説明

吸着式冷凍システム

【課題】冷凍能力の低下を防止するとともに、消費エネルギーの省力化を図る。
【解決手段】2槽一組の吸着器2a、2bと蒸発器3と凝縮器4とを含み、一方の吸着器2aの機能と他方の吸着器2bの機能とを交互に切り換える吸着式冷凍システム1Aである。蒸発器3で蒸発した冷媒の一部を凝縮器4に導入する流路20が形成されるとともに、この流路20の途中に流通する冷媒を圧縮する圧縮機21が配設され、前記吸着器に供給される熱媒の熱量が不足した際、前記圧縮機21の運転制御により圧縮した冷媒を前記凝縮器4に供給可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着剤を内蔵し冷媒の吸着槽又は脱着槽として機能する2槽一組の吸着器と、前記各吸着器と連通可能な流路を備えた蒸発器及び凝縮器とからなる吸着式冷凍システムにおいて、前記吸着器に供給される吸着剤の再生用の熱媒の熱量が不足した際でも、冷凍能力の低下を防止するとともに、消費エネルギーの省力化を図った吸着式冷凍システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自然冷媒である水を用いた冷凍機として吸着式冷凍機が知られている。前記吸着式冷凍機50は、図4に示されるように、吸着剤を内蔵し冷媒の吸着槽又は脱着槽として機能する2槽一組の吸着器51a、51bと、前記各吸着器51a、51bと連通可能な流路を備えた蒸発器52と、前記各吸着器51a、51bと連通可能な流路を備えるとともに、凝縮した冷媒を前記蒸発器52に送給する流路を備えた凝縮器53とからなる密閉系とされている。
【0003】
そして、かかる吸着式冷凍機50は、一方の吸着器51aを冷媒の吸着槽として機能させ、他方の吸着器51bを冷媒の脱着槽として機能させるとともに、前記蒸発器52と一方の吸着器51aとを連通させ、前記他方の吸着器51bと凝縮器53とを連通させる運転モードと、一方の吸着器51aを冷媒の脱着槽として機能させ、他方の吸着器51bを冷媒の吸着槽として機能させるとともに、前記蒸発器52と他方の吸着器51bとを連通させ、前記一方の吸着器51aと凝縮器53とを連通させる運転モードとが交互に切り換えられるようになっている。これにより、前記蒸発器52における冷媒の蒸発に伴って発生する気化熱との熱交換によって冷熱が製造されるようになっている。
【0004】
前記吸着器51a、51bに充填された吸着剤は、60℃程度以上に加熱することにより吸着した冷媒が脱着(再生)され、その再生用の熱源としてボイラーなどの排熱や太陽熱などの利用が推奨されている。
【0005】
このような吸着式冷凍機として、下記特許文献1には、吸着器から凝縮器に向かう冷媒通路に吸引ポンプを配置することにより、吸着器で吸着剤から脱着された冷媒蒸気が、吸引ポンプによって吸引され、加圧された状態で凝縮器に入り凝縮するとともに、吸引により吸引ポンプ入口側の圧力が低下するため、平衡圧力の関係がずれ、吸着器において吸着剤からより多くの冷媒蒸気を吐き出させるようにした化学ヒートポンプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−37596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、吸着剤の再生用の熱源として利用される排熱や太陽熱は、ボイラーなどの運転状況や天候などによって変動する安定した供給源ではないため、排熱や太陽熱の熱供給がない場合には再生用の熱源がゼロになるという事態も生じ得るが、上記特許文献1記載の化学ヒートポンプでは、このような場合にまで吸引ポンプの吸引により吸着剤から強制的に冷媒蒸気を吐き出させることができるようなものではなかった。
【0008】
このように、再生用の熱源が不足した場合、吸着剤の再生が十分に行われないために吸着剤の吸着量が低下するという問題が生じる。その結果、蒸発器内の圧力が上昇し、蒸発器内で冷媒が蒸発し難くなり気化熱の発生が抑えられるため、製造される冷熱の温度が上昇する。このように、吸着剤の再生(脱着)不足による冷凍能力の低下が問題となっていた。
