説明

呈色性化合物を含有する粒子分散液、インクジェット用インク、呈色性化合物を含有する粒子分散液の製造方法

【課題】ロイコ染料と顕色剤と消色剤の3成分の化合物を有し、発色及び消色機能をスムーズに行うナノサイズの粒子を提供すること。
【解決手段】ロイコ染料と顕色剤と消色剤とをコア成分とし、ビニル系樹脂をシェル成分とするコアシェル構造を有する粒子が分散されている分散液であって、
前記粒子は粒子径が30〜400nmであり、前記消色剤は融点が80℃以上、凝固点が20℃以下である芳香族系脂肪酸エステル化合物を含む粒子分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呈色性化合物を含有する粒子分散液、該粒子を含有するインクジェット用インク、並びに、該粒子分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、消色又は発色可能なインクとして、ロイコ染料に代表される呈色性化合物を含む粒子を利用する技術が広く知られている。ロイコ染料に代表される呈色性化合物を含む粒子を利用する場合、主として電子又はプロトンの授受を行なうことにより呈色性化合物を着色させる化合物(顕色剤)も含む粒子が使用される。最近では、その粒子に、さらに呈色反応を制御する反応媒体(消色剤)を含む粒子を使用することで、発色及び消色機能をスムーズに行っている。
【0003】
この時、ロイコ染料と顕色剤と消色剤とは、マイクロカプセルに内包した粒子として使用される(特許文献1など)。このマイクロカプセルに内包した粒子の粒子径は数μm程度である。この特許文献1では、得られた数μm程度の粒子をインクジェット用インクやインクカートリッジに応用する旨の記載がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般的に、インクジェット用のインクは、粒子径がおよそ800nm以下であることが望ましい。粒子径が800nmより大きい場合、液滴吐出ヘッドが目詰まりするため、吐出が困難となる。ロイコ染料と顕色剤と消色剤の3成分の化合物を有し、かつ、ナノサイズであるインクジェット用インクは報告されていない。
【0005】
そのため本発明では、上記課題を解決すべく、ロイコ染料と顕色剤と消色剤の3成分の化合物を有し、発色及び消色機能をスムーズに行うナノサイズの粒子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、ロイコ染料と顕色剤と消色剤とをコア成分とし、ビニル系樹脂をシェル成分とするコアシェル構造を有する粒子が分散されている分散液であって、
前記粒子は粒子径が30〜400nmであり、前記消色剤は融点が80℃以上、凝固点が20℃以下である芳香族系脂肪酸エステル化合物を含む粒子分散液が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ロイコ染料と顕色剤と消色剤の3成分の化合物を有し、発色及び消色機能をスムーズに行うナノサイズの粒子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明に係る乳化分散重合法の工程を説明する図である。
【図2】図2は、呈色性を有する一般的な粒子のヒステリシス特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
[インクジェット用インクのサイズ]
インクジェット記録方式はプリンター印刷方式のひとつで、インクを微液滴化し、紙等の印刷媒体に直接吹き付けて、文字や図形を印刷する方式である。
【0010】
インクジェット記録方式で使用される液滴吐出ヘッドのノズル孔のノズル径は、20μm程度である。ミクロンオーダの粒子径を有する粒子をインクジェット用のインクとして使用する場合、ノズル孔が詰まる可能性がある。そのため、インクジェット用のインクとして使用できる粒子の大きさは、10nmから800nm程度の範囲であり、好ましくは30nmから400nmの範囲である。
【0011】
また、ミクロンオーダの粒子径(以下、「マイクロ粒子」と呼ぶ)を有する粒子は、水系媒体中で静置すると自然沈降するが、ナノオーダの粒子径を有する粒子(以下、ナノ粒子と呼ぶ)はブラウン運動の働きで沈降が起きない。そのため、ナノ粒子をインクジェット用のインクとして利用した場合、インクの保存性や安定性が高くなる。
【0012】
さらに、ナノ粒子を使用することで、インクの比表面積が大きくなるため、インクの発色性も高くなる。
【0013】
[コア・シェル構造のナノ粒子を作製するための要素]
一般に、ナノ粒子を作製する場合、乳化重合法や分散重合法などの公知の手法が利用される。しかし、従来の技術では、コア成分としてロイコ染料、顕色剤及び消色剤の3つの異なる成分を内包するコア・シェル構造のナノ粒子を作製することが困難である。
【0014】
