吸着剤成型体とその製造方法
【課題】空気清浄機に使用される脱臭フィルターにおいて、低圧損で、高い脱臭性能を確保する脱臭フィルターを提供することを目的とする。
【解決手段】多価陽イオン炭酸塩(炭酸カルシウム粉末4)と、吸着剤2と、有機バインダー(CMC3)を混合したスラリー5を型枠に注入して成型する。その後、酸溶液に浸漬されることにより、炭酸ガスを発泡させた後、乾燥させて吸着剤成型体1を構成する。このような吸着剤成型体1は、脱臭性能が高く、低い圧力損失と意匠にあった脱臭フィルターを提供できるという作用を有する。
【解決手段】多価陽イオン炭酸塩(炭酸カルシウム粉末4)と、吸着剤2と、有機バインダー(CMC3)を混合したスラリー5を型枠に注入して成型する。その後、酸溶液に浸漬されることにより、炭酸ガスを発泡させた後、乾燥させて吸着剤成型体1を構成する。このような吸着剤成型体1は、脱臭性能が高く、低い圧力損失と意匠にあった脱臭フィルターを提供できるという作用を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間内の空気環境を清浄に保つ空気清浄機にて使用する脱臭フィルター、または風路を成型する成型体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の吸着剤成型体は、空気中の悪臭物質等を除去するためのフィルターとして、活性炭等の吸着剤をバインダーによってハニカム状等に成型したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、その吸着剤成型体について図10を用いて説明する。
【0004】
図に示すように吸着剤成型体101は、活性炭と熱可塑性樹脂からなるバインダーを圧縮成型し、基板と突起部分からなる成型体102を成型し、この成型体を積層することにより、ハニカム状の吸着剤成型体101を成型している。
【0005】
また、図11に示すように、活性炭と熱可塑性樹脂からなるバインダーを押し出し成型してハニカム103を成型している。
【特許文献1】特開2003−1027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の吸着剤成型体は、バインダーとして熱可塑性樹脂が使用されており、吸着剤成型体内の吸着剤周囲をバインダーが塞ぎ、悪臭物質の吸着を阻害するととも、吸着剤成型体内の悪臭物質の拡散を阻害するという課題があり、バインダーによるこれら弊害を低減し、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することが要求されている。
【0007】
また、悪臭物質等を除去するために、悪臭物質等を除去する吸着剤の割合を多くする必要があり、悪臭物質等と吸着剤の接触効率を上げるために、吸着剤成型体の壁面厚みを薄くして悪臭物質等が壁面全体に拡散し易くする必要があるが、これらはいずれも、吸着剤成型体の強度低下を招くという課題があり、吸着剤成型体の強度低下を招くことなく、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することが要求されている。
【0008】
そして、吸着剤成型体の強度をより強くするということが要求されている。
【0009】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、吸着剤成型体の強度低下を招くことなく、バインダーで吸着性能が低下することなく悪臭物質等を除去する性能を確保でき、圧縮成型や押し出し成型のみならず、射出成型や真空鋳型成型によって任意形状に吸着剤成型体を成型することのできる吸着剤成型体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の吸着剤成型体は、上記目的を達成するために、吸着剤と、有機バインダーと、炭酸塩を混合して調整したスラリーを用いて所定の形状に成型してなり、成型時もしくは、成型後に酸溶液に浸漬されることで、成型体中に炭酸ガスの発泡による多孔が形成されているものである。
【0011】
この手段により、バインダー内に、炭酸ガスによる多孔が連通し、バインダーによってガスの拡散を阻害されることが少ないので、吸着剤成型体の強度低下を招くことなく、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することができる吸着剤成型体が得られる。
【0012】
また、他の手段は、有機バインダーとして、アルギン酸ナトリウムを用い、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンの反応による架橋反応で多孔性の成型体を構成したものである。
【0013】
この手段により、アルギン酸ナトリウムを架橋させ、吸着剤粒子とアルギン酸ナトリウムの架橋構造で吸着剤成型体を成型することができ、この架橋構造は網目状であり、吸着剤成型体の強度低下を招くことなく、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することができる吸着剤成型体が得られる。
【0014】
また、他の手段は、吸着剤と、アルギン酸ナトリウムと、多価陽イオン炭酸塩と、酸を内包したマイクロカプセルを混合したスラリーを用いて所定の形状に成型してなり、成型時もしくは、成型後にマイクロカプセルを破壊して、酸溶液を成型体中に浸透させることで、成型体中に炭酸ガスの発泡による多孔が形成され、かつ、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で多孔性の成型体を構成したものである。
【0015】
この手段により、アルギン酸ナトリウムを架橋させ、吸着剤粒子とアルギン酸ナトリウムの架橋構造で吸着剤成型体を成型することができ、この架橋構造は網目状であり、さらに、炭酸ガスの発泡による多孔によってガスの拡散を阻害されることが少ないので、吸着剤成型体の強度低下を招くことなく、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することができる吸着剤成型体が得られる。
