説明

吸着剤の脱着方法

【課題】吸着剤に吸着した成分を効率的に脱着する方法を提供する。
【解決手段】吸着剤に吸着した成分の脱着方法であって、吸着剤を充填した容器内に一定量の脱着液を通液した後一旦通液を停止して容器内から脱着液を排出し、その後再度脱着液を通液して排出するという操作を実施することを特徴とする、脱着方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着剤に吸着した成分の脱着方法に関する。特に、河川水、下水処理水、工場排水と接触して、これらの水中に含まれる、リン酸イオン、ホウ酸イオン、フッ素イオン、ヒ酸イオン、亜ヒ酸イオン等を吸着した吸着剤から、これらの成分を脱着し、再生する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境汚染、富栄養化の問題から、飲料水、工業用水、工業廃水、下水処理水、環境水中のリン、ホウ素、ヒ素、フッ素等の環境基準が強化され、それらを除去する技術が求められている。
【0003】
リンは富栄養化の原因物質の一つであり、閉鎖水域で規制が強まっている。
【0004】
ホウ素は、植物の育成にとって必須の元素であるが、過剰に存在すると植物の成長に悪影響を及ぼすことが知られている。さらに、人体に対しても、飲料水中に含まれると健康への影響、特に生殖機能の低下等の健康障害を起こす可能性が指摘されている。
【0005】
フッ素は、金属精錬、ガラス、電子材料工業等からの排水に多く含まれることが多い。フッ素の人体への影響が懸念されており、過剰に摂取すると、斑状歯、骨硬化症、甲状腺障害等の慢性フッ素中毒症を引き起こすことが知られている。
【0006】
ヒ素は、非鉄金属精錬工業の排水や、地熱発電所の熱排水、また特定地域の地下水等に含まれている。ヒ素の毒性については昔から知られているが、生体への蓄積性があり、慢性中毒、体重減少、知覚傷害、肝臓障害、皮膚沈着、皮膚がんなどを発症すると言われている。
【0007】
そこでこれらの成分を含有する排水等を吸着剤と接触させて、吸着剤により水中からこれらの成分を除去する方法が提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。そして、吸着剤は通常、吸着処理に用いられた後、アルカリ溶液等の脱着液による吸着成分の脱着処理、および酸等による吸着剤の活性化処理が施されて再生され、繰り返し利用されている。
【0008】
しかしながら、これらの方法は脱着処理に必要な脱着液の量が多い、吸着成分の脱着率が低いという問題点があった。そこで、これらの問題点を解決するために、吸着剤が充填された容器内に脱着液を循環的に通液するという方法が提案されている(特許文献3参照)。しかしながら、リン酸イオン等の脱着がしにくい成分の脱着処理では、高い脱着率が達成できないという問題点がある。
【0009】
【特許文献1】特開平8−89949号公報
【特許文献2】特開平10−296077号公報
【特許文献3】特開2005−144370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、脱着がしにくい吸着成分に対しても、少ない脱着液量で処理して高い脱着率を達成できる脱着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、脱着処理において、吸着剤を充填した容器内に一定量の脱着液を通液した後、一旦通液を停止して、容器内から脱着液を排出し、その後再度脱着液を通液するという操作を実施することにより、用いる脱着液量が少なくても、高い脱着率を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は下記の通りである。
1.吸着剤に吸着した成分の脱着方法であって、吸着剤を充填した容器内に一定量の脱着液を通液した後、一旦通液を停止して容器内から脱着液を排出し、その後再度脱着液を通液して排出するという操作を実施することを特徴とする、脱着方法。
2.前記吸着剤を充填した容器内に前記脱着液を通液する前に、該容器内に残存している溶液等を予め排出してから、脱着液を通液するという操作を実施することを特徴とする、前記1に記載の脱着方法。