コア成分が、シェル成分であるモノマーと混ざり合って一体化し、粒子が発色しないことがある。そのため、シェル成分であるモノマーがコア成分の表面全体を覆わないような、条件の開発が重要となる。
【0015】
消色剤を乳化分散する場合、一般的には加温されて溶融状態となっている。しかし、冷却して固化状態となると、粒子の安定性が悪くなる。そのため、コア成分の溶融状態及び固化状態における、物性値の変化に適応するシェル材料の設定が重要となる。
【0016】
乳化重合に一般的に使用される触媒は、コア成分の一つであるロイコ染料と反応するため、乳化重合反応が進行しないことがある。そのため、ロイコ染料と反応しない触媒の選定が重要となる。
【0017】
乳化工程で用いる乳化剤(界面活性剤)がコア成分と混ざり合い、粒子が発色・消色しないことがある。そのため、コア成分と混ざり合わない乳化剤の選定が重要となる。
【0018】
コア・シェル構造のシェル厚が厚い場合、粒子の発色を阻害して色が薄くなることがある。また、シェル厚が薄い場合、粒子の強度が低くなり、粒子が脆くなることがある。そのため、粒子のシェル厚の制御は重要となる。シェル厚の制御は乳化重合の際のモノマーの種類と配合量に依存するため、モノマーの選定が重要となる。
【0019】
コア成分であるロイコ染料、顕色剤、消色剤は、水による還元作用を受けて白色化し、発色しないことがある。したがって、乳化分散工程の条件設定が重要となる。
【0020】
(本発明の乳化分散重合法)
本発明による新しい乳化分散重合方法を下記に詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の乳化分散重合法の工程を説明する図である。
【0022】
まず、コア成分の組成物を水系媒体中で80℃〜100℃の温度の溶融状態にする。そして、この溶融状態のコア成分の組成物を、乳化分散することで、粒子径が30〜400nmの微粒子を形成する。乳化分散する際に使用する界面活性剤の量は、20%未満であることが、30〜400nmの粒子径を形成する上で好ましい。その後、60℃〜80℃の温度まで温度を下げ、微粒子を固化させると同時に、ビニル系単量体を添加して、重合反応を進行させる。
[ロイコ染料]
ロイコ染料とは、呈色性化合物の一つであり、例えば、以下に一例を化学式で示すように、無色型と発色型の両形態をとることの可能な互変異性化合物である。
【0023】
本発明で使用できるロイコ染料としては、例えば、ロイコオーラミン類、ジアリールフタリド類、ポリアリールカルビノール類、アシルオーラミン類、アリールオーラミン類、ローダミンBラクタム類、インドリン類、スピロピラン類、フルオラン類などの公知の有機化合物材料を使用することが可能である。具体的な化合物としては、例えば、3,3−ビス(P−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノ フタリド(クリスタルバイオレット・ラクトン;CVL)、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノ フルオラン、6−ジエチルアミノ−ベンゾ [a]−フルオラン、3,7−Bis(ジメチルアミノ)−10−ベンゾイル−フェノチアジン、2−ブロモ−3−メチル−6−ジブチルアミノ フルオラン、3,6−ビス(ジエチルアミノ) フルオラン−γ−(4'−ニトロ)−アニリノ ラクタム、2−N,N−ジベンジルアミノ−6−ジエチルアミノ フルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノ フルオラン、マラカイトグリーン・ラクトン、2−アニリノ−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−3−メチルフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−メチル−N−プロピルアミノ)フルオラン、3−[4−(4−フェニルアミノフェニル)アミノフェニル]アミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、2−アニリノ−6−(N−メチル−N−イソブチルアミノ)−3−メチルフルオラン、2−アニリノ−6−(ジブチルアミノ)−3−メチルフルオラン、3−クロロ−6−(シクロヘキシルアミノ)フルオラン、2−クロロ−6−(ジエチルアミノ)フルオラン、7−(N,N−ジベンジルアミノ)−3−(N,N−ジエチルアミノ)フルオラン、3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオラン−γ−(4′−ニトロアニリノ)ラクタム、3−ジエチルアミノベンゾ[a]−フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−キシリジノフルオラン、