説明

吸気装置

【課題】 エンジンに吸入される空気の冷却効率が高い吸気装置を提供する。
【解決手段】 吸気装置は、エンジンの燃焼室に空気を導く部分吸気通路44を有する吸気マニホールド40を備える。部分吸気通路44には、内部を流通する空気の熱を吸収可能な水冷式のインタークーラ60が設けられる。インタークーラ60の外壁604と吸気マニホールド40のサージタンク部41の内壁414との隙間は、パッキン100により封止される。そのため、部分吸気通路44を流通する空気は、上記隙間を通らずインタークーラ60が有する空気冷却通路65を通過して冷却され、エンジン本体2へ供給される。したがって、エンジンに吸入される空気の冷却効率を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンは、エンジン本体と補機類とからなる。この補機類の1つに、エンジン本体の燃焼室に空気を供給する吸気装置がある。この吸気装置は、空気取込口、取り込んだ空気中の異物を除去するエアクリーナ、取り込む空気量を調整するスロットル弁装置などで構成される。エンジン本体が複数の気筒を有する場合、空気をエンジン本体の各気筒に分岐させる吸気マニホールドが設けられる。これらの空気取込口、エアクリーナ、スロットル弁装置および吸気マニホールド等は、インテークパイプにより互いに接続され、全体としてエンジンの吸気通路を構成する。
【0003】
ところでエンジンに供給される空気は、温度が低いほど気筒内への吸気充填率が高まる。吸気充填率が高まると、より多くの燃料を燃焼させることが可能となり、エンジンの出力が増大する。よってエンジンの出力を増大させるため、取り込んだ空気を冷却してからエンジン本体に供給することが行われる。特許文献1に開示されるアフタークーラは、取り込んだ空気を冷却するために吸気マニホールド内に水冷式の熱交換器本体を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−324686公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のアフタークーラは、熱交換器本体の外壁と吸気マニホールドの内壁との間に隙間を有する。この隙間があると、吸気マニホールド内を流通する空気の一部は、熱交換器本体が有する所定の空気冷却通路を通らずに上記隙間を通ってエンジン本体へ供給される。よって、吸気マニホールド内を流通する空気の一部は冷却されずにエンジン本体に供給される。そのため、エンジン本体に吸入する空気の冷却が十分に行われず、ノッキングの発生等の恐れがある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、エンジンに吸入する空気の冷却効率が高い吸気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明による吸気装置は、エンジンの燃料室に空気を導く空気通路を有する通路部材を備える。空気通路には、空気通路を流通する空気の熱を吸収可能な水冷式の熱交換器本体が設けられる。熱交換器本体の外壁と空気通路を区画形成する通路部材の内壁との隙間は、シール部材により封止される。そのため、空気通路を流通する空気は、前記隙間を通過することなしに熱交換器本体が有する所定の空気冷却通路を通過してエンジン本体へ供給される。空気通路を流通する空気は、熱交換器本体内を流通する冷却水に熱を奪われ冷却される。したがって、エンジンに吸入する空気の冷却効率を高めることができ、エンジンでのノッキングの発生を抑制することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、空気通路を区画形成する通路部材の内壁は、空気通路の通路方向に交差する方向に延びる第1溝を有する。熱交換器本体は、この熱交換器本体の外壁から通路部材の第1溝内に突出し前記通路方向に交差する方向に延びる鍔部を形成する。シール部材は、熱交換器本体の鍔部に被せられ、通路部材の第1溝に嵌め込まれる。そのため、通路部材の内壁と熱交換器本体の外壁とのシール性を確保するとともに、シール部材の保持力を確保することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明では、シール部材は、熱交換器本体のうち空気通路の空気流出側に設けられる。そのため、空気通路に流入する空気の熱に起因するシール部材の熱害を抑制することができる。よって、コストの高い耐熱性のあるシール部材を使用する必要がない。
