吸着セル及びその製造方法
【課題】微細粉塵粒子の発生を防止し、2次汚染を防止できる吸着セルを提供する。
【解決手段】吸着セルは、第1吸着剤で形成された第1吸着層110、及び第1吸着剤よりも密度の高い第2吸着剤で形成され、第1吸着層から粉塵粒子が発生することを防止するように、第1吸着層の表面にコーティングされた第2吸着層120とを含み、第1吸着層の上面に高密度吸着剤で形成された第2吸着層をコーティングすることによって得られる。
【解決手段】吸着セルは、第1吸着剤で形成された第1吸着層110、及び第1吸着剤よりも密度の高い第2吸着剤で形成され、第1吸着層から粉塵粒子が発生することを防止するように、第1吸着層の表面にコーティングされた第2吸着層120とを含み、第1吸着層の上面に高密度吸着剤で形成された第2吸着層をコーティングすることによって得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物質を吸着及び分解できる吸着セル及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、経済発展と産業化に伴って汚染物質の種類も多様化しつつある。特に、日常の生活空間と産業現場で発生する臭気ガス(硫化水素(H2S)、アンモニア(NH3)、アミン類(RNH2)、VOCs(Volatile Organic Compounds、揮発性有機化合物)は、吸い込まれると頭痛や不快感を誘発するため、このような有害な物質を除去または減少させるための研究が進行中である。
【0003】
このような臭気ガスなどを除去するための技術として、臭気発生物質を物理的に吸着すると同時に、化学的に分解または結合させて吸着剤の表面に安定して固定させる化学吸着剤が広く用いられている。
【0004】
このような化学吸着剤は、性能及び品質を決定するに当たり、1)有害物質の除去速度、2)有害物質の除去容量、3)微細粒子の発生するか否か、及び4)流体拡散特性、を考慮して製造する。
【0005】
化学吸着剤は、同一体積に含まれている吸着剤の量によって、低密度吸着剤と高密度吸着剤とに分類する。
【0006】
低密度吸着剤は、結合力が弱いことから粉塵粒子が発生することがあり、高密度吸着剤は、空気が吸着剤分子の間に拡散する速度が低いため、臭気発生物質の除去速度が低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の一側面によれば、吸着剤で形成された第1吸着層の表面を、高密度吸着剤からなる第2吸着層でコーティングすることによって、第1吸着層から粉塵粒子が発生することを防止する吸着セル及びその製造方法を提供する。
【0008】
本開示の他の側面は、下記で一部が説明される、下記から一部が自明になる、または下記の実施から学ぶことができるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一側面によれば、吸着セルは、第1吸着剤で形成された第1吸着層、及び第1吸着層から粉塵粒子が発生することを防止するように、第1吸着剤よりも密度の高い第2吸着剤で第1吸着層の表面にコーティングされて形成される第2吸着層と、を含む。
【0010】
一方、第2吸着層は、第1吸着層に流体が流動する複数の気孔部を含むことができる。また、第2吸着層は、第1吸着層から突出した複数の突出部をさらに含むことができる。
【0011】
また、第1吸着層は球状にすればよい。また、吸着セルは、第1吸着層の内部に配置され、第2吸着剤で形成された第3吸着層をさらに含むことができる。また、第1吸着層は球状にすればよい。
【0012】
また、第2吸着層は、第1吸着層に流体が流動する複数の気孔部を含むことができる。また、第2吸着層は、第1吸着層から突出した複数の突出部をさらに含むことができる。
【0013】
本開示の他の側面によれば、吸着セルは、第1吸着剤と該第1吸着剤よりも密度の高い第2吸着剤との混合物で形成された第1吸着層と、第1吸着層から粉塵粒子が発生することを防止するように、第1吸着剤よりも密度の高い第2吸着剤で第1吸着層の表面を包んで形成される第2吸着層と、を含む。
【0014】
また、第2吸着層は、第1吸着層に流体が流動する複数の気孔部を含むことができる。また、第2吸着層は、第1吸着層から突出した複数の突出部をさらに含むことができる。また、第1吸着層は球状にすればよい。
【0015】
本開示の他の側面によれば、吸着セルの製造方法は、第1吸着剤で形成された第1吸着層を用意し、第1吸着層からの粉塵粒子の発生を防止するように、低炭化点物質と、第1吸着剤よりも密度の高い第2吸着剤とで形成された保護層を、第1吸着層の表面にコーティングし、保護層から低炭化点物質を除去して、第1吸着層に流体が流動する複数の気孔部を含む第2吸着層を形成する。
【0016】
一方、低炭化点物質は、熱処理または酸処理により除去すればよい。
【0017】
また、第2吸着層が第1吸着層の表面に所定厚さで形成されるように、前記第1吸着層の表面への保護層のコーティング及び低炭化点物質の除去を反復することができる。また、第1吸着層は球状にすればよい。
【0018】
また、前記製造方法は、第2吸着剤で形成された第3吸着層を、第1吸着層の内部にさらに備えることができる。また、第1吸着層は球状にすればよい。
【0019】
また、第2吸着層が第1吸着層の表面に所定厚さで形成されるように、第1吸着層の表面への保護層のコーティング及び低炭化点物質の除去を反復することができる。
【0020】
本開示の他の側面によれば、吸着セルの製造方法は、第1吸着剤と、第1吸着剤よりも密度の高い第2吸着剤との混合物で形成された第1吸着層を用意し、第1吸着層からの粉塵粒子の発生を防止するように、低炭化点物質と第2吸着剤との混合物で形成された保護層を第1吸着層の表面にコーティングし、保護層から低炭化点物質を除去して、第1吸着層に流体が流動する複数の気孔を含む第2吸着層を形成する。
【0021】
一方、低炭化点物質は、熱処理または酸処理により除去すればよい。
【0022】
また、第2吸着層が第1吸着層の表面に所定厚さで形成されるように、第1吸着層の表面への保護層のコーティング及び低炭化点物質の除去を反復することができる。
【発明の効果】
【0023】
上記本開示の実施例に係る吸着セル及びその製造方法によれば、低密度吸着剤で形成された吸着層の上面に、高密度吸着剤で形成された高密度吸着層をコーティングすることによって、微細粉塵粒子の発生を防止し、その2次汚染を防止することができる。
【0024】
また、高密度吸着層に気孔部を形成して低密度吸着層への空気流路とすることによって、吸着セルの臭気発生物質の除去速度を向上させることができる。
【0025】
