吻合デバイス及び吻合方法
【課題】縫合糸を用いた従来の手技による処置と吻合デバイスによる処置とを組み合わせた処置を簡単に行うことができる吻合デバイス及び吻合方法を提供すること。
【解決手段】吻合対象物を吻合する弾性を有する吻合デバイス1を次のように構成する。すなわち、前記吻合対象物の縫合処置に供された糸を糸留めするスリット5as,5bsが形成された突起部5a,5bを、吻合デバイス1に具備させる。
【解決手段】吻合対象物を吻合する弾性を有する吻合デバイス1を次のように構成する。すなわち、前記吻合対象物の縫合処置に供された糸を糸留めするスリット5as,5bsが形成された突起部5a,5bを、吻合デバイス1に具備させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば生体組織等の吻合対象物を吻合する為の吻合デバイス及び吻合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの管状体(例えば血管など)を相互に連結する外科手術として、吻合術が知られている。この吻合術では、連結した管状体の内腔内を流体が流れるように、2つの管状体を吻合して連結する。この連結に係る部位から流体が漏れることがないように、吻合しなくてはならない。
【0003】
このような吻合術は、血管の閉塞を治療する為に多く用いられている。例えば、冠動脈バイパス術(CABG術)においては、心臓表面の冠動脈に生じた閉塞部下流に、血流を供給する能力のある自己血管を吻合するものである。
これは、閉塞部によって、その冠動脈が血液を供給していた心臓組織に血流不足をきたすため、血流を補うようおこなわれる。
このような吻合術において用いられている具体的な吻合方法としては、縫合糸を用いた手技による血管の縫合を挙げることができる。手技による血管の縫合は、管と管とを血液の漏れがないように縫合糸で縫うため難易度が高い。よって術者の経験/技術が必要である。また、このような手技によるCABG術においては、より速く血流を再開させる必要があるため、なるべく速く処置を完了させることが好ましい。とくに、近年普及している人工心肺装置を使用しないCABG術においては、心臓が拍動したまま処置を行うため、さらに難易度が高くなり、吻合時間が延長する傾向がある。
【0004】
このような事情を鑑みて、例えば特許文献1に次のような技術が提案されている。すなわち、特許文献1に開示されている技術では、生体血管の外翻部と人工血管の端部とを、当該管状体吻合器具の保持板に設けられた複数のガイド糸挿入溝(スリット)にそれぞれ挿入されたガイド糸にて仮止めし、その各ガイド糸間の保持板間に配設された複数の吻合デバイスとしてのクリップによって、吻合部位の全長を吻合する。つまり、特許文献1に開示されている技術では、位置決めの為の補助的処置として縫合糸による吻合手技を用い、吻合デバイスによって実質的処置を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−33360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来からある縫合糸を用いた手技は、特許文献1に開示されているような吻合デバイスが提案される以前から利用されている為、多大な技術の蓄積があり、熟練者は血液が漏れないようにかつ短時間で処置を完了する実績がある。一方、特許文献1に開示されているような吻合デバイスによれば、吻合処置が容易になるが、実績の面では乏しい。
【0007】
上述したような事情から、従来からある縫合糸を用いた手技を利用し、かつ短時間での処置が可能な技術が望まれている。
【0008】
なお、特許文献1に開示されている技術では、吻合デバイスと共に従来の縫合糸による手技も用いているが、あくまでも位置決めの為の補助的処置(仮止め)としての手技である。吻合デバイスで実質的な吻合処置を行った後に、位置決めに利用した糸の抜糸を行うか、抜糸せずに糸の結紮を行う必要がある。
【0009】
本発明は、前記の事情に鑑みて為されたものであり、従来の縫合糸による手技と吻合デバイスによる処置とを組み合わせ、例えば血管の吻合を容易にし、短時間で行うことができる吻合デバイス及び吻合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明の第1の態様による吻合デバイスは、
吻合対象物を吻合する弾性を有する吻合デバイスであって、
前記吻合対象物の縫合処置に供された糸を、当該吻合デバイスに対して固定する糸留め部を具備する
ことを特徴とする。
【0011】
前記の目的を達成するために、本発明の第2の態様による吻合方法は、
吻合対象部位を、弾性を有する吻合デバイスを用いて位置決め処置する位置決め処置ステップと、
前記位置決め処置ステップにおいて位置決め処置した部位以外の吻合対象部位を、全長に亘って縫合処置する縫合処置ステップと、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、手技による処置と吻合デバイスによる処置とを組み合わせることにより、吻合手技を容易にし、結果として短時間で行うことができる吻合デバイス及び吻合方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る吻合デバイスの一構成例を示す斜視図。
【図2】針状部と組織支持部とを互いに離間させた状態の吻合デバイスを示す図。
【図3】吻合デバイスの突起部に形成されたスリットの寸法と縫合に用いる糸の寸法とを示す図。
【図4】吻合処置後の吻合デバイスの態様を示す図。
【図5】吻合デバイスによる位置決め処置と、糸付き針を用いた手技による処置と、を組み合わせた処置の一例を示す図。
【図6】第1実施形態に係る吻合デバイスを用いた血管吻合処置による冠動脈バイパス手術の一場面を示す図。
【図7】第1実施形態に係る吻合デバイスを用いた血管吻合処置による冠動脈バイパス手術の一場面を示す図。
【図8】第1変形例に係る吻合デバイスの一構成例を示す図。
【図9】第2変形例に係る吻合デバイスの一構成例を示す図。
【図10】第3変形例に係る吻合デバイスの取手部に嵌め込むゴム部材の一構成例を示す図。
【図11】ゴム部材を嵌め込まれた第3変形例に係る吻合デバイスの取手部を示す図。
【図12】第4変形例に係る吻合デバイスの一構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る吻合デバイスについて、図面を参照して説明する。本第1実施形態に係る吻合デバイスは、吻合対象物として、例えば生体組織(特に血管)等を想定している。
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態に係る吻合デバイスの一構成例を示す斜視図である。
本第1実施形態に係る吻合デバイス1は、第1把持部3aを備える針状部2a及び第2把持部3bを備える組織支持部2bが形成されたクリップ本体部12と、該クリップ本体部12に対して力を印加する為の取手部4a,4bと、スリット5asが設けられた突起部5a及びスリット5bsが設けられた突起部5bと、を具備する。以降、取手部4a,4bが設けられている部位側を“基端側”と称し、針状部2a及び組織支持部2bが設けられている部位側を“末梢側”と称する。
【0016】