【0009】
一方、再生用の熱源不足を補うため、別途熱媒を加熱するための熱源機を設けた場合、その分の消費エネルギーが増加するため運転効率が低下するという問題が生じる。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、冷凍能力の低下を防止するとともに、消費エネルギーの省力化を図った吸着式冷凍システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、吸着剤を内蔵し冷媒の吸着槽又は脱着槽として機能するとともに、少なくとも吸着剤の再生用の熱媒が流通する再生用流路を備えた2槽一組の吸着器と、前記各吸着器と連通可能な流路を備えた蒸発器と、前記各吸着器と連通可能な流路を備えるとともに、凝縮した冷媒を前記蒸発器に送給する流路を備えた凝縮器とを含み、
一方の吸着器を吸着槽として機能させ、他方の吸着器を脱着槽として機能させるとともに、前記蒸発器と一方の吸着器とを連通させ、前記他方の吸着器と凝縮器とを連通させる運転モードと、一方の吸着器を脱着槽として機能させ、他方の吸着器を吸着槽として機能させるとともに、前記蒸発器と他方の吸着器とを連通させ、前記一方の吸着器と凝縮器とを連通させる運転モードとが交互に切り換えられる吸着式冷凍システムであって、
前記蒸発器で蒸発した冷媒の一部を前記凝縮器に導入する流路が形成されるとともに、この流路の途中に流通する冷媒を圧縮する圧縮機が配設され、前記吸着器に供給される熱媒の熱量が不足した際、前記圧縮機の運転制御により圧縮した冷媒を前記凝縮器に供給可能としたことを特徴とする吸着式冷凍システムが提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明は、本発明に係る吸着式冷凍システムの第1形態例であり、従来の2槽一組の吸着器、蒸発器及び凝縮器からなる吸着式冷凍システムに対し、蒸発器で蒸発した冷媒の一部を前記凝縮器に導入する流路を形成するとともに、この流路の途中に流通する冷媒を圧縮する圧縮機を配設し、吸着器に供給される熱媒の熱量が不足した際、前記圧縮機の運転制御により圧縮した冷媒を前記凝縮器に供給可能としたものである。このため、吸着器に供給される熱媒の熱量が不足し吸着剤の再生が十分に行われなくなった結果、吸着剤の吸着量が低下しても、前記圧縮機の運転制御により蒸発器内の冷媒蒸気が凝縮器に送給されるため、蒸発器内の圧力が一定に保たれ、蒸発器内の圧力上昇によって冷媒が蒸発し難くなり気化熱の発生が抑制されて冷熱の温度が上昇するという事態が生じなくなる。従って、吸着剤の再生不足による冷凍能力の低下が防止できる。
【0013】
また、再生用の熱源不足を補うため、別途熱媒を加熱するための熱源機を設ける必要が無く、消費エネルギーの省力化を図ることができる。また、前記圧縮機は前記吸着器に供給される熱媒の熱量が不足した際に運転すればよく、冷凍能力を満足している限り圧縮機を停止しておくことができ、消費エネルギーが省力化できる。
【0014】
さらに、通常の吸着式冷凍機では冷水温度を安定させるため吸着剤の吸着能力に余裕を持たせた時間間隔(5分〜20分程度)で2槽の吸着器の切り換えタイミングを決定しているが、本吸着式冷凍システムでは圧縮機を併用運転しているため、この切り換えの時間間隔を長くすることが可能となる。そうすることで切り換え時の予冷・予熱の消費エネルギーのロスを防止することができるとともに、設備の寿命を延ばすことができるようになる。
【0015】
請求項2に係る本発明として、吸着剤を内蔵し冷媒の吸着槽又は脱着槽として機能するとともに、少なくとも吸着剤の再生用の熱媒が流通する再生用流路を備えた2槽一組の吸着器と、前記各吸着器と連通可能な流路を備えた蒸発器と、前記各吸着器と連通可能な流路を備えるとともに、凝縮した冷媒を前記蒸発器に送給する流路を備えた凝縮器とを含み、
