説明

吸水変色型養生マット

【課題】目で見て水分含有量が判断でき、かつ、コンクリートの養生具合が判る養生マットの提供。
【解決手段】養生マット(保水性マット)1の表面または下面に、水の有無もしくは水分量の多寡に応じて可逆的に変色する物質を含む層2を設けることによって、水分の保持量の変化を目視で判断できるようにしたコンクリート用の吸水変色型養生マット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路、トンネル内道路、空港舗装、広場、工場内舗装などの広いコンクリ−ト舗装、コンクリート橋梁や各種コンクリート構造物あるいは建築物の中のコンクリート床部分など各種のコンクリート面を打設する場合に於いて、コンクリートの硬化を十分に行わせる為に用いるマットに関するもので、より詳しくは、マットの色調の変化をチェックする事によって、水分の保持量の変化が目で見て判断できるコンクリート用養生マットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路、トンネル内道路、空港舗装、広場、工場内舗装等のコンクリ−ト舗装、コンクリート橋梁や各種コンクリート構造物あるいは建築物の中のコンクリート床部分等には広い面をコンクリートによって造られている。これらを構成するコンクリート版面は生コンクリートの打設によって行なわれるが、打設後のコンクリート表面の浮き水が無くなると直射日光の照射による加熱と風による空気流によって表面が急激に乾き始め、乾燥クラックを生じる。
【0003】
コンクリートの硬化は水和反応であり、十分な水分の存在により正常な反応が行なわれる為、水分が保持されないと反応不足により十分な強度が得られず品質の劣るコンクリートになる可能性がある。そのため、打設後のコンクリート面の水分管理が必要であり、水分の補給などの作業を要する場合もある。道路のコンクリート舗装のように広く長いコンクリート面の場合には、日陰の部分や風あたり強い部分があるなどで、均一な水分保持が難しい。
【0004】
これを防ぐために養生マットや養生カバー等の養生材が用いられている(特許文献1及び2)。こうした養生材は、コンクリートの表面を日光や風から遮断することでコンクリート中の水分の揮散を防止し、また、直射日光を反射して温度上昇を防ぐなどの効果を発揮する。この養生工程は、道路や橋梁等の様に屋外の過酷な環境下にあるコンクリートにおいては欠かせない工程である。その為、当該養生には多くの労力や費用を要しているのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−81210号公報
【特許文献2】特開2001−48676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
打設後のコンクリート面の水分管理は、養生マット等を使用しても部分的に水量の不足が生じるため、不足部分に水分を補給する必要があるが、このような不足部分を見極めるのは現場の作業者の長い間の経験に頼っている。そのため、不均一な水分補給が行なわれる恐れがあった。
本発明は道路、トンネル内道路、空港舗装、広場、工場内舗装等のコンクリ−ト舗装、コンクリート橋梁や各種コンクリート構造物あるいは建築物の中のコンクリート床部分等 におけるコンクリート養生に関して、上記の如き不都合な事態を解決するとともに次の課題を解決するものである。
(1)自然条件(気温・風)によってコンクリート中の水分の揮散をなくす目安を設ける。
(2)目視で判断できる指標によって、広範囲な水分管理の簡素化及び不必要な散水をなくし、多大な労力・時間・コストを削減する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究を重ねたことによって従来の課題を解決する為に、コンクリートの硬化を十分に行わせる為に用いる養生マットの外観の色調を変化させる事によって、水分の保持量の変化が目で見て判断できるようにしたコンクリート用養生マットを開発した。
本発明の養生マットは下記の各構成からなるものである。
1.養生マットの内部または表面に、水の有無もしくは水分量の多寡に応じて可逆的に変色する物質を含ませるかまたは該物質を含む層を設けることによって、水分の保持量の変化を目視で判断できるようにしたコンクリート用の吸水変色型養生マット。
2.養生マットの内部または表面に、pHの違いによって色が変化する物質(薬剤)を含ませるかまたは該物質を含む層を設けることによって、水分の保持量と水質の変化を目視で判断できるようにしたコンクリート用の吸水変色型養生マット。
【0008】
