説明

吹き流し形フィルタ

【課題】組み立て工程に手間がかからず、材料コストも低く抑えることができる吹き流し形フィルタを提供すること。
【解決手段】フィルタの保持枠の支持部材を構成する断面コ字型又はC字型のカバー部材17とこのカバー部材17内に抜け止め状態に固定される支持棒18とで濾材12の開放端周りを挟持して該濾材12が支持されるようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般ビルの空調設備、工場空調設備、電算機室や病院の空調設備などに使用されるフィルタであって、塵埃に対して高い捕集効率と低い圧力損失で塵埃保持容量が極めて大きく、長期使用が可能であり、特に中高性能フィルタに適した吹き流し形フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吹き流し形フィルタとしては本出願人による製品が知られている(非特許文献1参照)。図12及び図13に示すように、この吹き流し形フィルタ1にあっては、該フィルタ1の空気流入口の周囲に木枠3が設けられている。木枠3は、該フィルタ1の空気流入口の周囲を構成する枠3aと、枠3a内を仕切る枠3bとからなり、これら枠3a及び枠3bがタッカーなどで接合されている。
【0003】
また木枠3には、複数の袋状の濾材2の入口部周囲の端部がタッカーなどで打ち付けられ、この濾材2端部と共に木枠3は、断面コ字型の亜鉛引き鋼板4からなる側板、天地板及び仕切板で覆われている。また、濾材2には保護材5が取り付けられている。保護材5は、濾材2が屈曲により、側板などを構成する亜鉛引き鋼板の角で破損するのを防止するためのものである。
【非特許文献1】日本バイリーン株式会社の2001年6月発行の製品カタログ(製品名VG−90VG−98)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記吹き流し形フィルタ1にあっては、その組立時に木枠3の組立が必要であり、また、その木枠3には濾材2の入口部周囲の端部をタッカーなどで一つ一つ止めていかなければならず、組み立て工程が非常に煩雑であった。また、この吹き流し形フィルタ1にあっては、濾材2の破損防止のために保護材7を取り付けるなど、濾過性能には直接寄与しない部品も必要としていた。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、組み立て工程に手間がかからず、材料コストも低く抑えることができる吹き流し形フィルタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、複数の袋状の濾材が並設して保持枠に取り付けられてなる吹き流し形フィルタにおいて、前記保持枠が、該吹き流し型フィルタの空気流入口周囲に配される外枠と、前記外枠内を仕切るように配される支持部材とからなり、前記支持部材が、断面コ字型又はC字型のカバー部材と、前記カバー部材内に抜け止め状態に固定される支持棒とからなり、前記カバー部材と支持棒とで前記濾材の開放端周りが挟持されて該濾材が支持されるようにしたことを特徴とする吹き流し形フィルタをその要旨とした。
【0007】
請求項2記載の発明は、カバー部材の開口縁部に内側に向かう突起が設けられており、支持棒を前記カバー部材の開口を通して該カバー部材内部に挿入することで、前記カバー部材内に前記支持棒が抜け止め状態に固定されるようにしたことを特徴とする吹き流し形フィルタをその要旨とした。
【0008】
請求項3記載の発明は、外枠は、係合一体化される断面コ字型の外側枠と内側枠とからなり、前記外側枠と内側枠とを係合させたとき、前記外枠に根元にくびれ部を有する端部突起を両端に設けた支持棒の前記端部突起を受容する空隙と前記くびれ部を受容する受け穴とが形成されるようになっており、前記外枠の空隙に支持棒の端部突起を受容させ、前記外枠の受け穴に支持棒のくびれ部を受容させることにより、前記外枠に支持棒を抜け止め状態に固定するようにしたことを特徴とする吹き流し形フィルタをその要旨とした。
【0009】
請求項4記載の発明は、保持枠が可燃性材料のみから構成されていることを特徴とする吹き流し形フィルタをその要旨とした。
【0010】
請求項5記載の発明は、可燃性材料のみから構成されていることを特徴とする吹き流し形フィルタをその要旨とした。
【発明の効果】
【0011】
