説明

吸液性基材の製造方法

【課題】
経皮吸収型貼付剤用の薬液担持基材として使用しうる安全なpHを有し、かつ品質の優れた吸液性基材を簡易に製造する方法を提供すること。
【解決手段】
式(I)
(RM(X)m−n ・・・(I)
(式中、Rは、水素原子、C〜Cアルキル基又はC〜Cアルケニル基を表し、Mは金属原子を表し、Xは加水分解性基を表し、mはMの原子価を表し、nは0又1の整数を表す。)で表される化合物を溶媒中、鉱酸触媒の存在下で加水分解・重縮合させて得られる生成物とセルロース誘導体を含有する混合物を、真空下で脱泡処理することにより酸触媒を除去することを特徴とする吸液性基材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸液性基材の製造方法、詳しくは、溶媒中で酸触媒を用いて加水分解・重縮合させて得た生成物とセルロース誘導体を含有する混合物を真空下で脱泡することからなる吸液性基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乳幼児のおむつ、大人用のおむつ、生理用品等の衛生用品や、農園芸用品等の様々な分野に、吸水材料が広く用いられている。
そのひとつに、ヒドロキシプロピルセルロースなどの吸水性ポリマーと吸水性シリカゲルなどを含有する組成物がある。
たとえば、非特許文献1には、ポリビニルアルコールとSiOとのハイブリッドを用いるハイドロゲルが記載されている。ここには、テトラエトキシシラン量(SiO量)によって、得られるハイドロゲルの膨潤度(試験片の長さの変化で評価)や引張応力が変化することが記載されている。
吸水性ポリマーと吸水性シリカゲルなどを含有する組成物は、また、特許文献1に記載されているように、電流により経皮的に薬剤を吸収させるイオントフォレシス用の基材としても用いられている。ここでは、一例として、ヒドロキシプロピルセルロースとシリカゲルを含有するフィルムについても記載されているが、ヒドロキシプロピルセルロースの分子量が不明であり、固体のシリカゲルを添加するものであった。
【0003】
【特許文献1】米国特許第6275728号公報
【非特許文献1】有機・無機ハイブリッド材料、技術情報協会、2000年、329〜334頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、経皮吸収型貼付剤用の薬液担持基材として使用しうるpHを有し、かつ品質の優れた吸液性基材を簡易に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、これまで、酸触媒の存在下でゾル−ゲル法を用いて得られる無機酸化物とセルロース誘導体とを含有する基材を製造した後、使用した酸触媒を中和することにより中性化していたが、水酸化ナトリウムなどの塩基を用いて中和した場合には、これらはゾルーゲル反応の触媒として機能するため、急激なシリカの粒子成長が起こり、得られるフィルムは吸水率が大幅に低下し、吸水した後も脆いなど、フィルムの品質が十分ではなかった。そこで、中和に代えて真空下で脱泡して酸を除去することにより、品質に優れた基材を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、以下の特徴を有する発明に関する。
(1)式(I)
(RM(X)m−n ・・・(I)
(式中、Rは、水素原子、C〜Cアルキル基又はC〜Cアルケニル基を表し、Mは金属原子を表し、Xは加水分解性基を表し、mはMの原子価を表し、nは0又1の整数を表す。)で表される化合物を溶媒中、鉱酸触媒の存在下で加水分解・重縮合させて得られる生成物とセルロース誘導体を含有する組成物を、真空下で脱泡処理することにより酸触媒を除去することを特徴とする吸液性基材の製造方法。
(2)式(I)
(RM(X)m−n ・・・(I)
(式中、Rは、水素原子、C〜Cアルキル基又はC〜Cアルケニル基を表し、Mは金属原子を表し、Xは加水分解性基を表し、mはMの原子価を表し、nは0又1の整数を表す。)で表される化合物を溶媒中、鉱酸触媒の存在下で加水分解・重縮合させた後、セルロース誘導体を混合し、その後真空下で脱泡処理することにより酸触媒を除去することを特徴とする(1)記載の吸液性基材の製造方法、及び、
(3)鉱酸触媒が塩酸であることを特徴とする(1)又は(2)記載の吸液性基材の製造方法、及び、
