態(その2)を示す吸収体4の横断面図である。
【図8】他の形態(その3)を示す図1のIII−III線矢視図である。
【図9】他の形態(その4)を示す生理用ナプキン1の平面図である。
【図10】生理用ナプキン1の裏面図である。
【図11】他の形態(その5)を示す生理用ナプキン1の平面図である。
【図12】他の形態(その6)を示す生理用ナプキン1の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0025】
〔生理用ナプキン1の基本構造〕
前記生理用ナプキン1は、ポリエチレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、この吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞するクレープ紙5と、前記吸収体4の略側縁部を起立基端とし、かつ少なくとも排血口部Hを含むように前後方向に所定の区間内において表面側に突出して設けられた左右一対の立体ギャザーBS、BSを形成するサイド不織布7とから主に構成され、かつ前記吸収体4の周囲においては、その上下端縁部では前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、これら不透液性裏面シート2とサイド不織布7とによる積層シート部分によって側方に突出するウイング状フラップW、Wが形成されているとともに、これよりも臀部側に位置する部分に第2ウイング状フラップW、Wが形成されている。
【0026】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。前記不透液性裏面シート2の非使用面側(外面)には後段で詳述するズレ止め粘着剤層が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着に固定するようになっている。前記不透液性裏面シート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0027】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。前記透液性表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、経血やおりもの等(以下、まとめて体液という。)が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。
【0028】
前記吸収体4としては、体液を吸収・保持し得るものであれば良く、通常はフラッフ状パルプ中に吸水性ポリマー粉末を混入したものが吸収機能および価格の点から好適に使用される。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。また吸収体4として、内部に吸水性ポリマーが分散配置された捲縮繊維の集合体を用いることもできる。さらに吸収体4として、薄型のシート状吸収体を用いても良い。本例のように、吸収体4を囲繞するクレープ紙5を設ける場合には、結果的に透液性表面シート3と吸収体4との間にクレープ紙5が介在することになり、吸収性に優れる前記クレープ紙5によって体液を速やかに拡散させるとともに、これら経血等の逆戻りを防止するようになる。
【0029】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0030】
一方、前記透液性表面シート3の幅寸法は、図示例では、図2及び図3の横断面図に示されるように、吸収体4の幅よりも若干長めとされ、吸収体4を覆うだけに止まり、前記立体ギャザーBSは前記透液性表面シート3とは別のサイド不織布7、具体的には経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されている。かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を13〜23g/mとして作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0031】
前記サイド不織布7は、図2及び図3に示されるように、幅方向中間部より外側部分を吸収体4の内側位置から吸収体側縁を若干越えて不透液性裏面シート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着し、これら前記サイド不織布7と不透液性裏面シート2との積層シート部分により、ほぼ体液排出部に相当する吸収体側部位置に左右一対のウイングフラップW、Wを形成するとともに、これより臀部側位置に第2ウイング状フラップW、Wを形成している。これらウイング状フラップW、Wおよび第2ウイング状フラップW、Wの外面側にはそれぞれ粘着剤層12…,13…を備え、ショーツに対する装着時に、前記ウイング状フラップW、Wが折返し線RL位置にて反対側に折り返し、ショーツのクロッチ部分に巻き付けて止着するようになっている。
【0032】