3.前記吸着剤を充填した容器内に残存している溶液等を予め排出する操作および/または該吸着剤を充填した容器内から脱着液を排出する操作を、該容器内へ気体を供給して行うことを特徴とする、前記1または2に記載の脱着方法。
4.前記吸着剤が高分子樹脂および金属酸化物を含んでなる吸着剤であることを特徴とする、前記1〜3のいずれか一項に記載の脱着方法。
5.前記金属酸化物が、活性アルミナ、水和酸化鉄、水和酸化チタン、水和酸化ジルコニウム、水和酸化スズ、水和酸化セリウム、水和酸化ランタン、および水和酸化イットリウムからなる群から選ばれる一種または二種以上であることを特徴とする、前記4に記載の脱着方法。
6.前記吸着剤に吸着した成分が、リン酸イオン、ホウ酸イオン、フッ素イオン、ヒ酸イオン、亜ヒ酸イオンからなる群から選ばれる一種以上である前記1〜5のいずれか一項に記載の脱着方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、吸着剤に吸着した脱着しにくい成分の脱着処理においても、少ない脱着液量で高い脱着率を達成でき、吸着剤の脱着処理の処理コストを低減できるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について、特にその好ましい形態を中心に、具体的に説明する。
【0015】
まず、本発明で用いる吸着剤について説明する。
【0016】
本発明でいう吸着剤とは、排水等の水中に存在しているアニオン、カチオン等を吸着できるものであれば、任意の材質から構成することができるが、リン酸イオン、ホウ酸イオン、フッ素イオン、ヒ酸イオン、亜ヒ酸イオン等に対する吸着性能が高く、また繰り返し使用に対する耐久性能が高いという観点から、イオン吸着体として金属酸化物を含有しているものが好ましく、活性アルミナ、水和酸化鉄、水和酸化チタン、水和酸化ジルコニウム、水和酸化スズ、水和酸化セリウム、水和酸化ランタン、および水和酸化イットリウムからなる群から選ばれる一種またはニ種以上の金属酸化物をイオン吸着体として含有しているものがさらに好ましい。
【0017】
また吸着処理、脱着処理等での取り扱いのしやすさという観点から、吸着剤は金属酸化物を、高分子樹脂をバインダーとして造粒したものであることが特に好ましい。
【0018】
吸着剤の粒径、形状については特に制限はないが、平均粒径が100〜2500μmで、実質的に球状のものであることが好ましい。
【0019】
バインダーに用いる高分子樹脂としては、ポリスルホン系ポリマー、ポリフッ化ビニリデン系ポリマー、ポリ塩化ビニリデン系ポリマー、アクリロニトリル系ポリマー、ポリメタクリル酸メチル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリイミド系ポリマー、セルロース系ポリマー、エチレンビニルアルコール共重合体系ポリマー等を例示できるが、特に、水中での非膨潤性と耐生分解性、さらに吸着剤製造の容易さから、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリスルホン(PS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)が好ましく、さらに親水性と耐薬品性を兼ね備えている点で、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)が特に好ましい。
【0020】
本発明の吸着剤は、容器内に充填した状態で脱着処理に供するが、その容器の形状や吸着剤の充填層の形状については、吸着剤と脱着液とが接触できるのであれば、特に制限はなく、例えば、円筒状、円柱状、多角柱状、箱型の容器に充填した状態で、脱着処理に供することができる。
【0021】
これらの容器には、容器から吸着剤が流出しないような固液分離機構、例えば目皿やメッシュ等を備えていることが好ましい。
【0022】
容器の材質は、特に限定されるものではなく、ステンレス、FRP(ガラス繊維入り強化プラスチック)、ガラス、各種プラスチック等が例示できる。耐酸性を考慮して、内面をゴムやフッ素樹脂ライニングとすることもできる。
【0023】
