説明

吸着性ポリマーおよびその製造方法

【課題】半金属や金属に対して優れた吸着能を有し、しかも吸着容量により優れた吸着性ポリマーの製造方法を提供する。
【解決手段】ラジカル重合性モノマーをラジカル重合する吸着性ポリマーの製造方法は、ラジカル活性点の生成が可能な高分子粒子に放射線を照射してラジカル重合開始剤を作成する照射工程、ラジカル重合性モノマーを含む溶液に上記ラジカル重合開始剤を添加する添加工程、ラジカル重合性モノマーをラジカル重合させる重合工程、および、重合工程で得られたポリマーに、吸着性官能基を導入する導入工程を含む。上記高分子粒子の最大径が1〜50μmであることがより好ましく、上記高分子粒子がセルロース粒子であることがより好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着性ポリマーおよびその製造方法に関する。より詳細には、本発明は、例えば微小なセルロース粒子等の、ラジカル活性点の生成が可能な高分子粒子からなるラジカル重合開始剤を用いて合成されるポリマーおよびその製造方法に関し、特に、そのポリマーに対して吸着性官能基を導入してなる吸着性ポリマーおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラジカル重合性モノマーのラジカル重合においては、ジ−tert−ブチルペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド等の有機過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物を熱分解させることによってラジカルを発生させ、当該ラジカルを重合開始剤とする方法が知られている。ところが、これら化合物は不安定であって爆発性を有する等の危険性を伴うと共に、高価であるので製造コストが嵩む等、欠点が多い。また、過酸化水素と鉄塩、過硫酸塩と亜硫酸塩等、酸化剤と還元剤とを組み合わせてなるレドックス開始剤によってラジカルを発生させることにより、ラジカル重合を開始させる方法も知られている。ところが、レドックス開始剤も保管段階や反応段階で爆発性を有する等の危険性を伴う。
【0003】
また、近年、紫外線や放射線の照射を受けてカチオンやアニオン、ラジカルを発生させる光重合開始剤を用いた重合反応の研究も盛んに行われている。しかしながら、産業上で利用可能な光重合開始剤は、メンゾイン系化合物やチタノセン系化合物等であり、これら化合物もまた、有害で危険性を伴う。それゆえ、これら化合物の大量使用は、環境に対する負担を大きくしてしまう。
【0004】
尚、放射線を用いない乳化重合やグラフト重合も種々提案されている(例えば、特許文献3を参照)。ところが、これら方法は、重合開始剤を慎重に滴下しなければならない、丁寧な反応管理が必要である等の問題を有しており、工業的な方法として扱い難い。
【0005】
それゆえ、環境に対する負担が小さく、危険性を伴わないラジカル重合開始剤が求められている。
【0006】
一方、ホウ素やゲルマニウム等の半金属は、幅広い分野で用いられていることから工業廃水中によく含まれている。係る半金属は、半導体としての性質を有し、いわゆるハイテク産業等における新素材開発に不可欠な元素群であるため、工業廃水から回収することが望まれている。これら半金属の工業廃水からの回収方法としては、凝集沈殿法、イオン交換吸着法、キレート吸着法を始めとする幾つかの吸着方法が知られている。これら吸着方法の中で、選択吸着性を有するキレート吸着法は、ホウ素やゲルマニウムが、糖鎖やアルコール類等の水酸基を複数含有する化合物(ポリヒドロキシ化合物)と錯体を形成する性質を利用した方法である。具体的には、上記化合物として、水酸基を含む官能基を不溶性の高分子に導入した樹脂、例えばメチルグルカミン基を導入したポリスチレン系吸着樹脂を用いた吸着材等が提案されている。しかしながら、このポリスチレン系キレート吸着樹脂は、マトリックスが疎水性であるため、ホウ素やゲルマニウムの吸着速度が低い、吸着容量が十分でないという欠点を有している。さらに、現在市販されているメチルグルカミン型のポリスチレン系キレート吸着樹脂は、製法が複雑で高価である、石油を原材料とした樹脂であるため廃棄後に処理し難い等の問題がある。
【0007】
これに対し、自然界に最も多く存在する多糖類であり、安価で再生可能な資源として様々な分野で広く使われているセルロースは、構造的に親水性の水酸基を多数有するポリヒドロキシ化合物であることから、グルカミン型のセルロース系キレート吸着樹脂としての開発が提案されている(例えば、非特許文献1を参照)。しかし、非特許文献1で報告されているグルカミン型のセルロース系キレート吸着樹脂は、基材を化学的に活性化してグラフトさせる化学グラフト法により製造されるため、グラフト率が低く、グルカミン官能基密度が低いという問題がある。さらに化学的方法を用いることから、製造プロセスの安全性や取り扱い性等の問題がある。
【0008】
また、ポリオレフィンやポリテトラフルオロエチレン等の基材に、ホウ素捕集機能を有する官能基を含むモノマーを、放射線を照射してグラフト重合することにより形成されたホウ素捕集材料が提案されている(特許文献1を参照)。ところが、このホウ素捕集材料は基材が疎水性であるため、ホウ素の吸着速度が低い、吸着容量が十分でないという欠点を有している。
【0009】