【0010】
請求項4に記載の発明では、シール部材は、熱交換器本体のうち空気通路の空気流入側に設けられる。そのため、エンジン本体の熱に起因するシール部材の熱害を抑制することができる。よって、コストの高い耐熱性のあるシール部材を使用する必要がない。
【0011】
請求項5に記載の発明では、熱交換器本体の外壁と空気通路を区画形成する通路部材の内壁との間には、シール部材から離間する位置において、2以上の屈曲部を有する隙間からなる迷路状間隙が形成される。そのため、熱交換器本体の外壁と通路部材の内壁との間を経由してシール部材に向かう空気の到達を遅らせ、空気の熱に起因するシール部材の熱害を抑制することができる。
【0012】
請求項6に記載の発明では、空気通路を区画形成する通路部材の内壁は、空気通路の通路方向に交差する方向に延びる第2溝を有する。熱交換器本体は、熱交換器本体の外壁から通路部材の第2溝内に突出し前記通路方向に交差する方向に延びる突起を形成する。これにより、通路部材の第2溝と熱交換器本体の突起との間に3つの屈曲部を有する迷路状間隙が形成される。
【0013】
請求項7に記載の発明では、熱交換器本体は、入口側タンク、中間タンク、出口側タンク、第1チューブおよび第2チューブを備える。入口側タンクおよび出口側タンクは、空気通路の幅方向の一方側に設けられる。中間タンクは、空気通路の幅方向の他方側に設けられる。入口側タンクと中間タンクとは、複数の第1チューブにより接続される。中間タンクと出口側タンクとは、複数の第2チューブにより接続される。第1チューブおよび第2チューブの内部には冷却水が流通可能である。熱交換器本体は、複数の第1チューブ間に形成される隙間と、複数の第2チューブ間に形成される隙間とからなる空気冷却通路を有する。空気通路を流通する空気は、空気冷却通路を通過するとき、第1チューブおよび第2チューブの内部の冷却水に熱を奪われることで冷却される。
【0014】
請求項8に記載の発明では、通路部材は、空気通路の幅方向の一方側に貫通孔を有する。熱交換器本体は、通路部材の貫通孔から通路部材内に挿入され通路部材に着脱可能に固定される。通路部材と通路部材前後に接続される部材とを分解することなく熱交換器本体を取り外すことができるので、熱交換器本体の保守作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態による吸気装置が適用されたエンジンの概念図である。
【図2】本発明の第1実施形態による吸気装置の吸気マニホールドの上面図である。
【図3】図2の吸気マニホールドをIII矢印方向から見た図である。
【図4】図2の吸気マニホールドをIV矢印方向から見た図である。
【図5】図2の吸気マニホールドをV矢印方向から見た図である。
【図6】図3のVI−VI線断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態による吸気装置のインタークーラの正面図である。
【図8】図7のインタークーラをVIII矢印方向から見た図である。
【図9】図7のIX−IX線断面図である。
【図10】本発明の第1実施形態による吸気装置のパッキンを示す図であって、(a)パッキンの正面図、(b)パッキンをXb矢印方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による吸気装置が適用されたエンジンを概念的に図1に示す。エンジン1は、エンジン本体2と、補機類としての吸気装置3、排気装置7、EGR装置8および過給機9とを備えている。エンジン本体2は、例えば複数の気筒20を有するレシプロ型エンジンである。
【0017】
吸気装置3は、空気取入口31、取り込んだ空気中の異物を除去するエアクリーナ32、取り込む空気量を調整するスロットル弁装置33、空気をエンジン本体2の各気筒に分岐させる吸気マニホールド40等から構成される。これらは複数のインテークパイプ34a〜34dにより互いに接続され、全体としてエンジン1の吸気通路を構成している。また吸気装置3は、空気冷却装置50を備えている。吸気装置3は、エンジン本体2での燃焼に必要な空気を供給する装置である。
