説明

吸引カテーテル

【課題】血栓などの異物の吸引除去を適切に行うことが可能な吸引カテーテルを提供すること。
【解決手段】吸引カテーテルのカテーテル本体11には、軸線L方向の略全体に亘って吸引用ルーメン13が形成されている。当該吸引用ルーメン13には、カテーテル本体11の遠位側に形成された吸引口14,15を通じて血栓が吸引される。本吸引カテーテルでは、当該吸引口14,15を2つ備えている。これら吸引口14,15は、軸線Lを挟んで対峙するようにして、軸周りに離間させて形成されている。この場合に、吸引用ルーメン13には、第1吸引口14から通じる空間と、第2吸引口15から通じる空間とを仕切るようにして仕切壁部25が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内の血栓などといった生体内の異物を吸引除去するための吸引カテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
吸引カテーテルとしては、食道内容物や胃内容物を吸引するためのものが知られており、それ以外にも、冠動脈などの血管に存在する血栓を吸引するためのものが知られている。血栓吸引カテーテルの治療方法について具体的には、治療行為者は、血栓吸引カテーテルを血管内に挿入するとともに当該血管内を移動させ、血栓が存在している治療対象箇所に当該カテーテルの遠位端部を到達させる。そして、吸引カテーテルの近位端に取り付けられた吸引具を用いて当該カテーテル内を負圧とすることにより、血栓を吸引除去する。
【0003】
上記吸引カテーテルとして、特許文献1には、遠位端側に形成された1つの吸引口を介して上記血栓などを吸引除去する構造が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、血栓吸引ルーメンの側壁に対して吸引口が軸周りに複数形成された構成が開示されている。そして、当該特許文献2には、複数の吸引口を軸周りに形成することで、カテーテル本体の周囲に対して、全周的に、吸引力を作用させることができ、血管の内径がカテーテルの外径よりも大きい場合でも、カテーテル本体の周囲にある血栓や血管内に遊離したアテローマ等のデブリスを良好に捕捉して、吸引除去することが可能となると記載されている。また、当該特許文献2には、吸引口が複数存在しているので、一の吸引口が詰まっても、他の吸引口により、デブリスを吸引除去できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−222946号公報
【特許文献2】特開2008−55102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2の構成であっても、例えば一の吸引口から吸引した血栓が比較的大きなものであり、そのサイズが吸引カテーテルの内径を超えるものである場合には、その吸引が行われた吸引口だけでなく他の吸引口も塞いだ状態で血栓がカーテル内にて留まってしまうことが懸念される。そうすると、複数の吸引口を軸周りに備えていたとしても、血栓などの異物を適切に吸引除去することができない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、血栓などの異物の吸引除去を適切に行うことが可能な吸引カテーテルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果等を示しつつ説明する。
【0009】
第1の発明の吸引カテーテル:吸引口を介して異物を吸引除去する吸引カテーテルにおいて、前記吸引口として、軸周りに異なる位置となるように形成された複数の吸引口を備え、吸引カテーテルの内部に、前記複数の吸引口のうち第1吸引口から通じる空間と第2吸引口から通じる空間とを仕切る仕切壁部を備えていることを特徴とする。
【0010】
本構成によれば、生体内の異物の吸引除去に際して当該異物により第1吸引口及び第2吸引口のうち一方が塞がれたとしても、他方を利用して異物の吸引除去を継続することが可能となる。よって、異物の吸引除去を適切に行うことが可能となる。
【0011】
第2の発明の吸引カテーテル:第1の発明において、前記第1吸引口から通じる空間及び前記第2吸引口から通じる空間は、前記仕切壁部よりも近位側において前記吸引カテーテル内の同一の空間に連通されていることを特徴とする。
【0012】
本構成によれば、第1吸引口及び第2吸引口のうち一方が塞がれたとしても、他方を通じた吸引が継続され、塞がれた箇所に対して近位側にて連通した箇所において流体の流れが生じる。これにより、上記塞いでいる異物に対して近位側へと移動する力が付与されることが期待され、当該異物を近位側へと移動させることが可能となる。
【0013】
第3の発明の吸引カテーテル:第2の発明において、前記仕切壁部の近位端部は、軸線方向において前記第1吸引口の近位端部と同一の位置又はその付近に存在していることを特徴とする。これにより、第1吸引口及び第2吸引口のうち一方を塞いだ異物によって他方までもが塞がれてしまうことを抑制しながら、当該他方の吸引口を通じて吸引が継続された場合に当該異物に近位側へと移動させる力が付与され易くなる。よって、当該異物を近位側へと移動させることが可能となる。
【0014】
第4の発明の吸引カテーテル:第2の発明において、前記第1吸引口の近位端部及び前記第2吸引口の近位端部は、軸線方向の位置が同一の位置となっており、仕切壁部の近位端部は、軸線方向においてそれら第1吸引口及び第2吸引口の近位端部と同一の位置又はその付近に存在していることを特徴とする。これにより、上記第3の発明にて説明した作用効果を、第1吸引口及び第2吸引口の両方に対して同様に生じさせることが可能となる。また、上記第3の発明にて説明した作用効果を生じさせる上で、仕切壁部の設計の容易化が図られる。
【0015】
第5の発明の吸引カテーテル:第2乃至第4の発明のいずれか1において、前記仕切壁部の近位端部は、軸線方向において前記第1吸引口の近位端部と同一の位置又はそれよりも遠位側に存在していることを特徴とする。これにより、第1吸引口及び第2吸引口のうち一方を塞いだ異物によって他方までもが塞がれてしまうことを抑制しながら、当該他方の吸引口側へと異物の一部を積極的に入り込ませるようにすることが可能となる。よって、当該他方の吸引口を通じて吸引が継続された場合に当該異物に近位側へと移動させる力が付与され易くなり、当該異物を近位側へと移動させることが可能となる。
【0016】