【0016】
また、他の手段は、炭酸塩の粒度と量を調整することにより、多孔性の孔径と空隙率を調整したものである。
【0017】
この手段により、炭酸塩の粒度を小さくして、発泡する泡の大きさを小さくし、多孔性成型体の孔径を小さくし、炭酸塩の量を多くすることにより空隙率を大きく調整可能となり、臭気成分の拡散の容易性と、成型体の強度の兼ね合いで、多孔性の孔系と空隙率の調整可能な吸着剤成型体が得られる。
【0018】
また、他の手段は、吸着剤と、有機バインダーと、炭酸塩を混合したスラリーをハニカム基材の壁面に積層し、成型体中に炭酸ガスの発泡による多孔を有し、多孔性の成型体を構成することができ、吸着剤成型体の強度を向上し、また、ハニカム状で、通風時に圧力損失の小さい吸着剤成型体が得られる。
【0019】
また、他の手段は、吸着剤と、有機バインダーと、炭酸塩を混合したスラリーをポリウレタンフォーム基材中に充填し、成型体中に炭酸ガスの発泡による多孔を有し、吸着剤成型体の強度を向上した、吸着剤成型体が得られる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、有機バインダー内に、炭酸ガスによる多孔が連通し、有機バインダーによってガスの拡散を阻害されることが少ないので、有機バインダーで吸着性能が低下することなく悪臭物質等を除去する性能を確保でき、有機バインダーが阻害要因とならないので、多孔が無い場合に比べ、有機バインダーの量を多くでき、吸着剤成型体の強度低下を招くことなく、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することができる吸着剤成型体を提供できる。
【0021】
また、有機バインダーとして、アルギン酸ナトリウムを用い、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で多孔性の成型体を構成することが、バインダーによってガスの拡散を阻害されることが少ないので、吸着剤成型体の強度低下を招くことなく、さらに、炭酸ガスによる多孔が連通し、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することができる吸着剤成型体を提供できる。
【0022】
また、酸を内包したマイクロカプセルをスラリーに予め必要量混合し、必要時にマイクロカプセルを破壊し、酸を成型体中に浸透させ、炭酸ガスの発生と、多価陽イオンとアルギン酸ナトリウムとの架橋反応を実施させるため、スラリー自体は過剰な酸性とならず、取り扱いが容易となる吸着剤成型体を提供できる。
【0023】
また、炭酸塩の粒度を小さくして、発泡する泡の大きさを小さくし、網目状の多孔を有し成型体の細部に渡って、臭気成分を拡散させ、成型体の強度を確保し、さらに、短時間での臭気成分の拡散と吸着を図るために、炭酸塩を増量することにより空隙率を大きくし、強度は低下するが、目的性能に応じ、臭気成分の拡散の容易性と、成型体の強度の兼ね合いで、多孔性の孔径と空隙率の調整可能な吸着剤成型体が得られる。
【0024】
また、吸着剤と、有機バインダーと、炭酸塩を混合したスラリーをハニカム基材中に充填し、ハニカムが型枠となり、吸着剤成型体の強度を向上することができ、また、ハニカムの孔部壁面に吸着剤成型体を構成し、ハニカムの孔を保持し、通風時に圧力損失の小さい吸着剤成型体を提供できる。
【0025】
また、吸着剤と、有機バインダーと、炭酸塩を混合したスラリーをポリウレタンフォーム基材中に充填し、ポリウレタンフォームが吸着剤成型体の芯材となり、吸着剤成型体の強度を向上した、吸着剤成型体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の請求項1記載の吸着剤成型体は、吸着剤と、有機バインダーと、炭酸塩を混合して調整したスラリーを用いて所定の形状に成型してなり、成型時もしくは、成型後に酸溶液に浸漬されることで、成型体中に炭酸ガスの発泡による多孔が形成され、乾燥後に有機バインダーを固化し、多孔性の成型体を構成したものであり、有機バインダー内に、炭酸ガスによる多孔が連通し、有機バインダーによってガスの拡散を阻害されることが少ないので、有機バインダーで吸着性能が低下することなく悪臭物質等を除去する高い性能を確保することができる吸着剤成型体を提供できる。
【0027】
また、本発明の請求項2記載の吸着剤成型体は、吸着剤と、アルギン酸ナトリウムと、多価陽イオン炭酸塩を混合したスラリーを成型し、成型時もしくは、成型後に酸溶液を浸漬させ、酸と多価陽イオン炭酸塩の反応により成型体中に炭酸ガスを発泡させて、この発泡による多孔を有し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で多孔性の成型体を構成したものであり、吸着剤粒子とアルギン酸ナトリウムの架橋構造で吸着剤成型体を成型することができ、この架橋構造は網目状であり、バインダーによってガスの拡散を阻害されることが少ないので、吸着剤成型体の強度低下を招くことなく、さらに、炭酸ガスによる多孔が連通し、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することができる吸着剤成型体を提供できる。
【0028】