前記クリップ本体部12は、初期状態(何ら外力が印加されていない状態)においては図1に示すように環状(本例では略円環形状)を呈する。また、初期状態においては、針状部2aと組織支持部2bとは、クリップ本体部12の径方向において重複代(ちょうふくしろ)を有する。この重複代により、結紮後の脱落可能性が低減される。
【0017】
ここで、前記クリップ本体部12は、これら針状部2aと組織支持部2bとが互いに接近するような(即ち針状部2aと組織支持部2bとが径方向に重複する初期状態に戻るような)付勢力を有している。従って、本第1実施形態に係る吻合デバイス1の材料としては、弾性を有する例えばばね鋼やCo-Cr合金(エルジロイ)などが好ましく、またさらには、超弾性部材、たとえばチタン合金、より詳しくはNi−Tiを一例としてあげることができる。
【0018】
このように構成することで、針状部2aと組織支持部2bとを引き離す為の後述の操作が意図的に行われない限り、針状部2aと組織支持部2bとが径方向に重複代を有して互いに対向する初期状態が維持される。
これにより、クリップ本体部12が有する付勢力を利用した吻合処置を行うことが可能となる。後述するが、針状部2aが吻合対象物を穿刺し、この吻合対象物を組織支持部2bが針状部2aと共に支持する。
【0019】
前記取手部4a,4bは、クリップ本体部12を2分する線Cについて互いに線対称の位置に設けられ、平面視ハ字状を呈する一対の取手部材である。
これら取手部4a,4bに対して、両者を互いに接近させる方向に(クリップ本体部12の付勢力に抗する方向に)力を印加することで、針状部2aと組織支持部2bとが互いに離間する(図2参照)。すなわち、取手部4a,4bは外力印加部を成す。
【0020】
ここで、前記取手部4a,4bを設ける位置は、上述した例に限られるものではない。すなわち、針状部2aと組織支持部2bとが互いに離間する方向に、クリップ本体部12を変形させる為の外力を印加することが可能な位置であればよい。また、取手部4a,4bの形態は、平面視ハ字状でなくともよい。すなわち、針状部2aと組織支持部2bとが互いに離間する方向に、クリップ本体部12を変形させる為の外力を印加することが可能な形態であればよい。
【0021】
なお、前記取手部4a,4bは、吻合処置を容易にする為の部材であって、必須の構成要件ではない。すなわち、前記取手部4a,4bを設けなくともよく、その場合には、針状部2aと組織支持部2bとが互いに離間する方向に、クリップ本体部12の内側から外側に向かって力を印加することで、針状部2aと組織支持部2bとを互いに離間させることができる。
【0022】
前記第1把持部3aは、針状部2aのうち組織支持部2bとの重複代近傍においてクリップ本体部12の径方向内側に凸に設けられた突出部である。
前記第2把持部3bは、組織支持部2bのうち針状部2aとの重複代近傍においてクリップ本体部12の径方向内側に凸に設けられた突出部である。
【0023】
詳細には、前記第1把持部3aと前記第2把持部3bとは、互いに対向する面をそれぞれ備え(第1把持面3af、第2把持面3bf)、それらによって、吻合処置後の吻合対象物を挟持する。
つまり、前記第1把持面3af及び前記第2把持面3bfは、吻合処置後の吻合対象物に対して互いに逆側から(挟み込むように)それぞれ当接し、クリップ本体部12が有する付勢力によって当該吻合対象物に圧接する。
【0024】
前記突起部5aは、前記クリップ本体部12と一体的に針状部2aと取手部4aとの間の部位に設けられた突出部であり、糸(不図示)を挟み込んで糸留めする為の楔形状のスリット5asが形成されている。同様に、前記突起部5bは、前記クリップ本体部12と一体的に組織支持部2bと取手部4bとの間の部位に設けられた突出部であり、糸(不図示)を挟み込んで糸留めする為の楔形状のスリット5bsが形成されている。
【0025】
上述したように、吻合デバイス1は、弾性を有する材料(例えばNi−Ti等)から成る。従って、クリップ本体部12と一体的に設けられた突起部5a,5bのスリット5as,5bsも弾性力を有しており、このスリット5as,5bsに糸を挟み込むことで容易に糸留めすることができる。詳細には、下記の寸法でスリット5as,5bsを設ける。
【0026】
図3は、突起部5a,5bのスリット5as,5bsの寸法と、縫合に用いる糸の寸法と、を示す図である。同図に示すように、縫合に用いる糸100の直径をdとすると、楔形状のスリット5as,5bsの所定位置におけるスリット幅Dを、d>Dを満たすように、当該スリット5as,5bsを形成する。
【0027】
換言すれば、糸100の直径よりも小さいスリット幅となる部位を有するように、スリット5as,5bsを形成する。このように構成することで、弾性力を有するスリット5as,5bsに対して糸100を差し込むことで、d>Dである部位において糸100が挟み込まれ、糸留めが完了する。このように、本第1実施形態に係る吻合デバイスによれば、従来のような糸の結紮が不要となり、糸留めが格段に容易且つ迅速になる。
【0028】
なお、突起部5a,5bを設ける位置は上述の例に限られず、糸留めが可能な位置であれば何れの位置であってもよい。また、設ける突起部の個数は2個である必要はなく、1つ或いは3つ以上であっても勿論よい。本第1実施形態では、2個の突起部5a,5bをそれぞれ上述の位置に設けることで、当該吻合デバイス1を挟んで両側からの糸を留めることを可能としている。
【0029】
以下、本第1実施形態に係る吻合デバイス1の一使用態様を説明する。本第1実施形態に係る吻合デバイス1による吻合処置では、吻合デバイス1による位置決め処置(本処置も兼ねている)を行った後、吻合デバイス1により処置されていない箇所(複数の吻合デバイス1を用いた場合にはそれら吻合デバイス1の間)を縫合糸で手縫いする。なお、縫合糸を用いた手技による処置については、従来の縫合糸を用いる手技による方法を用いればよい。
【0030】
まず、術者は、図2に示すように例えば挟み部151a,151bから成る鑷子・鉗子や、同様の先端を備えるマニピュレータ等のアプリケータにより、一対の取手部4a,4bを挟持し、第1把持部3aの第1把持面3afと、第2把持部3bの第2把持面3bfとを互いに離間させ(針状部2aと組織支持部2bとの重複状態を解除し)る。
【0031】
このように吻合処置可能な状態に変形させた後、針状部2aと組織支持部2bとの間に吻合対象物(図4に示す例では、膜組織t1,t2)を挿入する。
そして、鉗子・鑷子等による一対の取手部4a,4bの挟持を解除することで、クリップ本体部12が有する弾性力によって、針状部2aの穿刺要素先端2a1が吻合処置対象物(図4に示す例では、膜組織t1,t2)を貫通した後、当該針状部2aの第1把持部3aと組織支持部2bの第2把持部3bとが、膜組織t1,t2を互いに対向する側から把持する。
【0032】
換言すれば、図4に示すように、第1把持面3afと第2把持面3bfとによって、吻合処置対象物である膜組織t1,t2が挟持される。
【0033】
その後、吻合デバイス1によって当接していない箇所(例えば複数の吻合デバイス1を用いた場合には、それら吻合デバイス1同士の間)を、糸付き針によって図5に示すように手技により縫合していく。そして、この手技による縫合処置後の糸100を、吻合デバイス1のスリット5as,5bs(図5に示す例ではスリット5as)に差し込んで糸留めし(吻合デバイス1に対して固定し)、当該吻合処置が完了する。なお、余った糸100は切断すればよい。
【0034】
