説明

吸水体ブロック

【課題】 吸水性を損なうことなく取り扱いが容易な吸水体ブロックを提供する。
【解決手段】 吸水体ブロックは、例えば普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、アルミナセメント、高炉スラグセメント、シリカセメント、フライアッシュセメント等のセメント類、高炉スラグ、生石灰、消石灰、石膏等の水硬性無機材料をバインダーに用いてセラミック焼結体粒子を結着し、ブロック状にすることによって形成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑化設備等で利用する吸水体ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、緑化設備等では、セラミック焼結体粒子が吸水性を有することを利用し、該セラミック焼結体をプランター、植木鉢などの植物栽培容器に充填し、該植物栽培容器に水分を貯留させている(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開2004−298177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、セラミック焼結体粒子は、植物栽培容器からこぼれやすく、取り扱いがしづらいという問題がある。
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、吸水性を損なうことなく取り扱いが容易な吸水体ブロックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の吸水体ブロックの発明は、水硬性無機材料をバインダーに用いてセラミック焼結体粒子を結着してブロック状にしたことを要旨とする。
上記構成によれば、セラミック焼結体粒子を、バインダーを用いてブロック状にまとめている。このようにブロック状とすれば、粒子状のまま使用することに比べて取り扱いやすくなる。またバインダーに用いる水硬性無機材料は、その硬化物が多孔性であり、セラミック焼結体粒子の吸水性を阻害しない。
【0005】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の吸水体ブロックの発明において、更に、抗菌剤が添加されていることを要旨とする。
上記構成によれば、抗菌剤が添加されていることにより、植物栽培で利用する養液の腐敗を防止することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、吸水性を損なうことなく取り扱いを容易なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を具体化した一実施形態について説明する。
本発明の吸水体ブロックは、吸水性を有するセラミック焼結体粒子を、バインダーを用いて結着し、ブロック状とすることによって形成されている。該バインダーには、水硬性無機材料が使用されている。更に、該吸水体ブロックには、抗菌剤が添加されている。
【0008】
(水硬性無機材料)
本発明において使用される水硬性無機材料としては、例えば普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、アルミナセメント、高炉スラグセメント、シリカセメント、フライアッシュセメント等のセメント類、高炉スラグ、生石灰、消石灰、石膏等が例示される。上記水硬性無機材料 は水存在下において水和反応によって硬化する。
水硬性無機材料の添加量は、セラミック焼結体粒子100質量%に対し、10〜50質量%が望ましい。添加量が10質量%未満の場合、セラミック焼結体粒子を十分に結着することができず、添加量が50質量%を超える場合、セラミック焼結体粒子の含有量が低下することにより、吸水体ブロックの吸水性が低下してしまう。
【0009】
(抗菌剤)
本発明において使用される抗菌剤としては、例えば銀、銅、亜鉛などの金属単体、あるいは該金属の酸化物、亜酸化物、チオシアン酸化合物、炭酸化合物、塩化物、硫酸化物、該金属の合金などの無機金属化合物、該金属を担持したリン酸ジルコニウム、ゼオライト等が例示される。なかでも、銀単体、銀を担持したリン酸ジルコニウム等の銀系抗菌剤は、人体への安全性に優れ、抗菌速度も速く抗菌性能に優れ、安価であるため抗菌剤として望ましい。また銀系抗菌剤を用いる場合に酸化亜鉛を併用すると、抗菌作用の向上を図ることができるとともに、銀の酸化による変色を防止することができるのでなお望ましい。
抗菌剤の添加量は、水硬性無機材料100質量%に対し、0.1〜1.5質量%が望ましい。添加量が0.1質量%未満の場合、十分な抗菌性を得ることができず、添加量が1.5質量%を超える場合、抗菌性の顕著な向上は見られず、むしろ抗菌剤が無駄となってしまう。
【0010】
〔実施例1〕
以下に本発明の吸水体ブロックを植栽ユニットに適用した実施例1について、図1〜図3を用いて更に具体的に説明する。
