説明

吸湿呼吸器および吸湿呼吸器用内筒

【課題】 容器本体内のすべてのシリカゲルを無駄なく有効に使用することができる吸湿呼吸器を提供する。
【解決手段】 シリカゲル13を収容するガラス筒2内に、筒状の内筒8をガラス筒2の垂直中心とほぼ同心に配設し、この内筒8とガラス筒2との間にシリカゲル13を収容する。そして、収容されているすべてのシリカゲル13が多くの湿気を吸収し、すべてのシリカゲル13の吸湿効果が均等に低下(劣化)する。この結果、すべてのシリカゲル13が無駄なく有効に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器などの機器の呼吸作用によって流入する大気中の湿気を吸収するための吸湿呼吸器(ブリーザ)に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、変圧器の呼吸作用によって大気中の湿気が器内に侵入し、その水分が油に溶けて変圧器の絶縁耐力を低下させる、という事象がある。このため、侵入した湿気を吸湿剤(脱水剤)によって吸収するための吸湿呼吸器が、変圧器などに付設されている。この吸湿呼吸器は、例えば、透明ガラス製で円筒状の容器本体が垂直に配置され、この容器本体の上側に変圧器側などに接続される呼吸管が設けられ、容器本体の下側には油壷が設けられている。また、容器本体内にはシリカゲルなどの吸湿剤が収容(封入)され、油壷には油が収容されている。そして、大気(外気)が容器本体の下側から流入して、油壷内の油および容器本体内の吸湿剤を通過する(通り抜ける。)。これにより、大気中の湿気が吸湿剤によって吸収され、吸気管から変圧器側などに流入する。一方、変圧器側などからの排気が吸気管から流入し、容器本体内および油壷内を通過して、大気中に排出されるものである(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、このような吸湿呼吸器には、容器本体の上側に吸湿剤投入口が設けられ、下側には吸湿剤排出口が設けられている。そして、吸湿剤投入口から吸湿剤を容器本体内に投入するとともに、容器本体内の吸湿剤を吸湿剤排出口から排出するようにしている。
【特許文献1】実開平5−18012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、変圧器などの呼吸作用によって、吸湿剤が大気中の湿気を繰り返し吸収することで、湿気を十分に吸収し、吸湿剤の吸湿効果が低下(劣化)していく。例えば、吸湿剤がシリカゲルの場合、当初青色のシリカゲルが、赤色からピンク色に変わり、湿気を十分に吸収した状態では透明(白色)に変色する。そして、吸湿剤の吸湿効果が低下した場合には、吸湿剤を新たな吸湿剤に取り替える必要がある。この際、容器本体の外側から吸湿剤の変色状態を目視で確認し、劣化を示す色(透明など)に変色している場合には、取替時期であると判断する。そして、容器本体内のすべての吸湿剤を吸湿剤排出口から排出させ、新たな吸湿剤を吸湿剤投入口から容器本体内に投入していた。
【0005】
このように、容器本体の外側から吸湿剤の変色状態を目視で確認し、取替時期を判断していた。すなわち、容器本体内の外周部に位置する吸湿剤が劣化を示す色に変色している場合には、容器本体内のすべての吸湿剤が劣化していると判断していた。しかしながら、本発明者は研究を重ね、容器本体内のすべての吸湿剤が均等に劣化するものではないことを確認した。すなわち、容器本体内の外周部に位置する吸湿剤が、容器本体内の中心部に位置する吸湿剤に比べて、早く劣化することを確認した。さらには、長期間が経過しても、容器本体内の中心部に位置する吸湿剤は吸湿しづらい、すなわち劣化しづらいことを確認した。そして、これらのことから、容器本体内の外周部に、より多くの大気が通過することを確認するに至った。
【0006】
従って、容器本体内の外周部に位置する吸湿剤が劣化しても、中心部に位置する吸湿剤は劣化していないことが多い。このため、容器本体内の外周部に位置する吸湿剤が劣化した時点で、すべての吸湿剤を取り替えると、中心部に位置する劣化していない吸湿剤をも取り替えることになり、中心部に位置する吸湿剤を無駄にしていた。すなわち、容器本体内のすべての吸湿剤を有効に使用するに至らず、吸湿剤の収容量に応じた十分な吸湿機能を果たしていなかった。