吸着剤と脱着液との接触方式についても、吸着剤と脱着液とが接触できるのであれば、特に制限はない。吸着剤の充填層を固定床とする場合、円柱状、多角柱状、箱型の吸着剤の充填層に上昇流または下降流で通液する方式、円筒状の吸着剤の充填層に円周方向外側から内筒へ通液する外圧方式、その逆方向に通液する内圧方式、箱型の充填層に水平方向に通液する方式等が例示できる。また、吸着剤の充填層を移動床方式や流動床方式としても良い。
【0024】
本発明でいう脱着液とは、吸着剤と接触することで吸着剤に吸着している成分を脱着させることができる液で、その機能を備えているのであれば、組成、濃度等については特に限定されないが、金属酸化物に吸着したリン酸イオン、ホウ酸イオン、フッ素イオン、ヒ酸イオン、亜ヒ酸イオン等の脱着液としては、アルカリ溶液の使用が好ましい。
【0025】
アルカリ溶液の種類は、特に制限はないが、通常、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化アンモニウム水溶液等の無機アルカリ、および有機アミン類等を例示できる。なかでも、0.5wt%〜10wt%の範囲の水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液を用いることが、高い脱着率を効率的に達成するためには特に好ましい。
【0026】
脱着液の通液速度は、特に制限はないが、通常SV(space velocity、1時間あたりの通液量/吸着剤の体積)が0.5〜15(hr−1)の範囲が好ましい。SVが0.5より低いと、脱着時間が長時間になり脱着処理が非効率になり、SVが15より大きいと、吸着剤と脱着液との接触時間が短くなり、脱着率が低下する傾向がある。通液速度は途中で変更しても良い。また、通液は、容器内の吸着剤層が脱着液に完全に浸った状態を保持しながら行うことが好ましい。
【0027】
さらに脱着液の通液は、通液する前に、吸着剤を充填した容器内に残存している溶液等を予め排出してから行うことが好ましい。例えば、脱着処理の前の工程である吸着処理で容器内に供給した排水や、吸着処理後に容器内を洗浄した洗浄水等が残存している場合は、それらを排出してから、脱着液を通液することが好ましい。このことにより、通液初期の脱着液の希釈が抑制され、より効率的に高い脱着率を達成することができる。
【0028】
容器内に残存している溶液等を予め排出する方法には特に制限はなく、高低差を利用して容器下部より自然落下させて除去する方法や容器内に気体を供給して押し出す方法等が例示できるが、排出量を多くした方が実施効果が高まるため、容器内に気体を供給して押し出す方法が特に好ましい。供給する気体に、特に制限はないが、安全上、コスト上の観点から、空気、窒素等を用いることが好ましい。
【0029】
容器内に残存している溶液等を排出した後、脱着液の通液を開始するが、通液に先立ち、一定量の脱着液を容器内に予め供給することが好ましく、容器内の吸着剤層が完全に脱着液に浸るようになるまで予め脱着液を供給することが、効率的よく高い脱着率を達成するという観点からは特に好ましい。脱着液の供給に要する時間に特に制限はないが、脱着処理をなるべく短時間で行うという観点から、短時間で行うことが好ましく、またその際に吸着剤層内になるべく気体を残存させない方法で供給することが好ましい。
【0030】
脱着液の通液を一旦停止する時期は、用いる脱着液の濃度や、吸着剤を充填した容器内に脱着液を通液する前に該容器内に残存している溶液等を予め排出したかどうか、さらに脱着液の通液を一旦停止する操作を何回実施するか等の条件により左右されるため、一概に決定することは出来ないが、一旦停止する操作を1回実施する場合は、吸着剤の体積の0.5倍〜3倍を通液した時点で一旦停止することが、高い脱着率を達成するためには好ましい。
また、脱着液の通液停止から脱着液を排出するまでの間、容器内の吸着剤層が脱着液に完全に浸った状態を一定時間保持しても良いが、脱着処理をあまり長時間にしないとの観点から、この保持時間は2時間以内にすることが好ましい。
【0031】
本発明の脱着方法は、脱着液の通液を一旦停止した後、吸着剤を充填した容器内から脱着液を排出し、その後再度脱着液を通液する。このことにより、通液再開後の脱着液中の脱着成分の濃度を著しく低下させることができ、高い脱着率を効率よく達成することができる。この操作は2回以上行っても良い。