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−ジエチルアミノ−7−クロロアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ベンゾフルオラン、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,6−ジメチルエトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メトキシ−7−アミノフルオラン、クリスタルバイオレットカルビノール、マラカイトグリーンカルビノール、N−(2,3−ジクロロフェニル)ロイコオーラミン、N−ベンゾイルオーラミン、ローダミンBラクタム、N−アセチルオーラミン、N−フェニルオーラミン、2−(フェニルイミノエタンジリデン)−3,3−ジメチルインドリン、N,3,3−トリメチルインドリノベンゾスピロピラン、8′−メトキシ−N,3,3−トリメチルインドリノベンゾスピロピラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−ベンジルオキシフルオラン、1,2−ベンゾ−6−ジエチルアミノフルオラン、3,6−ジ−p−トルイジノ−4,5−ジメチルフルオラン、フェニルヒドラジド−γ−ラクタム、3−アミノ−5−メチルフルオランなどを単独で、又は2種類以上を混合して使用することができる。
【0024】
[顕色剤]
顕色剤とは、呈色性化合物との間で、主として電子又はプロトンの授受を行なうことにより呈色性化合物を着色させる化合物である。
【0025】
本発明においては、フェノール及びフェノール誘導体、フェノール誘導体の金属塩、フェノール性水酸基を有するベンゾフェノン誘導体、カルボン酸誘導体の金属塩、サリチル酸及びサリチル酸金属塩、スルホン酸類、スルホン酸塩類、リン酸類、リン酸金属塩類、酸性リン酸エステル類、酸性リン酸エステル金属塩類、亜リン酸類、亜リン酸金属塩類、ハロゲン化亜鉛などの公知の顕色剤を使用することができる。具体的には、例えば、4,4'−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール、4,4'−(2−エチルヘキサン−1,1−ジイル)ジフェノール、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン、4,4'−イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、2,2−ジアリルー4,4'−スルホニルジフェノール、ビスフェノールA、4,4'−sec−ブチリデンビスフェノール、4,4'−シクロヘキシリデンビスフェノール、2,2'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3'−ジメチルブタン、2,2'−ジヒドロキシジフェニル、ペンタメチレン−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、2,2'−ジメチル−3,3'−ジ(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2'−ジ(4−ジヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,4'−(1−フェニルエチリデン)ビスフェノール、4,4'−エチリデンビスフェノール、(ヒドロキシフェニル)メチルフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、4,4−イソプロピリデンビス−o−クレゾール、4,4'−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、2,2'−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニル−フェニル)プロパン、4,4'−(1,3−フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール、4,4'−(1,4−フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル等のビスフェノール化合物、4,4'−ジヒドロキシジフェニルチオエーテル、1,7−ジ(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3,5−ジオキサヘプタン、2,2'−ジ(4−ヒドロキシフェニルチオ)ジエチルエーテル、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルフェニルチオエーテル、1,5−ジ(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