説明

吸水剤及びこれを用いた吸水体、並びに吸水剤の製造方法

本発明の吸水剤は、水溶性不飽和単量体を重合して得られる内部架橋構造を有し、(a)水不溶性無機粒子を10ppm以上1900ppm以下含むこと、(b)該吸水剤に含まれる、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合が5質量%以下であること、(c)4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)が18(g/g)以上であること、(d)該水不溶性無機粒子が該吸水性樹脂表面又はその近傍に存在すること、の条件を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水剤及びこれを用いた吸水体、並びに吸水剤の製造方法に関するものであり、詳細には、紙おむつや生理ナプキン、いわゆる失禁パッド等の衛生材料等に好適に用いることができる吸水剤及び吸水体、並びに吸水剤の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等の衛生材料に体液を吸収させることを目的として、パルプ等の親水性繊維と吸水性樹脂粒子とを構成材料とする吸水体が幅広く利用されている。この吸水体は、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等の衛生材料に体液を吸収させるために用いられる。
【0003】
近年、これら衛生材料には利便性向上のため薄型化が要求されている。そのため、吸水体において、かさ比重の小さい親水性繊維の比率を低くし、吸水性に優れ、かつ、かさ比重の大きい吸水性樹脂粒子の比率を高めている。これによって、吸水体中における吸水性樹脂粒子の使用量を高め吸水量等の物性を低下させることなく、衛生材料の薄型化を図っている。
【0004】
しかしながら、親水性繊維の比率を低下させたとしても必要最低限の量は必要であるため、さらに衛生材料を薄型化するためには、吸水性樹脂粒子の物性を向上させる必要がある。吸水性樹脂粒子の物性としては、例えば、遠心分離機保持容量、食塩水流れ誘導性、加圧下での吸収力、固定された高さ吸収、質量平均粒子径、液拡散速度等があり、実際に使用する上で、吸水性樹脂粒子は、それらの物性が所定の範囲内、若しくは優れていることが要求される。
【0005】
また、吸水性樹脂粒子の比率を高めた衛生材料をおむつ等として使用した場合には、吸水性樹脂粒子が水分を吸収することによって、ゲル状となり、ゲルブロッキングという現象を引き起こし得る。この現象により、衛生材料中の液の拡散性が低下することになる。
【0006】
そこで、このような吸水性樹脂粒子の物性向上又はゲルブロッキングの問題を解消するために、吸水性樹脂粒子に無機粒子を添加する方法が提案されている。上記方法によれば、吸水性樹脂粒子同士の間に無機粒子が介在することとなる。これにより、吸水性樹脂粒子同士が塊状になることを防止でき、ゲルブロッキングの問題を改善することができる。
【0007】
無機粒子を用いた吸水性樹脂粒子として、特許文献1には、粉体としての流動性が良好で、吸湿による粘着性に起因する作業性の低下もなく、かつ吸水性、保水性にも優れた吸水剤組成物を提供するために、架橋構造を有する水膨張性樹脂粉体と、疎水性超微粒子状シリカとからなる吸水剤組成物が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、流動性に優れるとともに、液吸収速度の速い高分子吸水剤組成物を提供するため、粗粒子状高分子吸水剤の表面に2次凝集状態の無機微粉末を付着させたことを特徴とする高分子吸水剤組成物が開示されている。
【0009】
また、特許文献3には、吸収速度及びゲルブロッキング性が改善された衛生用品用吸水性樹脂粒子として、アクリル酸及び/又はアクリル酸塩を主構成単位とするエチレン性不飽和単量体の架橋重合体であり、常温で液状の有機ポリシロキサンにより処理されてなる、改質された衛生用品用吸水性樹脂粒子が開示されている。
【0010】
また、特許文献4には、吸収速度、対湿ブロッキング性、さらに発塵性が改善された吸水性樹脂粒子として、吸水性樹脂の粒子がシリコーン系界面活性剤により処理されてなる、改質された吸水性樹脂粒子が開示されている。
【0011】
また、特許文献5には、吸湿下でのブロッキング性、作業性、加圧下の吸収特性に優れる吸水剤として、分散液のpHが7以上10以下でBET法による比表面積が50m/g以上の無機粉末と吸水性樹脂とからなる吸水剤が開示されている。
【0012】
また、特許文献6には、実際の使用において問題を生じることなく薄型化を達成できる吸水体を提供するために、吸収開始から30秒後における人口尿の加圧下吸収量が10(g/g)以下であり、吸水開始から30分後における人口尿の加圧下吸収量が20(g/g)以上である吸水性樹脂と親水性繊維とを含む吸水体が開示されている。
【0013】
また、特許文献7には、液の拡散性に優れ、かつ逆戻りの少ない吸水体を提供するために、生理食塩水を試験液とする吸収膨潤圧力が10000Pa以下であり、吸水開始から300秒後の吸収膨潤圧力が80000Pa以上である吸水性樹脂と親水性樹脂とを含む吸水体が開示されている。
【0014】
また、特許文献8には、吸水性樹脂を得るために、立体スペーサーを用いる技術が開示されている。
【0015】
また、特許文献9には、毛細吸引力と液透過性の両方の物性を併せ持つ吸水剤を提供するために、アクリル酸及び/又はその塩を含む単量体を架橋重合して得られた、不定形破砕状粒子の表面がさらに架橋処理されてなる吸水性樹脂粒子及び液透過性向上剤を含む粒子状吸水剤が開示されている。
【0016】
また、特許文献10には、消臭効果の向上と流動性向上のために、カルボキシル基を有するモノマーとヒュームドシリカを含有する吸水性樹脂組成物が開示されている。
【0017】
また、特許文献11には、吸水性樹脂を得るために、、吸水性樹脂に通液性向上剤を添加する技術が開示されている。
【特許文献1】特開昭56−133028号公報(昭和56年(1981)10月17日公開)
【特許文献2】特開昭64−4653号公報(昭和64年(1989)1月9日公開)
【特許文献3】特許第3169133号明細書(平成13年(2001)3月16日登録)
【特許文献4】特開平9−136966号公報(平成9年(1997)5月27日公開)
【特許文献5】特開2000−93792号公報(平成12年(2000)4月4日公開)
【特許文献6】特開2003−88551号公報(平成15年(2003)3月25日公開)
【特許文献7】特開2003−88553号公報(平成15年(2003)3月25日公開)
【特許文献8】米国特許出願公開第2002/0128618号明細書(平成14年(2002)9月12日公開)
【特許文献9】特開2004−261797号公報(平成16年(2004)9月24日公開)
【特許文献10】特表2003−500490号公報(平成15年(2003)1月7日公開)
【特許文献11】国際公開第2004/69915号パンフレット(平成16年(2004)8月19日公開)
【発明の開示】
【0018】
しかしながら、上記従来の技術では、吸水性樹脂の諸物性を満足し、かつ、吸水性樹脂の製造工程において粉塵量が抑制された吸水剤を提供することができないという問題点を有する。
【0019】
具体的には、吸水性樹脂を実際に使用する上で、遠心分離機保持容量、食塩水流れ誘導性、加圧下での吸収力、固定された高さ吸収、質量平均粒子径、液拡散性等の物性を良好な値で備えていることが吸水性樹脂に要求されるものの、従来の技術ではこれらの物性を十分満たすには至っていない。その一要因として、吸水性樹脂において重要な物性である遠心分離機保持容量と食塩水流れ誘導性とは、一方の物性が向上すれば他方の物性が低下する関係にあり、これらの物性を両立させ難いことが挙げられる。
【0020】
また、従来の技術において、無機粒子を吸水性樹脂に添加した場合、上記無機粒子に起因する粉塵が生じ得るという問題が新たに生じ得る。このような粉塵が生じた場合、吸水性樹脂を製造する工程において製造効率が低下する、吸水性樹脂の物性が低下する、又は安全衛生上の問題が生じる等の問題が生じることとなる。特に、無機粒子の使用量が吸水性樹脂に対し0.2質量%以上である場合には、用いる無機粒子の使用量が多いため粉塵が発生し易いという問題点がある。
【0021】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、優れた物性を備え、かつ、粉塵の生じ難い吸水剤及び吸水体、並びに吸水剤の製造方法を提供することにある。
【0022】
本発明の吸水剤は、上記課題を解決するために、水溶性不飽和単量体を重合して得られる内部架橋構造を有する吸水性樹脂粒子を含む吸水剤であって、下記(a)〜(d)の条件、
(a)水不溶性無機粒子を10ppm以上1900ppm以下含むこと、
(b)該吸水剤に含まれる、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合が5質量%以下であること、
(c)4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)が18(g/g)以上であること、
(d)該水不溶性無機粒子が該吸水性樹脂表面又はその近傍に存在すること、
を満たすことを特徴としている。
【0023】
本発明の吸水剤では、上記水不溶性無機粒子の含有量が10ppm以上990ppm以下であることが好ましい。
【0024】
本発明の吸水剤では、上記水不溶性無機粒子の少なくとも表面にアミノ基が存在していることが好ましい。
【0025】
本発明の吸水剤では、上記水不溶性無機粒子が二酸化ケイ素であり、該二酸化ケイ素の表面における残存シラノール基密度が1.7SiOH/nm以下であることが好ましい。
【0026】
本発明の吸水剤では、上記吸水剤の食塩水流れ誘導性(SFC)が30(10−7・cm・s・g−1)以上であることが好ましい。
【0027】
本発明の吸水剤では、4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)が20(g/g)以上30(g/g)以下であることが好ましい。
【0028】
本発明の吸水剤では、更に、少なくとも3価の水溶性多価金属塩を0.1質量%以上1質量%以下含むことが好ましい。
【0029】
本発明の吸水剤では、上記水溶性多価金属塩が、硫酸アルミニウムであることが好ましい。
【0030】
本発明の吸水剤では、上記吸水性樹脂粒子が、多孔質構造を有する粒子を含むことが好ましい。
【0031】
本発明の吸水剤では、質量平均粒子径が200μm以上500μm以下であり、且つ、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.20以上0.40以下であることが好ましい。
【0032】
本発明の吸水剤では、液拡散速度(LDV)が0.2(mm/sec)以上10.0(mm/sec)以下であることが好ましい。
【0033】
本発明の吸水剤では、摩擦帯電電荷が負電荷であることが好ましい。
【0034】
本発明の吸水剤では、吸水剤に含まれる粉塵量が、吸水剤の質量に対し300ppm以下であることが好ましい。
【0035】
本発明の吸水剤では、吸水剤に含まれる粉塵中のSiOの割合が50質量%以下であることが好ましい。
【0036】
本発明の吸水剤では、上記吸水性樹脂粒子に機械的ダメージを与えた後に、上記二酸化ケイ素と吸水性樹脂粒子とを混合する工程を含む製造方法により得られることが好ましい。
【0037】
本発明の吸水剤では、上記二酸化ケイ素と吸水性樹脂粒子とを混合した後に、上記二酸化ケイ素と吸水性樹脂粒子とを空気輸送する工程を含む製造方法により得られることが好ましい。
【0038】
また、本発明の吸水剤は、上記課題を解決するために、水溶性不飽和単量体を重合して得られる吸水性樹脂粒子を含む吸水剤であって、下記(A)〜(D)の条件、
(A)該吸水性樹脂粒子の表面近傍は、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する表面架橋剤によって架橋又は被覆されていること、
(B)該吸水性樹脂粒子は、その表面及びその近傍の少なくとも何れか一方に多価金属塩及び水不溶性無機粒子を含んでいること、
(C)該吸水剤の質量平均粒子径は200μm以上500μm以下であること、
(D)該吸水剤の全質量に対し、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合は5質量%以下であること、
を満たすことを特徴としている。
【0039】
本発明の吸水剤では、上記多価金属塩を吸水剤に対し、0.01質量%以上1質量%以下含むことが好ましい。
【0040】
本発明の吸水剤では、上記水不溶性無機粒子を吸水剤に対し、0.001質量%以上0.4質量%以下含むことが好ましい。
【0041】
本発明の吸水剤では、上記水不溶性無機粒子が、二酸化ケイ素であることが好ましい。
【0042】
本発明の吸水剤では、遠心分離機保持容量が30(g/g)以上50(g/g)未満であり、且つ、食塩水流れ誘導性(SFC)が10(10−7・cm・s・g−1)以上であることが好ましい。
【0043】
本発明の吸水剤では、吸水剤に含まれる粉塵中のSiOの割合が50質量%以下であることが好ましい。
【0044】
また、本発明の吸水体は、上記課題を解決するために、上記吸水剤を含むことを特徴としている。
【0045】
また、本発明の吸水剤の製造方法は、上記課題を解決するために、水溶性不飽和単量体を重合して得られる吸水性樹脂粒子を含む吸水剤の製造方法であって、該吸水性樹脂粒子の質量平均粒子径は200μm以上500μm以下であり、該吸水性樹脂粒子の表面近傍を、ヒドロキシル基を少なくとも一つ有する表面架橋剤によって架橋又は被覆する工程と、該表面架橋剤によって架橋又は被覆後に、多価金属塩と水不溶性無機粒子とを、該吸水性樹脂粒子と混合する工程とを含むことを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。また、本発明では重量及び質量、重量%及び質量%は同様の意味であり、文中での使用は質量及び質量%に統一する。また、範囲を示す「A〜B」は、A以上B以下であることを意味する。
【0047】
まず、以下で使用する略語について定義する。CRCは遠心分離機保持容量を、SFCは食塩水流れ誘導性を、AAPは4.83kPaの圧力に対する吸収力を、FHAは固定された高さ吸収を、LDVは液拡散速度を、D50は質量平均粒子径を、σζは粒度分布の対数標準偏差を、食塩水は塩化ナトリウム水溶液を、1ppmは0.0001質量%を、それぞれ示すものとする。
【0048】
本発明の一実施形態について以下に説明する。本実施の形態に係る吸水剤は吸水性樹脂粒子を含んでおり、吸水性樹脂粒子は水不溶性無機粒子(以下、「水不溶性無機微粒子」と記載することもある)を含んでいるものである。
【0049】
<吸水性樹脂粒子>
本実施の形態で用いられる吸水性樹脂粒子は水溶性不飽和単量体を重合して得ることができる水不溶性水膨潤性ヒドロゲル形成性重合体(以下、吸水性樹脂とも言う)の粒子である。
【0050】
水不溶性水膨潤性ヒドロゲル形成性重合体の具体例としては、部分中和架橋ポリアクリル酸重合体(米国特許第4625001号明細書、米国特許第4654039号明細書、米国特許第5250640号明細書、米国特許第5275773号明細書、欧州特許第456136号明細書等)、架橋されて部分的に中和された澱粉−アクリル酸グラフトポリマー(米国特許第4076663号明細書)、イソブチレン−マレイン酸共重合体(米国特許第4389513号明細書)、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体のケン化物(米国特許第4124748号明細書)、アクリルアミド(共)重合体の加水分解物(米国特許第3959569号明細書)、アクリロニトリル重合体の加水分解物(米国特許第3935099号明細書)等が挙げられる。
【0051】
本実施の形態に係る吸水性樹脂粒子は、アクリル酸及び/又はその塩を含む単量体を重合して得られるポリアクリル酸(塩)系架橋重合体からなる吸水性樹脂の粒子であることが好ましい。本実施の形態においてポリアクリル酸(塩)系架橋重合体とは、アクリル酸及び/又はその塩を50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上含む単量体を重合して得られる架橋重合体である。
【0052】
また、架橋重合体中の酸基は、その50モル%以上90モル%以下が中和されていることが好ましく、60モル%以上80モル%が中和されていることがより好ましい。ポリアクリル酸塩としてはナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等を例示することができる。好ましくはナトリウム塩である。塩を形成させるための中和は重合前に単量体の状態で行ってもよいし、あるいは重合途中や重合後に重合体の状態で行ってもよいし、それらを併用してもよい。
【0053】
本実施の形態に係る吸水性樹脂粒子として好ましく用いることができるポリアクリル酸(塩)系架橋重合体としては、主成分として用いられる単量体(アクリル酸及び/又はその塩)に併用して、必要により他の単量体を共重合させたものであってもよい。他の単量体の具体例としては、メタアクリル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸等のアニオン性不飽和単量体及びその塩;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン、N−ビニルアセトアミド等のノニオン性の親水基含有不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びそれらの四級塩等のカチオン性不飽和単量体等を挙げることができる。これらアクリル酸及び/又はその塩以外の単量体の使用量は、全単量体中0モル%以上30モル%以下であることが好ましく、より好ましくは0モル%以上10モル%以下である。
【0054】
本実施の形態で用いられる吸水性樹脂粒子は、内部架橋構造を有する架橋重合体である。上記吸水性樹脂粒子に内部架橋構造を導入する方法として、架橋剤を使用しない自己架橋によって導入する方法、1分子中に2個以上の重合性不飽和基及び/又は2個以上の反応性基を有する内部架橋剤を共重合又は反応させて導入する方法等を例示することができる。好ましくは、内部架橋剤を共重合又は反応させて導入する方法である。
【0055】
これらの内部架橋剤の具体例としては、例えば、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレ−ト、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル;エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類;エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0056】
これらの内部架橋剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を使用してもよい。中でも、得られる吸水性樹脂粒子の吸水特性等から、2個以上の重合性不飽和基を有する化合物を内部架橋剤として必須に用いることが好ましく、その使用量としては全単量体に対して0.005モル%以上3モル%以下が好ましく、より好ましくは0.01モル%以上1.5モル%以下、最も好ましくは0.05モル%以上0.2モル%以下である。
【0057】
重合に際しては、澱粉−セルロース、澱粉−セルロースの誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)架橋体等の親水性高分子や、次亜リン酸(塩)等の連鎖移動剤を添加してもよい。
【0058】
また、上記したアクリル酸及び/又はその塩を主成分とする単量体を重合するに際しては、バルク重合、逆相懸濁重合、沈澱重合を行うことも可能であるが、性能面や重合の制御の容易さから、単量体を水溶液にする水溶液重合を行うことが好ましい。係る重合方法は、例えば、米国特許第4625001号明細書、米国特許第4769427号明細書、米国特許第4873299号明細書、米国特許第4093776号明細書、米国特許第4367323号明細書、米国特許第4446261号明細書、米国特許第4683274号明細書、米国特許第4690996号明細書、米国特許第4721647号明細書、米国特許第4738867号明細書、米国特許第4748076号明細書、米国特許出願公開2002/40095号明細書等に記載されている。
【0059】
重合を行うにあたり、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のラジカル重合開始剤、紫外線や電子線等の活性エネルギー線等を用いることができる。また、ラジカル重合開始剤を用いる場合、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L−アスコルビン酸等の還元剤を併用してレドックス重合としてもよい。これらの重合開始剤の使用量は、全単量体に対して、0.001モル%以上2モル%以下が好ましく、より好ましくは0.01モル%以上0.5モル%以下である。
【0060】
重合ゲルや懸濁粒子等の乾燥には、通常の乾燥機や加熱炉を用いることができる。また、重合ゲルや懸濁粒子等の乾燥は、共沸脱水により乾燥することもできる。上記乾燥機としては、例えば、熱風乾燥機、溝型攪拌乾燥機、回転乾燥機、円盤乾燥機、流動層乾燥機、気流乾燥機、赤外線乾燥機等が挙げられる。
【0061】
上記乾燥における乾燥温度は、好ましくは100〜250℃、より好ましくは150〜230℃、更に好ましくは160〜210℃である。
【0062】
得られる乾燥物の固形分の割合は、好ましくは50〜100質量%(含水率50〜0質量%)であり、より好ましくは85〜100質量%(含水率15〜0質量%)であり、更に好ましくは90〜98質量%(含水率10〜2質量%)である。尚、固形分の割合は、通常、アルミカップやガラスシャーレ上で、測定サンプル1gを180℃で3時間乾燥した後の乾燥減量から求められる。
【0063】
乾燥物の粉砕や解砕は、例えば、振動ミル、ロールグラニュレーター(特開平9−235378号公報、段落〔0174〕参照)、ナックルタイプ粉砕機、ロールミル(特表2002−527547号公報、段落〔0069〕参照)、高速回転式粉砕機(ピンミル、ハンマーミル、スクリューミル、ロールミル等(特開平6−41319号公報、段落〔0036〕参照))、円筒状ミキサー(特開平5−202199号公報、段落〔0008〕参照)によって行うことができる。また、気流乾燥機等を用いれば、粉砕しながら乾燥を行うことができる。