また、本発明の請求項3記載の吸着剤成型体は、吸着剤と、アルギン酸ナトリウムと、多価陽イオン炭酸塩と、酸を内包したマイクロカプセルを混合したスラリーを用いて所定の形状に成型してなり、成型時もしくは、成型後にマイクロカプセルを破壊して、酸溶液を成型体中に浸透させることで、成型体中に炭酸ガスの発泡による多孔が形成され、かつ、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で多孔性の成型体を構成したものであり、アルギン酸ナトリウムを架橋させ、吸着剤粒子とアルギン酸ナトリウムの架橋構造で吸着剤成型体を成型することができ、この架橋構造は網目状であり、さらに、炭酸ガスの発泡による多孔によってガスの拡散を阻害されることが少ないので、吸着剤成型体の強度低下を招くことなく、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することとなるが、予め設定した酸をスラリーに混合し、また、スラリー混合時は、酸がマイクロカプセルに封じ込められているので、スラリー自体や成型体は過剰な酸性とならず、取り扱いが容易となる吸着剤成型体が得られる。
【0029】
また、本発明の請求項4記載の吸着剤成型体は、炭酸塩の粒度と量を調整することにより、多孔性の孔径と空隙率を調整したものであり、炭酸塩の粒度を小さくして、発泡する泡の大きさを小さくし、成型体の細部に渡って網目状の多孔を有し、臭気成分を拡散させ、成型体の強度を確保することができ、さらに、短時間での臭気成分の拡散と吸着を図ろうとすれば、炭酸塩を増量することにより空隙率を大きくすれば良いが、強度は低下する。
【0030】
そこで、目的性能に応じ、臭気成分の拡散の容易性と、成型体の強度の兼ね合いで、多孔性の孔径と空隙率の調整可能となる吸着剤成型体が得られる。
【0031】
また、本発明の請求項5記載の吸着剤成型体は、吸着剤と、有機バインダーと、炭酸塩を混合したスラリーをハニカム基材の孔の壁面部分に積層し、成型体中に炭酸ガスの発泡による多孔を有し、多孔性のハニカム状の成型体を構成することができ、ハニカムが型枠となり、吸着剤成型体の強度を向上することができ、また、ハニカムの孔を保持し、通風時に圧力損失の小さい吸着剤成型体が得られる。
【0032】
また、本発明の請求項6記載の吸着剤成型体は、吸着剤と、有機バインダーと、炭酸塩を混合したスラリーをポリウレタンフォーム基材中に充填し、成型体中に炭酸ガスの発泡による多孔を有し、ポリウレタンフォームが吸着剤成型体の芯材となり、吸着剤成型体の強度を向上した、吸着剤成型体が得られる。
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0034】
(実施の形態1)
図1〜図4に示すように、活性炭粉末を用いた吸着剤2と、有機バインダーとして乾燥後に活性炭粉末同士を接着し吸着剤成型体1を構成するCMC3の水溶液、陽イオン炭酸塩としての炭酸カルシウム粉末4をニーダーで分散してスラリー5を作成する。そのスラリー5を吸着剤成型体1を任意形状に形成するための型枠6に流し込み、その後、スラリー5の入った型枠6にリン酸溶液7を浸漬する。酸を吸着剤成型体1に浸透することによって、炭酸カルシウム粉末4が、リン酸溶液7と反応し、炭酸ガスを発生させる。その時、炭酸ガスの連通した多孔8ができ、リン酸溶液7が内部に浸透しやすくなり、炭酸カルシウム粉末4とリン酸溶液7の反応を促進する。その後、吸着剤成型体1を乾燥させ、CMC3を固化させる。
【0035】
上記構成において、CMC3と吸着剤2を包含する吸着剤成型体1が構成され、乾燥後のCMC3内に、炭酸ガスの連通による多孔8の網目構造が吸着剤成型体1に形成され、ガスの拡散を阻害されることが少なく、吸着剤成型体1の強度を確保することとなる。
【0036】
なお、本実施の形態では、有機バインダーとしてCMC3を用いて説明したが、他のセルロース系接着剤やアクリルエマルジョンを用いても良く、その作用効果に差異を生じない。
【0037】
また、吸着剤として活性炭粉末を説明したが、吸着剤として、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ等の一般的な吸着剤を用いても良い。
【0038】
また、多価陽炭酸塩として炭酸化カルシウムを用いて説明したが、炭酸マグネシウムでも、炭酸水素カルシウムを用いても良く、亜鉛、アルミニウム、鉄イオンを含む炭酸塩を用いても良い。
【0039】
また、酸としてリン酸を用いて説明したが、強酸であれば何を用いても良い。
【0040】
また、リン酸として、吸着剤に残存させることにより、アンモニア等の塩基性ガスの吸着助剤として作用させることができる。
【0041】
(実施の形態2)
図5に示すように、本発明の第2の実施の形態による吸着剤成型体1は、活性炭粉末を用いた吸着剤2と、アルギン酸ナトリウム9と、多価陽イオン炭酸塩として炭酸カルシウム粉末4を混合したスラリー10を成型し、成型時もしくは、成型後に酸溶液を浸漬させる。浸漬させると、酸と多価陽イオン炭酸塩の反応により成型体中に炭酸ガスが発泡する。この発泡によって多数の孔ができる。このようにしてできた吸着剤成型体1は、多孔を有し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で多孔性の成型体を構成したものであり、吸着剤粒子とアルギン酸ナトリウムの架橋構造で吸着剤成型体1を成型することができる。この架橋構造は網目状であり、バインダーによってガスの拡散を阻害されることが少ないので、吸着剤成型体1の強度低下を招くことがない。さらに、炭酸ガスによる多孔が連通し、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することができる吸着剤成型体1を提供できる。
【0042】
上記構成において、アルギン酸ナトリウム9と吸着剤2を包含する吸着剤成型体1が構成され、乾燥後のアルギン酸ナトリウム9内に、炭酸ガスの連通による多孔8の網目構造が吸着剤成型体1に形成され、多孔がないバインダーを使用する場合のようにガスの拡散を阻害されることが少なく、吸着剤成型体1の強度を確保することとなる。
【0043】
なお、本実施の形態でも吸着剤として活性炭粉末を説明したが、第1の実施の形態同様、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ等の一般的な吸着剤を用いても良い。