3−オキサペンタン、ビス(4−ヒドロキシフェニルチオエトキシ)メタン、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4−ヒドロキシ安息香酸エチル、4−ヒドロキシ安息香酸プロピル、4−ヒドロキシ安息香酸イソプロピル、4−ヒドロキシ安息香酸ブチル、4−ヒドロキシ安息香酸イソブチル、4−ヒドロキシ安息香酸クロロベンジル、4−ヒドロキシ安息香酸メチルベンジル、4−ヒドロキシ安息香酸ジフェニルメチル等の4−ヒドロキシ安息香酸エステル類、安息香酸亜鉛、4−ニトロ安息香酸亜鉛等の安息香酸金属塩、4−ヒドロキシ安息香酸とポリヒドリックアルコールとの縮合物、ビス(4−(2−(4−メトキシフェノキシ)エトキシ))サリチル酸、3,5−ビス(α−メチルベンジル)サリチル酸、3,5−ビス−tert−ブチルサリチル酸などのサリチル酸類、サリチル酸亜鉛、ビス(4−(オクチルオキシカルボニルアミノ)−2−ヒドロキシ安息香酸)亜鉛等のサリチル酸金属塩、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−ブトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−フェニルスルホニルオキシ−3,3'−フェニルスルホニルジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジアリルジフェニルスルホン、3,4−ジヒドロキシ−4'−メチルジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロキシ−3,3',5,5'−テトラブロモジフェニルスルホン、2−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノール、2−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノールと4,4'−スルホニルジフェノールの混合物、4−(4−メチルフェニルスルホニル)フェノールと2−(4−メチルフェニルスルホニル)フェノールとの等量混合物、4,4'−スルホニルビス(2−(2−プロペニル))フェノール、4−((4−(プロポキシ)フェニル)スルホニル)フェノール、4−((4−(アリロキシ)フェニル)スルホニル)フェノール、4−((4−(ベンジロキシ)フェニル)スルホニル)フェノール、2,4−ビス(フェニルスルホニル)−5−メチル−フェノール等のヒドロキシスルホン類、4−フェニルスルホニルフェノキシ亜鉛マグネシウム、アルミニウム、チタン等のヒドロキシスルホン類の多価金属塩類、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、4−ヒドロキシフタル酸ジシクロヘキシル、4−ヒドロキシフタル酸ジフェニル等の4−ヒドロキシフタル酸ジエステル類、2−ヒドロキシ−6−カルボキシナフタレン等のヒドロキシナフタレン酸エステル類、ヒドロキシアセトフェノン、p−フェニルフェノール、4−ヒドロキシフェニル酢酸ベンジル、p−ベンジルフェノール、ハイドロキノン−モノベンジルエーテル、トリハロメチルスルホン類、4,4'−ビス((4−メチルフェニルスルホニル)アミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、N−(4−メチルフェニルスルホニル)−N'−(3−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)フェニル)ウレア等のスルホニルウレア類、テトラシアノキノジメタン類、2,4−ジヒドロキシ−2'−メトキシベンズアニリド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−2−((4−ヒドロキシフェニル)チオ)アセタミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)−2−((4−ヒドロキシフェニル)チオ)アセタミド、4−ヒドロキシベンゼンスルホンアニリド、4'−ヒドロキシ−4−メチルベンゼンスルホンアニリド、4,4'−ビス((4−メチル−3−フェノキシカルボニル)アミノフェニルウレイド)ジフェニルスルホン、3−(3−フェニルウレイド)ベンゼンスルホンアミド、オクタデシルリン酸、ドデシルリン酸等を使用することができ、これらは単独で、又は2種類以上を混合して使用することができる。
【0026】
また、画像記録用インク中における顕色剤の量は、呈色性化合物の量に対して、0.1〜10質量%であることが好ましい。顕色剤の量が呈色性化合物の量に対して、0.1質量%より少ないときには、インクの発色が不十分になることがある。また、顕色剤の量が呈色性化合物の量に対して、10質量%を超えるときには、消色剤と反応したときの消色または退色が不十分になることがある。