3.水に濡れると透明性を増す基材の層の下に色の付いた有色基材の層を積層したものを、養生マットの表面またはマット内部に積層することによって、水を散布した時に現われる有色基材の色調によって水分の保持量の変化を目視で判断できるようにしたコンクリート用の吸水変色型養生マット。
4.水に濡れると透明性を増す基材として、低屈折率を有する顔料にバインダーとなる樹脂を加えて、多孔質層と成したものを使用する事を特徴とする前記3項記載の吸水変色型養生マット。
5.水に濡れると透明性を増す基材からなる養生マットの内部または下面に色の付いた有色基材を積層した多層構造体から成り、該マット表面に水を散布した時に現われる有色基材の色調によって水分の保持量の変化を目視で判断できるようにしたコンクリート用の吸水変色型養生マット。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水分の保持量の変化を目で見て判断できる養生マットを用いることによって、本発明は次のような効果を得ることができる。
(1)散水した養生マットの色が変色する為、散水(吸水)した養生マットの場所が容易に判別できる。
(2)養生マット中の水分が蒸発して乾燥した場合、その場所が変色する為、保水状態が離れた位置から容易に判別できる。
(3)常時養生マットの変色で水分保持を管理する事で、コンクリート養生の機能を最適の状態に維持する事が出来る。
(4)養生マットの保水状態が管理し易くなる事で、広範囲な水分管理の簡素化が可能になり、また不必要な散水がなくなる事によって、多大な労力・時間・コストを削減する。
(5)最適の養生状態を維持する事でコンクリートのクラック発生を抑制する効果が高まる。または、クラックの発生を最小限に留める事ができる。
(6)総合的な効果により、コンクリート養生が十分に行われる事により、品質の良いコンクリートが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に於ける養生マットの断面模式図である。
【図2】本発明の養生マットの他の構成を示す断面模式図である。
【図3】本発明の養生マットの別の構成を示す断面模式図である。
【図4】本発明の養生マットの更に別の構成を示す断面模式図である。
【図5】本発明の養生マットのもう一つの構成を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0012】
図1は、本発明の養生マットの構成の一つを示す断面模式図である。図1において、1は保水性マットで、2は保水性マットの表面に形成された水に触れる事により色調が可逆的に変色する物質またはpHの違いによって色が可逆的に変色する物質を含む変色物質層を示す。
保水性マット1は、品質の良いコンクリートを造る為に使用するコンクリート用養生マットを使用することができ、該マットの表面全体または表面の一部分に変色層を設けることによって本発明の養生マットを得る。保水性マットとしては、天然繊維またはプラスチック繊維などからなる不織布や発泡プラスチックなどの連続気泡の発泡体シートが挙げられる。天然繊維としては木綿、綿などの繊維があり、プラスチック繊維としてはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルの繊維などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
変色物質層の形成は、変色性物質を含む塗料の塗布や変色性物質を含むプラスチックフィルムを積層するなどの方法によって行なう。変色物質層は形成後、必要に応じてニードルパンチなどを施して通水性を確保するようにしても良い。図1(A)は保水性マット1の表面に変色物質層2を設けた例であり、図1(B)は保水性マット1の下面に変色物質層2を設けた養生マットの例である。
【0013】
図2は本発明に於ける養生マットの他の構成を示す断面模式図である。図2に示す養生マットは、図1において説明した変色物質層2を保水性マット1と1の間に挟んだ形に設けた構造のものである。この構造の養生マットは、表面側の保水性マット1として透明性のあるプラスチック繊維からなる不織布などの様に乾燥状態では白色で、水に濡れると透明となって変色物質層2が透けて見えるようになるものを用いるのが好ましい。保水性マット1の間に設ける変色物質層2は、養生マットの内層面全体または内層面内の一部分に設けることによって、養生マットが必要量の水を含んでいる状態を目視で確認できる。養生マットの色は、含む水分量に応じて可逆的に変化するので再度の使用が可能である。
変色物質層2の上下の保水性マット1の厚みを調整することによって養生マットの変色具合を調整することができる。