(4)酸触媒を除去することによりpHを4〜6にすることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の吸液性基材の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の処理をすることにより、酸触媒が除去されるため、経皮吸収型貼付剤用の薬液担持基材として使用しうるpHを有し、かつ品質の優れた吸液性基材を簡易に製造することができる。
本発明により得られた吸液性基材は、吸液性、形状安定性、弾力性、密着性に優れている。また、本発明の吸液性基材は、吸液性やゲル物性の制御を容易に行うことができる。
したがって、用途に応じて、それに適した吸液率や物性の吸液性基材を得ることができる。また、ポリビニルアルコールとSiOとのハイブリッドを用いるハイドロゲルは、アルコール類を吸収しないが、本発明の吸液性基材は、アルコール類、エーテル類、ケトン類、アミド類等の親水性有機溶媒をも吸収し得る。したがって、疎水性の薬剤等であっても、本発明の吸液性基材が吸液しうる親水性有機溶媒に可溶な薬剤等であれば、本発明の吸液性基材に含有させて薬剤シートとして用いうる。また、本発明の吸液性基材は、吸液させて膨潤させた後、乾燥し、再度吸液させると、再び膨潤するため、再利用等することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(用語の定義)
本発明における「吸液性基材」とは、本発明の方法により製造したものであり、これをキャスティング法などの公知の手法でフィルムなどを作製し、フィルムなどがベタつかない程度まで溶媒を室温下で揮発させ、60℃以上の温度で24時間以上乾燥し質量変化がなくなった後、水に30分間浸漬させた場合の吸水率が60%以上、最も好ましくは140%以上であり、かつ、前述と同様に乾燥させた後、エタノールに30分間浸漬させた場合の吸液率が30%以上、最も好ましくは70%以上である基材をいう。
本発明の吸液性基材は、水だけでなく、アルコール類、エーテル類、ケトン類、アミド類等の親水性有機溶媒をも吸収することができ、かつ、十分な形状安定性を有している。ここで、親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール類;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン等のアミド類などが挙げられる。
【0009】
本発明中、「式(I)で表される化合物を溶媒中、酸触媒の存在下で、加水分解・重縮合させて得られる生成物」とは、ゾル−ゲル法と呼ばれる式(I)で表される化合物の加水分解反応とそれに続く重縮合反応により得られる、金属と酸素のネットワーク構造を含有する無機高分子化合物を意味する。
また、本発明において、「式(I)で表される化合物を、溶媒中、かつ触媒の存在下で、加水分解・重縮合させて得られる生成物とセルロース誘導体とを含有する組成物」とは、式(I)で表される化合物を溶媒中、かつ触媒の存在下で、加水分解・重縮合させて得られる生成物とセルロース誘導体との混合物のみならず、両成分の一部又は全部が水素結合及び/又は共有結合などを介して均質化あるいは複合化したものも包含する。
【0010】
本発明中、「脱泡」とは、空気を抜いて真空下にすることにより、液中に溶存していた揮発性物質を気化させるこという。また、本発明において、「真空下」とは、真空ポンプなどで空気を抜いて真空又は真空に近い状態であることを言う。
【0011】
(式(I)で表される化合物)
式(I)中、Rは、水素原子、C〜Cアルキル基又はC〜Cアルケニル基を表す。具体的に、C〜Cアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられ、C〜Cアルケニル基としては、ビニル基、アリル基等が挙げられる。これらの中でも、C〜Cアルキル基又はC〜Cアルケニル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等のC〜Cのアルキル基が特に好ましい。
式(I)中、Mは金属原子を表し、Xは加水分解性基を表し、mはMの原子価を表す。Mとしては、例えば、Si、Ti、Zr、Al、Sn、Ge、W、Nbが挙げられ、より優れた吸液性基材を得る観点から、これらの中でもSi、Ti、Zrが好ましく、Siが特に好ましい。また、Xとしては、例えば、水酸基、アルコキシ基(OR)等が挙げられ、より優れた吸液性基材を得る観点から、これらの中でもアルコキシ基が好ましい。