また、高密度吸着層において気孔部を形成することから得られる突出部により、空気と高密度吸着層表面との接触面積及び吸着セルと空気との接触時間が増加し、除去効率を増加させることができる。
【0026】
また、低密度吸着層の内部に高密度吸着層を別に形成したり、高密度吸着材と低密度吸着剤との混合物で吸着層を形成することによって、吸着セルの除去容量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本開示の上記の/または他の側面は、添付した図面と共に説明される下記の実施例から明らかになり、且つより容易に理解されるであろう。添付した図面は、下記の通りである。
【図1A】低密度化学吸着剤で形成された吸着層の一例を示す図である。
【図1B】高密度化学吸着剤で形成された吸着層の一例を示す図である。
【図2】低密度化学吸着剤で形成された吸着層から発生する粉塵粒子を示す図である。
【図3】本開示の一実施例に係る吸着セルを示す図である。
【図4】図3の吸着セル周辺における流体の流れを示す図である。
【図5】図3の吸着セルを製造する方法を示すフローチャートである。
【図6】図5の各動作における吸着セルの状態を示す図である。
【図7】本開示の他の実施例に係る吸着セルを示す図である。
【図8】図7の吸着セルを製造する方法を示すフローチャートである。
【図9】図8の各動作における吸着セルの状態を示す図である。
【図10】図7の吸着セルを製造する他の方法を示すフローチャートである。
【図11】本開示の他の実施例に係る吸着セルを示す図である。
【図12】本開示の他の実施例に係る吸着セルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付の図面を参照しつつ、本開示の実施例を詳細に説明する。図面中、同一の構成要素には同一の参照符号を付する。
【0029】
図1Aは、低密度化学吸着剤で形成された吸着層の一例を示す図であり、図1Bは、高密度化学吸着剤で形成された吸着層の一例を示す図である。
【0030】
化学吸着剤は、比表面積の高い活性炭、アルミナなどの吸着剤に、金属、金属塩または有機物を添着して化学的活性を高めた素材で、中和反応または化学反応を通じて除去しようとするガスを選択的に吸着及び除去する。
【0031】
すなわち、化学吸着剤は、空気中に浮遊する臭気やVOCs(以下、臭気発生物質)の物理的吸着及び化学的吸着を行ってこれらの物質を分解または結合させることで、臭気発生物質を除去する。
【0032】
このような化学吸着剤は、所定の圧力により圧縮されて吸着層を構成し、この所定の圧力の大きさによって、図1Aに示すような低密度化学吸着剤で形成された吸着層(以下、低密度吸着層)10と、図1Bに示すような高密度化学吸着剤で形成された吸着層(以下、高密度吸着層)20と、に分類する。
【0033】
図1Aを参照すると、低密度吸着層10は、吸着剤分子同士の間隔が広いため、流体が速く吸着層10の内部に流動する。
【0034】
すなわち、空気が吸着剤分子同士の間に速く広がるため、吸着剤分子と空気中の臭気発生物質との化学反応が容易に起き、臭気発生物質が迅速に除去される。
【0035】
ただし、低密度吸着層10は、吸着剤分子同士の間隔が広く、結合力が弱いため、粉塵粒子が発生することがある。
【0036】
図1Bを参照すると、高密度吸着層20は、低密度吸着層10と違い、吸着剤分子同士の間隔が狭いため、空気が吸着剤分子同士の間に拡散する速度が遅く、臭気発生物質の除去速度も遅い。
【0037】
一方、高密度吸着層20は、低密度吸着層10に比べて、同一体積に含まれた吸着剤の量が多いため、除去容量が高い。高い除去容量は、吸着層の寿命を増加させる効果を招くが、高密度吸着層20は、空気拡散特性が低いため、除去容量に比べて寿命が短い。
【0038】
以下、図2を参照して、低密度吸着層10の問題点について詳細に説明する。図2は、低密度化学吸着剤を有する吸着層から発生する粉塵粒子を示す図である。まず、臭気発生物質を含む空気1が、低密度吸着層10へ一定方向に流入するとする。図2を参照すると、空気1は吸着層10に流入しながら吸着層10に流れ圧力を加える。
【0039】
そのため、空気1の流入する方向に吸着層10は物理的な衝撃を受けることになり、このような物理的衝撃により吸着層10から粉塵粒子が発生する。
【0040】
この粉塵粒子は、半導体製造工程で致命的な欠陥を招くことがあり、さらには、吸着剤を使用する空調機システムなどにおいても2次汚染を発生させることがある。
【0041】
したがって、吸着層は、臭気発生物質の除去効率に優れた低密度吸着剤で形成する一方で、低密度吸着層からの粉塵粒子発生を解決する必要がある。
【0042】
以下、上記の低密度吸着層における問題点を解決するために、本開示の種々の実施例に係る吸着セル及びその製造方法について説明する。
【0043】
図3は、本開示の一実施例に係る吸着セルを示す図であり、図4は、図3の吸着セル周辺における流体の流れを示す図である。図3を参照すると、本実施例に係る吸着セル100は、第1吸着層110及び第2吸着層120で構成される。
【0044】
第1吸着層110は、球状に設計され、吸着セル100の内部コアを形成する。第1吸着層110は、球状以外の他の形状にしてもよい。第1吸着層110は、KMnO4、NaMnO4、H3PO4、R−NH2などを添着させた低密度吸着剤で形成される。
【0045】
このような第1吸着層110は、上述した通り、吸着剤分子同士の結合力が弱いため、空気の流れ圧力により粉塵粒子が発生することがある。
【0046】
そこで、本実施例は、第1吸着層110からの微細粉塵粒子の発生を防止するために、第2吸着層120を第1吸着層110の表面に備える。
【0047】
第2吸着層120は、好ましくは、数十nmから数百μmの厚さとすればよい。第2吸着層120は、吸着剤分子同士の結合力が高い高密度吸着剤で形成される。本実施例では、第2吸着層120を第1吸着層110の上面に形成させて、物理的衝撃に対する保護層の役割を担わせる。したがって、第2吸着層120は、第1吸着層110からの粉塵粒子の発生を防止することができる。
【0048】
第2吸着層120は、第1吸着層110へと物質が伝達されるようにする多数の気孔部122を含む。第2吸着層120の気孔部122は、第1吸着層110へ流体が流れる流路の役割を担い、よって、臭気発生物質を含む空気が第1吸着層110へと流動できる。
【0049】
したがって、除去速度が相対的に低い第2吸着層120が第1吸着層110の表面を包んでも、除去速度の高い第1吸着層へ空気が流動できるため、吸着セル100は、高い臭気発生物質除去速度を維持することができる。
【0050】
図4は、第1吸着層と第2吸着層とで構成された吸着セルへの流体の流れを示す図である。図4を参照すると、高密度吸着剤で形成された第2吸着層120が、第1吸着層110が外部空気1に直接露出されることを防止し、保護層の役割を果たしている。