一方の吸着器を吸着槽として機能させ、他方の吸着器を脱着槽として機能させるとともに、前記蒸発器と一方の吸着器とを連通させ、前記他方の吸着器と凝縮器とを連通させる運転モードと、一方の吸着器を脱着槽として機能させ、他方の吸着器を吸着槽として機能させるとともに、前記蒸発器と他方の吸着器とを連通させ、前記一方の吸着器と凝縮器とを連通させる運転モードとが交互に切り換えられる吸着式冷凍システムであって、
前記凝縮器と連通可能な流路を備えるとともに、凝縮した冷媒を前記蒸発器に送給する流路を備えた第2凝縮器が配設され、前記凝縮器と第2凝縮器とを連結する流路の途中に流通する冷媒を圧縮する圧縮機が配設されるとともに、前記吸着器に供給される熱媒が前記第2凝縮器内の熱交換器を巡って該吸着器に供給される流路が形成され、前記吸着器に供給される熱媒の熱量が不足した際、前記圧縮機の運転制御により圧縮した冷媒を前記第2凝縮器に供給可能としたことを特徴とする吸着式冷凍システムが提供される。
【0016】
上記請求項2記載の発明は、本発明に係る吸着式冷凍システムの第2形態例であり、従来の2槽一組の吸着器、蒸発器及び凝縮器からなる吸着式冷凍システムに対し、凝縮器と連通可能な流路を備えるとともに、凝縮した冷媒を蒸発器に送給する流路を備えた第2凝縮器を配設し、前記凝縮器と第2凝縮器とを連結する流路の途中に流通する冷媒を圧縮する圧縮機を配設し、且つ吸着器に供給される熱媒が第2凝縮機内の熱交換器を巡って該吸着器に供給される流路を形成し、吸着器に供給される熱媒の熱量が不足した際、圧縮機の運転制御により圧縮した冷媒を第2凝縮器に供給可能としたものである。このように、凝縮器内の冷媒蒸気が圧縮機による加圧に伴い温度上昇して第2凝縮器に供給されるため、第2凝縮機内の熱交換器を巡る熱媒が加熱され、吸着材の再生が促進される結果、冷凍能力の低下が防止できる。
【0017】
請求項3に係る本発明として、吸着剤を内蔵し冷媒の吸着槽又は脱着槽として機能するとともに、少なくとも吸着剤の再生用の熱媒が流通する再生用流路を備えた2槽一組の吸着器と、前記各吸着器と連通可能な流路を備えた蒸発器と、前記各吸着器と連通可能な流路を備えるとともに、凝縮した冷媒を前記蒸発器に送給する流路を備えた凝縮器とを含み、
一方の吸着器を吸着槽として機能させ、他方の吸着器を脱着槽として機能させるとともに、前記蒸発器と一方の吸着器とを連通させ、前記他方の吸着器と凝縮器とを連通させる運転モードと、一方の吸着器を脱着槽として機能させ、他方の吸着器を吸着槽として機能させるとともに、前記蒸発器と他方の吸着器とを連通させ、前記一方の吸着器と凝縮器とを連通させる運転モードとが交互に切り換えられる吸着式冷凍システムであって、
前記蒸発器で蒸発した冷媒の一部を前記凝縮器に導入する流路が形成されるとともに、この流路の途中に流通する冷媒を圧縮する圧縮機が配設され、且つ前記凝縮器と連通可能な流路を備えるとともに、凝縮した冷媒を前記蒸発器に送給する流路を備えた第2凝縮器が配設され、前記凝縮器と第2凝縮器とを連結する流路の途中に流通する冷媒を圧縮する第2圧縮機が配設されるとともに、前記吸着器に供給される熱媒が前記第2凝縮器内の熱交換器を巡って該吸着器に供給される流路が形成され、前記吸着器に供給される熱媒の熱量が不足した際、前記圧縮機及び/又は第2圧縮機の運転制御により圧縮した冷媒を前記凝縮器及び/又は第2凝縮器に供給可能としたことを特徴とする吸着式冷凍システムが提供される。
【0018】
上記請求項3記載の発明は、本発明に係る吸着式冷凍システムの第3形態例であり、上記第1形態例と第2形態例とを組み合わせ、両運転の選択・併用を可能としたものである。
【0019】
請求項4に係る本発明として、前記蒸発器には、前記吸着器に供給される熱媒の熱量が不足した状態か否かを判別するため、該蒸発器内の圧力を検知する圧力計が設置されている請求項1〜3いずれかに記載の吸着式冷凍システムが提供される。
【0020】
上記請求項4記載の発明では、吸着器に供給される熱媒の熱量が不足した状態か否かを判別するため、前記蒸発器に該蒸発器内の圧力を検知する圧力計を設置することにより、蒸発器内を冷媒が蒸発可能となる冷媒温度に見合った所定の圧力以下となるように圧縮機の運転制御をすることができるようになる。
【0021】