そこで、結晶化度が80%以上のセルロースを主成分とする粒子状セルロース系基材に放射線を照射し、疎水性モノマーをグラフト重合することによってグラフト鎖を導入し、このグラフト鎖にキレート形成基および/またはイオン交換基を結合してなる粒子状セルロース系吸着材が提案されている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−337749号公報(2004年12月2日公開)
【特許文献2】特開2009−13204号公報(2009年1月22日公開)
【特許文献3】特開平10−330440号公報(1998年12月15日公開)
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】犬飼吉成(Y.Inukai)、外9名, 「グルカミン型セルロース系誘導体を用いたホウ素の除去(Removal of boron(III) by N-methylglucamin-type cellulose derivatives with higher adsorption rate)」(2004), Analytical Chimica Acta, Vol.51 P261-265. (Elsevier Science)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献2に記載の粒子状セルロース系吸着材は、基材が親水性であるため、ホウ素やゲルマニウム、ヒ素等の半金属や、金属に対して優れた吸着能を有している。しかしながら、当該粒子状セルロース系吸着材は、放射線を用いたグラフト重合を行っており、核として粒子状セルロース系基材を用いているので、その分、グラフト鎖の量が少なく、粒子状セルロース系吸着材の単位重量に占めるキレート形成基および/またはイオン交換基の量を十分に多くして吸着容量をより多くするためには、更なる改善が必要である。
【0013】
つまり、ホウ素やゲルマニウム、ヒ素等の半金属や、金属に対して優れた吸着能を有し、しかも吸着容量により優れた吸着性ポリマーが求められている。
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、環境に対する負担が小さく、危険性を伴わないラジカル重合開始剤を提供すると共に、当該ラジカル重合開始剤を用いて合成されるポリマーおよびその製造方法、特に、そのポリマーに対して吸着性官能基を導入することにより、半金属や金属に対して優れた吸着能を有し、しかも吸着容量により優れた吸着性ポリマーおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明者は、粒子状セルロース系基材を用いて放射線を照射し、疎水性モノマーをグラフト重合する代わりに、ラジカル活性点の生成が可能な高分子粒子に放射線を照射してラジカル重合開始剤を作成し、当該ラジカル重合開始剤を用いてラジカル重合性モノマーをラジカル重合させることにより、半金属や金属に対して優れた吸着能を有し、しかも吸着容量により優れた吸着性ポリマーの製造方法を提供することができることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0016】
本発明に係る吸着性ポリマーの製造方法は、上記課題を解決するために、ラジカル重合性モノマーをラジカル重合する吸着性ポリマーの製造方法であって、ラジカル活性点の生成が可能な高分子粒子に放射線を照射してラジカル重合開始剤を作成する照射工程、ラジカル重合性モノマーを含む溶液に上記ラジカル重合開始剤を添加する添加工程、ラジカル重合性モノマーをラジカル重合させる重合工程、を含むことを特徴としている。
【0017】
上記の方法によれば、高分子粒子に放射線を照射することにより、環境に対する負担が小さく、危険性を伴わないラジカル重合開始剤を作成し、当該ラジカル重合開始剤を用いてラジカル重合性モノマーをラジカル重合させる。このため、基材として高分子粒子が用いられることはなく、従って、その分(例えば、特許文献2に記載の粒子状セルロース系吸着材と比較して、核となる基材が存在しないため)、吸着性ポリマーに占めるラジカル重合性モノマーの重合体の量を多くすることができる。それゆえ、ポリマーに吸着性官能基をより多く導入することができるので、半金属や金属に対して優れた吸着能を有し、しかも吸着容量により優れた吸着性ポリマーの製造方法を提供することができる。
【0018】
本発明に係る吸着性ポリマーの製造方法は、上記高分子粒子がセルロース粒子、ポリエチレン粒子、ポリプロピレン粒子、または、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)粒子であることがより好ましい。セルロース粒子は代表的な放射線分解型高分子であるため、従来、セルロース粒子や、上記のような疎水性ポリマーに放射線を照射してラジカル重合開始剤を作成するという発想自体が当業者には存在してなかったのに対して、本発明者は、セルロース粒子や、上記のような疎水性ポリマーに通常では活性化に到底足りない低線量の放射線を照射することにより、ラジカル活性点が生成されることを見出した。これにより、工業的に使用しても環境に対する負担が小さく、危険性を伴わないラジカル重合開始剤を、より効率的に作成することができる。
【0019】
本発明に係る吸着性ポリマーの製造方法は、上記溶液が界面活性剤を含んでいることがより好ましい。これにより、ラジカル重合性モノマーを乳化重合させることができるので、反応溶液中のラジカル重合性モノマーの濃度を高くすることができ、反応効率を向上させることができる。