【0051】
また、不規則な突起部121を有する第2吸着層120は、空気1と接触する吸着セル100の表面積を増加させる。また、気孔部122内で空気が渦状に流動することがわかる。そのため、空気1と第1吸着層110及び第2吸着層120とが接触する時間が増加する。
【0052】
したがって、本実施例に係る吸着セル100では、第1吸着層110が多数の気孔部122を有する第2吸着層120でコーティングされるため、第1吸着層110からの微細粉塵粒子の発生を防止できる他、空気1と接触する吸着セル100の表面積を増加させ、且つ空気1と吸着セル100との接触時間を増加させ、臭気発生物質の除去効率を向上させる。
【0053】
図5は、図3の吸着セルを製造する方法を示すフローチャートであり、図6は、図5の各動作における吸着セルの状態を示す図である。
【0054】
図5及び図6を参照すると、まず、低密度吸着剤で形成された第1吸着層110を用意する(動作210)。第1吸着層110は丸い球状に設計され、吸着セル100の内部コアを形成できるもので、他の形状にしてもよい。
【0055】
第1吸着層110を用意すると(動作210)、第1吸着層110からの粉塵粒子の発生を防止するように、第1吸着層110の表面に保護層120’をコーティングする(動作220)。
【0056】
保護層120’は、相対的に低い炭化点を持つ低炭化点物質と、低密度吸着剤に比べて密度の高い高密度吸着剤との混合物で形成される。
【0057】
低炭化点物質は、300℃以上の高熱で炭化され、残留炭素が残らない。この低炭化点物質には、PP(PolyPropylene)、PET(PolyEthylene Terephthalate)、ナイロン(Nylon)のような合成物質やベンゼン、トルエン、キシレンのようなガス物質などを用いればよい。
【0058】
一方、保護層120’の厚さは、好ましくは、数十nmから数百μm程度と様々に調節可能である。
【0059】
保護層120’が第1吸収層110の表面にコーティングされると(動作220)、保護層120’中の低炭化点物質を除去して、複数の気孔部122を含む第2吸着層120を形成する(動作230)。
【0060】
具体的に、低炭化点物質は、熱を用いる炭化工程、または塩酸、硫酸などの酸を用いる酸塩基工程により除去される。
【0061】
炭化工程または酸塩基工程が行われると、低炭化点物質は二酸化炭素(CO2)と水蒸気(H20)に変換され、変換された二酸化炭素(CO2)と水蒸気(H20)は、空気中に放出される。これにより、外部の空気が第1吸着層110へと流動できるような流路として機能する気孔部122が形成される。
【0062】
図7は、本開示の他の実施例に係る吸着セルを示す図である。本実施例に係る吸着セル100は、第1吸着層110及び第2吸着層120で構成される。第1吸着層110は、吸着剤で形成され、吸着セル100の内部コアとして機能する。本実施例は、球状に形成された第1吸着層110を示しているが、球状以外の他の形状に第1吸着層110を形成してもよい。
【0063】
特に、本実施例では、第2吸着層120による空気と吸着セル100との接触表面積の増加を極大化するために、第2吸着層120を所定厚さを持つ多数の突起形状にする。
【0064】
具体的に、図7を参照すると、第2吸着層120は、突出部121及び気孔部122を含む。
【0065】
突出部121のそれぞれは、先の尖った尖端状を有し、所定の間隔で離隔される。突出部121は、高密度吸着剤で形成され、外部空気との接触表面積を増加させるために充分の厚さ及び密度を有する。また、突出部121同士の隙間には、外部空気が第1吸着層110に流動する気孔部122が設けられる。
【0066】
これにより、物理的衝撃による第1吸着層110からの微細粉塵粒子の発生を防止して2次汚染を防止するとともに、吸着セル100と外部空気との接触面積を増加させ、吸着セル100の除去効率を向上させる。
【0067】
一方、本実施例は、尖端状の各突出部121を示したが、突出部121のそれぞれは、第1吸着層から所定の厚さで突出してさえいれば、先端を丸めた形状にしてもよく、不規則な形状にしてもよい。
【0068】
また、本実施例は、規則的に配列されている突出部121と気孔部122を示しているが、突出部121と気孔部122は不規則に配列されてもよい。
【0069】
すなわち、第2吸着層120の一部が所定の厚さで突出し、第1吸着層110の表面を保護することができ、かつ、一部が穿孔されて第1吸着層110への流路を形成すればよい。
【0070】
図8は、図7の吸着セルを製造する方法を示すフローチャートであり、図9は、図8の各動作における吸着セルの状態を示す図である。
【0071】
図8及び図9を参照すると、まず、吸着剤で形成される第1吸着層110を用意し(動作310)、この第1吸着層110の表面に保護層120’をコーティングする(動作320)。
【0072】
保護層120’は、低炭化点物質と、第1吸着層110の吸着剤に比べて密度の高い高密度吸着剤との混合物で形成され、第1吸着層110を外部空気との物理的衝撃から保護する役割を果たす。これにより、第1吸着層110からの微細粉塵粒子の発生を防止し、2次汚染を防止することができる。
【0073】
保護層120’が第1吸着層110にコーティングされると(320)、低炭化点物質を炭化工程または酸化工程で除去して、第1吸着層110への流路である複数の気孔部122を含む第2吸着層120を形成する(動作330)。
【0074】
特に、本実施例では、気孔部122を含む第2吸着層120による外部空気と吸着セル100との接触表面積の増加を極大化するために、第2吸着層120の厚さを増加させる。
【0075】
具体的に、本実施例では、第1吸収層110の表面への保護層120’のコーティング、及び低炭化点物質の除去が反復される(動作340)。
【0076】
第1吸収層110の表面への保護層120’のコーティング、及び低炭化点物質の除去は、第2吸着層120の突出部121が所定厚さ及び密度とされるまで反復される。
【0077】
一方、保護層120’における高密度吸着剤の比率は、好ましくは、10〜15%程度に設定し、保護層120’における低炭化点物質の比率を、保護層120’における高密度吸着剤に比べて十分高くすることができる。
【0078】
これは、第1吸収層110の表面への保護層120’のコーティング、及び低炭化点物質の除去を反復することから(動作340)、第1吸着層110への流路が塞がれる現象を防止するためである。
【0079】
図10は、図7の吸着セルを製造する他の方法を示すフローチャートである。図10を参照すると、まず、吸着剤で形成された第1吸着層110を用意する(動作410)。