【0064】
尚、後述するように上記乾燥、及び粉砕若しくは解砕を経て得られた吸水性樹脂は、分級等によって所定のサイズ(粒子径)に整えられたもの(表面架橋前の吸水性樹脂)であることが好ましい。また、後述する吸水性樹脂粒子の造粒物についても、必要に応じて非造粒物である吸水性樹脂と共に、好ましくは分級によって所定のサイズに整えられたものである。
【0065】
上記により得られた吸水性樹脂粒子の形状は、一般には、不定形破砕状、球状、繊維状、棒状、略球状、偏平状等であるが、不定形破砕状であれば後述する二酸化ケイ素を、吸水性樹脂粒子の表面及び表面近傍の少なくとも何れか一方により多く含むことができるため好ましい。
【0066】
本実施の形態に係る吸水性樹脂粒子は、その表面近傍が表面架橋剤である有機表面架橋剤及び/又は水溶性無機表面架橋剤によって表面架橋されていることが好ましい。このように、吸水剤に含まれる吸水性樹脂はその表面近傍が、表面架橋剤によって架橋されているため、膨潤した吸水剤に圧力をかけた際に生じる液の戻り量を減少させることができる。そのため、AAPの圧力に対する吸収力を高めることができる。
【0067】
表面架橋処理に用いることのできる表面架橋剤としては、吸水性樹脂粒子の有する官能基、特に、カルボキシル基と反応し得る官能基を2個以上有する有機表面架橋剤及び/又は水溶性無機表面架橋剤が挙げられる。好ましくは水溶性有機表面架橋剤を用いることができる。
【0068】
例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリシドール等のエポキシ化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン等の多価アミン化合物や、それらの無機塩ないし有機塩(例えば、アゼチジニウム塩等);2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等の多価オキサゾリン化合物;尿素、チオ尿素、グアニジン、ジシアンジアミド、2−オキサゾリジノン等の炭酸誘導体;1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、1,3−ジオキソパン−2−オン等のアルキレンカーボネート化合物;エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物、及び、その多価アミン付加物(例えばハーキュレス製カイメン:登録商標);γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤;3−メチル−3−オキセタンメタノール、3−エチル−3−オキセタンメタノール、3−ブチル−3−オキセタンメタノール、3−メチル−3−オキセタンエタノール、3−エチル−3−オキセタンエタノール、3−ブチル−3−オキセタンエタノール、3−クロロメチル−3−メチルオキセタン、3−クロロメチル−3−エチルオキセタン、多価オキセタン化合物等のオキセタン化合物;等が挙げられる。
【0069】
これら表面架橋剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でもヒドロキシル基を少なくとも一つ有する表面架橋剤が好ましく、その中でも多価アルコールは、安全性が高く、吸水性樹脂粒子表面の親水性を向上させることができる点で好ましい。
【0070】
上記表面架橋剤の使用量は、吸水性樹脂粒子の固形分100質量部に対して0.001質量部以上5質量部以下が好ましい。
【0071】
表面架橋剤と吸水性樹脂粒子との混合の際には水を用いてもよい。水の使用量は、吸水性樹脂粒子の固形分100質量部に対して、0.5質量部を越え、10質量部以下が好ましく、1質量部以上5質量部以下の範囲内がより好ましい。
【0072】
表面架橋剤又はその水溶液と吸水性樹脂粒子とを混合する際には、親水性有機溶媒や、第三物質を混合助剤として用いてもよい。親水性有機溶媒を用いる場合には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等の低級アルコール類;アセトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、メトキシ(ポリ)エチレングリコール等のエーテル類;ε−カプロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール等が挙げられる。
【0073】
親水性有機溶媒の使用量は、吸水性樹脂粒子の種類や粒径、含水率等にもよるが、吸水性樹脂粒子の固形分100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、0質量部以上5質量部以下の範囲内、若しくは0.1質量部以上5質量部以下の範囲内がより好ましい。
【0074】
また、第三物質として欧州特許第0668080号明細書に示された無機酸、有機酸、ポリアミノ酸等を存在させてもよい。これらの混合助剤は表面架橋剤として作用してもよいが、表面架橋後に吸水性樹脂粒子の吸水性能を低下させないものが好ましい。本実施の形態に係る吸水性樹脂粒子は、沸点が100℃以下の親水性有機溶媒を含まない表面架橋剤と混合、加熱により架橋されたものであることが好ましい。吸水性樹脂粒子が沸点100℃以下の親水性有機溶媒を含む場合、親水性有機溶媒の気化により表面架橋剤の吸水性樹脂粒子表面での存在状態が変化し、SFC等の物性が十分に満たされないおそれがある。
【0075】
吸水性樹脂粒子と表面架橋剤とをより均一に混合するため、水溶性無機塩(好ましくは、過硫酸塩)を、吸水性樹脂粒子と表面架橋剤とを混合する際に共存させることが好ましい。水溶性無機塩の使用量は、吸水性樹脂粒子の種類や粒径等にもよるが、吸水性樹脂粒子の固形分100質量部に対して0.01質量部以上1質量部以下の範囲内が好ましく、0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内がより好ましい。すなわち、上記吸水性樹脂粒子に対して0.01質量%以上1.0質量%以下の水溶性無機塩好ましくは過硫酸塩を含む有機表面架橋剤及び/又は水溶性無機表面架橋剤との混合、加熱によって架橋されたものであることが好ましい。
【0076】
吸水性樹脂粒子と表面架橋剤とを混合する混合方法は特に限定されないが、例えば、吸水性樹脂粒子を親水性有機溶剤に浸漬し、必要に応じて水及び/又は親水性有機溶媒に溶解させた表面架橋剤を混合する方法、吸水性樹脂粒子に直接、水及び/又は親水性有機溶媒に溶解させた表面架橋剤を噴霧若しくは滴下して混合する方法等が例示できる。
【0077】
吸水性樹脂粒子と表面架橋剤とを混合した後、通常、加熱処理を行い、架橋反応を遂行させることが好ましい。上記加熱処理温度は、用いる表面架橋剤にもよるが、40℃以上250℃以下が好ましく、150℃以上250℃以下がより好ましい。加熱処理温度が40℃未満の場合には、AAPやSFC等の吸収特性が十分に改善されないおそれがある。加熱処理温度が250℃を越える場合には、吸水性樹脂粒子の劣化を引き起こし、各種物性が低下する場合があり注意を要する。加熱処理時間は、好ましくは1分以上2時間以下、より好ましくは5分以上1時間以下である。
【0078】
本実施の形態で用いる吸水性樹脂粒子は、質量平均粒子径が200μm以上500μm以下であることが好ましい。より好ましくは300μm以上400μm以下である。吸水性樹脂粒子の質量平均粒子径が200μm以上500μm以下の範囲を外れた場合、通液性及び拡散性が著しく低下、又は吸収速度が大幅に低下し得る。このような吸水性樹脂粒子を、例えば、オムツに用いた場合、液の漏れ等を引き起こすおそれがある。
【0079】
本実施の形態に係る吸水性樹脂粒子は、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合が5質量%以下であることが好ましい。さらに、3質量%以下であることがより好ましい。上記の範囲の吸水性樹脂粒子が吸水剤に用いられることで、得られる吸水剤の粉塵量を抑制することができる。そのため、吸水剤の製造の際に吸水性樹脂粒子に含まれる微粒子の飛散によって生じる安全衛生上の問題を防止でき、得られる吸水剤の物性が低下することを抑制することができる。尚、上記割合が5質量%を超えた場合、吸水剤の製造の際に粉塵が発生し易くなるので、安全衛生上の問題が生じ得る、又は吸水体の物性低下を招く等のおそれがある。
【0080】
上記吸水性樹脂粒子は、質量平均粒子径が300μm以下である微粉状の吸水性樹脂粒子(以下適宜「微粉」と記す)を造粒、乾燥、粒度調整し、表面架橋したものを用いてもよいし、粉砕して得られる一次粒子の不定形破砕状の粒子に微粉の造粒物を一部混合した吸水性樹脂粒子を用いてもよい。微粉の造粒物を吸水性樹脂粒子に一部混合した場合には、吸水速度、FHA等の吸収特性が一層優れた吸水剤を得ることが出来る。吸水性樹脂粒子に含まれる微粉の造粒物の混合量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、最も好ましくは20質量%以上である。尚、微粉の粒子径は分級される篩目径で示される。
【0081】
微粉の造粒物の作製方法としては、微粉を再生する公知の技術が使用可能である。例えば、温水と微粉とを混合し乾燥する方法(米国特許第6228930号明細書)や、微粉と単量体水溶液とを混合し重合する方法(米国特許第5264495号明細書)、微粉に水を加え特定の面圧以上で造粒する方法(欧州特許第844270号明細書)、微粉を十分に湿潤させ非晶質のゲルを形成し乾燥及び粉砕する方法(米国特許第4950692号明細書)、微粉と重合ゲルとを混合する方法(米国特許第5478879号明細書)等を用いることが可能である。
【0082】
好ましくは、上記の温水と微粉とを混合し、乾燥する方法を用いることができる。この方法により造粒された吸水性樹脂粒子は、多孔質構造(特開2004−261797号公報に記載されている多孔質構造と同義の構造)を有しており好ましく用いることができる。本実施の形態における吸水性樹脂粒子は、多孔質構造を有する粒子を好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、最も好ましくは20質量%以上含むものである。吸水性樹脂粒子が、多孔質構造を有する微粉の造粒物を含むことによって、上記吸水性樹脂粒子は、その表面及びその近傍の少なくとも何れか一方に、後述する二酸化ケイ素等の水不溶性無機粒子を効率よく含むことができる。
【0083】
本実施の形態に係る吸水性樹脂粒子のCRCは、好ましくは5(g/g)以上であり、より好ましくは10(g/g)以上であり、より好ましくは15(g/g)以上であり、さらに好ましくは25(g/g)以上であり、特に好ましくは28(g/g)以上であり、最も好ましくは30(g/g)以上である。CRCの上限値は、特に限定されないが、好ましくは50(g/g)以下であり、より好ましくは45(g/g)以下であり、さらに好ましくは40(g/g)以下である。CRCが10(g/g)未満の場合、吸水性樹脂粒子を吸水剤に用いた場合、吸収量が少なすぎ、オムツ等の衛生材料の使用に適さない。また、CRCが50(g/g)よりも大きい場合、吸水性樹脂粒子が吸水体に使用された場合、吸水体への液の取り込み速度に優れる吸水剤を得ることができなくなるおそれがある。
【0084】
本実施の形態に係る吸水性樹脂粒子のAAPは、16(g/g)以上であることが好ましく、より好ましくは17(g/g)以上であり、より好ましくは18(g/g)以上であり、より好ましくは19(g/g)以上であり、さらに好ましくは20(g/g)以上であり、特に好ましくは22(g/g)以上であり、最も好ましくは24(g/g)以上である。AAPの上限値は、特に限定されないが、好ましくは30(g/g)以下である。AAPが16(g/g)未満の場合、吸水性樹脂粒子が吸水剤に使用された場合、上記吸水剤に圧力が加わった際の液の戻り(通称リウエット:Re−Wetといわれる)が少ない吸水剤を得ることができなくなるおそれがある。
【0085】
本実施の形態に係る吸水性樹脂粒子のSFCは、好ましくは10(10−7・cm・s・g−1)以上であり、より好ましくは15(10−7・cm・s・g−1)以上であり、より好ましくは30(10−7・cm・s・g−1)以上であり、さらに好ましくは50(10−7・cm・s・g−1)以上、さらに好ましくは70(10−7・cm・s・g−1)以上であり、最も好ましくは100(10−7・cm・s・g−1)以上である。SFCが10(10−7・cm・s・g−1)未満の場合、後述する二酸化ケイ素等の水不溶性無機粒子を含んでいたとしても通液性が向上せず、吸水性樹脂粒子が吸水剤に使用された場合に、吸水体への液の取り込み速度に優れる吸水剤を得ることができなくなるおそれがある。
【0086】
本実施の形態に係る吸水性樹脂粒子は、水可溶分量が好ましくは35質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下である。水可溶分量が35質量%を超える場合、ゲル強度が弱く、通液性に劣ったものとなることがある。また吸水性樹脂粒子が吸水体に使用された場合、吸水体に圧力が加わった際の液の戻り(通称リウエット:Re−Wet)が少ない吸水剤を得ることができなくなるおそれがある。
【0087】
<水不溶性無機粒子>
本実施の形態に係る吸水性樹脂粒子は、その表面及びその近傍の少なくとも何れか一方に、水不溶性無機粒子を含んでいる。上記吸水性樹脂粒子の表面とは、外気にさらされている部分であり、また吸水性樹脂粒子の表面近傍とは、吸水性樹脂粒子の表面から粒子径(短径)の10分の1程度内部までの部分を示すものとする。具体的には、上記吸水性樹脂粒子の表面近傍とは、表面架橋処理された吸水性樹脂粒子の場合、表面架橋層近傍であり、その厚さは走査型電子顕微鏡(SEM)等で確認することができる。
【0088】
吸水性樹脂粒子の表面及び表面近傍の少なくとも何れか一方に水不溶性無機粒子を含んでいることによって、吸水剤の通液性が向上することとなる。そのため、上記吸水性樹脂粒子を含む吸水剤のSFCを向上させることができる。尚、上記通液性向上のため、水不溶性無機粒子は、吸水性樹脂粒子の表面及び表面近傍の少なくとも何れか一方に含まれていればよいが、表面近傍よりも表面に含まれていることがより吸水剤の物性を向上させることができる。尚、後述する実施例においては、水不溶性無機粒子は、少なくとも表面に含まれている。また、水不溶性無機粒子の添加時期を重合工程以降にすることにより、表面に含まれる水不溶性無機粒子の割合を高くすることができる。
【0089】
また、本実施の形態で用いる水不溶性無機粒子は、吸水性樹脂粒子表面の官能基とイオン結合し得る官能基を少なくとも表面に有する水不溶性無機粒子であることが好ましい。より好ましくは上記イオン結合し得る官能基がカチオン性基であり、さらに好ましくはアミノ基(4級アミノ基を含む)である。
【0090】
好ましい吸水剤の形態は上記吸水性樹脂粒子表面に存在する官能基がカルボキシル基であり、上記水不溶性無機粒子の少なくとも表面に存在する官能基がアミノ基である吸水剤である。
【0091】
本実施の形態で使用できる水不溶性無機粒子の具体例としては、例えば、タルク、クレー、カオリン、フラー土、ベントナイト、活性白土、重晶石、天然アスファルタム、ストロンチウム鉱石、イルメナイト、パーライト等の鉱産物;二酸化珪素、酸化チタン等の金属酸化物;天然ゼオライトや合成ゼオライト等の珪酸(塩);硫酸カルシウム、酸化アルミニウム等の水不溶性多価金属塩類;親水性のアモルファスシリカ(例、乾式法:トクヤマ社 ReolosilQS−20、沈殿法:DEGUSSA社 Sipernat22S, Sipernat2200)類;亜鉛と珪素、又は、亜鉛とアルミニウムを含む複合含水酸化物(例えば、国際公開WO2005/010102号に例示);酸化ケイ素・酸化アルミニウム・酸化マグネシウム複合体(例、ENGELHARD社 Attagel#50)、酸化ケイ素・酸化アルミニウム複合体、酸化ケイ素・酸化マグネシウム複合体等の酸化物複合体類、等を挙げることが出来る。また、米国特許第5164459号公報、欧州特許第761241号公報等に例示されたものも使用可能である。このうち二酸化ケイ素及び珪酸(塩)がより好ましく、コールターカウンター法により測定された平均粒子径が0.001〜200μmの範囲の微粒子である二酸化ケイ素及び珪酸(塩)がさらに好ましい。
【0092】
本実施の形態で最も好ましく使用される水不溶性無機粒子の具体例としては、WACKER社のHDK(登録商標)H2015EP、H2050EP、H2150VP、H05TA、H13TA、H30TA等のアモルファスシリカ表面にアミノ基(4級アミノ基を含む)が導入されたものが挙げられる。同様に、日本アエロジル社のRA200HS等も使用可能である。
【0093】
本実施の形態で用いる水不溶性無機粒子は、水:メタノールの容量比が1:1の溶液中に4質量%分散させたときのpHが7〜10を示すものが好ましい。
【0094】
本実施の形態で用いる水不溶性無機粒子は、一次粒子の質量平均粒子径が5〜50nmであり、かつ90質量%以上が1次粒子の凝集粒子であるものが好ましい。また、1次粒子の凝集粒子の質量平均粒子径が20μm以下であるものが好ましい。
【0095】
本実施の形態で用いる水不溶性無機粒子は、表面の残存シラノール基が20%以下であることが好ましい(残存シラノール基100%における表面のシラノール基量は2SiOH/nmである)。
【0096】
本実施の形態で用いる水不溶性無機粒子は、BET法による比表面積が30〜330m/gであるものが好ましい。
【0097】
<二酸化ケイ素>
上述したように、本実施の形態では、上記水不溶性無機粒子として二酸化ケイ素を含んでいることがより好ましい。
【0098】
吸水性樹脂粒子の表面及び表面近傍の少なくとも何れか一方に二酸化ケイ素を含んでいることによって、吸水剤の通液性が向上することとなる。そのため、上記吸水性樹脂粒子を含む吸水剤のSFCを向上させることができる。尚、上記通液性向上のため、二酸化ケイ素は、吸水性樹脂粒子の表面及び表面近傍の少なくとも何れか一方に含まれていればよいが、表面近傍よりも表面に含まれていることがより吸水剤の物性を向上させることができる。
【0099】
上記二酸化ケイ素は、乾式法で製造されたアモルファスのフュームドシリカであることが好ましい。クォーツと呼ばれる二酸化ケイ素等は、健康上の問題を引き起こす可能性があるため好ましくない。二酸化ケイ素は自己凝集を起こさずに、かつ残留シラノール基密度が高いほうが好ましい。二酸化ケイ素の自己凝集が吸水剤における粉塵量の増加の原因であるため、本実施の形態においては、残留シラノール基密度が特定の範囲の二酸化ケイ素を特定範囲量用いることで、二酸化ケイ素の自己凝集を防ぎ、結果として吸水剤の粉塵量の増加を防ぐことができる。
【0100】
二酸化ケイ素の表面における残留シラノール基密度は、ナノ平方メートル(nm)あたりのシラノール基の個数で表され、本発明で使用する単位としてはSiOH/nmを用いる。この残留シラノール基密度は、シリカ製造メーカーのカタログ等で確認することができる。また、リチウムアルミニウムハイドライド法等の公知の方法でも測定することが可能である。
【0101】
本実施の形態において、上記二酸化ケイ素の表面における残留シラノール基密度は、1.7(SiOH/nm)以下であることが好ましい。このように残留シラノール基密度が低い場合、上記二酸化ケイ素はその表面が修飾されており、疎水性を示すこととなる。尚、1.7(SiOH/nm)を超えた場合、二酸化ケイ素が凝集し易くなるため、粉塵が発生し易く好ましくない。二酸化ケイ素の表面が修飾されていることにより、シラノール基同士が水素結合し難く、二酸化ケイ素の微粒子同士は凝集し難い。上記吸水性樹脂粒子に対する上記二酸化ケイ素の含有量は10ppm以上1900ppm以下であり、その含有量は非常に低い。このような含有量が非常に低く、凝集していない二酸化ケイ素の微粒子であれば、静電力やファンデルワールス力のような粒子間の結合力によって吸水性樹脂粒子に吸着されるため、吸水性樹脂粒子が二酸化ケイ素を含むことによって生じる粉塵量を抑制することができる。
【0102】
尚、残留シラノール基密度が1.7(SiOH/nm)を超える二酸化ケイ素を用いた場合、二酸化ケイ素の表面にはシラノール基が多数存在するので、シラノール基同士の水素結合によって二酸化ケイ素の微粒子同士には凝集が生じることとなる。上記の凝集した微粒子は、吸水性樹脂粒子に吸着されにくく、また、剥離しやすい。よって、上記微粒子は粉塵として飛散するため、粉塵量を抑制することは困難である。
【0103】
上記二酸化ケイ素の表面における残留シラノール基密度は、好ましくは1.7(SiOH/nm)以下であるが、0.7(SiOH/nm)以上1.7(SiOH/nm)以下の範囲がより好ましい。さらに好ましくは、0.9(SiOH/nm)以上1.7(SiOH/nm)以下の範囲である。0.7(SiOH/nm)未満の場合、二酸化ケイ素がさらに疎水性となり、LDVが低下するので好ましくない。
【0104】
上記吸水性樹脂粒子に含まれる二酸化ケイ素として、具体的には、WACKER社のHDK(登録商標)H15(約0.96SiOH/nm)、H20(約1.00SiOH/nm)、H30(約1.08SiOH/nm)、H1303VP(約0.36SiOH/nm)、H2000/4(約0.60SiOH/nm)、H2000T(約0.36SiOH/nm)、H3004(約0.40SiOH/nm)、残留シラノール基密度がそれぞれ約0.40SiOH/nm以下であるH05TD、H13TD、H20TD、H30TD、H05TM、H13TM、H20TM、H30TM、H05TX、H13TX、H20TX、H30TXを用いることができる。また、日本アエロジル社製Aerosil(登録商標)R−972(約0.60SiOH/nm)、R−974(約0.39SiOH/nm)、R805(約1.66SiOH/nm)、R812(約0.44SiOH/nm)、R812S(約0.68SiOH/nm)、R202(約0.29SiOH/nm)、トクヤマ社製レオロシール(登録商標)MT−10(C)、DM−10(C)、DM−30、DM−30S、KS−20SC、HM−20L、HM−30S、PM−20(L)を用いることができる。
【0105】
<吸水剤>
本実施の形態に係る吸水剤は、水溶性不飽和単量体を重合して得られる内部架橋構造を有する吸水性樹脂粒子を含み、下記(a)〜(d)の条件、
(a)水不溶性無機粒子を10ppm以上1900ppm以下含むこと、
(b)該吸水剤に含まれる、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合が5質量%以下であること、
(c)4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)が18(g/g)以上であること、