【0020】
本発明に係る吸着性ポリマーの製造方法は、上記ラジカル重合性モノマーがエポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーであることがより好ましい。これにより、ポリマーに吸着性官能基をより多く導入することができるので、吸着容量をより多くすることができる。また、吸着性ポリマーをより安価に製造することができる。
【0021】
本発明に係る吸着性ポリマーの製造方法は、重合工程で得られたポリマーに、吸着性官能基を導入する導入工程を含むことがより好ましい。これにより、より優れた吸着能を有し、しかも吸着容量により優れた吸着性ポリマーを製造することができる。
【0022】
本発明に係る吸着性ポリマーは、上記課題を解決するために、上記の製造方法によって製造されたことを特徴としている。
【0023】
上記の構成によれば、ポリマーに吸着性官能基をより多く導入することができるので、半金属や金属に対して優れた吸着能を有し、しかも吸着容量により優れた吸着性ポリマーを提供することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る吸着性ポリマーの製造方法によれば、基材として高分子粒子が用いられることはなく、従って、その分、吸着性ポリマーに占めるラジカル重合性モノマーの重合体の量を多くすることができる。それゆえ、ポリマーに吸着性官能基をより多く導入することができるので、半金属や金属に対して優れた吸着能を有し、しかも吸着容量により優れた吸着性ポリマーの製造方法を提供することができるという効果を奏する。
【0025】
また、本発明に係る吸着性ポリマーによれば、ポリマーに吸着性官能基をより多く導入することができるので、半金属や金属に対して優れた吸着能を有し、しかも吸着容量により優れた吸着性ポリマーを提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る吸着性ポリマーの製造方法は、ラジカル活性点の生成が可能な高分子粒子に放射線を照射してラジカル重合開始剤を作成する照射工程、ラジカル重合性モノマーを含む溶液に上記ラジカル重合開始剤を添加する添加工程、ラジカル重合性モノマーをラジカル重合させる重合工程、を少なくとも含んでいる。
【0027】
以下、本発明の実施の一形態について、詳細に説明する。
【0028】
<ラジカル重合性モノマー>
ラジカル重合性モノマーは、ラジカル重合開始剤によって重合を開始するモノマーであればよく、特に限定されるものではないが、炭素−炭素二重結合を有する不飽和モノマーであるエチレン性不飽和モノマーであることがより好ましい。エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマー、スチレンやクロロスチレン等のスチレン誘導体が挙げられる。そして、エチレン性不飽和モノマーの中でも、吸着性官能基を導入することができるように、当該吸着性官能基を有する化合物と反応可能な官能基を有するエポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーであることがさらに好ましい。
【0029】
上記エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、下記一般式
【0030】
【化1】

【0031】
で表される構造を有するモノマーが好適である。前記一般式において、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい飽和炭化水素基または水素原子を示す。中でも、R、R、R、R、RおよびRは、炭素数1〜6のアルキル基または水素原子であることがより好ましい。また、該飽和炭化水素基は、一部の炭素原子が、O、N、P、SまたはSiで置換されていてもよい。飽和炭化水素基が有していてもよい置換基としては特に限定されるものではなく、例えば、アリール基、アルキル基、アルカノイル基、オキソ基(=O)、エポキシ基等を挙げることができる。前記一般式において、Aは、置換基を有していてもよい飽和炭化水素鎖、即ち、置換基を有していてもよい二価の飽和炭化水素基を示す。中でも、置換基を有していてもよい炭素数1〜6の二価の飽和炭化水素基がより好ましい。また、該飽和炭化水素鎖は、一部の炭素原子が、O、N、P、SまたはSiで置換されていてもよい。飽和炭化水素鎖が有していてもよい置換基としては特に限定されるものではなく、例えば、アリール基、アルキル基、アルカノイル基、オキソ基、エポキシ基等を挙げることができる。また、前記一般式において、nは0または1である。中でも、Aは、炭素数が1〜2の飽和炭化水素鎖、または、該飽和炭化水素鎖中に少なくとも一つのオキシ基(−O−)を含むものであることがより好ましい。また、置換基として、オキソ基等を有するものであることがより好ましい。
【0032】
より具体的には、エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、クロトン酸グリシジル、イソクロトン酸グリシジル、ペンテン酸グリシジル、ヘキサン酸グリシジル、ヘプテン酸グリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アクリル酸2−メチルオキシシラニルメチルのエステル類、アリルグリシジルエーテル、グリシジルビニルエーテルのエーテル類が挙げられる。これらエポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーは、一種類のみを用いてもよいし、二種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。これらエポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーは比較的安価であり、工業的に入手が容易である。