【0080】
第1吸着層110が用意されると(動作410)、第1吸着層110の吸着剤に比べて密度の高い高密度吸着剤で形成され、かつ一定の大きさを持つ複数の突出部を用意する(動作420)。これら突出部を、第1吸着層110の表面に等間隔で付着する(動作430)。
【0081】
図8及び図9の製造方法と違い、図10の製造方法は、一定の厚さ及び一定の形状を有する突出部を、第1吸着層110に等間隔で付着することができるという利点がある。
【0082】
以上、微細粉塵粒子の発生を防止し、外部空気と接触する吸着セルの表面積を増大させ、かつ低密度吸着剤に空気が流入するようにする吸着セル及びその製造方法について説明した。
【0083】
空気中の臭気発生物質は、高い除去速度を持つ第1吸着層により速く除去されるため、第1吸着層の除去容量を増加させる必要がある。
【0084】
そのためには、同一体積に含まれる吸着剤の量を増加させなければならない。以下、第1吸着層の除去容量を増加させるための本開示の実施例に係る吸着セル及びその製造方法を、図11及び図12を参照して説明する。
【0085】
図11は、本開示の他の実施例に係る吸着セルを示す図である。
【0086】
本実施例に係る吸着セル100は、第1吸着層110、及び第1吸着層110の表面を保護する第2吸着層120を含み、さらに第3吸着層130を含む。
【0087】
第3吸着層130は、高密度吸着剤で形成され、第1吸着層110の内部に設けられる。
【0088】
図11を参照すると、本実施例に係る第3吸着層130は、球状に形成された第1吸着層110の内部コアとして機能する。このように低密度吸着剤で形成された第1吸着層110内に、高密度吸着剤で形成された第3吸着層130を備えることによって、第1吸着層110の除去容量を増加させることができる。これは、同一体積の吸着層に含まれる吸着剤の量が増加したからである。
【0089】
本実施例の吸着セルにおける他の部分は、前述の各実施例に係る吸着セルと同一なため、その説明は省略する。
【0090】
以下、本実施例に係る吸着セルを製造する方法を説明する。
【0091】
まず、高密度吸着剤で形成され、コアとして機能する第3吸着層130を用意する。
【0092】
この第3吸着層130を低密度吸着剤で形成される第1吸着層110でコーティングし、第1吸着層110の表面に高密度吸着剤で形成される第2吸着層120をコーティングする。
【0093】
すなわち、第3吸着層130の上面に第1吸着層110をコーティングし、第1吸着層110の上面に第2吸着層120をコーティングすることで、互いに異なる密度の吸着剤で形成される3個の吸着層を製造する。
【0094】
第2吸着層120は、吸着剤からなる突出部121と、第1吸着層110への流路を形成する気孔部122と、を含む。このような突出部121と気孔部122を形成するために、第1吸着層110の上面に、低炭化点物質と高密度吸着剤との混合物で形成される保護層をコーティングする。
【0095】
また、該コーティングされた保護層に熱を加えたり酸処理したりして、保護層から低炭化点物質を除去する。
【0096】
これで、一部は突出し、一部は穿孔される、吸着剤で形成された第2吸着層120が得られる。
【0097】
ここで、第2吸着層120の表面への保護層のコーティング、及び低炭化点物質の除去を反復すると、第2吸着層120における突出部121の大きさと密度を増加させることができる。
【0098】
また、このように厚さと密度の増加した突出部121を含む第2吸着層120を形成するために、高密度吸着剤で一定の形状及び大きさを持つ多数の突出部121をまず形成し、それぞれ等間隔で第1吸着層110の表面に付着してもよい。
【0099】
上記のようなプロセスによって大きさ及び密度が増加した突出部121を含む吸着セル100は、空気との接触表面積が大きいため、臭気発生物質除去効率が高い。
【0100】
図12は、本開示の他の実施例に係る吸着セルを示す図である。
【0101】
本実施例に係る吸着セル100は、第1吸着層110、及び第1吸着層110の表面を保護するために高密度吸着剤で形成された第2吸着層120を含む。特に、本実施例の第1吸着層110は、低密度吸着剤と高密度吸着剤130との混合物で形成される。
【0102】
これで、同一体積に含まれている吸着剤の量が増加し、これは吸着セル100の除去容量が増加する効果につながる。本実施例の第2吸着層120の構造は、前述した各実施例に係る第1吸着層と同一なので、その詳細な説明は省略する。
【0103】
本実施例に係る吸着セル100を製造する方法は、下記の通りである。まず、低密度吸着剤と高密度吸着剤130との混合物で形成された第1吸着層110を備え、第1吸着層110の上面に第2吸着層120をコーティングする。
【0104】
第2吸着層120は、上述した通り、多数の気孔を設けることで、第1吸着層110への空気流路を形成する。本実施例に係る第2吸着層120を製造する方法は、図11の実施例に係る第2吸着層120を製造する方法と同一なので、その詳細な説明は省略する。
【技術分野】
【0001】
本開示は、物質を吸着及び分解できる吸着セル及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、経済発展と産業化に伴って汚染物質の種類も多様化しつつある。特に、日常の生活空間と産業現場で発生する臭気ガス(硫化水素(H2S)、アンモニア(NH3)、アミン類(RNH2)、VOCs(Volatile Organic Compounds、揮発性有機化合物)は、吸い込まれると頭痛や不快感を誘発するため、このような有害な物質を除去または減少させるための研究が進行中である。
【0003】
このような臭気ガスなどを除去するための技術として、臭気発生物質を物理的に吸着すると同時に、化学的に分解または結合させて吸着剤の表面に安定して固定させる化学吸着剤が広く用いられている。
【0004】
このような化学吸着剤は、性能及び品質を決定するに当たり、1)有害物質の除去速度、2)有害物質の除去容量、3)微細粒子の発生するか否か、及び4)流体拡散特性、を考慮して製造する。
【0005】
化学吸着剤は、同一体積に含まれている吸着剤の量によって、低密度吸着剤と高密度吸着剤とに分類する。
【0006】
低密度吸着剤は、結合力が弱いことから粉塵粒子が発生することがあり、高密度吸着剤は、空気が吸着剤分子の間に拡散する速度が低いため、臭気発生物質の除去速度が低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の一側面によれば、吸着剤で形成された第1吸着層の表面を、高密度吸着剤からなる第2吸着層でコーティングすることによって、第1吸着層から粉塵粒子が発生することを防止する吸着セル及びその製造方法を提供する。