請求項5に係る本発明として、前記圧縮機及び/又は第2圧縮機は、ルーツ式圧縮機である請求項1〜4いずれかに記載の吸着式冷凍システムが提供される。
【0022】
上記請求項5記載の発明では、前記圧縮機及び/又は第2圧縮機として、ルーツ式圧縮機を用いることにより、設備の小型化及び消費エネルギーの省力化を図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上詳説のとおり本発明によれば、冷凍能力の低下を防止するとともに、消費エネルギーの省力化を図った吸着式冷凍システムが提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1形態例に係る吸着式冷凍システム1Aのシステム構成図である。
【図2】本発明の第2形態例に係る吸着式冷凍システム1Bのシステム構成図である。
【図3】本発明の第3形態例に係る吸着式冷凍システム1Cのシステム構成図である。
【図4】従来の吸着式冷凍機50のシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔第1形態例〕
以下、本発明の第1形態例について図1を参照しながら詳述する。
【0026】
第1形態例に係る吸着式冷凍システム1Aは、図1に示されるように、吸着剤を内蔵し冷媒の吸着槽又は脱着槽として機能する2槽一組の吸着器2a、2bと、前記各吸着器2a、2bと連通可能な流路を備えた蒸発器3と、前記各吸着器2a、2bと連通可能な流路を備えるとともに、凝縮した冷媒を前記蒸発器3に送給する流路9を備えた凝縮器4とを含む密閉系とされている。前記蒸発器3と各吸着器2a、2bとの間の流路にはそれぞれ第1バルブ5及び第2バルブ6が介在され、前記凝縮器4と各吸着器2a、2bとの間の流路にはそれぞれ第3バルブ7及び第4バルブ8が介在されている。前記吸着器2a、2bにはそれぞれ、吸着剤の再生(脱着)時に吸着剤を加熱して吸着した冷媒を脱着させる吸着剤再生用の熱媒が流通する再生用流路10及び吸着剤の吸着時に吸着剤を冷却して冷媒の吸着を促進させる吸着剤冷却用の冷却水が流通する冷却用流路11が備えられている。また、前記蒸発器3には、冷水などの冷媒が流通する熱交換器12が配設され、蒸発器3内の冷媒の蒸発に伴う気化熱によって熱交換器12内の冷媒が冷却され、冷熱が製造されている。一方、前記凝縮器4には、冷却塔などで製造された冷却水が流通する熱交換器13が配設され、この熱交換器13が凝縮器4内の冷媒蒸気と接触することにより冷媒蒸気から冷水への凝縮が行われている。
【0027】
かかる吸着式冷凍システム1Aは、一方の吸着器2aを吸着槽として機能させ、他方の吸着器2bを脱着槽として機能させるとともに、前記第1バルブ5を閉、第2バルブ6を開として蒸発器3と一方の吸着器2aとを連通させ、前記第3バルブ7を開、第4バルブ8を閉として他方の吸着器2bと凝縮器4とを連通させる運転モードと、一方の吸着器2aを脱着槽として機能させ、他方の吸着器2bを吸着槽として機能させるとともに、前記第1バルブ5を開、第2バルブ6を閉として蒸発器3と他方の吸着器2bとを連通させ、前記第3バルブ7を閉、第4バルブ8を開として一方の吸着器2aと凝縮器4とを連通させる運転モードとが交互に切り換えられるように運転されている。
【0028】
さらに本第1形態例では、蒸発器3で蒸発した冷媒蒸気の一部を取り出して凝縮器4に導入する流路20が形成されるとともに、この流路20の途中に流通する冷媒蒸気を圧縮する圧縮機21が配設されている。また、前記流路20の蒸発器3及び凝縮器4の近傍にはそれぞれ、バルブ22、23が設けられている。
【0029】
そして、本吸着式冷凍システム1Aでは、前記吸着器2a又は2bに供給される熱媒の熱量が不足した際、前記圧縮機21の運転制御により圧縮した冷媒が前記凝縮器4に供給可能とされている。
【0030】