【0033】
また、エチレン性不飽和モノマーの一部として、エチレン性不飽和基を二つ以上有する多官能性モノマーを用いることもできる。当該多官能性モノマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール(400〜1000)ジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。エチレン性不飽和基を一つ有する単官能性モノマーに、エチレン性不飽和基を二つ以上有する多官能性モノマーを共存させることにより、ラジカル重合させると、架橋構造を備えたラジカル重合性モノマーの重合体を得ることができる。単官能性モノマーに対する多官能性モノマーの使用量は、1〜20モル%であることが好ましく、3〜10モル%であることがより好ましい。
【0034】
<高分子粒子>
高分子粒子は、放射線が照射されることによってラジカル活性点を生成することが可能な高分子からなる粒子であればよく、特に限定されるものではない。当該高分子としては、例えば、セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)等が挙げられる。この中でも、セルロースが好適である。つまり、高分子粒子として、セルロース粒子、ポリエチレン粒子、ポリプロピレン粒子、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)粒子等が挙げられ、セルロース粒子が特に好ましい。
【0035】
高分子粒子の形状は特に限定されるものではなく、球状、楕円状(いわゆるラグビーボール形状)、不定形破砕形状等の何れの形状であってもよいが、球状であることがより好ましく、多孔質の球状であればさらに好ましい。高分子粒子の最大径は、1〜50μmの範囲内がより好ましく、10〜30μmの範囲内がさらに好ましい。また、高分子粒子がセルロース粒子である場合におけるセルロースの結晶化度(結晶性部分の重量分率)は、特に限定されるものではないが、80%以上であることがより好ましく、特に、非結晶性部分を取り除いて精製した微結晶セルロースが特に好ましい。さらに、セルロースには、ラジカル活性点の生成を阻害しない範囲内において、ヘミセルロースやリグニン、スターチ等の他の成分が含まれていてもよい。尚、上記形状および最大径を有するセルロース粒子は、例えば旭化成ケミカルズ株式会社等から市販されている。
【0036】
<照射工程(放射線)>
上記高分子粒子に放射線を照射してラジカル重合開始剤を作成する照射工程において、高分子粒子に照射する放射線は、粒子線、電磁放射線を含み、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、電子線、X線であることがより好ましく、ガンマ線、電子線またはX線であることがより好ましい。中でも、工業的な生産性の観点から、例えばコバルト−60からのガンマ線、電子線加速器による電子線、X線等がより好適である。また、電子線加速器による電子線を用いる場合における当該電子線加速器としては、厚物の照射を行うことができる電子線加速器を用いることがより好ましく、加速電圧1MeV以上の、中エネルギーから高エネルギーの電子線加速器を好適に用いることができる。
【0037】
高分子粒子に放射線を照射してラジカル重合開始剤を作成する照射工程における上記放射線の照射線量は、高分子粒子に照射したときにラジカル活性点を生成させることができる線量であればよく、具体的には、1〜200kGyの範囲内が好ましく、10〜100kGyの範囲内がより好ましく、20〜50kGyの範囲内がさらに好ましい。電子線加速器による電子線を用いる場合、照射時に、上記高分子粒子を例えばプラスチックバッグの中に平板化して封着すれば、1MeV以下の中低エネルギー電子線加速器であっても電子線を透過させることができる。つまり、1MeV以下の中低エネルギー電子線加速器であっても、高分子粒子に照射したときにラジカル重合開始剤を作成させることができる。
【0038】
放射線の照射は、窒素ガス、ネオンガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことがより好ましい。これにより、高分子粒子のラジカル化をより効果的に行うことができる。
【0039】
照射工程を行うことにより、環境に対する負担が小さく、危険性を伴わないラジカル重合開始剤を提供することができる。当該ラジカル重合開始剤は、液体窒素下において数日間の保存が可能であるので、吸着性ポリマーの製造時にラジカル重合開始剤を毎回製造する必要は無い。また、過酸化物からなる重合開始剤と比較して安全であり、取り扱いも簡便である。
【0040】
<添加工程、重合工程>
上記ラジカル重合性モノマーを含む溶液に上記ラジカル重合開始剤を添加する添加工程において、ラジカル重合性モノマーを含む溶液には、より好ましくは乳化重合(エマルション重合)を行うことができるように、界面活性剤が含まれていることが望ましい。
【0041】