図1に示す下トレイ1は平面形状正方形であって中央部には環状のスペーサー2が設置されており、四周壁3,3,3,3にはそれぞれ連通手段としての通水切欠き部4,4,4,4が形成されている。
上記下トレイ1の内側に上側から嵌着される上トレイ5は該下トレイ1の平面形状に対応して平面形状正方形であり、該下トレイ1よりも一周り小さなサイズに設定されており、中央部には木本類植栽用容器13を嵌着する嵌着孔6が設けられ、該嵌着孔6の周囲(トレイ四隅)には吸水体ブロック25を臨出せしめる複数個(4個)の臨出孔7,7,7,7が設けられており、該嵌着孔6上には該木本類植栽用容器13を嵌着する嵌着筒8が取付けられている。
即ち図3に示すように該嵌着筒8の下周縁には複数個の切欠き8Aが形成され、更に係止片9の複数個が差出されており、更に上周縁には係止突起9Aの複数個が差出されている。そして該上トレイ5の嵌着孔6の周縁には係止溝10Aを形成した係止具10の複数個が設けられており、該嵌着筒8を該上トレイ5の底面に載せ若干回転して該嵌着筒8の係止片9を該上トレイ5の嵌着孔6周縁の係止具10の係止溝10Aにそれぞれ係止せしめることによって、該嵌着筒8は該上トレイ5の嵌着孔6上に着脱可能に取付けられる。
【0011】
本発明の吸水体ブロック25は、多孔質セラミックを普通ポルトランドセメントで結着し、更に銀系抗菌剤を添加したものであり、円柱状に形成され、該下トレイ1の底面に複数個(4個)載置されている。該吸水体ブロック25の載置位置は該上トレイ5の臨出孔7,7,7,7に対応する位置とする。
【0012】
該上トレイ5の底面上には芝、セダム類、野草等の草本類Gを植栽した培地11が載置される。該培地11としてはヤシ繊維、麻繊維、パルプ、綿繊維等の植物繊維を材料としたマット、吸水性ゴム発泡体シート、セラミック発泡体シート等の吸水性のシートが使用され、中央部該上トレイ5の嵌着孔6に対応する位置に開孔12が設けられている。
【0013】
該上トレイ5の嵌着筒8の内側には木本類Tを植栽した木本類植栽用容器13が嵌着される。該木本類Tとしては、例えばアベリア、ツツジ、サツキ、クチナシ、コトネアスター、シャリンバイ、ジンチョウゲ、ナギイカダ、斑入りナワシログミ、ナンテン(オタフク・ササバ)、ヒイラギナンテン(冬咲き・ナリヒラ)、ヒサカキ、トキワマンサク、アカバナトキワマンサク、アセビ、レッドロビン、ツバキ、サザンカ、カクレミノ、ヤブコウジ、アメリカイワナンテン、ヒベリカム(ヒデコート・カリシナム)、ヒカゲツツジ、ゴモジュ、ニワデマリ、ハマヒサカキ、カンツバキ、カラタネオガタマ、ヒイラギモチ、サルココッカ、ミヤマシキミ、トキワレンゲ、マンリョウ、コニファー類、ヒメイチゴノキ、四川トキワガキ、ローズマリー等の常緑樹、アジサイ、ウツギ、オウバイ、コデマリ、シロヤマブキ、シモツケ、ニシキギ、バイカウツギ、ハギ、ボケ、レンゲツツジ、ミツバツツジ、コムラサキ、ムラサキシキブ、メギ、ユキヤナギ、レンギョウ、ニワフジ、ハクチョウゲ、ツクバネウツギ、コバノズイナ、トサミズキ、ヒュウガミズキ、ニワウメ、ハナズオウ、アブラチャン、ダンコウバイ、マンサク、ガクウツギ、ショウキウツギ、ブルーベリー、ムクゲ、アメリカザイフリボク、ホザキナナカマド等の落葉樹、アケビ、ムベ、イタビカズラ、カロライナジャスミン、スイカズラ、セイヨウキヅタ、ツルバラ、ツリガネカズラ、ツキヌキニンドウ、ツルアジサイ、ツルウメモドキ、アメリカツルマサキ、テイカカズラ、ナツヅタ、フユヅタ、ノウゼンカズラ、ハゴロモジャスミン、ビナンカズラ、フジ、常緑性クレマチス、クレマチス、ウンナンオウバイ、サッコウフジ、ナツユキカズラ、ハツユキカズラ、ウキツリボク、ツルハナナス、トラノツメ、イワガラミ、ツルニチニチソウ等の木性つる植物等がある。そして該木本類Tと該容器13との間には支持手段としてベルト16が差設され、該木本類Tが倒れないよう支持される。該ベルト16は4本の板部17,17,17,17を有し、中央には該木本類Tを通す通し孔18が設けられ、各板部17の末端には係止孔19が設けられており、該ベルト16の通し孔18に木本類Tの幹を通し、係止孔19を該嵌着筒8の係止突起9Aにそれぞれ係止する。
該容器13の下部には切欠き13Aの複数個が設けられており、更に該容器13内下部にはネットまたは防根シート14が張設されており、その上からは土壌、木粉、植物粉、セラミック粉等の人口土壌からなる培地Mが充填され、更に該容器13の切欠き13Aからは該容器13内の該培地Mに通じるシート状吸水体15が垂下される。
該容器13は該切欠き13Aの位置と該嵌着筒8の切欠き8Aの位置と合致するように該嵌着筒8内に嵌着される。
【0014】
上記植栽ユニットPUの下トレイ1に水(雨水)または肥料、栄養剤、殺菌剤等を溶解した養液Wを充填する。該水または養液Wは、吸水体ブロック25によって吸水されて草本類Gを植栽する培地11に供給される。なお、木本類Tを植栽する培地Mには、シート状吸水体15によって吸水された該水または養液Wが供給される。
【0015】
