説明

吸盤

【課題】 頭皮に対して脱着可能に取り付けられ、毛髪を係止することができ、かつら素材に好適な吸盤を提供する。
【解決手段】 吸盤シート1は、複数の吸盤2を横杆3で縦横に連結したもので個々の吸盤2は椀形吸着体4と円形平坦面5に立設する3本の柱体6とその頂部に固着する環状体7と柱体内部の円筒状の凸部8を有する。凸部8は中空構造で円形平坦面5の中央に穿設する孔9で凸部内面と椀形吸着体内面とを連通する。環状体7には適数本の毛髪を係止するので、任意の時に脱着可能なかつらの構成部材として用いることができる。凸部8は負圧となる空間を二段構成とするので吸着力を高めることができる。隣接する他の椀形吸着体4と連結する横杆3を適宜切断することで吸盤シート1を面状、列状あるいは個別の吸盤として用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、かつらに好適な極小形吸盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
かつらには、頭部全体にすっぽりと被せる全かつらや部分的に覆う一部かつらまで用途に応じて数多くの形態があるが、かつらが頭部からずれないように、従来は頭髪にピンで止着したり、粘着テープを利用して頭皮に直接貼り付けて固定していた。
【0003】
粘着剤を利用して頭皮に固定するかつらとしては、例えば下記に示すような従来技術があった。
【特許文献1】特開平6−229009号公報 従来のかつらは、毛髪を係止するための網目状の布と、この布の下面に貼着する粘着剤からなり、粘着剤は皮膚へ刺激を与えにくい素材を選定していたが、構造的には両面接着テープと同等であった。又近年では0.1mm程度の極薄の基材に毛髪を係止し、数週間程度の長期間に亘り頭皮に固着する技術も開発されてきた。しかし、かつらは就眠時には取り外したり、又手入れを行なう際等、任意の時に脱着したいという要請もあるため両面テープで接着する構造以外の脱着可能な技術を望む声もあった。取り付け取り外しが容易な構造としては、例えば吸盤にてかつらを取り付ける構造が考えられる。
【0004】
吸盤は、その背面に様々なものを取り付け、これを一定の場所に固定させて使用するための目的を持ち、夫々の必要に応じた形、大きさを選定してきた。例えば基材に開口径数mm程度の複数のカップ状吸盤を突設して吸盤シートを形成し、その背面に所定の部材を取り付けると共に吸盤側を他の部材の表面に吸着させる場合、その着脱は比較的容易なものであった。このような吸盤シートは全体が柔軟で弾力性を有する樹脂からなり、自在に折れ曲がりかつ復元する構成であった。
【0005】
又、最近ではポスター等を窓ガラスに貼付して使用する場合、使用後に剥離することを考慮して、基材の裏面に吸盤層を設ける技術も開発されている。これは吸盤素材となるインキ状物質をスクリーン印刷等の方法により網目状の吸盤型の連続した紋様として印刷するもので、印刷面を乾燥定着させることによって吸盤層が形成され、容易に窓ガラスより剥離することができると共にポスターを繰り返して再使用できる効果があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来かつらに好適な吸盤の構造は開示されておらず、人体(頭皮又は皮膚)に吸着すると共に毛髪を係止することを目的とする吸盤は提案されていなかった。
【0007】
この発明は、従来の吸盤が有する上記の問題点を解消すべくなされたものであり、頭皮に対して脱着可能に取り付けられ、毛髪を係止することができ、かつら素材に好適な吸盤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明の吸盤は、下面直径が2mm程度でその高さを1mm程度とする椀形吸着体の上面より柱体を複数本立設し、この柱体頂部に毛髪係止用の環状体を固着することを特徴とするものである。
【0009】
例えばシリコン樹脂からなる吸盤の上面を直径1.5mmの円形平坦面とし、この平坦面の外周に沿って直径0.25mm、高さ0.75mmのシリコン樹脂製の柱体を点対称位置に3本立設し、その頂部に太さ直径0.25mm、内径1.0mm、外径1.5mmの環状体を固着する。
【0010】
この環状体には毛髪を適数本係止する。毛髪は人毛、人工毛何れも可能である。吸盤は頭皮平滑面に吸着するため、皮膚への刺激が少なく、かつ弾力性を備えながら平滑な接触面を有して、押圧後の復元力により強力な吸着力を呈する素材を選ぶ。
【0011】
請求項2記載の吸盤の吸着体の上面には弾性変形可能で中空の凸部を設け、この凸部内面と前記吸着体内面とを前記上面に穿設する孔で連通することを特徴とするものである。負圧となる空間を二段構成とし、吸着力を高める。孔は針の太さ程度の大きさで、凸部内の空気を押し出す働きをする。凸部は柱体の内側に形成する。
【0012】
請求項3記載の吸盤の吸着体は、隣接する他の吸着体と連結する横杆を張り出すことを特徴とするものである。横杆は、例えば吸着体上面より直交して張り出し、複数の吸着体を連結して吸盤シートとなす。横杆の長さは、吸着体が押圧されて変形拡張した際にも、隣接する吸着体同士が重合しないようその間隔を確保する。