第6の発明の吸引カテーテル:第1乃至第5の発明のいずれか1において、前記第1吸引口及び前記第2吸引口は、吸引カテーテルの軸線を挟んで対峙するようにして形成されており、前記仕切壁部は、前記第1吸引口と前記第2吸引口との間の中間位置において前記軸線を含むように形成されていることを特徴とする。これにより、仕切壁部を設けたことによる作用効果を、第1吸引口及び第2吸引口に対して均等に生じさせることが可能となる。
【0017】
第7の発明の吸引カテーテル:第1乃至第6の発明のいずれか1において、前記第1吸引口及び前記第2吸引口よりも遠位側に延在するようにしてガイドワイヤ用ルーメンを備えており、当該ガイドワイヤ用ルーメンは、その少なくとも一部が前記仕切壁部内を通るようにして形成されていることを特徴とする。これにより、ガイドワイヤ用ルーメンにガイドワイヤが通されている状態においては、当該ガイドワイヤにより仕切壁部を補強することが可能となる。よって、吸引カテーテルを目的箇所に挿入する場合の作業時や、吸引作業時において、仕切壁部が第1吸引口及び第2吸引口のうち一方を塞いでしまうといった不都合の発生が抑制される。
【0018】
第8の発明の吸引カテーテル:第7の発明において、前記ガイドワイヤ用ルーメンは、前記仕切壁部の幅方向の中央を通るようにして形成されていることを特徴とする。これにより、上記ガイドワイヤを利用した仕切壁部の補強を好適に行うことが可能となる。
【0019】
第9の発明の吸引カテーテル:第7又は第8の発明において、前記仕切壁部は、吸引カテーテルの軸線を含むようにして形成されており、前記ガイドワイヤ用ルーメンにおいて少なくとも前記仕切壁部内を通る領域は、前記軸線上又はその付近に存在するように形成されていることを特徴とする。これにより、軸周りの剛性のバランスを好適なものとしながら、上記第7の発明にて説明した作用効果を生じさせることが可能となる。
【0020】
第10の発明の吸引カテーテル:第7乃至第9の発明のいずれか1において、前記ガイドワイヤ用ルーメンは、その遠位端部から近位側に向けた所定範囲を構成するとともに、吸引カテーテルの軸線上又はその付近に存在する軸線上領域と、当該軸線上領域に対して近位側にて連続するとともに、前記軸線に対して所定方向に存在する吸引カテーテルの壁部に偏倚した状態へと遷移させるために形成された遷移領域と、を備え、前記軸線上領域は、前記仕切壁部を通るように形成されているとともに、当該軸線上領域と前記遷移領域との境界部分が前記仕切壁部の近位端部又はそれよりも近位側に存在するように形成されていることを特徴とする。これにより、所謂RX型の吸引カテーテル等といったように、ガイドワイヤ用ルーメンの近位端側を吸引カテーテルの壁部に偏倚させる必要がある構成において、ガイドワイヤを利用した仕切壁部の補強、及び軸周りの剛性のバランスの好適化を図ることが可能となる。また、製造の容易化も図られる。
【0021】
第11の発明の吸引カテーテル:第10の発明において、前記遷移領域は、前記仕切壁部を近位側に延長させた範囲を通るように形成されていることを特徴とする。これにより、吸引用の実質的な空間を極力広く確保しながら、上記第10の発明にて説明した作用効果を生じさせることが可能となる。
【0022】
第12の発明の吸引カテーテル:第1乃至第11の発明のいずれか1において、前記第1吸引口及び前記第2吸引口は、その開口面が遠位側に向かうほど吸引カテーテルの軸線寄りとなるように当該軸線に対して傾斜させて形成されていることを特徴とする。これにより、異物の吸引を行い易くすることが可能となる。また、上記第3乃至第5の発明のいずれか1に記載された構成を備えている場合には、これら各発明にて説明した作用効果を生じさせるような仕切壁部を形成し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)カテーテル本体の遠位端部から近位側に向けた遠位側領域の拡大側面図であり、(b)カテーテル本体の上記遠位側領域の拡大側面図であって、図1(a)に対して90°軸周りに回転させた状態を示す拡大側面図である。
【図2】(a)図1(a)の縦断面図であり、(b)図1(b)の縦断面図であり、(c−1)は図1(a)におけるA−A線部分の切断部端面図であり、(c−2)図1(a)におけるB−B線部分の切断部端面図であり、(c−3)図1(a)におけるC−C線部分の切断部端面図であり、(c−4)図1(a)におけるD−D線部分の切断部端面図であり、(c−5)図1(a)におけるE−E線部分の切断部端面図であり、(c−6)図1(a)におけるF−F線部分の切断部端面図であり、(c−7)図1(a)におけるG−G線部分の切断部端面図である。
【図3】吸引カテーテルの構成を示す概略全体側面図である。
【図4】(a),(b−1)〜(b−3)吸引カテーテルの使用方法を説明するための説明図である。
【図5】第2の実施の形態における吸引カテーテルの構成を示す概略図である。
【図6】第3の実施の形態における吸引カテーテルの構成を示す概略図である。
【図7】第4の実施の形態における吸引カテーテルの構成を示す概略図である。
【図8】第5の実施の形態における吸引カテーテルの構成を示す概略図である。
【図9】第6の実施の形態における吸引カテーテルの構成を示す概略図である。
【図10】別の吸引カテーテルの構成を示す切断部端面図である。
【図11】別の吸引カテーテルの構成を示す切断部端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施の形態)
以下、血栓を吸引除去するための吸引カテーテルに本発明を具体化した第1の実施の形態を、図面に基づいて説明する。先ず図3を参照しながら吸引カテーテル10の概略構成を説明する。図3は吸引カテーテル10の構成を示す概略全体側面図である。
【0025】
図3に示すように、吸引カテーテル10は、1m〜2mの長さ寸法とされており、カテーテル本体11と、当該カテーテル本体11の近位端部(基端部)に取り付けられたハブ12と、を備えている。カテーテル本体11には、ハブ12に形成された装着口12aに連通するとともに遠位端部分(先端部分)まで延びる吸引用ルーメン13が形成されており、当該吸引用ルーメン13は遠位端部分にて吸引口14,15を介してカテーテル本体11の外部に開放されている。そして、ハブ12に接続された吸引具を用いて吸引用ルーメン13に負圧を付与することにより、吸引口14,15を通じた血栓の吸引除去が可能となる。
【0026】