【0007】
そこで本発明は、容器本体内のすべての吸湿剤を有効に使用することができる吸湿呼吸器および、吸湿呼吸器用内筒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、吸湿剤を収容する筒状の容器本体がほぼ垂直に配設され、この容器本体の上側に、変圧器などの機器側に接続される呼吸管が設けられ、大気が容器本体の下側から流入して吸湿剤を通過し、呼吸管から機器側に向う吸湿呼吸器において、容器本体内に、筒状の内筒が容器本体の垂直中心とほぼ同心に配設され、この内筒と容器本体との間に吸湿剤を収容したことを特徴としている。
(作用)
内筒と容器本体との間に吸湿剤が収容されているため、すなわち、より多くの大気が通過する容器本体内の外周部に吸湿剤が収容されているため、収容されているすべての吸湿剤が多くの湿気を吸収する。このため、収容されているすべての吸湿剤の吸湿効果が均等に低下(劣化)する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の吸湿呼吸器において、内筒の周壁に、吸湿剤よりも小さい通気孔が形成されていることを特徴としている。
(作用)
容器本体の下側から流入した大気が内筒内にも流入し、この大気が内筒の通気孔を通って吸湿剤側に流れる。一方、内筒と容器本体との間に収容された吸湿剤を通過してきた大気が、内筒の通気孔を通って内筒内に流れる。このようにして、内筒内と吸湿剤とを大気が流動する。また、内筒の内側から通気孔を介して、内筒の外周面側に位置する吸湿剤の状態(変色状態)を目視することが可能となる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、吸湿剤を収容する筒状の容器本体がほぼ垂直に配設され、この容器本体の上側に、変圧器などの機器側に接続される呼吸管が設けられ、大気が容器本体の下側から流入して吸湿剤を通過し、呼吸管から機器側に向う吸湿呼吸器において、この吸湿呼吸器の容器本体内に配設される吸湿呼吸器用内筒であって、筒状の内筒本体と、この内筒本体を容器本体の垂直中心とほぼ同心に位置させるための固定手段とを備えたことを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の吸湿呼吸器用内筒において、内筒本体の周壁に、吸湿剤よりも小さい通気孔が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、収容されているすべての吸湿剤の吸湿効果が均等に低下(劣化)するため、容器本体内のすべての吸湿剤を有効に使用することができる。すなわち、容器本体の外側から目視できる一部の吸湿剤(容器本体の内周面側に位置する吸湿剤)が劣化を示す色に変色している場合には、ほぼすべての吸湿剤が劣化していることになる。このため、目視できる一部の吸湿剤の変色状態に基づいて取替時期を判断し、すべての吸湿剤を新たな吸湿剤に取り替えたとしても、吸湿剤を無駄にすることがない。そして、内筒と容器本体との間に吸湿剤を収容するため、容器本体内のすべてに吸湿剤を収容する場合に比べて、吸湿剤の収容量(使用量)を低減することができる。つまり、湿気が良好に吸収される部位に必要量だけの吸湿剤を収容し、そのすべての吸湿剤を無駄なく有効に使用することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、内筒内と吸湿剤とを大気が流動するため、内筒の外周面側(容器本体内の中心部側)に位置する吸湿剤が、大気と良好に接触する。この結果、内筒の外周面側から容器本体の内周面側に亘るすべての吸湿剤が(略同一平面上の吸湿剤が)、より均等に湿気を吸収し、より均等に劣化する。つまり、すべての吸湿剤をより無駄なく有効に使用することができる。さらに、内筒の外周面側に位置する吸湿剤の状態(変色状態)を目視することが可能なため、吸湿剤の取替時期をより適正に判断することが可能となる。
【0014】
