説明

吸引回収装置

【課題】発泡スチロールの破片やレジ袋などの送風に舞いやすいものを吸引した場合において、送風に舞い流されて消音水槽まで到達し、真空ポンプ冷却用水の配管詰まりや真空ポンプ焼き付きが発生することを防ぐ吸引回収車を提供する。
【解決手段】回収対象物をタンクに吸引回収するための吸引ホース、タンク、該タンクから流れ出た空気を清浄化するサイクロン集塵器、該タンク内を真空状態に設定する真空ポンプ、該真空ポンプから流れ出た空気を取り込む消音水槽、および該真空ポンプを冷却させるために該消音水槽水を該真空ポンプに送る送水管構造を有する吸引回収装置において、該消音水槽内にある真空ポンプ冷却用水の取り出し口にカゴ状フィルターが取り付けられている吸引回収装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥、土砂、廃液等の産業廃棄物やその他の回収対象物を吸引回収する吸引回収装置であって、ブロア焼き付き防止のために水冷装置を有しており、その水冷装置に特定のフィルターが付設されている吸引回収装置、特にそのような装置を搭載した吸引回収車に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、吸引回収車は、汚泥、土砂、廃液等の産業廃棄物やその他の回収対象物を吸引回収するための吸引ホース、同ホースで吸引された回収対象物を貯蔵回収するタンクおよび該タンクを真空にするための吸引機構が一台の車体上に搭載されている。
従来の吸引回収車における吸引回収機構の概略は、汚泥等の産業廃棄物を回収するためのタンクにサイクロン集塵器が接続され、下流には該タンク内を真空状態に設定するブロワ式の真空ポンプ、さらにその下流には該真空ポンプから流れ出た空気の除塵と消音を行うための消音水槽が設けられ、さらに該消音水槽の水は該真空ポンプの冷却用水として利用されることから、消音水槽から真空ポンプに水を送る送水管が接続されている(特許文献1)。
【0003】
したがって、このような構成で真空ポンプを駆動させ吸引を開始すると、吸引ホースから吸入された回収対象物のうち、比重が大きく粒度の大きい固形物等の大部分(水あるいは湿潤物ではそのほぼ100%)がタンクもしくはサイクロン集塵器に貯留される。さらに、比重が軽い微細粉塵なども、更に下流に接続されている消音水槽が湿式集塵槽としての機能を兼ねていることから捕集され、最後に清浄な空気として排気管から排気されることとなる。
【0004】
しかしながら、発泡スチロールの破片やレジ袋などの送風に舞い易いものを吸引した場合においては、これら軽量回収物は送風に舞い流され、しばしば消音水槽まで到達することが確認されている。さらには、消音水槽水は真空ポンプ冷却用水を兼用するために、これらが真空ポンプ冷却水に混入することで、送水管詰まりなどの原因となり、結果的に冷却水が供給されず真空ポンプ焼き付きという問題を発生することとなる。
【0005】
この問題に対して、真空ポンプ冷却用消音水槽水の取り出し口に金網や各種フィルターを取り付けて配管詰まりを防ぐことが現場の知恵として考えられてきたが、フィルター自体の目詰まりを防ぐことはできず、各吸引回収車メーカーは実際的な効果は低いとして、このような方法を採用するに至っていない。
【0006】
【特許文献1】特許第4008719号公報(特許請求の範囲0002〜0004段落)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、発泡スチロールの破片やレジ袋などの送風に舞い易いものを吸引した場合においても、送風に舞い流されて消音水槽までこれら塵埃が到達して、真空ポンプ冷却用水の取り出し口を閉塞したり、同冷却用水の送水管詰まりを生じたり、さらには、真空ポンプの焼き付きが生じたりすることを長期的に亘って防ぐことが可能な吸引回収装置、特に吸引回収車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、回収対象物をタンクに吸引回収するための吸引ホース、タンク、該タンクから流れ出た空気を清浄化するサイクロン集塵器、該タンク内を真空状態に設定する真空ポンプ、該真空ポンプから流れ出た空気を取り込む消音水槽、および該真空ポンプを冷却させるために該消音水槽水を該真空ポンプに送る送水管構造を有する吸引回収装置において、該消音水槽内にある真空ポンプ冷却用水の取り出し口にカゴ状フィルターが取り付けられている吸引回収装置である。