加水分解性基としてのアルコキシ基(OR)におけるアルキル基(R)としては、特に限定はないが、例えば、C〜Cアルキル基又はC〜Cアルケニル基が挙げられる。具体的には、上記Rと同様のものを例示することができる。
式(I)中、nは0又は1の整数を表し、中でも、より優れた吸液性基材を得る観点から、0であることが好ましい。
【0012】
式(I)で表される化合物のうち、好ましい化合物として、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラt−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリt−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ペンチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシランや、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム等の、前述のシラン化合物におけるケイ素がチタン又はジルコニウム等に置換された化合物などを例示することができ、これらの中でもテトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシランが特に好ましい。化合物(I)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、上記に例示されたような化合物(I)が部分的に縮合した、多摩化学工業社製シリケート40、シリケート45、シリケート48、Mシリケート51のようなオリゴマーのケイ素化合物でもよい。
【0013】
(セルロース誘導体)
セルロース誘導体としては、本発明の吸液性基材に使用可能なものであれば特に制限されないが、メチルセルロース、エチルセルロース等のアルキルセルロースや、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロースを具体的に挙げることができ、より優れた吸液性基材を得る観点から、ヒドロキシアルキルセルロースが好ましく、ヒドロキシプロピルセルロースが特に好ましい。セルロース誘導体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0014】
本発明において使用されるセルロース誘導体の質量平均分子量は、1×10〜5×10であり、5×10〜1.5×10が好ましい。用いるセルロース誘導体の質量平均分子量が高くなると、得られる吸液性基材の吸液率は低下し、形状の保持性が向上する傾向があるので、用いるセルロース誘導体の質量平均分子量を調整することによって、得られる吸液性基材の吸液率やゲル物性の制御を容易になし得る。なお、本発明においては、分子量の異なる2種のセルロース誘導体を混合して、上記平均分子量に調整することもできる。たとえば、平均分子量が60万のヒドロキシプロピルセルロースと平均分子量が120万を併用する場合が本発明に包含されることはもちろんであるが、平均分子量が120万のヒドロキシプロピルセルロースと平均分子量が7万のヒドロキシプロピルセルロースを併用して、分子量の平均が1×10〜5×10の範囲に入る場合も本発明に包含される。
セルロース誘導体の質量平均分子量及び分子量分布は、例えばゲル浸透クロマトグラフィーを用い測定できるので、これを用いて質量平均分子量を算出することができる。ここで、本件明細書における質量平均分子量の数値を算出するために必要な、セルロース誘導体の平均分子量及び分子量分布の測定方法及び測定条件は、公知の方法及び条件に従う。
【0015】
本発明の吸液性基材において、式(I)で表される化合物を溶媒中、かつ触媒の存在下で、加水分解・重縮合させて得られる生成物及びセルロース誘導体の含有量の割合はそれぞれ特に制限されないが、より優れた吸液性基材を得る観点から、具体的には、式(I)で表される化合物の理論金属酸化物換算質量が、式(I)で表される化合物の理論金属酸化物換算質量とセルロース誘導体との合計質量100質量部に対して、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは5〜30質量部である。式(I)で表される化合物から得られる生成物の割合が高過ぎると、得られる吸液性基材の吸水性の低下を招き、式(I)で表される化合物から得られる生成物の割合が低過ぎると、得られる吸液性基材の耐水性が十分でない場合がある。
