説明

吹出口装置

【課題】 ヒータを中コーン外周縁部に固定するための樹脂封止材の使用量を抑えつつ、中コーン外周縁部の結露防止構造を適切に形成できる吹出口装置を提供する。
【解決手段】 中コーン20における外周縁部21の折曲げ部分と所定間隔をなす位置に位置決め体40を配置し、折曲げ部分と位置決め体40との間に樹脂封止体50を充填してヒータ30を固定し、このヒータ30を用いて中コーン外周縁部21を加熱可能とすることから、必要最小限の樹脂封止材50でヒータ30を被覆固定でき、樹脂封止材50の使用量を削減でき、ヒータ30の中コーン外周縁部21への固定に係る作業性を大きく改善して作業時間の短縮が図れ、なおかつ傷付きやすいヒータ30を保護しつつヒータ30と中コーン20との密着状態を確保でき、結露の生じやすい中コーン外周縁部21とその近傍をヒータ30で確実に温められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和対象空間に調和空気を吹出して空気調和を行う吹出口装置に関し、特に冷房時における結露の発生を防止する吹出口装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和設備において、ダクトを通じて送られる調和空気を空気調和対象の室内空間に吹出す多層コーン型の吹出口装置は、室内空気の誘引性能に優れ、誘引した室内空気と調和空気との混合により効率よく空気調和効果を得ることができる。ただし、こうした多層コーン型の吹出口装置で冷房を行う場合、開口部から冷えた調和空気を室内空間に吹出すことに伴い、室内側に面する額縁部や中コーンは吹出口装置他部分と共に冷却されることとなる。この冷却される額縁部や中コーンと、室内空間の空気との温度差が大きい場合、吹出気流の誘引により吹出口装置周囲に達する室内のより温かい空気が、冷えた額縁部や中コーン外周縁部に接触して結露が生じ、この生じた結露水が吹出口装置の汚れの元となったり、水滴として吹出口装置から下方に落下する危険性がある。
【0003】
よって、こうした結露の発生を防止するために、額縁部や中コーンの室内空間側から見えない部分に通電により昇温するヒータを取付けて、ヒータで額縁部や中コーンを温めて室内空気との過剰な温度差が生じないようにした装置が、従来から提案されている。このような従来の吹出口装置の例として、実開昭60−182640号公報、及び特開2006−300389号公報に開示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭60−182640号公報
【特許文献2】特開2006−300389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のヒータ付きの吹出口装置は前記各特許文献に示される構成となっているが、額縁部や中コーンの天井寄り部分に、ダクト等他の部材が接触する可能性がある場合、こうした他の部材がヒータと接触して不具合を生じさせることのないようにするため、また、ヒータから額縁部や中コーン以外の天井側へ熱が逃げないようにするためとして、近年では、前記特許文献2に示されるように、額縁部や中コーンのヒータを樹脂封止材で封止(モールド)状態として、ヒータを保護、保温しつつ額縁部や中コーンに固定する構成が多く採用されていた。
【0006】
このヒータの樹脂封止材による封止は、通常、ヒータを額縁部や中コーンに接着剤で接着固定して仮止め状態とした後、硬化前で流動性のある樹脂封止材をヒータ周囲に充填し、樹脂表面が平滑な状態となるように仕上げた上で、樹脂封止材を硬化させてヒータを確実に固定状態とする、という工程で行われていた。
【0007】
しかしながら、この樹脂封止材による封止工程では、接着剤をヒータ各部に塗布してヒータを額縁部や中コーンに接着する仮止め作業に手間がかかる上、仮止め状態でのヒータの位置が不安定であり、樹脂封止材を充填する過程で額縁部や中コーンとヒータが密着せずに浮いた状態となって、熱を効率よく伝えられない状態になりやすいという問題がある。
【0008】
特に中コーンの場合、ヒータを固定しようとする室内空間側に面しない上面部分に、ヒータを収納、保持するような凹部や、ヒータを沿わせるような凸部がほとんど存在しないことから、中コーンにヒータを保持しにくく、ヒータの保持、固定のために大量の樹脂封止材が必要になるという課題を有していた。
【0009】
そして、こうしたヒータの固定に用いられる樹脂封止材は、硬化までに時間を要し、大量に使用すると特に硬化しにくいことから、中コーンにヒータを固定して次工程に移行させるまでに時間がかかってしまうという課題を有していた。