上記構成を備えたことにより、本発明の吹き流し形フィルタにあっては、組み立て工程に手間がかからず、材料コストも低く抑えることができる、との効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の吹き流し形フィルタ(以下、フィルタという)を図面に従ってさらに詳しく説明する。本発明のフィルタは、複数の袋状の濾材が並設して保持枠に取り付けられてなるものである。
【0013】
図1に示すフィルタ11では、6個の袋状の濾材12が並設して保持枠13に取り付けられており、各濾材12の開放端部同士は超音波ホッチキスなどで接合されている。また、図2に示すように、袋状の濾材12を構成する濾材片12aと濾材片12bとの間にはセパレータ14が縫製又は超音波接着などで断面コの字状に接合されていて、濾材12の間隔が保持されるようになっている。
【0014】
上記濾材12としては特に限定されず、例えば、ガラスマットと不織布が積層された濾材、メルトブロー法によって極細繊維を形成している過程で短繊維を吹き込み、極細繊維と短繊維とを混合してい得られる濾材など、従来より吹き流し形フィルタとして使用されている濾材をそのまま使用することができる。また、濾材12には、スパンボンド不織布やネットなどの布帛を補強材として積層したものも好適に使用できる。
【0015】
濾材12の面密度も特に限定されないが、好ましくは40〜400g/m2、より好ましくは60〜300g/m2、さらに好ましくは80〜250g/m2である。濾材12の厚さも限定されないが、好ましくは3〜20mm、より好ましくは4〜15mm、さらに好ましくは5〜10mmである。
【0016】
濾材12の具体例としては、例えばメルトブロー法によって製造された平均繊維径が0.1〜10ミクロンの極細繊維5〜50質量%と、平均繊維径が10〜100ミクロンの熱融着性繊維50〜95質量%とが混在し、前記熱融着性繊維の熱融着によって繊維相互が固定された不織布からなる濾材を挙げることができる。この濾材の場合、JIS比色法効率(JISB9908に規定される試験値)95%以上の高性能フィルタ、同比色法効率90%以上の準高性能フィルタ、同比色法効率80%以上の中性能フィルタに適合させることができる。
【0017】
濾材12の材質としては、環境に悪影響を与え難い材料として可燃性材料のみからなることが望ましい。そのような材質とすることで、使用後の廃棄時に分別処理が不要となる上、熱源としてリサイクルすることが可能となる。また、濾材には難燃剤を含ませることもできる。この場合、リン系などのノンハロゲン系の材料とするのが望ましい。
【0018】
袋状の濾材12を構成する濾材片12aと濾材片12bとの間の間隔を保持する目的で取り付けられるセパレータ14としては、図2に示す断面コの字型のほか、W状や菱形状とすることもできる。また、セパレータ14の材質も濾材と同じく可燃性材料を用いることが望ましい。
【0019】
次に、保持枠について説明する。図1及び図3に示すように、保持枠13は外枠15と支持部材16とからなる。図3、並びに図4A、図4B、図5A、図5B、図6A、図6B、図7A、図7Bに示すように、外枠15は該フィルタ11の空気流入口周囲に配される枠であり、係合一体化される断面コ字型の外側枠101と内側枠102とからなる。図4A及び図5Aに示すように外側枠101は、側枠片101aと上下枠片101bとからなる。側枠片101a及び上下枠片101bの両端部は45°に切り欠かれており、これら各片101a、101bの端部を接合することで、外枠15の外側の枠が構成されるようになっている。また、側枠片101aには、接合部材101cが突設されており、この接合部材101cが上下枠片101bの両端部に設けた窪み(図示しない)に嵌り込み、側枠片101a及び上下枠片101bの端部の接合がなされるようになっている。
【0020】
図6A及び図7Aに示すように内側枠102は、側枠片102aと上下枠片102bとからなる。側枠片102a及び上下枠片102bの両端部は45°に切り欠かれており、これら各片102a、102bの端部を接合することで、外枠15の内側の枠が構成されるようになっている。また、上下枠片102bには、接合部材102cが突設されており、この接合部材102cが側枠片102aの両端部に設けた窪み(図示しない)に嵌り込み、側枠片102a及び上下枠片102bの端部の接合がなされるようになっている。
【0021】