ちなみに、吸引具としては、電動式の真空ポンプや、図3に示すようなシリンジSが用いられる。この場合、簡素な設備において血栓の吸引除去治療を行う場合には、シリンジSが用いられることとなるが、シリンジSを用いる場合にはその容量を限度として血栓の吸引治療が行われ、シリンジSの容量分の吸引が行われた場合には吸引カテーテル10の抜き取りが行われる。
【0027】
次に、カテーテル本体11の構成について図1及び図2を参照しながら、詳細に説明する。
【0028】
図1(a)はカテーテル本体11の遠位端部から近位側に向けた遠位側領域の拡大側面図であり、図1(b)はカテーテル本体11の上記遠位側領域の拡大側面図であって、図1(a)に対して90°軸周りに回転させた状態を示す拡大側面図である。また、図2(a)は図1(a)の縦断面図(カテーテル本体11の軸線を含む面による断面図)であり、図2(b)は図1(b)の縦断面図である。また、図2(c−1)は図1(a)におけるA−A線部分の切断部端面図であり、図2(c−2)は図1(a)におけるB−B線部分の切断部端面図であり、図2(c−3)は図1(a)におけるC−C線部分の切断部端面図であり、図2(c−4)は図1(a)におけるD−D線部分の切断部端面図であり、図2(c−5)は図1(a)におけるE−E線部分の切断部端面図であり、図2(c−6)は図1(a)におけるF−F線部分の切断部端面図であり、図2(c−7)は図1(a)におけるG−G線部分の切断部端面図である。
【0029】
カテーテル本体11(すなわち、後述する外側管部21、内側管部23及び仕切壁部25)は、樹脂材料を用いて形成されている。この樹脂材料としては、例えば、ポリアミド、ポリアミドエラストマ、ポリイミド、ポリイミドエラストマ、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステルエラストマ、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマ、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリスチレンエラストマ、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ素系エラストマ、シリコンゴム、ラテックスゴム等が挙げられる。また、これらを単独で用いてもよく、2種類以上を組合せた混合物を用いてもよい。
【0030】
カテーテル本体11の形成材料としては、具体的には、ポリアミドエラストマ(詳細にはPEBAX)が用いられており、各ルーメンを区画する壁部は当該樹脂材料による単層構造となっている。但し、これに限定されることはなく、各ルーメンを区画する壁部の少なくとも一部(例えば後述する内側管部23)が、複数の材料が積層されてなる多層構造であってもよく、具体的には内層が高密度ポリエチレン、中間層が低密度ポリエチレン、外層がポリアミドエラストマとなった3層構造が考えられる。
【0031】
なお、上記中間層がステンレスやNi−Ti合金といった金属による線状要素を用いて形成された編組チューブであってもよい。また、上記3層構造であるか否かに関係なく、内層がポリテトラフルオロエチレン等のフッ素含有樹脂により形成されていてもよい。また、上記3層構造であるか否かに関係なく、外層として、セルロース系ポリマ、ポリエチレンオキサイド系ポリマ、無水マレイン酸系ポリマ、アクリルアミド系ポリマ、水溶性ナイロンなどを用いた親水性コーティングが施されていてもよい。
【0032】
カテーテル本体11は、図1(a)及び図1(b)に示すように、その遠位側領域11aは近位側から途中位置に亘って外径が一定となっているのに対して、当該途中位置から遠位端部に亘って先細りするように形成されている。この先細りは、近位側の方が遠位側よりも傾斜が大きくなるようにして形成されている。ちなみに、少なくとも遠位側領域11aの外縁形状は、当該カテーテル本体11の軸線Lを含む平面を基準として対称形状をなしている。
【0033】
カテーテル本体11において上記先細りの傾斜角度が変更される箇所から近位端部に亘って、既に説明した吸引用ルーメン13が形成されている。当該吸引用ルーメン13は、図2(a)に示すように、カテーテル本体11を構成する外側管部21により区画形成されている。
【0034】
外側管部21において外径が一定となっている箇所の当該外径は、任意であるが、通過性及び耐キンク性の観点から1mm〜3mmが好ましい。また、外側管部21において内径が一定となっている箇所の当該内径は、任意であるが、血栓の吸引効率及び耐キンク性の観点から0.5mm〜2.5mmが好ましい。
【0035】
カテーテル本体11は、図2(a)及び図2(b)に示すように、吸引用ルーメン13の他にガイドワイヤ用ルーメン22を備えている。ガイドワイヤ用ルーメン22は、カテーテル本体11を構成する内側管部23により区画形成されている。内側管部23は、軸線方向の全体に亘って連続するとともに両端にて開放された管孔を有する管状に形成されており、当該管孔が上記ガイドワイヤ用ルーメン22に相当する。
【0036】
内側管部23は、図2(a)に示すように、その外径が外側管部21の内径よりも小さく設定されており、外側管部21内に挿入されている。また、内側管部23は、外側管部21よりも遠位側に延出させて形成されており、当該内側管部23の遠位端部がカテーテル本体11、すなわち吸引カテーテル10の遠位端部を構成している。この場合、ガイドワイヤ用ルーメン22の遠位端開口22aは、内側管部23の遠位端面において遠位側を向くようにして形成されている。
【0037】
なお、内側管部23において外側管部21よりも遠位側に延出している領域には、その軸線方向の途中位置に、金、白金、タングステン、各種合金などといった金属を用いて形成されたX線不透過マーカ24が取り付けられている。
【0038】
内側管部23の近位端部は、図2(b)に示すように、カテーテル本体11の軸線方向の途中位置にて外側管部21の管壁に連結されている。そして、ガイドワイヤ用ルーメン22の近位端開口22bは、外側管部21の側壁に形成されている。この場合、内側管部23と外側管部21とは同一の樹脂材料により形成されており、当該樹脂材料が両管部21,23に亘って連続して存在していることにより、内側管部23の遠位端部における外側管部21に対する連結が行われている。つまり、内側管部23と外側管部21とは一体形成された状態となっている。ガイドワイヤ用ルーメン22の近位端開口22bが、カテーテル本体11の近位端部ではなくカテーテル本体11の軸線方向の途中位置に形成されていることにより、治療中においてガイドワイヤを生体内に挿入した状態で吸引カテーテル10の交換を行う必要が生じた場合にその作業性の容易化が図られる。