従って、再生用流路10を流通する熱媒の熱量が不足し、脱着槽として機能する吸着器に内蔵される吸着剤の再生が十分に行われないために、吸着槽として機能する吸着器に内蔵された吸着剤の吸着量が低下した場合であっても、圧縮機21の運転制御により蒸発器3内の冷媒蒸気が前記流路20を通って凝縮器4に送給されるため、蒸発器3内の圧力上昇が抑えられる。これにより、蒸発器3内の圧力が上昇し冷媒が蒸発し難くなって気化熱の発生が抑制され冷熱の温度が上昇する、という事態が防止できる。この結果、吸着剤の冷凍能力の低下が防止できる。
【0031】
また、再生用の熱源不足を補うため、別途熱媒を加熱するための熱源機を設ける必要が無く、熱源機などの稼働のための消費エネルギーが省力化できる。また、前記圧縮機21は吸着器に供給される熱媒の熱量が不足した際に運転し、冷凍能力を満足している限り圧縮機21を停止しておくことも可能であるので、消費エネルギーが省力化できる。
【0032】
さらに、蒸発器3から取り出される冷媒は、圧縮機21によって圧縮され凝縮器4に供給されるため、この圧縮に伴って冷媒の温度が上昇する結果、凝縮器4での凝縮効率が向上する。このような観点から、吸着器2a、2bに供給される熱媒の熱量が満足している状態においても、圧縮機21を運転制御して圧縮した冷媒を凝縮器4に供給し、冷凍能力の向上を図ることも可能である。
【0033】
一方、前記運転モードの切り換えは、通常、吸着剤の吸着能力に余裕を持たせた時間間隔(5分〜20分程度)で2槽の吸着器2a、2bの切り換え及び各バルブ5〜8の開閉状態が制御されているが、本吸着式冷凍システム1Aでは蒸発器3の冷媒を凝縮器4に供給可能としているため、通常の時間間隔より長くすることができる。これにより吸着剤の切り換え時の予冷・予熱のためのエネルギーロスが少なくて済み熱効率が向上するとともに、システムの寿命を延ばすことができるようになる。具体的な運転モード切り換えの時間間隔は、およそ10分〜30分とすることができる。
【0034】
前記圧縮機21は、前述の通り、吸着器2a、2bに供給される熱媒の熱量が不足した際に運転される。このため前記蒸発器3には、吸着器2a、2bに供給される熱媒の熱量が不足した状態か否かを判別するため、該蒸発器3内の蒸気圧力を検知する圧力計(図示せず)及び該蒸発器3内に溜まった冷媒(水)の温度を検知する温度計(図示せず)を設置することが好ましい。この圧力計により検知された圧力に基づいて、温度計により検知された冷媒温度に見合った所定の圧力以下になるように圧縮機21を運転制御することによって冷却能力不足を補うことができる。前記蒸発器3内の圧力は、例えば冷媒温度が7℃で1.0kPa以下、20℃で2.3kPa以下(絶対圧力)となるようにすることが好ましい。
【0035】
前記圧縮機21は、インバータにより回転数制御可能なものを用いることが好ましく、蒸発器3内の圧力に応じて所定の回転数に制御する。また、前記圧縮機21の吸込側及び吐出側にはそれぞれバルブ22、23が設けられ、各バルブ22、23の開度を調整することによって、流路20の流量及び圧力が制御されている。
【0036】
前記圧縮機21は、ルーツ式(ロータリー式)、レシプロ式、スクリュー式、スクロール式、ターボ式など各種型式のものを用いることができる。特に、前記ルーツ式圧縮機を用いることにより、システムの小型化、省電力化を図ることができる。
【0037】
ところで、前記吸着器2a、2b、蒸発器3、凝縮器4及び流路20を循環する冷媒は、水、アンモニア、炭化水素等の自然冷媒であることが好ましく、特に本吸着式冷凍システム1Aでは水であることが望ましい。
【0038】
前記吸着器2a、2bに供給される熱媒は、ボイラーや焼却炉、エンジンなどの排熱や太陽熱を利用して加熱されたものとすることが望ましい。
【0039】
前記吸着器2a、2bに供給される冷却水と凝縮器4に供給される冷却水とは、別々の冷却装置から供給されるものでもよいが、図1に示されるように、冷却塔を介して前記吸着器2a、2bに供給される冷却水と凝縮器4に供給される冷却水とが循環するように構成することが好ましい。
【0040】
〔第2形態例〕