上記界面活性剤は、一般に乳化重合で用いられる通常の界面活性剤を用いることができ、特に限定されるものではない。界面活性剤としては、具体的には、例えば、アルキルポリオキシエチレンエーテル、S−アルキルポリオキシエチレンエーテル、アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル、N,N’−ジ(アルカノール)アルカンアミド、アミンオキシド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等の非イオン界面活性剤;セッケン、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸メチル、硫酸アルキル塩、硫酸アルキル(ポリオキシエチレン)塩、リン酸アルキル塩、N−アシルアミノ酸塩、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド、モノアルキルトリメチルアンモニウムクロリド等のイオン性界面活性剤;スルホベタイン、ベタイン等の両性界面活性剤が挙げられる。
【0042】
ラジカル重合性モノマーに対する界面活性剤の添加量は、特に限定されるものではないが、3〜10重量%の範囲内がより好ましく、3〜8重量%の範囲内がさらに好ましい。界面活性剤の添加量をこの範囲内にすることによって、重合工程(ラジカル重合)が効率的に進行するので、反応時間を短縮することができる。
【0043】
ラジカル重合性モノマーをラジカル重合させる重合工程においては、乳化重合を行うことがより好ましいことから、ラジカル重合性モノマーを含む溶液に含まれる溶媒は、水系溶媒であることが好ましく、イオン交換水や純水、超純水等の水がより好ましい。乳化重合を行うことにより、つまり、有機溶媒を使用しないので、吸着性ポリマーの製造に掛かるコストの低減、安全性の向上、環境に対する負荷の低減等を図ることができる。
【0044】
ラジカル重合性モノマーを含む溶液(反応溶液)における当該ラジカル重合性モノマーの濃度は、重合可能な濃度であればよく、特に限定されるものではないが、反応効率の面からはより高い方が好ましく、具体的には、10〜50重量%の範囲内がより好ましく、25〜35重量%の範囲内がさらに好ましい。
【0045】
また、上記溶液に添加されるラジカル重合開始剤の添加量、即ち、ラジカル重合性モノマーに対するラジカル重合開始剤の添加量は、製造する吸着性ポリマーの重合度(平均分子量)等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、具体的には、0.1〜10重量%の範囲内がより好ましく、1〜5重量%の範囲内がさらに好ましい。尚、上記溶液にラジカル重合開始剤を添加する具体的な添加方法は、特に限定されるものではないが、製造する吸着性ポリマーの重合度がより均一になるように、ラジカル重合開始剤の全量を一度に添加することが望ましい。
【0046】
ラジカル重合性モノマーをラジカル重合させる(より好ましくは乳化重合させる)重合工程における反応条件、即ち、反応時間や反応温度等は、ラジカル重合性モノマーの性質等によって大きく左右される。それゆえ、一律に規定することはできないものの、反応時間は、添加工程の終了後、つまり、ラジカル重合性モノマーおよび界面活性剤を含む溶液に上記ラジカル重合開始剤を添加した時点から、10分間〜10時間とすることがより好ましく、1時間〜3時間とすることがさらに好ましい。また、反応温度は、30〜90℃に設定することがより好ましく、40〜80℃に設定することがさらに好ましく、50〜60℃に設定することが特に好ましい。但し、反応時間や反応温度は、他の反応条件やラジカル重合性モノマーの性質等に応じて適宜設定すればよい。
【0047】
上記ラジカル重合(より好ましくは乳化重合)は、窒素ガスやネオンガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。これにより、反応溶液中のラジカルと酸素との反応を抑制することができる。また、溶液中のラジカルと溶存酸素との反応を抑制するために、ラジカル重合開始剤を溶液に添加する前に、当該溶液中の溶存酸素を、窒素ガスやネオンガス、アルゴンガス等の不活性ガスで置換しておくことが好ましい。
【0048】
本発明に係る吸着性ポリマーを重合工程後の反応溶液から取り出す(分離する)方法や洗浄方法は、特に限定されるものではなく、一般にポリマーの取出(分離)方法や洗浄方法において採用されている方法を採用することができる。
【0049】
<導入工程(吸着性官能基)>
重合工程で得られたポリマーに吸着性官能基を導入する導入工程において、ポリマーに吸着性官能基を導入するための化合物は、当該分子内に吸着性官能基を有し、例えばエポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーのポリマーが有するエポキシ基と反応可能な化合物であればよい。つまり、ポリマーに吸着性官能基を導入するための化合物は、ポリマーが有するエポキシ基と反応して、当該ポリマーに吸着性官能基を導入(結合)させることができる化合物であればよい。上記吸着性官能基としては、例えば、半金属や金属を吸着することができるキレート形成基またはイオン交換基が挙げられる。
【0050】