【0044】
(実施の形態3)
図6に示すように、本実施の形態のマイクロカプセル12は、壁11をホットメルトで形成し、多価陽イオンとして炭酸カルシウム粉末4と、酸14としてリン酸を内包している。このマイクロカプセル12と、吸着剤2としての活性炭粉末2aと、アルギン酸ナトリウム9とを分散したスラリー13を型枠6に流し込む。(図7)その後、スラリー13の入った型枠6を加熱することで、マイクロカプセル12の壁11を破壊し、カルシウムイオンがスラリー13内に分散浸透される。
【0045】
上記構成において、実施の形態1、2のように成型体外部からのリン酸の浸透でなく、成型体全体内部からリン酸が均等に浸透するため、短時間で均一な多穴を有し、アルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンの架橋反応による架橋構造内に活性炭粉末2aを包含する吸着剤成型体1が構成され、溶融したホットメルトがホットメルト間およびホットメルトと活性炭粉末2a間に粘着接続し、吸着剤成型体1の強度を確保することとなる。
【0046】
(実施の形態4)
図8に示すように、スラリー中の炭酸塩15の粒度と量を調整するものであり、酸と炭酸塩15の反応により、炭酸塩自体は炭酸ガスの発泡する部位となるため、炭酸塩15の粒度が大きければ、発泡ガスのスラリー中を連通する孔径が大きくなり、また、炭酸塩15が多くなると、よりポーラス状となる。
【0047】
連通する孔の孔径と空隙率を調整したものであり、炭酸塩の粒度を小さくして、発泡する泡の大きさを小さくし、成型体の細部に渡って網目状の多孔を有し、臭気成分を拡散させ、成型体の強度を確保することができ、さらに、短時間での臭気成分の拡散と吸着を図ろうとすれば、炭酸塩を増量することにより空隙率を大きくすれば良いが、強度は低下する。
【0048】
そこで、目的性能に応じ、臭気成分の拡散の容易性と、成型体の強度の兼ね合いで、多孔性の孔径と空隙率の調整可能となる吸着剤成型体1が得られる。
【0049】
(実施の形態5)
図9に示すように、吸着剤2として活性炭粉末2aとアルギン酸ナトリウム9をニーダーで分散してスラリーを作成し、スラリー5をハニカム基材16に流し込み、ハニカム基材の壁面に、スラリー層17を形成し、その後、酸溶液に浸漬し、成型体中に炭酸ガスの発泡による多孔を有し、多孔性のハニカム状の成型体を構成することができる。
【0050】
上記構成において、ハニカムが型枠となり、吸着剤成型体1の強度を向上することができ、また、ハニカムの孔を保持し、通風時に圧力損失の小さい吸着剤成型体1が得られる。
【0051】
(実施の形態6)
吸着剤と、有機バインダーと、炭酸塩を混合したスラリーをポリウレタンフォーム基材中に充填し、成型体中に炭酸ガスの発泡による多孔を有し、ポリウレタンフォームが吸着剤成型体1の芯材となり、吸着剤成型体1の強度を向上した、吸着剤成型体1が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
任意の形状の吸着剤成型体が成型できるので、圧力損失が少なく、脱臭効果の高い脱臭フィルターや、通風路が構成でき、送風装置を内装した空調機器の全般に使用が可能であり、また、水等の液体浄化分野において使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施の形態の吸着剤成型体の斜視図
【図2】同スラリーの内部状態を示す図
【図3】同型枠に流し込んだスラリーの断面図
【図4】同多孔が連通した吸着剤成型体の断面図
【図5】本発明の第2の実施の形態のスラリーの断面図
【図6】本発明の第3の実施の形態のマイクロカプセルの断面図
【図7】同型枠に流し込んだスラリーの断面図
【図8】本発明の第4の実施の形態のスラリーの断面図
【図9】本発明の第5の実施の形態のスラリーの断面図
【図10】従来の圧縮成型による吸着剤成型体断面図
【図11】同押し出し成型によるハニカムの斜視図
【符号の説明】
【0054】
1 吸着剤成型体
2 吸着剤
3 CMC
4 炭酸カルシウム粉末
5 スラリー
6 型枠
7 リン酸溶液
8 多孔
9 アルギン酸ナトリウム
10 スラリー
11 壁
12 マイクロカプセル
13 スラリー
14 酸
15 炭酸塩
16 ハニカム基材
17 スラリー層
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間内の空気環境を清浄に保つ空気清浄機にて使用する脱臭フィルター、または風路を成型する成型体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の吸着剤成型体は、空気中の悪臭物質等を除去するためのフィルターとして、活性炭等の吸着剤をバインダーによってハニカム状等に成型したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、その吸着剤成型体について図10を用いて説明する。
【0004】
図に示すように吸着剤成型体101は、活性炭と熱可塑性樹脂からなるバインダーを圧縮成型し、基板と突起部分からなる成型体102を成型し、この成型体を積層することにより、ハニカム状の吸着剤成型体101を成型している。
【0005】
また、図11に示すように、活性炭と熱可塑性樹脂からなるバインダーを押し出し成型してハニカム103を成型している。
【特許文献1】特開2003−1027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の吸着剤成型体は、バインダーとして熱可塑性樹脂が使用されており、吸着剤成型体内の吸着剤周囲をバインダーが塞ぎ、悪臭物質の吸着を阻害するととも、吸着剤成型体内の悪臭物質の拡散を阻害するという課題があり、バインダーによるこれら弊害を低減し、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することが要求されている。