以下、本第1実施形態に係る吻合デバイスを用いた血管吻合処置について、冠動脈バイパス手術を例に、図6及び図7を参照して説明する。
術者は、冠動脈111の開口部111Hの縁部である開口縁111hと、バイパス血管であるグラフト113の開口縁113hと、の位置合わせを行い、冠動脈111の開口縁111hの内面と、グラフト113の開口縁113hの内面と、を当接させる。以降、この当接部位を吻合対象部位と称する。
【0035】
そして、この状態において、複数の吻合デバイス1により冠動脈111とグラフト113とを吻合処置する。具体的には、次のように吻合処置する。
上述したように、術者は、例えば鉗子・鑷子等やマニピュレータ等のアプリケータにより一対の取手部4a,4bを挟持し、針状部2aと組織支持部2bとの前記重複状態を解除し、更にそれら同士の間隔を離間させる。
【0036】
このように針状部2aと組織支持部2bとを所定間隔だけ離間させた状態で、術者は、この離間部位に、冠動脈111及びグラフト113の前記吻合対象部位を挿入する。そして、鉗子・鑷子等による一対の取手部4a,4bの挟持を解除することで、クリップ本体部12が有する弾性力によって、針状部2aが吻合対象部位(冠動脈111の開口縁111h及びグラフト113の開口縁113h)を貫通し、且つ、針状部2aの第1把持部3aと組織支持部2bの第2把持部3bとが当該吻合対象部位を挟持する。
【0037】
換言すれば、針状部2aが吻合対象部位を貫通した後、第1把持面3afと第2把持面3bfとが、互いに対向する側から当該吻合対象部位を挟みこんで把持する。
【0038】
以上説明した吻合デバイス1による吻合処置を、図7に示すように、吻合対象部位の全周について所定間隔毎に複数箇所で行うことにより、吻合デバイス1による位置決め処置が完了する。なお、この吻合デバイス1により位置決め処置した箇所については、本処置も完了している。
【0039】
続いて、上述の位置決め処置に係る吻合デバイス1同士の間の部位を、従来の縫合糸を用いる手技により縫合する。
ここで、吻合デバイス1同士の間の部位を手技により縫合していく際には、各々吻合デバイス1に到達する毎に、当該縫合に使用している糸100を、当該吻合デバイス1の突起部5a(或いは突起部5b)のスリット5as(或いはスリット5bs)に差し込んで糸留めした後、次の吻合デバイス1に向かって更に縫合していく。
【0040】
換言すれば、吻合対象部位を全長に亘って縫合処置していく過程において、吻合デバイス1に到達する毎に、その吻合デバイス1の突起部5a(或いは突起部5b)のスリット5as(或いはスリット5bs)に差し込んで、一旦糸留めしていく。この処置を繰り返し行っていくことで、吻合対象部位をその全長に亘って縫合し、最後に到達した吻合デバイス1において上述の糸留め処置を行った後、余った糸100を切り取る。以上の処理により、当該冠動脈バイパス手術が完了する。
【0041】
なお、上述のように吻合対象部位をその全長に亘って“連続的に”縫合処置するのではなく、各吻合デバイス1に到達する毎に一旦吻合処置を完了させていくようにしてもよい。すなわち、各吻合デバイス1に到達する毎に一方の突起部5a(或いは突起部5b)のスリット5as(或いはスリット5bs)にて糸留め処置を行った後、余った糸100を切り取り、続いて新たな糸100の後端部を他方の突起部5b(或いは突起部5a)のスリット5bs(或いはスリット5as)にて糸留めし、その状態で新たな糸100を用いて次の吻合デバイス1に向かって縫合処置していくようにしてもよい。
【0042】
以上説明したように、本第1実施形態によれば、従来の縫合糸を用いた手技による処置と吻合デバイスによる処置とを組み合わせた処置で吻合が容易になり、結果として吻合処置が短時間で行うことができる吻合デバイス及び吻合方法を提供することができる。
【0043】
これにより、糸留め部として突起部5aのスリット5as及び突起部5bのスリット5bsを備えていることから、吻合デバイス1の一方の糸留め部にて、糸100の後端部を糸留めし、その状態で糸100で例えば管状の吻合部位を全周に亘って縫合後に、同じ吻合デバイス1の他方の糸留め部にて糸留めすることができる。
【0044】
つまり、糸100での縫合における始めの段階(縫合処置の始点)と終わりの段階(縫合処置の終点)での糸100の結紮をする必要がないので、結紮をする時間および結紮作業に必要な比較的大きな空間が不要となり、狭い空間になりがちな手術野の処置が容易、短時間化できる。
【0045】
ところで、上述の例では突起部5a,5bをクリップ本体部12の外方へ突出するように設けているが、逆にクリップ本体部12の内方に突出するように設けてもよい。
【0046】
また、突起部5a,5bを設けずに、クリップ本体部12自体にスリット5as,5bsを設けてもよい。
さらには、スリット5as,5bsを設けた部材を、クリップ本体部12とは別体として製造し、それを接着剤等によってクリップ本体部12に対して固定してもよい。
【0047】
なお、クリップ本体部12の形状としては、上述の例のような略円環形状に限られず、例えば“D”字形状等の他の形状であっても勿論よい。また、組織支持部2bの代わりに針状部を設けて、両針の態様に構成しても勿論よい。さらには、クリップ本体部12に針状部を設けず、一対の把持部のみを設けた態様に構成しても勿論よい。つまり、クリップ本体部12の構成は、吻合可能な構成となっていれば良い。
【0048】
以上、第1実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、種々の変形及び応用が可能なことは勿論である。
《第1変形例》
以下、第1変形例に係る吻合デバイスについて説明する。説明の重複を避ける為、前記第1実施形態に係る吻合デバイスとの相違点について説明する。
【0049】
図8は、本第1変形例に係る吻合デバイスの一構成例を示す図である。同図に示すように、本第1変形例に係る吻合デバイス1では、突起部5a,5bにスリット5as,5bsを形成する代わりに貫通孔5ah,5bhを形成する。
これら貫通孔5ah,5bhの直径は、上述の縫合処置に用いる針及び糸が貫通可能な径である。糸留めを行う際には、貫通孔5ah,5bhに糸を通した後、当該貫通孔5ah,5bhの内径面と糸100とを接着剤等によって接着する。
《第2変形例》
以下、第2変形例に係る吻合デバイスについて説明する。説明の重複を避ける為、前記第1実施形態に係る吻合デバイスとの相違点について説明する。
【0050】
図9は、本第2変形例に係る吻合デバイスの一構成例を示す図である。同図に示すように、本第2変形例に係る吻合デバイス1では、突起部5aにスリット5asを形成する代わりに、糸100を固着させて設ける。
このように糸100の一端を、突起部5aに予め固定しておくことで、処置がより容易且つ迅速になる。
【0051】
なお、クリップ本体部12自体に糸100を固着させて設けても勿論よい。
《第3変形例》
以下、第3変形例に係る吻合デバイスについて説明する。説明の重複を避ける為、前記第1実施形態に係る吻合デバイスとの相違点について説明する。
図10は、本第3変形例に係る吻合デバイス1の取手部4a,4bに嵌め込むゴム部材14a,14bの一構成例を示す図である。図11は、前記ゴム部材14a,14bが嵌め込まれた第3変形例に係る吻合デバイス1の取手部4a,4bを示す図である。
【0052】