【0027】
[消色剤]
画像記録用インクに含有される消色剤とは、呈色性化合物と顕色剤との間の結合性よりも、顕色剤との間で強い結合性を有する化合物であり、呈色反応をコントロールする反応媒体である。
【0028】
一般的に、呈色性化合物が発色状態の温度領域では、固体乃至ミクロ相分離状態として存在する。また、呈色性化合物が消色状態となる温度領域では、溶融又は膨潤又は溶解した状態(消色剤が結晶の場合)または、ミクロ相分離状態(消色剤がアモルファス状態の場合)として存在することが多い。
【0029】
本発明においては、融点が80℃以上であり、凝固点が20℃以下である芳香族系脂肪酸エステル化合物を使用することが最も好ましい。融点が80℃以上であり、凝固点が20℃以下である消色剤を使用することで、室温では消色剤が半固体の状態(固溶体)となり、呈色性化合物の発色と消色の切換がスムーズになる。
【0030】
具体的には、融点が80℃以上であり、凝固点が20℃以下である芳香族脂肪酸エステル化合物は、安息香酸フェニル(化1)、安息香酸ベンジル(化2)、1,3−プロパンジオール,2−[(ベンゾイルオキシ)メチル]−2−エチル−,ジベンゾアート(化3)、ペンタエリトリトール テトラベンゾアート(化4)、又は1,3−プロパンジオール,2,2'−[オキシビス(メチレン)]ビス[2−(ベンゾイルオキシ)メチル]−,テトラベンゾアート(化5)に示す化合物などがあり、これらの化合物を含むことが好ましい。これらの化合物は、ロイコ染料と顕色剤との呈色反応を制御する特性に優れ、また、ヒステリシス幅の広い発色・消色特性を有する。
【0031】
【化1】

【0032】
【化2】

【0033】
【化3】

【0034】
【化4】

【0035】
【化5】

本発明では、上記の芳香族脂肪酸エステル化合物以外にも、使用する呈色性化合物の特性に応じて、下記の公知の消色剤を混合することにより、併用して使用することができる。ただし、併用する場合は、消色剤全体として、融点が80℃以上であり、凝固点が20℃以下であることが好ましい。
【0036】
一般的に使用される消色剤例を以下に列挙して示す。
【0037】
《コール酸、リトコール酸、テストステロン及びコルチゾン、並びにこれらの誘導体》
コール酸、コール酸メチルエステル、リトコール酸、リトコール酸メチルエステル、ヒドロキシコール酸、ヒドロキシコール酸メチルエステル、テストステロン、メチルテストステロン、11α−ヒドロキシメチルテストステロン、ヒドロコルチゾンなどが挙げられる。これらの中でも、1分子中に2つ以上のヒドロキシル基を有するものが好ましい。
【0038】
《1分子中に1個以上のアルコール性水酸基を有する5員環以上の非芳香族系の環状化合物》
脂環式1価アルコール(例えばシクロドデカノールなど)、脂環式2価アルコール(例えば1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロドデカンジオールなど)、糖類及びその誘導体(例えば、グルコース、サッカロースなど)、環状構造を有するアルコール類(例えば1,2:5,6−ジイソプロピリデン−D−マンニトールなど)などが挙げられる。これらの化合物の中でも、融点が50℃以上である化合物が好ましい。
【0039】
上記化合物と、ステロール化合物との混合物も使用することができる。ステロール化合物は単独で使用する場合、加熱処理によって消色状態の粒子を冷却した際に、消色剤が相分離することで、発色状態が再現してしまうことがある。しかし、1分子中に1個以上のアルコール性水酸基を有する5員環以上の非芳香族系の環状化合物と併用することで、これが界面活性剤と同様の作用により、消色剤成分の相分離が抑制されるため、消色状態が安定化される。
【0040】
ステロール化合物の具体例としては、コレステロール、スチグマステロール、プレグネノロン、メチルアンドロステンジオール、エストラジオール・ベンゾエート、エピアンドロステン、ステノロン、β−シトステロール、プレグネノロン・アセテート、β−コレステロール、5,16−プレグナジエン−3β−オール−20−オン、5α−プレグネン−3β−オール−20−オン、5−プレグネン−3β,17−ジオール−20−オン・21−アセテート、5−プレグネン−3β,17−ジオール−20−オン・17−アセテート、5−プレグネン−3β,21−ジオール−20−オン・21−アセテート、5−プレグネン−3β,17−ジオール・ジアセテート、ロコゲニン、チゴゲニン、エスミラゲニン、ヘコゲニン、ジオスゲニン及びその誘導体などが挙げられる。
【0041】
《環式糖アルコールと、環式糖アルコール以外のアルコール性水酸基を有する5員環以上の非芳香族環式化合物又は環式糖アルコールの誘導体との併用》