【0032】
なお、容器内から脱着液を排出する方法には特に制限はなく、高低差を利用して容器下部より自然落下させて除去する方法や容器内に気体を供給して押し出す方法等が例示できるが、排出量を多くした方が実施効果が高まるため、容器内に気体を供給して押し出す方法が好ましい。供給する気体に、特に制限はないが、安全上、コスト上の観点から、空気、窒素等を用いることが好ましい。
容器内の脱着液を排出した後は、再び脱着液の通液を開始するが、この場合も通液に先立ち、一定量の脱着液を予め容器内に供給することが好ましく、容器内の吸着剤層が完全に脱着液に浸るようになるまで脱着液を予め供給することが、効率的よく高い脱着率を達成するという観点からは特に好ましい。脱着液の供給に要する時間は、特に制限はないが脱着処理をなるべく短時間で行うという観点から、短時間で行うことが好ましい。また、脱着液の供給は吸着剤層内になるべく気体を残存させない方法で行うことが好ましい。脱着液の通液再開後の通液速度は、通液停止前と変更しても良い。
【0033】
本発明の脱着方法は、最後に、吸着剤を充填した容器内に残存する脱着液を排出して終了するが、その排出方法については、脱着液を排出できるのであれば特に制限はなく、水を容器に通水して排出する方法、高低差を利用して容器下部より自然落下させて排出する方法、容器内に気体を供給して押し出して排出する方法等を例示できるが、容器内に気体を供給して残存する脱着液を排出して終了することが好ましい。このようにすることで、脱着液の回収効率が高まるとともに、脱着液の希釈を抑制でき、脱着液を再利用する場合に、効率良く再利用することができる。供給する気体に特に制限はないが、安全上、コスト上の観点から、空気、窒素等を用いることが好ましい。
次に、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
(製造例)
エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH、日本合成化学工業(株)製、ソアノールE3803(商品名))10g、ポリビニルピロリドン(PVP、BASFジャパン(株)製、Luvitec K30 Powder(商品名))10g、ジメチルスルホキシド(DMSO、関東化学(株)製)110gを、セパラフラスコ中にて、60℃に加温して溶解し、均一なポリマー溶液を得た。
【0035】
このポリマー溶液100gに対し、水和酸化セリウム(CeO2・nH2O)粉末(成都四能製 70℃乾燥品)50gを加え、ボールミル中で粉砕、混合して複合高分子スラリーを得た。
【0036】
得られた複合高分子スラリーを55℃に加温し、側面に直径5mmのノズルを開けた円筒状回転容器の内部に供給し、この容器を回転させ、遠心力(17.5G)によりノズルから液滴を形成し、60℃の水からなる凝固浴槽中に吐出させ、複合高分子スラリーを凝固させ、イオン吸着体としての水和酸化セリウムを、EVOHをバインダーとして球状に造粒した吸着剤を得た。この吸着剤を洗浄、分級し、平均粒径550μmの多孔質球状吸着剤を得た。
(実施例1)
リン酸三ナトリウム(Na3PO4・12H2O)を蒸留水に溶解し、硫酸でpHを7に調整して、リン濃度32.0mg−P/Lの吸着用液8Lを作製した。この液中に製造例で製造した多孔質球状吸着剤8mlを添加し、14日間振とうして吸着剤にリン酸イオンを吸着させた。吸着剤のリン酸イオン吸着量は、100.8(mg−P/8ml−吸着剤)であった。リン酸イオン吸着量は、吸着剤添加前の吸着用液のリン濃度(mg−P/L)と、吸着剤を添加して14日間振とう後の吸着用液のリン濃度(mg−P/L)をICP発光分析法により測定し、式(I)に従って算出した。
【0037】
リン酸イオン吸着量 ={(吸着剤添加前の吸着用液のリン濃度)
− (吸着剤を添加して14日間振とう後の吸着用液のリン濃度)}
× 8 (I)
本発明の脱着方法を実施するために使用した装置の概略を図1に示す。
【0038】
図1中でカラム1は内径10mm、長さ140mmであり、前記リン酸イオンを吸着させた吸着剤8mlと蒸留水で満たされている。