前記ゴム部材14a,14bは、縫合処置に用いる針を貫通させることが可能であって、針が貫通した後に当該ゴム部材14a,14b中に残存した糸100との摩擦が大きい(当該ゴム部材14a,14b中の糸が抜けにくい)材料から成る。この材料としては、例えばシリコーンゴム等を挙げることができる。
【0053】
本第3変形例においては、図11に示すように縫合処置に用いた糸付き針110でゴム部材14a,14bを穿刺・貫通する。これにより、当該ゴム部材14a,14bと、その中に残存した糸100と、の間の摩擦力により、糸100が、ゴム部材14a,14bに対して固定される(糸留めが為される)。つまり、糸100が吻合デバイス1に対して固定される。
【0054】
図10に示すように、ゴム部材14a,14bには吻合デバイス1の取手部4a、4bが嵌め込まれる貫通孔14ah,14bhが形成されている。換言すれば、ゴム部材14a,14bは、取手部4a,4bに嵌め込まれることで、吻合デバイス1に取り付けられる。
【0055】
なお、ゴム部材14a,14bの態様は上述のものに限定されることはなく、例えば立方体/直方体形状に構成して吻合デバイス1の任意の場所に接着等によって取付けてもよい。また、設けるゴム部材の個数は2個である必要はなく、1つ或いは3つ以上であっても勿論よい。
《第4変形例》
以下、第4変形例に係る吻合デバイスについて説明する。説明の重複を避ける為、前記第1実施形態に係る吻合デバイスとの相違点について説明する。
【0056】
本第4変形例に係る吻合デバイス1は、図12に示すように平面視で略“C”字形状を呈し弾性を有する本体部20と、該本体部20の両端部位に形成された一対の穿刺要素2,2´と、本体部20の任意の位置に設けられたラチェット機構を備える弾性を有したラチェット部材5rtと、を具備する。
このラチェット部材5rtは、ラチェット機構を構成する突起部が弾性を有して長手方向に沿って複数形成された棒状部材であるラチェット部rt1と、略円筒形状を呈し且つラチェット部rt1に挿入された係合部rt2と、を備える。
【0057】
この係合部rt2は、ラチェット部rt1に対して、図12において両矢印Mで示す方向に移動可能に構成されている。この移動過程において、係合部rt2は、ラチェット部rt1に形成されている弾性を有する複数の突起部とそれぞれ係合していく。
ラチェット部材5rtを利用した糸留め処置は、糸を弾性を有する本体部20と弾性を有する係合部rt2とで挟みことで行う。このとき、糸の太さに応じて、当該係合部rt2とラチェット部rt1との係合位置を調節することができる(係合部rt2の位置を固定させるラチェット部rt1の突起部を選択できる)。
[第2実施形態]
【0058】
以下、第2実施形態に係る弾性を有する吻合デバイスを用いた吻合方法について説明する。本第2実施形態に係る吻合方法は、少なくとも下記の2つのステップを含む吻合方法である。
(位置決めステップ)
吻合対象部位を、簡易な処置(弾性を有する吻合デバイス、例えば上記第1実施形態(各変形例を含む)の吻合デバイス1による処置)で仮止め(位置決め)するステップ。例えば、上述した図7に示す例では、吻合デバイス1による処置に相当する。
【0059】
(縫合ステップ)
前記位置決めステップを終えた後、前記簡易な処置によって仮止めした部位以外の吻合対象部位を、全長に亘って手技による縫合処置するステップ。例えば、上述した図7に示す例では、吻合デバイス1同士の間の部位を、糸付き針を用いて手技により縫合する処置に相当する。
【0060】
以上説明したように、本第2実施形態によれば、多大な実績の蓄積がある手技による縫合と、処置の容易性及び迅速性が非常に高い吻合デバイスと、の両者のメリットを兼ね備え、且つ、手術において要求される短時間での処置を可能とする吻合方法を提供することができる。
【0061】
ところで、前記(縫合ステップ)においては、当然ながら縫合に使用した糸の抜けを防止する糸留め処置を行うのであるが、例えば次のように糸留め処置を行うことで、処置時間の更なる短縮が実現する。
・前記簡易な処置によって仮止めした部位以外の吻合対象部位を、全長に亘って手技により縫合処置する際の、当該縫合処置の始点と終点との2点において“糸留め”を行う。
・この2点における“糸留め”のうち少なくとも何れか1点については、簡易な処置に用いられた上記第1実施形態(各変形例を含む)の吻合デバイス1の糸留め部に対して糸を固定する。
【0062】
さらに、上述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示した複数の構成要件の適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示す全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0063】
1…吻合デバイス、 2a…針状部、 2b…組織支持部、 2a1…穿刺要素先端、 2,2´…穿刺要素、 3a…第1把持部、 3b…第2把持部、 3af…第1把持面、 3bf…第2把持面、 4a,4b…取手部、 5a,5b…突起部、 5as,5bs…スリット、 5ah.5bh…貫通孔、 5st…スリット部材、 5r…略円環形状部材、 5br…棒状部材、 5rt…ラチェット部材、 rt1…ラチェット部、 rt2…係合部、 12…クリップ本体部、 14a,14b…ゴム部材、 14ah,14bh…貫通孔、 20…本体部、 100…糸、 110…糸付き針、 151a,151b…挟み部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば生体組織等の吻合対象物を吻合する為の吻合デバイス及び吻合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの管状体(例えば血管など)を相互に連結する外科手術として、吻合術が知られている。この吻合術では、連結した管状体の内腔内を流体が流れるように、2つの管状体を吻合して連結する。この連結に係る部位から流体が漏れることがないように、吻合しなくてはならない。
【0003】
このような吻合術は、血管の閉塞を治療する為に多く用いられている。例えば、冠動脈バイパス術(CABG術)においては、心臓表面の冠動脈に生じた閉塞部下流に、血流を供給する能力のある自己血管を吻合するものである。
これは、閉塞部によって、その冠動脈が血液を供給していた心臓組織に血流不足をきたすため、血流を補うようおこなわれる。
このような吻合術において用いられている具体的な吻合方法としては、縫合糸を用いた手技による血管の縫合を挙げることができる。手技による血管の縫合は、管と管とを血液の漏れがないように縫合糸で縫うため難易度が高い。よって術者の経験/技術が必要である。また、このような手技によるCABG術においては、より速く血流を再開させる必要があるため、なるべく速く処置を完了させることが好ましい。とくに、近年普及している人工心肺装置を使用しないCABG術においては、心臓が拍動したまま処置を行うため、さらに難易度が高くなり、吻合時間が延長する傾向がある。
【0004】
