説明

吸音装置およびスピーカシステム

【課題】 スピーカキャビネット内での位置の固定が容易で、歩留まり低下および性能低下を抑制でき、加工が容易で生産性の高い吸音装置およびこの吸音装置を用いたスピーカシステムを提供する。
【解決手段】 一端11aと他端11bとがそれぞれ同一方向に帯状にシールされた筒状の吸音部材12bに、吸音部材12bの長手方向と直交且つ一端のシール方向と直交する方向にプレスされた中間プレス部4aを設け、互いに連続する複数の三角錐の吸音部1a、1bを形成し、中間プレス部4aを介して吸音部1a,1b間で互いに空気が流通するように中間プレス部4aで折り畳み、三角錐の互いの面が対向するように近接配置して立体形状とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音装置およびこの吸音装置を用いたスピーカシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカシステムは、スピーカキャビネット内で発生する定在波やスピーカユニットのフレーム等から伝わる振動により、特性的に好ましくない共振(不要共振)が発生することが知られている。この不要共振を抑制するために、従来は、スピーカシステム内にフェルト、再生羊毛、グラスウール等の吸音材料を充填する方法が用いられてきた。しかし、吸音材料を充填する方法は、再生音の生命感、躍動感等が失われる問題があることから、近年はスピーカキャビネット内の所定の位置に複数の密閉容器を並べる方法が提案されてきている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、特許文献1記載の方法では、密閉容器の位置の固定が難しいため、効果にバラツキが生じやすい。特に、同一規格のスピーカシステムを大量生産する場合には、バラツキの発生により、製品の歩留まり低下または性能低下等の不具合を招くおそれがある。また、特許文献1記載の方法では、所望の特性を得るために、スピーカシステム1台に対して様々な形状の密閉容器を用意する必要があるため、加工が煩雑で、材料費も高くつき、生産性も低くなる。
【特許文献1】特許第3637419号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、スピーカキャビネット内での位置の固定が容易で、歩留まり低下および性能低下を抑制でき、加工が容易で生産性の高い吸音装置およびこの吸音装置を用いたスピーカシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本願発明の態様によれば、一端と他端とがそれぞれ同一方向に帯状にシールされた筒状の吸音部材に、吸音部材の長手方向と直交且つ一端のシール方向と直交する方向にプレスされた中間プレス部を設け、互いに連続する複数の三角錐の吸音部を形成し、中間プレス部を介して吸音部間で互いに空気が流通するように中間プレス部で折り畳み、三角錐の互いの面が対向するように近接配置して立体形状とした吸音装置が提供される。
【0006】
本願発明の他の態様によれば、一端と他端とがそれぞれ同一方向に帯状にシールされた筒状の吸音部材に、一端と他端との間の複数箇所で逐次互いに直交する複数の中間プレス部を設け、互いに連続する複数の三角錐の吸音部を形成し、中間プレス部を介して吸音部間で互いに空気が流通するように、中間プレス部で折り畳み、三角錐の互いの面が対向するように近接配置して立体形状とした吸音装置が提供される。
【0007】
吸音部の数は、複数あればいくつあっても構わない。例えば、吸音部は、一端と、吸音部材の長手方向と直交且つ一端と直交する方向にプレスされた第1中間プレス部とにより仕切られた第1吸音部と、第1中間プレス部と、長手方向と直交且つ第1中間プレス部と直交する方向にプレスされた第2中間プレス部とにより仕切られた第2吸音部と、第2中間プレス部と、長手方向と直交且つ第2中間プレス部と直交する方向にプレスされた第3中間プレス部とにより仕切られた第3吸音部と、第3中間プレス部と他端とにより仕切られた第4吸音部とを含んでもよい。
【0008】