【0039】
カラム1の上部には、カラム1内に脱着液を供給するライン2と空気を供給するライン3および空気リークライン4が接続されており、ライン2上にはポンプ5とバルブ6が設けられ、ライン3上にはポンプ7とバルブ8が設けられ、ライン4上にはバルブ9が設けられている。
【0040】
一方、カラム下部には、カラム1内から脱着液または空気を排出するためのライン10と、脱着液を所定の速度で通液する前にカラム内に脱着液を供給するためのライン11が接続されており、ライン10上にはバルブ12が設けられ、ライン11上にはポンプ13とバルブ14が設けられている。カラム下部に接続されているライン11から脱着液を供給することで、吸着剤層内にほとんど気体を残存させることなく、カラム内に脱着液を供給できる。
【0041】
まず、バルブ6、バルブ8およびバルブ14を閉じ、バルブ9およびバルブ12を開けて、カラム1内に満たされている蒸留水を吸着剤層上面の5mm上のレベルまで抜いた。
【0042】
次に、バルブ9を閉じ、バルブ6を開けてポンプ5を駆動して、ライン2よりカラム1内に、脱着液である1wt%水酸化ナトリウム水溶液をSV3(hr−1)で1時間通液した。通液中、カラム1内の脱着液の液面は、吸着剤層が完全に脱着液に浸るレベルに保った。1時間の通液後、ポンプ5を停止しバルブ6およびバルブ12を閉じ、吸着剤層が完全に脱着液に浸った状態を10分間保持した。
【0043】
その後、バルブ9およびバルブ12を開けて、カラム内に存在する脱着液をライン10から自然落下により排出した。
【0044】
次に、バルブ12を閉じ、バルブ14を開けてポンプ13を駆動させて、ライン11よりカラム1内に1wt%水酸化ナトリウム水溶液を吸着剤層上面の5mm上のレベルまで供給し、ポンプ13を停止しバルブ14を閉じた。この時の1wt%水酸化ナトリウム水溶液の供給量は2.9mlで供給に要した時間は約30秒だった。
【0045】
その後、バルブ9を閉じ、バルブ6およびバルブ12を開けてポンプ5を駆動させ、再びカラム1内に1wt%水酸化ナトリウム水溶液をSV3(hr−1)で40分間通液した。通液中、カラム1内の脱着液の液面は、吸着剤層が完全に脱着液に浸るレベルに保った。40分間の通液後、ポンプ5を停止しバルブ6およびバルブ12を閉じて、吸着剤層が完全に脱着液に浸った状態を再度10分間保持した。
【0046】
10分間保持後、バルブ8およびバルブ12を開け、ポンプ7を駆動させて、ライン3からカラム1内に空気を供給し、カラム1内に残存している脱着液をライン10から排出し、脱着処理を終了した。
【0047】
脱着処理に使用した1wt%NaOH水溶液の量は、42.9mlで、リン酸イオン脱着量は87.7mg−P/8ml−吸着剤、リン酸イオン脱着率は87%であった。
【0048】
リン酸イオン脱着量(mg−P/8ml−吸着剤)は、上述の一連の操作中にライン10から排出された全ての液の混合液について、その体積(L)とリン濃度(mg−P/L)を測定して式(II)に従って算出した。なおリン濃度の測定は、ICP発光分析法で行った。
【0049】
リン酸イオン脱着量 = ライン10から排出された全ての液の混合液のリン濃度
× ライン10から排出された全ての液の混合液の体積 (II)
リン酸イオン脱着率(%)は、式(III)に従って算出した。
【0050】
リン酸イオン脱着率 =(リン酸イオン脱着量 / リン酸イオン吸着量)
× 100 (III)
(実施例2)
【0051】
図1に概略を示した装置を用いて、以下の操作を行った。
【0052】
まず、バルブ6、バルブ8およびバルブ14を閉じ、バルブ9およびバルブ12を開けて、カラム1内に満たされている蒸留水をライン10より自然落下させて排出した。
【0053】
次に、バルブ12を閉じ、バルブ14を開けてポンプ13を駆動して、ライン11よりカラム1内に、脱着液である1wt%水酸化ナトリウム水溶液を吸着剤層上面の5mm上のレベルまで供給し、ポンプ13を停止しバルブ14を閉じた。この時の1wt%水酸化ナトリウム水溶液の供給量は3.0mlで供給に要した時間は約30秒だった。
【0054】