変色物質層2がpHの違いによって色が変色する物質からなる場合も同様に構成できる。
【0014】
図3は本発明に於ける養生マットの別の例を示す断面模式図である。図3は、コンクリート用養生マット内に、水に触れる事により養生マットの色調を変化させる発色物質(着色材)3を含有させたものの例である。
保水性マット1内に発色物質を含有させる方法としては、保水性マットがポリウレタンフォームのようなプラスチック発泡体の場合には、発泡性材料の段階で粒状の着色材を分散含有させて発泡体とするなどの方法による。保水性マットが不織布などの場合には、着色された繊維を混入するとか、または顔料などの粒状の着色材を含む塗布液を塗布するとか塗布液に浸漬処理するなどしてマット1内に着色材を分散含有させる。
着色材は、赤、青などの有色顔料のように養生マットが水を含むことによってその色が見えるようになるものでもよく、また、珪酸などのように水に濡れると透明になる顔料を赤色ウレタンフォームに配合してマットが水を含むと赤色度合いが低下するようになるものでも良い。
【0015】
図4は本発明に於ける養生マットの更に別の構成を示す断面模式図である。図4に示す養生マットは、保水性マット1の表面全体または表面の一部分に、有色基材6を設け、その上面に水に触れる事により透明となる表面基材5を設けたものである。有色基材6としては、赤、青などに着色された紙、布、プラスチックシートや塗料による塗布層(塗膜)などで良く、水に触れる事により透明となる表面基材5としては紙、織布、不織布、薄いプラスチック発泡体シートなどが使用できる。
有色基材の表面に水濡れによって容易に透明になる表面基材の層を設けることによって、下の有色基材の色調を明確に表すことができるので、水量の過不足が明確に判断できる。表面基材の色は白色のほかに、黄色や薄い青色などとしても良い。有色基材、有色基材は共に通水性であることが望ましい。本構成の養生マットの場合、保水性マットは無色のものを用いなくても良い。
【0016】
図5は本発明に於ける養生マットの構成を示すもう一つの断面模式図である。図において、1は保水性マットでコンクリート用養生マットとして使用できるものであり、保水性マット1自体が水に触れる事により透明となるかまたは透明性が増す材料からなるものとし、図5(A)は保水性マット1と1の間の内部層(中間層)全体または内部層の一部分に有色基材6のシートを設けた養生マットであり、図5(B)は保水性マット1の表面全体または表面の一部分に有色基材6のシートを設けた養生マットを示し、図5(C)は保水性マット1の下面に有色基材6のシートを設けた養生マットを示す。図5(A)と(C)の養生マットでは、水を含むと保水性マット1(養生マット)が透明となるので、有色基材の色が目視で確認できる程度に現われる。図5(C)の場合には、保水性マット1の水分含有量の変化や含有水のpHの変化に対応して色が変わる有色基材6のシートを用いると良い。
【0017】
本発明において水に触れる事により透明性が増す基材としては、低屈折率の顔料をバインダーとなる樹脂と混合して多孔質層としたものを用いる。低屈折率の顔料とは、珪酸、硫酸バリウム、炭酸バリウム、クレー、タルク、炭酸マグネシウム等が挙げられる。バインダーとなる樹脂としては、EVAエマルジョン、アクリルエマルジョンあるいは他の樹脂でも良い。これらの透明性が増す基材は、水に濡れると低屈折率の顔料の層が水をたたえて透明性を増す一方で、乾燥すると光を透過し難くなり、元の状態に戻る。
【0018】
本発明において養生マットの保水性マットは、この種の分野で通常使用されているものが使用でき、例えば、繊維製不織布、ウレタンフォーム等を挙げることができる。ただし、養生マット自体が水に触れる事により透明性が増すものとしては、低屈折率の繊維等によるものが挙げられる。また、養生マットは長手方向に対してロール状に巻かれた形態であり、サイズ(長さ、幅、厚さ等)は特に限定されない。
本発明の養生マットは、従来の養生マットと同様に打設したコンクリート面を覆う大きさのマットとして使用されるほかに、従来の養生マットの表面などに部分的の取り付けて用いても良い。また、従来の養生マットの一部を本発明の変色型養生マットの構成としても良い。
【0019】
本発明において水に触れる事により色調が可逆的に変化する塗料やシート、pHの違いによって色が可逆的に変色する物質(薬剤)、表面基材の透明性が増し下の基材の色調が現れるシート及び透明性が増す養生マットは、市販の製品を用いる事は可能であり、水に触れる事により色調が可逆的に変化し、完成後のコンクリートの外観に影響を与えなければ特に限定されない。また、これらと養生マットとの定着方法は、例えば、接着、吸着、粘着、染色、縫い付け、ネットを用いた捕捉、等あり、養生マットから外れる、流出しなければ特に限定されない。