【0007】
また、悪臭物質等を除去するために、悪臭物質等を除去する吸着剤の割合を多くする必要があり、悪臭物質等と吸着剤の接触効率を上げるために、吸着剤成型体の壁面厚みを薄くして悪臭物質等が壁面全体に拡散し易くする必要があるが、これらはいずれも、吸着剤成型体の強度低下を招くという課題があり、吸着剤成型体の強度低下を招くことなく、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することが要求されている。
【0008】
そして、吸着剤成型体の強度をより強くするということが要求されている。
【0009】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、吸着剤成型体の強度低下を招くことなく、バインダーで吸着性能が低下することなく悪臭物質等を除去する性能を確保でき、圧縮成型や押し出し成型のみならず、射出成型や真空鋳型成型によって任意形状に吸着剤成型体を成型することのできる吸着剤成型体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の吸着剤成型体は、上記目的を達成するために、吸着剤と、有機バインダーと、炭酸塩を混合して調整したスラリーを用いて所定の形状に成型してなり、成型時もしくは、成型後に酸溶液に浸漬されることで、成型体中に炭酸ガスの発泡による多孔が形成されているものである。
【0011】
この手段により、バインダー内に、炭酸ガスによる多孔が連通し、バインダーによってガスの拡散を阻害されることが少ないので、吸着剤成型体の強度低下を招くことなく、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することができる吸着剤成型体が得られる。
【0012】
また、他の手段は、有機バインダーとして、アルギン酸ナトリウムを用い、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンの反応による架橋反応で多孔性の成型体を構成したものである。
【0013】
この手段により、アルギン酸ナトリウムを架橋させ、吸着剤粒子とアルギン酸ナトリウムの架橋構造で吸着剤成型体を成型することができ、この架橋構造は網目状であり、吸着剤成型体の強度低下を招くことなく、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することができる吸着剤成型体が得られる。
【0014】
また、他の手段は、吸着剤と、アルギン酸ナトリウムと、多価陽イオン炭酸塩と、酸を内包したマイクロカプセルを混合したスラリーを用いて所定の形状に成型してなり、成型時もしくは、成型後にマイクロカプセルを破壊して、酸溶液を成型体中に浸透させることで、成型体中に炭酸ガスの発泡による多孔が形成され、かつ、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で多孔性の成型体を構成したものである。
【0015】
この手段により、アルギン酸ナトリウムを架橋させ、吸着剤粒子とアルギン酸ナトリウムの架橋構造で吸着剤成型体を成型することができ、この架橋構造は網目状であり、さらに、炭酸ガスの発泡による多孔によってガスの拡散を阻害されることが少ないので、吸着剤成型体の強度低下を招くことなく、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することができる吸着剤成型体が得られる。
【0016】
また、他の手段は、炭酸塩の粒度と量を調整することにより、多孔性の孔径と空隙率を調整したものである。
【0017】
この手段により、炭酸塩の粒度を小さくして、発泡する泡の大きさを小さくし、多孔性成型体の孔径を小さくし、炭酸塩の量を多くすることにより空隙率を大きく調整可能となり、臭気成分の拡散の容易性と、成型体の強度の兼ね合いで、多孔性の孔系と空隙率の調整可能な吸着剤成型体が得られる。
【0018】
また、他の手段は、吸着剤と、有機バインダーと、炭酸塩を混合したスラリーをハニカム基材の壁面に積層し、成型体中に炭酸ガスの発泡による多孔を有し、多孔性の成型体を構成することができ、吸着剤成型体の強度を向上し、また、ハニカム状で、通風時に圧力損失の小さい吸着剤成型体が得られる。
【0019】
また、他の手段は、吸着剤と、有機バインダーと、炭酸塩を混合したスラリーをポリウレタンフォーム基材中に充填し、成型体中に炭酸ガスの発泡による多孔を有し、吸着剤成型体の強度を向上した、吸着剤成型体が得られる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、有機バインダー内に、炭酸ガスによる多孔が連通し、有機バインダーによってガスの拡散を阻害されることが少ないので、有機バインダーで吸着性能が低下することなく悪臭物質等を除去する性能を確保でき、有機バインダーが阻害要因とならないので、多孔が無い場合に比べ、有機バインダーの量を多くでき、吸着剤成型体の強度低下を招くことなく、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することができる吸着剤成型体を提供できる。
【0021】
また、有機バインダーとして、アルギン酸ナトリウムを用い、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で多孔性の成型体を構成することが、バインダーによってガスの拡散を阻害されることが少ないので、吸着剤成型体の強度低下を招くことなく、さらに、炭酸ガスによる多孔が連通し、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することができる吸着剤成型体を提供できる。
【0022】