その後、バルブ9を閉じ、バルブ6およびバルブ12を開けてポンプ5を駆動させ、カラム1内に1wt%水酸化ナトリウム水溶液をSV3(hr−1)で40分間通液した。通液中、カラム1内の脱着液の液面は、吸着剤層が完全に脱着液に浸るレベルに保った。40分間の通液後、ポンプ5を停止しバルブ6およびバルブ12を閉じて、吸着剤層が完全に脱着液に浸った状態を10分間保持した。
【0055】
10分間保持後、バルブ9およびバルブ12を開けて、カラム1内に存在する脱着液をライン10より自然落下させて排出した。
【0056】
次に、バルブ12を閉じ、バルブ14を開けてポンプ13を駆動させて、カラム1内にライン11から1wt%水酸化ナトリウム水溶液を吸着剤層上面の5mm上のレベルまで供給し、ポンプ13を停止しバルブ14を閉じた。この時の1wt%水酸化ナトリウム水溶液の供給量は2.9mlで供給に要した時間は約30秒だった。
【0057】
その後、バルブ9を閉じ、バルブ6およびバルブ12を開けてポンプ5を駆動させ、再びカラム1内に1wt%水酸化ナトリウム水溶液をSV3(hr−1)で40分間通液した。通液中、カラム1内の脱着液の液面は、吸着剤層が完全に脱着液に浸るレベルに保った。40分間の通液後、ポンプ5を停止しバルブ6およびバルブ12を閉じて、吸着剤層が完全に脱着液に浸った状態を10分間保持した。
【0058】
10分間保持後、バルブ8およびバルブ12を開け、ポンプ7を駆動させて、ライン3からカラム1内に空気を供給し、カラム1内に残存している脱着液をライン10から排出し、脱着処理を終了した。
【0059】
脱着処理に使用した1wt%NaOH水溶液の量は、37.9mlで、リン酸イオン脱着量は92.7mg−P/8ml−吸着剤、リン酸イオン脱着率は92%であった。
【0060】
リン酸イオン脱着量、リン酸イオン脱着率は、実施例1と同様の方法で算出した。
(実施例3)
【0061】
図1に概略を示した装置を用いて、以下の操作を行った。
【0062】
まず、バルブ6、バルブ9およびバルブ14を閉じ、バルブ8およびバルブ12を開けてポンプ7を駆動させて、カラム1内にライン3から空気を供給し、カラム1内に満たされている蒸留水をライン10より排出した後、ポンプ7を停止し、バルブ8およびバルブ12を閉じた。
【0063】
次に、バルブ9、バルブ14を開けて、ポンプ13を駆動してライン11よりカラム1内に、脱着液である1wt%水酸化ナトリウム水溶液を吸着剤層上面の5mm上のレベルまで供給し、ポンプ13を停止しバルブ14を閉じた。この時の1wt%水酸化ナトリウム水溶液の供給量は3.8mlで供給に要した時間は約40秒だった。
【0064】
その後、バルブ9を閉じ、バルブ6およびバルブ12を開けてポンプ5を駆動させ、カラム1内に1wt%水酸化ナトリウム水溶液をSV3(hr−1)で30分間通液した。通液中、カラム1内の脱着液の液面は、吸着剤層が完全に脱着液に浸るレベルに保った。30分間の通液後、ポンプ5を停止しバルブ6およびバルブ12を閉じて、吸着剤層が完全に脱着液に浸った状態を10分間保持した。
【0065】
10分間保持後、バルブ8およびバルブ12を開けてポンプ7を駆動し、カラム1内にライン3から空気を供給して、カラム1内に存在する脱着液をライン10から排出した。
【0066】
次に、ポンプ7を停止しバルブ8およびバルブ12を閉じ、バルブ9およびバルブ14を開けてポンプ13を駆動させて、カラム1内にライン11から1wt%水酸化ナトリウム水溶液を吸着剤層上面の5mm上のレベルまで供給し、ポンプ13を停止しバルブ14を閉じた。この時の1wt%水酸化ナトリウム水溶液の供給量は3.7mlで供給に要した時間は約40秒だった。
【0067】
その後、バルブ9を閉じ、バルブ6およびバルブ12を開けてポンプ5を駆動させ、再びカラム1内に1wt%水酸化ナトリウム水溶液をSV3(hr−1)で40分間通液した。通液中、カラム1内の脱着液の液面は、吸着剤層が完全に脱着液に浸るレベルに保った。40分間の通液後、ポンプ5を停止しバルブ6およびバルブ12を閉じて、吸着剤層が完全に脱着液に浸った状態を再度10分間保持した。
【0068】
10分間保持後、バルブ8およびバルブ12を開け、ポンプ7を駆動させて、ライン3からカラム1内に空気を供給し、カラム1内に残存している脱着液をライン10から排出し、脱着処理を終了した。