(d)該水不溶性無機粒子が該吸水性樹脂表面又はその近傍に存在すること、
を満たすものである。
【0106】
本実施の形態に係る吸水剤は水不溶性無機粒子を該吸水剤に対して10ppm以上1900ppm以下、さらに好ましくは10〜1500ppm、最も好ましくは10〜990ppm含む。水不溶性無機粒子を多く含有し過ぎた場合、吸収体の製造の際に微粒子の飛散による安全衛生上の問題を引き起こしたり、吸収体の性能低下を引き起こしてしまう場合がある。また、吸収体に使用した際、吸収体の垂直方向への液の吸い上げ能力に優れる(すなわち、固定された高さ吸収(FHA)に優れる)吸水剤が得られないおそれがある。
【0107】
本実施の形態に係る吸水剤は、上述した、表面における残留シラノール基密度が1.7(SiOH/nm)以下の二酸化ケイ素を用いる代わりに、自己凝集していない二酸化ケイ素、又は、自己凝集が機械的な力等によって破壊された二酸化ケイ素を用いることもできる。残留シラノール基密度が1.7(SiOH/nm)以下の二酸化ケイ素を用いるのは、二酸化ケイ素の自己凝集を抑制する手段の一つに過ぎない。吸水性樹脂粒子に含まれる二酸化ケイ素が自己凝集しているか否かの判断については、後述の粉塵量の測定後にフィルターに捕捉された微粒子を分析することで判断できる。例えば、捕捉された微粒子を走査型電子顕微鏡やX線マイクロアナライザー等によって観察し、その微粒子の中に、長径20μm以上100μm以下の二酸化ケイ素の粒子が観測された場合、その個数の割合が長径20μm以上100μm以下の捕捉された微粒子の個数に対し10%以上である場合、二酸化ケイ素が自己凝集していたと判断される。
【0108】
すなわち、本実施の形態に係る吸水剤は、内部架橋構造を有し、水溶性不飽和単量体を重合して得られる吸水性樹脂粒子を含む吸水剤であって、上記吸水性樹脂粒子の表面近傍は、表面架橋剤によって架橋されており、上記吸水性樹脂粒子は、その表面及びその近傍の少なくとも何れか一方に二酸化ケイ素を含んでおり、かつ、吸水剤の粉塵量の測定後にフィルターに捕捉された長径20μm以上100μm以下の微粒子のうち、二酸化ケイ素の個数割合が10%未満であり、かつ、上記吸水剤に対する上記二酸化ケイ素の含有量は10ppm以上1900ppm以下であり、上記吸水剤の質量平均粒子径は200μm以上500μm以下であり、吸水剤の全質量に対し、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合は5質量%以下であってもよい。
【0109】
本実施の形態に係る吸水剤は、少なくとも多価金属塩を、好ましくは0.001質量%以上5質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上1質量%以下含んでいることが好ましい。このように、多価金属塩を含有することで、上記吸水剤は上記多価金属塩(好ましくは3価の水溶性多価金属塩)を含むので、吸水剤の4.83kPaの圧力に対する吸収力、固定された高さ吸収を大きく低下させることなく、食塩水流れ誘導性を向上させることができる。また、二酸化ケイ素等の水不溶性無機粒子が存在していない、吸水剤の表面及びその表面近傍の少なくとも何れか一方において、二酸化ケイ素等の水不溶性無機粒子の不足を補うことができる。また、二酸化ケイ素等の水不溶性無機粒子と上記多価金属塩との相乗効果により、さらに優れた物性の吸水剤を得ることができる。
【0110】
本実施の形態で使用することができる多価金属塩の具体例としては、例えば、Zn、Be、Mg、Ca、Sr、Al、Fe、Mn、Ti、Zr、Ce、Ru、Y、Cr等から選ばれる金属の硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、リン酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物(塩化物等)等が挙げられ、さらに、特開2005−11317に記載されている多価金属塩等も挙げられる。
【0111】
また、多価金属塩の中でも3価の水溶性金属塩を用いることが最も好ましい。3価の水溶性多価金属塩の具体例としては、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、ビス硫酸カリウムアルミニウム、ビス硫酸ナトリウムアルミニウム、カリウムミョウバン、アンモニウムミョウバン、ナトリウムミョウバン、アルミン酸ナトリウム、塩化鉄(III)、塩化セリウム(III)、塩化ルテニウム(III)、塩化イットリウム(III)、塩化クロム(III)等を例示することができる。
【0112】
また、尿等の吸収液の溶解性の点からもこれらの結晶水を有する塩を使用することが好ましい。特に好ましいのは、アルミニウム化合物、中でも、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、ビス硫酸カリウムアルミニウム、ビス硫酸ナトリウムアルミニウム、カリウムミョウバン、アンモニウムミョウバン、ナトリウムミョウバン、アルミン酸ナトリウムが好ましく、硫酸アルミニウムが特に好ましく、硫酸アルミニウムの水溶液(好ましくは、硫酸アルミニウム濃度が飽和濃度の90%以上の濃度の溶液)は最も好適に使用することが出来る。これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。本実施の形態に係る吸水剤の最も好ましい形態の1つは、二酸化ケイ素及び3価の水溶性多価金属塩を含む吸水剤である。
【0113】
本実施の形態に係る吸水剤は、生じる粉塵量が少ないものであるが、粉塵量としては、後述のホイバッハ・ダストメータによって測定した粉塵量が400ppm以下であることが好ましく、355ppm以下であることがより好ましく、300ppm以下であることが更に好ましく、240ppm以下であることが更に好ましい。この範囲である場合、二酸化ケイ素等の水不溶性無機粒子を含んでいたとしても吸水剤の製造の際、吸水剤に含まれる二酸化ケイ素等の粒子が飛散することによる安全衛生上の問題が生じ難く、吸水体の物性低下が生じ難い。
【0114】
上記吸水剤は、質量平均粒子径が200μm以上500μm以下であることが好ましい。より好ましくは、300μm以上400μm以下である。質量平均粒子径が200μm以上500μm以下の範囲を外れた場合、通液性が低下し、吸水剤への液の取り込み速度が著しく悪化するおそれがある。すなわち、吸収速度が大幅に低下し、例えばオムツに用いた場合、液の漏れ等を引き起こすおそれがある。
【0115】
また、上記吸水剤は、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合が5質量%以下である。また、好ましくは4質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。5質量%を超えた場合、本実施の形態に係る二酸化ケイ素等の水不溶性無機粒子を含んでいたとしても、吸水剤の製造の際に粒子の飛散による安全衛生上の問題が生じる、又は得られた吸水体の物性が低下するおそれがある。
【0116】
上記吸水剤は、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.20以上0.50以下であることが好ましく、0.20以上0.40以下であることがより好ましく、さらに好ましくは0.30以上0.40以下である。この範囲を外れると通液性が低下し、吸水体への液の取り込み速度が著しく悪化するおそれがある。
【0117】
上記吸水剤は、CRCが、好ましくは5(g/g)以上であり、より好ましくは10(g/g)以上であり、より好ましくは15(g/g)以上であり、さらに好ましくは25(g/g)以上であり、特に好ましくは28(g/g)以上である。上限値は、特に限定されないが、好ましくは50(g/g)以下であり、より好ましくは45(g/g)以下であり、さらに好ましくは40(g/g)以下である。CRCが5(g/g)未満の場合、吸収量が少なすぎ、オムツ等の衛生材料の使用に適さない。また、遠心分離機保持容量(CRC)が50(g/g)よりも大きい場合、吸水体に使用された時に、吸水体への液の取り込み速度に優れる吸水剤を得ることができなくなるおそれがある。
【0118】
本実施の形態に係る吸水剤は、SFCが、好ましくは10(10−7・cm・s・g−1)以上であり、より好ましくは15(10−7・cm・s・g−1)以上であり、より好ましくは30(10−7・cm・s・g−1)以上であり、さらに好ましくは50(10−7・cm・s・g−1)以上、さらに好ましくは70(10−7・cm・s・g−1)以上であり、最も好ましくは100(10−7・cm・s・g−1)以上である。SFCが10(10−7・cm・s・g−1)未満の場合、上記二酸化ケイ素等の水不溶性無機粒子を添加しても、通液性が向上せず、吸水体に使用された時に、吸水体への液の取り込み速度に優れる吸水剤を得ることができなくなるおそれがある。SFCの上限値は、特に限定されないが、好ましくは2000(10−7・cm・s・g−1)以下である。
【0119】
本実施の形態に係る吸水剤は、CRC及びSFCのバランスに優れているものが好ましい。すなわち、CRCが5(g/g)以上25(g/g)未満の範囲ではSFCが好ましくは100(10−7・cm・s・g−1)以上、さらに好ましくは150(10−7・cm・s・g−1)以上、最も好ましくは300(10−7・cm・s・g−1)以上、CRCが25(g/g)以上30(g/g)未満の範囲では、SFCが好ましくは30(10−7・cm・s・g−1)以上、さらに好ましくは70(10−7・cm・s・g−1)以上、最も好ましくは100(10−7・cm・s・g−1)以上、CRCが30(g/g)以上50(g/g)未満の範囲ではSFCが好ましくは10(10−7・cm・s・g−1)以上、より好ましくは15(10−7・cm・s・g−1)以上、さらに好ましくは30(10−7・cm・s・g−1)以上、最も好ましくは、50(10−7・cm・s・g−1)である吸水剤が好ましい。
【0120】
上記CRC及びSFCが上記範囲を満たす場合には、吸水剤が吸水体に使用された際に、通液性が低くとも吸収量がそれを補うことができる。また、通液性が高い場合は吸収量が少なくても、液が吸水剤において拡散するため、より広い面積で吸収を行うことができる。これらの理由で吸水体への液の取り込み速度に優れる吸水剤を得ることができる。
【0121】
上記吸水剤は、4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)が、18(g/g)以上である。より好ましくは20(g/g)以上であり、さらに好ましくは22(g/g)以上であり、最も好ましくは24(g/g)以上である。上限値は、特に限定されないが、好ましくは30(g/g)以下である。4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)が18(g/g)未満の場合、吸水体に使用された時に、吸水体に圧力が加わった際の液の戻り(通称リウエット:Re−Wetといわれる)が少ない吸水剤を得ることができなくなるおそれがある。
【0122】
上記吸水剤は、その全体中、粒子径150〜850μmの粒子が90質量%以上であることが好ましく、粒子径150〜600μmの粒子が90質量%以上であることがより好ましい。
【0123】
上記吸水剤は、水可溶分量が、35質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。吸水剤の水可溶分量が35質量%を超える場合、ゲル強度が弱く、通液性に劣ったものとなることがある。また、オムツ中で長時間使用した際に、CRC、AAP等が経時的に低下することがある。
【0124】
上記吸水剤の摩擦帯電電荷は負電荷であることが好ましい。これにより、二酸化ケイ素及び吸水剤が凝集することを防止し、二酸化ケイ素が吸水性樹脂粒子から剥離することを抑制することができる。その結果、吸水剤の粉塵量を減少させることができる。
【0125】
また、上記吸水剤では、液拡散速度が0.2(mm/sec)以上10.0(mm/sec)以下であることが好ましい。また、好ましくは、0.5(mm/sec)以上10.0(mm/sec)以下、さらに好ましくは、0.8(mm/sec)以上10.0(mm/sec)以下である。
【0126】
これにより、吸水剤が吸収した液を効率良く拡散できるので、吸水体への液の取り込み速度の改善、吸水体中での液の拡散性向上による吸水性能を向上させることができる。
【0127】
また、後述の(A1)植物成分、(B1)キレート剤、(C1)その他、等を微量成分として上記吸水剤に添加することにより、上記粒子状吸水剤に種々の機能を付与させることもできる。
【0128】
上記(A1)〜(C1)の添加剤の使用量は、目的や付加機能によっても異なるが、通常、その1種類の添加量として、吸水性樹脂100質量部に対して0〜10質量部、好ましくは0.001〜5質量部、さらに好ましくは0.002〜3質量部の範囲である。通常、0.001質量部より少ないと十分な効果や付加機能が得られず、10質量部以上の場合は添加量に見合った効果が得られないか、吸収性能の低下を招くことがある。
【0129】
(A1)植物成分
消臭性を発揮させるために、本実施の形態に係る粒子状吸水剤には、植物成分を配合することが出来る。この植物成分の好ましい配合比率は、上記の通りである。本実施の形態において用いることができる植物成分は、好ましくは、植物自体の粉末又は植物からの抽出物である。この植物成分に含まれる化合物は、好ましくは、ポリフェノール、フラボン及びその類及びカフェインから選ばれる少なくとも1種の化合物、又は、タンニン、タンニン酸、五倍子、没食子及び没食子酸から選ばれる少なくとも一種の化合物であり、例えば、米国特許第6469080号公報、欧州特許第1352927号公報、国際公開WO2003/104349号公報に例示されている。本発明において配合されうる植物成分の形態としては、植物から抽出されたエキス(精油等)、植物自体(植物粉末等)、植物加工業や食物加工業における製造過程で副生する植物滓や抽出滓等が挙げられる。
【0130】
また、植物成分(A1)が粉末の場合における該粉末の粒子径、及び/又は、植物から抽出した植物成分(A1)を含んだエキス(精油)を担持させた粉末の粒子径は、通常、0.001〜1000μmであり、好ましくは1〜600μmである。植物成分を含む粒子の質量平均粒子径は、500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましい。この質量平均粒子径が500μmより大きいと、尿と接触した際、植物成分に含まれる有効成分の作用が不十分となり、安定した消臭性能が発揮されないことがある。また、優れた消臭性能及び安定性が付与される観点から、この質量平均粒子径は、吸水性樹脂の質量平均粒子径よりも小さいことが好ましい。尚、植物成分を含む粒子としては、植物自体が粉末とされた植物粉末や、植物成分を担持する粒子状の担持物等が挙げられる。この担持物としては、植物から抽出された植物成分を含むエキス(精油)を担持するものが挙げられる。前述した吸水性樹脂に添加しやすくする観点から、本実施の形態で用いることの出来る植物成分は、常温において、液体及び/又は水溶液となりうるものが好ましい。
【0131】
(B1)キレート剤の添加
本実施の形態に係る粒子状吸水剤を得るために、好ましくはキレート剤、特に多価カルボン酸及びその塩が配合されうる。
【0132】
本実施の形態に係る粒子状吸水剤に用いることができるキレート剤としては、好ましくは、FeやCuに対するイオン封鎖能やキレート能が高いキレート剤、具体的にはFeイオンに対する安定度定数が10以上、好ましくは20以上のキレート剤が好ましく、さらに好ましくは、アミノ多価カルボン酸及びその塩、特に好ましくは、カルボキシル基を3個以上有するアミノカルボン酸及びその塩である。
【0133】
これら多価カルボン酸は具体的には、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸、シクロヘキサン−1,2−ジアミンテトラ酢酸、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、エチレングリコールジエチルエーテルジアミンテトラ酢酸、エチレンジアミンテトラプロピオン酢酸、N−アルキル−N’−カルボキシメチルアスパラギン酸、N−アルケニル−N’−カルボキシメチルアスパラギン酸、及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩もしくはアミン塩が挙げられる。中でも、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸及びその塩が最も好ましい。
【0134】
(C1)その他
抗菌剤、水溶性高分子、水不溶性高分子、水、界面活性剤、有機微粒子等、その他添加剤は、本実施の形態に係る粒子状吸水剤が得られる限り、その添加は任意である。
【0135】
また、本実施の形態に係る吸水剤は、吸水性樹脂粒子を含んでおり、さらに吸水性樹脂粒子は多価金属塩と水不溶性無機粒子を含んでいるものであってもよい。具体的には、本実施の形態に係る吸水剤は、水溶性不飽和単量体を重合して得られる吸水性樹脂粒子を含み、下記(A)〜(D)の条件、
(A)該吸水性樹脂粒子の表面近傍は、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する表面架橋剤によって架橋又は被覆されていること、
(B)該吸水性樹脂粒子は、その表面及びその近傍の少なくとも何れか一方に多価金属塩及び水不溶性無機粒子を含んでいること、
(C)該吸水剤の質量平均粒子径は200μm以上500μm以下であること、
(D)該吸水剤の全質量に対し、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合は5質量%以下であること、
を満たす吸水剤であってもよい。
【0136】
上記吸水剤における吸水性樹脂粒子は、その表面近傍がヒドロキシル基を少なくとも一つ有する表面架橋剤によって表面架橋又は被覆されている。このように、吸水剤に含まれる吸水性樹脂はその表面近傍が、ヒドロキシル基を少なくとも一つ有する表面架橋剤によって架橋又は被覆されているため、膨潤した吸水剤に圧力をかけた際に生じる液の戻り量を減少させることができる。そのため、AAP、すなわち圧力に対する吸収力を高めることができる。
【0137】
尚、上記吸水剤は、水溶性不飽和単量体を重合して得られる吸水性樹脂粒子を含むこと、並びに上記(A)〜(D)の条件以外のことについては、特には限定されず、例えば、(a)〜(d)の条件を満たす吸水剤において説明した、上述した範囲に設定することができる。また、上記(A)〜(D)の条件についても、より優れた物性を付与させるという観点から、(a)〜(d)の条件を満たす吸水剤において説明した範囲に減縮してもかまわない。
【0138】
上記(A)〜(D)の条件を満足する上記吸水剤は、水不溶性無機粒子を、好ましくは0.001質量%以上5質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上3質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以上1質量%以下、さらに特に好ましくは0.01質量%以上0.4質量%以下、最も好ましくは0.05質量%以上0.4質量%以下含んでいることが好ましい。尚、上記数値範囲の上限と下限は適宜組み合わせることができ、例えば0.001質量%以上0.4質量%以下も好ましい数値範囲である。このように、吸水性樹脂粒子の表面及びその近傍の少なくとも何れか一方に水不溶性無機粒子を含有することで、食塩水流れ誘導性を向上させ、また高湿下での粉体流動性も向上させることが出来る。また、上述した多価金属塩も吸水性樹脂粒子の表面及びその近傍の少なくとも何れか一方に存在することによって、水不溶性無機粒子と多価金属塩との相乗効果により、さらに優れた物性の吸水剤を得ることができる。
【0139】
上記吸水剤は、4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)が、好ましくは16(g/g)以上である。上限値は、特に限定されないが、好ましくは30(g/g)以下である。4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)が16(g/g)未満の場合、吸水体に使用された時に、吸水体に圧力が加わった際の液の戻り(通称リウエット:Re−Wetといわれる)が少ない吸水剤を得ることができなくなるおそれがある。
【0140】
<吸水剤の製造方法>
本実施の形態に係る吸水剤の製法は、水溶性不飽和単量体を重合して得られる内部架橋構造を有する吸水性樹脂粒子を含む吸水剤の製法であって、表面近傍が、有機表面架橋剤および/または水溶性無機表面架橋剤によって表面架橋され、かつ質量平均粒子径が200〜500μmであって、かつ含まれる目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合が5質量%以下である吸水性樹脂粒子と、吸水性樹脂粒子表面の官能基とイオン結合し得る官能基を少なくとも表面に有する水不溶性無機粒子を該吸水性樹脂粒子の表面架橋時、またはその前後の工程で、混合する吸水剤の製法(製造方法A)である。
【0141】
本実施形態に係る吸水剤の製法に用いられる吸水性樹脂粒子は好ましくは上述した吸水性樹脂粒子である。また、本実施形態に係る吸水剤の製法に用いられる水不溶性無機粒子は好ましくは上述した水不溶性無機粒子である。
【0142】
本実施形態に係る吸水剤の製法において、水不溶性無機粒子の添加量は、上記吸水性樹脂粒子に対して1〜10000ppm、さらに好ましくは5〜1500ppm、最も好ましくは10〜990ppmである。水不溶性無機粒子を多く含有し過ぎた場合、吸収体の製造の際に微粒子の飛散による安全衛生上の問題を引き起こしたり、吸収体の性能低下を引き起こしてしまう場合がある。また、吸収体に使用した際、吸収体の垂直方向への液の吸い上げ能力に優れる(すなわち、固定された高さ吸収(FHA)に優れる)吸水剤が得られないおそれがある。
【0143】
吸水剤の上記製法の最も好ましい形態は、上記吸水性樹脂粒子に、少なくとも3価の水溶性多価金属塩を溶液(好ましくは水溶液)として混合する工程、及び、水不溶性無機粒子を混合する工程を含む製法である。
【0144】
また、本実施形態に係る吸水剤は、内部架橋構造を有し、水溶性不飽和単量体を重合して得られる吸水性樹脂粒子を含む吸水剤の製造方法であって、上記吸水性樹脂粒子の表面近傍を、表面架橋剤によって架橋し、上記吸水性樹脂粒子の質量平均粒子径は200μm以上500μm以下であり、上記表面架橋剤によって架橋する際、架橋する前又は架橋する後群から選ばれる少なくとも何れかの時に、上記吸水性樹脂粒子に対し10ppm以上1900ppm以下、かつ、残留シラノール基密度が1.7(SiOH/nm)以下である二酸化ケイ素と上記吸水性樹脂粒子とを混合する方法(製造方法B)により製造することができる。