このような事情を鑑みて、例えば特許文献1に次のような技術が提案されている。すなわち、特許文献1に開示されている技術では、生体血管の外翻部と人工血管の端部とを、当該管状体吻合器具の保持板に設けられた複数のガイド糸挿入溝(スリット)にそれぞれ挿入されたガイド糸にて仮止めし、その各ガイド糸間の保持板間に配設された複数の吻合デバイスとしてのクリップによって、吻合部位の全長を吻合する。つまり、特許文献1に開示されている技術では、位置決めの為の補助的処置として縫合糸による吻合手技を用い、吻合デバイスによって実質的処置を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−33360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来からある縫合糸を用いた手技は、特許文献1に開示されているような吻合デバイスが提案される以前から利用されている為、多大な技術の蓄積があり、熟練者は血液が漏れないようにかつ短時間で処置を完了する実績がある。一方、特許文献1に開示されているような吻合デバイスによれば、吻合処置が容易になるが、実績の面では乏しい。
【0007】
上述したような事情から、従来からある縫合糸を用いた手技を利用し、かつ短時間での処置が可能な技術が望まれている。
【0008】
なお、特許文献1に開示されている技術では、吻合デバイスと共に従来の縫合糸による手技も用いているが、あくまでも位置決めの為の補助的処置(仮止め)としての手技である。吻合デバイスで実質的な吻合処置を行った後に、位置決めに利用した糸の抜糸を行うか、抜糸せずに糸の結紮を行う必要がある。
【0009】
本発明は、前記の事情に鑑みて為されたものであり、従来の縫合糸による手技と吻合デバイスによる処置とを組み合わせ、例えば血管の吻合を容易にし、短時間で行うことができる吻合デバイス及び吻合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明の第1の態様による吻合デバイスは、
吻合対象物を吻合する弾性を有する吻合デバイスであって、
前記吻合対象物の縫合処置に供された糸を、当該吻合デバイスに対して固定する糸留め部を具備する
ことを特徴とする。
【0011】
前記の目的を達成するために、本発明の第2の態様による吻合方法は、
吻合対象部位を、弾性を有する吻合デバイスを用いて位置決め処置する位置決め処置ステップと、
前記位置決め処置ステップにおいて位置決め処置した部位以外の吻合対象部位を、全長に亘って縫合処置する縫合処置ステップと、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、手技による処置と吻合デバイスによる処置とを組み合わせることにより、吻合手技を容易にし、結果として短時間で行うことができる吻合デバイス及び吻合方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る吻合デバイスの一構成例を示す斜視図。
【図2】針状部と組織支持部とを互いに離間させた状態の吻合デバイスを示す図。
【図3】吻合デバイスの突起部に形成されたスリットの寸法と縫合に用いる糸の寸法とを示す図。
【図4】吻合処置後の吻合デバイスの態様を示す図。
【図5】吻合デバイスによる位置決め処置と、糸付き針を用いた手技による処置と、を組み合わせた処置の一例を示す図。
【図6】第1実施形態に係る吻合デバイスを用いた血管吻合処置による冠動脈バイパス手術の一場面を示す図。
【図7】第1実施形態に係る吻合デバイスを用いた血管吻合処置による冠動脈バイパス手術の一場面を示す図。
【図8】第1変形例に係る吻合デバイスの一構成例を示す図。
【図9】第2変形例に係る吻合デバイスの一構成例を示す図。
【図10】第3変形例に係る吻合デバイスの取手部に嵌め込むゴム部材の一構成例を示す図。
【図11】ゴム部材を嵌め込まれた第3変形例に係る吻合デバイスの取手部を示す図。
【図12】第4変形例に係る吻合デバイスの一構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る吻合デバイスについて、図面を参照して説明する。本第1実施形態に係る吻合デバイスは、吻合対象物として、例えば生体組織(特に血管)等を想定している。
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態に係る吻合デバイスの一構成例を示す斜視図である。
本第1実施形態に係る吻合デバイス1は、第1把持部3aを備える針状部2a及び第2把持部3bを備える組織支持部2bが形成されたクリップ本体部12と、該クリップ本体部12に対して力を印加する為の取手部4a,4bと、スリット5asが設けられた突起部5a及びスリット5bsが設けられた突起部5bと、を具備する。以降、取手部4a,4bが設けられている部位側を“基端側”と称し、針状部2a及び組織支持部2bが設けられている部位側を“末梢側”と称する。
【0016】
前記クリップ本体部12は、初期状態(何ら外力が印加されていない状態)においては図1に示すように環状(本例では略円環形状)を呈する。また、初期状態においては、針状部2aと組織支持部2bとは、クリップ本体部12の径方向において重複代(ちょうふくしろ)を有する。この重複代により、結紮後の脱落可能性が低減される。
【0017】
ここで、前記クリップ本体部12は、これら針状部2aと組織支持部2bとが互いに接近するような(即ち針状部2aと組織支持部2bとが径方向に重複する初期状態に戻るような)付勢力を有している。従って、本第1実施形態に係る吻合デバイス1の材料としては、弾性を有する例えばばね鋼やCo-Cr合金(エルジロイ)などが好ましく、またさらには、超弾性部材、たとえばチタン合金、より詳しくはNi−Tiを一例としてあげることができる。
【0018】
このように構成することで、針状部2aと組織支持部2bとを引き離す為の後述の操作が意図的に行われない限り、針状部2aと組織支持部2bとが径方向に重複代を有して互いに対向する初期状態が維持される。
これにより、クリップ本体部12が有する付勢力を利用した吻合処置を行うことが可能となる。後述するが、針状部2aが吻合対象物を穿刺し、この吻合対象物を組織支持部2bが針状部2aと共に支持する。
【0019】
前記取手部4a,4bは、クリップ本体部12を2分する線Cについて互いに線対称の位置に設けられ、平面視ハ字状を呈する一対の取手部材である。
これら取手部4a,4bに対して、両者を互いに接近させる方向に(クリップ本体部12の付勢力に抗する方向に)力を印加することで、針状部2aと組織支持部2bとが互いに離間する(図2参照)。すなわち、取手部4a,4bは外力印加部を成す。
【0020】
ここで、前記取手部4a,4bを設ける位置は、上述した例に限られるものではない。すなわち、針状部2aと組織支持部2bとが互いに離間する方向に、クリップ本体部12を変形させる為の外力を印加することが可能な位置であればよい。また、取手部4a,4bの形態は、平面視ハ字状でなくともよい。すなわち、針状部2aと組織支持部2bとが互いに離間する方向に、クリップ本体部12を変形させる為の外力を印加することが可能な形態であればよい。
【0021】
なお、前記取手部4a,4bは、吻合処置を容易にする為の部材であって、必須の構成要件ではない。すなわち、前記取手部4a,4bを設けなくともよく、その場合には、針状部2aと組織支持部2bとが互いに離間する方向に、クリップ本体部12の内側から外側に向かって力を印加することで、針状部2aと組織支持部2bとを互いに離間させることができる。
【0022】
前記第1把持部3aは、針状部2aのうち組織支持部2bとの重複代近傍においてクリップ本体部12の径方向内側に凸に設けられた突出部である。