また、図4B、図5B、図6B、及び図7Bに示すように、外側枠101の上下枠片101bと内側枠102の側枠片102aには、それぞれ桂柱突起101d、102dが設けられ、外側枠101の側枠片101aと内側枠102の上下枠片102bには、それぞれ前記桂柱突起101d、102dが係合する受け穴101e、102eが設けられており、外側枠101と内側枠102とを重ね合わせたとき、前記桂柱突起101d、102dと受け穴101e、102eとが係合し、外側枠101と内側枠102とが係合一体化するようになっている。
【0022】
また、図8に示すように、外側枠101と内側枠102とを係合させたとき、前記外枠15に後述する支持棒18の端部突起18aを受容する空隙103とくびれ部18bを受容する受け穴104とが形成されるように、外側枠101と内側枠102の上下枠片101b、102bには支持棒18の取り付け位置に対応する箇所にそれぞれ空隙103と受け穴104を形成するための凹部104a、104bが形成されている。
【0023】
支持部材16は前記外枠15内を仕切るように配される。図1及び図3に示す形態では、5個の支持部材16が外枠15内に配されて該外枠15内を6つに仕切っている。この支持部材16は、図8に示すようにカバー部材17とこのカバー部材17内に抜け止め状態に固定される支持棒18とからなる。
【0024】
図9に示すように、カバー部材17は断面コ字型又はC字型をなしており、このカバー部材17の開口縁部には内側に向かう突起17aが設けられている。このため、このカバー部材17の開口を通して支持棒18をカバー部材17内部に挿入したとき、支持棒18が開口部分で引っ掛かり、該支持棒18をカバー部材17内に抜け止め状態に固定できるようになっている。そして、図11に示すように、支持棒18を図11中矢印に示すようにカバー部材17内に濾材12の開放端周りと共に押し込みながら挿入することで、濾材12の開放端部をカバー部材17と支持棒18とで挟持させ、濾材12の支持がなされるようになっている。
【0025】
図10に示すように、支持棒18の両端部には、根元にくびれ部18bを有する端部突起18aが設けられており、図8に示すように、前記外枠15の空隙103に支持棒18の端部突起18aを受容させ、前記外枠15の受け穴104に支持棒18のくびれ部18bを受容させることにより、前記外枠15に支持棒18が抜け止め状態に固定されるようになっている。
【0026】
上述した保持枠13の材質としては、木材、金属、合成樹脂など特に限定されないが、環境に悪影響を与え難い材料として可燃性材料のみからなることが望ましい。そのような材質とすることで、使用後の廃棄時に分別処理が不要となる上、熱源としてリサイクルすることが可能となる。また、保持枠には難燃剤を含ませることもできる。この場合、リン系などのノンハロゲン系の材料とするのが望ましい。
【0027】
次に、本発明のフィルタの組立手順を説明する。まず、複数の袋状の濾材12を準備し、各袋状の濾材12を構成する濾材片12aと濾材片12bとの間にセパレータ14を縫製又は超音波接着などで断面コの字状となるように接合する。次いで、各濾材12の開放端部同士を超音波ホッチキスなどで接合する。
【0028】
次いで、各濾材12の開放端部の接合部分に当たる部分にカバー部材17の開口を配置する。この後、濾材12のカバー部材17の開口に当たる位置に支持棒18を配置し、図11に示すように、支持棒18をカバー部材17内部に押し込む。これにより、濾材12の開放端部をカバー部材17と支持棒18とで挟持させ、濾材12を支持できるようになる。
【0029】
次いで、図1、並びに図4A、図4B、図5A、図5B、図6A、図6B、図7A、図7Bに示すように、外枠15の外側枠101と内側枠102とをそれぞれ組立てる。次いで、外側枠101と内側枠102の上下枠片101b、102bに設けた空隙103と受け穴104を形成するための凹部104a、104bに支持棒18の端部突起18aとくびれ部18bを配置し、外側枠101と内側枠102との間に濾材12の開放端部を配置し、この状態で外側枠101と内側枠102とを係合させる。また、必要に応じて係合部分に接着剤を用いて接着固定する。これにより、濾材12の開放端部を挟持する支持部材16の支持棒18は、外枠15の空隙103に端部突起18aを受容され、外枠15の受け穴104にくびれ部18bを受容されて、前記外枠15に支持棒18が抜け止め状態に固定される。また、濾材12は外側枠101と内側枠102との間に挟持されて支持されるようになる。
【0030】