【0145】
本実施の形態に係る吸水剤の製造方法(製造方法B)において、まず、上記吸水性樹脂粒子の表面近傍を、表面架橋剤によって架橋するが、<吸水性樹脂粒子>において上述した表面架橋剤及び表面架橋の方法を用いればよい。
【0146】
上記二酸化ケイ素等の水不溶性無機粒子と上記吸水性樹脂粒子とを混合するタイミングとしては、上記表面架橋剤によって架橋する際、架橋する前、架橋する後の群から選ばれる少なくとも何れかの時に混合すればよく、特に限定されるものではないが、好ましくは架橋後、さらに好ましくは架橋後さらに機械的ダメージを受けた時である。
【0147】
製造方法A,Bにおいて、上記吸水性樹脂粒子に対して上記二酸化ケイ素等の水不溶性無機粒子を混合するに際し、具体的な混合方法としては、公知の撹拌装置を用いて混合することができる。例えば、パドルブレンダー、リボンミキサー、ロータリーブレンダー、ジャータンブラー、プラウジャーミキサー、モルタルミキサー等を用いて混合することができる。これらの攪拌装置は、上記吸水性樹脂粒子と上記水不溶性無機粒子との混合物を加熱する加熱装置を備えていてもよいし、加熱装置によって加熱した上記混合物を冷却する冷却装置を備えていてもよい。
【0148】
攪拌時間は特に限定されないが、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下である。
【0149】
また、上記吸水性樹脂粒子及び二酸化ケイ素等の水不溶性無機粒子は粒子状の粉体であり、混合を行う際に凝集を防止することが重要である。そのため、上記水不溶性無機粒子と吸水性樹脂粒子とを混合する際又は混合した後に、上記水不溶性無機粒子と吸水性樹脂粒子とを空気輸送することが好ましい。空気輸送することによって、吸水性樹脂粒子及び二酸化ケイ素等の水不溶性無機粒子の凝集を防止できる。したがって、二酸化ケイ素等の水不溶性無機粒子を吸水性樹脂粒子に対しより均一に混合でき、得られる吸水剤の物性を高めることができる。
【0150】
上記製造方法(製造方法A,B)では、遠心分離機保持容量及び食塩水流れ誘導性のバランスに優れる吸水剤を製造するために、上記表面架橋剤によって架橋する際、架橋する前又は架橋する後の少なくとも何れかの時に、上記多価金属塩と上記吸水性樹脂粒子とを混合することが好ましい。
【0151】
上記多価金属塩の使用量としては、吸水性樹脂粒子に対し好ましくは0.001質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以上1質量%以下である。
【0152】
上記多価金属塩を混合する際には、水溶液として混合することが好ましい。多価金属塩を含む水溶液中における水溶性多価金属塩の濃度は、吸水性樹脂粒子内部への浸透及び拡散を防ぐために、飽和濃度に対して、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。もちろん、飽和濃度で用いてもよい。また、少なくとも多価金属塩を含む水溶液中に上記の親水性有機溶媒や乳酸(又はその塩)等の有機酸(又はその塩)を共存させてもよい。この場合、少なくとも多価金属塩の吸水性樹脂粒子内部への浸透及び拡散が抑制され、混合性も向上するためより好ましい。
【0153】
上記多価金属塩を混合する攪拌装置は特に限定されないが、上述した水不溶性無機粒子に用いた攪拌装置を用いることができる。攪拌時間も同様に、上述した水不溶性無機粒子に用いた条件で行えばよい。
【0154】
上記吸水剤の製造方法においては、上記吸水性樹脂粒子を不定形破砕状にするため、上記吸水性樹脂粒子に機械的ダメージを与えた後に、上記二酸化ケイ素等の水不溶性無機粒子と吸水性樹脂粒子とを混合することが好ましい。吸水性樹脂粒子が不定形破砕状であるので、吸水性樹脂粒子の表面又はその近傍の少なくとも何れか一方に二酸化ケイ素等の水不溶性無機粒子を効率よく含ませることができ、得られる吸水剤の物性を向上させることができる。
【0155】
機械的ダメージとは、ガラス及び金属等を吸水性樹脂粒子に衝突させることにより、物理的衝撃を与えることをいう。
【0156】
吸水性樹脂粒子に機械的ダメージを与える方法としては、吸水性樹脂粒子に衝撃を与えることができれば特に限定されるものではない。たとえば、ガラス製容器に吸水性樹脂粒子及びガラスビーズを入れた後、振盪することによって機械的ダメージを与える方法(後述するペイントシェーカーテスト)を挙げることができる。また、その他の吸水性樹脂粒子に機械的ダメージを与える方法としては、吸水性樹脂粒子を、円筒形の容器にボール等と共に入れて回転させる方法(ボールミル)、攪拌翼を有する撹拌機内で撹拌する方法、パドルドライヤー(パドル翼を有する加熱機、冷却機)を通過させる方法、粉砕機で粉砕する方法、空気輸送により輸送する方法、吸水剤の粒子同士を衝突又は摩擦させる方法を挙げることができる。
【0157】
また、特にSFCが優れた吸水剤を得るためには、吸水性樹脂粒子に表面架橋した後に、機械的ダメージを加え、解砕した吸水性樹脂粒子に上記多価金属塩を混合した吸水性樹脂粒子にさらに機械的ダメージを加えた後に、二酸化ケイ素等の水不溶性無機粒子を加えることが特に好ましい。
【0158】
また、本実施形態に係る吸水剤は、水溶性不飽和単量体を重合して得られる吸水性樹脂粒子を含む吸水剤の製造方法であって、上記吸水性樹脂粒子の表面近傍を、ヒドロキシル基を少なくとも一つ有する表面架橋剤によって架橋又は被覆し、上記吸水性樹脂粒子の質量平均粒子径は200μm以上500μm以下であり、上記表面架橋剤によって架橋又は被覆した後に、上記多価金属塩と上記水不溶性無機粒子を、上記吸水性樹脂粒子と混合する方法(製造方法C)により製造することができる。
【0159】
上記製造方法において、まず、上記吸水性樹脂粒子の表面近傍を、ヒドロキシル基を少なくとも一つ有する表面架橋剤によって架橋又は被覆するが、<吸水性樹脂粒子>において上述した表面架橋剤及び表面架橋の方法を用いればよい。
【0160】
尚、上記製造方法Cにおける上記表面架橋の工程以外については、上述した製造方法A、Bで記載した方法を用いることができる。
【0161】
<吸水体>
本実施の形態に係る吸水体は、上記吸水剤を含むものである。上記吸水体を適当な素材と組み合わせることにより、たとえば、衛生材料の吸収層として好適な吸水体とすることができる。以下、吸水体について説明する。
【0162】
吸水体とは、血液や体液、尿等を吸収する、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、医療用パッド等の衛生材料に用いられる、吸水剤とその他の素材からなる成形された組成物のことである。用いられる素材の例としては、セルロース繊維が挙げられる。セルロース繊維の具体例としては、木材からのメカニカルパルプ、ケミカルパルプ、セミケミカルパルプ、溶解パルプ等の木材パルプ繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維等を例示できる。好ましいセルロース繊維は木材パルプ繊維である。これらセルロース繊維はナイロン、ポリエステル等の合成繊維を一部含有していてもよい。本実施の形態に係る吸水剤を吸水体の一部として使用する際には、吸水体中に含まれる上記吸水剤の質量が、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上の範囲である。吸水体中に含まれる本発明における吸水剤の質量が、20質量%未満になると、十分な効果が得られなくなるおそれがある。
【0163】
本実施の形態に係る吸水剤とセルロース繊維から吸水体を得るには、たとえば、セルロース繊維からなる紙やマットに上記吸水剤を散布し、必要によりこれらで挟持する方法、セルロース繊維と吸水剤を均一にブレンドする方法等、吸水体を得るための公知の手段を適宜選択できる。好ましくは、吸水剤とセルロース繊維を乾式混含した後、圧縮する方法である。この方法により、セルロース繊維からの吸水剤の脱落を著しく抑えることが可能である。圧縮は加熱下に行うことが好ましく、その温度範囲は、たとえば50℃以上200℃以下である。また、吸収体を得るために、米国特許第5849405号明細書、米国特許出願公開2003/060112号公報に記載されている方法等も好ましく用いられる。
【0164】
本実施の形態に係る吸水剤は、吸水体に使用された場合、諸物性に優れるため、液の取り込みが早く、また、吸水体表層の液の残存量が少ない、非常に優れた吸水体が得られる。
【0165】
本実施の形態に係る吸水剤は、優れた吸水特性を有しているため、種々の用途の吸水保水剤として使用できる。例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、医療用パッド等の吸収物品用吸水保水剤;水苔代替、土壌改質改良剤、保水剤、農薬効力持続剤等の農園芸用保水剤;内装壁材用結露防止剤、セメント添加剤等の建築用保水剤;リリースコントロール剤、保冷剤、使い捨てカイロ、汚泥凝固剤、食品用鮮度保持剤、イオン交換カラム材料、スラッジ又はオイルの脱水剤、乾燥剤、湿度調整材料等で使用できる。また、本実施の形態に係る吸水剤は、紙おむつ、生理用ナプキン等の、糞、尿又は血液の吸収用衛生材料に特に好適に用いられる。
【0166】
吸水体は、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、医療用パッド等の衛生材料に用いられる場合、(a)着用者の体に隣接して配置される液体透過性のトップシート、(b)着用者の身体から遠くに、着用者の衣類に隣接して配置される、液体に対して不透過性のバックシート、及び(c)トップシートとバックシートの間に配置された吸水体、を含んでなる構成で使用されることが好ましい。吸水体は二層以上であってもよいし、パルプ層等とともに用いてもよい。
【0167】
以上のように、本実施の形態に係る吸水剤は、言い換えれば、内部架橋構造を有し、水溶性不飽和単量体を重合して得られる吸水性樹脂粒子を含む吸水剤であって、上記吸水性樹脂粒子の表面近傍は、表面架橋剤によって架橋されており、上記吸水性樹脂粒子は、その表面及びその近傍の少なくとも何れか一方に二酸化ケイ素を含んでおり、上記二酸化ケイ素の表面における残留シラノール基密度は1.7(SiOH/nm)以下であり、かつ、上記吸水性樹脂粒子に対する上記二酸化ケイ素の含有量は10ppm以上1900ppm以下であり、上記吸水剤の質量平均粒子径は200μm以上500μm以下であり、吸水剤の全質量に対し、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合は5質量%以下である吸水剤である。
【0168】
上記構成によれば、吸水剤に含まれる吸水性樹脂粒子は、表面近傍が、表面架橋剤によって架橋されているため、膨潤した吸水剤に圧力をかけた際に生じる液の戻り量を減少させることができる。すなわち、4.83kPaの圧力に対する吸収力を高めることができる。また、上記吸水性樹脂粒子は、その表面及びその近傍の少なくとも何れか一方に二酸化ケイ素を含んでおり、二酸化ケイ素は通液性に優れるため、吸水剤の通液性を向上させることができる。
【0169】
また、上記二酸化ケイ素における残留シラノール基密度が上記の範囲であることにより、二酸化ケイ素同士が、水素結合することにより凝集することを抑制できると考えられる。すなわち、二酸化ケイ素同士が凝集し、飛散することを抑制できる。それゆえ、従来技術のように、二酸化ケイ素を用いても二酸化ケイ素の凝集に起因する粉塵の発生を防ぐことができる。また、二酸化ケイ素の含有量は上記範囲であるので、吸水剤は優れた諸物性を有し、かつ、吸水剤に含まれる粉塵量を低減させることを両立でき、得られる吸水剤の全質量に対し、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合は5質量%以下である。吸水剤に含まれる微細な粒子の割合を低減できるので、発生する粉塵量を抑制することができる。
【0170】
つまり、吸水剤の製造の際、吸水剤に含まれる二酸化ケイ素等の粒子が飛散することによる安全衛生上の問題が生じ難く、さらに、吸水体の物性低下が生じ難い。また、吸水剤の質量平均粒子径は上記の範囲であるので、吸収する液の通液性等が阻害されることなく、高い通液性を有する吸水剤を提供することができる。
【0171】
また、上記吸水剤では、上記吸水性樹脂粒子の表面及びその表面近傍の少なくとも何れか一方に、多価金属塩を上記吸水剤に対し、0.001質量%以上5質量%以下含むことが好ましい。
【0172】
これにより、上記吸水剤は上記多価金属塩(好ましくは3価の水溶性多価金属塩)を含むので、吸水剤の4.83kPaの圧力に対する吸収力、固定された高さ吸収を大きく低下させることなく、食塩水流れ誘導性を向上させることができる。また、二酸化ケイ素が存在していない、吸水剤の表面及びその表面近傍の少なくとも何れか一方において、二酸化ケイ素の代替不足を補うことができる。また、二酸化ケイ素と上記多価金属塩との相乗効果により、さらに優れた物性の吸水剤を得ることができる。
【0173】
また、上記吸水剤では、上記吸水性樹脂粒子は、表面架橋後に機械的ダメージを受けてなることが好ましい。
【0174】
これにより、上記吸水性樹脂粒子の形状は不定形破砕状となるため、その表面及びその近傍の少なくとも何れか一方に上記二酸化ケイ素を効率良く含むことができる。
【0175】
また、上記吸水剤では、上記二酸化ケイ素の表面における残留シラノール基密度は0.7(SiOH/nm)以上1.7(SiOH/nm)以下であることが好ましい。
【0176】
これにより、上記二酸化ケイ素は、その疎水性の傾向が強まりすぎることがなく、適切な範囲となる。そのため、得られる吸水剤の液拡散速度が低下することを防止できる。
【0177】
また、上記吸水剤では、液拡散速度が0.2(mm/sec)以上10.0(mm/sec)以下であることが好ましい。また、好ましくは、0.5(mm/sec)以上10.0(mm/sec)以下、さらに好ましくは、0.8(mm/sec)以上10.0(mm/sec)以下である。
【0178】
これにより、吸水剤が吸収した液を効率良く拡散できるので、吸水体への液の取り込み速度の改善、吸水体中での液の拡散性向上による吸水性能を向上させることができる。
【0179】
また、上記吸水体は、上記吸水剤を含むことを特徴としている。
【0180】
これにより、高い物性を兼ね備え、かつ、粉塵量の抑制された吸水体を提供することができる。
【0181】
また、本実施の形態に係る吸水剤の製造方法は、言い換えれば、内部架橋構造を有し、水溶性不飽和単量体を重合して得られる吸水性樹脂粒子を含む吸水剤の製造方法であって、上記吸水性樹脂粒子の表面近傍を、表面架橋剤によって架橋し、上記吸水性樹脂粒子の質量平均粒子径は200μm以上500μm以下であり、上記表面架橋剤によって架橋する際、架橋する前、架橋する後の群から選ばれる少なくとも何れかの時に上記吸水性樹脂粒子に対し10ppm以上1900ppm以下、かつ、残留シラノール基密度が1.7(SiOH/nm)以下である二酸化ケイ素と上記吸水性樹脂粒子とを混合する製造方法である。
【0182】
上記方法によれば、上記吸水性樹脂粒子と上記二酸化ケイ素とを混合するので、高い物性を兼ね備え、かつ、粉塵量の抑制された吸水剤を製造することができる。
【0183】
また、吸水剤の上記製造方法では、上記吸水性樹脂粒子に機械的ダメージを与えた後に、上記二酸化ケイ素と吸水性樹脂粒子とを混合することが好ましい。
【0184】
これにより、上記吸水性樹脂粒子を不定形破砕状とした後に、上記二酸化ケイ素と混合するので、吸水性樹脂粒子の表面又はその近傍の少なくとも何れか一方に二酸化ケイ素を効率よく含ませることができ、得られる吸水剤の物性を向上させることができる。
【0185】
また、吸水剤の上記製造方法では、上記表面架橋剤によって架橋する際、架橋する前又は架橋する後の少なくとも何れかの時に、多価金属塩と上記吸水性樹脂粒子とを混合することが好ましい。
【0186】
これにより、上記吸水剤は上記多価金属塩(好ましくは3価の水溶性多価金属塩)を含むので、吸水剤の4.83kPaの圧力に対する吸収力、固定された高さ吸収を大きく低下させることなく、食塩水流れ誘導性を向上させることができる。また、二酸化ケイ素が存在していない、吸水剤の表面及びその表面近傍の少なくとも何れか一方において、二酸化ケイ素の代替不足を補うことができる。また、二酸化ケイ素と上記多価金属塩との相乗効果により、さらに優れた物性の吸水剤を製造することができる。
【0187】
また、吸水剤の上記製造方法では、上記二酸化ケイ素と吸水性樹脂粒子とを混合する際又は混合した後に、上記二酸化ケイ素と吸水性樹脂粒子とを空気輸送することが好ましい。
【0188】
これにより、混合された上記二酸化ケイ素及び吸水性樹脂粒子は、空気輸送によってさらに混合されることとなる。つまり、凝集が生じることなく、上記二酸化ケイ素と吸水性樹脂粒子とをさらに効率よく混合することができる。そのため、二酸化ケイ素を吸水性樹脂粒子に対しより均一に混合でき、得られる吸水剤の物性を高めることができる。
【0189】
また、本実施の形態に係る吸水剤は、言い換えれば、水溶性不飽和単量体を重合して得られる内部架橋構造を有する吸水性樹脂粒子を含む吸水剤であって、該吸水性樹脂粒子の表面近傍は、有機表面架橋剤及び/又は水溶性無機表面架橋剤によって表面架橋されており、かつ該吸水剤の質量平均粒子径が200〜500μmであって、かつ該吸水剤に含まれる目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合が5質量%以下であって、かつ吸水性樹脂粒子表面の官能基とイオン結合し得る官能基を少なくとも表面に有する水不溶性無機微粒子を含み、かつ該水不溶性無機微粒子が吸水性樹脂粒子表面、又はその近傍に存在する吸水剤である。
【0190】
上記吸水剤では、上記吸水性樹脂粒子表面に存在する官能基がカルボキシル基であり、上記水不溶性無機微粒子の少なくとも表面に存在する官能基がアミノ基であることが好ましい。
【0191】
上記吸水剤では、上記吸水性樹脂粒子が多孔質構造を有する粒子を含んでなることが好ましい。
【0192】
尚、分散液のpHが7以上10以下でBET法による比表面積50cm/gの無機粉末と吸水性樹脂とよりなる吸水剤(特開2000−93792号公報)が公知技術であるが、この技術では吸水性樹脂の粒子径や微粒子の量がコントロールされていないため、本発明の課題は解決できていない。また、吸水性樹脂の通液性が十分でないため吸収体への液の取り込み速度も十分でなかった。
【0193】
また、本実施の形態に係る吸水剤の製造方法は、言い換えれば、水溶性不飽和単量体を重合して得られる内部架橋構造を有する吸水性樹脂粒子を含む吸水剤の製法であって、表面近傍が、有機表面架橋剤及び/又は水溶性無機表面架橋剤によって表面架橋され、かつ質量平均粒子径が200〜500μmであって、かつ含まれる目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合が5質量%以下である吸水性樹脂粒子と、吸水性樹脂粒子表面の官能基とイオン結合し得る官能基を少なくとも表面に有する水不溶性無機微粒子を該吸水性樹脂粒子の表面架橋時、又はその前後の工程で、混合する製造方法である。
【0194】
上記製造方法では、上記吸水性樹脂粒子が吸水性樹脂粒子に対して0.01〜1.0質量%の水溶性無機塩好ましくは過硫酸塩を含む有機表面架橋剤及び/又は水溶性無機表面架橋剤との混合、加熱によって架橋されたものであることが好ましい。
【0195】
上記製造方法では、上記吸水性樹脂粒子が沸点が100℃以下の親水性有機溶媒を含まない有機表面架橋剤及び/又は水溶性無機表面架橋剤との混合、加熱によって架橋されたものであることが好ましい。
【0196】
上記製造方法では、上記水不溶性無機微粒子の添加量が10〜990ppmであることが好ましい。
【0197】
上記製造方法では、さらに上記吸水性樹脂粒子に対して、0.001〜5質量%の少なくとも3価の水溶性多価金属塩を表面架橋時、又はその前後の工程で、混合することが好ましい。
【0198】
上記製造方法では、上記水不溶性無機微粒子の混合後に、吸水剤が空気輸送される工程を含むことが好ましい。
【0199】
上記構成によれば、水不溶性の無機微粒子を含んでいても、吸収体の製造の際に微粒子の飛散による安全衛生上の問題を引き起こさず、吸収体の性能低下を引き起こさない吸水剤とその製法を提供できる。
【0200】
また、上記構成によれば、吸水剤の吸収量を示す遠心分離機保持容量(CRC)及び/又は通液性を示す食塩水流れ誘導性(SFC)に優れる吸水剤を得ることで、吸収体への液の取り込み速度に優れる吸水剤とその製法を提供できる。さらに上記構成よれば、遠心分離機保持容量(CRC)及び通液性を示す食塩水流れ誘導性(SFC)のバランスに優れる吸水剤を得ることで、吸収体への液の取り込み速度に優れる吸水剤とその製法を提供できる。
【0201】
また、上記構成によれば、吸収体に使用した際、吸収体の垂直方向への液の吸い上げ能力に優れる(すなわち、固定された高さ吸収(FHA)に優れる)吸水剤とその製法を提供できる。
【0202】
また、上記構成によれば、4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)に優れる吸水剤を得ることで、吸収体に圧力が加わった際の液の戻り(通称リウエット:Re−Wetといわれる)が少ない吸水剤とその製法を提供できる。
【0203】
また、本実施の形態に係る吸水剤は、言い換えれば、内部架橋構造を有し、水溶性不飽和単量体を重合して得られる吸水性樹脂粒子を含む吸水剤であって、上記吸水性樹脂粒子の表面近傍は、ヒドロキシル基を少なくとも一つ有する表面架橋剤によって架橋又は被覆されており、上記吸水性樹脂粒子は、その表面及びその近傍の少なくとも何れか一方に多価金属塩及び水不溶性無機粒子を含んでおり、上記吸水剤の質量平均粒子径は200μm以上500μm以下であり、吸水剤の全質量に対し、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合は5質量%以下であることを特徴としている。
【0204】
上記構成によれば、吸水剤に含まれる吸水性樹脂粒子は、表面近傍が、表面架橋剤によって架橋又は被覆されているため、膨潤した吸水剤に圧力をかけた際に生じる液の戻り量を減少させることができる。すなわち、4.83kPaの圧力に対する吸収力を高めることができる。また、上記吸水性樹脂粒子は、その表面及びその近傍の少なくとも何れか一方に多価金属塩及び水不溶性無機粒子を含んでおり、水不溶性無機粒子は通液性に優れるため、吸水剤の通液性を向上させることができる。