請求項3および4に記載の発明によれば、固定手段によって内筒本体が容器本体の垂直中心とほぼ同心に位置するように吸湿呼吸器用内筒を配設し、この吸湿呼吸器用内筒と容器本体との間に吸湿剤を収容することで、すべての吸湿剤を無駄なく有効に使用することができる。また、吸湿呼吸器全体を取り替えることなく、既存の吸湿呼吸器に本吸湿呼吸器用内筒を配設することで、吸湿剤を無駄なく有効に使用することが可能となり、既存の吸湿呼吸器を有効的に活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係わる吸湿呼吸器1を示す正面図である。この吸湿呼吸器1は主として、ガラス筒2(容器本体)、上蓋金具3、底蓋金具4、呼吸管5、油壷6、排気管7および、内筒8を備えている。
【0017】
ガラス筒2は透明ガラス製の円筒状で、その上端部にガスケット(図示せず)を介して上蓋金具3が取り付けられ、下端部にガスケット(図示せず)を介して底蓋金具4が取り付けられている。すなわち、ガラス筒2の上下端部を上蓋金具3と底蓋金具4とによって挟持した状態で、上蓋金具3と底蓋金具4とが長尺ボルト9によって締め付けられている。そして、このように密閉されたガラス筒2の中に、後述するようにして、シリカゲル13(吸湿剤)が封入(収容)されるようになっている。なお、図1では、説明のために、シリカゲル13は二点鎖線で示している。
【0018】
上蓋金具3の中心からずれた位置(外周部)には吸湿剤投入口3aが設けられ、この吸湿剤投入口3aには投入キャップ10が取り付けられている。また、吸湿剤投入口3aと対向する上蓋金具3の外周部には、呼吸管5がフランジ部5aを介してボルト11によって取り付けられている。この呼吸管5は、変圧器側のコンサベータ(図示せず)に接続され、変圧器側へ大気を送り、また、変圧器側からの排気を受けるための通気管である。
【0019】
底蓋金具4の中心からずれた外周部(吸湿剤投入口3aのほぼ真下)には吸湿剤排出口4aが設けられ、この吸湿剤排出口4aには排出キャップ12が取り付けられている。また、底蓋金具4の下面側には、円筒状の吸気筒4bと排気筒4cとが形成され、排気筒4cが、底蓋金具4の中心すなわちガラス筒2の垂直中心に位置するように配設されている。そして、この吸気筒4bと排気筒4cとを覆うように、油14を収容する(蓄える)油壷6が取り付けられている。
【0020】
この油壷6は底を有する円筒状で、上端のフランジ部6aが底蓋金具4の取付部4dに装着された状態で取り付けられている。また、この油壷6内には仕切板6bが設けられ、この仕切板6bによって吸気室6cと排気室6dとに分室されている。そして、吸気室6c内に底蓋金具4の吸気筒4bが収容され、排気室6d内に排気筒4cが収容されるようになっている。さらに、フランジ部6aの下側には、大気が流入するための吸気口6eが吸気室6c側に設けられ、大気へ排気するための排気口6fが排気室6d側に設けられている。
【0021】
また、底蓋金具4の中心部には、排気筒4cと連通する貫通孔4eが形成され、この貫通孔4cに排気管7が挿入(圧入)されている。これにより、排気管7がガラス筒2の垂直中心(中心軸)に位置し、排気管7と排気筒4cとを介して油壷6(排気室6d)と呼吸管5とが連通するようになっている。さらに、底蓋金具4には、油壷6の吸気口6eから流入した大気を、吸気室6cからガラス筒2内に流入させるための空気孔(図示せず)が設けられている。
【0022】
内筒8は、金網を円筒状に形成した内筒本体81と、アクリル製で円盤状の固定盤82(固定手段)とから構成されている。すなわち、図2に示すように、固定盤82の中心部に装着孔82aが形成され、この装着孔82aに排気管7が圧入された状態で、4つの固定盤82がほぼ等間隔に排気管7に装着されている。また、固定盤82の周縁には、盤面と直角な垂直壁82bが形成され、この垂直壁82bに内筒本体81が巻き付けられた状態で固定され、ガラス筒2内に配設されている。そしてこれにより、内筒本体81の垂直中心がガラス筒2(排気管7)の垂直中心と同心になるようなっている。
【0023】