【0018】
「通路部材」としての吸気マニホールド40は、サージタンク部41および多岐部42を有する。サージタンク部41は、インテークパイプ34dおよび多岐部42と比べて大きな内部空間を形成する。このサージタンク部41は、複数気筒への空気の供給量を均等化する、或いは空気の脈動を緩和する等の目的で設けられる。
【0019】
空気冷却装置50は、冷却水ポンプ51、「熱交換器本体」としてのインタークーラ60、およびサブラジエタ52等から構成される。空気冷却装置50は、エンジン本体2の気筒内への吸気充填率を高めるために空気を冷却する装置である。
冷却水ポンプ51は、空気冷却装置50内の冷却水を強制的に循環させる。冷却水ポンプ51とインタークーラ60とは、第1配管53により接続されている。インタークーラ60には、冷却水ポンプ51の吐出口から第1配管53を経由して冷却水が圧送される。
【0020】
インタークーラ60は、吸気マニホールド40のサージタンク部41内に設けられている。インタークーラ60を通過する空気は、このインタークーラ60内を流れる冷却水に熱を奪われることで温度が下がる。一方、インタークーラ60内を流れる冷却水は、空気から熱を奪うことで温度が上がる。インタークーラ60は、空気冷却装置50における吸熱部として機能する。
インタークーラ60とサブラジエタ52とは、第2配管54により接続されている。インタークーラ60から流出する冷却水は、第2配管54を経由してサブラジエタ52に送られる。
【0021】
サブラジエタ52は、このサブラジエタ52内を流れる冷却水の熱を放出する。空気の熱を奪うことで比較的高温となる冷却水は、サブラジエタ52内を流れるとき熱が奪われることで温度が下がる。サブラジエタ52には例えば車両走行風や図示しない冷却ファンからの風が当てられる。これにより、サブラジエタ52からの放熱が促進される。サブラジエタ52は、空気冷却装置50における放熱部として機能する。
サブラジエタ52と冷却水ポンプ51とは、第3配管55により接続されている。サブラジエタ52から流出する冷却水は、第3配管55を経由して冷却水ポンプ51に送られる。
【0022】
排気装置7は、エンジン本体2の各気筒からの排気を集合させる排気マニホールド71、排気を浄化する触媒コンバータ72、排気騒音を低減するマフラー73等から構成されている。これらは複数のエキゾーストパイプ74a〜74dにより互いに接続され、全体としてエンジン1の排気通路を構成している。排気装置7は、エンジン本体2において混合気が燃焼した後の排気を排出する装置である。
【0023】
EGR(Exhaust Gas Recirculation)装置8は、EGRホース81およびEGR弁装置82等から構成されている。EGRホース81は、エキゾーストパイプ74bとインテークパイプ34dとを接続する。EGR弁装置82は、エキゾーストパイプ74bからEGRホース81を経由してインテークパイプ34dに流入する排気量を調整する。EGR弁装置82は、例えば電磁駆動式であり、図示しない電子制御ユニットからの制御信号に基づいて作動する。EGR装置8は、排気の一部を吸気装置3に戻す装置である。EGR装置8は、排気の一部を吸気装置3へ戻すことでエンジン本体2の燃焼温度を下げる。これにより、燃費向上効果や排気中の窒素酸化物(NOx)低減効果などが得られる。
【0024】
過給機9は、排気駆動式であり、排気により回されるタービンホイール91、このタービンホイール91と一体に回転し空気を圧縮するコンプレッサホイール92等から構成されている。過給機9は、空気を圧縮することによりエンジン本体2の各気筒により多くの空気を送り込む、すなわち過給する装置である。過給機9は、空気量を増やすことで燃焼可能な燃料の量を増やし、エンジンの出力を増大させることができる。
【0025】
次に、吸気マニホールド40およびインタークーラ60の構成を、図2から図10に基づいてさらに詳しく説明する。
吸気マニホールド40のサージタンク部41は、中空直方体状に形成される箱形タンクである。サージタンク部41は、図3に矢印Wで示すように、図1に示すインテークパイプ34dからエンジン本体2に向かう空気の流通方向に対し直交する一方向、すなわち吸気マニホールド40の通路方向に対し直交する一方向(以下、「幅方向」という)に長手状をなす。