【0008】
本開示の他の側面は、下記で一部が説明される、下記から一部が自明になる、または下記の実施から学ぶことができるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一側面によれば、吸着セルは、第1吸着剤で形成された第1吸着層、及び第1吸着層から粉塵粒子が発生することを防止するように、第1吸着剤よりも密度の高い第2吸着剤で第1吸着層の表面にコーティングされて形成される第2吸着層と、を含む。
【0010】
一方、第2吸着層は、第1吸着層に流体が流動する複数の気孔部を含むことができる。また、第2吸着層は、第1吸着層から突出した複数の突出部をさらに含むことができる。
【0011】
また、第1吸着層は球状にすればよい。また、吸着セルは、第1吸着層の内部に配置され、第2吸着剤で形成された第3吸着層をさらに含むことができる。また、第1吸着層は球状にすればよい。
【0012】
また、第2吸着層は、第1吸着層に流体が流動する複数の気孔部を含むことができる。また、第2吸着層は、第1吸着層から突出した複数の突出部をさらに含むことができる。
【0013】
本開示の他の側面によれば、吸着セルは、第1吸着剤と該第1吸着剤よりも密度の高い第2吸着剤との混合物で形成された第1吸着層と、第1吸着層から粉塵粒子が発生することを防止するように、第1吸着剤よりも密度の高い第2吸着剤で第1吸着層の表面を包んで形成される第2吸着層と、を含む。
【0014】
また、第2吸着層は、第1吸着層に流体が流動する複数の気孔部を含むことができる。また、第2吸着層は、第1吸着層から突出した複数の突出部をさらに含むことができる。また、第1吸着層は球状にすればよい。
【0015】
本開示の他の側面によれば、吸着セルの製造方法は、第1吸着剤で形成された第1吸着層を用意し、第1吸着層からの粉塵粒子の発生を防止するように、低炭化点物質と、第1吸着剤よりも密度の高い第2吸着剤とで形成された保護層を、第1吸着層の表面にコーティングし、保護層から低炭化点物質を除去して、第1吸着層に流体が流動する複数の気孔部を含む第2吸着層を形成する。
【0016】
一方、低炭化点物質は、熱処理または酸処理により除去すればよい。
【0017】
また、第2吸着層が第1吸着層の表面に所定厚さで形成されるように、前記第1吸着層の表面への保護層のコーティング及び低炭化点物質の除去を反復することができる。また、第1吸着層は球状にすればよい。
【0018】
また、前記製造方法は、第2吸着剤で形成された第3吸着層を、第1吸着層の内部にさらに備えることができる。また、第1吸着層は球状にすればよい。
【0019】
また、第2吸着層が第1吸着層の表面に所定厚さで形成されるように、第1吸着層の表面への保護層のコーティング及び低炭化点物質の除去を反復することができる。
【0020】
本開示の他の側面によれば、吸着セルの製造方法は、第1吸着剤と、第1吸着剤よりも密度の高い第2吸着剤との混合物で形成された第1吸着層を用意し、第1吸着層からの粉塵粒子の発生を防止するように、低炭化点物質と第2吸着剤との混合物で形成された保護層を第1吸着層の表面にコーティングし、保護層から低炭化点物質を除去して、第1吸着層に流体が流動する複数の気孔を含む第2吸着層を形成する。
【0021】
一方、低炭化点物質は、熱処理または酸処理により除去すればよい。
【0022】
また、第2吸着層が第1吸着層の表面に所定厚さで形成されるように、第1吸着層の表面への保護層のコーティング及び低炭化点物質の除去を反復することができる。
【発明の効果】
【0023】
上記本開示の実施例に係る吸着セル及びその製造方法によれば、低密度吸着剤で形成された吸着層の上面に、高密度吸着剤で形成された高密度吸着層をコーティングすることによって、微細粉塵粒子の発生を防止し、その2次汚染を防止することができる。
【0024】
また、高密度吸着層に気孔部を形成して低密度吸着層への空気流路とすることによって、吸着セルの臭気発生物質の除去速度を向上させることができる。
【0025】
また、高密度吸着層において気孔部を形成することから得られる突出部により、空気と高密度吸着層表面との接触面積及び吸着セルと空気との接触時間が増加し、除去効率を増加させることができる。
【0026】
また、低密度吸着層の内部に高密度吸着層を別に形成したり、高密度吸着材と低密度吸着剤との混合物で吸着層を形成することによって、吸着セルの除去容量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本開示の上記の/または他の側面は、添付した図面と共に説明される下記の実施例から明らかになり、且つより容易に理解されるであろう。添付した図面は、下記の通りである。
【図1A】低密度化学吸着剤で形成された吸着層の一例を示す図である。
【図1B】高密度化学吸着剤で形成された吸着層の一例を示す図である。
【図2】低密度化学吸着剤で形成された吸着層から発生する粉塵粒子を示す図である。
【図3】本開示の一実施例に係る吸着セルを示す図である。
【図4】図3の吸着セル周辺における流体の流れを示す図である。
【図5】図3の吸着セルを製造する方法を示すフローチャートである。
【図6】図5の各動作における吸着セルの状態を示す図である。
【図7】本開示の他の実施例に係る吸着セルを示す図である。
【図8】図7の吸着セルを製造する方法を示すフローチャートである。
【図9】図8の各動作における吸着セルの状態を示す図である。
【図10】図7の吸着セルを製造する他の方法を示すフローチャートである。
【図11】本開示の他の実施例に係る吸着セルを示す図である。
【図12】本開示の他の実施例に係る吸着セルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付の図面を参照しつつ、本開示の実施例を詳細に説明する。図面中、同一の構成要素には同一の参照符号を付する。
【0029】
図1Aは、低密度化学吸着剤で形成された吸着層の一例を示す図であり、図1Bは、高密度化学吸着剤で形成された吸着層の一例を示す図である。
【0030】
化学吸着剤は、比表面積の高い活性炭、アルミナなどの吸着剤に、金属、金属塩または有機物を添着して化学的活性を高めた素材で、中和反応または化学反応を通じて除去しようとするガスを選択的に吸着及び除去する。
【0031】
すなわち、化学吸着剤は、空気中に浮遊する臭気やVOCs(以下、臭気発生物質)の物理的吸着及び化学的吸着を行ってこれらの物質を分解または結合させることで、臭気発生物質を除去する。
【0032】
このような化学吸着剤は、所定の圧力により圧縮されて吸着層を構成し、この所定の圧力の大きさによって、図1Aに示すような低密度化学吸着剤で形成された吸着層(以下、低密度吸着層)10と、図1Bに示すような高密度化学吸着剤で形成された吸着層(以下、高密度吸着層)20と、に分類する。