また、内筒本体81の長さ(高さ)は、排気管7の長さよりもやや短く設定され、内筒本体81の外径は、多くの大気が通過する通風路を内筒本体81とガラス筒2とによって挟むように設定されている。すなわち、シリカゲル13を収容した状態で、内筒本体81内を流れる大気が少なく、内筒本体81とガラス筒2とによって挟まれた領域(空間)を流れる大気が多くなるように設定されている。例えば、ガラス筒2の内径が約130mmの場合、内筒本体81の外径が約50mmに設定されている。さらに、内筒本体81の周壁である金網の網目は、後述するように通気孔としての役目を備え、その大きさはシリカゲル13よりも小さく設定されている。そして、このような内筒8の内筒本体81とガラス筒2との間に、シリカゲル13が収容されている。なお、内筒8内には、シリカゲル13は収容されていない。
【0024】
さらに、内筒8の下端部には、多孔底板15が設けられている。この多孔底板15は板状の金網で構成され、ガラス筒2の内周面から吸湿剤排出口4aの口元に向って下側に傾斜するように形成されている。これにより、シリカゲル13を排出する際に、ガラス筒2内のシリカゲル13が吸湿剤排出口4a側に流動しやすいようになっている。
【0025】
次に、このような構成の吸湿呼吸器1の作用などについて説明する。
【0026】
まず、ガラス筒2内にシリカゲル13が封入されていない状態では、投入キャップ10を外して吸湿剤投入口3aから、内筒8の内筒本体81とガラス筒2との間にシリカゲル13を投入し、再び投入キャップ10を取り付ける(締める)。次に、呼吸管5をコンサベータに接続して、吸湿呼吸器1を変圧器側に付設する。
【0027】
そして、変圧器の呼吸作用によって、大気が吸湿呼吸器1を介して変圧器に吸気され、変圧器からの排気が吸湿呼吸器1を介して大気に排出(排気)される。すなわち、吸気の際には、大気が油壷6の吸気口6eから流入し、吸気室6c内の油14を通過して、底蓋金具4の空気孔からガラス筒2内に流入する。そして、ガラス筒2内のシリカゲル13を下部から上部に向って通過し(通り抜け)、吸気管5からコンサベータ(変圧器側)に流入する。さらに、図3に示すように、底蓋金具4の空気孔から流入した大気が内筒8の内筒本体81内にも流入し、この大気が内筒本体81の網目を通ってシリカゲル13側に流れる。一方、シリカゲル13を通過してきた大気が、内筒本体81の網目を通って内筒本体81内に流れる。このように、内筒8の内筒本体81内とシリカゲル13とを大気が流動する。
【0028】
このようにして、大気がシリカゲル13を通過することで、大気中の湿気がシリカゲル13によって吸収され、変圧器の絶縁耐力の低下が防止される。一方、排気の際には、変圧器(コンサベータ)からの排気が吸気管5から流入し、排気管7内を通って油壷6の排気室6d内の油14を通過し、排気口6fから大気中に排出されるものである。
【0029】
このような吸排気を繰り返すことによって、シリカゲル13が湿気を吸収し、次第にその吸湿効果が低下(劣化)していく。この劣化の状態を色で表すと、当初青色のシリカゲル13が、赤色からピンク色に変わり、湿気を十分に吸収した状態では透明(白色)となる。そして、吸湿効果が低下したシリカゲル13を新たなシリカゲルに取り替えるには、次のようにすればよい。すなわち、排出キャップ12を外して、すべてのシリカゲル13を吸湿剤排出口4aから排出させた後に、再び排出キャップ12を取り付ける。そして、上記と同様にして、新たなシリカゲルを吸湿剤投入口3aからガラス筒2内に投入すればよい。
【0030】
ところで、本発明者は研究を重ね、ガラス筒2内の外周部に、より多くの大気が通過することを確認するに至った。そして、本吸湿呼吸器1では、上記のように、内筒8の内筒本体81とガラス筒2との間にシリカゲル13が収容されているため、すなわち、より多くの大気が通過するガラス筒2内の外周部にのみシリカゲル13が収容されているため、収容されているすべてのシリカゲル13が多くの湿気を吸収する。このため、収容されているすべてのシリカゲル13の吸湿効果が均等に低下(劣化)する。さらに、上記のように、内筒8の内筒本体81内とシリカゲル13とを大気が流動するため、内筒本体81の外周面側(ガラス筒2内の中心部側)に位置するシリカゲル13が、大気と良好に接触する。この結果、内筒本体81の外周面側からガラス筒2の内周面側に亘るすべてのシリカゲル13がより均等に湿気を吸収し、より均等に劣化する。つまり、略同一平面上のシリカゲル13が、より均等に劣化する。