【0039】
内側管部23において外径が一定となっている箇所の当該外径は、任意であるが、通過性及び耐キンク性の観点から0.4mm〜1.0mmが好ましい。また、内側管部23は、近位端開口22bを除いて内径が一定となっているが、当該内径は、具体的には任意であるものの、ガイドワイヤの操作性の観点から0.3mm〜0.9mmが好ましい。また、内側管部23において外側管部21よりも遠位側に延出している領域の長さ寸法は、任意であるが、通過性及び吸引口14,15を目的箇所に配置する際の操作性の観点から1mm〜10mmが好ましい。
【0040】
上記のように外側管部21及び内側管部23を用いてカテーテル本体11が形成された構成において、図1(b)及び図2(a)に示すように、吸引用ルーメン13の遠位端開口である吸引口14,15は、外側管部21の遠位端部分に形成されている。この場合、上記のとおり内側管部23が外側管部21よりも遠位側に延出させて形成されていることにより、吸引口14,15は吸引カテーテル10の遠位側であって軸線方向の途中位置に形成されていることとなる。
【0041】
吸引口14,15は、図2(a)、図2(c−3)及び図2(c−4)に示すように、カテーテル本体11の軸線L周りに所定の間隔を置いて複数形成されている。具体的には、カテーテル本体11は、吸引口として、第1吸引口14及び第2吸引口15の2個を備えており、これら吸引口14,15は軸線L周りに等間隔で形成されている。
【0042】
各吸引口14,15は、同一の形状及び同一のサイズとなるように形成されている。当該形状について詳細には、各吸引口14,15は、その周縁部が遠位側に向かうほど軸線L側となるように形成されており、各吸引口14,15の開口面は遠位側を向く成分を有するようにして軸線Lに対して傾斜している。また、各吸引口14,15は、図1(b)に示すように、軸線方向の両端の方が軸線方向の中央側に比べて、軸周りの寸法が小さい形状となっている。
【0043】
各吸引口14,15は、図2(a)に示すように、軸線方向の長さ寸法が同一となっており、さらに各吸引口14,15の遠位端部の位置は軸線方向において同一の位置となっているとともに近位端部の位置も軸線方向において同一の位置となっている。つまり、第1吸引口14及び第2吸引口15は軸線Lを挟んで対峙している。各吸引口14,15の軸線方向の長さ寸法は、任意であるが、3mm〜12mmが好ましい。これにより、吸引カテーテル10の遠位端部における強度を保ちながら、血栓の吸引を好適に行うことが可能となる。
【0044】
各吸引口14,15は、同一の吸引用ルーメン13に連続している。但し、これら吸引口14,15の間には、図1(a)、図2(b)、図2(c−3)及び図2(c−4)に示すように、仕切壁部25が存在している。
【0045】
仕切壁部25は、内側管部23において両吸引口14,15により挟まれた領域である途中領域23aと、当該途中領域23aを基準として外側(軸線方向に対して直交する方向)に向けて延在し、途中領域23a及び外側管部21を連結するように形成された一対の連結壁部26,27とによって構成されている。連結壁部26,27は、外側管部21及び内側管部23と同一の樹脂材料により形成されており、当該樹脂材料が連結壁部26,27、外側管部21及び内側管部23に亘って連続して存在していることにより、各連結壁部26,27による外側管部21及び内側管部23の連結が行われている。
【0046】
上記仕切壁部25の各吸引口14,15に対する位置関係について詳細に説明する。内側管部23は、図2(a)及び図2(b)に示すように、その遠位端部から少なくとも上記途中領域23aよりも近位側に亘って、外側管部21と同一の軸線L上又はその付近に存在している。また、一対の連結壁部26,27は、軸線Lを含む同一平面上に存在するようにして形成されている。これら一対の連結壁部26,27は、板状に形成されており、その厚み寸法は、上記途中領域23aの外径よりも小さく設定されている。したがって、図2(c−3)及び図2(c−4)に示すように、仕切壁部25は、軸線L上に存在している部分が周囲よりも肉厚な形状となっている。
【0047】
上記のように仕切壁部25が形成されていることにより、図2(a)に示すように、当該仕切壁部25は一対の吸引口14,15のそれぞれに対して等距離となる位置に存在している。そして、吸引用ルーメン13において一対の吸引口14,15に続く空間、詳細には一対の吸引口14,15により挟まれた空間は、仕切壁部25により2等分されている。この場合に、仕切壁部25には、第1吸引口14に続く空間と第2吸引口15に続く空間とを連通させるような貫通孔は形成されておらず、これら空間は、仕切壁部25よりも近位側にて連通している。
【0048】
仕切壁部25の近位端部の位置は、図1(a)及び図2(b)に示すように、各吸引口14,15の近位端部の位置に対して軸線方向において同一の位置となっている。これにより、各吸引口14,15の間には、その全体に亘って仕切壁部25が存在していることとなる。
【0049】
既に説明したようにカテーテル本体11は、その遠位側領域11aが途中位置から先細りするように形成されている。そして、この途中位置は、軸線方向において、吸引口14,15の近位端部の位置、すなわち仕切壁部25の近位端部の位置となっている。したがって、図2(c−3)及び図2(c−4)に示すように、仕切壁部25は、遠位側に向けて幅狭となるように形成されている。
【0050】
また、図2(c−1)及び図2(c−2)に示すように、内側管部23において外側管部21よりも遠位側に延出している領域、すなわち吸引口14,15よりも遠位側に延出している領域も、遠位側に向けて先細りするように形成されている。この場合に、上記のとおり、遠位側領域11aにおいて先細りしている領域は、その中間位置にて、近位側の方が大きい傾斜角度となるようにして傾斜角度が変化しているが、この傾斜角度が変化する位置が、吸引口14,15の遠位端部に相当する。上記構成であることにより、各吸引口14,15の開口面が遠位側を向く成分を有するようにして軸線Lに対して傾斜させて形成されている構成において、吸引カテーテル10には、各吸引口14,15を遠位側に延長させた範囲に当該吸引カテーテル10の構成部位が存在しない構成となっている。