前記第2把持部3bは、組織支持部2bのうち針状部2aとの重複代近傍においてクリップ本体部12の径方向内側に凸に設けられた突出部である。
【0023】
詳細には、前記第1把持部3aと前記第2把持部3bとは、互いに対向する面をそれぞれ備え(第1把持面3af、第2把持面3bf)、それらによって、吻合処置後の吻合対象物を挟持する。
つまり、前記第1把持面3af及び前記第2把持面3bfは、吻合処置後の吻合対象物に対して互いに逆側から(挟み込むように)それぞれ当接し、クリップ本体部12が有する付勢力によって当該吻合対象物に圧接する。
【0024】
前記突起部5aは、前記クリップ本体部12と一体的に針状部2aと取手部4aとの間の部位に設けられた突出部であり、糸(不図示)を挟み込んで糸留めする為の楔形状のスリット5asが形成されている。同様に、前記突起部5bは、前記クリップ本体部12と一体的に組織支持部2bと取手部4bとの間の部位に設けられた突出部であり、糸(不図示)を挟み込んで糸留めする為の楔形状のスリット5bsが形成されている。
【0025】
上述したように、吻合デバイス1は、弾性を有する材料(例えばNi−Ti等)から成る。従って、クリップ本体部12と一体的に設けられた突起部5a,5bのスリット5as,5bsも弾性力を有しており、このスリット5as,5bsに糸を挟み込むことで容易に糸留めすることができる。詳細には、下記の寸法でスリット5as,5bsを設ける。
【0026】
図3は、突起部5a,5bのスリット5as,5bsの寸法と、縫合に用いる糸の寸法と、を示す図である。同図に示すように、縫合に用いる糸100の直径をdとすると、楔形状のスリット5as,5bsの所定位置におけるスリット幅Dを、d>Dを満たすように、当該スリット5as,5bsを形成する。
【0027】
換言すれば、糸100の直径よりも小さいスリット幅となる部位を有するように、スリット5as,5bsを形成する。このように構成することで、弾性力を有するスリット5as,5bsに対して糸100を差し込むことで、d>Dである部位において糸100が挟み込まれ、糸留めが完了する。このように、本第1実施形態に係る吻合デバイスによれば、従来のような糸の結紮が不要となり、糸留めが格段に容易且つ迅速になる。
【0028】
なお、突起部5a,5bを設ける位置は上述の例に限られず、糸留めが可能な位置であれば何れの位置であってもよい。また、設ける突起部の個数は2個である必要はなく、1つ或いは3つ以上であっても勿論よい。本第1実施形態では、2個の突起部5a,5bをそれぞれ上述の位置に設けることで、当該吻合デバイス1を挟んで両側からの糸を留めることを可能としている。
【0029】
以下、本第1実施形態に係る吻合デバイス1の一使用態様を説明する。本第1実施形態に係る吻合デバイス1による吻合処置では、吻合デバイス1による位置決め処置(本処置も兼ねている)を行った後、吻合デバイス1により処置されていない箇所(複数の吻合デバイス1を用いた場合にはそれら吻合デバイス1の間)を縫合糸で手縫いする。なお、縫合糸を用いた手技による処置については、従来の縫合糸を用いる手技による方法を用いればよい。
【0030】
まず、術者は、図2に示すように例えば挟み部151a,151bから成る鑷子・鉗子や、同様の先端を備えるマニピュレータ等のアプリケータにより、一対の取手部4a,4bを挟持し、第1把持部3aの第1把持面3afと、第2把持部3bの第2把持面3bfとを互いに離間させ(針状部2aと組織支持部2bとの重複状態を解除し)る。
【0031】
このように吻合処置可能な状態に変形させた後、針状部2aと組織支持部2bとの間に吻合対象物(図4に示す例では、膜組織t1,t2)を挿入する。
そして、鉗子・鑷子等による一対の取手部4a,4bの挟持を解除することで、クリップ本体部12が有する弾性力によって、針状部2aの穿刺要素先端2a1が吻合処置対象物(図4に示す例では、膜組織t1,t2)を貫通した後、当該針状部2aの第1把持部3aと組織支持部2bの第2把持部3bとが、膜組織t1,t2を互いに対向する側から把持する。
【0032】
換言すれば、図4に示すように、第1把持面3afと第2把持面3bfとによって、吻合処置対象物である膜組織t1,t2が挟持される。
【0033】
その後、吻合デバイス1によって当接していない箇所(例えば複数の吻合デバイス1を用いた場合には、それら吻合デバイス1同士の間)を、糸付き針によって図5に示すように手技により縫合していく。そして、この手技による縫合処置後の糸100を、吻合デバイス1のスリット5as,5bs(図5に示す例ではスリット5as)に差し込んで糸留めし(吻合デバイス1に対して固定し)、当該吻合処置が完了する。なお、余った糸100は切断すればよい。
【0034】
以下、本第1実施形態に係る吻合デバイスを用いた血管吻合処置について、冠動脈バイパス手術を例に、図6及び図7を参照して説明する。
術者は、冠動脈111の開口部111Hの縁部である開口縁111hと、バイパス血管であるグラフト113の開口縁113hと、の位置合わせを行い、冠動脈111の開口縁111hの内面と、グラフト113の開口縁113hの内面と、を当接させる。以降、この当接部位を吻合対象部位と称する。
【0035】
そして、この状態において、複数の吻合デバイス1により冠動脈111とグラフト113とを吻合処置する。具体的には、次のように吻合処置する。
上述したように、術者は、例えば鉗子・鑷子等やマニピュレータ等のアプリケータにより一対の取手部4a,4bを挟持し、針状部2aと組織支持部2bとの前記重複状態を解除し、更にそれら同士の間隔を離間させる。
【0036】
このように針状部2aと組織支持部2bとを所定間隔だけ離間させた状態で、術者は、この離間部位に、冠動脈111及びグラフト113の前記吻合対象部位を挿入する。そして、鉗子・鑷子等による一対の取手部4a,4bの挟持を解除することで、クリップ本体部12が有する弾性力によって、針状部2aが吻合対象部位(冠動脈111の開口縁111h及びグラフト113の開口縁113h)を貫通し、且つ、針状部2aの第1把持部3aと組織支持部2bの第2把持部3bとが当該吻合対象部位を挟持する。
【0037】
換言すれば、針状部2aが吻合対象部位を貫通した後、第1把持面3afと第2把持面3bfとが、互いに対向する側から当該吻合対象部位を挟みこんで把持する。
【0038】
以上説明した吻合デバイス1による吻合処置を、図7に示すように、吻合対象部位の全周について所定間隔毎に複数箇所で行うことにより、吻合デバイス1による位置決め処置が完了する。なお、この吻合デバイス1により位置決め処置した箇所については、本処置も完了している。
【0039】
続いて、上述の位置決め処置に係る吻合デバイス1同士の間の部位を、従来の縫合糸を用いる手技により縫合する。
ここで、吻合デバイス1同士の間の部位を手技により縫合していく際には、各々吻合デバイス1に到達する毎に、当該縫合に使用している糸100を、当該吻合デバイス1の突起部5a(或いは突起部5b)のスリット5as(或いはスリット5bs)に差し込んで糸留めした後、次の吻合デバイス1に向かって更に縫合していく。
【0040】