【0026】
サージタンク部41のインテークパイプ34d側には、吸気マニホールド40をインテークパイプ34dに接続するための接続部43が設けられる。この接続部43は、管継手の一部を構成する第1フランジ431を形成する。この第1フランジ431は、インテークパイプ34dに例えばボルト等により着脱可能に結合される。
接続部43は、サージタンク部41の内部空間に連通する吸入孔432を有する。この吸入孔432は、吸気マニホールド40を内外に貫通するように形成されており、インテークパイプ34d内とサージタンク部41の内部空間とを連通させる。
【0027】
多岐部42は、サージタンク部41のエンジン本体2側の開口部を塞ぐ板状をなす。多岐部42は、吸気マニホールド40をエンジン本体2に接続するための第2フランジ421を形成する。この第2フランジ421は、エンジン本体2のシリンダヘッドに例えばボルト等により着脱可能に固定される。
多岐部42は、エンジン本体2のシリンダヘッドが有する図示しない複数のインテークポートに対応する位置に複数の吐出孔422を有する。この吐出孔422は、吸気マニホールド40を内外に貫通するように形成されており、上記インテークポートとサージタンク部41の内部空間とを連通させる。
【0028】
吸気マニホールド40は、サージタンク部41、多岐部42および接続部43が一体に形成されてなる。接続部43の吸入孔432、サージタンク部41の内部空間、および多岐部42の複数の吐出孔422は、エンジン1の吸気通路を構成する空気通路44(図6参照)を形成する。インタークーラ60の主要部は、吸気マニホールド40に内蔵される。すなわち、吸気マニホールド40はインタークーラ内蔵型マニホールドである。
【0029】
インタークーラ60は、入口側タンク61、中間タンク62、出口側タンク63、クーラコア64、連結部材66、入口パイプ67、出口パイプ68および固定部69等から構成される。
入口側タンク61および出口側タンク63は、空気通路44の幅方向の一方側に設けられる箱形のタンクである。入口側タンク61と出口側タンク63とは、図3に矢印Fで示す空気通路44の通路方向において互いに離間して配置される。
【0030】
入口パイプ67は、入口側タンク61に接続される。入口側タンク61は、入口パイプ67を経由して図1に示す第1配管53に接続される。出口パイプ68は、出口側タンク63に接続される。出口側タンク63は、出口パイプ68を経由して図1に示す第2配管54に接続される。
中間タンク62は、空気通路44の幅方向の他方側に設けられる箱形のタンクである。
連結部材66は、クーラコア64を挟んだ両側に設けられ、入口側タンク61および出口側タンク63と中間タンク62とを連結する板状の部材である。
【0031】
クーラコア64は、入口側タンク61および出口側タンク63と中間タンク62との間に設けられる。このクーラコア64は、第1コア部64aと第2コア部64bとから構成される。
第1コア部64aは、入口側タンク61と中間タンク62とを接続し、空気通路44の幅方向に直交し且つ空気通路44の通路方向に直交する方向に並べられた複数の第1チューブ641と、これら複数の第1チューブ641間に取り付けられた複数のフィン642とからなる。第1チューブ641は、横断面形状が空気通路44の通路方向に長手状をなす細く扁平なパイプで構成される。フィン642は、例えば波状に曲げられた薄板からなるコルゲートフィン型が用いられる。なおフィン642は、便宜上、図3、図4および図7では一部が示され、図6では図示が省略されている。
【0032】
第2コア部64bは、出口側タンク63と中間タンク62とを接続し、空気通路44の幅方向に直交し且つ空気通路44の通路方向に直交する方向に並べられた複数の第2チューブ643と、これら複数の第2チューブ643間に取り付けられた複数のフィン642とからなる。第2チューブ643も第1チューブ641と同様に細く扁平なパイプで構成される。
クーラコア64は、複数の第1チューブ641間に形成される隙間、および複数の第2チューブ643間に形成される隙間からなる空気冷却通路65を有する。