【0033】
図1Aを参照すると、低密度吸着層10は、吸着剤分子同士の間隔が広いため、流体が速く吸着層10の内部に流動する。
【0034】
すなわち、空気が吸着剤分子同士の間に速く広がるため、吸着剤分子と空気中の臭気発生物質との化学反応が容易に起き、臭気発生物質が迅速に除去される。
【0035】
ただし、低密度吸着層10は、吸着剤分子同士の間隔が広く、結合力が弱いため、粉塵粒子が発生することがある。
【0036】
図1Bを参照すると、高密度吸着層20は、低密度吸着層10と違い、吸着剤分子同士の間隔が狭いため、空気が吸着剤分子同士の間に拡散する速度が遅く、臭気発生物質の除去速度も遅い。
【0037】
一方、高密度吸着層20は、低密度吸着層10に比べて、同一体積に含まれた吸着剤の量が多いため、除去容量が高い。高い除去容量は、吸着層の寿命を増加させる効果を招くが、高密度吸着層20は、空気拡散特性が低いため、除去容量に比べて寿命が短い。
【0038】
以下、図2を参照して、低密度吸着層10の問題点について詳細に説明する。図2は、低密度化学吸着剤を有する吸着層から発生する粉塵粒子を示す図である。まず、臭気発生物質を含む空気1が、低密度吸着層10へ一定方向に流入するとする。図2を参照すると、空気1は吸着層10に流入しながら吸着層10に流れ圧力を加える。
【0039】
そのため、空気1の流入する方向に吸着層10は物理的な衝撃を受けることになり、このような物理的衝撃により吸着層10から粉塵粒子が発生する。
【0040】
この粉塵粒子は、半導体製造工程で致命的な欠陥を招くことがあり、さらには、吸着剤を使用する空調機システムなどにおいても2次汚染を発生させることがある。
【0041】
したがって、吸着層は、臭気発生物質の除去効率に優れた低密度吸着剤で形成する一方で、低密度吸着層からの粉塵粒子発生を解決する必要がある。
【0042】
以下、上記の低密度吸着層における問題点を解決するために、本開示の種々の実施例に係る吸着セル及びその製造方法について説明する。
【0043】
図3は、本開示の一実施例に係る吸着セルを示す図であり、図4は、図3の吸着セル周辺における流体の流れを示す図である。図3を参照すると、本実施例に係る吸着セル100は、第1吸着層110及び第2吸着層120で構成される。
【0044】
第1吸着層110は、球状に設計され、吸着セル100の内部コアを形成する。第1吸着層110は、球状以外の他の形状にしてもよい。第1吸着層110は、KMnO4、NaMnO4、H3PO4、R−NH2などを添着させた低密度吸着剤で形成される。
【0045】
このような第1吸着層110は、上述した通り、吸着剤分子同士の結合力が弱いため、空気の流れ圧力により粉塵粒子が発生することがある。
【0046】
そこで、本実施例は、第1吸着層110からの微細粉塵粒子の発生を防止するために、第2吸着層120を第1吸着層110の表面に備える。
【0047】
第2吸着層120は、好ましくは、数十nmから数百μmの厚さとすればよい。第2吸着層120は、吸着剤分子同士の結合力が高い高密度吸着剤で形成される。本実施例では、第2吸着層120を第1吸着層110の上面に形成させて、物理的衝撃に対する保護層の役割を担わせる。したがって、第2吸着層120は、第1吸着層110からの粉塵粒子の発生を防止することができる。
【0048】
第2吸着層120は、第1吸着層110へと物質が伝達されるようにする多数の気孔部122を含む。第2吸着層120の気孔部122は、第1吸着層110へ流体が流れる流路の役割を担い、よって、臭気発生物質を含む空気が第1吸着層110へと流動できる。
【0049】
したがって、除去速度が相対的に低い第2吸着層120が第1吸着層110の表面を包んでも、除去速度の高い第1吸着層へ空気が流動できるため、吸着セル100は、高い臭気発生物質除去速度を維持することができる。
【0050】
図4は、第1吸着層と第2吸着層とで構成された吸着セルへの流体の流れを示す図である。図4を参照すると、高密度吸着剤で形成された第2吸着層120が、第1吸着層110が外部空気1に直接露出されることを防止し、保護層の役割を果たしている。
【0051】
また、不規則な突起部121を有する第2吸着層120は、空気1と接触する吸着セル100の表面積を増加させる。また、気孔部122内で空気が渦状に流動することがわかる。そのため、空気1と第1吸着層110及び第2吸着層120とが接触する時間が増加する。
【0052】
したがって、本実施例に係る吸着セル100では、第1吸着層110が多数の気孔部122を有する第2吸着層120でコーティングされるため、第1吸着層110からの微細粉塵粒子の発生を防止できる他、空気1と接触する吸着セル100の表面積を増加させ、且つ空気1と吸着セル100との接触時間を増加させ、臭気発生物質の除去効率を向上させる。
【0053】
図5は、図3の吸着セルを製造する方法を示すフローチャートであり、図6は、図5の各動作における吸着セルの状態を示す図である。
【0054】
図5及び図6を参照すると、まず、低密度吸着剤で形成された第1吸着層110を用意する(動作210)。第1吸着層110は丸い球状に設計され、吸着セル100の内部コアを形成できるもので、他の形状にしてもよい。
【0055】
第1吸着層110を用意すると(動作210)、第1吸着層110からの粉塵粒子の発生を防止するように、第1吸着層110の表面に保護層120’をコーティングする(動作220)。
【0056】
保護層120’は、相対的に低い炭化点を持つ低炭化点物質と、低密度吸着剤に比べて密度の高い高密度吸着剤との混合物で形成される。
【0057】
低炭化点物質は、300℃以上の高熱で炭化され、残留炭素が残らない。この低炭化点物質には、PP(PolyPropylene)、PET(PolyEthylene Terephthalate)、ナイロン(Nylon)のような合成物質やベンゼン、トルエン、キシレンのようなガス物質などを用いればよい。
【0058】
一方、保護層120’の厚さは、好ましくは、数十nmから数百μm程度と様々に調節可能である。
【0059】
保護層120’が第1吸収層110の表面にコーティングされると(動作220)、保護層120’中の低炭化点物質を除去して、複数の気孔部122を含む第2吸着層120を形成する(動作230)。
【0060】
具体的に、低炭化点物質は、熱を用いる炭化工程、または塩酸、硫酸などの酸を用いる酸塩基工程により除去される。
【0061】
炭化工程または酸塩基工程が行われると、低炭化点物質は二酸化炭素(CO2)と水蒸気(H20)に変換され、変換された二酸化炭素(CO2)と水蒸気(H20)は、空気中に放出される。これにより、外部の空気が第1吸着層110へと流動できるような流路として機能する気孔部122が形成される。