第2形態例に係る吸着式冷凍システム1Bは、図2に示されるように、上記第1形態例に係る吸着式冷凍システム1Aと比較して、流路20を形成するとともにこの流路20の途中に圧縮機21を配設する構成に代えて、バルブ33を介して凝縮器4と連通可能な流路31を備えるとともに、凝縮した冷媒を蒸発器3に送給する流路32を備えた第2凝縮器30を配設し、前記凝縮器4と第2凝縮器30とを連結する流路31の途中に、流通する冷媒を圧縮する第2圧縮機34を配設するとともに、前記吸着器2a、2bに供給される熱媒が第2凝縮器30内の熱交換器36を巡って該吸着器2a、2bに供給される流路35を形成することにより、前記吸着器2a、2bに供給される熱媒の熱量が不足した際の冷凍能力の低下防止を図るようにしたものである。
【0041】
具体的には、前記吸着器2a、2bに供給される熱媒の熱量が不足した際、前記第2圧縮機34の運転制御により圧縮した冷媒を前記第2凝縮器30に供給可能としている。
【0042】
このように、凝縮器を2段にして、第1段目の凝縮器4内の冷媒蒸気を第2圧縮機34で加圧して第2段目の第2凝縮器30に供給することにより、第2圧縮機34の加圧に伴い冷媒が温度上昇するため、第2凝縮器30内の熱交換器36を巡る熱媒が加熱され、吸着剤の再生が促進される結果、冷凍能力の低下が防止できる。
【0043】
このような第2圧縮機34の運転及び熱媒の熱交換器36への巡回を開始するのは、吸着器2a、2bにおける熱媒が流通する再生用流路10の入口側に、熱媒の温度を検知する温度計(図示せず)を備えておき、この検知温度が60℃を下回ったタイミングとすることができる。なお、吸着器2a、2bに供給される熱媒の熱量が満足する場合であっても、第2圧縮機34の運転及び熱媒の熱交換器36への巡回を行い、冷凍能力の向上を図ることもできる。
【0044】
〔第3形態例〕
第3形態例に係る吸着式冷凍システム1Cは、図3に示されるように、上記第1形態例に係る吸着式冷凍システム1A及び第2形態例に係る吸着式冷凍システム1Bを組み合わせ、両運転の選択・併用を可能としたものである。
【0045】
具体的には、上記2槽一組の吸着器2a、2b、蒸発器3及び凝縮器4からなる吸着式冷凍システムに対し、蒸発器3で蒸発した冷媒の一部を凝縮器4に導入する流路20を形成するとともに、この流路20の途中に流通する冷媒を圧縮する圧縮機21を配設し、且つ凝縮器4と連通可能な流路31を備えるとともに、凝縮した冷媒を蒸発器3に送給する流路32を備えた第2凝縮器30を配設し、前記凝縮器4と第2凝縮器30とを連通する流路の途中に流通する冷媒を圧縮する第2圧縮機34を配設するとともに、前記吸着器に供給される熱媒が前記第2凝縮器30内の熱交換器36を巡って該吸着器に供給される流路35を形成し、前記吸着器2a、2bに供給される熱媒の熱量が不足した際、前記圧縮機21及び/又は第2圧縮機34の運転制御により圧縮した冷媒を前記凝縮器4及び/又は第2凝縮器30に供給可能としたものである。
【0046】
このように、上記第1形態例及び第2形態例の各システムを組み合わせることにより、各システムを選択的に運転することもできるし、両システムを同時に運転することもできる。特に両システムを併用した場合には、蒸発器3内の蒸発効率の向上と吸着剤の再生効率の向上との相乗効果により冷凍能力が各段に向上するようになる。
【符号の説明】
【0047】
1A・1B・1C…吸着式冷凍システム、2a・2b…吸着器、3…蒸発器、4…凝縮器、5…第1バルブ、6…第2バルブ、7…第3バルブ、8…第4バルブ、9…流路、10…再生用流路、11…冷却用流路、12・13…熱交換器、20…流路、21…圧縮機、30…第2凝縮器、31・32…流路、34…第2圧縮機、36…熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着剤を内蔵し冷媒の吸着槽又は脱着槽として機能するとともに、少なくとも吸着剤の再生用の熱媒が流通する再生用流路を備えた2槽一組の吸着器と、前記各吸着器と連通可能な流路を備えた蒸発器と、前記各吸着器と連通可能な流路を備えるとともに、凝縮した冷媒を前記蒸発器に送給する流路を備えた凝縮器とを含み、