【0033】
吸気マニホールド40のサージタンク部41の内壁414は、空気通路44の通路方向に直交する方向に延びる第1溝411および第2溝412を有する。
第1溝411は、インタークーラ60の多岐部42側に設けられる。第1溝411は、連結部材66に対向し空気通路44の幅方向に延出する一対の第1幅方向溝411aと、これら一対の第1幅方向溝411aの一端同士をつなぐ第1連結溝411bとで構成される。
【0034】
第2溝412は、インタークーラ60の接続部43側に設けられ、第1溝411と平行に形成される。第2溝412は、連結部材66に対向し空気通路44の幅方向に延出する一対の第2幅方向溝412aと、これら一対の第2幅方向溝412aの一端同士をつなぐ第2連結溝412bとで構成される。
【0035】
インタークーラ60は、インタークーラ60の外壁604から吸気マニホールド40の第1溝411内に突出し、空気通路44の通路方向に直交する方向に延びる「鍔部」としての第1鍔部601を形成する。この第1鍔部601と第1溝411との間には、空気通路44を区画形成するサージタンク部41の内壁414とインタークーラ60の外壁604との隙間を封止する「シール部材」としてのパッキン100が設けられている。パッキン100は、例えば合成ゴム(NBR)等からなる。パッキン100は、図10に示すように断面U字状をなし、第1鍔部601に被せられ、第1溝411に嵌め込まれる。パッキン100は、サージタンク部41の内壁414とインタークーラ60の外壁604との隙間のうち、EGR装置8による排気還流位置から遠い側に設けられる。
【0036】
インタークーラ60は、このインタークーラ60の外壁604から吸気マニホールド40の第2溝412内に突出し、空気通路44の通路方向に直交する方向に延びる「突起」としての第2鍔部602を形成する。この第2鍔部602と第2溝412との間には、空気通路44の通路方向でパッキン100に対し接続部43側すなわち前記排気還流位置側に離間する位置において、3つの屈曲部を有する隙間からなる迷路状間隙603が形成される。
【0037】
吸気マニホールド40のサージタンク部41は、図3に示すように空気通路44の幅方向の一方側に貫通孔413を有する。インタークーラ60は、サージタンク部41の外側から貫通孔413に挿入される。そして、入口側タンク61および出口側タンク63に一体に設けられたフランジ状の固定部69が吸気マニホールド40のサージタンク部41にボルト101により着脱可能に固定される。
【0038】
次に、吸気装置3の作動について説明する。
空気取入口31から吸入される空気は、エアクリーナ32およびスロットル弁装置33を通過して吸気マニホールド40内に流入する。サージタンク部41の内壁414とインタークーラ60の外壁604との隙間はパッキン100により封止されているため、吸気マニホールド40内に流入する空気は、その全てがインタークーラ60の空気冷却通路65を通過してエンジン本体2へ供給される。インタークーラ60は、空気冷却通路65を通過する空気を冷却する。つまり、空気通路44を通過する空気の熱は、フィン642等を経由して、第1チューブ641や第2チューブ643内を流通する冷却水に奪われる。これにより空気の温度が下げられる。
【0039】
第1実施形態の吸気装置3によると、インタークーラ60の外壁604と空気通路44を区画形成する吸気マニホールド40のサージタンク部41の内壁414との隙間は、パッキン100により封止される。そのため、空気通路44を流通する空気は、インタークーラ60が有する空気冷却通路65を通過してエンジン本体2へ供給される。したがって、空気を吸気装置3で十分に冷却することができ、エンジン本体2でのノッキングを抑制することができる。
【0040】
サージタンク部41の内壁414は、空気通路44の通路方向に直交する方向に延びる第1溝411を有する。インタークーラ60は、吸気マニホールド40の第1溝411内に突出し、空気通路44の通路方向に直交する方向に延びる第1鍔部601を形成する。パッキン100は、インタークーラ60の第1鍔部601に被せられ、吸気マニホールド40の第1溝411に嵌め込まれる。そのため、インタークーラ60の外壁604と吸気マニホールド40の内壁414とのシール性を確保するとともに、パッキン100の保持力を確保することができる。