【0069】
脱着処理に使用した1wt%NaOH水溶液の量は、35.5mlで、リン酸イオン脱着量は95.8mg−P/8ml−吸着剤、リン酸イオン脱着率は95%であった。
【0070】
リン酸イオン脱着量、リン酸イオン脱着率は、実施例1と同様の方法で算出した。
(比較例)
【0071】
図1に概略を示した装置を用いて、以下の操作を行った。
【0072】
バルブ6、バルブ8およびバルブ14を閉じ、バルブ9およびバルブ12を開けて、カラム1内に満たされている蒸留水を吸着剤層上面の5mm上のレベルまで抜いた。
【0073】
次に、バルブ9を閉じ、バルブ6を開けてポンプ5を駆動して、ライン2よりカラム1内に、脱着液である1wt%水酸化ナトリウム水溶液をSV3(hr−1)で2時間通液した。通液中、カラム1内の脱着液の液面は、吸着剤層が完全に脱着液に浸るレベルに保った。その後、ポンプ5を停止しバルブ6およびバルブ12を閉じて、吸着剤層が完全に脱着液に浸った状態を10分間保持した。
【0074】
10分間保持後、バルブ8およびバルブ12を開け、ポンプ7を駆動させて、ライン3からカラム1内に空気を供給し、カラム1内に残存している脱着液をライン10から排出し、脱着処理を終了した。
【0075】
脱着処理に使用した1wt%NaOH水溶液の量は48mlで、リン酸イオン脱着量は68.6mg−P/8ml−吸着剤、リン酸イオン脱着率は68%であった。
【0076】
リン酸イオン脱着量、リン酸イオン脱着率は、実施例1と同様の方法で算出した。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の脱着方法は、河川水、下水処理水、工場排水等からリン酸イオン、ホウ酸イオン、フッ素イオン、ヒ酸イオン、亜ヒ酸イオン等を吸着除去した吸着剤を、効率的に再生する方法に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の脱着方法に使用する装置の一形態を示す概略図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着剤に吸着した成分の脱着方法であって、吸着剤を充填した容器内に一定量の脱着液を通液した後、一旦通液を停止して容器内から脱着液を排出し、その後再度脱着液を通液して排出するという操作を実施することを特徴とする、脱着方法。
【請求項2】
前記吸着剤を充填した容器内に前記脱着液を通液する前に、該容器内に残存している溶液等を予め排出してから、脱着液を通液するという操作を実施することを特徴とする、請求項1に記載の脱着方法。
【請求項3】
前記吸着剤を充填した容器内に残存している溶液等を予め排出する操作および/または該吸着剤を充填した容器内から脱着液を排出する操作を、該容器内へ気体を供給して行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の脱着方法。
【請求項4】
前記吸着剤が高分子樹脂および金属酸化物を含んでなる吸着剤であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の脱着方法。
【請求項5】
前記金属酸化物が、活性アルミナ、水和酸化鉄、水和酸化チタン、水和酸化ジルコニウム、水和酸化スズ、水和酸化セリウム、水和酸化ランタン、および水和酸化イットリウムからなる群から選ばれる一種または二種以上であることを特徴とする、請求項4に記載の脱着方法。
【請求項6】
前記吸着剤に吸着した成分が、リン酸イオン、ホウ酸イオン、フッ素イオン、ヒ酸イオン、亜ヒ酸イオンからなる群から選ばれる一種以上である請求項1〜5のいずれか一項に記載の脱着方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−264661(P2008−264661A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110150(P2007−110150)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】