【0010】
また、このような樹脂封止材には、シリコンゴム(ゴム状シリコン樹脂)が多用されるが、こうしたシリコンゴム等の樹脂封止材では、経年変化によりブリード現象として油分が滲出しやすい。中コーンの場合、その形状から、滲出した油分の下方への移動を抑えにくいことから、この油分が中コーンの視認可能な部分を汚したり、油分が居住域に落下したりするという課題を有していた。
【0011】
さらに、樹脂封止材を大量に使用した場合には、樹脂の硬化した部分と硬化していない部分が混在した状態となりやすく、このうち、硬化していない部分ではブリード現象の生じる危険性が高くなるという課題も有していた。
【0012】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、ヒータを中コーン外周縁部に固定するための樹脂封止材の使用量を抑えつつ、中コーン外周縁部の結露防止構造を適切に形成できる吹出口装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る吹出口装置は、天井に配設され、空気調和対象となる空間に上流側から供給された調和空気を吹出す吹出口装置において、調和空気を通過させる開口部を取囲んだ略枠状体として形成され、空気調和対象空間側の周縁部に空気調和対象空間側へ向けて拡開状となる外コーン部を有してなり、天井に配設される吹出口本体と、当該吹出口本体の開口部に配設され、前記外コーン部と略相似形の拡開状に形成される一又は複数の羽根体からなる中コーンと、当該中コーンにおける外周縁部の空気調和対象空間に面しない部位に配設され、通電により中コーン外周縁部及び当該外周縁部近傍を加熱する線状のヒータと、前記中コーンの空気調和対象空間に面しない上側で且つ前記外周縁部より中コーン中心寄りとなる位置に略環状配置として配設される断熱材製の位置決め体とを備え、前記中コーンの外周縁部が、端部を少なくとも前記ヒータ太さを超える高さまで上方へ折曲げられ、且つ当該折曲げが周方向に連続する縁形状とされてなり、周方向に連続する折曲げ部分の内周側の入隅部分を前記ヒータの収納部とされ、前記位置決め体が、前記ヒータ太さを超える高さとされて、前記折曲げ部分に対し前記ヒータ太さを超える間隔をなして配置され、前記ヒータが前記収納部に配置された状態で、中コーン外周縁部の折曲げ部分と前記位置決め体との間の凹部に、樹脂封止材が充填され、当該樹脂封止材でヒータを被覆固定するものである。
【0014】
このように本発明によれば、中コーンにおける外周縁部を折曲げてヒータの収納部を設け、この収納部にヒータを配置可能とする一方、外周縁部の折曲げ部分と所定間隔をなす位置に位置決め体を配置し、収納部にヒータを配置した状態で折曲げ部分と位置決め体との間に樹脂封止体を充填し硬化させてヒータを固定し、固定されたヒータを用いて中コーン外周縁部とその近傍を加熱可能とすることにより、収納部に配置されたヒータが、容易に動かない状態で中コーン外周縁部に保持されることとなり、また位置決め体で樹脂封止材の充填範囲を制限でき、必要最小限の樹脂封止材でヒータの不具合が生じにくい状態を確保しつつヒータを被覆固定することができ、封止使用における難点の多い樹脂封止材の使用量を削減でき、ヒータの中コーン外周縁部への固定に係る作業性を大きく改善して作業時間の短縮が図れ、なおかつ傷付きやすいヒータを保護しつつヒータと中コーン外周縁部との密着状態を確保でき、結露の生じやすい中コーン外周縁部とその近傍をヒータで確実に温められ、結露発生を抑えられる。
【0015】
また、本発明に係る吹出口装置は必要に応じて、前記位置決め体が、断面形状を略三角形とされてなり、三つの角部のうち内角が最も小さい鋭角となる角部を、中コーンの中心側に向けて配設されるものである。
【0016】
このように本発明によれば、略三角形断面の位置決め体をその鋭角となる角部が中コーンの中心側を向くようにして配設し、傾斜している中コーン上面と位置決め体の上面を緩やかに連続する状態とすることにより、位置決め体からその外方の樹脂封止材の充填部分にかけての、中コーンの外周部分が全体として起伏のすくない平坦な形状となり、中コーン上面に沿って空気調和対象空間へ向う気流が中コーン上面から位置決め体の上面にスムーズに進行してそのまま外方へ向うことができ、位置決め体の位置で気流が乱れることはなく、ヒータを設ける場合でも気流に悪影響を与えずに済むこととなり、中コーンや外コーンの設計意図に合った気流制御状態をそのまま維持して吹出しを行え、結露を防ぎつつ空気調和の効果を確実に得ることができる。