【0031】
この結果、収容されたすべてのシリカゲル13を無駄なく有効に使用することができる。すなわち、ガラス筒2の外側から目視できるガラス筒2内の最外周部(ガラス筒2の内周面側)に位置するシリカゲル13が透明に変色している場合には、ほぼすべてのシリカゲル13が劣化していることになる。このため、目視できる一部のシリカゲル13の変色状態に基づいて取替時期を判断し、すべてのシリカゲル13を新たなシリカゲル13に取り替えたとしても、シリカゲル13を無駄にすることがない。つまり、劣化していないシリカゲル13を取り替えてしまうことがない。そして、内筒8の内筒本体81とガラス筒2との間にのみシリカゲル13を収容するため、内筒8内を含めたガラス筒2内のすべてにシリカゲル13を収容する場合に比べて、シリカゲル13の収容量(使用量)を低減することができる。つまり、湿気が良好に吸収される部位であるガラス筒2内の外周部にのみ、必要量だけのシリカゲル13を収容し、そのすべてのシリカゲル13を無駄なく有効に使用することができる。
【0032】
これに対し、内筒8が設けられていないと、収容されているシリカゲル13の一部を無駄に取り替えなければならないことになる。すなわち、ガラス筒2内のすべてにシリカゲル13を収容した場合、図4に示すように、ガラス筒2内の中心部(排気管7)に位置するシリカゲル13を通過する大気量が少なく、当シリカゲル13の吸湿量は少ない。このため、ガラス筒2内の外周部に位置するシリカゲル13が劣化しても、中心部に位置するシリカゲル13は劣化していないことが多い。そして、ガラス筒2内の外周部に位置するシリカゲル13が劣化した時点で、すべてのシリカゲル13を取り替えると、中心部に位置する劣化していないシリカゲル13をも取り替えることになり、中心部に位置するシリカゲル13を無駄にすることになる。すなわち、ガラス筒2内のすべてのシリカゲル13を有効に使用するに至らず、シリカゲル13の収容量に応じた十分な吸湿機能を果たさないことになる。
【0033】
ところで、上記のように、内筒8の内筒本体81が金網によって構成されているため、金網の網目を介して、内筒本体81の外周面側(ガラス筒2内の中心部側)に位置するシリカゲル13の変色状態などを目視することが可能となる。例えば、図5に示すように、投入キャップ10を外し、吸湿剤投入口3aから内筒本体81の内側を覗き見ることで、金網の網目から現れたシリカゲル13を目視することが可能となる。これにより、シリカゲル13の取替時期をより適正に判断することが可能となる。すなわち、ガラス筒2の外側から目視できるガラス筒2内の最外周部に位置するシリカゲル13の変色状態のみならず、ガラス筒2内の中心部側に位置するシリカゲル13の変色状態も目視することができるため、シリカゲル13全体の劣化状態をより正確に把握し、取替時期をより適正に判断することが可能となる。
【0034】
また、例えば、ガラス筒2内の最外周部に位置するシリカゲル13のみが透明に変色し、ガラス筒2内の中心部側に位置するシリカゲル13が赤色程度に変色している場合には、内筒8の内筒本体81の外径が適正ではないと判断できる。すなわち、このような場合には、ガラス筒2内の中心部側に位置するシリカゲル13には、大気の通過が少ないと判断できる。このため、内筒本体81の外径を大きくし、より適正な必要量だけのシリカゲル13を収容するようにすることができる。このように、ガラス筒2内の中心部側に位置するシリカゲル13の変色状態などを目視できることで、内筒本体81の外径を調整し、シリカゲル13をより無駄なく有効に使用することが可能となる。
【0035】
以上、この発明の実施形態について説明したが、具体的な構成は、本実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、内筒8の内筒本体81を板材で構成し、この板材(周壁)に通気孔を設けるようにしてもよい。また、排気管7に装着された固定盤82によって内筒本体81がガラス筒2の垂直中心と同心になるように位置させているが、例えば、内筒本体81とガラス筒2との間に放射線状の固定部材(固定手段)を設け、この固定部材によって内筒本体81をガラス筒2の垂直中心と同心に位置させるようにしてもよい。