本願発明の他の態様によれば、スピーカキャビネットと、スピーカキャビネットの内部に収容され、一端と他端とがそれぞれ同一方向に帯状にシールされた筒状の吸音部材に、吸音部材の長手方向と直交且つ一端のシール方向と直交する方向にプレスされた中間プレス部を設け、互いに連続する複数の三角錐の吸音部を形成し、中間プレス部を介して吸音部間で互いに空気が流通するように、中間プレス部で折り畳み、三角錐の互いの面が対向するように近接配置して立体形状とした吸音装置と、スピーカキャビネットに取り付けられたスピーカユニットとを備えるするスピーカシステムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スピーカキャビネット内での位置の固定が容易で、歩留まり低下および性能低下を抑制でき、加工が容易で生産性の高い吸音装置およびこの吸音装置を用いたスピーカシステムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載においては、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0011】
(吸音装置)
本発明の実施の形態に係る吸音装置1は、図1に示すように、筒状の吸音部材の一端11aを一定幅で帯状にシールする始端シール部4sと、筒状の吸音部材の他端11bを一定幅で帯状にシールする終端シール部4eと、一端11aと他端11bとの間に設けた3箇所の中間プレス部(第1中間プレス部4a、第2中間プレス部4b、第3中間プレス部4c)を備え、この3箇所の中間プレス部でそれぞれ折り曲げることにより、互いに連続する第1吸音部1a、第2吸音部1b、第3吸音部1c、及び第4吸音部1dを備えている。
【0012】
第1〜第4吸音部1a、1b、1c、1dは、それぞれ三角錐の形状を有している。なお、本実施形態で説明する「三角錐」とは、三角錐、正三角錐及び正四面体の他に、例えば筒状の紙等を折って作製する場合に形成される三角錐に近い形状をも含む。
【0013】
第1吸音部1aは、一端11aにおいて、図1の紙面上下方向に帯状にシールされた始端シール部4sと、吸音装置1の長手方向(図1の左右方向)とほぼ直交し、且つ始端シール部4sとほぼ直交する方向に帯状にプレスされた第1中間プレス部4aとで仕切られている。
【0014】
始端シール部4sは、第1吸音部1aの三角錐の稜線の1つに接しており、第1中間プレス部4aは、その稜線と接しない他の稜線(底辺)と接している。第1中間プレス部4aは、留め具2により、空気の流通が阻害されないように仮止めされている。第1中間プレス部4aを留め具2により仮止めしなくても、第1吸音部1aが一定の形状を保持可能な場合は、仮止めはしなくてもよい。
【0015】
第2吸音部1bは、第1中間プレス部4aを軸とすると、第1吸音部1aとほぼ対称となるように形成されている。第2吸音部1bは、第1中間プレス部4aと、吸音装置1の長手方向とほぼ直交し且つ第1中間プレス部4aとほぼ直交する方向に帯状にプレスされた第2中間プレス部4bとにより仕切られている。
【0016】
第1中間プレス部4aは、第2吸音部1bの三角錐の稜線の1つに接しており、第2中間プレス部4bは、その稜線と接しない他の稜線(底辺)と接している。第2中間プレス部4bは、留め具2により、空気の流通が阻害されないように仮止めされている。第2中間プレス部4bを留め具2により仮止めしなくても、第2吸音部1bが一定の形状を保持可能な場合は、仮止めはしなくてもよい。
【0017】
第3吸音部1cは、第2中間プレス部4bを軸とすると、第2吸音部1bとほぼ対称となるように配置されている。第3吸音部1cは、第2中間プレス部4bと、吸音装置1の長手方向とほぼ直交し且つ第2中間プレス部4bとほぼ直交する方向に帯状にプレスされた第3中間プレス部4cとにより仕切られている。
【0018】
第2中間プレス部4bは、第2吸音部1bの三角錐の稜線の1つに接しており、第3中間プレス部4cは、その稜線と接しない他の稜線(底辺)と接している。第3中間プレス部4cは、留め具2により空気の流通が阻害しないように仮止めされている。第3中間プレス部4cを留め具2により仮止めしなくても、第3吸音部1cが一定の形状を保持可能な場合は、仮止めはしなくてもよい。
【0019】
第4吸音部1dは、第3中間プレス部4cを軸とすると、第3吸音部1cとほぼ対称となるように配置されている。第4吸音部1dは、第3中間プレス部4cと、他端11bにおいて図1の紙面上下方向に帯状にシールされた終端シール部4eとにより仕切られている。終端シール部4eは、糊付けされ、再び開かないように留め具2により固定されている。
【0020】