また、酸を内包したマイクロカプセルをスラリーに予め必要量混合し、必要時にマイクロカプセルを破壊し、酸を成型体中に浸透させ、炭酸ガスの発生と、多価陽イオンとアルギン酸ナトリウムとの架橋反応を実施させるため、スラリー自体は過剰な酸性とならず、取り扱いが容易となる吸着剤成型体を提供できる。
【0023】
また、炭酸塩の粒度を小さくして、発泡する泡の大きさを小さくし、網目状の多孔を有し成型体の細部に渡って、臭気成分を拡散させ、成型体の強度を確保し、さらに、短時間での臭気成分の拡散と吸着を図るために、炭酸塩を増量することにより空隙率を大きくし、強度は低下するが、目的性能に応じ、臭気成分の拡散の容易性と、成型体の強度の兼ね合いで、多孔性の孔径と空隙率の調整可能な吸着剤成型体が得られる。
【0024】
また、吸着剤と、有機バインダーと、炭酸塩を混合したスラリーをハニカム基材中に充填し、ハニカムが型枠となり、吸着剤成型体の強度を向上することができ、また、ハニカムの孔部壁面に吸着剤成型体を構成し、ハニカムの孔を保持し、通風時に圧力損失の小さい吸着剤成型体を提供できる。
【0025】
また、吸着剤と、有機バインダーと、炭酸塩を混合したスラリーをポリウレタンフォーム基材中に充填し、ポリウレタンフォームが吸着剤成型体の芯材となり、吸着剤成型体の強度を向上した、吸着剤成型体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の請求項1記載の吸着剤成型体は、吸着剤と、有機バインダーと、炭酸塩を混合して調整したスラリーを用いて所定の形状に成型してなり、成型時もしくは、成型後に酸溶液に浸漬されることで、成型体中に炭酸ガスの発泡による多孔が形成され、乾燥後に有機バインダーを固化し、多孔性の成型体を構成したものであり、有機バインダー内に、炭酸ガスによる多孔が連通し、有機バインダーによってガスの拡散を阻害されることが少ないので、有機バインダーで吸着性能が低下することなく悪臭物質等を除去する高い性能を確保することができる吸着剤成型体を提供できる。
【0027】
また、本発明の請求項2記載の吸着剤成型体は、吸着剤と、アルギン酸ナトリウムと、多価陽イオン炭酸塩を混合したスラリーを成型し、成型時もしくは、成型後に酸溶液を浸漬させ、酸と多価陽イオン炭酸塩の反応により成型体中に炭酸ガスを発泡させて、この発泡による多孔を有し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で多孔性の成型体を構成したものであり、吸着剤粒子とアルギン酸ナトリウムの架橋構造で吸着剤成型体を成型することができ、この架橋構造は網目状であり、バインダーによってガスの拡散を阻害されることが少ないので、吸着剤成型体の強度低下を招くことなく、さらに、炭酸ガスによる多孔が連通し、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することができる吸着剤成型体を提供できる。
【0028】
また、本発明の請求項3記載の吸着剤成型体は、吸着剤と、アルギン酸ナトリウムと、多価陽イオン炭酸塩と、酸を内包したマイクロカプセルを混合したスラリーを用いて所定の形状に成型してなり、成型時もしくは、成型後にマイクロカプセルを破壊して、酸溶液を成型体中に浸透させることで、成型体中に炭酸ガスの発泡による多孔が形成され、かつ、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で多孔性の成型体を構成したものであり、アルギン酸ナトリウムを架橋させ、吸着剤粒子とアルギン酸ナトリウムの架橋構造で吸着剤成型体を成型することができ、この架橋構造は網目状であり、さらに、炭酸ガスの発泡による多孔によってガスの拡散を阻害されることが少ないので、吸着剤成型体の強度低下を招くことなく、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することとなるが、予め設定した酸をスラリーに混合し、また、スラリー混合時は、酸がマイクロカプセルに封じ込められているので、スラリー自体や成型体は過剰な酸性とならず、取り扱いが容易となる吸着剤成型体が得られる。
【0029】
また、本発明の請求項4記載の吸着剤成型体は、炭酸塩の粒度と量を調整することにより、多孔性の孔径と空隙率を調整したものであり、炭酸塩の粒度を小さくして、発泡する泡の大きさを小さくし、成型体の細部に渡って網目状の多孔を有し、臭気成分を拡散させ、成型体の強度を確保することができ、さらに、短時間での臭気成分の拡散と吸着を図ろうとすれば、炭酸塩を増量することにより空隙率を大きくすれば良いが、強度は低下する。
【0030】
そこで、目的性能に応じ、臭気成分の拡散の容易性と、成型体の強度の兼ね合いで、多孔性の孔径と空隙率の調整可能となる吸着剤成型体が得られる。
【0031】
また、本発明の請求項5記載の吸着剤成型体は、吸着剤と、有機バインダーと、炭酸塩を混合したスラリーをハニカム基材の孔の壁面部分に積層し、成型体中に炭酸ガスの発泡による多孔を有し、多孔性のハニカム状の成型体を構成することができ、ハニカムが型枠となり、吸着剤成型体の強度を向上することができ、また、ハニカムの孔を保持し、通風時に圧力損失の小さい吸着剤成型体が得られる。
【0032】
また、本発明の請求項6記載の吸着剤成型体は、吸着剤と、有機バインダーと、炭酸塩を混合したスラリーをポリウレタンフォーム基材中に充填し、成型体中に炭酸ガスの発泡による多孔を有し、ポリウレタンフォームが吸着剤成型体の芯材となり、吸着剤成型体の強度を向上した、吸着剤成型体が得られる。
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0034】
(実施の形態1)