【0017】
また、本発明に係る吹出口装置は必要に応じて、前記位置決め体が、吸液性のある多孔質材で形成されるものである。
【0018】
このように本発明によれば、中コーン上に配設される位置決め体が多孔質材製とされ、吸液性を有することにより、多孔質構造である位置決め体における断熱性が向上し、ヒータからの熱が中コーンの外に逃げにくくすることができると共に、例えば樹脂封止材にシリコンゴムを使用した場合などに、樹脂封止材からブリード現象として滲出する油分を位置決め体で吸収して、油分が中コーンの視認可能な部分を汚したり、油分が居住域に落下したりすることを防止できることとなる。
【0019】
また、本発明に係る吹出口装置は必要に応じて、前記中コーンの折曲げ部分における外周側の出隅部分が、丸みのある形状として形成されると共に、折曲げ部分の末端が、中コーン最外周位置となる前記丸みのある出隅部分より中コーン中心寄りに位置する状態とされるものである。
【0020】
このように本発明によれば、中コーンの外周縁部が、丸みを帯びた形状とされると共に、折曲げ部分の末端が中コーンの最外周に位置しない形状とされ、中コーンの外周縁部で外方に向けて鋭利な角や端部が生じないことにより、ヒータの配設作業や中コーン全体を取扱う取付作業などで、作業者が中コーンの外周縁部に触れる際の安全を確保して、ケガを防止できると共に、収納部にヒータをより安定的に保持しやすくなり、ヒータ配設その他の作業能率を大きく向上させられる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る吹出口装置の縦断面図及び一部省略底面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る吹出口装置における中コーンの平面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る吹出口装置の中コーン外周縁部におけるヒータ配置状態の拡大切断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る吹出口装置の中コーン外周縁部へのヒータ取付状態説明図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る吹出口装置の中コーン外周縁部におけるヒータ配置状態の拡大切断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る吹出口装置を前記図1ないし図4に基づいて説明する。
前記各図において本実施形態に係る吹出口装置1は、調和空気を通過させる円形状の開口部10aを取囲む円形の略枠状体で形成され、天井60に配設される吹出口本体10と、この吹出口本体10の開口部10aに配設される複数の羽根体からなる中コーン20と、この中コーン20の外周縁部21における空気調和対象としての室内空間に面しない部位に配設される線状のヒータ30と、中コーン20の上側に略環状配置として配設される断熱材製の位置決め体40と、ヒータ30を被覆する状態で配設される樹脂封止材50とを備える構成である。
【0023】
前記吹出口本体10は、中心の円断面形状の開口部10aを取囲む金属製の略枠状体で形成され、天井60の開口孔位置に天井裏空間と空気調和対象の室内空間のそれぞれに面する状態で支持される構成であり、中コーン20と共に多層コーン型吹出口をなすものである。吹出口本体10の室内空間側の周縁部には、室内空間側へ向けて円形開口断面の拡開状となる外コーン11が形成される構成である。
【0024】
この吹出口本体10は、開口部10aのうち、天井裏空間に向けられた側の端部でダクト61から調和空気を導入し、開口部10aを通過した調和空気を室内空間に面する側の端部から室内空間に吹出せる仕組みである。
【0025】
前記中コーン20は、外コーン11と略相似形の拡開状に形成される複数の羽根体を組合わせた多層拡開形状とされ、吹出口本体10の開口部10aに配設される構成である。
【0026】
この中コーン20における最も室内空間寄りとなる外周縁部21は、その端部を前記ヒータ30の太さを超える所定高さまで上方へ折曲げられ、且つこの折曲げが周方向に連続する縁形状とされることで、連続する折曲げ部22を生じさせている。この折曲げ部22における外周側の出隅部分は、丸みのある形状となるように折曲げ形成されると共に、折曲げ部22の末端は、中コーン20の最外周位置となる前記丸みのある出隅部分より、中コーン20の中心寄りに位置する状態とされる構成である。