キレート形成基は、半金属、金属、或いは、アミノ酸やビタミン、タンパク質、核酸、糖等の生体高分子、イオン性染料等の親水性化合物のうち、少なくとも一つとキレートを形成する官能基であればよく、特に限定されるものではない。キレート形成基は、電子供与元素である窒素、硫黄、酸素およびリンからなる群より選ばれる元素を二つ以上含有していることがより好ましい。キレート形成基としては、具体的には、例えば、グルカミン基、ジオール基、ポリオール基(三つ以上のヒドロキシル基を有する基)、ポリオールと窒素原子とから構成される基、イミノジ酢酸基、ポリアミン基、アミドキシム基、ジチオカルバミン酸基、チオ尿素基、アミノリン酸基等が挙げられる。
【0051】
キレート形成基を導入することができる化合物としては、例えば、N−メチルグルカミン(N−メチル−D−(−)−グルカミン)、2,2’−イミノジエタノール、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、ジ−2−プロパノールアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、N−エチルジメタノールアミン等のジオール基含化合物等が挙げられる。
【0052】
イオン交換基は、半金属イオン、金属イオン、或いは、アミノ酸やビタミン、タンパク質、核酸、糖等の生体高分子、イオン性染料等の親水性化合物のうち、少なくとも一つを吸着、分離することができる官能基であればよく、特に限定されるものではない。本発明に係る吸着性ポリマーは、親水性に優れているため、生体高分子の吸着、分離に好適に用いることができる。また、酸性化合物や塩基性化合物の中和処理、或いは、無機化合物や有機化合物のイオン交換処理に用いることもできる。
【0053】
吸着対象が陽イオン(金属イオン)の場合には、イオン交換基として、酸性水酸基、カルボキシル基、スルホ基等の陽イオン交換基が好ましい。また、ポリマーに、亜硫酸塩やリン酸塩、イミノジ酢酸塩等を反応させて得られる基が好ましい。吸着対象が陰イオンの場合には、イオン交換基として、アミノ基、イミノ基、アンモニウム基等の陰イオン交換基が好ましい。また、ポリマーに、エチルアミンやプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、エチルメチルアミン、エチルプロピルアミン等のアミン系の有機低分子を反応させて得られる基も好ましい。吸着対象が半金属の場合には、ポリマーに、N−メチルグルカミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、N−エチルジメタノールアミン等のアミン系の有機低分子を反応させて得られる基が好ましい。
【0054】
ポリマーに吸着性官能基を導入する導入工程において用いる反応溶媒は、水系溶媒であることが好ましく、イオン交換水や純水、超純水等の水がより好ましい。
【0055】
ポリマーに吸着性官能基を導入する導入工程における反応条件、即ち、添加量や反応時間、反応温度等は、ポリマーの性質や、吸着性官能基を導入するための化合物の性質等によって大きく左右されるため、一律に規定することはできないものの、反応温度は30℃〜100℃の範囲内であることがより好ましい。また、導入工程は、窒素ガスやネオンガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。これにより、ポリマーに吸着性官能基を効率的に導入することができる。尚、用途に応じて、ポリマーにキレート形成基およびイオン交換基を両方導入してもよい。つまり、ポリマーに二種類以上の吸着性官能基を導入してもよい。
【0056】
本発明に係る吸着性ポリマーに含まれる吸着性官能基の量(密度)は、所望する吸着能や吸着容量、或いは用途に応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、1.0ミリモル/g以上であることがより好ましく、1.3ミリモル/g以上であることがさらに好ましく、1.5ミリモル/g以上であることが特に好ましい。
【0057】
本発明に係る吸着性ポリマーは、導入されるキレート形成基やイオン交換基を適宜選択することにより、様々な半金属、半金属化合物、金属、金属化合物等を吸着することができる。上記半金属としては、ホウ素やゲルマニウム、ヒ素、アンチモン、ビスマス、テルル、セレン等を挙げることができる。また、上記金属としては、Cu、Cd、Hg、Zn、Fe、Cr、Mn、Ca、Mg、Na等を挙げることができる。本発明に係る吸着性ポリマーは、特に、ホウ素吸着材、ゲルマニウム吸着材、ヒ素吸着材、重金属吸着材等として好適に用いることができる。つまり、本発明に係る吸着性ポリマーは、吸着させる対象に応じて、導入する吸着性官能基を選択すればよい。
【0058】
本発明に係る吸着性ポリマーを導入工程後の反応溶液から取り出す(分離する)方法や洗浄方法は、特に限定されるものではなく、一般にポリマーの取出(分離)方法や洗浄方法において採用されている方法を採用することができる。
【0059】
さらに、本発明に係る吸着性ポリマーに、キレート形成基としてグルカミン基やポリオール基が導入されている場合には、当該吸着性ポリマーを、水中のホウ素やゲルマニウム、ヒ素を吸着する吸着材としてより好適に用いることができる。この場合には、吸着性ポリマー中に残存するエポキシ基をジオール化することによって、ホウ素やゲルマニウム等とキレート化合物を形成するジオールをさらに増加させることができるので、吸着性能がさらに向上する。
【0060】