【0051】
ちなみに、上記先細りしている領域において近位側の傾斜角度は、任意であるが、通過性及び耐キンク性の観点から10°〜45°が好ましい。また、上記先細りしている領域において遠位側の傾斜角度は、任意であるが、通過性及び耐キンク性の観点から−45°〜10°が好ましい。なお、上記のように内側管部23が先細りするように形成された構成において、その内径すなわちガイドワイヤ用ルーメン22の横断面積は一定となるように形成されている。
【0052】
ここで、内側管部23が仕切壁部25を構成するように形成されている構成において、既に説明したとおり当該内側管部23の近位端開口22bは、カテーテル本体11の軸線方向の途中位置における外側管部21の側壁に形成されている。この場合に、内側管部23は、仕切壁部25を構成する途中領域23aを含めて遠位側の領域が軸線L上に存在しているため、内側管部23には、図2(b)に示すように、この同一の軸線L上に存在している領域と近位端開口22bとを繋ぐようにして、上記軸線Lの方向に対して傾斜する遷移領域23bが存在している。
【0053】
遷移領域23bの遠位端部は、吸引口14,15の近位端部よりも近位側に存在しており、同様に、仕切壁部25の近位端部よりも近位側に存在している。また、図2(b)及び図2(c−5)〜(c−7)に示すように、遷移領域23bは、仕切壁部25を近位側に延長させた範囲を通るように形成されている。また、遷移領域23bの軸線Lに対する傾斜角度は、鋭角であれば任意であるが、吸引された血栓の近位端部への排出のし易さ及び剛性のバランスの観点から、45°以下であることが好ましく、1°〜10°であることがより好ましい。
【0054】
なお、上記構成のカテーテル本体11は、例えば、外側管部21、内側管部23及び仕切壁部25を有するカテーテルチューブを、金型などを利用して成形し、その後に外側管部21の壁を、吸引口14,15を生じさせるように切除することで、形成することができる。また、外側管部21、内側管部23、仕切壁部25及び吸引口14,15の各形状に対応した金型を利用して、これら各部位を有するカテーテル本体11をまとめて形成する方法が考えられる。また、カテーテル本体11を軸線方向に分割するようにしたパーツをそれぞれ形成し、それらを軸線方向に並べて連結させることを通じて、カテーテル本体11を形成することができる。
【0055】
次に、本吸引カテーテル10の作用を踏まえながら、当該吸引カテーテル10の使用方法について図4を参照しながら説明する。
【0056】
図4(a),(b−1)〜(b−3)は吸引カテーテル10の使用方法を説明するための説明図である。なお、図4では、説明の便宜上、ガイドワイヤ用ルーメン22及びそれに付随する内側管部23の構成を省略している。
【0057】
先ず血管内に挿入されたシースイントロデューサ(図示略)にガイディングカテーテル(図示略)を挿通する。次いで、ガイドワイヤGを、近位端開口22b(図4では図示略)を通じてガイドワイヤ用ルーメン22内に挿通するとともに、ガイディングカテーテル内に挿通し、治療対象となる血管BVにおいて血栓TH1が存在する治療対象箇所を越える位置まで挿入する。続いて、ガイドワイヤGに沿って吸引カテーテル10を、X線透視下において、押し引き又は捻り操作を加えながら治療対象箇所まで挿入する。これにより、図4(a)に示すように、吸引口14,15が血栓TH1と対面することとなる。
【0058】
この場合に、ガイドワイヤ用ルーメン22は、吸引カテーテル10の遠位端部から吸引口14,15及び仕切壁部25よりも近位側の位置に亘って吸引カテーテル10の軸線上に存在している。これにより、軸周りの剛性が均等なものとなり、吸引カテーテル10が軸線を基準として一方のカテーテル壁部側に引っ張られてしまうことが抑制される。よって、吸引カテーテル10の挿入作業の容易化が図られる。
【0059】
その後、吸引カテーテル10のハブ12を介して接続された吸引具を動作させることにより、吸引用ルーメン13に負圧が付与され、血栓TH1の吸引除去が行われる。この場合に、吸引口14,15が軸周りに複数形成されていることにより、血管BVにおいて対向する位置に複数の血栓TH1が存在している場合であっても、それら血栓TH1をまとめて吸引除去することが可能となる。また、吸引カテーテル10を挿入していく過程で、当該吸引カテーテル10が血管BVの所定の血管壁に偏倚した位置に配置されて、複数の吸引口14,15のうち一方が血管壁により塞がれてしまうことが想定されるが、この場合であっても他方は血管壁により塞がれない。したがって、このような状況であっても血栓TH1の吸引除去を行うことが可能である。
【0060】
また、各吸引口14,15の間には仕切壁部25が形成されているが、ガイドワイヤ用ルーメン22は当該仕切壁部25の幅方向の中央を通るようにして形成されている。そして、吸引作業は、ガイドワイヤ用ルーメン22にガイドワイヤGを通した状態で行われる。これにより、仕切壁部25がガイドワイヤGによって補強され、上記吸引作業時に各吸引口14,15の一方が仕切壁部25により塞がれてしまうことが抑制される。
【0061】
また、ガイドワイヤ用ルーメン22は仕切壁部25よりも近位側に当該ルーメン22を軸線上に存在している状態から近位端開口22bに向けて遷移させる遷移領域23bを備えているが、当該遷移領域23bは、仕切壁部25を近位側に延長させた範囲を通るように形成されている。これにより、遷移領域23bを設けた構成において、吸引用の実質的な空間を極力広く確保することが可能となり、血栓TH1を吸引カテーテル10の近位側へ適切に移動させることが可能となる。
【0062】
ここで、吸引除去の対象となる血栓の大きさ等は様々であり、例えば図4(b−1)に示すように、比較的大きなサイズの血栓TH2が吸引除去の対象となることが想定される。この場合、図4(b−2)に示すように、当該血栓TH2を吸引した第1吸引口14が当該血栓TH2により塞がれてしまうことが懸念される。この状況で、吸引用ルーメン13に対する負圧の付与を終了してしまうと、当該血栓TH2は第1吸引口14から吸引用ルーメン13外へと移動し、血管BVの更なる末梢側へと流れていってしまうことが懸念される。また、吸引用ルーメン13に負圧を付与したまま吸引カテーテル10の生体内からの抜き取り操作を行うことも考えられるが、この場合であっても、上記負圧は例えば1気圧といった程度であるため、抜き取り操作の途中で血栓TH2が血管BV内に落下してしまう可能性はある。
【0063】