本発明のフィルタの全体の大きさとしては特に限定されないが、好ましくは外枠15の外寸が200〜800mmであり、実用的は、例えば290mm、305mm、595mm、650mmなどの寸法を採用することができる。また、支持部材間の距離も特に限定されないが、好ましくは50〜150mmを採用することができる。
【0031】
尚、本発明のフィルタは、上述の例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で自由に変更して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のフィルタを示す斜視図。
【図2】本発明のフィルタの濾材を示す拡大断面図。
【図3】本発明のフィルタにおける保持枠を示す斜視図。
【図4A】本発明のフィルタの外側枠の側枠片を示す斜視図。
【図4B】同じく正面図。
【図5A】本発明のフィルタの外側枠の上下枠片を示す斜視図。。
【図5B】同じく正面図。
【図6A】本発明のフィルタの内側枠の側枠片を示す斜視図。
【図6B】同じく正面図。
【図7A】本発明のフィルタの内側枠の上下枠片を示す斜視図。。
【図7B】同じく正面図。
【図8】外枠に支持棒が抜け止め状態に固定された状態を示す拡大断面図。
【図9】支持部材のカバー部材を示す斜視図。
【図10】支持部材の支持棒を示す斜視図。
【図11】支持部材のカバー部材と支持棒とで濾材の開放端部を挟持させる状態を示す拡大断面図。
【図12】従来のフィルタを示す斜視図。
【図13】従来のフィルタの木枠とこの木枠に取り付けられる濾材とを示す拡大断面図。
【符号の説明】
【0033】
12 ・・・袋状の濾材
12a、12b ・・・濾材片
14 ・・・セパレータ
15 ・・・外枠
16 ・・・支持部材
17 ・・・カバー部材
18 ・・・支持棒
18a ・・・端部突起
18b ・・・くびれ部
101 ・・・外側枠
101a ・・・側枠片
101b ・・・上下枠片
102 ・・・内側枠
102a ・・・側枠片
102b ・・・上下枠片
103 ・・・空隙
104 ・・・受け穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の袋状の濾材が並設して保持枠に取り付けられてなる吹き流し形フィルタにおいて、
前記保持枠が、該吹き流し型フィルタの空気流入口周囲に配される外枠と、前記外枠内を仕切るように配される支持部材とからなり、
前記支持部材が、断面コ字型又はC字型のカバー部材と、前記カバー部材内に抜け止め状態に固定される支持棒とからなり、
前記カバー部材と支持棒とで前記濾材の開放端周りが挟持されて該濾材が支持されるようにしたことを特徴とする吹き流し形フィルタ。
【請求項2】
カバー部材の開口縁部に内側に向かう突起が設けられており、支持棒を前記カバー部材の開口を通して該カバー部材内部に挿入することで、前記カバー部材内に前記支持棒が抜け止め状態に固定されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の吹き流し形フィルタ。
【請求項3】
外枠は、係合一体化される断面コ字型の外側枠と内側枠とからなり、前記外側枠と内側枠とを係合させたとき、前記外枠に根元にくびれ部を有する端部突起を両端に設けた支持棒の前記端部突起を受容する空隙と前記くびれ部を受容する受け穴とが形成されるようになっており、
前記外枠の空隙に支持棒の端部突起を受容させ、前記外枠の受け穴に支持棒のくびれ部を受容させることにより、前記外枠に支持棒を抜け止め状態に固定するようにしたことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の吹き流し形フィルタ。
【請求項4】
保持枠が可燃性材料のみから構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の吹き流し形フィルタ。
【請求項5】
可燃性材料のみから構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の吹き流し形フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−229568(P2007−229568A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51994(P2006−51994)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】