即ち、本発明に係る吸着性ポリマーの製造方法においては、吸着性ポリマーにキレート形成基としてグルカミン基やポリオール基が導入されている場合には、吸着性官能基を導入する導入工程を行った後、さらに、吸着性ポリマーに残存するエポキシ基をジオール化するジオール化工程を行うことがより好ましい。ジオール化工程を行うことにより、化学的に不安定であるエポキシ基を化学的に安定であるジオールとすることができ、親水性がより一層向上し、半金属、金属および親水性化合物をより効率的に吸着することが可能となる。エポキシ基をジオール化する具体的な方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を適宜採用すればよい。より具体的には、濃度が0.1〜1モル/Lの希塩酸で吸着性ポリマーを洗浄する方法等が好適である。尚、ジオール化工程を行わなくても、吸着性ポリマーに半金属や金属を吸着させた後、当該半金属や金属を分離(脱離)するときに吸着性ポリマーを希塩酸や希硫酸、希硝酸で処理すると、その処理過程で、エポキシ基は加水分解されてジオール化する。
【0061】
本発明に係る吸着性ポリマーは、キレート形成基が導入されている場合には、例えば、半金属、半金属化合物、金属、金属化合物等を含有する水溶液や有機溶媒を含む溶液、土壌、海水、工場廃水、温泉水、鉱山廃水等の処理対象と接触させることにより、有害物質(有害金属、有害半金属)の除去(浄化)、有用金属の分離、回収(濃縮)、多成分金属系からの特定金属の分離、精製等に利用することができる。或いは、排気ガスと接触させることにより、消臭等に利用することもできる。
【0062】
また、本発明に係る吸着性ポリマーは、イオン交換基が導入されている場合には、例えば、半金属イオン、金属イオン、或いは、アミノ酸やビタミン、タンパク質、核酸、糖等の生体高分子、イオン性染料等の親水性化合物等を含む各種溶液(処理対象)と接触させることにより、有害物質(有害金属、有害半金属)の除去、有用金属の回収、多成分金属系からの特定金属の分離、精製、或いは、生体高分子や親水性化合物等の有機物の吸着、分離、酸性化合物や塩基性化合物の中和処理、或いは、無機化合物や有機化合物のイオン交換処理(イオン交換樹脂)等に利用することができる。
【0063】
本発明に係る吸着性ポリマーを上記処理対象と接触させる方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法、例えば、処理対象に吸着性ポリマーを投入して攪拌または振り混ぜる方法、或いは、吸着性ポリマーを充填したカラムまたは吸着塔に処理対象を通過させる方法等を用いることができる。また、吸着性ポリマーに吸着させた例えば半金属や金属等を回収する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法、例えば、希塩酸や希硫酸、希硝酸等の溶離剤に吸着性ポリマーを接触させて半金属や金属等を溶出させて回収する方法等を用いることができる。半金属や金属等を回収した後の吸着性ポリマーは、純水等で洗浄することにより、再度、利用(再使用)することができる。
【0064】
さらに、本発明に係る吸着性ポリマーは、医療用、クロマトグラフィー、固相合成等における触媒にも好適に利用することができる。
【0065】
尚、本発明に係る吸着性ポリマーをイオン交換樹脂として用いる場合には、従来のイオン交換樹脂に用いられている吸着塔や再生設備等の各種設備をそのまま使用することができる。それゆえ、環境に対する負担が小さく、危険性を伴わないラジカル重合開始剤を用いた製造方法、優れた吸着能および吸着容量等の各種要素を勘案すると、本発明に係る吸着性ポリマーは、従来のイオン交換樹脂の代替品として好適である。
【実施例】
【0066】
以下、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0067】
〔実施例1〕
吸着性ポリマーとしてのポリメタクリル酸グリシジルを製造すると共に、当該ポリメタクリル酸グリシジルにグルカミン基を導入することにより、ホウ素吸着材とした。
【0068】
先ず、ラジカル重合性モノマーを含む溶液として、純水を用いて、ラジカル重合性モノマーとしてのメタクリル酸グリシジルの濃度が30重量%、界面活性剤としてのポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの濃度が3重量%であるエマルション水溶液20mlを調製した。そして、当該水溶液の溶存酸素を、窒素ガスで置換した。
【0069】
次に、最大径が30μmのセルロース粒子(高分子粒子)0.5gに対して、窒素ガス雰囲気下で、加速電圧750kV、照射線量20kGyの電子線(放射線)を照射して、セルロース粒子にラジカル活性点を生成させてラジカル重合開始剤を得た(照射工程)。そして、得られたラジカル重合開始剤0.5gを上記エマルション水溶液20mlに添加した(添加工程)後、50℃で2時間、重合反応させてポリメタクリル酸グリシジルを得た(重合工程)。
【0070】
得られたポリメタクリル酸グリシジルを反応溶液から取り出して、ポリマーにグルカミン基(吸着性官能基)を導入するための化合物であるN−メチル−D−(−)−グルカミンの濃度が20重量%である水溶液50mlに浸漬した後、80℃で6時間、反応させた(導入工程)。これにより、吸着性ポリマーとしてのホウ素吸着材8.5gを製造した。
【0071】
次いで、グルカミン基の官能基数を定量するために、上記ホウ素吸着材の酸吸着量を下記の方法に従って測定した。
【0072】