これに対して、一対の吸引口14,15の間には、仕切壁部25が形成されていることにより、当該血栓TH2が第2吸引口15側へ入り込もうとしても、それが仕切壁部25により抑制される。これにより、一対の吸引口14,15がまとめて閉塞されてしまうことが抑制される。そして、上記のように第2吸引口15が塞がれていないことにより、当該第2吸引口15を通じた吸引は継続することとなる。そうすると、当該第2吸引口15を通じた血液の流れが吸引用ルーメン13に生じ、さらにその流れの影響によって、上記のように第1吸引口14を塞いでいる血栓TH2に対して近位側へ移動する力が作用することが期待される。これにより、図4(b−3)に示すように、当該血栓TH2が近位側へと移動し、当該血栓TH2の吸引除去が完了する。ちなみに、仕切壁部25には、第1吸引口14から通じる空間と第2吸引口15から通じる空間とを連通させるための孔部が形成されていないため、血栓TH2が仕切壁部25に引っ掛かりづらくなる。
【0064】
以上詳述した本実施の形態によれば、以下の優れた効果を奏する。
【0065】
吸引カテーテル10の内部に、第1吸引口14から通じる空間と第2吸引口15から通じる空間とを仕切る仕切壁部25を備えていることにより、血栓の吸引除去に際して当該血栓により第1吸引口14及び第2吸引口15のうち一方が塞がれたとしても、他方を利用して血栓の吸引除去を継続することが可能となる。よって、血栓の吸引除去を適切に行うことが可能となる。
【0066】
また、第1吸引口14から通じる空間及び第2吸引口15から通じる空間は、仕切壁部25よりも近位側において吸引カテーテル10内の同一の空間に連通されている。これにより、第1吸引口14及び第2吸引口15のうち一方が塞がれたとしても、他方を通じた吸引が継続され、塞がれた箇所に対して近位側にて連通した箇所において流体の流れが生じる。よって、上記塞いでいる血栓に対して近位側へと移動する力が付与されることが期待され、当該血栓を近位側へと移動させることが可能となる。
【0067】
特に、仕切壁部25の近位端部は、軸線方向において、第1吸引口14及び第2吸引口15の近位端部と同一の位置に存在しているため、第1吸引口14及び第2吸引口15のうち一方を塞いだ血栓によって他方までもが塞がれてしまうことを抑制しながら、当該他方の吸引口側へと血栓の一部を積極的に入り込ませるようにすることが可能となる。よって、当該他方の吸引口を通じて吸引が継続された場合に当該血栓に近位側へと移動させる力が付与され易くなり、当該血栓を近位側へと移動させることが可能となる。
【0068】
第1吸引口14及び第2吸引口15よりも遠位側に延在するようにしてガイドワイヤ用ルーメン22を備えており、当該ガイドワイヤ用ルーメン22は、その少なくとも一部が仕切壁部25内を通るようにして形成されているため、ガイドワイヤ用ルーメン22にガイドワイヤGが通されている状態においては、当該ガイドワイヤGにより仕切壁部25を補強することが可能となる。よって、吸引カテーテル10を目的箇所に挿入する場合の作業時や、吸引作業時において、仕切壁部25が第1吸引口14及び第2吸引口15のうち一方を塞いでしまうといった不都合の発生が抑制される。
【0069】
(第2の実施の形態)
図5に示す吸引カテーテル30では、仕切壁部25の近位端部の位置が、一対の吸引口14,15の近位端部よりも遠位側に存在している。但し、仕切壁部25の近位端部の位置は、吸引口14,15の軸線方向の中央位置よりも当該吸引口14,15の近位端側となっており、さらに吸引口14,15の近位端部付近となっている。当該近位端部付近とは、吸引口14,15の近位端部と仕切壁部25の近位端部との間の軸線方向の距離が、吸引口14,15の近位端部における吸引用ルーメン13の内径R(例えば0.5mm〜2.5mm)に対して120%以下となることである。これにより、第1吸引口14から吸引された血栓により第2吸引口15が塞がれないようにすることが可能となる。また、より好ましくは、100%以下である。なお、本吸引カテーテル30は、上記吸引カテーテル10に対して、上記仕切壁部25の近位端部の位置のみが相違し、他の構成は同一である。
【0070】
(第3の実施の形態)
図6に示す吸引カテーテル40は、仕切壁部25の近位端部の位置が、一対の吸引口14,15の近位端部よりも近位側に存在している。但し、仕切壁部25の近位端部の位置は、吸引口14,15の近位端部付近となっている。当該近位端部付近とは、吸引口14,15の近位端部と仕切壁部25の近位端部との間の軸線方向の距離が、吸引口14,15の近位端部における吸引用ルーメン13の内径R(例えば0.5mm〜2.5mm)に対して120%以下となることである。これにより、第1吸引口14から吸引された血栓により当該第1吸引口14が塞がれたとしても、第2吸引口15を通じた吸引の継続により当該血栓を近位側に移動させることが可能となる。また、より好ましくは、100%以下である。なお、本吸引カテーテル40は、上記吸引カテーテル10に対して、上記仕切壁部25の近位端部の位置のみが相違し、他の構成は同一である。
【0071】
(第4の実施の形態)
図7に示す吸引カテーテル50は、一対の吸引口14,15の軸線方向の長さ寸法が相違している。この場合、これら吸引口14,15の近位端部の各位置は、軸線方向において相互に同じ位置となっているのに対して、これら吸引口14,15の遠位端部の各位置は、軸線方向において相互に異なる位置となっている。この場合であっても、仕切壁部25の近位端部は、各吸引口14,15の近位端部と軸線方向において同一の位置となっている。
【0072】
上記のように吸引口14,15のサイズを変更した構成であっても、これら吸引口14,15の近位端部の軸線方向における位置を揃えることで、上記吸引カテーテル10にて説明した血栓の吸引効果を一対の吸引口14,15の両方に対して均等に生じさせることが可能となる。また、上記吸引カテーテル10にて説明した血栓の吸引効果を生じさせる上での仕切壁部25の設計の容易化が図られる。
【0073】
なお、本吸引カテーテル50は、上記吸引カテーテル10に対して、上記一対の吸引口14,15間のサイズが異なる点についてのみ相違し、他の構成は同一である。また、上記吸引カテーテル50に対して、上記第2の実施の形態や、上記第3の実施の形態における仕切壁部25の近位端部の位置に係る構成を適用してもよい。
【0074】
(第5の実施の形態)