【0036】
さらに、変圧器のみならず、油タンクなどその他の機器にも本吸湿呼吸器1を付設できることは勿論である。さらにまた、ガラス筒2の下側に油壷6以外の弁室(吸気弁と排気弁とを収容した容器)などが設けられている吸湿呼吸器や、吸湿剤排出口4aのみが設けられている吸湿呼吸器にも内筒8を配設することで、本吸湿呼吸器1と同等の効果が得られることは勿論である。
【0037】
また、既存の吸湿呼吸器に上記のような内筒8(吸湿呼吸器用内筒)を配設するようにしてもよい。例えば、上記のような内筒8の固定盤82を既存の吸湿呼吸器の排気管に装着して配設することで、本吸湿呼吸器1と同等の構成とし、同等の効果を得ることができる。すなわち、吸湿呼吸器全体を取り替えることなく、既存の吸湿呼吸器に内筒8を配設することで、そのすべてのシリカゲル13を無駄なく有効に使用することができ、既存の吸湿呼吸器を有効的に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態に係わる吸湿呼吸器の正面図(一部断面図)。
【図2】本発明の実施形態に係わる吸湿呼吸器の内筒の一部を示す正面図(a)と平面図(b)。
【図3】本発明の実施形態に係わる吸湿呼吸器における大気の流れを示す模式図。
【図4】内筒が設けられていない吸湿呼吸器における大気の流れを示す模式図。
【図5】本発明の実施形態に係わる吸湿呼吸器において、内筒本体の外周面側に位置するシリカゲルの変色状態を目視している状態を示す図。
【符号の説明】
【0039】
1 吸湿呼吸器
2 ガラス筒(容器本体)
3 上蓋金具
3a 吸湿剤投入口
4 底蓋金具
4a 吸湿剤排出口
4b 吸気筒
4c 排気筒
5 呼吸管
6 油壷
6b 仕切板
6c 吸気室
6d 排気室
6e 吸気口
6f 排気口
7 排気管
8 内筒
81 内筒本体
82 固定盤(固定手段)
13 シリカゲル(吸湿剤)
14 油
15 多孔底板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸湿剤を収容する筒状の容器本体がほぼ垂直に配設され、この容器本体の上側に、変圧器などの機器側に接続される呼吸管が設けられ、大気が前記容器本体の下側から流入して前記吸湿剤を通過し、前記呼吸管から前記機器側に向う吸湿呼吸器において、
前記容器本体内に、筒状の内筒が前記容器本体の垂直中心とほぼ同心に配設され、この内筒と前記容器本体との間に前記吸湿剤を収容した、
ことを特徴とする吸湿呼吸器。
【請求項2】
前記内筒の周壁に、前記吸湿剤よりも小さい通気孔が形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の吸湿呼吸器。
【請求項3】
吸湿剤を収容する筒状の容器本体がほぼ垂直に配設され、この容器本体の上側に、変圧器などの機器側に接続される呼吸管が設けられ、大気が前記容器本体の下側から流入して前記吸湿剤を通過し、前記呼吸管から前記機器側に向う吸湿呼吸器において、この吸湿呼吸器の前記容器本体内に配設される吸湿呼吸器用内筒であって、
筒状の内筒本体と、この内筒本体を前記容器本体の垂直中心とほぼ同心に位置させるための固定手段とを備えた、
ことを特徴とする吸湿呼吸器用内筒。
【請求項4】
前記内筒本体の周壁に、前記吸湿剤よりも小さい通気孔が形成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の吸湿呼吸器用内筒。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−200386(P2009−200386A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42581(P2008−42581)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】