【0062】
図7は、本開示の他の実施例に係る吸着セルを示す図である。本実施例に係る吸着セル100は、第1吸着層110及び第2吸着層120で構成される。第1吸着層110は、吸着剤で形成され、吸着セル100の内部コアとして機能する。本実施例は、球状に形成された第1吸着層110を示しているが、球状以外の他の形状に第1吸着層110を形成してもよい。
【0063】
特に、本実施例では、第2吸着層120による空気と吸着セル100との接触表面積の増加を極大化するために、第2吸着層120を所定厚さを持つ多数の突起形状にする。
【0064】
具体的に、図7を参照すると、第2吸着層120は、突出部121及び気孔部122を含む。
【0065】
突出部121のそれぞれは、先の尖った尖端状を有し、所定の間隔で離隔される。突出部121は、高密度吸着剤で形成され、外部空気との接触表面積を増加させるために充分の厚さ及び密度を有する。また、突出部121同士の隙間には、外部空気が第1吸着層110に流動する気孔部122が設けられる。
【0066】
これにより、物理的衝撃による第1吸着層110からの微細粉塵粒子の発生を防止して2次汚染を防止するとともに、吸着セル100と外部空気との接触面積を増加させ、吸着セル100の除去効率を向上させる。
【0067】
一方、本実施例は、尖端状の各突出部121を示したが、突出部121のそれぞれは、第1吸着層から所定の厚さで突出してさえいれば、先端を丸めた形状にしてもよく、不規則な形状にしてもよい。
【0068】
また、本実施例は、規則的に配列されている突出部121と気孔部122を示しているが、突出部121と気孔部122は不規則に配列されてもよい。
【0069】
すなわち、第2吸着層120の一部が所定の厚さで突出し、第1吸着層110の表面を保護することができ、かつ、一部が穿孔されて第1吸着層110への流路を形成すればよい。
【0070】
図8は、図7の吸着セルを製造する方法を示すフローチャートであり、図9は、図8の各動作における吸着セルの状態を示す図である。
【0071】
図8及び図9を参照すると、まず、吸着剤で形成される第1吸着層110を用意し(動作310)、この第1吸着層110の表面に保護層120’をコーティングする(動作320)。
【0072】
保護層120’は、低炭化点物質と、第1吸着層110の吸着剤に比べて密度の高い高密度吸着剤との混合物で形成され、第1吸着層110を外部空気との物理的衝撃から保護する役割を果たす。これにより、第1吸着層110からの微細粉塵粒子の発生を防止し、2次汚染を防止することができる。
【0073】
保護層120’が第1吸着層110にコーティングされると(320)、低炭化点物質を炭化工程または酸化工程で除去して、第1吸着層110への流路である複数の気孔部122を含む第2吸着層120を形成する(動作330)。
【0074】
特に、本実施例では、気孔部122を含む第2吸着層120による外部空気と吸着セル100との接触表面積の増加を極大化するために、第2吸着層120の厚さを増加させる。
【0075】
具体的に、本実施例では、第1吸収層110の表面への保護層120’のコーティング、及び低炭化点物質の除去が反復される(動作340)。
【0076】
第1吸収層110の表面への保護層120’のコーティング、及び低炭化点物質の除去は、第2吸着層120の突出部121が所定厚さ及び密度とされるまで反復される。
【0077】
一方、保護層120’における高密度吸着剤の比率は、好ましくは、10〜15%程度に設定し、保護層120’における低炭化点物質の比率を、保護層120’における高密度吸着剤に比べて十分高くすることができる。
【0078】
これは、第1吸収層110の表面への保護層120’のコーティング、及び低炭化点物質の除去を反復することから(動作340)、第1吸着層110への流路が塞がれる現象を防止するためである。
【0079】
図10は、図7の吸着セルを製造する他の方法を示すフローチャートである。図10を参照すると、まず、吸着剤で形成された第1吸着層110を用意する(動作410)。
【0080】
第1吸着層110が用意されると(動作410)、第1吸着層110の吸着剤に比べて密度の高い高密度吸着剤で形成され、かつ一定の大きさを持つ複数の突出部を用意する(動作420)。これら突出部を、第1吸着層110の表面に等間隔で付着する(動作430)。
【0081】
図8及び図9の製造方法と違い、図10の製造方法は、一定の厚さ及び一定の形状を有する突出部を、第1吸着層110に等間隔で付着することができるという利点がある。
【0082】
以上、微細粉塵粒子の発生を防止し、外部空気と接触する吸着セルの表面積を増大させ、かつ低密度吸着剤に空気が流入するようにする吸着セル及びその製造方法について説明した。
【0083】
空気中の臭気発生物質は、高い除去速度を持つ第1吸着層により速く除去されるため、第1吸着層の除去容量を増加させる必要がある。
【0084】
そのためには、同一体積に含まれる吸着剤の量を増加させなければならない。以下、第1吸着層の除去容量を増加させるための本開示の実施例に係る吸着セル及びその製造方法を、図11及び図12を参照して説明する。
【0085】
図11は、本開示の他の実施例に係る吸着セルを示す図である。
【0086】
本実施例に係る吸着セル100は、第1吸着層110、及び第1吸着層110の表面を保護する第2吸着層120を含み、さらに第3吸着層130を含む。
【0087】
第3吸着層130は、高密度吸着剤で形成され、第1吸着層110の内部に設けられる。
【0088】
図11を参照すると、本実施例に係る第3吸着層130は、球状に形成された第1吸着層110の内部コアとして機能する。このように低密度吸着剤で形成された第1吸着層110内に、高密度吸着剤で形成された第3吸着層130を備えることによって、第1吸着層110の除去容量を増加させることができる。これは、同一体積の吸着層に含まれる吸着剤の量が増加したからである。
【0089】
本実施例の吸着セルにおける他の部分は、前述の各実施例に係る吸着セルと同一なため、その説明は省略する。
【0090】
以下、本実施例に係る吸着セルを製造する方法を説明する。
【0091】
まず、高密度吸着剤で形成され、コアとして機能する第3吸着層130を用意する。
【0092】
この第3吸着層130を低密度吸着剤で形成される第1吸着層110でコーティングし、第1吸着層110の表面に高密度吸着剤で形成される第2吸着層120をコーティングする。
【0093】
すなわち、第3吸着層130の上面に第1吸着層110をコーティングし、第1吸着層110の上面に第2吸着層120をコーティングすることで、互いに異なる密度の吸着剤で形成される3個の吸着層を製造する。