【0013】
この吸盤シートは全体が連結した面状の吸盤として用いてもよいし、一列状の吸盤としたり、あるいは独立した一個一個の吸盤として用いてもよい。何れの場合も、かつらとして使用する部分に合わせて適宜横杆を切断等して頭皮に吸着する。
【発明の効果】
【0014】
この発明の吸盤は、椀形吸着体の上面に立設する柱体頂部に毛髪係止用の環状体を固着するので、任意の時に脱着可能なかつらの構成部材として用いることができる。請求項2記載の吸盤は凸部を設け吸着体内面とを孔で連通するので、負圧となる空間を二段構成とし、吸着力を高めることができる。請求項3記載の吸盤は、隣接する他の吸着体と連結する横杆を張り出すので、吸盤シートとして用いることができ、面状、列状あるいは個別の吸盤として適宜選択しながら用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次にこの発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明する。図1は吸盤シートの断面図、図2は吸盤シートの平面図である。吸盤シート1は、複数の吸盤2を横杆3で縦横に連結したもので、個々の吸盤2は、下面直径φ1=2mm、高さh1=1mm、厚さd1=0.2mm程度の椀形吸着体4と、その上面に形成する直径φ2=1.5mmの円形平坦面5に立設する太さ直径φ3=0.25mm、高さh2=0.75mmの3本の柱体6と、その頂部に固着する太さ直径φ4=0.25mm、内径φ5=1.0mm、外径φ6=1.5mmの環状体7と、柱体内側に形成する円筒状の凸部8を有する。
【0016】
凸部8は中空構造で円形平坦面5の中央に穿設する孔9で凸部内面8aと椀形吸着体4の内面4aとを連通する。これら吸盤2を構成する各部材は弾性変形可能な素材、例えばシリコン樹脂から形成する。特に椀形吸着体4は頭皮に吸着する部位であるため、皮膚への刺激が少なく、かつ弾力性を備えながら平滑な接触面を有して、押圧後の復元力により強力な吸着力を呈する素材を選定する。
【0017】
次に吸着時における凸部の作用を図3に基づき説明する。図3は吸盤吸着時の断面図である。吸盤2を頭皮10に吸着させる際には、椀形吸着体4を押圧して内面4aの空気を押し出す。同時に凸部8も押圧して内面8aの空気を孔9を介して押し出す。このように負圧となる空間が二段構成となるので吸着力が高まる。
【0018】
次に吸盤2をかつらとして使用する際の実施形態を図4に基づき説明する。吸盤2の環状体7には毛髪11を適数本係止する。毛髪11は人毛、人工毛何れでも可能であり、吸盤2を頭皮10に吸着した状態で係止してもよいし、別の場所で予めセットするものでもよい。
【0019】
吸盤シート1は各吸盤2を横杆3で連結することで面状となっているが、横杆3の適切な位置でこれを切断すれば一列状の吸盤群ともなり、又独立した一個一個の吸盤ともなる。なお横杆3の長さは、椀形吸着体4が押圧されて変形拡張した際にも、隣接する吸着体同士4,4が重合しないようその間隔を適宜設定する。
【0020】
このように吸盤2は面状、列状あるいは点状として適宜選択しながら用いることができるので、全かつらとしても、部分かつらとしても、又局部的な増毛用かつらとしても用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
この発明の吸盤は、環状体に毛髪以外の材料を係止することで一般の吸盤、吸着体としても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】吸盤シートの断面図である。
【図2】吸盤シートの平面図である。
【図3】吸盤吸着時の断面図である。
【図4】かつらとして使用する吸盤シートの断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 吸盤シート
2 吸盤
3 横杆
4 椀形吸着体
5 円形平坦面
6 柱体
7 環状体
8 凸部
9 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面直径が2mm程度でその高さを1mm程度とする椀形吸着体の上面より柱体を複数本立設し、この柱体頂部に毛髪係止用の環状体を固着することを特徴とする吸盤。
【請求項2】
前記吸着体の上面には弾性変形可能で中空の凸部を設け、この凸部内面と前記吸着体内面とを前記上面に穿設する孔で連通することを特徴とする請求項1記載の吸盤。
【請求項3】
前記吸着体は、隣接する他の吸着体と連結する横杆を張り出すことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の吸盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−2833(P2006−2833A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179324(P2004−179324)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(501380656)
【Fターム(参考)】