【0205】
また、上記多価金属塩と上記水不溶性無機粒子は、双方が吸水性樹脂粒子の表面及びその近傍の少なくとも何れか一方に存在することにより、静電的な相互作用、多価金属への配位結合、空気中の水分による水分子を介した配位結合と水素結合により、水不溶性無機粒子の飛散を抑制できると考えられる。それゆえ、従来技術のように、水不溶性無機粒子を用いても水不溶性無機粒子の飛散に起因する粉塵の発生を防ぐことができる。また、水不溶性無機粒子の含有量は上記範囲であるので、吸水剤は優れた諸物性を有し、かつ、吸水剤に含まれる粉塵量を低減させることとを両立でき、得られる吸水剤の全質量に対し、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合は5質量%以下である。吸水剤に含まれる微細な粒子の割合を低減できるので、発生する粉塵量を抑制することができる。
【0206】
つまり、吸水剤の製造の際、吸水剤に含まれる水不溶性無機粒子等の粒子が飛散することによる安全衛生上の問題が生じ難く、さらに、吸水体の物性低下が生じ難い。また、吸水剤の質量平均粒子径は上記の範囲であるので、吸収する液の通液性等が阻害されることなく、高い通液性を有する吸水剤を提供することができる。
【0207】
また、上記吸水剤では、上記吸水性樹脂粒子の表面及びその表面近傍の少なくとも何れか一方に、多価金属塩を上記吸水剤に対し、0.001質量%以上5質量%以下含むことが好ましい。
【0208】
これにより、上記吸水剤は上記多価金属塩(好ましくは3価の水溶性多価金属塩)を含むので、吸水剤の4.83kPaの圧力に対する吸収力、固定された高さ吸収を大きく低下させることなく、食塩水流れ誘導性を向上させることができる。また、水不溶性無機粒子が存在していない、吸水剤の表面及びその表面近傍の少なくとも何れか一方において、水不溶性無機粒子の不足を補うことができる。また、水不溶性無機粒子と上記多価金属塩との相乗効果により、さらに優れた物性の吸水剤を得ることができる。
【0209】
また、上記吸水剤では、上記水不溶性無機粒子は二酸化ケイ素であることが好ましい。
【0210】
これにより、上記吸水性樹脂粒子の表面及びその表面近傍の少なくとも何れか一方に存在する多価金属塩と二酸化ケイ素に存在するシラノール基との相互作用が発生し、粉塵量の抑制を効果的に行うことができる。
【0211】
また、上記吸水剤では、上記吸水性樹脂粒子は、表面架橋後に機械的ダメージを受けてなることが好ましい。
【0212】
これにより、上記吸水性樹脂粒子の形状は不定形破砕状となるため、その表面及びその近傍の少なくとも何れか一方に上記水不溶性無機粒子を効率良く含むことができる。
【0213】
また、上記吸水剤では、遠心分離機保持容量が30(g/g)以上50(g/g)未満であり、かつ、食塩水流れ誘導性が10(10−7・cm・s・g−1)以上であることが好ましい。
【0214】
これにより、遠心分離機保持容量及び食塩水流れ誘導性のバランスに優れる吸水剤を提供することができる。
【0215】
また、上記吸水剤では、4.83kPaの圧力に対する吸収力が16(g/g)以上30(g/g)以下であることが好ましい。
【0216】
これにより、4.83kPaの圧力下において吸水剤から放出される液の量を低減できるので、実用時に圧力が加えられた場合に液の戻りが少ない吸水体を提供することができる。
【0217】
また、上記吸水剤では、粒度分布の対数標準偏差が0.20以上0.40以下であることが好ましい。
【0218】
これにより、粒度分布が狭いため、吸水剤の通液性の低下及び、吸水体への液の取り込み速度が著しく悪化することを回避できる。
【0219】
また、上記吸水剤では、上記吸水剤に含まれる粉塵量が、吸水剤の質量に対して400ppm以下であることが好ましい。
【0220】
これにより、さらに粉塵量の低減された吸水剤を提供することができ、吸水剤に含まれる水不溶性無機粒子等の粒子が飛散することによる安全衛生上の問題が生じ難く、吸水剤の物性低下が生じ難い。
【0221】
また、本実施の形態に係る吸水剤は、言い換えれば、上記吸水剤を含むことを特徴としている。
【0222】
これにより、高い物性を兼ね備え、かつ、粉塵量の抑制された吸水体を提供することができる。
【0223】
また、本実施の形態に係る吸水剤の製造方法は、言い換えれば、内部架橋構造を有し、水溶性不飽和単量体を重合して得られる吸水性樹脂粒子を含む吸水剤の製造方法であって、上記吸水性樹脂粒子の表面近傍を、ヒドロキシル基を少なくとも一つ有する表面架橋剤によって架橋又は被覆し、上記吸水性樹脂粒子の質量平均粒子径は200μm以上500μm以下であり、上記表面架橋剤によって架橋又は被覆後に、多価金属塩と水不溶性無機粒子を上記吸水性樹脂粒子と混合することを特徴としている。
【0224】
上記方法によれば、上記吸水性樹脂粒子と多価金属塩及び水不溶性無機粒子とを混合するので、高い物性を兼ね備え、かつ、粉塵量の抑制された吸水剤を製造することができる。
【0225】
また、上記吸水剤の製造方法では、上記吸水性樹脂粒子に機械的ダメージを与えた後に、多価金属塩と水不溶性無機粒子を吸水性樹脂粒子と混合することが好ましい。
【0226】
これにより、上記吸水性樹脂粒子を不定形破砕状とした後に、上記多価金属塩と上記水不溶性無機粒子を混合するので、吸水性樹脂粒子の表面又はその近傍の少なくとも何れか一方に効率よく含ませることができ、得られる吸水剤の物性を向上させることができる。
【0227】
また、上記吸水剤の製造方法では、ヒドロキシル基を少なくとも一つ有する表面架橋剤によって架橋又は被覆後に、多価金属塩と上記吸水性樹脂粒子とを混合することが好ましい。
【0228】
これにより、上記吸水剤は上記多価金属塩(好ましくは3価の水溶性多価金属塩)を含むので、吸水剤の4.83kPaの圧力に対する吸収力、固定された高さ吸収を大きく低下させることなく、食塩水流れ誘導性を向上させることができる。また、水不溶性無機粒子が存在していない、吸水剤の表面及びその表面近傍の少なくとも何れか一方において、水不溶性無機粒子の代替不足を補うことができる。また、上記水不溶性無機粒子と上記多価金属塩との相乗効果により、さらに優れた物性の吸水剤を製造することができる。
【0229】
また、上記吸水剤の製造方法では、上記水不溶性無機粒子と吸水性樹脂粒子とを混合する際又は混合した後に、上記水不溶性無機粒子と吸水性樹脂粒子とを空気輸送することが好ましい。
【0230】
これにより、混合された上記水不溶性無機粒子及び吸水性樹脂粒子は、空気輸送によってさらに混合されることとなる。つまり、凝集が生じることなく、上記水不溶性無機粒子と吸水性樹脂粒子とをさらに効率よく混合することができる。そのため、水不溶性無機粒子を吸水性樹脂粒子に対しより均一に混合でき、得られる吸水剤の物性を高めることができる。
【0231】
また、上記水不溶性無機粒子と吸水性樹脂粒子との混合は、上記多価金属塩と吸水性樹脂粒子との混合後に行われることが好ましい。これにより、吸水性樹脂粒子の表面及びその近傍の少なくともいずれか一方に存在する多価金属塩と水不溶性無機粒子が、効率的に静電的相互作用、多価金属への配位結合、空気中の水分による水分子を介した配位結合と水素結合ができ、水不溶性無機粒子の飛散に起因する粉塵量を低減することができる。
【0232】
〔実施例〕
以下に、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下では、便宜上、「質量部」を単に「部」と、「リットル」を単に「L」と記すことがある。また、「質量%」を「wt%」と記すことがある。
【0233】
吸水性樹脂粒子又は吸水剤の諸性能は、以下の方法で測定した。特に記載が無い限り下記の測定は室温(20〜25℃)、湿度50RH%の条件下で行われたものとする。
【0234】
尚、衛生材料等の最終製品として使用された吸水剤の場合は、吸水剤は吸湿しているので、適宜、吸水剤を最終製品から分離して減圧低温乾燥後(例えば、1mmHg以下、60℃で12時間)に測定すればよい。また、本実施例及び比較例において使用された吸水剤の含水率はすべて6質量%以下であった。
【0235】
<遠心分離機保持容量(CRC)>
遠心分離機保持容量(CRC)は0.90質量%食塩水に対する無加圧下で30分の吸収倍率を示す。尚、CRCは、無加圧下吸収倍率と称されることもある。
【0236】
吸水性樹脂粒子又は吸水剤0.200gを不織布製(南国パルプ工業(株)製、商品名:ヒートロンペーパー、型式:GSP−22)の袋(85mm×60mm)に均一に入れてヒートシールした後、室温で大過剰(通常500ml程度)の0.90質量%食塩水(塩化ナトリウム水溶液)中に浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン社製、遠心機:型式H−122)を用いてedana ABSORBENCY II 441.1−99に記載の遠心力(250G)で3分間水切りを行った後、袋の質量W1(g)を測定した。また、同様の操作を吸水性樹脂粒子又は吸水剤を用いずに行い、その時の質量W0(g)を測定した。そして、これらW1、W0から、次式に従って遠心分離機保持容量(CRC)(g/g)を算出した。
【0237】
遠心分離機保持容量(CRC)(g/g)
=(W1(g)−W0(g))/(吸水性樹脂粒子又は吸水剤の質量(g))−1
<4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)>
圧力に対する吸収力(AAP)は0.90質量%食塩水に対する4.83kPaで60分の吸収倍率を示す。尚、AAPは、4.83kPaでの加圧下吸収倍率と称されることもある。図1は、AAPの測定装置10を示す断面図である。
【0238】
図1に示す測定装置10を用い、内径60mmのプラスチックの支持円筒1の底に、ステンレス製400メッシュの金網2(目の大きさ38μm)を融着させ、室温(20℃以上25℃以下)、湿度50RH%の条件下で、金網2上に吸水性樹脂粒子又は吸水剤0.900gを均一に散布し、その上に、試験体3である吸水性樹脂粒子又は吸水剤に対して4.83kPa(0.7psi)の荷重を均一に加えることができるよう調整された、外径が60mmよりわずかに小さく支持円筒1との隙間が生じず、かつ上下の動きが妨げられないピストン4と荷重5とをこの順に載置し、この測定装置10の全体の質量Wa(g)を測定した。
【0239】
直径150mmのペトリ皿6の内側に直径90mmのガラスフィルター7(株式会社相互理化学硝子製作所社製、細孔直径:100〜120μm)を置き、0.90質量%食塩水9(20℃以上25℃以下)をガラスフィルター7の上面と同じ液面になるように加えた。その上に、直径90mmの濾紙8(ADVANTEC東洋株式会社、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を1枚載せ、表面が全て濡れるようにし、かつ過剰の液を除いた。
【0240】
上記測定装置10の一式を上記湿った濾紙上に載せ、液を荷重下で吸収させた。1時間後、測定装置10の一式を持ち上げ、その質量Wb(g)を測定した。そして、Wa、Wbから、下記の式に従って4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)(g/g)を算出した。
【0241】
4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)
=(Wb(g)−Wa(g))/(吸水性樹脂粒子又は吸水剤の質量(0.900g))
<食塩水流れ誘導性(SFC)>
食塩水流れ誘導性(SFC)は吸水性樹脂粒子又は吸水剤の膨潤時の液透過性を示す値である。SFCの値が大きいほど、吸水性樹脂粒子又は吸水剤は、高い液透過性を有することとなる。本実施例においては、米国特許第5849405号明細書記載のSFC試験に準じて行った。図2は、SFCの測定装置20を示す概略図である。
【0242】
図2に示す測定装置20において、タンク21にはガラス管22が挿入されており、ガラス管22の下端は、0.69質量%食塩水23をセル31中のゲル34の底部から、5cm上の高さに維持できるように配置されている。また、タンク21中の0.69質量%食塩水23は、コック付きL字管24を通じてセル41へ供給されるよう構成されている。セル31の下には、透過した液を捕集する捕集容器38が配置されており、捕集容器38は上皿天秤39の上に設置されている。セル31の内径は6cmであり、下部の底面にはNo.400ステンレス製金網(目開き38μm)32が設置されていた。ピストン36の下部には液が透過するのに十分な穴37があり、底部には吸水性樹脂粒子又は吸水剤あるいはその膨潤ゲルが、穴37へ入り込まないように透過性の良いガラスフィルター35が取り付けてあった。セル31は、セル31を乗せるための台の上に置かれ、セル31と接する台の面は、液の透過を妨げないステンレス製の金網33の上に設置した。
【0243】
人工尿(1)は、塩化カルシウムの2水和物0.25g、塩化カリウム2.0g、塩化マグネシウムの6水和物0.50g、硫酸ナトリウム2.0g、りん酸2水素アンモニウム0.85g、りん酸水素2アンモニウム0.15g、及び、純水994.25gを加えたものを用いた。
【0244】
図2に示す測定装置20を用い、容器30に均一に入れた吸水性樹脂粒子又は吸水剤(0.900g)を人工尿(1)中で2.07kPa(0.3psi)の加圧下、60分間膨潤させゲル34とした。その後、ゲル34のゲル層の高さを記録し、次に2.07kPa(0.3psi)の加圧下、0.69質量%の食塩水23を、一定の静水圧でタンク21から膨潤したゲル層を通液させた。このSFC試験は室温(20℃以上25℃以下)で行った。試験ではコンピューターと天秤とを用い、時間の関数として、20秒間隔でゲル層を透過する液体量を10分間記録した。膨潤したゲル34(の主に粒子間)を透過する流速Fs(T)は増加質量(g)を増加時間(s)で割ることによりg/sの単位で決定した。一定の静水圧と安定した流速が得られた時間をTsとし、Tsと10分間の間に得たデータだけを流速計算に使用して、Tsと10分間の間に得た流速を使用してFs(T=0)の値、つまりゲル層を通る最初の流速を計算した。Fs(T=0)はFs(T)対時間の最小2乗法の結果をT=0に外挿することにより計算した。
【0245】
食塩水流れ誘導性(SFC)
=(Fs(t=0)×L0)/(ρ×A×ΔP)
=(Fs(t=0)×L0)/139506
ここで、Fs(t=0):g/sで表した流速、L0:cmで表したゲル層の高さ、ρ:NaCl溶液の密度(1.003g/cm)、A:セル31中のゲル層上側の面積(28.27cm)、ΔP:ゲル層にかかる静水圧(4920dyne/cm)及びSFC値の単位は(10−7・cm・s・g−1)である。
【0246】
<固定された高さ吸収(FHA)>
米国特許出願公開2005/0003191A1号公報に記載されている方法に従って測定を行った。尚本発明においては測定時の高さは20cmで行った。
【0247】
<質量平均粒子径(D50)及び粒度分布の対数標準偏差(σζ)>
国際公開第2004/69915号パンフレット記載の質量平均粒子径(D50)及び粒度分布の対数標準偏差(σζ)試験に準じて行った。
【0248】
吸水性樹脂粒子又は吸水剤を目開き850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、45μm等のJIS標準ふるいで篩い分けし、残留百分率Rを対数確率紙にプロットした。これにより、R=50質量%に相当する粒子径を質量平均粒子径(D50)として読み取った。また、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は下記の式で表され、σζの値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味する。
【0249】
σζ=0.5×ln(X2/X1)
(X1はR=84.1%、X2はR=15.9%の時のそれぞれの粒子径)
質量平均粒子径(D50)及び粒度分布の対数標準偏差(σζ)を測定する際の分級方法は、吸水性樹脂粒子又は吸水剤10.0gを、室温(20℃以上25℃以下)、湿度50RH%の条件下で、目開き850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、45μmのJIS標準ふるい(THE IIDA TESTING SIEVE:径8cm)に仕込み、振動分級器(IIDA SIEVE SHAKER、TYPE:ES−65型、SER.No.0501)により、5分間、分級を行った。
【0250】
<液拡散速度(LDV)>
液拡散速度(LDV)は、特開平5−200068号(EP532002)に記載の吸い上げ指数測定装置を用いて測定した。尚、測定に際して、トラフ・シートはSUS304のステンレス鋼グレード2B仕上げにて作製した。
【0251】
まず、20°の角度で設置したトラフ・シートのトラフ溝に吸水性樹脂粒子又は吸水剤1.00g±0.005gを0〜20cmの目盛り間に均等に散布した。さらに、へらを用いて吸水性樹脂粒子又は吸水剤をより均等に分散させた。
【0252】
吸い上げに使用する液は、1Lの0.9質量%の食塩水(塩化ナトリウム水溶液)に対して食用青色1号(商品名、東京化成工業株式会社)0.01gの割合で着色した液を用いた。
【0253】
貯液槽の液面がトラフの最も低い位置から0.5cm上になるように調整した後、ステンレス鋼のスクリーンメッシュ(400メッシュ)が液と接触すると同時に液吸い上げ時間(WT)の測定を開始した。液吸い上げ時間(WT)は、液体が10cm目盛り位置まで吸い上げられた時間(sec)を表す。尚、貯液槽中の液とステンレス鋼のスクリーンメッシュとがトラフの最も低い位置から0.5cm上まで浸漬する速度は、液面から垂直方向に1.35〜1.40mm/sの速度であった。液拡散速度(LDV)は、次式により算出される。
【0254】
LDV(mm/s)=100(mm)/WT(s)
<目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合>
上記、質量平均粒子径(D50)及び粒度分布の対数標準偏差(σζ)の測定方法と同様の分級操作を行い、目開き150μmのふるいを通過した量から目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合(質量%)を求めた。
【0255】
<水可溶分(水可溶成分)量>
250ml容量の蓋付きプラスチック容器に0.90質量%食塩水184.3gをはかり取り、その水溶液中に吸水性樹脂粒子又は吸水剤1.00gを加え16時間、スターラーを回転させ攪拌することにより樹脂中の可溶分を抽出した。この抽出液を濾紙1枚(ADVANTEC東洋株式会社、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を用いて濾過することにより得られた濾液の50.0gを測り取り測定溶液とした。
【0256】
はじめに0.90質量%食塩水だけを、まず、0.1NのNaOH水溶液でpH10まで滴定を行い、その後、0.1NのHCl水溶液でpH2.7まで滴定して空滴定量([bNaOH]ml、[bHCl]ml)を得た。
【0257】
同様の滴定操作を測定溶液についても行うことにより滴定量([NaOH]ml、[HCl]ml)を求めた。
【0258】
例えば既知量のアクリル酸とそのナトリウム塩からなる吸水性樹脂粒子又は吸水剤の場合、そのモノマーの平均分子量と上記操作により得られた滴定量をもとに、吸水性樹脂粒子又は吸水剤中の可溶分量を以下の計算式により算出することができる。未知量の場合は滴定により求めた中和率を用いてモノマーの平均分子量を算出する。
【0259】
可溶分(質量%)=0.1×(平均分子量)×184.3×100×([HCl]−[bHCl])/1000/1.0/50.0
中和率(mol%)=(1−([NaOH]−[bNaOH])/([HCl]−[bHCl]))×100
<粉塵量(粉塵性)>
下記の条件で所定時間にガラス繊維濾紙に吸引され捕捉されたダストの質量増をもって、吸水剤の粉塵量を測定した。測定装置としては独国Heubach Engineering GmbH製 ホイバッハ・ダストメータ(Heubach DUSTMETER)、測定モードTypeIで実施した。測定時の雰囲気の温度湿度は25℃(±2℃),相対湿度20〜40%,常圧で行った。測定方法は以下のように行った。
【0260】
(1)回転ドラム200に、測定サンプルの吸水剤100.00g入れる。
【0261】
(2)保留粒子径0.5μm(JIS P3801)で、直径50mmのガラス繊維濾紙(例えばADVANTEC製、GLASS FIBER,GC−90ないしその相当品を直径50mmに加工)の質量を0.00001g単位まで測定する([Da]g)。
【0262】
(3)回転ドラム200に大型粒子分離機201を取り付け、ガラス繊維濾紙204を装着したフィルターケース202を取り付ける。
(4)ダストメータにおける制御部203の測定条件を、下記のように設定し測定する。ドラム回転数:30R/min、吸引風量:20L/min、Time(測定時間):30分。
【0263】
(5)所定時間後、ガラス繊維濾紙204の質量を、0.00001g単位まで測定する([Db])。
【0264】
粉塵量は、以下のようにして算出する。
粉塵量[ppm]=([Db]−[Da])/100.00×1000000
<ペイントシェーカーテスト>
ペイントシェーカーテスト(PS)とは、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、直径6mmのガラスビーズ10g、吸水性樹脂粒子又は吸水剤30gを入れてペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488)に取り付け、800cycle/min(CPM)で振盪するものであり、装置詳細は特開平9−235378号公報に開示されている。
【0265】
振盪時間を30分間としたものをペイントシェーカーテスト1、10分間としたものをペイントシェーカーテスト2とする。
【0266】
振盪後、目開き2mmのJIS標準篩でガラスビーズを除去し、ダメージを与えられた吸水性樹脂粒子又は吸水剤が得られる。
【0267】
<摩擦帯電電荷>
吸水剤25gを、ガラス製のスクリュー管(株式会社マルエム社製、スクリュー管No.7、口内径×胴径×高さ=Ф23mm×Ф35mm×78mm、キャップ:ポリプロピレン製、パッキン:耐熱ハイシート製)に入れて密閉した。
【0268】
この吸水剤が密閉されたスクリュー管を連続で20秒間震盪した。この震盪の操作は、機械で行ってもよいし、手で行ってもよい。この震盪の条件は、1秒間に3〜5回の振動数で、振幅の距離は10〜20cmにて行う。この震盪はできる限りスクリュー管内の吸水剤が大きく速く動くようになされる必要がある。