【0020】
このような構造を持つ養生マットを使用して、コンクリートの養生を行うと、散水した場所また水分が蒸発して乾燥した場所の養生マットの色が変色する為、保水状態が離れた位置から容易に判別できる。よって、常時養生マットの変色で水分保持を管理する事で、コンクリート養生の機能を最適の状態に維持する水分管理等の簡素化が可能になり、また不必要な散水がなくなる事によって、多大な労力・時間・コストを削減する事が可能になる。そして最適の養生状態を維持する事でコンクリートのクラック発生を抑制する効果が高まり、総合的な効果によって、品質の良いコンクリートが出来る。
【実施例】
【0021】
以下に本発明の詳細を実施例にて説明する。
実施例1
本発明は以下の構成からなる。
粒子状珪酸をアクリルエマルジョンに分散させたものを白色のポリエステル不織布(保水性マット)の上に塗布し、これを固化させて表面層(表面基材)を形成した。ポリエステル不織布の裏面には比較的目立つ色(例えば青色)の層(有色基材)をつけておく。このようにして作ったシートを、125%の吸水性能を有する、繊維製の養生マット(アオイ化学工業株式会社製:コンマット1号)の表面の一部に縫い付け、吸水変色型養生マットを得た。
【0022】
前記吸水変色型養生マット(白色)は、水を散布すると上表層の表面基材が透明状態に変化し下表層の青色が発現し、マットの保水状態が目視で確認できた。そして、養生マット内の水分量が低下して乾燥すると、水に濡れていない状態(白色)に戻った。また、この現象の再現性が確認できた。
【0023】
実施例2
水に触れる事により色調が可逆的に変化する塗料(林化学工業株式会社製:WETインク)を含んだ布製シートを用い、125%の吸水性能を有する、繊維製の養生マット(アオイ化学工業株式会社製:コンマット1号)の表面の一部に縫い付けて、本発明の吸水変色型養生マットを得た。
【0024】
前記吸水変色型養生マット(白色)は、水を散布すると塗料に含まれた可逆性のインクが水によって色が白色から赤色に変化した。そして、養生マット内の水分量が低下して乾燥すると、水に濡れていない状態(白色)に戻った。また、この現象の再現性が確認できた。
【符号の説明】
【0025】
1:保水性マット
2:変色物質層
3:発色物質
5:水に濡れると透明性を増す表面基材
6:有色基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
養生マットの内部または表面に、水の有無もしくは水分量の多寡に応じて可逆的に変色する物質を含ませるかまたは該物質を含む層を設けることによって、水分の保持量の変化を目視で判断できるようにしたコンクリート用の吸水変色型養生マット。
【請求項2】
養生マットの内部または表面に、pHの違いによって色が変化する物質(薬剤)を含ませるかまたは該物質を含む層を設けることによって、水分の保持量と水質の変化を目視で判断できるようにしたコンクリート用の吸水変色型養生マット。
【請求項3】
水に濡れると透明性を増す基材の層の下に色の付いた有色基材の層を積層したものを、養生マットの表面またはマット内部に積層することによって、水を散布した時に現われる有色基材の色調によって水分の保持量の変化を目視で判断できるようにしたコンクリート用の吸水変色型養生マット。
【請求項4】
水に濡れると透明性を増す基材として、低屈折率を有する顔料にバインダーとなる樹脂を加えて、多孔質層と成したものを使用する事を特徴とする請求項3記載の吸水変色型養生マット。
【請求項5】
水に濡れると透明性を増す基材からなる養生マットの内部または下面に色の付いた有色基材を積層した多層構造体から成り、該マット表面に水を散布した時に現われる有色基材の色調によって水分の保持量の変化を目視で判断できるようにしたコンクリート用の吸水変色型養生マット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−255251(P2010−255251A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105465(P2009−105465)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000208204)大林道路株式会社 (31)
【出願人】(502277441)アオイテクノサービス株式会社 (9)
【Fターム(参考)】