第4吸音部1dには、複数の穴3が形成されている。穴3は、吸音装置1の内部に空気をより流通可能とするために形成されたものであり、個数は特に限定されない。穴3は、例えば第4吸音部1dの表面全体に大きく開けるよりも、図1に示すように、比較的小さめの穴3を複数形成する方が、音響特性をより向上させることができる。
【0021】
吸音装置1の材料としては、例えば、和紙、クラフト紙、布、樹脂、段ボール紙等が利用可能である。加工性、及び図3に示すようなスピーカシステム100に使用した場合の性能特性を考慮すれば、材料として和紙を用いるのが好ましい。
【0022】
図1に示す吸音装置1をスピーカシステム100に搭載する場合は、例えば、第1吸音部1aと第4吸音部1dとを両手で持って、互いにねじるようにすると、図2に示すように、第1吸音部1aの一面10aと第2吸音部1bの一面10bとが向かい合うように第1中間プレス部4aで折れ曲がる。第2吸音部1bの一面14bと第3吸音部1cの一面14cとが向かい合うように、第2中間プレス部4bで折れ曲がる。第3吸音部1cの一面10cと第4吸音部1dの一面10dとが向かい合うように、第3中間プレス部4cで折り曲がる。これにより、全長l1を有する立体形状の吸音装置1が得られる。
【0023】
(スピーカシステム)
図2に示す吸音装置1を実施の形態に係るスピーカシステム100に搭載した例を図3に示す。図3に示すスピーカシステム100は、スピーカキャビネット20と、スピーカキャビネット20の内部に収容された吸音装置1と、スピーカキャビネット20に取り付けられたスピーカユニット30とを備える。
【0024】
スピーカキャビネット20は、バスレフ型の箱体であり木製等で形成されている。スピーカキャビネット20の内部には、ダクト50が配置されている。図3のスピーカキャビネット20としては、立体形状の吸音装置1の全長l1と比較すると、例えば、長さLがl1〜(3/2)l1、幅が(4/5)l1〜(7/10)l1、高さが(4/5)l1〜(7/10)l1の内容積の箱体を用いることができる。図5のスピーカキャビネット20においては、ダクト50の先端がスピーカユニット30に隣接するように配置されている。
【0025】
スピーカキャビネット20の前面側には、スピーカユニット30が配置されている。スピーカユニット30の背面側には、スピーカ端子40が配置されている。図5では図示を省略しているが、スピーカキャビネット20内部には、スピーカ端子40からスピーカユニット30へと延びる配線等が配置されている。
【0026】
吸音装置1は、第1及び第2吸音部1a、1b、第2及び第3吸音部1b、1c、第3及び第4吸音部1c、1dの三角錐の互いの面がそれぞれ向かい合うように、第1〜第3中間プレス部4a、4b、4cにより折り畳まれた状態で収容されている。スピーカキャビネット20の内部空間の長さ、幅、高さのうち最長の長さをLとすると、折り畳んだ状態の吸音装置1の長手方向の全長l1は長さLとほぼ等しいのが好ましい。また、第1吸音部1aのシールされた一端11a(始端シール部4s)は、スピーカキャビネット20の端(図中左端)から約(1/5)Lの距離の間に位置しているのが好ましい。第4吸音部1dのシールされた他端11b(終端シール部4e)は、スピーカキャビネット20の端(図中右端)から約(1/5)Lの距離の間に位置しているのが好ましい。
【0027】
図4に示すように、吸音装置1は、第4吸音部1dに設けられた穴3がスピーカユニット30の背面側と近接して配置されるのが好ましい。スピーカユニット30に近接する穴3を配置することにより、吸音装置における気流の入出量を変えることができるため、吸音効果を調整できる。またスピーカシステムの音質調整が可能(容易)となる。
本発明の実施の形態に係る吸音装置1及び吸音装置1を用いたスピーカシステム100によれば、予め図2に示すような一定形状に成形された吸音装置1が、図3に示すようなスピーカキャビネット20の内部に挿入される。そのため、スピーカキャビネット20の所定位置に複数の小型吸音容器を並べていく場合よりも、吸音装置1の位置の固定が容易になり、位置固定に要する作業時間も短縮でき、実装作業の効率化が図れる。
【0028】
また、折り畳み時の吸音装置1の全長l1とスピーカキャビネット20の内部の長さLとを実質的に等しくすることにより、吸音装置1がスピーカキャビネット20の内部で移動することがないため、例えば、同一規格のスピーカシステム100を大量に生産する場合におけるスピーカシステム100間の性能バラツキも抑えることもでき、歩留まりも向上する。