【0027】
このような中コーン20の外周縁部21のうち、室内空間側に面しない折曲げ部22の内周側の入隅部分が、線状のヒータ30の収納部20aとされる。この収納部20aは、折曲げ部22と共に、外周縁部21の周方向に連続して存在することとなる。収納部20aにおいても、折曲げ部22の丸みのある形状があらわれていることで、折曲げ部22内周とヒータ30との接触を密にして、収納部20aにヒータ30を安定的に保持することができる。
【0028】
前記ヒータ30は、ニクロム線等の抵抗加熱体をガラス繊維製チューブ等の耐熱性絶縁材で被覆した、可撓性を有する公知の線状発熱体で形成され、中コーン20の外周縁部21における収納部20aに、この収納部20aの全周に沿わせた状態で配設される構成である。ヒータ30はこの中コーン20の収納部20aへの配設状態で、天井60裏等で公知の電源と接続され、通電により中コーン20の外周縁部及びその近傍部分を加熱することとなる。
【0029】
こうしてヒータ30が、中コーン20の室内空間に面しない部位である収納部20aに当接し、例えば吹出口装置1による冷房時、通電されて中コーン20の外周縁部やその近傍部分を温めることで、吹出される調和空気に吹出口装置各部が接触してその温度を低下させても、中コーン20の外周縁部21やその近傍部分は温度低下を免れることとなり、吹出された調和空気の誘引で暖かい室内空気が天井付近に達し、中コーン20の外周縁部21やその近傍部分と接触しても、これら外周縁部21やその近傍部分で結露が生じることはない。
【0030】
前記位置決め体40は、断熱性と共に吸液性を有する多孔質材製の略線状体として形成され、中コーン20の室内空間に面しない上側で、且つ外周縁部21より中コーン20の中心寄りの、前記折曲げ部22に対しヒータ30の太さを超える間隔をなす所定位置に、環状配置として配設される構成である。この位置決め体40は、折曲げ部22に対し中コーン20の中心寄りに、ヒータ30の太さを超える間隔で離隔する所定位置、具体的には、例えば、樹脂封止材50の充填作業に係る作業効率を考慮して、折曲げ部22から10mm程度離れた位置に配設されることとなる。
【0031】
位置決め体40は、通電され発熱するヒータ30の近傍に配設される関係上、絶縁性や耐熱性と共に、難燃性または自己消火性を有する材質で形成される。なお、この位置決め体40を、可撓性があり且つ弾性変形可能な材質製とし、中コーン20の上面に接着剤や両面テープ等を用いて貼着して配設するものとすれば、中コーン20の曲面にも対応しやすく、配設作業性に優れ好ましい。より具体的には、位置決め体40はヒータ30と直接接触せず離して配設され、耐熱性を厳しく要求されないことから、耐熱温度が100℃程度のEPDM、クロロプレン等のゴム材を発泡構造とした可撓性のある多孔質体を用いることができる。
【0032】
前記樹脂封止材50は、当初の流動性のある状態から時間経過と共に硬化する性質を有するシリコンゴム材等の公知の樹脂材であり、中コーン20の外周縁部における折曲げ部22と位置決め体40との間の凹部に充填されて配設され、あらかじめ収納部20aに配置されたヒータ30を被覆固定するものである。
【0033】
樹脂封止材50は、折曲げ部22と位置決め体40との間の凹部に、位置決め体40の高さを超えず、且つ折曲げ部22の高さより少し低い位置まで、例えば、折曲げ部22の高さより1ないし2mm低い位置まで充填され、硬化状態とされる。硬化してヒータ30を被覆固定した状態では、外周側に折曲げ部22が存在していることで、仮にブリード現象により油分が表面に滲出したとしても、この油分が外に流れ出るのを防止することができる。
【0034】
この樹脂封止材50で、収納部20aに配置されたヒータ30が被覆固定されることで、ヒータ30の上側は樹脂封止材50で覆われた状態となっており、中コーン20の上側部分に、吹出口本体10等、他の部材が接触する可能性があっても、こうした他の部材は樹脂封止材50でヒータ30との接触を阻まれることとなり、ヒータ30は保護され、接触が原因でヒータ30が傷付いて不具合を生じるようなことはない。また、ヒータ30が樹脂封止材50に覆われて保温され、さらに断熱性のある位置決め体40も配設されて、中コーン20の外周縁部21以外には熱が伝わりにくいことで、この外周縁部21以外へ熱が逃げるのを必要最小限として、効率よく外周縁部21やその近傍を温められる。
【0035】