【0009】
そして、好ましくは、カゴ状フィルターが水槽底辺と隙間を設けて取り付けられている上記の吸引回収装置である。また好ましくは、カゴ状フィルターが、樹脂モノフィラメント間が接合されていない状態で樹脂モノフィラメントが編組されているカゴ状メッシュ中空管の先端部が封止された構造体である上記の吸引回収装置である。
そして、好ましくは、上記吸引装置全体が車に搭載されている吸引回収車である。
さらに好ましくは、カゴ状フィルターが、樹脂モノフィラメント間が接合されていない状態で樹脂モノフィラメントが編組されて形成されているカゴ状メッシュ中空管の先端部が封止された構造体である上記の吸引回収装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回収対象物を吸引回収する真空ポンプが車載された吸引回収車において、発泡スチロールやレジ袋など、軽くて送風に舞い易いものは消音水槽まで到達し、その結果、真空ポンプ冷却用水にこれら塵埃が混入して冷却水用配管の詰まりを生じ、同詰まりによる真空ポンプ焼き付きが発生することを、真空ポンプ冷却用消音水槽水の取り出し口にカゴ状フィルターを装着することで、車体振動や水流により該フィルターが共振して、真空ポンプ冷却水の目詰まりを防ぎ、それにより真空ポンプ冷却水の供給不足を来たすことを防ぎ、長期間真空ポンプの焼き付きを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の吸引回収車および吸引回収機構の一例の一部断面と、矢印によって回収対象物または吸気による送排気方向を示す側面図である。
【0012】
【図2】本発明の、消音水槽内における車体振動や水流に共振し得るフレキシブルなカゴ状フィルターの取り付け形態の一例と高比重または低比重の混入ごみを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を図面により説明する。
図1は、本発明の吸引回収車1における吸引回収機構の一例を示すものであり、具体的には、回収対象物を吸引回収するための吸引ホース2とタンク3、タンクから流れ出た空気を一次除塵するサイクロン集塵器4を介し、タンク内を真空状態(正しくは減圧状態)に設定する真空ポンプ7と、最終除塵する消音水槽6と、真空ポンプ7と消音水槽6の間に設置された湿式集塵槽5から構成されるものであり、真空ポンプ7から流れ出た空気を取り込み最終除塵と消音を行う消音水槽6から、前記真空ポンプの加熱を防ぐ目的で消音水槽水8を真空ポンプに送る送水管9を有し、消音水槽内にある真空ポンプ冷却用消音水槽水の取り出し口10と水槽底辺との間に隙間11が形成されるように該取り出し口を設け、その状態でカゴ状フィルター12が取り付けられ、配管詰まりによる冷却水供給不足と真空ポンプ焼き付きを防ぐことができる。尚、図中の矢印は回収対象物または吸気による送排気の方向を示すものである。
【0014】
また、本発明において、もちろん、上記湿式集塵槽5のように、吸引ホース2、タンク3、サイクロン集塵器4、真空ポンプ7、消音水槽6および送水管9のほかに、これら装置、機器の間または前後に、回収効果、消音効果等を高めるための装置や機器が設置されていてもよい。
【0015】
図2は、本発明の吸引回収車における消音水槽内の構造であり、カゴ状フィルターの取り付け形態の一例を示すものである。カゴ状フィルターは、真空ポンプ冷却用消音水槽水の取り出し口に固定具13で固定され、且つ、水槽底辺と隙間を設けることで、車体の振動や水流に該フィルターは共振し、混入ゴミ14がカゴ状フィルターに貼り付くことを防ぎ、消音水槽水の水面上に低比重ゴミ15、水槽底辺に高比重ゴミ16を振り分け、長期間において真空ポンプ冷却水の目詰まりと供給不足を予防し、真空ポンプの焼き付きを防ぐことができる。
【0016】
本発明に用いるフィルターは、消音水槽水を真空ポンプの冷却水として利用するあらゆる吸引回収車に適用が可能であり、図1で示す一般的な吸引回収車構造以外にも水封式真空ポンプにおいても一般的に消音水槽水を同ポンプ内に導入する構造であることから好適に利用することができる。
【0017】
