説明

吸汗速乾性編地

【課題】吸水性、吸放湿性および速乾性を併せて具備し、且つ風合いに優れ、肌着やスポーツウエアを編成するに適した複合糸を提供することを目的とする。
【解決手段】異形断面ポリエステルフィラメントを糸全体の30wt%以上60wt%以下の範囲で芯部に、麻/レーヨン混紡糸を糸全体の40wt%以上70wt%以下の範囲で鞘部として形成し、芯部被覆率を80%以上の複合紡績糸を用いて目付が130g/m以上200g/m未満の編地を編成することにより吸汗速乾性に優れた編地を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性、吸放湿性および速乾性を併せて具備し、且つ風合いに優れた吸汗速乾性編地に関する。
【背景技術】
【0002】
布帛に吸水性と速乾性を付与するという技術は、従来より綿やレーヨンなどの吸水性に優れるセルロース系繊維と速乾性に優れるポリエステル系繊維等の合成繊維とを糸段階で混紡、交撚、二層構造等の手段で複合したり(特許文献1、および特許文献2参照)編織の段階で交編織し複合させるという手段が広く用いられている。しかしながらセルロース系繊維は吸水性に優れるがために汗などの水分を保持しやすく、蒸散させにくいため、特に高温環境やスポーツで多量に発汗したときにベタツキが増大して不快となり、ポリエステル系繊維等の合成繊維を混用してもベタツキ解消には十分ではなかった。また、セルロース系繊維は水分の蒸散が遅いため、汗が冷えるとさらに不快となる場合も多い。また、ポリエステル系繊維は風合いが悪く着用感が良くないという問題点があった。
【特許文献1】特開平11−172539号公報
【特許文献2】特開2006−291427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は天然繊維類の吸水性、吸放湿性と合成繊維の速乾性を具備させるために、種々の合成繊維及び天然繊維から本発明に適する素材を選択し、それらの素材の含有量等を検討し、従来得られなかった吸水性、吸放湿性および速乾性を併せて具備し、且つ風合いに優れた編地を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の第1の発明は、異形断面ポリエステルフィラメントを糸全体の30wt%以上60wt%以下の範囲で芯部に、麻含有率が30wt%以上60wt%以下の麻/レーヨン混紡糸を糸全体の40wt%以上70wt%以下の範囲で鞘部として配された、芯部被覆率が80%以上の複合紡績糸を用いて編成されてなる吸汗速乾性編地よりなる。
請求項2に記載の第2の発明は、目付が130g/m以上200g/m未満であり、10回洗濯後の滴下法による水分拡散時間が1秒以下であり、かつバイレック法によるタテ、ヨコの平均吸い上げ高さが75mm/10min.以上である請求項1に記載の吸汗速乾性編地であり、上記滴下法とバイレック法については、後に詳細に説明する。
請求項3に記載の発明は、10cm×10cmの該編地を、35℃、相対湿度90%の条件下で、60分吸湿させた時の吸湿量が8%以上であり、拡散性残留水分率が10%以下に至るまでの水分の平均蒸散速度が2.10%/min.以上である請求項1又は請求項2に記載の吸汗速乾性編地である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の衣料用ニット地は、天然繊維の有する吸水性、吸放湿性と合成繊維の速乾性を同時に具備するよう各構成成分が配合構成されているので、特に肌着に用いると発汗時に汗をすばやく吸収拡散し涼感を得ることが出来、しかも風合いに優れた編地である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明編地を形成している編糸は、芯鞘構造の複合糸であって、芯部は異形断面ポリエステルフィラメントを使用する。異形断面ポリエステルフィラメントは、三角断面ポリエステルフィラメント、四角断面ポリエステルフィラメント、扁平異型断面ポリエステルフィラメントのような公知のポリエステルフィラメントの何れであっても良い。鞘部には、吸水性に優れ、肌触りがよい麻とレーヨンを使用する。
【0007】
本発明の複合糸を構成する芯部の異形断面ポリエステルフィラメントは、糸全体の30wt%以上60wt%以下の範囲とする。芯部のポリエステルフィラメントが30wt%未満では速乾性が出ず、60wt%超では芯部被覆率の悪化や絶対吸湿量や絶対吸水量の悪化が起こる。鞘部の混紡糸は、麻含有率が30wt%以上60wt%以下の麻/レーヨン混紡糸を通常の複合糸の製法によって芯糸に捲きつける。鞘部の麻含有率が糸全体の60wt%を超えると製造安定性に問題があり、風合いも悪化し、30wt%未満では吸水スピードと速乾性が劣る。また、芯部被覆率が80%以下の場合も複合紡績糸の吸水性が悪化する。
【0008】
本発明によって得られる編地は、特に吸汗速乾性に優れた編地である。本発明を特定する吸汗速乾性の定義について、以下に説明する。水分拡散時間について、10回洗濯後の滴下法による水分拡散時間を1秒以下としているが、これは、JIS―L1907による10回洗濯後の滴下法によるものである。また、バイレック法によるタテ、ヨコの平均吸い上げ高さが75mm/10min.以上であるとする請求項2に記載のバイレック法とは、JIS−L1907に規定された平均吸い上げ高さに基づく規定によるものである。 また、具体的には、本発明においては、編地を10cmの正方形に切断し、35℃、相対湿度90%の条件下で60分間吸水させた時の吸湿量が8%以上あり、このようにして吸水された水分を蒸散させる場合、残留水分率が10%以下に至るまでの水分の蒸散速度が2.10%min.以上であることが好ましい。
【0009】
上記複合糸は、従来法によって任意の編地に編成されるが、本発明の編地は、編成時にニットの目付が100g/m以下では、薄すぎて吸水性や速乾性が悪化する上、強度が低くて使い物にならない。200g/mを越える場合も吸水性、速乾性が悪化する。このようにして得られた編地は、上記したように吸水性、発汗性、風合いに優れており、特に肌着としての使用に適している。
【実施例】
【0010】
以下、実施例に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。なお、実施例中における水分の測定法は、次に記載の方法による。
拡散時間: JIS−L1907による洗濯後の滴下法の水分拡散時間による。
吸い上げ高さ: JIS−L1907のバイレックス法による平均吸い上げ高さである。
【0011】
〔実施例〕
下記のように複合糸(1)を用いて、編地(1)、編地(2)を得た。
複合糸(1)
芯:断面W型ポリエステルフィラメント (旭化成(株)製、商品名テクノファイン、 56T/30F)複合糸全量に対する割合は38wt%
鞘:レーヨン/リネン(麻)=31wt%/31wt%(商品名リヨセル)
それぞれの糸の複合糸全量に対する割合である。
編地(1):40番の複合糸(1)を使用。ガーゼフライス編み(36インチ、18ゲージ)。目付けは133g/m,編地のみ晒しを行った。
編地(1)の吸い上げ高さは87.5mm、滴下法による水分拡散時間1秒未満、吸湿
量8.24%、速乾性2.40%/min.であった。
【0012】
編地(2):上記40番の複合糸(1)を使用。フライス編み(30インチ、18ゲージ)。目付けは166g/m,編地のみ晒しを行った。
編地(2)の吸い上げ高さは90.5mm、滴下法による水分拡散時間1秒未満、吸湿
量8.23%、速乾性2.57%/min.であった。
上記編地(1)、編地(2)についての測定結果を表1に示す。
【0013】
【表1】