次に、前記構成に基づく吹出口装置における中コーンへのヒータの取付過程について説明する。中コーン20と吹出口本体10とを組合わせて吹出口装置1とする前の段階で、まず、中コーン20の外周縁部21における折曲げ部22内周側の収納部20aに対し、ヒータ30を沿うように配置して(図4(A)参照)、ヒータ30が収納部20aの全周にわたって配設された状態を得る。この際、必要に応じて接着剤等を用いてヒータ30を仮止めする。
【0036】
続いて、折曲げ部22に対し、所定間隔を空けて位置決め体40を中コーン20の上面に貼付けて環状に連続配置し、中コーン20の上面で位置決め体40が折曲げ部22と所定間隔をなす状態とする(図4(B)、図2参照)。
【0037】
こうして収納部20aにヒータ30が配設され、また位置決め体40も配設されたら、折曲げ部22と位置決め体40との間に生じた凹部に対し、樹脂封止材50を折曲げ部22の高さより少し低い位置まで充填し(図4(C)、図3参照)、この樹脂封止材50でヒータ30の上側を完全に覆う。こうしてヒータ30を収納部20aに沿わせたまま保持した状態で、樹脂封止材50を硬化させ、ヒータ30を固定すれば、中コーン20へのヒータ30の取付は完了となる。
【0038】
この後、別途天井60に取付けられた吹出口本体10側の支持用部材に中コーン20を取付けると共に、中コーン20上のヒータ30を電源側と電気的に接続すれば、吹出口装置1として完成状態となる。
【0039】
こうしたヒータ30の中コーン20への取付作業や、中コーン20の吹出口本体10への取付作業における中コーン20の取扱いにおいて、作業者が中コーン20の外周縁部21に触れても、中コーン20の外周縁部21が丸みを帯びた形状とされると共に、折曲げ部22の末端が中コーン20の最外周に位置しない形状とされて、中コーン20の外周縁部21で外方に向けて鋭利な角や端部が生じていないことから、作業者の安全を確保でき、作業能率を大きく向上させられる。
【0040】
一方、吹出口装置1の使用状態で、吹出口装置1において、結露防止のために使用するヒータ30の熱や経年変化により、樹脂封止材50からブリード現象として油分が滲出したとしても、樹脂封止材50に隣接する位置決め体40が吸液性を有することで、滲出する油分を位置決め体40で吸収することができ、樹脂封止材50より高くなっている折曲げ部22と合わせて、滲出した油分が中コーン20の下方へ流出するのを抑えられ、中コーン20の視認可能な部分を汚したり、油分が居住域に落下したりすることを確実に防止できる。
【0041】
このように、本実施形態に係る吹出口装置においては、中コーン20における外周縁部21を折曲げて折曲げ部22及びヒータ30の収納部20aを設け、この収納部20aにヒータ30を配置可能とする一方、折曲げ部22と所定間隔をなす位置に位置決め体40を配置し、収納部20aにヒータ30を配設した状態で、折曲げ部22と位置決め体40との間に樹脂封止体50を充填し硬化させてヒータ30を固定し、このヒータ30を用いて、中コーン20外周縁部とその近傍を加熱可能とすることから、収納部20aに配置されたヒータ30が、樹脂封止体50の充填の際、容易に動かない状態で中コーン20の外周縁部21に保持されることとなり、また位置決め体40で樹脂封止材50の充填範囲を制限でき、必要最小限の樹脂封止材50でヒータ30の不具合が生じにくい状態を確保しつつヒータ30を被覆固定することができ、封止使用における難点の多い樹脂封止材50の使用量を削減でき、ヒータ30の外周縁部21への固定に係る作業性を大きく改善して作業時間の短縮が図れ、なおかつ傷付きやすいヒータ30を保護しつつヒータ30と中コーン20外周縁部との密着状態を確保でき、結露の生じやすい中コーン20外周縁部とその近傍をヒータ30で確実に温められ、結露発生を抑えられる。
【0042】
なお、前記実施形態に係る吹出口装置においては、吹出口を円形(丸型)として形成する構成としているが、これに限らず、吹出口形状を、例えば方形状や矩形状の角型として形成する構成とすることができる。
【0043】
また、前記実施形態に係る吹出口装置においては、中コーン20の収納部20aに対しヒータ30を一周分配設する構成としているが、これに限らず、収納部に対しヒータを二周以上の複数周にわたって配設する構成とすることもでき、吹出される調和空気の温度や空気調和対象空間内の空気の温度に対応してヒータの配設長さを調整して、ヒータからの総発生熱量を適切なものとすることができる。ただし、ヒータの収納部における周回数を多くする場合には、それに応じて位置決め体の位置や、樹脂封止材の充填量も適宜調整することとなる。
【0044】
(本発明の第2の実施形態)