図1〜図4に示すように、活性炭粉末を用いた吸着剤2と、有機バインダーとして乾燥後に活性炭粉末同士を接着し吸着剤成型体1を構成するCMC3の水溶液、陽イオン炭酸塩としての炭酸カルシウム粉末4をニーダーで分散してスラリー5を作成する。そのスラリー5を吸着剤成型体1を任意形状に形成するための型枠6に流し込み、その後、スラリー5の入った型枠6にリン酸溶液7を浸漬する。酸を吸着剤成型体1に浸透することによって、炭酸カルシウム粉末4が、リン酸溶液7と反応し、炭酸ガスを発生させる。その時、炭酸ガスの連通した多孔8ができ、リン酸溶液7が内部に浸透しやすくなり、炭酸カルシウム粉末4とリン酸溶液7の反応を促進する。その後、吸着剤成型体1を乾燥させ、CMC3を固化させる。
【0035】
上記構成において、CMC3と吸着剤2を包含する吸着剤成型体1が構成され、乾燥後のCMC3内に、炭酸ガスの連通による多孔8の網目構造が吸着剤成型体1に形成され、ガスの拡散を阻害されることが少なく、吸着剤成型体1の強度を確保することとなる。
【0036】
なお、本実施の形態では、有機バインダーとしてCMC3を用いて説明したが、他のセルロース系接着剤やアクリルエマルジョンを用いても良く、その作用効果に差異を生じない。
【0037】
また、吸着剤として活性炭粉末を説明したが、吸着剤として、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ等の一般的な吸着剤を用いても良い。
【0038】
また、多価陽炭酸塩として炭酸化カルシウムを用いて説明したが、炭酸マグネシウムでも、炭酸水素カルシウムを用いても良く、亜鉛、アルミニウム、鉄イオンを含む炭酸塩を用いても良い。
【0039】
また、酸としてリン酸を用いて説明したが、強酸であれば何を用いても良い。
【0040】
また、リン酸として、吸着剤に残存させることにより、アンモニア等の塩基性ガスの吸着助剤として作用させることができる。
【0041】
(実施の形態2)
図5に示すように、本発明の第2の実施の形態による吸着剤成型体1は、活性炭粉末を用いた吸着剤2と、アルギン酸ナトリウム9と、多価陽イオン炭酸塩として炭酸カルシウム粉末4を混合したスラリー10を成型し、成型時もしくは、成型後に酸溶液を浸漬させる。浸漬させると、酸と多価陽イオン炭酸塩の反応により成型体中に炭酸ガスが発泡する。この発泡によって多数の孔ができる。このようにしてできた吸着剤成型体1は、多孔を有し、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で多孔性の成型体を構成したものであり、吸着剤粒子とアルギン酸ナトリウムの架橋構造で吸着剤成型体1を成型することができる。この架橋構造は網目状であり、バインダーによってガスの拡散を阻害されることが少ないので、吸着剤成型体1の強度低下を招くことがない。さらに、炭酸ガスによる多孔が連通し、悪臭物質等を除去する高い性能を確保することができる吸着剤成型体1を提供できる。
【0042】
上記構成において、アルギン酸ナトリウム9と吸着剤2を包含する吸着剤成型体1が構成され、乾燥後のアルギン酸ナトリウム9内に、炭酸ガスの連通による多孔8の網目構造が吸着剤成型体1に形成され、多孔がないバインダーを使用する場合のようにガスの拡散を阻害されることが少なく、吸着剤成型体1の強度を確保することとなる。
【0043】
なお、本実施の形態でも吸着剤として活性炭粉末を説明したが、第1の実施の形態同様、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ等の一般的な吸着剤を用いても良い。
【0044】
(実施の形態3)
図6に示すように、本実施の形態のマイクロカプセル12は、壁11をホットメルトで形成し、多価陽イオンとして炭酸カルシウム粉末4と、酸14としてリン酸を内包している。このマイクロカプセル12と、吸着剤2としての活性炭粉末2aと、アルギン酸ナトリウム9とを分散したスラリー13を型枠6に流し込む。(図7)その後、スラリー13の入った型枠6を加熱することで、マイクロカプセル12の壁11を破壊し、カルシウムイオンがスラリー13内に分散浸透される。
【0045】
上記構成において、実施の形態1、2のように成型体外部からのリン酸の浸透でなく、成型体全体内部からリン酸が均等に浸透するため、短時間で均一な多穴を有し、アルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンの架橋反応による架橋構造内に活性炭粉末2aを包含する吸着剤成型体1が構成され、溶融したホットメルトがホットメルト間およびホットメルトと活性炭粉末2a間に粘着接続し、吸着剤成型体1の強度を確保することとなる。
【0046】
(実施の形態4)
図8に示すように、スラリー中の炭酸塩15の粒度と量を調整するものであり、酸と炭酸塩15の反応により、炭酸塩自体は炭酸ガスの発泡する部位となるため、炭酸塩15の粒度が大きければ、発泡ガスのスラリー中を連通する孔径が大きくなり、また、炭酸塩15が多くなると、よりポーラス状となる。
【0047】
連通する孔の孔径と空隙率を調整したものであり、炭酸塩の粒度を小さくして、発泡する泡の大きさを小さくし、成型体の細部に渡って網目状の多孔を有し、臭気成分を拡散させ、成型体の強度を確保することができ、さらに、短時間での臭気成分の拡散と吸着を図ろうとすれば、炭酸塩を増量することにより空隙率を大きくすれば良いが、強度は低下する。
【0048】
そこで、目的性能に応じ、臭気成分の拡散の容易性と、成型体の強度の兼ね合いで、多孔性の孔径と空隙率の調整可能となる吸着剤成型体1が得られる。
【0049】
(実施の形態5)
図9に示すように、吸着剤2として活性炭粉末2aとアルギン酸ナトリウム9をニーダーで分散してスラリーを作成し、スラリー5をハニカム基材16に流し込み、ハニカム基材の壁面に、スラリー層17を形成し、その後、酸溶液に浸漬し、成型体中に炭酸ガスの発泡による多孔を有し、多孔性のハニカム状の成型体を構成することができる。
【0050】