図8に示す吸引カテーテル60は、一対の吸引口14,15の軸線方向の長さ寸法が相違している。この場合、これら吸引口14,15の近位端部の各位置が、軸線方向において相互に異なる位置となっているとともに、これら吸引口14,15の遠位端部の位置も、軸線方向において相互に異なる位置となっている。詳細には、第1吸引口14の遠位端部は、第2吸引口15の遠位端部よりも遠位側に存在しているとともに、第1吸引口14の近位端部は、第2吸引口15の近位端部よりも近位側に存在している。
【0075】
上記構成において、仕切壁部25の近位端部の位置は、第1吸引口14の近位端部よりも遠位側であって、第2吸引口15の近位端部よりも近位側である位置に設定されている。これにより、上記吸引カテーテル10にて説明した血栓の吸引効果を一対の吸引口14,15の両方に対して生じさせることが可能となる。
【0076】
なお、本吸引カテーテル60は、上記吸引カテーテル10に対して、上記一対の吸引口14,15間のサイズが異なる点、及び仕切壁部25の近位端部の位置に係る構成についてのみ相違し、他の構成は同一である。
【0077】
また、仕切壁部25の近位端部の位置は、上記のものに限定されることはなく、例えば仕切壁部25の近位端部の位置が、第2吸引口15の近位端部と軸線方向において同一の位置に設定されていてもよく、第1吸引口14の近位端部と軸線方向において同一の位置に設定されていてもよい。
【0078】
(第6の実施の形態)
図9に示す吸引カテーテル70では、軸周りに複数の吸引口が形成されているだけでなく、軸線方向にも複数の吸引口が形成されている。具体的には、上記吸引カテーテル10と同一の第1吸引口14及び第2吸引口15の他に、第3吸引口71及び第4吸引口72が形成されている。第3吸引口71は、第1吸引口14よりも近位側において、当該第1吸引口14と同一線(軸線Lに平行)上に存在するように形成されている。第4吸引口72は、第2吸引口15よりも近位側において、当該第2吸引口15と同一線(軸線Lに平行)上に存在するように形成されている。
【0079】
また、第3吸引口71及び第4吸引口72は、第1吸引口14及び第2吸引口15と異なり、開口面が軸線Lに対して平行となっている。また、第3吸引口71及び第4吸引口72は、同一の形状及び同一のサイズとなっており、各近位端部は軸線方向において同一の位置となっているとともに各遠位端部は軸線方向において同一の位置となっている。
【0080】
上記構成において、仕切壁部25の近位端部は、第1吸引口14及び第2吸引口15の近位端部よりも近位側に存在しており、第3吸引口71及び第4吸引口72の近位端部付近に存在している。詳細には、第3吸引口71及び第4吸引口72の近位端部よりも遠位側であって、これら第3吸引口71及び第4吸引口72の軸線方向の中央位置よりもこれらの近位端部寄りの位置に存在している。
【0081】
上記構成によれば、上記吸引カテーテル10に比べて吸引口の数が多く設定されているとともに、吸引口を軸周りに複数備えるだけでなく、軸線方向に複数備える構成であるため、血栓が吸引用ルーメン13に吸引される際の経路が多様化する。また、第1吸引口14により吸引された血栓が当該第1吸引口14を塞いだとしても、第3吸引口71が塞がれなければ、第3吸引口71を通じた吸引が継続されることで、当該血栓を近位側に移動させることが可能となる。また、第1吸引口14だけでなく第3吸引口71を血栓が塞いだとしても、第2吸引口15や第4吸引口72を通じた吸引が継続されることで、当該血栓を近位側に移動させることが可能となる。これは、第2吸引口15及び第4吸引口72側についても同様である。
【0082】
なお、本吸引カテーテル70は、上記吸引カテーテル10に対して、上記第3吸引口71及び第4吸引口72を備える点、及び仕切壁部25の近位端部の位置に係る構成についてのみ相違し、他の構成は同一である。
【0083】
(他の実施の形態)
本発明は上記各実施の形態の記載内容に限定されず例えば次のように実施しても良い。
【0084】
(1)図10及び図11に示す変形例では、軸周りに3個の吸引口81〜83を備えている。この場合、図10に示す変形例では、仕切壁部25は、上記第1の実施の形態と同様に空間を2つに仕切るように形成されており、3個の吸引口81〜83のうち2つは、仕切壁部25を基準として一方の空間側に存在しており、1つは、他方の空間側に存在している。この場合であっても、複数の吸引口81〜83のうち、所定のものから吸引した血栓によりその吸引口が存在している側の空間が塞がれたとしても、他方の空間側において吸引が継続されることで、上記第1の実施の形態と同様に、当該血栓を近位側に移動させることが可能となる。
【0085】
また、図11に示す変形例では、仕切壁部84は、各吸引口81〜83に1対1で空間を形成するように形成されている。この場合であっても、いずれかの空間において血栓がつまったとしても、他の少なくとも一の空間にて吸引が継続されることにより、そのつまった血栓を近位側に移動させることが可能となる。
【0086】
つまり、少なくとも一の吸引口を有する空間と、少なくとも一の吸引口を有する他の空間とを仕切るように仕切壁部25が形成されていることにより、上記第1の実施の形態にて説明したような血栓の吸引効果を生じさせることが可能となる。
【0087】
(2)所謂RX型の吸引カテーテル10ではなく、ガイドワイヤ用ルーメン22の近位端開口22bが吸引カテーテルの近位端部に形成されたオーバーザワイヤ型の吸引カテーテルに本発明を適用してもよい。この場合、ガイドワイヤ用ルーメン22は、軸線方向の全体に亘って軸線L上又はその付近に存在するように形成されている構成とすることで、軸周りの剛性のバランスを良好なものとすることが可能となる。
【0088】
一方、吸引用ルーメン13の近位側において、軸線L上に存在するように補強用部材が配置される構成では、当該補強用部材を避けるために、一方の壁部側へと遷移させるための領域を形成してもよい。この場合、当該遷移させるための領域は、仕切壁部25を近位側に延長させた範囲を通るように形成することが好ましい。
【0089】
(3)仕切壁部25を吸引用ルーメン13における軸線方向の全体に亘って形成してもよい。この場合であっても、各吸引口14,15のうち一方を塞いだ血栓により他方までもが塞がれてしまうことが抑制される。この場合、仕切壁部25により仕切られた空間毎に吸引具の挿入口を設け、空間毎に血栓の吸引除去作業が行われるようにしてもよく、ハブ12内又はその手前にて各空間を連通させる空間を形成し、単一の吸引具により吸引除去作業が行われるようにしてもよい。