換言すれば、吻合対象部位を全長に亘って縫合処置していく過程において、吻合デバイス1に到達する毎に、その吻合デバイス1の突起部5a(或いは突起部5b)のスリット5as(或いはスリット5bs)に差し込んで、一旦糸留めしていく。この処置を繰り返し行っていくことで、吻合対象部位をその全長に亘って縫合し、最後に到達した吻合デバイス1において上述の糸留め処置を行った後、余った糸100を切り取る。以上の処理により、当該冠動脈バイパス手術が完了する。
【0041】
なお、上述のように吻合対象部位をその全長に亘って“連続的に”縫合処置するのではなく、各吻合デバイス1に到達する毎に一旦吻合処置を完了させていくようにしてもよい。すなわち、各吻合デバイス1に到達する毎に一方の突起部5a(或いは突起部5b)のスリット5as(或いはスリット5bs)にて糸留め処置を行った後、余った糸100を切り取り、続いて新たな糸100の後端部を他方の突起部5b(或いは突起部5a)のスリット5bs(或いはスリット5as)にて糸留めし、その状態で新たな糸100を用いて次の吻合デバイス1に向かって縫合処置していくようにしてもよい。
【0042】
以上説明したように、本第1実施形態によれば、従来の縫合糸を用いた手技による処置と吻合デバイスによる処置とを組み合わせた処置で吻合が容易になり、結果として吻合処置が短時間で行うことができる吻合デバイス及び吻合方法を提供することができる。
【0043】
これにより、糸留め部として突起部5aのスリット5as及び突起部5bのスリット5bsを備えていることから、吻合デバイス1の一方の糸留め部にて、糸100の後端部を糸留めし、その状態で糸100で例えば管状の吻合部位を全周に亘って縫合後に、同じ吻合デバイス1の他方の糸留め部にて糸留めすることができる。
【0044】
つまり、糸100での縫合における始めの段階(縫合処置の始点)と終わりの段階(縫合処置の終点)での糸100の結紮をする必要がないので、結紮をする時間および結紮作業に必要な比較的大きな空間が不要となり、狭い空間になりがちな手術野の処置が容易、短時間化できる。
【0045】
ところで、上述の例では突起部5a,5bをクリップ本体部12の外方へ突出するように設けているが、逆にクリップ本体部12の内方に突出するように設けてもよい。
【0046】
また、突起部5a,5bを設けずに、クリップ本体部12自体にスリット5as,5bsを設けてもよい。
さらには、スリット5as,5bsを設けた部材を、クリップ本体部12とは別体として製造し、それを接着剤等によってクリップ本体部12に対して固定してもよい。
【0047】
なお、クリップ本体部12の形状としては、上述の例のような略円環形状に限られず、例えば“D”字形状等の他の形状であっても勿論よい。また、組織支持部2bの代わりに針状部を設けて、両針の態様に構成しても勿論よい。さらには、クリップ本体部12に針状部を設けず、一対の把持部のみを設けた態様に構成しても勿論よい。つまり、クリップ本体部12の構成は、吻合可能な構成となっていれば良い。
【0048】
以上、第1実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、種々の変形及び応用が可能なことは勿論である。
《第1変形例》
以下、第1変形例に係る吻合デバイスについて説明する。説明の重複を避ける為、前記第1実施形態に係る吻合デバイスとの相違点について説明する。
【0049】
図8は、本第1変形例に係る吻合デバイスの一構成例を示す図である。同図に示すように、本第1変形例に係る吻合デバイス1では、突起部5a,5bにスリット5as,5bsを形成する代わりに貫通孔5ah,5bhを形成する。
これら貫通孔5ah,5bhの直径は、上述の縫合処置に用いる針及び糸が貫通可能な径である。糸留めを行う際には、貫通孔5ah,5bhに糸を通した後、当該貫通孔5ah,5bhの内径面と糸100とを接着剤等によって接着する。
《第2変形例》
以下、第2変形例に係る吻合デバイスについて説明する。説明の重複を避ける為、前記第1実施形態に係る吻合デバイスとの相違点について説明する。
【0050】
図9は、本第2変形例に係る吻合デバイスの一構成例を示す図である。同図に示すように、本第2変形例に係る吻合デバイス1では、突起部5aにスリット5asを形成する代わりに、糸100を固着させて設ける。
このように糸100の一端を、突起部5aに予め固定しておくことで、処置がより容易且つ迅速になる。
【0051】
なお、クリップ本体部12自体に糸100を固着させて設けても勿論よい。
《第3変形例》
以下、第3変形例に係る吻合デバイスについて説明する。説明の重複を避ける為、前記第1実施形態に係る吻合デバイスとの相違点について説明する。
図10は、本第3変形例に係る吻合デバイス1の取手部4a,4bに嵌め込むゴム部材14a,14bの一構成例を示す図である。図11は、前記ゴム部材14a,14bが嵌め込まれた第3変形例に係る吻合デバイス1の取手部4a,4bを示す図である。
【0052】
前記ゴム部材14a,14bは、縫合処置に用いる針を貫通させることが可能であって、針が貫通した後に当該ゴム部材14a,14b中に残存した糸100との摩擦が大きい(当該ゴム部材14a,14b中の糸が抜けにくい)材料から成る。この材料としては、例えばシリコーンゴム等を挙げることができる。
【0053】
本第3変形例においては、図11に示すように縫合処置に用いた糸付き針110でゴム部材14a,14bを穿刺・貫通する。これにより、当該ゴム部材14a,14bと、その中に残存した糸100と、の間の摩擦力により、糸100が、ゴム部材14a,14bに対して固定される(糸留めが為される)。つまり、糸100が吻合デバイス1に対して固定される。
【0054】
図10に示すように、ゴム部材14a,14bには吻合デバイス1の取手部4a、4bが嵌め込まれる貫通孔14ah,14bhが形成されている。換言すれば、ゴム部材14a,14bは、取手部4a,4bに嵌め込まれることで、吻合デバイス1に取り付けられる。
【0055】
なお、ゴム部材14a,14bの態様は上述のものに限定されることはなく、例えば立方体/直方体形状に構成して吻合デバイス1の任意の場所に接着等によって取付けてもよい。また、設けるゴム部材の個数は2個である必要はなく、1つ或いは3つ以上であっても勿論よい。
《第4変形例》
以下、第4変形例に係る吻合デバイスについて説明する。説明の重複を避ける為、前記第1実施形態に係る吻合デバイスとの相違点について説明する。
【0056】
本第4変形例に係る吻合デバイス1は、図12に示すように平面視で略“C”字形状を呈し弾性を有する本体部20と、該本体部20の両端部位に形成された一対の穿刺要素2,2´と、本体部20の任意の位置に設けられたラチェット機構を備える弾性を有したラチェット部材5rtと、を具備する。
このラチェット部材5rtは、ラチェット機構を構成する突起部が弾性を有して長手方向に沿って複数形成された棒状部材であるラチェット部rt1と、略円筒形状を呈し且つラチェット部rt1に挿入された係合部rt2と、を備える。
【0057】
この係合部rt2は、ラチェット部rt1に対して、図12において両矢印Mで示す方向に移動可能に構成されている。この移動過程において、係合部rt2は、ラチェット部rt1に形成されている弾性を有する複数の突起部とそれぞれ係合していく。
ラチェット部材5rtを利用した糸留め処置は、糸を弾性を有する本体部20と弾性を有する係合部rt2とで挟みことで行う。このとき、糸の太さに応じて、当該係合部rt2とラチェット部rt1との係合位置を調節することができる(係合部rt2の位置を固定させるラチェット部rt1の突起部を選択できる)。