環式糖アルコールの例としては、D−グルコース、D−マンノース、D−ガラクトース、D−フルクトース、L−ソルボース、L−ラムノース、L−フコース、D−リボデソース、α−D−グルコース=ペンタアセテート、アセトグルコース、ジアセトン−D−グルコース、D−グルクロン酸、D−ガラクツロン酸、D−グルコサミン、D−フルクトサミン、D−イソ糖酸、ビタミンC、エルトルビン酸、トレハロース、サッカロース、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレジトース、スタキオース、メチル=α−グルコピラノシド、サリシン、アミグダリン、オイキサンチン酸などが挙げられる。
【0042】
環式糖アルコール以外のアルコール性水酸基を有する5員環以上の非芳香族環式化合物又は環式糖アルコールの誘導体の例としては、脂環式1価アルコール、例えば、シクロドデカノール、ヘキサヒドロサリチル酸、メントール、イソメントール、ネオメントール、ネオイソメントール、カルボメントール、α−カルボメントール、ピペリトール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、1−p−メンテン−4−オール、イソプレゴール、ジヒドロカルベオール、カルベオールなど;脂環式多価アルコール、例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、フロログルシトール、クエルシトール、イノシトール、1,2−シクロドデカンジオール、キナ酸、1,4−テルピン、1,8−テルピン、ピノールヒドラート、ベツリンなど;多環式アルコール誘導体、例えば、ボルネオール、イソボルネオール、アダマンタノール、ノルボルネオール、フェンコール、ショウノウ、イソソルバイド;環式糖アルコールの誘導体、例えば、1,2:5,6−ジイソプロピリデン−D−マンニトールなどを挙げることができる。
【0043】
《高分子消色剤》
高分子消色剤としては、例えば、糖骨格を有する高分子化合物、ポリアミノ酸、ヒドロキシル基を有する高分子化合物、アミノ基を有する高分子化合物、ポリビニルアセタール、ポリアクリロニトリル及びこれらの構成単量体同士の共重合体などが挙げられる。この時、高分子消色剤の平均分子量は800以上、より好ましくは10000以上である。
【0044】
糖骨格を有する高分子化合物の具体例としては、デンプン、例えば、α−デンプン、β−デンプン、コーンスターチ、馬鈴薯スターチ、片栗粉など;デンプンを主成分とする穀物粉体、例えば小麦粉、大麦粉、らい麦粉、米粉など;デンプンの誘導体、例えば、メチル化スターチ、エチル化スターチ、アセチル化スターチ、ニトロ化スターチなど;セルロース;セルロース誘導体、例えば、酢酸セルロース、メチル化セルロース、エチル化セルロース、ニトロ化セルロースなど;多糖類及びその誘導体、例えば、デキストリン(糊精)、デキストラン、マンナン、アミロペクチン、アミロース、キシラン、グリコーゲン、イヌリン、リケニン、キチン、ヘミセルロース、ペクチン、植物ゴム、アガロース、カラゲニン、サポニンなどが挙げられる。
【0045】
[界面活性剤]
本発明の乳化分散重合で使用する界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩,アルキルフェノールスルホン酸塩,アルキルジフェニール環を有するスルホン酸塩,アルキルアリルスルホン酸のホルマリン縮合物,アルキルアリルスルホン酸塩のケトン化合物,スルホコハク酸エステル塩,或いはポリオキシエチレンアルキルスルホネート塩等の陰イオン界面活性剤、並びに、脂肪酸と、グリセリン,グリコール,ペンタエリスリトール,或いはソルビタン若しくはマンニタン等のエステル類との縮合化合物、又は、ポリエチレンオキシドと、高級脂肪酸,高級アルコール,高級アルキルアミン,或いはアルキルフェノールリン酸との縮合化合物、又は、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノール等の非イオン界面活性剤を使用することができる。これらの化合物は1種類単独で又は2種類以上を併用して使用することができる。
【0046】
[重合開始剤]
本発明の乳化分散重合で使用する重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素等を使用することができ、必要に応じて還元剤を併用して使用することも可能である。
【0047】
[ビニル系単量体]
本発明においては、ビニル系単量体を重合したビニル系樹脂が、水系分散性粒子のシェル層となることが好ましい。本発明で使用できるビニル系単量体としてはシアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、スルホン酸基、リン酸基等の各官能基、並びに前記官能基から誘導される基、から選ばれる一種類もしくは二種類以上の基を有するビニル系単量体を使用することが好ましい。
【0048】