前記第1の実施形態に係る吹出口装置において、中コーン20上に配設する位置決め体40には、一般的な矩形断面形状のものを用いる構成としているが、これに限らず、位置決め体として中コーン上で樹脂封止材を流出させることなくその充填範囲を適切に制限できるものであれば、どのような断面形状のものを採用してもよく、例えば、第2の実施形態として、図5に示すように、位置決め体45の断面形状を、ヒータ30の太さを超える高さ寸法を有する略三角形とし、略三角形断面形状における三つの角部のうち内角が最も小さい鋭角となる角部を、中コーン20の中心側に向けた配置として、位置決め体45を中コーン20上に配設する構成とすることもできる。
【0045】
この場合、位置決め体45の上面と中コーン20の上面とのなす角が小さくなり、傾斜している中コーン20の上面と位置決め体45の上面が緩やかに連続する状態となることで、位置決め体45からその外方の樹脂封止材50の充填部分にかけての、中コーン20の外周部が全体として起伏のすくない平坦な形状となり、中コーン20上面に沿って空気調和対象の室内空間へ向う気流が、中コーン20上面から位置決め体45の上面にスムーズに進行してそのまま外方へ向うことができ、位置決め体45の位置で気流が乱れることはなく、中コーン20にヒータ30を設けて結露防止を図る場合でも吹出気流に悪影響を与えずに済むこととなり、中コーン20や外コーン11の設計意図に合った気流制御状態をそのまま維持して吹出しを行え、結露を防ぎつつ室内空間での空気調和の効果を確実に得ることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 吹出口装置
10 吹出口本体
10a 開口部
11 外コーン
20 中コーン
20a 収納部
21 外周縁部
22 折曲げ部
30 ヒータ
40、45 位置決め体
50 樹脂封止材
60 天井
61 ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井に配設され、空気調和対象となる空間に上流側から供給された調和空気を吹出す吹出口装置において、
調和空気を通過させる開口部を取囲んだ略枠状体として形成され、空気調和対象空間側の周縁部に空気調和対象空間側へ向けて拡開状となる外コーン部を有してなり、天井に配設される吹出口本体と、
当該吹出口本体の開口部に配設され、前記外コーン部と略相似形の拡開状に形成される一又は複数の羽根体からなる中コーンと、
当該中コーンにおける外周縁部の空気調和対象空間に面しない部位に配設され、通電により中コーン外周縁部及び当該外周縁部近傍を加熱する線状のヒータと、
前記中コーンの空気調和対象空間に面しない上側で且つ前記外周縁部より中コーン中心寄りとなる位置に略環状配置として配設される断熱材製の位置決め体とを備え、
前記中コーンの外周縁部が、端部を少なくとも前記ヒータ太さを超える高さまで上方へ折曲げられ、且つ当該折曲げが周方向に連続する縁形状とされてなり、周方向に連続する折曲げ部分の内周側の入隅部分を前記ヒータの収納部とされ、
前記位置決め体が、前記ヒータ太さを超える高さとされて、前記折曲げ部分に対し前記ヒータ太さを超える間隔をなして配置され、
前記ヒータが前記収納部に配置された状態で、中コーン外周縁部の折曲げ部分と前記位置決め体との間の凹部に、樹脂封止材が充填され、当該樹脂封止材でヒータを被覆固定することを
特徴とする吹出口装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の吹出口装置において、
前記位置決め体が、断面形状を略三角形とされてなり、断面形状における三つの角部のうち内角が最も小さい鋭角となる角部を、中コーンの中心側に向けた配置として配設されることを
特徴とする吹出口装置。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の吹出口装置において、
前記位置決め体が、吸液性のある多孔質材で形成されることを
特徴とする吹出口装置。
【請求項4】
前記請求項1ないし3のいずれかに記載の吹出口装置において、
前記中コーンの折曲げ部分における外周側の出隅部分が、丸みのある形状として形成されると共に、折曲げ部分の末端が、中コーン最外周位置となる前記丸みのある出隅部分より中コーン中心寄りに位置する状態とされることを
特徴とする吹出口装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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