[第2実施形態]
【0058】
以下、第2実施形態に係る弾性を有する吻合デバイスを用いた吻合方法について説明する。本第2実施形態に係る吻合方法は、少なくとも下記の2つのステップを含む吻合方法である。
(位置決めステップ)
吻合対象部位を、簡易な処置(弾性を有する吻合デバイス、例えば上記第1実施形態(各変形例を含む)の吻合デバイス1による処置)で仮止め(位置決め)するステップ。例えば、上述した図7に示す例では、吻合デバイス1による処置に相当する。
【0059】
(縫合ステップ)
前記位置決めステップを終えた後、前記簡易な処置によって仮止めした部位以外の吻合対象部位を、全長に亘って手技による縫合処置するステップ。例えば、上述した図7に示す例では、吻合デバイス1同士の間の部位を、糸付き針を用いて手技により縫合する処置に相当する。
【0060】
以上説明したように、本第2実施形態によれば、多大な実績の蓄積がある手技による縫合と、処置の容易性及び迅速性が非常に高い吻合デバイスと、の両者のメリットを兼ね備え、且つ、手術において要求される短時間での処置を可能とする吻合方法を提供することができる。
【0061】
ところで、前記(縫合ステップ)においては、当然ながら縫合に使用した糸の抜けを防止する糸留め処置を行うのであるが、例えば次のように糸留め処置を行うことで、処置時間の更なる短縮が実現する。
・前記簡易な処置によって仮止めした部位以外の吻合対象部位を、全長に亘って手技により縫合処置する際の、当該縫合処置の始点と終点との2点において“糸留め”を行う。
・この2点における“糸留め”のうち少なくとも何れか1点については、簡易な処置に用いられた上記第1実施形態(各変形例を含む)の吻合デバイス1の糸留め部に対して糸を固定する。
【0062】
さらに、上述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示した複数の構成要件の適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示す全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0063】
1…吻合デバイス、 2a…針状部、 2b…組織支持部、 2a1…穿刺要素先端、 2,2´…穿刺要素、 3a…第1把持部、 3b…第2把持部、 3af…第1把持面、 3bf…第2把持面、 4a,4b…取手部、 5a,5b…突起部、 5as,5bs…スリット、 5ah.5bh…貫通孔、 5st…スリット部材、 5r…略円環形状部材、 5br…棒状部材、 5rt…ラチェット部材、 rt1…ラチェット部、 rt2…係合部、 12…クリップ本体部、 14a,14b…ゴム部材、 14ah,14bh…貫通孔、 20…本体部、 100…糸、 110…糸付き針、 151a,151b…挟み部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吻合対象物を吻合する弾性を有する吻合デバイスであって、前記吻合対象物の縫合処置に供された糸を、当該吻合デバイスに対して固定する糸留め部を具備することを特徴とする吻合デバイス。
【請求項2】
前記糸留め部は、前記糸を挟み込むスリットであり、
前記スリットは、前記糸の直径よりも小径の部位を有するスリットである
ことを特徴とする請求項1に記載の吻合デバイス。
【請求項3】
前記糸留め部は、前記糸が挿通される貫通孔であることを特徴とする請求項1に記載の吻合デバイス。
【請求項4】
前記糸留め部は、前記縫合処置に供された糸が取り付けられている針が貫通可能であって、且つ、該針が貫通した後に当該糸留め部の内部に残存した糸との摩擦が大きい材料から成り、当該吻合デバイスに取り付けられている部材である
ことを特徴とする請求項1に記載の吻合デバイス。
【請求項5】
吻合対象部位を、弾性を有する吻合デバイスを用いて位置決め処置する位置決め処置ステップと、
前記位置決め処置ステップにおいて位置決め処置した部位以外の吻合対象部位を、全長に亘って縫合処置する縫合処置ステップと、
を有することを特徴とする吻合方法。
【請求項6】
前記縫合処置ステップにおいては、前記縫合処置の始点と終点との2点において糸留め処置を行う
ことを特徴とする請求項5に記載の吻合方法。
【請求項7】
前記位置決め処置ステップは、請求項1乃至請求項4のうち何れか一つに記載の吻合デバイスによって行われ、
前記縫合処置ステップにおける前記糸留め処置は、前記2点のうち少なくとも何れか1点については、前記吻合デバイスの糸留め部に対して糸を固定する処置である
ことを特徴とする請求項6に記載の吻合方法。
【請求項1】
吻合対象物を吻合する弾性を有する吻合デバイスであって、前記吻合対象物の縫合処置に供された糸を、当該吻合デバイスに対して固定する糸留め部を具備することを特徴とする吻合デバイス。
【請求項2】
前記糸留め部は、前記糸を挟み込むスリットであり、
前記スリットは、前記糸の直径よりも小径の部位を有するスリットである
ことを特徴とする請求項1に記載の吻合デバイス。
【請求項3】
前記糸留め部は、前記糸が挿通される貫通孔であることを特徴とする請求項1に記載の吻合デバイス。
【請求項4】
前記糸留め部は、前記縫合処置に供された糸が取り付けられている針が貫通可能であって、且つ、該針が貫通した後に当該糸留め部の内部に残存した糸との摩擦が大きい材料から成り、当該吻合デバイスに取り付けられている部材である
ことを特徴とする請求項1に記載の吻合デバイス。
【請求項5】
吻合対象部位を、弾性を有する吻合デバイスを用いて位置決め処置する位置決め処置ステップと、
前記位置決め処置ステップにおいて位置決め処置した部位以外の吻合対象部位を、全長に亘って縫合処置する縫合処置ステップと、
を有することを特徴とする吻合方法。
【請求項6】
前記縫合処置ステップにおいては、前記縫合処置の始点と終点との2点において糸留め処置を行う
ことを特徴とする請求項5に記載の吻合方法。
【請求項7】
前記位置決め処置ステップは、請求項1乃至請求項4のうち何れか一つに記載の吻合デバイスによって行われ、
前記縫合処置ステップにおける前記糸留め処置は、前記2点のうち少なくとも何れか1点については、前記吻合デバイスの糸留め部に対して糸を固定する処置である
ことを特徴とする請求項6に記載の吻合方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−399(P2013−399A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135360(P2011−135360)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「がん超早期診断・治療機器の総合研究開発/超低侵襲治療機器システムの研究開発/内視鏡下手術支援システムの研究開発プロジェクト」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「がん超早期診断・治療機器の総合研究開発/超低侵襲治療機器システムの研究開発/内視鏡下手術支援システムの研究開発プロジェクト」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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