【0269】
20秒間の震盪後、すぐにスクリュー管内の吸水剤をシート上に広げ、非接触の静電気測定器(製品名:シムコ静電気測定器 FMX−002、シムコジャパン株式会社製)を用いて、上記測定器に備えられた製造メーカー作成のマニュアルに従い、吸水剤の帯電電位を測定した。帯電電位の測定は、吸水剤をシート上に広げてから15秒以内に測定を完了させる。さらに上記マニュアルに記載されているように、測定時において、静電気測定器と吸水剤との距離を25mm±1mmに設定した。この15秒以内の測定時間において静電気測定装置に表示される帯電電位を即座に読み取った。読み取られた帯電電位がマイナスの電位であれば、摩擦帯電電荷は負電荷であるとした。
【0270】
より具体的には、上記静電気測定器に表示される帯電電位が+0.01〜+20.00kvの範囲であれば摩擦帯電電荷は正電荷であるとし、上記静電気測定器に表示される帯電電位が−20.00〜−0.01kvの範囲であれば摩擦帯電電荷は負電荷であるとした。搬送速度安定指数を小さくする観点から、摩擦帯電電荷の測定において観測される上記帯電電位は、−10.00kv以上−0.01kv以下であることが好ましく、−5.00Kv以上−0.01kv以下であることがより好ましい。
【0271】
尚、上記した測定の際に使用するシートとして、ショーワ株式会社製の手袋(商品名:ビニトップ厚手、材料名(表):塩化ビニール樹脂(非フタル酸エステル系可塑剤)、材料名(裏):レーヨン(植毛))を12cm×12cmに切り取ったものを使用した。
【0272】
また、吸水剤をシート上に広げる際は、手袋の表をシートの上面として使用し、このシートの上面の上に、吸水剤をシートからこぼれず且つ山盛りの状態となるように広げ、この状態で摩擦帯電電荷を測定した。この山盛りの状態とは、例えば、シート上に広げられた吸水剤が、高さ2〜4cmで且つ底面の直径が7〜12cmである略円錐形状の状態である。さらに、この摩擦帯電電荷の測定は、室温が23±2℃、相対湿度が40±3%RHに調整された部屋にて行った。
【0273】
<粉塵中のSiOの割合>
上記粉塵量の測定によって捕集された粉塵中のSiOの割合(質量%)を測定することにより、粉塵中のSiOの割合を求めた。
【0274】
粉塵中に含まれる二酸化珪素の定量は、粉塵に含有するNa元素、Al元素、Si元素の質量%を分析し、吸水性樹脂(中和塩がNa塩の場合)の中和率と重量平均分子量とをもとに、該分析結果から吸水性樹脂とSiOとの質量比を算出することにより行った。
【0275】
吸水性樹脂の中和塩が、カリウム、リチウム等の一価アルカリ塩/アンモニウム塩等の場合には、上記方法に準じて粉塵中のSiOの割合を求めることができる。例えば、カリウム塩の場合には、K元素、Al元素、Si元素の質量%を分析することにより、粉塵中のSiOの割合を求めることができる。
【0276】
粉塵に含有するNa元素、Al元素、Si元素等の定量分析は、SEM・EDS(Energy Dispersive Xray Spectrometer)を用いてZAF法により行った。
【0277】
上記分析における粉塵のサンプリングは、上記粉塵量の測定で用いたガラス繊維濾紙から粉塵を適量採取し、5mm×5mmのカーボンテープを貼ったSEM用試料台に移し取ることにより行った。このときカーボンテープ上に粉塵が均一になるように散布した。
【0278】
上記分析の測定条件は、下記の通りである。
装置:走査電子顕微鏡(JOEL製 JSM−5410LV SCANNING MICROSCOPE)
加速電圧:20kV
倍率:20倍
測定視野:900μm×1200μm程度
測定視野における全面積の少なくとも50体積%以上が粉塵で覆われている状態で測定
Siピーク:SiK 1.739KeV
Naピーク:NaK 1.041KeV
Alピーク:AlK 1.486KeV
尚、他の元素のピークが上記ピークに重なる場合(例えば、NaKとZnLa等)は、重なっている他の元素のピーク(ZnであればZnKa)の値を差し引くことにより補正を行った。
【0279】
上記Na元素の質量%(以下、「Na%」と略する場合がある)、Al元素の質量%(以下、「Al%」と略する場合がある)、Si元素の質量%(以下、「Si%」と略する場合がある)、及び後述する吸水性樹脂の中和率N(mol%)、ポリマーユニット重量平均分子量Mwから、次式によって粉塵中に含有されるSiOの割合(質量%)を算出することができる。
ポリマーユニット重量平均分子量Mw
=72.06×(1−N/100)+94.05×N/100
ポリマー成分量P=(Na%/23)/(N/100)×Mw
SiO成分量S=(Si%/28.08)×60.08
硫酸アルミニウム成分量A=(Al%/26.98)×630.4/2
粉塵中に含有されるSiOの割合(質量%)=S/(P+S+A)×100
上記式中、Nは吸水性樹脂の中和率であり、上記水可溶分量の測定方法により測定することができる。
【0280】
尚、粉塵中に含有されるSiOの割合は、上述した方法により測定されることが好ましいが、成分が未知であったり、他の元素が多く存在する場合等には、元素分析等の従来公知の方法で測定することもできる。
【0281】
<粉塵の舞い上がりやすさ>
吸水剤100gをステンレス製のファネル(steel designation X5CrNiMo 17−12−3 specified in ISO/TR 15510、内径10mm、高さ145mm、傾斜角20°)に入れ、30cmの高さから、直径8cm、高さ12cmの円筒形のビーカー中に、吸水剤の入ったファネルを落下させた。このときに発生する粉塵の舞い上がりやすさを目視で確認した。尚、発生する粉塵を確認しやすいように、黒板を円筒形のビーカーに近接させて配置して、測定を行った。
【0282】
上記粉塵の舞い上がりやすさは、以下の5段階に分類した。
粉塵の舞い上がりやすさ1:ほとんど舞い上がらない
粉塵の舞い上がりやすさ2:少し舞い上がる
粉塵の舞い上がりやすさ3:舞い上がる
粉塵の舞い上がりやすさ4:かなり舞い上がる
粉塵の舞い上がりやすさ5:非常に舞い上がる
<吸水剤に含まれる二酸化ケイ素の定量方法>
吸水剤に含まれる二酸化ケイ素の量は、元素分析等の公知の方法で測定することができ、測定方法は特に限定はされないが、例えば、以下の方法で測定することができる。
【0283】
(1)吸水剤0.500gを容量250mLのポリプロピレン製ビーカーに入れ、試薬グレードの炭酸ナトリウム(無水)を0.5g加えた。
【0284】
(2)上記ポリプロピレン製ビーカーに、80℃の脱イオン水(grade3、ISO3696)100mLを、100mLプラスチック製メスシリンダーで加え、該ビーカーの内容物を80℃に保持した状態で2時間攪拌させ、固体シリカを溶解させた。
【0285】
(3)上記内容物を、ひだ折りにした定量濾紙(Toyo Roshi Kaisha,Ltd製No.5C、185mm)、プラスチック製ロートによりろ過し、ろ液を100mLプラスチック製メスフラスコに受けた。
【0286】
(4)上記プラスチック製ロート上の濾紙上に液体がほとんど無くなった時点(約1時間)で、6N塩酸3mLをプラスチック製駒込ピペットで加え、できるだけゲルを収縮させた。
【0287】
(5)得られた上記ろ液に6N塩酸3mL、続いてモリブデン酸アンモニウム5質量%溶液4mLを2回加え、上記の脱イオン水でメスアップ後、栓をしてメスフラスコをよく振った。
【0288】
(6)(5)で得られた発色液を分光光度計(日立製作所製、IU−1100 Spectrophotometer)により、波長410nm、セル厚10mmにて、発色後5〜20秒以内に吸光度(ABS)を求めた。ブランクとして同様の操作を脱イオン水(grade3、ISO3696)で行った。
【0289】
(7)求めた発色液の吸光度から、ブランクの吸光度の値を差し引いた値を試験サンプルの吸光度とし、後述する検量線を基に試験サンプルの二酸化ケイ素微粒子量(質量%)を求めた。
【0290】
(検量線の作成)
二酸化ケイ素の添加されていない吸水性樹脂(例えば、後述する吸水性樹脂(1−30))100質量部に対して、二酸化ケイ素微粒子(例えば、日本アエロジル社製Aerosil(登録商標)200)を0質量部、0.03質量部、0.06質量部、0.1質量部、0.2質量部、0.3質量部、0.5質量部、1.0質量部それぞれ添加混合した標準サンプルを作製した。
【0291】
これら二酸化ケイ素微粒子の添加質量%が既知の標準サンプルを用いて、上記操作を行い、吸光度を求めることにより検量線を作成した。
【0292】
(実施例1)
シグマ型羽根を2本有する内容積10リットルのジャケット付きステンレス型双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、アクリル酸436.4g、37質量%アクリル酸ナトリウム水溶液4617.9g、純水381.0g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)11.40gを溶解させて反応液とした。次にこの反応液を窒素ガス雰囲気下で、20分間脱気した。続いて、反応液に10質量%過硫酸ナトリウム水溶液38.76g及び0.1質量%L−アスコルビン酸水溶液24.22gを攪拌しながら添加したところ、およそ25秒後に重合が開始した。そして、生成したゲルを粉砕しながら、25〜95℃で重合を行い、重合が開始して30分後に含水ゲル状架橋重合体を取り出した。得られた含水ゲル状架橋重合体は、その径が約5mm以下に細分化されていた。
【0293】
この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmと目開き175μmのJIS標準篩で分級することにより、質量平均粒子径(D50)341μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.33の不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(1)を得た。吸水性樹脂粒子(1)の遠心分離機保持容量(CRC)は35.4g/g、水可溶分は7.3質量%であった。
得られた吸水性樹脂粒子(1)100質量部に1,4−ブタンジオール0.384質量部、プロピレングリコール0.632質量部、純水3.39質量部、過硫酸ナトリウム0.1質量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を212℃で加熱処理した。加熱時間を30分、35分、40分、45分としたものをそれぞれ作製した。さらに、これらの粒子をそれぞれ目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、これら粒子に上記ペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、表面が架橋された吸水性樹脂粒子を得た。加熱時間30分のものを吸水性樹脂粒子(1−30)、加熱時間35分のものを吸水性樹脂粒子(1−35)、加熱時間40分のものを吸水性樹脂粒子(1−40)、加熱時間45分のものを吸水性樹脂粒子(1−45)とした。
【0294】
得られたこれらの表面が架橋された吸水性樹脂粒子100質量部それぞれに、硫酸アルミニウム27.5質量%水溶液(酸化アルミニウム換算で8質量%)0.40質量部、乳酸ナトリウム60質量%水溶液0.134質量部、プロピレングリコール0.002質量部からなる混合液を添加した。添加後、無風条件下、60℃で1時間乾燥した後、これらの粒子をそれぞれ目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、これら粒子に上記ペイントシェーカーテスト2を行った。こうして、得られた粒子をそれぞれ、吸水性樹脂粒子(1−30)から得られたものを吸水性樹脂粒子(1−30A)、吸水性樹脂粒子(1−35)から得られたものを吸水性樹脂粒子(1−35A)、吸水性樹脂粒子(1−40)から得られたものを吸水性樹脂粒子(1−40A)、吸水性樹脂粒子(1−45)から得られたものを吸水性樹脂粒子(1−45A)とした。
【0295】
得られたこれらの吸水性樹脂粒子(1−30A)、(1−35A)、(1−40A)、(1−45A)100質量部にそれぞれ、WACKER社製HDK(登録商標)H2050EPを0.040質量部添加したものを、吸水剤(1−1)、(1−2)、(1−3)、(1−4)とした。
【0296】
同様に吸水性樹脂粒子(1−30A)、(1−35A)、(1−40A)、(1−45A)100質量部にそれぞれ、WACKER社製HDK(登録商標)H2050EPを0.070質量部添加したものを、吸水剤(1−5)、(1−6)、(1−7)、(1−8)とした。
【0297】
(比較例1)
特開2000−93792号の参考例1及び実施例1及び実施例2を参考とし、以下の実験を行った。
【0298】
75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500質量部(単量体濃度38%)にトリメチロールプロパントリアクリレート1.70質量部を溶解し反応液とした。次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋をつけて形成した反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。続いて、反応液を攪拌しながら、過硫酸ナトリウム2.46質量部及びL−アスコルビン酸0.10質量部を添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。そして、30℃以上80℃以下で重合を行い、重合を開始して60分後に含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は、その径が約5mmに細分化されていた。
【0299】
この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュの金網上に広げ、150℃で90分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物を振動ミルを用いて粉砕し、さらに20メッシュの金網で分級することにより、平均粒径330μmの不定形破砕状の吸水性樹脂前駆体(A)を得た。
【0300】
得られた吸水性樹脂前駆体(A)100質量部に、プロピレングリコール1質量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.05質量部と、水3質量部と、イソプロピルアルコール1質量部からなる表面架橋剤を混合した。上記の混合物を210℃で40分間加熱処理することにより比較吸水性樹脂粒子(1−1)を得た。この比較吸水性樹脂粒子(1−1)の吸収倍率、加圧下吸収倍率を特開2000−93792号に記載の方法で測定したところ、CRCは31(g/g)、AAPは33(g/g)であった。
【0301】
比較吸水性樹脂粒子(1−1)100質量部に無機粉末として4%分散液のpH7.5以上9.5以下、BET法による比表面積145±15m2/gであるカチオン性を有する疎水性二酸化ケイ素(日本アエロジル社製RA200HS)0.05質量部を混合し、比較吸水剤(1−1)を得た。
【0302】
また、得られた吸水性樹脂前駆体(A)100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.1質量部と、水4.5質量部と、イソプロピルアルコール1.5質量部からなる表面架橋剤を混合した。上記の混合物を200℃で35分間加熱処理することにより比較吸水性樹脂粒子(1−2)を得た。この比較吸水性樹脂粒子(1−2)の吸収倍率、加圧下吸収倍率を特開2000−93792号に記載の方法で測定したところ、CRCは32(g/g)、AAPは31(g/g)であった。
【0303】
比較吸水性樹脂粒子(1−2)100質量部に水1質量部を添加した後、上記と同様の無機粉末(日本アエロジル社製RA200HS)0.1質量部を混合し、比較吸水剤(1−2)を得た。
【0304】
吸水性樹脂粒子(1)、(1−30)、(1−35)、(1−40)、(1−45)、(1−30A)、(1−35A)、(1−40A)、(1−45A)、吸水剤(1−1)、(1−2)、(1−3)、(1−4)、(1−5)、(1−6)、(1−7)、(1−8)、比較吸水性樹脂粒子(1−1)、(1−2)、比較吸水剤(1−1)、(1−2)の諸物性を測定した結果を表1に示す。
【0305】
(実施例2)
シグマ型羽根を2本有する内容積10リットルのジャケット付きステンレス型双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、アクリル酸436.4g、37質量%アクリル酸ナトリウム水溶液4617.9g、純水381.0g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)11.40gを溶解させて反応液とした。次にこの反応液を窒素ガス雰囲気下で、20分間脱気した。続いて、反応液に10質量%過硫酸ナトリウム水溶液29.07g及び0.1質量%L−アスコルビン酸水溶液24.22gを攪拌しながら添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。そして、生成したゲルを粉砕しながら、25〜95℃で重合を行い、重合が開始して30分後に含水ゲル状架橋重合体を取り出した。得られた含水ゲル状架橋重合体は、その径が約5mm以下に細分化されていた。
【0306】
この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmと目開き175μmのJIS標準篩で分級することにより、質量平均粒子径(D50)341μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.33の不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(2)を得た。吸水性樹脂粒子(2)の遠心分離機保持容量(CRC)は33.5g/g、水可溶分は9.0質量%であった。
【0307】
得られた吸水性樹脂粒子(2)100質量部に1,4−ブタンジオール0.384質量部、プロピレングリコール0.632質量部、純水3.39質量部、過硫酸ナトリウム0.1質量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を212℃で50分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この粒子に上記ペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、表面が架橋された吸水性樹脂粒子(2−50)を得た。
【0308】
得られたこの吸水性樹脂粒子(2−50)100質量部に、WACKER社製HDK(登録商標)H2050EPを、0.010質量部添加したものを吸水剤(2−1)、0.020質量部添加したものを吸水剤(2−2)、0.040質量部添加したものを吸水剤(2−3)、0.070質量部添加したものを吸水剤(2−4)、0.100質量部添加したものを吸水剤(2−5)とした。
【0309】
(比較例2)
実施例2で得られた吸水性樹脂粒子(2−50)100質量部に、WACKER社製HDK(登録商標)H2050EPを0.300質量部添加したものを比較吸水剤(2−1)とし、日本アエロジル社製Aerosil(登録商標)200を、0.3000質量部添加したものを比較吸水剤(2−2)とした。
【0310】
吸水性樹脂粒子(2)、(2−50)、吸水剤(2−1)、(2−2)、(2−3)、(2−4)、(2−5)、比較吸水剤(2−1)、比較吸水剤(2−2)の諸物性を測定した結果を表2に示す。
【0311】
(実施例3)
断熱材である発泡スチロールで覆われた、内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸220.81g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)1.154g、及び、1.0質量%ジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム水溶液1.35gを混合した溶液(A1)と、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液184.49gと50℃に調温したイオン交換水179.94gを混合した溶液(B1)を、マグネチックスターラーで攪拌しながら(A1)に(B1)を開放系ですばやく加えて混合した。中和熱と溶解熱で液温が約100℃まで上昇した単量体水溶液が得られた。
【0312】
得られた単量体水溶液に3質量%の過硫酸ナトリウム水溶液12.26gを加え、数秒攪拌した後に、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1−1000、(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注いだ。ステンレス製バット型容器は、そのサイズが底面250×250mm、上面640×640mm、高さ50mmであり、中心断面が台形で、上面が開放されていた。
【0313】
単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合は開始した。水蒸気を発生して上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮した。この膨張収縮は約1分以内に終了し、4分間重合容器中に保持した後、含水重合体を取り出した。
【0314】
得られた含水重合体を、ダイス径9.5mmのミートチョッパー(ROYAL MEAT CHOPPER VR400K、飯塚工業株式会社製)により粉砕し、細分化された含水重合体を得た。
【0315】
この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmと目開き175μmのJIS標準篩で分級することにより、質量平均粒子径(D50)329μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.31の不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(3)を得た。吸水性樹脂粒子(3)の遠心分離機保持容量(CRC)は33.0g/g、水可溶分は9.0質量%であった。
【0316】
得られた吸水性樹脂粒子(3)100質量部に1,4−ブタンジオール0.36質量部、プロピレングリコール0.6質量部、純水3.2質量部の混合液からなる表面架橋剤をレーディゲミキサーで混合した後、混合物を200℃で50分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この粒子に上記ペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、表面が架橋された吸水性樹脂粒子(3−50)を得た。