本発明に使用するフィルターは、三次元のカゴ状フィルターであることにより、消音水槽内に混入した発泡スチロールやレジ袋等の易浮遊物を長期間にわたり防除するものであり、さらにはフレキシブル性があることによりフィルターそのものが車体振動や水流に共振し、混入物を高比重と低比重に振り分けることでフィルター表面への付着を防ぎ、防除効果を長期間持続させることができる。
【0018】
本発明に用いるカゴ状フィルターは、その成型法および素材が限定されるものではなく、成型法においては、射出成型法、編組法など考えられ、素材においては、鋼線、樹脂線、竹ヒゴなどが考えられるが、車体振動や水流に共振しうるフレキシブル性を付与させることを考慮すると、カゴ状フィルターのカゴ目が固定化されていることは好ましくなく、素線の反発力で編組され保型されたカゴ状中空管の形態が好適である。
【0019】
素線の材質は、水中での使用とフレキシブル性を求める水冷フィルターの使用形態から、軽量、汎用性、耐水性、防蝕性を有すことが重要であり、代表的な素材として、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエステルテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド(Ny)、ビニロン(PVA繊維)など各種の樹脂モノフィラメントが好ましく、特にはポリエステル系(PET、PBT,PEN)モノフィラメントが最適である。そして、このようなモノフィラメントは、交差する点において両モノフィラメントは融着や接着等により固定されていないのが好ましい。
【0020】
冷却水フィルターは、吸引回収車に車載された消音水槽に収納可能であることが前提であることから、前駆体であるカゴ状中空管の形態も制限され、特には、外径太さ10mm〜40mm、モノフィラメント径0.5mm〜2.0mm、且つ、12〜48錘のブレーダーを使用し、長手方向に対して45度〜68度の角度範囲で編組され、線材で囲われた菱形カゴ目の空隙面積が0.5mm2〜8.0mm2である形態が最適である。また、カゴ状フィルターの長さとしては、取り付け部から100〜500mm消音水槽中に突出しているのが、表面に付着した易浮遊性塵を振動により表面から剥離させる上で好ましい。また、カゴ状フィルターの外径に対する長さの比としては、4〜20倍の範囲が同様に理由により好ましい。
【0021】
前駆体であるカゴ状中空管は、先端部を封止することで冷却水フィルターとしての形態をなすものであり、その封止方法は特に限定されるものではないが、カゴ状中空管の切断端部を押し縮め、キャップを被せて接着固定する方法が好適である。
【0022】
冷却水フィルター(カゴ状フィルタ−)の真空ポンプ冷却用消音水槽水の取り出し口は、その位置が冷却水フィルターをほぼ水平に取り付けた状態で、消音水槽の底辺に接しないことを配慮した位置であることが冷却水フィルターが振動して付着塵をフィルター表面から剥離させる上で好ましい。具体的には、消音水槽の底面から1〜10cm上に取り出し口下端が位置するように取り出し口を設けるのが好ましい。
【0023】
冷却水フィルターの真空ポンプ冷却用消音水槽水の取り入れ口への固定方法は、特に限定されるものではないが、消音水槽内に突起させたニップルなどを介しジュビリバンドなどで固定されることが、容易で汎用性があり好適である。さらには、ニップルがたこ足状に多数分岐した形態で、各々の先端に冷却フィルターが固定された場合には、フィルター部を覆う可能性のあるレジ袋の小片の様な混入物に対し、真空ポンプ冷却用消音水槽水の取り出し口をより一層ガードする構造となり、最適である。
【実施例】
【0024】
次に、本発明を実施例で説明する。
【0025】
実施例
直径1.2mmのポリエステル系モノフィラメント24本を、長手方向に対し横糸が62度で交合(横糸相互の交合角124度)する様に24錘ブレーダーで編組し、内径20mm、外径25mm、菱形カゴ目の空隙面積3.3mmの、該モノフィラメント同士の交点は固定されておらず、交点はフリーな状態のカゴ状中空管とし、長さ30cmで裁断した後、一端を内径15mm、長さ10mmのキャップに押し込んで接着し、フレキシブルなカゴ状フィルターとした。このカゴ状フィルターを、消音水槽内の真空ポンプ冷却水取り出し口に外径19mmのニップルを介しジュビリバンドで固定接続し、図1に示す吸引回収車に使用し、本発明の実施例とした。取り出し口の高さは、消音水槽の底面から上5cmのところに取り出し口下端がくるようにした。
【0026】
比較例