一方、前記サイド不織布7の内方側部分はほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された糸状弾性伸縮部材14が配設されるとともに、前記糸状弾性伸縮部材14の上側部位に複数本の糸状弾性伸縮部材15…が両端または長手方向の適宜の位置が固定された状態で配設されている。この二重シート部分は前後端部では図2に示されるように、断面Z状に折り畳んで積層された状態で吸収体4側に接着されることによって、前記糸状弾性伸縮部材14配設部位を屈曲点として、断面く字状に内側に開口を向けたポケットP、Pを形成しながら表面側に起立する立体ギャザーBS、BSが形成されている。
【0033】
〔吸収体4の構造〕
吸収体4は、生理用ナプキン1の前側から後側にかけて形成される吸収体本体4Aと、この吸収体本体4Aの後部側において、幅方向中央部に長手方向に沿って肌当接面側に隆起する中央凸部20と、その両側にそれぞれ離間して長手方向に沿って肌当接面側に隆起する両側凸部21、21とを備えている。前記中央凸部20及び両側凸部21からなる長手方向に沿って隆起する凸部は、全体として3条以上の奇数条で設けることが好ましい。即ち、図示例では、中央凸部20の両側に各1条の両側凸部21、21を設けて全体として3条の凸部が形成されているが、中央凸部20の両側に各2条以上の両側凸部21…を設けることによって、全体として凸部が5条以上の奇数条とすることができる。
【0034】
前記中央凸部20及び両側凸部21、21が備えられることによって、図4(A)に示されるように、寝返りをうったときや歩行中など装着時に臀部の溝の幅が広く深さが浅くなった場合(臀部の溝が開いた場合)には、これら凸部20、21がそのままの状態で開いた状態の臀部の溝にフィットするとともに、図4(B)に示されるように、仰向けに寝ているときなど装着時に臀部の溝の幅が狭く深さが深くなった場合(臀部の溝が閉じている場合)には、大腿部や臀部からの幅方向両側から内側に向かう圧力が作用して、吸収体4の後部側が肌当接面側に隆起するように変形することによって、前記中央凸部20を頂点として、その両側に両側凸部21、21が接続するように配設され、全体として鋭角な山状に変形して、閉じた状態の臀部の溝の奥にまでフィットできるようになる。ここで、中央凸部20と両側凸部21とは離間して設けられているので、両側凸部21の変形自由度が高く、臀部の溝が開いている状態(図4(A)の状態)では、両側凸部21の先端部が中央凸部20側に傾くように変形する場合もあり、臀部の浅い溝により適合しやすくなる一方で、臀部の溝が閉じている状態(図4(B)の状態)では、吸収体本体4Aの幅方向中央部が折れ曲がるように変形することによって、両側凸部21の頂部が中央凸部20との離隔幅分だけ下がった位置で中央凸部20側に接続するように配設されるため、臀部の鋭角状の溝形状に適合しやすくなる。従って、臀部の動きに伴う臀部の溝形状の変化に追従しやすく、確実に後部側への伝い漏れが防止できるようになる。
【0035】
また、生理用ナプキン1の後部側には、幅方向中央部に長手方向に沿って下着当接面側の面を窪ませた薄肉部22を備えることが好ましい。この薄肉部22は、少なくとも、中央凸部20及び両側凸部21が形成されるナプキン長手方向の長さに亘って設けられ、図示例のように、中央凸部20が両側凸部21より長く形成される場合には、中央凸部20の長手方向長さに亘って設けられるようにする。前記薄肉部22が備えられることによって、幅方向両側から脚圧が作用したときに吸収体本体4Aの幅方向中央部が確実に肌当接面側に隆起するようになる。
【0036】
一方、少なくとも着用者の排血口部Hに対応する部分を含む前側領域には、前記中央凸部20及び両側凸部21から離間して、肌当接面側に隆起する前方中高部23が備えられている。また、吸収体本体4Aの後端部には、前記中央凸部20の後端部に連続して、前記後端部から両側に拡大するような外形で、肌当接面側に隆起する後方中高部24が備えられている。
【0037】
前記中央凸部20及び両側凸部21が備えられる後部側の断面に対する各部の寸法は、図5に示されるように、臀部の溝の幅が広い場合(臀部の溝が開いている場合)の臀部の溝形状を考慮して、両側凸部21、21の両外側間の幅aを50mm程度とすることが好ましい。各凸部20、21の幅bは5〜15mmが好ましく、隆起高さcは5〜10mmが好ましく、隣接する凸部間隔dは2〜10mmが好ましい。一方、薄肉部22の幅eは5〜50mmが好ましく、薄肉部の最小吸収体厚fは2〜10mmが好ましい。
【0038】
前記中央凸部20及び両側凸部21は、同じ隆起高さcで形成してもよいが、中央凸部20の隆起高さを両側凸部21の隆起高さより高く形成することが好ましい。これにより、幅方向中央部の中央凸部20が最も高く隆起するようになり、全体として山型に隆起して臀部の溝にフィットしやすくなる。中央凸部20と両側凸部21の高さの差は、1〜5mm程度が好ましい。
【0039】
前記薄肉部22は、吸収体4の幅方向中央部が肌当接面側に隆起するような変形を生じさせるものであるので、図5に示されるように、幅方向中央部に長手方向に沿って可撓軸が形成されるように、幅方向中央部で吸収体の肉厚が最も薄くなるような三角形などの中央部が凹んだ断面形状とすることが好ましい。ただし、薄肉部22の幅eを中央凸部20の幅bより狭く形成した場合には、この薄肉部22全体が可撓部となるような変形を生じるので、矩形状など任意の断面形状で形成することが可能である。