ここで、式(I)で表される化合物の理論金属酸化物換算質量とは、式(I)で表される化合物の加水分解性基であるXが理論上全て加水分解されて酸化物になった場合の質量をいう。すなわち、例えば、式(I)で表される化合物がSi(ORである場合には、その理論金属酸化物換算質量は、SiOの質量を意味する。また、式(I)で表される化合物がRSi(ORである場合には、その理論金属酸化物換算質量は、RSiO1.5の質量を意味する。
【0016】
(吸液性基材の製造法)
本発明の吸液性基材の製造法としては、式(I)で表される化合物を加水分解重縮合させて得られる生成物とセルロース誘導体とを含有する組成物を、真空下で脱泡して酸を除去する方法である限り、限定されないが、具体的には次の方法が例示できる。
(1)式(I)で表される化合物とセルロース誘導体とを含有する液を調製し、その液を攪拌しながら溶媒及び触媒を添加して反応を行い、その後、真空下脱泡して酸を除去する方法。
(2)式(I)で表される化合物を加水分解重縮合させて得られる生成物とセルロース誘導体とを含有する液を、真空下で脱泡して酸を除去する方法。
加水分解重縮合の反応温度は、室温〜還流条件であることが好ましく、室温〜80℃であることがより好ましい。反応時間は数十分〜数十時間が好ましく、数時間〜数十時間がさらに好ましい。
【0017】
本発明において、真空下で脱泡するには、必ずしも攪拌する必要はないが、効率的に行うためには攪拌するのが好ましい。たとえば、真空攪拌脱泡機などが使用できる。攪拌時には、加熱を行っても、行わなくても良い。
真空攪拌脱泡機は、内包する気泡や低沸点物を取り除き、均一に配合物を混合するため、真空条件下において攪拌するようにした装置である。
本発明において、攪拌時の真空攪拌装置内の圧力は数mmHg以下、好ましくは1mmHg以下である。真空度が低い場合には鉱酸を取り除くことはできるものの、時間がかかる。一方、真空度をあまりに上げようとすると製造コストが高くなり、また危険性も増大する。本発明において、真空攪拌器としては、例えば日本ソセー工業社製 MINI-DAPPO-Nが使用できるが、数mmHg以下の減圧状態を安定に維持でき、攪拌手段を有するものであれば、特に限定されない。
上記方法で脱泡することにより、酸が除去されて液のpHは上昇し、弱酸性になる。好ましいpHの範囲は4〜6である。
【0018】
溶媒が水以外の場合において、式(I)で表される化合物を加水分解する際に加える水の量は、特に制限されないが、より優れた吸液性基材を得る観点から、式(I)で表される化合物に対して、1〜20倍モルであることが好ましく、2〜10倍モルであることがより好ましい。
【0019】
溶媒としては、水、アルコール類(メタノール、エタノール、プロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等)、エーテル類(テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロピラン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン等)、エステル類(酢酸メチル、エチレングリコールモノアセテート等)、アミド類(ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン等)等が挙げられ、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
式(I)で表される化合物の加水分解を行う触媒としては、塩酸、硝酸、燐酸等の無機酸などであり、特に塩酸が好ましい。かかる触媒の添加量としては、より優れた吸液性基材を得る観点から、式(I)で表される化合物に対して0.001〜0.5倍モルであることが好ましく、0.01〜0.1倍モルであることがより好ましい。
【0021】
(吸液性基材の使用態様)
本発明の方法により製造される吸液性基材は、特に、経皮吸収型貼付剤用の薬液担持基材として好適であるが、その他、ペットの排泄物処理剤;おむつや生理用品等の衛生用品における吸液性基材;農園芸用品における保水剤;薬効成分を含有するシート;乾燥剤;食品等の鮮度保持剤;調湿剤;などにも用いることができる。
本発明の吸液性基材は、式(I)で表される化合物を加水分解重縮合させて得た生成物とセルロース誘導体のみを含有していてもよいが、その他に、シリカゾル微粒子、アルミナゾル微粒子等の金属酸化物微粒子;界面活性剤;染料、顔料;分散材;増粘材;香料;抗菌性成分;等の任意の成分を含有していてもよい。