【0041】
ここで、EGR装置8によって排気の一部が吸気通路に戻される場合、その排気の一部が比較的高温であるため吸気温度が高くなり、パッキン100の熱害が生じやすいという問題がある。それに対し、第1実施形態では、パッキン100は、サージタンク部41の内壁414とインタークーラ60の外壁604との隙間のうち、EGR装置8による排気還流位置から遠い側に設けられる。そのため、空気通路44に流入する空気の熱に起因するパッキン100の熱害を抑制することができる。よって、パッキン100にコストの高い耐熱性のフッ素ゴムを使う必要がない。
【0042】
サージタンク部41の内壁414は、空気通路44の通路方向に直交する方向に延びる第2溝412を有する。インタークーラ60は、吸気マニホールド40の第2溝412内に突出し、空気通路44の通路方向に直交する方向に延びる第2鍔部602を形成する。インタークーラ60の外壁604と吸気マニホールド40の内壁414との間には、パッキン100から空気通路44の通路方向に離間する位置に、3つの屈曲部を有する迷路状間隙603が形成される。そのため、インタークーラ60の外壁604と吸気マニホールド40のサージタンク部41の内壁414との間を経由してパッキン100に向かう空気の到達を遅らせることができる。よって、空気の熱に起因するパッキン100の熱害を一層抑制することができる。
【0043】
また第1実施形態では、インタークーラ60は、入口側タンク61、中間タンク62、出口側タンク63、第1チューブ641および第2チューブ643等から一体に構成され、複数の第1チューブ641間に形成される隙間と、複数の第2チューブ643間に形成される隙間とからなる空気冷却通路65を有する。空気通路44を流通する空気は、空気冷却通路65を通過するとき、第1チューブ641および第2チューブ643の内部の冷却水に熱を奪われることで冷却される。
【0044】
インタークーラ60は、空気通路44の幅方向に長手状をなす。このインタークーラ60は、吸気マニホールド40のサージタンク部41のうち空気通路44の幅方向の一方側に開口する貫通孔413からサージタンク部41内に挿入される。そして、サージタンク部41にボルト101により着脱可能に固定される。そのため、吸気マニホールド40をエンジン本体2から取り外すことなくインタークーラ60を取り外すことができる。したがって、インタークーラ60の保守作業が容易となる。
【0045】
(他の実施形態)
本発明の他の実施形態では、パッキンがインタークーラのエンジン本体とは反対側に設けられてもよい。これにより、エンジン本体からの熱に起因するパッキンの熱害を抑制することができる。
本発明の他の実施形態では、パッキンが2つ以上設けられてもよい。これにより、インタークーラの外壁と吸気マニホールドの内壁との間のシール性が十分に得られる。
【0046】
パッキンは、必ずしも第1実施形態のようにインタークーラ60の第1鍔部601と吸気マニホールド40の第1溝411との間に設けられる必要はない。要するに、インタークーラの外壁と空気通路を区画形成する通路部材の内壁との間を封止するように設けられればよい。
【0047】
第1実施形態では、吸気装置3は、高圧タイプのEGR装置8を備えるエンジン1に適用されていた。これに対し、本発明の他の実施形態では、低圧タイプのEGR装置を備えるエンジンに適用されてもよい。また、本発明の他の実施形態では、EGR装置を備えないエンジンに適用されることとしてもよい。
【0048】
第1実施形態では、吸気装置3は、過給機9を備える過給吸気式のエンジン1に適用されていた。これに対し、本発明の他の実施形態では、過給機を備えない自然吸気式のエンジンに適用されることとしてもよい。
【0049】
第1実施形態では、インタークーラ60は吸気マニホールド40内に設けられていた。これに対し、本発明の他の実施形態では、吸気通路を構成する他の部材にインタークーラが設けられることとしてもよい。たとえば、インテークパイプ等の途中にサージタンクが設けられ、そのサージタンクにインタークーラが設けられてもよい。
【0050】