【0040】
上記形態例では、前記中央凸部20及び両側凸部21は吸収体本体4Aと一体的に積繊するように図示されていたが、図6に示されるように、吸収体本体4Aの肌当接面側に別体で積繊した中央凸部20及び両側凸部21、21を配設することができる。
【0041】
さらに、このように別体で構成した場合、吸収体本体4Aの中央凸部20及び両側凸部21、21の配設面に対し、それぞれ長手方向に沿って吸収体繊維を圧縮した圧縮部25、25…を設けることができる。かかる圧縮部25を設けることによって、中央凸部20及び両側凸部21、21が配設される部分の吸収体本体4Aの剛性を高めることができるので、吸収体本体4Aのよれが防止できるようになる。また、圧縮部25の繊維密度が増すため、この圧縮部25に沿ったナプキン長手方向の液拡散性が向上し、例えナプキン幅方向や厚み方向の吸収限界を超えた量の体液が吸収体に吸収されたとしても、漏れが生じることがなくなる。ここで、前記圧縮部25は中央凸部20又は両側凸部21の配設幅より狭い幅で形成することが好ましい。これにより、この圧縮部25…が形成された吸収体本体4Aの上面に中央凸部20及び両側凸部21を配置しただけで、繊維の絡み合いによって各凸部のズレが防止できるようになる。即ち、吸収体本体4Aと上層の中央凸部20及び両側凸部21とのズレを防止するため、各吸収体(吸収体本体4A、中央凸部20、両側凸部21)を個別的にクレープ紙で囲繞するのではなく、少なくとも吸収体本体4Aと中央凸部20及び両側凸部21との接続面にはクレープ紙を設けず、吸収体同士の繊維が絡み合うようにするか、下層の吸収体本体4Aと上層の中央凸部20、両側凸部21との間に繊維が表面に出ている不織布をクレープ紙の代わりに配置することによって吸収体本体4A及び中央凸部20、両側凸部21の繊維がそれぞれ不織布の繊維と絡み合うようにする。
【0042】
吸収体本体4Aと中央凸部20及び両側凸部21とを別体で構成した場合、図7(A)に示されるように、吸収体本体4Aの各凸部20、21の配設位置に対し、各凸部が嵌合するような凹部26、26…を形成してもよい。これにより、吸収体本体4Aと中央凸部20及び両側凸部21とのズレが確実に防止できるようになる。
【0043】
また、図7(B)に示されるように、中央凸部20’及び両側凸部21’として、それぞれ捲縮繊維が含まれたものによって構成することができる。捲縮繊維を含ませることにより、中央凸部20’及び両側凸部21’の復元性が良くなり、臀部の溝形状の変化に追従しやすくなる。また、捲縮繊維を含ませることの他に、柔軟ウレタンフォーム、メラミンフォームなどのフォーム素材、ポリウレタンスポンジ、PVAスポンジ等の各種スポンジ材を含ませることも可能である。
【0044】
ところで、図1及び図3に示されるように、前記吸収体4の上面に透液性表面シート3を配設した状態で、前記透液性表面シート3の上面側から、両側凸部21、21の幅方向外側にそれぞれエンボス30、30が付与してある。このエンボス30により、ナプキン後部側の凸部全体がきっちりと画成されるとともに、外部から凸部が形成されていることがはっきりと視認できるようになる。さらに、図8に示されるように、前述の幅方向外側のエンボス30、30に加えて、中央凸部20と両側凸部21との間にそれぞれエンボス31、31を付与することにより、各凸部20、21が個別的に画成されるようにすることもできる。これにより、エンボス30、31部分での屈曲性が高くなり、より後部側の各凸部20、21が隆起し易くなる。
【0045】
また、図1に示されるように、生理用ナプキン1の前側には、前方中高部23の両側及び前側を囲むように、透液性表面シート3の上面側から、長手方向中心線CLに対して対称のエンボス32が付与されている。さらに、生理用ナプキン1の後端部には、透液性表面シート3の上面側から、略幅方向に沿って後側に膨出する曲線状で2条のエンボス33、33が形成されている。
【0046】
両側凸部21、21の外側に形成されるエンボス30、30は、平面視で、図1に示される連続的な直線状の他、図9(A)に示されるように、幅方向内側から幅方向外側に向かって前側又は後側に傾斜する(図示例では前側に傾斜する)エンボス線をナプキン長手方向に離間して複数配置するとともに、長手方向中心線CLに対して左右対称に形成した平面形状としてもよいし、同図9(B)に示されるように、断続的な点線状としてもよい。
【0047】
また、後端部に形成されるエンボス33は、同図9(A)に示されるように、後側に膨出する台形状又は三角形状に形成してもよいし、同図9(B)に示されるように、なくてもよい。さらに、前側に形成されるエンボス32と後側に形成されるエンボス30とは、図1に示されるように離間していてもよいし、図9(B)に示されるように長手方向中心線CLの両側でそれぞれ連続するように形成してもよい。
【0048】