【0029】
更に、第1〜第4吸音部1a、1b、1c、1dは単一の部材で形成されており、第1〜第3中間プレス部4a,4b,4cを介して互いに空気が流通するように連通している。そのため、例えば、正四面体の吸音材単体を複数用意し、それぞれを接着剤等で繋ぎ合わせて図1に示す形状の共鳴抑制装置を作製した場合よりも、三角錐間を空気が流通する際に気流抵抗があるため、より高い吸音効果を有し、より共鳴防止効果が得られ、明瞭な低音再生と広がり感のある音場再生を実現できる。
【0030】
スピーカキャビネット20内に占める吸音装置1の容積比率、及び組み込み作業時の操作容易性等を考慮すると、図1に示すような四連型の吸音部(第1〜第4吸音部1a、1b、1c、1d)を備える吸音装置1を配置するのが好ましいが、吸音部の数は、必要に応じて増減しても構わない。
【0031】
なお、スピーカキャビネット20の内容積に対する吸音装置1が占める容積の割合は、5〜80%程度が好ましい。容積を5%以下とすると共鳴防止効果が低下し、容積を80%以上とすると折り畳み状態でキャビネット内部に設置することが困難となり、吸音装置1が潰れてしまうためである。
【0032】
図3及び図4に示すスピーカキャビネット20においては、バスレフ型のスピーカシステム100を例に説明したが、バスレフ型の他にも、密閉型、背面開口型等の箱体を用いることができることは勿論である。中でも特に、バスレフ型スピーカは、同容積の密閉型スピーカよりも低い周波数の再生が可能であり、密閉型スピーカでは再生困難な再生領域まで再生できるという利点を有するが、図1に示す吸音装置1を搭載することにより、更に再生音の音場感が得られ、より明瞭な低音再生と広がり感のある再生音を出力することができる。
【0033】
(製造方法)
次に、図5〜図7、図8(a)〜図10(b)を参照しながら、実施の形態に係る吸音装置1の製造方法の一例を説明する。なお、図8(b)、図9(b)、図10(b)は、図8(a)、図9(a)、図10(a)が示す上面図に対応する側面図を示している。
【0034】
図5に示すように、1枚のシート12を用意する。シート12としては、和紙、クラフト紙、布、樹脂、段ボール紙等が利用可能であるが、和紙を用いるのが特に好ましい。シート12は、筒状の吸音部材12b(図6参照)を形成するために、あらかじめ所定の位置に、折れ線L1、L2及び糊代13を形成しておく。図5に示すシート12の例では、シート12の長辺から距離wだけ離れた位置に折れ線L1が形成され、距離2wだけ離れた位置に折れ線L2が形成されている。
【0035】
シート12の大きさは、使用するスピーカキャビネット20の大きさに応じて変更するのが好ましい。例えば、スピーカキャビネット20の内容積の長さが195mm、幅が95mm、高さが95mmである場合は、シート12の長さl=380mm、幅w=85mm、wo=10mm、厚さ約0.2mmとすることができる。
【0036】
図5のシート12の糊代13に糊等の接着剤を塗布し、折れ線L1、L2でそれぞれ折り曲げることにより、図6に示すように、筒状の吸音部材12bを形成する。そして、吸音部材12bの一端11aを筒の長手方向(紙面左右方向)とほぼ直交する向きに、糊等を用いて一定幅で帯状に接着し、接着した部分が再び開かないように留め具2で固定することにより、始端シール部4sを形成する。
【0037】
図7に示すように、吸音部材12bを貫通する穴3を複数個形成する。穴3の数は限定されないが、図5に示す例では、直径約6mmの3個の穴3で正三角形をなすように、それぞれの穴3を均等に離間させている。このように、複数の穴を開けることにより、大きな穴を1つ開けるよりも、穴を出入りする空気の気流抵抗が増えるため、吸音効果が上がる。また1箇所よりも、複数箇所から空気が出入りするため穴位置によるばらつきが平均化される。また穴を複数個に分けた方が、吸音装置1の強度的にも強く型崩れしにくくなる。なお、図5に示す例では、吸音部材12bの他端11bからの距離lh=48mmである。
【0038】