上記実施例において、カゴ状フィルターに置き換えて、消音水槽内の真空ポンプ冷却水取り出し口に外径19mmのニップル先端に40メッシュの金網を被せ、ニップル側に折り曲げた金網をジュビリバンドで固定した。
【0027】
実施例および比較例において、消音水槽内の水位を真空ポンプ冷却水取り出し口より20mm高の位置に合わせ、平均粒径4mmの発泡スチロールビーズを1リットル投入しバキューム装置および真空ポンプを駆動させ真空ポンプ冷却水の目詰まりを確認したところ、実施例においては、目詰まりによる流量減をは全く生じなかった。一方、比較例においては、駆動と同時に水面上の発泡スチロールビーズが吸い寄せられ、2分後には金網を完全に覆う状況となり、流量はマイナス87%と大きく減少した。
【0028】
実施例および比較例において、消音水槽内の水位を真空ポンプ冷却水取り出し口より20mm高の位置に合わせ、レジ袋30号(横300mm(マチ50mm+50mm)×縦380mm)を3枚投入しバキューム装置および真空ポンプを駆動させ真空ポンプ冷却水の目詰まりを確認したところ、実施例においては、2分後の目詰まりによる流量減はマイナス16%であった。比較例においては、2分後の目詰まりによる流量減はマイナス100%であり完全に流水が遮断されてしまった。
【0029】
実施例および比較例において、本発明の実施例が、発泡スチロールの破片やレジ袋に対し有効であることが示された。
【0030】
このように、本発明によれば、回収対象物を吸引回収する真空ポンプが車載された吸引車において、発泡スチロールの破片やレジ袋などの塵が送風に舞って真空ポンプ冷却用水に混入し冷却配管詰まりによる真空ポンプ焼き付きが発生することを、真空ポンプ冷却用消音水槽水の取り入れ口にカゴ状フィルターを装着することで、真空ポンプ冷却水の目詰まりと真空ポンプ冷却水の供給不足を予防し、長期間真空ポンプの焼き付きを防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、回収対象物を吸引回収する真空ポンプが車載された吸引回収車において、発泡スチロールの破片やレジ袋など比重が軽く送風に舞って真空ポンプ冷却用水に混入し冷却配管詰まりによる真空ポンプ焼き付きが発生することを、真空ポンプ冷却用消音水槽水の取り出し口に、車体振動や水流に共振し得るフレキシブルなカゴ状フィルターを装着することで、真空ポンプ冷却水の目詰まりや真空ポンプ冷却水の供給不足を予防し、長期間真空ポンプの焼き付きを防ぐことができ有用である。
【符号の説明】
【0032】
1 吸引回収車
2 吸引ホース
3 タンク
4 サイクロン集塵器
5 湿式集塵槽
6 消音水槽
7 ブロワ
8 消音水槽水
9 送水管
10 消音水槽水の取り出し口
11 隙間
12 カゴ状フィルター
13 固定具
14 混入ゴミ
15 低比重ゴミ
16 高比重ゴミ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収対象物をタンクに吸引回収するための吸引ホース、タンク、該タンクから流れ出た空気を清浄化するサイクロン集塵器、該タンク内を真空状態に設定する真空ポンプ、該真空ポンプから流れ出た空気を取り込む消音水槽、および該真空ポンプを冷却させるために該消音水槽水を該真空ポンプに送る送水管構造を有する吸引回収装置において、該消音水槽内にある真空ポンプ冷却用水の取り出し口にカゴ状フィルターが取り付けられている吸引回収装置。
【請求項2】
カゴ状フィルターが水槽底辺と隙間を設けて取り付けられている請求項1に記載の吸引回収装置。
【請求項3】
カゴ状フィルターが、樹脂モノフィラメント間が接合されていない状態で樹脂モノフィラメントが編組されているカゴ状メッシュ中空管の先端部が封止された構造体である請求項1または2に記載の吸引回収装置。
【請求項4】
吸引回収装置全体が車に搭載されている請求項1〜3のいずれかに記載の吸引回収装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−16610(P2011−16610A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161358(P2009−161358)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000104906)クラレプラスチックス株式会社 (52)
【Fターム(参考)】