【0317】
得られた表面が架橋された吸水性樹脂粒子(3−50)100質量部に、硫酸アルミニウム27.5質量%水溶液(酸化アルミニウム換算で8質量%)0.40質量部、乳酸ナトリウム60質量%水溶液0.134質量部、プロピレングリコール0.002質量部からなる混合液を添加した。添加後、無風条件下、60℃で1時間乾燥した後、この粒子を目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この粒子に上記ペイントシェーカーテスト2を行った。こうして、得られた粒子を吸水性樹脂粒子(3−50A)とした。
【0318】
得られたこの吸水性樹脂粒子(3−50A)100質量部に、WACKER社製HDK(登録商標)H2050EPを、0.020質量部添加したものを吸水剤(3−1)、0.040質量部添加したものを吸水剤(3−2)、0.060質量部添加したものを吸水剤(3−3)、0.080質量部添加したものを吸水剤(3−4)、0.0990質量部添加したものを吸水剤(3−5)、0.1250質量部添加したものを吸水剤(3−6)、0.1500質量部添加したものを吸水剤(3−7)とした。
【0319】
(実施例4)
実施例3で得られた吸水性樹脂粒子(3−50A)100質量部に、日本アエロジル社製Aerosil(登録商標)200を、0.100質量部添加したものを吸水剤(4−1)、0.1250質量部添加したものを吸水剤(4−2)とした。
【0320】
吸水性樹脂粒子(3)、(3−50)、(3−50A)、吸水剤(3−1)、(3−2)、(3−3)、(3−4)、(3−5)、(3−6)、(3−7)、(4−1)、(4−2)の諸物性を測定した結果を表3に示す。
【0321】
(実施例5)
断熱材である発泡スチロールで覆われた、内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸221.92g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)1.53g、及び、1.0質量%ジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム水溶液1.35gを混合した溶液(A)と、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液180.33gと50℃に調温したイオン交換水182.55gを混合した溶液(B)を、マグネチックスターラーで攪拌しながら溶液(A)に溶液(B)を開放系ですばやく加えて混合した。中和熱と溶解熱で液温が約100℃まで上昇した単量体水溶液が得られた。
【0322】
得られた単量体水溶液に3質量%の過硫酸ナトリウム水溶液12.32gを加え、数秒攪拌した後に、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1−1000、(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注いだ。ステンレス製バット型容器は、そのサイズが底面250×250mm、上面640×640mm、高さ50mmであり、中心断面が台形で、上面が開放されていた。
【0323】
単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合は開始した。水蒸気を発生して上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮した。この膨張収縮は約1分以内に終了し、4分間重合容器中に保持した後、含水重合体を取り出した。
【0324】
得られた含水重合体を、ダイス径9.5mmのミートチョッパー(ROYAL MEAT CHOPPER VR400K、飯塚工業株式会社製)により粉砕し、細分化された含水重合体を得た。
【0325】
この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmと目開き175μmのJIS標準篩で分級することにより、質量平均粒子径(D50)342μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.34の不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(5)を得た。吸水性樹脂粒子(5)の遠心分離機保持容量(CRC)は31.0g/g、水可溶分は8.0質量%であった。
【0326】
また、得られた吸水性樹脂粒子(5)100質量部に1,4−ブタンジオール0.31質量部、プロピレングリコール0.49質量部、純水2.4質量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を195℃で50分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この粒子に上記ペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、表面が架橋された吸水性樹脂粒子(5−50)を得た。
【0327】
得られた表面が架橋された吸水性樹脂粒子(5−50)100質量部に、硫酸アルミニウム27.5質量%水溶液(酸化アルミニウム換算で8質量%)0.50質量部、乳酸ナトリウム60質量%水溶液0.16質量部、プロピレングリコール0.0025質量部からなる混合液を添加した。添加後、無風条件下、60℃で1時間乾燥した後、この粒子を目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この粒子に上記ペイントシェーカーテスト2を行った。こうして、得られた粒子を吸水性樹脂粒子(5−50A)とした。
【0328】
得られたこの吸水性樹脂粒子(5−50A)100質量部に、WACKER社製HDK(登録商標)H2050EPを、0.040質量部添加したものを吸水剤(5−1)、0.080質量部添加したものを吸水剤(5−2)、0.1250質量部添加したものを吸水剤(5−3)とした。
【0329】
吸水性樹脂粒子(5)、(5−50)、(5−50A)、吸水剤(5−1)、(5−2)、(5−3)の諸物性を測定した結果を表4に示す。
【0330】
【表1】

【0331】
※1:単位 10−7・cm・s・g−1
表1に示すように吸水性樹脂粒子(1)と吸水性樹脂粒子(1−30)〜(1−45)との比較から、吸水性樹脂粒子(1)に表面架橋剤を用い表面架橋した後、ペイントシェーカーテスト1を行い、機械的ダメージを与えることによって得られた吸水性樹脂粒子(1−30)〜(1−45)はCRCが低下するものの、AAP及びSFCは向上していた。
【0332】
また、吸水性樹脂粒子(1−30)〜(1−45)の比較から、加熱時間を変更することにより、得られる吸水性樹脂粒子の物性を調整することができることが明らかとなった。
【0333】
更には、吸水性樹脂粒子(1−30)〜(1−45)を硫酸アルミニウム水溶液にて処理した後に、ペイントシェーカーテスト2を行い、機械的ダメージを与えられた吸水性樹脂粒子(1−30A)〜(1−45A)は、AAPはやや低下したものの、SFCは大幅に向上した。
【0334】
この吸水性樹脂粒子(1−30A)〜(1−45A)に更に、疎水性の二酸化ケイ素を添加することによって得られた吸水剤(1−1)〜(1−4)は、CRC、AAPが大幅に低下すること無く、非常に高いSFCを有していた。即ち、CRC、AAP、及びSFCの値が高い、非常に有用な吸水剤を得ることができた。
【0335】
また、比較吸水性樹脂粒子(1−1)及び(1−2)は、製造において疎水性の二酸化ケイ素を用いているものの、JIS標準ふるいを用いて分級を行っていないので、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合が5質量%を超えていた。比較吸水剤(1−1)及び(1−2)についても同様であった。上記比較吸水性樹脂粒子及び比較吸水剤では、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合が多いため、通液性が阻害される。これにより、SFCは非常に低い値となった。また、AAP,FHAについても低い値を示し、粉塵量も多かった。
【0336】
【表2】

【0337】
※1:単位 10−7・cm・s・g−1
表2に示すように、吸水性樹脂粒子及び吸水剤は、比較吸水剤(2−1)、(2−2)と比較して、粉塵量が非常に少なかった。比較吸水剤(2−1)と比較吸水剤(2−2)とは無機粒子の添加量が同じであるが、比較吸水剤(2−1)の方が粉塵量が少なく、SFC及びAAPにも優れていた。
【0338】
また、吸水剤(2−1)〜(2−4)は、FHAが特に優れていた。
【0339】
【表3】

【0340】
※1:単位 10−7・cm・s・g−1
表3に示すように、吸水性樹脂粒子及び吸水剤は、粉塵量が非常に少なく、吸水剤(3−1)〜(3−7)が特に少なかった。具体的には、吸水剤(3−6)と吸水剤(4−2)とは無機粒子の添加量が同じであるが、吸水剤(3−6)の方が粉塵量が少なかった。
【0341】
また、吸水剤(3−1)〜(3−5)は、FHAが特に優れていた。
【0342】
【表4】

【0343】
※1:単位 10−7・cm・s・g−1
表4に示すように、吸水剤(5−1)〜(5−3)は通液性(SFC)に優れ、粉塵量も非常に少なかった。
【0344】
(実施例6)
吸水性樹脂粒子(1−30A)、(1−35A)、(1−40A)、(1−45A)100質量部に、WACKER社製HDK(登録商標)H2050EPを0.040質量部添加する替わりに、WACKER社製HDK(登録商標)H20を0.050質量部添加したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、吸水剤(6−1)、(6−2)、(6−3)、(6−4)を得た。
【0345】
得られた吸水剤(6−1)、(6−2)、(6−3)及び(6−4)について、添加した二酸化ケイ素、二酸化ケイ素の添加量、CRC、AAP、SFC、FHA、D50、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合について測定した結果を表5に示した。
【0346】
【表5】

【0347】
※1:単位 10−7・cm・s・g−1
表5に示すように、吸水剤(6−1)〜(6−4)は通液性(SFC)に優れ、AAP,FHAも高く、粉塵量は非常に少なかった。
【0348】
(実施例7)
シグマ型羽根を2本有する内容積10リットルのジャケット付きステンレス型双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、アクリル酸436.4g、37質量%アクリル酸ナトリウム水溶液4617.9g、純水381.0g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)7.6gを溶解させて反応液とした。次にこの反応液を窒素ガス雰囲気下で、20分間脱気した。続いて、反応液に10質量%過硫酸ナトリウム水溶液29.07g及び0.1質量%L−アスコルビン酸水溶液24.22gを攪拌しながら添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。そして、生成したゲルを粉砕しながら、25〜95℃で重合を行い、重合が開始して30分後に含水ゲル状架橋重合体を取り出した。得られた含水ゲル状架橋重合体は、その径が約5mm以下に細分化されていた。
【0349】
この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルによって粉砕し、さらに目開き710μmと目開き175μmのJIS標準篩で分級することにより、質量平均粒子径(D50)471μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.37の不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(7)を得た。吸水性樹脂粒子(7)の遠心分離機保持容量(CRC)は38.0(g/g)、水可溶分は11.0質量%であった。
【0350】
得られた吸水性樹脂粒子(7)100質量部に1,4−ブタンジオール0.3質量部、プロピレングリコール0.5質量部、純水2.7質量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を212℃で40分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この粒子に上記ペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、表面が架橋された吸水性樹脂粒子(7−40)を得た。
【0351】
得られた吸水性樹脂粒子(7−40)100質量部に、それぞれに硫酸アルミニウム27.5質量%水溶液(酸化アルミニウム換算で8質量%)0.40質量部、乳酸ナトリウム60質量%水溶液0.134質量部、プロピレングリコール0.002質量部からなる混合液を添加した。添加後、無風条件下、60℃で1時間乾燥した後、これらの粒子をそれぞれ目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この粒子に上記ペイントシェーカーテスト2を行った。こうして、得られた粒子を吸水性樹脂粒子(7−40A)とした。
【0352】
得られた吸水性樹脂粒子(7−40A)100質量部に、WACKER社製HDK(登録商標)H20を、0.020質量部添加したものを吸水剤(7−1)、0.040質量部添加したものを吸水剤(7−2)、0.070質量部添加したものを吸水剤(7−3)、0.100質量部添加したものを吸水剤(7−4)とした。
【0353】
得られた上記吸水性樹脂粒子(7)、(7−40)及び(7−40A)、吸水剤(7−1)、(7−2)、(7−3)及び(7−4)について添加した二酸化ケイ素、二酸化ケイ素の添加量、CRC、AAP、SFC、FHA、LDV、D50、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合について測定した結果を表6に示した。また、粉塵量についても測定を行い表6に結果を示した。
【0354】
(実施例8)
実施例7で得られた吸水性樹脂粒子(7−40A)100質量部に、WACKER社製HDK(登録商標)H20を、0.200質量部添加したものを吸水剤(8−1)とした。
【0355】
また、実施例7で得られた吸水性樹脂粒子(7−40A)100質量部に日本アエロジル社製Aerosil(登録商標)200を、0.200質量部添加したものを吸水剤(8−2)とした。
【0356】
また、実施例7で得られた吸水性樹脂粒子(7−40A)100質量部に日本アエロジル社製Aerosil(登録商標)R−972を、0.200質量部添加したものを吸水剤(8−3)とした。
【0357】
得られた吸水剤(8−1)、(8−2)及び(8−3)について添加した二酸化ケイ素、二酸化ケイ素の添加量、CRC、AAP、SFC、FHA、LDV、D50、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合について測定した結果を表6に示した。また、粉塵量についても測定を行い表6に結果を示した。
【0358】
【表6】

【0359】
※1:単位 10−7・cm・s・g−1
表6に示すように、吸水剤(7−1)〜(7−4)、(8−1)〜(8−3)の測定結果から、粉塵量が非常に少なく、高いSFCを有する吸水剤を得ることができた。また、吸水剤(7−1)〜(7−4)、(8−1)〜(8−3)のいずれにおいても粉塵量は400ppm以下であり、粉塵の生じ難い吸水剤を製造することができた。
【0360】
また、吸水剤(7−1)〜(7−4)は特にAAP,FHAに優れていた。また、吸水剤(7−1)〜(7−4)、及び吸水剤(8−1)、(8−2)はLDVが優れていた。粉塵量については、吸水剤(7−1)〜(7−3)が特に少なく、吸水剤(7−4)がかなり少なく、また吸水剤(8−1)、(8−3)も少ない値であった。また、二酸化ケイ素の添加量が同じでも吸水剤(8−2)は、吸水剤(8−1)、(8−3)と比べて粉塵量が多く、AAP及びSFCが低かった。
【0361】
(実施例9)
断熱材である発泡スチロールで覆われた、内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸221.92g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)1.53g、及び、1.0質量%ジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム水溶液1.35gを混合した溶液(A)と、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液180.33gと50℃に調温したイオン交換水182.55gとを混合した溶液(B)を、マグネチックスターラーで攪拌しながら溶液(A)に溶液(B)を開放系ですばやく加えて混合した。中和熱及び溶解熱で液温が約100℃まで上昇した単量体水溶液が得られた。
【0362】
得られた単量体水溶液に3質量%の過硫酸ナトリウム水溶液12.32gを加え、数秒攪拌した後に、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1−1000、(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250mm×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注いだ。ステンレス製バット型容器は、そのサイズが底面250mm×250mm、上面640mm×640mm、高さ50mmであり、中心断面が台形で、上面が開放されていた。
【0363】
単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合は開始した。水蒸気を発生して上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮した。この膨張収縮は約1分以内に終了し、4分間重合容器中に保持した後、含水重合体を取り出した。
【0364】
得られた含水重合体を、ダイス径9.5mmのミートチョッパー(ROYAL MEAT CHOPPER VR400K、飯塚工業株式会社製)により粉砕し、細分化された含水重合体を得た。
【0365】
この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルにて粉砕し、さらに目開き710μmと目開き175μmのJIS標準篩で分級することにより、質量平均粒子径(D50)342μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.34の不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(9)を得た。吸水性樹脂粒子(9)の遠心分離機保持容量(CRC)は31.0(g/g)、水可溶分は8.0質量%であった。
【0366】
得られた吸水性樹脂粒子(9)100質量部に1,4−ブタンジオール0.31質量部、プロピレングリコール0.49質量部、純水2.4質量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を195℃で50分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この粒子に上記ペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、表面が架橋された吸水性樹脂粒子(9−50)を得た。
【0367】
得られた表面が架橋された吸水性樹脂粒子(9−50)100質量部に、硫酸アルミニウム27.5質量%水溶液(酸化アルミニウム換算で8質量%)0.40質量部、乳酸ナトリウム60質量%水溶液0.16質量部、プロピレングリコール0.0025質量部からなる混合液を添加した。添加後、無風条件下、60℃で1時間乾燥した後、この粒子を目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この粒子に上記ペイントシェーカーテスト2を行った。こうして、得られた粒子を吸水性樹脂粒子(9−50A)とした。
【0368】
得られたこの吸水性樹脂粒子(9−50A)100質量部に、WACKER社製HDK(登録商標)H20を、0.020質量部添加したものを吸水剤(9−1)、0.040質量部添加したものを吸水剤(9−2)、0.070質量部添加したものを吸水剤(9−3)、0.100質量部添加したものを吸水剤(9−4)とした。
【0369】
また、得られた吸水性樹脂粒子(9−50A)100質量部に、日本アエロジル社製Aerosil(登録商標)R−972を、0.040質量部添加したものを吸水剤(9−5)、0.070質量部添加したものを吸水剤(9−6)、0.100質量部添加したものを吸水剤(9−7)とした。
【0370】
得られた吸水性樹脂粒子(9−50A)100質量部に、WACKER社製HDK(登録商標)H15を0.020質量部添加したものを吸水剤(9−8)、0.040質量部添加したものを吸水剤(9−9)、0.070質量部添加したものを吸水剤(9−10)、0.100質量部添加したものを吸水剤(9−11)とした。
【0371】
吸水性樹脂粒子(9)、(9−50)及び(9−50A)、吸水剤(9−1)〜(9−11)について添加した二酸化ケイ素、二酸化ケイ素の添加量、CRC、AAP、SFC、FHA、LDV、D50、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合について測定した結果を表7に示した。また、粉塵量についても測定を行い、表7に結果を示した。
【0372】
【表7】

【0373】
※1:単位 10−7・cm・s・g−1
表7に示すように、吸水剤(9−1)〜(9−4)の比較から二酸化ケイ素の添加量を増加させるほどSFCを向上できることが明らかになった。また、吸水剤(9−5)〜(9−7)、吸水剤(9−8)〜(9−11)についても同様であった。
【0374】
表7に示すように、吸水性樹脂粒子(9−50A)、吸水剤(9−1)〜(9−11)のいずれにおいても粉塵量は300ppm以下であり、粉塵の生じ難い吸水剤を製造することができた。
【0375】
また、吸水剤(9−1)〜(9−4)、(9−8)〜(9−11)のLDVは優れていた。
【0376】
(実施例10)