本発明の他の実施形態では、インタークーラの入口が空気通路の幅方向の一方側に設けられ、インタークーラの出口が空気通路の幅方向の他方側に設けられてもよい。
本発明の他の実施形態では、エンジン本体は、単気筒のレシプロ型や、ロータリー型等の他の型式のものが採用されてもよい。
【0051】
以上、本発明は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 ・・・エンジン
100・・・パッキン(シール部材)
40 ・・・吸気マニホールド(通路部材)
411・・・第1溝
44 ・・・空気通路
60 ・・・インタークーラ(熱交換器本体)
601・・・第1鍔部(鍔部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの燃焼室に空気を導く空気通路を有する通路部材と、
前記空気通路に設けられ、前記空気通路を流通する空気の熱を吸収可能な水冷式の熱交換器本体と、
前記熱交換器本体の外壁と前記空気通路を区画形成する前記通路部材の内壁との隙間を封止するシール部材と、
を備えることを特徴とする吸気装置。
【請求項2】
前記空気通路を区画形成する前記通路部材の内壁は、前記空気通路の通路方向に交差する方向に延びる第1溝を有し、
前記熱交換器本体は、当該熱交換器本体の外壁から前記通路部材の前記第1溝内に突出し前記空気通路の通路方向に交差する方向に延びる鍔部を形成し、
前記シール部材は、前記熱交換器本体の前記鍔部に被せられ、前記通路部材の前記第1溝に嵌め込まれることを特徴とする請求項1に記載の吸気装置。
【請求項3】
前記シール部材は、前記熱交換器本体のうちの前記空気通路の空気流出側に設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の吸気装置。
【請求項4】
前記シール部材は、前記熱交換器本体のうちの前記空気通路の空気流入側に設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の吸気装置。
【請求項5】
前記熱交換器本体の外壁と前記空気通路を区画形成する前記通路部材の内壁との間には、前記シール部材から離間する位置において、2以上の屈曲部を有する隙間からなる迷路状間隙が形成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の吸気装置。
【請求項6】
前記空気通路を区画形成する前記通路部材の内壁は、前記空気通路の通路方向に交差する方向に延びる第2溝を有し、
前記熱交換器本体は、当該熱交換器本体の外壁から前記通路部材の前記第2溝内に突出し前記空気通路の通路方向に交差する方向に延びる突起を形成し、
前記迷路状間隙は、前記通路部材の前記第2溝と前記熱交換器本体の前記突起との間に形成されることを特徴とする請求項5に記載の吸気装置。
【請求項7】
前記熱交換器本体は、前記空気通路の幅方向の一方側に設けられる入口側タンクおよび出口側タンクと、前記空気通路の幅方向の他方側に設けられる中間タンクと、前記入口側タンクと前記中間タンクとを接続し内部を冷却水が流通可能な複数の第1チューブと、前記中間タンクと前記出口側タンクとを接続し内部を冷却水が流通可能な複数の第2チューブとを備え、前記複数の第1チューブ間に形成される隙間と前記複数の第2チューブ間に形成される隙間とからなる空気冷却通路を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の吸気装置。
【請求項8】
前記通路部材は、前記空気通路の幅方向の一方側に貫通孔を有し、
前記熱交換器本体は、前記貫通孔から前記通路部材内に挿入され当該通路部材に着脱可能に固定されることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の吸気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−225311(P2012−225311A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95456(P2011−95456)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)