図8(a)及び図8(b)に示すように、吸音部材12bの一端11aから約1/4l離れたところで、吸音部材12bの長手方向とほぼ直交し且つ一端11aのシール方向とほぼ直交する方向に吸音部材12bを折り曲げる。折り曲げた部分を留め具2で仮止めすることにより、帯状の第1中間プレス部4aを形成する。これにより、内部に空間を有する三角錐の第1吸音部1aが形成されるとともに、第1中間プレス部4aにおいて、留め具2が配置された以外の領域は、第1吸音部1aと後述する第2吸音部1bの内部の空気を互いに流通可能とするための通風口として機能する。なお、留め具2により仮止めをしなくても形状を維持できる場合は、第1中間プレス部4aは、留め具2で固定して帯状とせずに折り曲げるだけでもよい。
【0039】
図9(a)及び図9(b)に示すように、吸音部材12bの一端11aから約1/2l離れたところで、吸音部材12bの長手方向とほぼ直交し、且つ第1中間プレス部4aとほぼ直交する方向に吸音部材12bを折り曲げる。折り曲げた部分を留め具2で仮止めすることにより、帯状の第2中間プレス部4bを形成する。これにより、内部に空間を有する三角錐形の第2吸音部1bが形成されるとともに、第2中間プレス部4bにおいて、留め具2が配置された以外の領域は、第2吸音部1bと後述する第3吸音部1cの内部の空気を互いに流通可能とするための通風口として機能する。留め具2により仮止めをしなくても形状を維持できる場合は、第2中間プレス部4bは、留め具2で固定して帯状とせずに折り曲げるだけでもよい。
【0040】
図10(a)及び図10(b)に示すように、吸音部材12bの一端11aから約3/4l離れたところで、筒の長手方向とほぼ直交し、且つ第2中間プレス部4bとほぼ直交する方向に吸音部材12bを折り曲げる。折り曲げた部分を留め具2で仮止めすることにより、帯状の第3中間プレス部4cを形成する。これにより、内部に空間を有する三角錐形の第3吸音部1cが形成されるとともに、第3中間プレス部4cにおいて、留め具2が配置された以外の領域は、第3吸音部1cと後述する第4吸音部1dの内部の空気を互いに流通可能とするための通風口として機能する。
【0041】
次に、吸音部材12bの他端11bを、筒の長手方向とほぼ直交し且つ第3中間プレス部4cとほぼ直交する方向に、一定幅で帯状に糊等で接着することにより、終端シール部4eを形成する。終端シール部4eは、留め具2で固定することにより、接着した部分が再び開かないようにしておく。これにより、内部に空間を有する三角錐形の第4吸音部1dが形成される。
【0042】
実施の形態に係る吸音装置1の製造方法によれば、まず、1枚の和紙等のシート12を筒状にし、その後、仮止めする方向を長手方向に対して約90度ずつ逐次変化させながら仮止めしていくことにより、図1に示すような、互いに連続する三角錐形状の第1〜第4吸音部1a、1b、1c、1dを容易に製造できる。図1の吸音装置1は、1枚の和紙等で容易に作製できるため、加工が容易で、材料費も安価で、生産性も高い。
【0043】
また、仮止めした部分(第1〜第3中間プレス部4a、4b、4c)は、糊付け等により密閉されていないため、第1〜第4吸音部1a、1b、1c、1d間の空気の流通が阻害されない。よって、各吸音部材間を仕切壁等により密閉した小型容器に比べ、より明瞭な低音再生と広がり感のある音場再生が可能となる。
【0044】
実施の形態に係る吸音装置1をスピーカキャビネット20内に搭載する場合は、図2に示す立体形状に成形し、例えば、スピーカユニット30を取り外した状態で、図2に示す吸音装置1を潰さないようにしながら、外部から挿入すればよい。予め成形した吸音装置1をスピーカキャビネット20内部に挿入するだけでよいので、実装作業の効率化も図れる。
【0045】
本発明は上記の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論であり、その要旨を逸脱しない範囲で種々の改変を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態に係る吸音装置の折り畳み前の展開状態を示す斜視図である。