図10に示されるように、吸収体4が介在する本体部分の不透液性裏面シート2の外面側に形成される本体ズレ止め粘着剤層は、前記中央凸部20及び両側凸部21、21の配設領域に対応する領域には形成しないことが好ましい。これにより、ショーツのヨレなどの影響を受けることなく、臀部の溝にフィットしやすくなる。このように形成したズレ止め粘着剤層のパターンとしては、図10(A)に示されるように、吸収体4の両側部に対応する位置に長手方向に沿って前側から後側にかけて連続する左右一対の本体ズレ止め粘着剤層16a、16aを形成したり、同図10(B)に示されるように、吸収体4の前側の両側部に対応する位置に長手方向沿って左右一対の本体ズレ止め粘着剤層16b、16bを形成するとともに、吸収体4の後端部の幅方向中央部に対応する位置に幅方向に沿って長い本体ズレ止め粘着剤層16cを形成したり、同図10(C)に示されるように、吸収体4の前側の幅方向中央部に対応する位置に本体ズレ止め粘着剤層16dを形成するとともに、吸収体4の後端部の幅方向両側部に対応する位置に長手方向に沿って長い左右一対の本体ズレ止め粘着剤層16eを形成することができる。
【0049】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、前方中高部23と後方の中央凸部20及び両側凸部21とが離間して設けられているが、図11に示されるように、少なくとも中央凸部20と前方中高部23とが連続して設けられるようにしてもよい。これにより、排血口部Hに対応する領域と臀部との間の隙間にもフィットしやすくなる。また、両側凸部21、21も前方中高部23と連続するようにしてもよい。
(2)上記形態例では、中央凸部20の後端部に連続して後方中高部24が形成されているが、図12に示されるように、中央凸部20から離間した後側位置に後方中高部24を設けるようにしてもよい。そもそも、後方中高部24は、中央凸部20及び両側凸部21が臀部の溝にうまくフィットしなかった場合に後漏れを防止するために設けられるものであるので、本発明に係る生理用ナプキン1では中央凸部20及び両側凸部21が臀部の溝にフィットして後漏れが防止できている限り、後方中高部24は図示例のように、後側位置に離間して設けてもよいし、なくてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…生理用ナプキン、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、4A…吸収体本体、5…クレープ紙、7…サイド不織布、16a〜16e…本体ズレ止め粘着剤層、20…中央凸部、21…両側凸部、22…薄肉部、23…前方中高部、24…後方中高部、30・31・32・33…エンボス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
前記吸収体は、吸収性物品の後部側において、幅方向中央部に長手方向に沿って肌当接面側に隆起する中央凸部と、その両側にそれぞれ離間して長手方向に沿って肌当接面側に隆起する両側凸部とを備えていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収体は、吸収性物品の後部側において、幅方向中央部に長手方向に沿って下着当接面側の面を窪ませた薄肉部を備えている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記中央凸部は、前記両側凸部より隆起高さが高く形成されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体は、吸収体本体の肌当接面側に別体の前記中央凸部及び両側凸部を配設することによって構成され、
前記吸収体本体には、前記中央凸部及び両側凸部の配設面に対し、それぞれ長手方向に沿って吸収体繊維を圧縮した圧縮部が設けられている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記中央凸部及び両側凸部には捲縮繊維が含まれている請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収体の上面に前記透液性表面シートを配設した状態で、前記透液性表面シートの上面側から、前記両側凸部の幅方向外側にエンボスが付与されるか、前記両側凸部の幅方向外側にエンボスが付与されるとともに、前記中央凸部と両側凸部との間にエンボスが付与されている請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記裏面シートの外面にズレ止め粘着剤層が形成され、
前記ズレ止め粘着剤層は、前記中央凸部及び両側凸部の配設領域に対応する領域には形成されていない請求項1〜6いずれかに記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−75009(P2013−75009A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216513(P2011−216513)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】