【0090】
(4)血栓を吸引除去するための実質的な空間を広く確保する上では、仕切壁部25の幅方向の一方に偏倚させた側にガイドワイヤ用ルーメン22が存在していてもよい。また、内側管部23を外側管部21の外周面に取り付けるといった構成とすることで、ガイドワイヤ用ルーメン22を吸引用ルーメン13の外部において当該ルーメン13と並列の関係となるように形成してもよい。
【0091】
(5)ガイドワイヤ用ルーメン22において途中領域23aと遷移領域23bとの境界が仕切壁部25の近位端部に存在している構成としてもよい。また、軸線L上に存在している状態からカテーテル壁部に偏倚している状態への遷移が、仕切壁部25内において行われる構成としてもよい。
【0092】
(6)仕切壁部25をメッシュ状に形成することで、仕切壁部25に、第1吸引口14から通じる空間と第2吸引口15から通じる空間とを連通させる孔部が形成されている構成としてもよい。仕切壁部25をメッシュ状に形成することで、吸引カテーテル10の遠位領域の柔軟性を高めることが可能となる。この場合、当該仕切壁部25の強度を高める上では、仕切壁部25を構成する線状要素をNi−Ti合金やステンレス等の金属により形成することが好ましい。
【0093】
(7)第1吸引口14及び第2吸引口15の少なくとも一方が、その開口面が軸線Lに対して直交するように形成されている構成としてもよい。この場合であっても、仕切壁部25を形成することで、各吸引口14,15の一方を塞いだ血栓により他方までもが塞がれてしまうことが抑制される。
【0094】
(8)本発明は、例えば冠状動脈、大腿動脈、肺動脈などの血管を治療するために用いられる吸引カテーテル以外にも、血管以外の尿管や消化管などの生体内の「管」や、「体腔」を治療するために用いられる吸引カテーテルにも適用可能である。
【符号の説明】
【0095】
10…吸引カテーテル、11…カテーテル本体、13…吸引用ルーメン、14…第1吸引口、15…第2吸引口、21…外側管部、22…ガイドワイヤ用ルーメン、23…内側管部、23a…途中領域、23b…遷移領域、25…仕切壁部、30,40,50,60,70…吸引カテーテル、81〜83…吸引口、84…仕切壁部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引口を介して異物を吸引除去する吸引カテーテルにおいて、
前記吸引口として、軸周りに異なる位置となるように形成された複数の吸引口を備え、
吸引カテーテルの内部に、前記複数の吸引口のうち第1吸引口から通じる空間と第2吸引口から通じる空間とを仕切る仕切壁部を備えていることを特徴とする吸引カテーテル。
【請求項2】
前記第1吸引口から通じる空間及び前記第2吸引口から通じる空間は、前記仕切壁部よりも近位側において前記吸引カテーテル内の同一の空間に連通されていることを特徴とする請求項1に記載の吸引カテーテル。
【請求項3】
前記仕切壁部の近位端部は、軸線方向において前記第1吸引口の近位端部と同一の位置又はその付近に存在していることを特徴とする請求項2に記載の吸引カテーテル。
【請求項4】
前記第1吸引口の近位端部及び前記第2吸引口の近位端部は、軸線方向の位置が同一の位置となっており、
前記仕切壁部の近位端部は、軸線方向においてそれら第1吸引口及び第2吸引口の近位端部と同一の位置又はその付近に存在していることを特徴とする請求項2に記載の吸引カテーテル。
【請求項5】
前記仕切壁部の近位端部は、前記第1吸引口の近位端部と同一の位置又はそれよりも遠位側に存在していることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1に記載の吸引カテーテル。
【請求項6】
前記第1吸引口及び前記第2吸引口は、吸引カテーテルの軸線を挟んで対峙するようにして形成されており、
前記仕切壁部は、前記第1吸引口と前記第2吸引口との間の中間位置において前記軸線を含むように形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の吸引カテーテル。
【請求項7】
前記第1吸引口及び前記第2吸引口よりも遠位側に延在するようにしてガイドワイヤ用ルーメンを備えており、
当該ガイドワイヤ用ルーメンは、その少なくとも一部が前記仕切壁部内を通るようにして形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載の吸引カテーテル。
【請求項8】
前記ガイドワイヤ用ルーメンは、前記仕切壁部の幅方向の中央を通るようにして形成されていることを特徴とする請求項7に記載の吸引カテーテル。
【請求項9】
前記仕切壁部は、吸引カテーテルの軸線を含むようにして形成されており、
前記ガイドワイヤ用ルーメンにおいて少なくとも前記仕切壁部内を通る領域は、前記軸線上又はその付近に存在するように形成されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の吸引カテーテル。
【請求項10】
前記ガイドワイヤ用ルーメンは、
その遠位端部から近位側に向けた所定範囲を構成するとともに、吸引カテーテルの軸線上又はその付近に存在する軸線上領域と、
当該軸線上領域に対して近位側にて連続するとともに、前記軸線に対して所定方向に存在する吸引カテーテルの壁部に偏倚した状態へと遷移させるために形成された遷移領域と、
を備え、
前記軸線上領域は、前記仕切壁部を通るように形成されているとともに、当該軸線上領域と前記遷移領域との境界部分が前記仕切壁部の近位端部又はそれよりも近位側に存在するように形成されていることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1に記載の吸引カテーテル。
【請求項11】
前記遷移領域は、前記仕切壁部を近位側に延長させた範囲を通るように形成されていることを特徴とする請求項10に記載の吸引カテーテル。
【請求項12】
前記第1吸引口及び前記第2吸引口は、その開口面が遠位側に向かうほど吸引カテーテルの軸線寄りとなるように当該軸線に対して傾斜させて形成されていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1に記載の吸引カテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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