シグマ型羽根を2本有する内容積10リットルのジャケット付きステンレス型双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、アクリル酸425.2g、37質量%アクリル酸ナトリウム水溶液4499.5g、純水538.5g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)6.17gを溶解させて反応液とした。次にこの反応液を窒素ガス雰囲気下で、20分間脱気した。続いて、反応液に10質量%過硫酸ナトリウム水溶液28.3g及び0.1質量%L−アスコルビン酸水溶液23.6gを攪拌しながら添加したところ、およそ25秒後に重合が開始した。そして、生成したゲルを粉砕しながら、25℃以上95℃以下で重合を行い、重合が開始して30分後に含水ゲル状架橋重合体を取り出した。得られた含水ゲル状架橋重合体は、その径が約5mm以下に細分化されていた。
【0377】
この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、170℃で65分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmのJIS標準篩で分級することにより、質量平均粒子径(D50)458μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.40の不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(10)を得た。吸水性樹脂粒子(10)の遠心分離機保持容量(CRC)は42(g/g)、水可溶分は13質量%であった。
【0378】
得られた吸水性樹脂粒子(10)100質量部に1,4−ブタンジオール0.35質量部、プロピレングリコール0.55質量部、純水3.0質量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を212℃で40分間加熱処理した。その後、得られた粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、解砕された粒子にペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、表面が架橋又は被覆された吸水性樹脂粒子(10)を得た。
【0379】
表面が架橋又は被覆された吸水性樹脂粒子(10)の100質量部に、硫酸アルミニウム27.5質量%水溶液(酸化アルミニウム換算で8質量%)0.9質量部、乳酸ナトリウム60質量%水溶液0.134質量部、プロピレングリコール0.025質量部からなる混合液を添加した。添加後、無風条件下、60℃で1時間乾燥した後、これらの粒子をそれぞれ目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。こうして、吸水性樹脂粒子(10)から得られたものを吸水性樹脂粒子(10−A)とした。
【0380】
得られた吸水性樹脂粒子(10−A)100質量部に、日本アエロジル社製Aerosil(登録商標)200を0.20質量部添加し混合したものを吸水剤(10)とした。得られた上記吸水性樹脂粒子(10−A)、吸水剤(10)について、添加した水不溶性無機粒子、水不溶性無機粒子の添加量、CRC、AAP、SFC、D50、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合、粉塵量について測定した結果を表8に示した。
【0381】
(実施例11)
実施例10において得られた吸水性樹脂粒子(10−A)100質量部に対して、日本アエロジル社製Aerosil(登録商標)200を0.30質量部添加し混合したものを吸水剤(11)とした。得られた吸水剤(11)について、添加した水不溶性無機粒子、水不溶性無機粒子の添加量、CRC、AAP、SFC、D50、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合、粉塵量について測定した結果を表8に示した。
【0382】
(実施例12)
実施例10において、細分化された含水ゲル状架橋重合体を得るまでは同様の手法を用いて、細分化された含水ゲル状架橋重合体を得た。
【0383】
この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、170℃で65分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmのJIS標準篩で分級することにより、質量平均粒子径(D50)330μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.35の不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(12)を得た。吸水性樹脂粒子(12)の遠心分離機保持容量(CRC)は42(g/g)、水可溶分は13質量%であった。
【0384】
得られた吸水性樹脂粒子(12)100質量部に1,4−ブタンジオール0.35質量部、プロピレングリコール0.55質量部、純水3.0質量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を212℃で40分間加熱処理した。その後、得られた粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、解砕された粒子にペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、表面が架橋又は被覆された吸水性樹脂粒子(12)を得た。
【0385】
表面が架橋又は被覆された吸水性樹脂粒子(12)の100質量部に、硫酸アルミニウム27.5質量%水溶液(酸化アルミニウム換算で8質量%)0.9質量部、乳酸ナトリウム60質量%水溶液0.134質量部、プロピレングリコール0.025質量部からなる混合液を添加した。添加後、無風条件下、60℃で1時間乾燥した後、これらの粒子をそれぞれ目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。こうして、得られた吸水性樹脂粒子(12)から得られたものを吸水性樹脂粒子(12−A)とした。
【0386】
得られたこれらの吸水性樹脂粒子(12−A)100質量部に、日本アエロジル社製Aerosil(登録商標)200を0.20質量部添加し混合したものを吸水剤(3C)とした。得られた吸水剤(12)について、添加した水不溶性無機粒子、水不溶性無機粒子の添加量、CRC、AAP、SFC、D50、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合、粉塵量について測定した結果を表8に示した。
【0387】
(実施例13)
実施例10で得られた、表面が架橋又は被覆された吸水性樹脂粒子(10)の100質量部に、硫酸アルミニウム27.5質量%水溶液(酸化アルミニウム換算で8質量%)0.9質量部、乳酸ナトリウム60質量%水溶液0.134質量部、プロピレングリコール0.025質量部、植物成分としてポリフェノール及びカフェインを含んだツバキ科植物の葉抽出物の15質量%水溶液(製品名:FS−80MO、販売者:白井松薪薬株式会社(所在地:滋賀県黄河群水口町宇川37−1))0.5質量部からなる混合物を添加した。添加後、無風条件下、60℃で1時間乾燥させた後、これらの粒子をそれぞれ目開き850μmのJIS標準ふるいを通過するまで解砕し、吸水性樹脂粒子(13−A)を得た。
【0388】
得られたこれらの吸水性樹脂粒子(13−A)100質量部に、日本アエロジル社製Aerosil(登録商標)200を0.20質量部添加し混合したものを吸水剤(13)とした。得られた吸水剤(13)について、添加した水不溶性無機粒子、水不溶性無機粒子の添加量、CRC、AAP、SFC、D50、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合、粉塵量について測定した結果を表8に示した。
【0389】
(実施例14)
実施例12で得られた、表面が架橋又は被覆された吸水性樹脂粒子(12)の100質量部に、硫酸アルミニウム27.5質量%水溶液(酸化アルミニウム換算で8質量%)0.9質量部、乳酸ナトリウム60質量%水溶液0.134質量部、プロピレングリコール0.025質量部、植物成分としてポリフェノール及びカフェインを含んだツバキ科植物の葉抽出物の15質量%水溶液(製品名:FS−80MO、販売者:白井松薪薬株式会社(所在地:滋賀県黄河群水口町宇川37−1))0.5質量部からなる混合物を添加した。添加後、無風条件下、60℃で1時間乾燥させた後、これらの粒子をそれぞれ目開き850μmのJIS標準ふるいを通過するまで解砕し、吸水性樹脂粒子(14−A)を得た。
【0390】
得られたこれらの吸水性樹脂粒子(14−A)100質量部に、日本アエロジル社製Aerosil(登録商標)200を0.20質量部添加し混合したものを吸水剤(14)とした。得られた吸水剤(14)について、添加した水不溶性無機粒子、水不溶性無機粒子の添加量、CRC、AAP、SFC、D50、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合、粉塵量について測定した結果を表8に示した。
【0391】
(比較例3)
実施例10において得られた吸水性樹脂粒子(10)100質量部に対して、日本アエロジル社製Aerosil(登録商標)200を0.20質量部添加し混合したものを比較吸水剤(3)とした。得られた比較吸水剤(3)について、添加した水不溶性無機粒子、水不溶性無機粒子の添加量、CRC、AAP、SFC、D50、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合、粉塵量について測定した結果を表8に示した。
【0392】
(比較例4)
実施例10において得られた吸水性樹脂粒子(10)100質量部に対して、日本アエロジル社製Aerosil(登録商標)200を0.30質量部添加し混合したものを比較吸水剤(4)とした。得られた比較吸水剤(4)について、添加した水不溶性無機粒子、水不溶性無機粒子の添加量、CRC、AAP、SFC、D50、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合、粉塵量について測定した結果を表8に示した。
【0393】
(比較例5)
実施例10において、細分化された含水ゲル状架橋重合体を得るまでは同様の手法を用いて、細分化された含水ゲル状架橋重合体を得た。
【0394】
この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、170℃で65分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmのJIS標準篩で分級、調合することにより、質量平均粒子径(D50)440μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.50の不定形破砕状の比較吸水性樹脂粒子(5)を得た。比較吸水性樹脂粒子(5)の遠心分離機保持容量(CRC)は42(g/g)、水可溶分は13質量%であった。
【0395】
得られた比較吸水性樹脂粒子(5)100質量部に1,4−ブタンジオール0.35質量部、プロピレングリコール0.55質量部、純水3.0質量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を212℃で40分間加熱処理した。その後、得られた粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、解砕された粒子にペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、表面が架橋又は被覆された比較吸水性樹脂粒子(5)を得た。
【0396】
表面が架橋又は被覆された比較吸水性樹脂粒子(5)の100質量部に、硫酸アルミニウム27.5質量%水溶液(酸化アルミニウム換算で8質量%)0.9質量部、乳酸ナトリウム60質量%水溶液0.134質量部、プロピレングリコール0.025質量部からなる混合液を添加した。添加後、無風条件下、60℃で1時間乾燥した後、これらの粒子をそれぞれ目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。こうして、得られた比較吸水性樹脂粒子(5)から得られたものを比較吸水性樹脂粒子(5−A)とした。
【0397】
得られたこれらの比較吸水性樹脂粒子(5−A)100質量部に、日本アエロジル社製Aerosil(登録商標)200を0.20質量部添加し混合したものを比較吸水剤(5)とした。得られた比較吸水性樹脂粒子(5−A)、比較吸水剤(5)について、添加した水不溶性無機粒子、水不溶性無機粒子の添加量、CRC、AAP、SFC、D50、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合、粉塵量について測定した結果を表8に示した。
【0398】
【表8】

【0399】
※1:単位 10−7・cm・s・g−1
表8に示すように、吸水剤(10)と比較吸水剤(3)、吸水剤(11)と比較吸水剤(4)をそれぞれ比較することによって、多価金属塩及び水不溶性無機粒子の両方を使用することで、AAPの低下度合いを抑制しつつ、SFCを向上させることができ、さらに粉塵量も低下させることができることがわかった。さらに、吸水剤(10)と比較吸水剤(5)との比較において、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合が多いと、SFCが低い結果となった。
【0400】
また、硫酸アルミニウムを添加した吸水性樹脂粒子並びに吸水剤は粉塵量が少なく、SFC,AAPにも優れていた。
【0401】
尚、上述した吸水剤、並びに比較吸水剤について、粉塵中のSiOの割合及び粉塵の舞い上がりやすさの測定結果を表9に示す。
【0402】
【表9】

【0403】
表9に示すように、粉塵中のSiOの割合が低い場合には、粉塵が舞い上がり難く、粉塵中のSiOの割合が低いほど粉塵の舞い上がりやすさが改善されることが確認できた。
【0404】
このことから、粉塵中のSiOの割合の好ましい範囲は50質量%以下であり、より好ましい範囲は30質量%以下であり、更に好ましい範囲は15質量%以下であり、特に好ましい範囲は10質量%以下であり、最も好ましい範囲は7質量%以下である。
【0405】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0406】
本発明に係る吸水剤及び吸水体、並びに吸水剤の製造方法にて得られる吸水剤は、優れた吸水特性等を有し、かつ、粉塵が生じ難いため、種々の用途の吸水保水剤として使用できる。
【0407】
例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、医療用パッド等の吸収物品用吸水保水剤;水苔代替、土壌改質改良剤、保水剤、農薬効力持続剤等の農園芸用保水剤;内装壁材用結露防止剤、セメント添加剤等の建築用保水剤;リリースコントロール剤、保冷剤、使い捨てカイロ、汚泥凝固剤、食品用鮮度保持剤、イオン交換カラム材料、スラッジ又はオイルの脱水剤、乾燥剤、湿度調整材料等で使用できる。
【0408】
また、本発明における吸水剤は、紙おむつ、生理用ナプキン等の、糞、尿又は血液の吸収用衛生材料に特に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0409】
【図1】本実施例に係るAAPの測定装置を示す断面図である。
【図2】本実施例に係るSFCの測定装置を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性不飽和単量体を重合して得られる内部架橋構造を有する吸水性樹脂粒子を含む吸水剤であって、
下記(a)〜(d)の条件、
(a)水不溶性無機粒子を該吸水剤に対して10ppm以上1900ppm以下含むこと、
(b)該吸水剤に含まれる、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合が5質量%以下であること、
(c)4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)が18(g/g)以上であること、
(d)該水不溶性無機粒子が該吸水性樹脂表面又はその近傍に存在すること、
を満たすことを特徴とする吸水剤。
【請求項2】
上記水不溶性無機粒子の含有量が該吸水剤に対して10ppm以上990ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の吸水剤。
【請求項3】
上記水不溶性無機粒子の少なくとも表面にアミノ基が存在していることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸水剤。
【請求項4】
上記水不溶性無機粒子が二酸化ケイ素であり、該二酸化ケイ素の表面における残存シラノール基密度が1.7SiOH/nm以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の吸水剤。
【請求項5】
上記吸水剤の食塩水流れ誘導性(SFC)が30(10−7・cm・s・g−1)以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の吸水剤。
【請求項6】
4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)が20(g/g)以上30(g/g)以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の吸水剤。
【請求項7】
更に、少なくとも3価の水溶性多価金属塩を0.1質量%以上1質量%以下含むことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の吸水剤。
【請求項8】
上記水溶性多価金属塩が、硫酸アルミニウムであることを特徴とする請求項7に記載の吸水剤。
【請求項9】
上記吸水性樹脂粒子が、多孔質構造を有する粒子を含むことを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の吸水剤。
【請求項10】
質量平均粒子径が200μm以上500μm以下であり、且つ、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.20以上0.40以下であることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の吸水剤。
【請求項11】
液拡散速度(LDV)が0.2(mm/sec)以上10.0(mm/sec)以下であることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の吸水剤。
【請求項12】
摩擦帯電電荷が負電荷であることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の吸水剤。
【請求項13】
吸水剤に含まれる粉塵量が、吸水剤の質量に対し300ppm以下であることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の吸水剤。
【請求項14】
吸水剤に含まれる粉塵中のSiOの割合が50質量%以下であることを特徴とする請求項1〜13の何れか1項に記載の吸水剤。
【請求項15】
上記吸水性樹脂粒子に機械的ダメージを与えた後に、上記二酸化ケイ素と吸水性樹脂粒子とを混合する工程を含む製造方法により得られることを特徴とする請求項4に記載の吸水剤。
【請求項16】
上記二酸化ケイ素と吸水性樹脂粒子とを混合した後に、上記二酸化ケイ素と吸水性樹脂粒子とを空気輸送する工程を含む製造方法により得られることを特徴とする請求項4又は15に記載の吸水剤。
【請求項17】
水溶性不飽和単量体を重合して得られる吸水性樹脂粒子を含む吸水剤であって、
下記(A)〜(D)の条件、
(A)該吸水性樹脂粒子の表面近傍は、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する表面架橋剤によって架橋又は被覆されていること、
(B)該吸水性樹脂粒子は、その表面及びその近傍の少なくとも何れか一方に多価金属塩及び水不溶性無機粒子を含んでいること、
(C)該吸水剤の質量平均粒子径は200μm以上500μm以下であること、
(D)該吸水剤の全質量に対し、目開き150μmのふるいを通過できる大きさの粒子の割合は5質量%以下であること、
を満たすことを特徴とする吸水剤。
【請求項18】
上記多価金属塩を吸水剤に対し、0.01質量%以上1質量%以下含むことを特徴とする請求項17に記載の吸水剤。
【請求項19】
上記水不溶性無機粒子を吸水剤に対し、0.001質量%以上0.4質量%以下含むことを特徴とする請求項17又は18に記載の吸水剤。
【請求項20】
上記水不溶性無機粒子が、二酸化ケイ素であることを特徴とする請求項17〜19の何れか1項に記載の吸水剤。
【請求項21】
遠心分離機保持容量が30(g/g)以上50(g/g)未満であり、且つ、食塩水流れ誘導性(SFC)が10(10−7・cm・s・g−1)以上であることを特徴とする請求項17〜20の何れか1項に記載の吸水剤。
【請求項22】
吸水剤に含まれる粉塵中のSiOの割合が50質量%以下であることを特徴とする請求項17〜21の何れか1項に記載の吸水剤。
【請求項23】
請求項1〜22の何れか1項に記載の吸水剤を含むことを特徴とする吸水体。
【請求項24】
水溶性不飽和単量体を重合して得られる吸水性樹脂粒子を含む吸水剤の製造方法であって、
該吸水性樹脂粒子の質量平均粒子径は200μm以上500μm以下であり、
該吸水性樹脂粒子の表面近傍を、ヒドロキシル基を少なくとも一つ有する表面架橋剤によって架橋又は被覆する工程と、
該表面架橋剤によって架橋又は被覆後に、多価金属塩と水不溶性無機粒子とを、該吸水性樹脂粒子と混合する工程とを含むことを特徴とする吸水剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−531158(P2009−531158A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538206(P2007−538206)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【国際出願番号】PCT/JP2007/056527
【国際公開番号】WO2007/116777
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】