一方の吸着器を吸着槽として機能させ、他方の吸着器を脱着槽として機能させるとともに、前記蒸発器と一方の吸着器とを連通させ、前記他方の吸着器と凝縮器とを連通させる運転モードと、一方の吸着器を脱着槽として機能させ、他方の吸着器を吸着槽として機能させるとともに、前記蒸発器と他方の吸着器とを連通させ、前記一方の吸着器と凝縮器とを連通させる運転モードとが交互に切り換えられる吸着式冷凍システムであって、
前記蒸発器で蒸発した冷媒の一部を前記凝縮器に導入する流路が形成されるとともに、この流路の途中に流通する冷媒を圧縮する圧縮機が配設され、前記吸着器に供給される熱媒の熱量が不足した際、前記圧縮機の運転制御により圧縮した冷媒を前記凝縮器に供給可能としたことを特徴とする吸着式冷凍システム。
【請求項2】
吸着剤を内蔵し冷媒の吸着槽又は脱着槽として機能するとともに、少なくとも吸着剤の再生用の熱媒が流通する再生用流路を備えた2槽一組の吸着器と、前記各吸着器と連通可能な流路を備えた蒸発器と、前記各吸着器と連通可能な流路を備えるとともに、凝縮した冷媒を前記蒸発器に送給する流路を備えた凝縮器とを含み、
一方の吸着器を吸着槽として機能させ、他方の吸着器を脱着槽として機能させるとともに、前記蒸発器と一方の吸着器とを連通させ、前記他方の吸着器と凝縮器とを連通させる運転モードと、一方の吸着器を脱着槽として機能させ、他方の吸着器を吸着槽として機能させるとともに、前記蒸発器と他方の吸着器とを連通させ、前記一方の吸着器と凝縮器とを連通させる運転モードとが交互に切り換えられる吸着式冷凍システムであって、
前記凝縮器と連通可能な流路を備えるとともに、凝縮した冷媒を前記蒸発器に送給する流路を備えた第2凝縮器が配設され、前記凝縮器と第2凝縮器とを連結する流路の途中に流通する冷媒を圧縮する圧縮機が配設されるとともに、前記吸着器に供給される熱媒が前記第2凝縮器内の熱交換器を巡って該吸着器に供給される流路が形成され、前記吸着器に供給される熱媒の熱量が不足した際、前記圧縮機の運転制御により圧縮した冷媒を前記第2凝縮器に供給可能としたことを特徴とする吸着式冷凍システム。
【請求項3】
吸着剤を内蔵し冷媒の吸着槽又は脱着槽として機能するとともに、少なくとも吸着剤の再生用の熱媒が流通する再生用流路を備えた2槽一組の吸着器と、前記各吸着器と連通可能な流路を備えた蒸発器と、前記各吸着器と連通可能な流路を備えるとともに、凝縮した冷媒を前記蒸発器に送給する流路を備えた凝縮器とを含み、
一方の吸着器を吸着槽として機能させ、他方の吸着器を脱着槽として機能させるとともに、前記蒸発器と一方の吸着器とを連通させ、前記他方の吸着器と凝縮器とを連通させる運転モードと、一方の吸着器を脱着槽として機能させ、他方の吸着器を吸着槽として機能させるとともに、前記蒸発器と他方の吸着器とを連通させ、前記一方の吸着器と凝縮器とを連通させる運転モードとが交互に切り換えられる吸着式冷凍システムであって、
前記蒸発器で蒸発した冷媒の一部を前記凝縮器に導入する流路が形成されるとともに、この流路の途中に流通する冷媒を圧縮する圧縮機が配設され、且つ前記凝縮器と連通可能な流路を備えるとともに、凝縮した冷媒を前記蒸発器に送給する流路を備えた第2凝縮器が配設され、前記凝縮器と第2凝縮器とを連結する流路の途中に流通する冷媒を圧縮する第2圧縮機が配設されるとともに、前記吸着器に供給される熱媒が前記第2凝縮器内の熱交換器を巡って該吸着器に供給される流路が形成され、前記吸着器に供給される熱媒の熱量が不足した際、前記圧縮機及び/又は第2圧縮機の運転制御により圧縮した冷媒を前記凝縮器及び/又は第2凝縮器に供給可能としたことを特徴とする吸着式冷凍システム。
【請求項4】
前記蒸発器には、前記吸着器に供給される熱媒の熱量が不足した状態か否かを判別するため、該蒸発器内の圧力を検知する圧力計が設置されている請求項1〜3いずれかに記載の吸着式冷凍システム。
【請求項5】
前記圧縮機及び/又は第2圧縮機は、ルーツ式圧縮機である請求項1〜4いずれかに記載の吸着式冷凍システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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