基材には、用途に応じて、他に任意の構成を付加してもよい。例えば、薬効成分を含有するシートにする場合、本発明の吸液性基材を支持体に固定せずに用いてもよいが、支持体に固定して用いてもよい。支持体としては、特に制限されないが、例えばエチレン―酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエステル等のプラスチックフィルム;ナイロン、レイヨン、ウレタン、脱脂綿等の不織布;天然繊維系又は化学繊維系の布類;その他、紙、セロファンなどを使用することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例】
【0022】
テトラエトキシシラン(KBE-04:信越化学製)40.0gをエタノール64gに加え、0.1N−塩酸水溶液20g(和光純薬工業社製)をエタノール20gで希釈した溶液を滴下した(テトラエトキシシランと水と塩酸のモル比は1:6:0.01)。45℃で150分攪拌して反応を行うことで固形分濃度が8%のシリカゾル液を作製した。高感度・高濃度粒子径測定装置 MALVERN HPPSにより求めたシリカ粒子の平均粒子径は33nmであった。このシリカゾル液130gをヒドロキシプロピルセルロースの銘柄MとLの重量組成比が1.5:1、固形分濃度が12.6%であるエタノール溶液1018gへ加えて、ホモミキサーで40分攪拌した。得られた溶液をMINI-DAPPO-N(日本ソセー工業社製)により、真空攪拌脱泡処理を20分間行った。真空攪拌脱泡後の溶液の固形分濃度は15%、B型粘度計により測定した25℃における粘度は94,000cPであった。真空脱泡前の液のpHは2.2であったが、系中の塩酸が減圧除去されることによりpHが4.6に上昇した。
この液をスロットダイ塗工方式により100μm厚みのポリエステルフィルムに機械速度0.2m/分で塗工した。0.2m/分の速度のまま40℃から90℃までの乾燥炉を移動させて約20分乾燥させることで、ヒドロキシプロピルセルロースとSiOからなる厚さ100μmの有機無機ハイブリッドフィルムを得た(固形分中のSiOは8重量%)。乾燥後のフィルムは、ゾル−ゲル反応の進行が十分ではないため、耐水性が低いが、チャック付きのアルミ製の袋に入れて60℃の熱風オーブン中で96時間エージング処理を行い、ゾル−ゲル反応を促進することで、耐水性の良好なフィルムとすることが可能であった。このフィルムの60分後の吸水率は314%であった。このフィルムを室温下でアルミ袋に入れたまま1ヶ月保存した後、吸水率を評価したところほとんど変化は見られず、フィルムの保存安定性は良好であった。また、エージング処理後のフィルムに吸水率が300%になるように水を滴下して吸水膨潤させたゲル表面のpHをフラット型pH電極により測定したところ、5.2であり、安全性上好ましい弱酸性のハイドロゲルシートであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
(RM(X)m−n ・・・(I)
(式中、Rは、水素原子、C〜Cアルキル基又はC〜Cアルケニル基を表し、Mは金属原子を表し、Xは加水分解性基を表し、mはMの原子価を表し、nは0又1の整数を表す。)で表される化合物を溶媒中、鉱酸触媒の存在下で加水分解・重縮合させて得られる生成物とセルロース誘導体を含有する組成物を、真空下で脱泡処理することにより酸触媒を除去することを特徴とする吸液性基材の製造方法。
【請求項2】
式(I)
(RM(X)m−n ・・・(I)
(式中、Rは、水素原子、C〜Cアルキル基又はC〜Cアルケニル基を表し、Mは金属原子を表し、Xは加水分解性基を表し、mはMの原子価を表し、nは0又1の整数を表す。)で表される化合物を溶媒中、鉱酸触媒の存在下で加水分解・重縮合させた後、セルロース誘導体を混合し、その後真空下で脱泡処理することにより酸触媒を除去することを特徴とする請求項1記載の吸液性基材の製造方法。
【請求項3】
鉱酸触媒が塩酸であることを特徴とする請求項1又は2記載の吸液性基材の製造方法。
【請求項4】
酸触媒を除去することによりpHを4〜6にすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の吸液性基材の製造方法。


【公開番号】特開2009−24047(P2009−24047A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186317(P2007−186317)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】