即ち、上記ホウ素吸着材1gを、濃度が0.1モル/Lの塩酸50mlに加えて、室温(24℃)で2時間振とうした。その後、上澄み液10mlを取り、この上澄み液に対して、濃度が0.1モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いて逆滴定を行った。そして、滴定値から、酸吸着量(meq/ml)を次式
酸吸着量(meq/ml)=0.1×5×(10−X)×Y
を用いて算出した。前記式において、X(ml)は水酸化ナトリウム水溶液の滴定値であり、Y(kg/L)はホウ素吸着材のかさ密度である。
【0073】
その結果、上記ホウ素吸着材の酸吸着量は、0.8meq/mlであった。
【0074】
〔比較例1〕
市販のホウ素吸着材であるアンバーライトIRA743(オルガノ株式会社製)について、実施例1と同様の逆滴定を行い、酸吸着量を測定した。その結果、当該ホウ素吸着材の酸吸着量は、0.6meq/mlであった。
【0075】
〔比較例2〕
市販のホウ素吸着材であるダイヤイオンCRB02(三菱化学株式会社製)について、実施例1と同様の逆滴定を行い、酸吸着量を測定した。その結果、当該ホウ素吸着材の酸吸着量は、0.6meq/mlであった。
【0076】
〔比較例3〕
前記特許文献2に記載された実施例1を実施して得たセルロース系吸着材(ホウ素吸着材)について、実施例1と同様の逆滴定を行い、酸吸着量を測定した。その結果、当該セルロース系吸着材の酸吸着量は、0.6meq/mlであった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明に係る吸着性ポリマーの製造方法によれば、基材として高分子粒子が用いられることはなく、従って、その分、吸着性ポリマーに占めるラジカル重合性モノマーの重合体の量を多くすることができる。それゆえ、ポリマーに吸着性官能基をより多く導入することができるので、半金属や金属に対して優れた吸着能を有し、しかも吸着容量により優れた吸着性ポリマーの製造方法を提供することができる。また、本発明に係る吸着性ポリマーによれば、ポリマーに吸着性官能基をより多く導入することができるので、半金属や金属に対して優れた吸着能を有し、しかも吸着容量により優れた吸着性ポリマーを提供することができる。
【0078】
本発明に係る吸着性ポリマーは、キレート形成基が導入されている場合には、例えば、半金属、半金属化合物、金属、金属化合物等を含有する水溶液や有機溶媒を含む溶液、土壌、海水、工場廃水、温泉水、鉱山廃水等の処理対象と接触させることにより、有害物質(有害金属、有害半金属)の除去(浄化)、有用金属の分離、回収(濃縮)、多成分金属系からの特定金属の分離、精製等に利用することができる。或いは、排気ガスと接触させることにより、消臭等に利用することもできる。また、本発明に係る吸着性ポリマーは、イオン交換基が導入されている場合には、例えば、半金属イオン、金属イオン、或いは、アミノ酸やビタミン、タンパク質、核酸、糖等の生体高分子、イオン性染料等の親水性化合物等を含む各種溶液(処理対象)と接触させることにより、有害物質(有害金属、有害半金属)の除去、有用金属の回収、多成分金属系からの特定金属の分離、精製、或いは、生体高分子や親水性化合物等の有機物の吸着、分離、酸性化合物や塩基性化合物の中和処理、或いは、無機化合物や有機化合物のイオン交換処理(イオン交換樹脂)等に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合性モノマーをラジカル重合する吸着性ポリマーの製造方法であって、
ラジカル活性点の生成が可能な高分子粒子に放射線を照射してラジカル重合開始剤を作成する照射工程、
ラジカル重合性モノマーを含む溶液に上記ラジカル重合開始剤を添加する添加工程、
ラジカル重合性モノマーをラジカル重合させる重合工程、
を含むことを特徴とする吸着性ポリマーの製造方法。
【請求項2】
上記高分子粒子がセルロース粒子、ポリエチレン粒子、ポリプロピレン粒子、または、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)粒子であることを特徴とする請求項1に記載の吸着性ポリマーの製造方法。
【請求項3】
上記溶液が界面活性剤を含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の吸着性ポリマーの製造方法。
【請求項4】
上記ラジカル重合性モノマーがエポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーであることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の吸着性ポリマーの製造方法。
【請求項5】
重合工程で得られたポリマーに、吸着性官能基を導入する導入工程を含むことを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の吸着性ポリマーの製造方法。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の製造方法によって製造された吸着性ポリマー。

【公開番号】特開2013−6942(P2013−6942A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139886(P2011−139886)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(503237806)株式会社NHVコーポレーション (37)
【Fターム(参考)】