上記下トレイ1および上トレイ5は、謂わば「植物栽培容器」であり、吸水体ブロック25は、該植物栽培容器内に収容して使用される。該吸水体ブロック25は、該下トレイ1の底面に「載置」して使用するのであり、セラミック焼結体粒子を粒子状のまま「充填」する使用形態とは異なる。即ち、セラミック焼結体粒子を粒子状のまま使用すると、いくら均一に充填しようとも、植物栽培容器を傾けたり、水または養液Wが流動したりすることでセラミック焼結体粒子が不均一に片寄ったり、こぼれたりしてしまうが、吸水体ブロック25として使用すれば、載置位置を明確に定めることができ、またこぼれることもなく、取り扱いやすいものとなる。
【0016】
〔実施例2〕
次に、本発明の実施例2を図4〜図6を用いて具体的に説明する。
図4に示すように、実施例2においてトレイを構成するトレイ本体30は、平面形状正方形に形成されており、その中央部には木本類植栽用容器13aを載置するための第1凹部31が形成されている。
該トレイ本体30において、第1凹部31の外周には吸水体ブロック25aを収納するための第2凹部32が形成され、さらに該第2凹部32の外周には第3凹部33が形成されている。これら第1凹部31、第2凹部32及び第3凹部33は、それぞれの内部が連通溝34を介して繋がっており、第1凹部31、第2凹部32及び第3凹部33の内部を水、養液等が行き来したり、それぞれの内部に貯留されたりするようになっている。
【0017】
該木本類植栽用容器13aは、第1凹部31の内側に嵌合されることにより、該トレイ本体30に対して着脱自在に固定されており、その転倒を防止されている。さらに該トレイ本体30の四周壁において中央上部には、それぞれ連通手段としての通水切欠き部4(図示しない)が形成されるとともに、これら通水切欠き部4には、該トレイ本体30と他のトレイ本体とを連結するための連結用固定具20aが装着されている。そして、該木本類植栽用容器13aの底部には通水孔が設けてあり(図示しない)、第1凹部31に貯留されている水や養液が該通水孔を介して該木本類植栽用容器13aの土壌に供給されるようになっている。
【0018】
図5に示すように、実施例2において吸水体ブロック25aは、ドーナツ状(円筒状)に形成されている。そして該吸水体ブロック25aは、上記第2凹部32の内側に収納載置されるようになっている。
【0019】
図6に示すように、上記トレイ本体30において、第1凹部31、第2凹部32及び第3凹部33の内側には水や養液等が貯留されており、さらに第2凹部32の内側には上記吸水体ブロック25aが収納されている。また吸水体ブロック25aの上には樹脂製フィルムからなる防根シート35が敷かれており、さらに該防根シート35の上には培地11aが載置されており、この培地11a上に芝などの草本類Gが植栽されることとなる。そして、上記第2凹部32の内部に貯留された水、養液等は、該吸水体ブロック25aによって吸水されて草本類Gを植栽する培地11aに供給される。
一方、該トレイ本体30の中央で第1凹部31の内側に着脱自在に嵌合固定された木本類植栽用容器13aには、木本類Tが植栽されることとなり、上記第1凹部31の内部に貯留された水、養液等が該木本類植栽用容器13aの底部の通水孔を介して木本類Tに供給される。さらに木本類植栽用容器13aの上縁には、木本類Tが倒れないよう支持する支持手段として、平面形状星形の枠16aがその3箇所の頂点で着脱自在に固定されている。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の吸水体ブロックは、硬化物が多孔性となる水硬性無機材料をバインダーに用いてセラミック焼結体粒子を結着してブロック状にしたので、吸水性を損なうことなく取り扱い易いものに出来るから、産業上利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1の植栽ユニットの分解斜視図。
【図2】実施例1の植栽ユニットの中央側断面図。
【図3】実施例1における嵌着筒取付け構造の説明斜視図。
【図4】実施例2の植栽ユニットの分解斜視図。
【図5】実施例2の吸水体ブロックの斜視図。
【図6】実施例2の植栽ユニットの中央側断面図。
【符号の説明】
【0022】
1 下トレイ
5 上トレイ
8 嵌着筒
11、M 培地
25,25a 吸水体ブロック
30 トレイ本体
W 水または養液
T 木本類
G 草本類
PU 植栽ユニット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水硬性無機材料をバインダーに用いてセラミック焼結体粒子を結着してブロック状にしたことを特徴とする吸水体ブロック。
【請求項2】
更に、抗菌剤が添加されている請求項1に記載の吸水体ブロック。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−45016(P2009−45016A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214819(P2007−214819)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】