【0094】
第2吸着層120は、吸着剤からなる突出部121と、第1吸着層110への流路を形成する気孔部122と、を含む。このような突出部121と気孔部122を形成するために、第1吸着層110の上面に、低炭化点物質と高密度吸着剤との混合物で形成される保護層をコーティングする。
【0095】
また、該コーティングされた保護層に熱を加えたり酸処理したりして、保護層から低炭化点物質を除去する。
【0096】
これで、一部は突出し、一部は穿孔される、吸着剤で形成された第2吸着層120が得られる。
【0097】
ここで、第2吸着層120の表面への保護層のコーティング、及び低炭化点物質の除去を反復すると、第2吸着層120における突出部121の大きさと密度を増加させることができる。
【0098】
また、このように厚さと密度の増加した突出部121を含む第2吸着層120を形成するために、高密度吸着剤で一定の形状及び大きさを持つ多数の突出部121をまず形成し、それぞれ等間隔で第1吸着層110の表面に付着してもよい。
【0099】
上記のようなプロセスによって大きさ及び密度が増加した突出部121を含む吸着セル100は、空気との接触表面積が大きいため、臭気発生物質除去効率が高い。
【0100】
図12は、本開示の他の実施例に係る吸着セルを示す図である。
【0101】
本実施例に係る吸着セル100は、第1吸着層110、及び第1吸着層110の表面を保護するために高密度吸着剤で形成された第2吸着層120を含む。特に、本実施例の第1吸着層110は、低密度吸着剤と高密度吸着剤130との混合物で形成される。
【0102】
これで、同一体積に含まれている吸着剤の量が増加し、これは吸着セル100の除去容量が増加する効果につながる。本実施例の第2吸着層120の構造は、前述した各実施例に係る第1吸着層と同一なので、その詳細な説明は省略する。
【0103】
本実施例に係る吸着セル100を製造する方法は、下記の通りである。まず、低密度吸着剤と高密度吸着剤130との混合物で形成された第1吸着層110を備え、第1吸着層110の上面に第2吸着層120をコーティングする。
【0104】
第2吸着層120は、上述した通り、多数の気孔を設けることで、第1吸着層110への空気流路を形成する。本実施例に係る第2吸着層120を製造する方法は、図11の実施例に係る第2吸着層120を製造する方法と同一なので、その詳細な説明は省略する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1吸着剤で形成された第1吸着層と、
前記第1吸着層よりも高い密度を持つ第2吸着剤で形成された第2吸着層と、
を含む吸着セル。
【請求項2】
前記第2吸着層は、前記第1吸着層から粉塵粒子が発生することを防止するように、前記第1吸着層の表面にコーティングされる、請求項1に記載の吸着セル。
【請求項3】
前記第2吸着層は、前記第1吸着層に流体が流動する複数の気孔部を含む、請求項2に記載の吸着セル。
【請求項4】
前記第2吸着層は、前記第1吸着層から突出した複数の突出部をさらに含む、請求項3に記載の吸着セル。
【請求項5】
前記第1吸着層は球状である、請求項2に記載の吸着セル。
【請求項6】
前記第1吸着層の内部に配置され、前記第2吸着剤で形成された第3吸着層をさらに含む、請求項2に記載の吸着セル。
【請求項7】
前記第1吸着層は球状である、請求項6に記載の吸着セル。
【請求項8】
前記第2吸着層は、前記第1吸着層に流体が流動する複数の気孔部を含む、請求項6に記載の吸着セル。
【請求項9】
前記第2吸着層は、前記第1吸着層で突出された複数の突出部をさらに含む、請求項8に記載の吸着セル。
【請求項10】
前記第1吸着層は、第1吸着剤と第2吸着剤との混合物で形成され、
第2吸着層は、前記第1吸着層から粉塵粒子が発生することを防止するように、前記第1吸着剤よりも密度の高い第2吸着剤で形成され、第1吸着層の表面を包む、請求項1に記載の吸着セル。
【請求項11】
前記第2吸着層は、前記第1吸着層に流体が流動する複数の気孔部を含む、請求項10に記載の吸着セル。
【請求項12】
前記第2吸着層は、前記第1吸着層から突出した複数の突出部をさらに含む、請求項11に記載の吸着セル。
【請求項13】
前記第1吸着層は球状である、請求項10に記載の吸着セル。
【請求項1】
第1吸着剤で形成された第1吸着層と、
前記第1吸着層よりも高い密度を持つ第2吸着剤で形成された第2吸着層と、
を含む吸着セル。
【請求項2】
前記第2吸着層は、前記第1吸着層から粉塵粒子が発生することを防止するように、前記第1吸着層の表面にコーティングされる、請求項1に記載の吸着セル。
【請求項3】
前記第2吸着層は、前記第1吸着層に流体が流動する複数の気孔部を含む、請求項2に記載の吸着セル。
【請求項4】
前記第2吸着層は、前記第1吸着層から突出した複数の突出部をさらに含む、請求項3に記載の吸着セル。
【請求項5】
前記第1吸着層は球状である、請求項2に記載の吸着セル。
【請求項6】
前記第1吸着層の内部に配置され、前記第2吸着剤で形成された第3吸着層をさらに含む、請求項2に記載の吸着セル。
【請求項7】
前記第1吸着層は球状である、請求項6に記載の吸着セル。
【請求項8】
前記第2吸着層は、前記第1吸着層に流体が流動する複数の気孔部を含む、請求項6に記載の吸着セル。
【請求項9】
前記第2吸着層は、前記第1吸着層で突出された複数の突出部をさらに含む、請求項8に記載の吸着セル。
【請求項10】
前記第1吸着層は、第1吸着剤と第2吸着剤との混合物で形成され、
第2吸着層は、前記第1吸着層から粉塵粒子が発生することを防止するように、前記第1吸着剤よりも密度の高い第2吸着剤で形成され、第1吸着層の表面を包む、請求項1に記載の吸着セル。
【請求項11】
前記第2吸着層は、前記第1吸着層に流体が流動する複数の気孔部を含む、請求項10に記載の吸着セル。
【請求項12】
前記第2吸着層は、前記第1吸着層から突出した複数の突出部をさらに含む、請求項11に記載の吸着セル。
【請求項13】
前記第1吸着層は球状である、請求項10に記載の吸着セル。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−125760(P2012−125760A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−267729(P2011−267729)
【出願日】平成23年12月7日(2011.12.7)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月7日(2011.12.7)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]