上記構成において、ハニカムが型枠となり、吸着剤成型体1の強度を向上することができ、また、ハニカムの孔を保持し、通風時に圧力損失の小さい吸着剤成型体1が得られる。
【0051】
(実施の形態6)
吸着剤と、有機バインダーと、炭酸塩を混合したスラリーをポリウレタンフォーム基材中に充填し、成型体中に炭酸ガスの発泡による多孔を有し、ポリウレタンフォームが吸着剤成型体1の芯材となり、吸着剤成型体1の強度を向上した、吸着剤成型体1が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
任意の形状の吸着剤成型体が成型できるので、圧力損失が少なく、脱臭効果の高い脱臭フィルターや、通風路が構成でき、送風装置を内装した空調機器の全般に使用が可能であり、また、水等の液体浄化分野において使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施の形態の吸着剤成型体の斜視図
【図2】同スラリーの内部状態を示す図
【図3】同型枠に流し込んだスラリーの断面図
【図4】同多孔が連通した吸着剤成型体の断面図
【図5】本発明の第2の実施の形態のスラリーの断面図
【図6】本発明の第3の実施の形態のマイクロカプセルの断面図
【図7】同型枠に流し込んだスラリーの断面図
【図8】本発明の第4の実施の形態のスラリーの断面図
【図9】本発明の第5の実施の形態のスラリーの断面図
【図10】従来の圧縮成型による吸着剤成型体断面図
【図11】同押し出し成型によるハニカムの斜視図
【符号の説明】
【0054】
1 吸着剤成型体
2 吸着剤
3 CMC
4 炭酸カルシウム粉末
5 スラリー
6 型枠
7 リン酸溶液
8 多孔
9 アルギン酸ナトリウム
10 スラリー
11 壁
12 マイクロカプセル
13 スラリー
14 酸
15 炭酸塩
16 ハニカム基材
17 スラリー層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着剤と、有機バインダーと、炭酸塩を混合して調整したスラリーを用いて所定の形状に成型してなり、成型時もしくは、成型後に酸溶液に浸漬されることで、成型体中に炭酸ガスの発泡による多孔が形成されていることを特徴とする吸着剤成型体。
【請求項2】
有機バインダーとして、アルギン酸ナトリウムを用い、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で多孔性の成型体を構成することができる請求項1記載の吸着剤成型体。
【請求項3】
吸着剤と、アルギン酸ナトリウムと、多価陽イオン炭酸塩と、酸を内包したマイクロカプセルを混合したスラリーを用いて所定の形状に成型してなり、成型時もしくは、成型後にマイクロカプセルを破壊して、酸溶液を成型体中に浸透させることで、成型体中に炭酸ガスの発泡による多孔が形成され、かつ、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で多孔性の成型体を構成することができる請求項2記載の吸着剤成型体。
【請求項4】
炭酸塩の粒度と量を調整することにより、多孔性の孔径と空隙率を調整した多孔性の成型体を構成することができる請求項1〜3のいずれかに記載の吸着剤成型体。
【請求項5】
吸着剤と、有機バインダーと、炭酸塩を混合したスラリーをハニカム基材壁面に積層し、成型体中に炭酸ガスの発泡による多孔を有し、ハニカム状の成型体を多孔性に構成することができる請求項1記載の吸着剤成型体。
【請求項6】
吸着剤と、有機バインダーと、炭酸塩を混合したスラリーをポリウレタンフォーム基材中に充填し、成型体中に炭酸ガスの発泡による多孔を有し、多孔性の成型体を構成することができる請求項1記載の吸着剤成型体。
【請求項1】
吸着剤と、有機バインダーと、炭酸塩を混合して調整したスラリーを用いて所定の形状に成型してなり、成型時もしくは、成型後に酸溶液に浸漬されることで、成型体中に炭酸ガスの発泡による多孔が形成されていることを特徴とする吸着剤成型体。
【請求項2】
有機バインダーとして、アルギン酸ナトリウムを用い、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で多孔性の成型体を構成することができる請求項1記載の吸着剤成型体。
【請求項3】
吸着剤と、アルギン酸ナトリウムと、多価陽イオン炭酸塩と、酸を内包したマイクロカプセルを混合したスラリーを用いて所定の形状に成型してなり、成型時もしくは、成型後にマイクロカプセルを破壊して、酸溶液を成型体中に浸透させることで、成型体中に炭酸ガスの発泡による多孔が形成され、かつ、アルギン酸ナトリウムと多価陽イオンによる架橋反応で多孔性の成型体を構成することができる請求項2記載の吸着剤成型体。
【請求項4】
炭酸塩の粒度と量を調整することにより、多孔性の孔径と空隙率を調整した多孔性の成型体を構成することができる請求項1〜3のいずれかに記載の吸着剤成型体。
【請求項5】
吸着剤と、有機バインダーと、炭酸塩を混合したスラリーをハニカム基材壁面に積層し、成型体中に炭酸ガスの発泡による多孔を有し、ハニカム状の成型体を多孔性に構成することができる請求項1記載の吸着剤成型体。
【請求項6】
吸着剤と、有機バインダーと、炭酸塩を混合したスラリーをポリウレタンフォーム基材中に充填し、成型体中に炭酸ガスの発泡による多孔を有し、多孔性の成型体を構成することができる請求項1記載の吸着剤成型体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−45578(P2009−45578A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215471(P2007−215471)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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