【0014】
〔比較例1〕
木綿100%よりなる40番の木綿糸を、フライス編み(37インチ、18.5ゲージ)目付180g/mのコットン100%の編地を、晒しのみ行って実施例に記載と同様の条件において測定を行ったところ、吸い上げ高さ60mm、滴下法による水分拡散時間1.16秒、吸湿量9.46%、速乾性1.61%/min.であった。この結果を表2に示す。この結果から、コットン100%、40番手の綿糸で編成したフライス地は、吸湿性においては優れているが、水分の吸い上げ量、水分拡散時間、速乾性において、本発明の複合糸による編地に較べて劣り、本発明の編地の機能が、肌着やスポーツウエア等において優れたものであることが判明した。
【0015】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の衣料用ニット地は、発汗時に汗をすばやく吸収拡散し涼感を得ることが出来、しかも風合いに優れた編地であるので、肌着やスポーツウエア等発汗を伴う環境で用いるに適した衣料を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異形断面ポリエステルフィラメントを糸全体の30wt%以上60wt%以下の範囲で芯部に、麻含有率が30wt%以上60wt%以下の麻/レーヨン混紡糸を糸全体の40wt%以上70wt%以下の範囲で鞘部として形成した、芯部被覆率が80%以上の複合紡績糸を用いて編成されてなる吸汗速乾性編地。
【請求項2】
目付が130g/m以上200g/m未満であり、10回洗濯後の滴下法による水分拡散時間が1秒以下であり、かつバイレック法によるタテ、ヨコの平均吸い上げ高さが75mm/10min.以上である請求項1に記載の吸汗速乾性編地。
【請求項3】
10cm×10cmの該編地を、35℃、相対湿度90%の条件下で、60分吸湿させた時の吸湿量が8%以上であり、拡散性残留水分率が10%以下に至るまでの水分の平均蒸散速度が2.10%/min.以上である請求項1又は請求項2に記載の吸汗速乾性編地。

【公開番号】特開2009−203557(P2009−203557A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43761(P2008−43761)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000005359)富士紡ホールディングス株式会社 (180)
【Fターム(参考)】