【図2】図1の吸音装置を折り畳んだ場合を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るスピーカシステムを示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るスピーカシステムを示す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る吸音装置の製造方法(その1)を示す平面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る吸音装置の製造方法(その2)を示す平面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る吸音装置の製造方法(その3)を示す平面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る吸音装置の製造方法(その4)を示し、図8(a)は上面図、図8(b)は図8(a)の側面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る吸音装置の製造方法(その5)を示し、図9(a)は上面図、図9(b)は図9(a)の側面図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る吸音装置の製造方法(その6)を示し、図10(a)は上面図、図10(b)は図10(a)の側面図である。
【符号の説明】
【0047】
1…吸音装置
1a…第1吸音部
1b…第2吸音部
1c…第3吸音部
1d…第4吸音部
2…留め具
3…穴
4a…第1中間プレス部
4b…第2中間プレス部
4c…第3中間プレス部
4e…終端シール部
4s…始端シール部
11a…一端
11b…他端
12…シート
12b…吸音部材
13…糊代
20…スピーカキャビネット
30…スピーカユニット
40…スピーカ端子
50…ダクト
100…スピーカシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端と他端とがそれぞれ同一方向に帯状にシールされた筒状の吸音部材に、前記吸音部材の長手方向と直交且つ前記一端のシール方向と直交する方向にプレスされた中間プレス部を設け、互いに連続する複数の三角錐の吸音部を形成し、前記中間プレス部を介して前記吸音部間で互いに空気が流通するように、前記中間プレス部で折り畳み、前記三角錐の互いの面が対向するように近接配置して立体形状としたことを特徴とする吸音装置。
【請求項2】
一端と他端とがそれぞれ同一方向に帯状にシールされた筒状の吸音部材に、前記一端と他端との間の複数箇所で逐次互いに直交する複数の中間プレス部を設け、互いに連続する複数の三角錐の吸音部を形成し、前記中間プレス部を介して前記吸音部間で互いに空気が流通するように、前記中間プレス部で折り畳み、前記三角錐の互いの面が対向するように近接配置して立体形状としたことを特徴とする吸音装置。
【請求項3】
前記吸音部に穴を有し、前記立体形状とした場合の前記吸音部材の長手方向の全長が、前記吸音部材を収容するスピーカキャビネットの内部の長さ、幅、高さの値の内の最長の値と同一であることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸音装置。
【請求項4】
スピーカキャビネットと、
前記スピーカキャビネットの内部に収容され、一端と他端とがそれぞれ同一方向に帯状にシールされた筒状の吸音部材に、前記吸音部材の長手方向と直交且つ前記一端のシール方向と直交する方向にプレスされた中間プレス部を設け、互いに連続する複数の三角錐の吸音部を形成し、前記中間プレス部を介して前記吸音部間で互いに空気が流通するように、前記中間プレス部で折り畳み、前記三角錐の互いの面が対向するように近接配置して立体形状とした吸音装置と、
前記スピーカキャビネットに取り付けられたスピーカユニット
とを備えることを特徴とするスピーカシステム。
【請求項5】
前記中間プレス部で折り畳んだ場合の前記吸音装置の長手方向の全長が、前記スピーカキャビネットの内部の長手方向の全長と同一であり、前記一端及び前記他端が、前記スピーカキャビネットの内部の長手方向のそれぞれの端部から前記スピーカキャビネットの長手方向の全長の1/5未満の距離の間に位置するように収容されていることを特徴とする請求項4に記載のスピーカシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−219747(P2008−219747A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57224(P2007−57224)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】