前記官能基から選ばれた一種類もしくは、二種類以上の基を有するビニル系単量体としては、具体的には、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸又はメタクリル酸(以下アクリル基又はメタクリル基を総称して(メタ)アクリルと、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを総称して(メタ)アクリレートと、それぞれ称す。)、
β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ω−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシ(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、スチレンスルホネート、(メタ)アクリルスルホネート、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホネート、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、3−クロロ−2−アシッドホスホキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0049】
また、前記官能基から誘導される基から選ばれた一種以上の基を有するビニル系単量体としては、例えば、カルボキシル基又はアミノ基を有する酸又は塩基性の単量体を中和して得られる塩等が挙げられる。
【0050】
本発明で使用できるビニル系単量体としては、上述したビニル系単量体以外にも、反応性基として二重結合を有し、共重合可能なビニル系単量体、及び、1分子中にこれらのビニル系単量体と重合性の不飽和基を二つ以上有する単量体を使用することもできる。
【0051】
反応性基として二重結合を有し、共重合可能なビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フルフリルメタクリレート等が挙げられる。
【0052】
また、1分子中に重合性の不飽和基を二つ以上有する単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0053】
前述のビニル系単量体は、全て一種類あるいは、二種類以上を併用して使用することができる。
【0054】
[配合比]
本発明で使用する呈色性化合物、顕色剤、及び、消色剤の好ましい配合比を以下に述べる。
【0055】
顕色剤は、呈色性化合物1質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、1〜5質量部であることがより好ましい。呈色性化合物1質量部に対して、顕色剤が0.1質量部未満の場合には、発色が不充分となることがある。また、呈色性化合物1質量部に対して、顕色剤が10質量部を超える場合、呈色性化合物と顕色剤の相互作用を、消色剤が充分に減少させることが困難になることがある。
【0056】
消色剤は、呈色性化合物1質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましく、10〜50質量部であることがより好ましい。呈色性化合物1質量部に対して、消色剤が1質量部未満の場合には、十分な消色効果を得ることが困難になることがある。また、呈色性化合物1質量部に対して、消色剤が100質量部を超える場合、発色が不充分になることがある。
【0057】
また、呈色組成物のコア成分に対するビニル系単量体の配合割合は、1〜50質量%であることが好ましく、10〜20質量%であることがさらに好ましい。呈色組成物のコア成分に対して、ビニル系単量体の配合割合が1質量%以下の場合、コア成分を内包するモノマー成分が不足するため、コアシェル構造にならないことがある。また、呈色組成物のコア成分に対して、ビニル系単量体の配合割合が50質量%以上の場合、単独のホモポリマーが生成することがある。
【0058】
[粒子径測定]
作製した各種粒子の粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2100(株式会社島津製作所製)を使用して測定した。
【0059】
[シェルの膜厚測定方法]
走査型電子顕微鏡(日本電子製、JXA−840)を用いて写真をとり、写真の寸法からコア部分とシェル部分の径を測定した。得られた径から、シェルの膜厚の粒子径の割合を計算した。
【0060】
[ヒステリシス特性]
図2は、呈色性を有する一般的な粒子のヒステリシス特性を示す図である。図2において、縦軸は色濃度であり、横軸は温度であり、色濃度−温度曲線に関してヒステリシス特性を有することを示している。温度変化による色濃度の変化は、矢印に沿って進行する。第1色相の色濃度C1と、第2色相の色濃度C2との間で互変性を呈し、完全発色温度(℃)T1、発色開始温度(℃)T2、消色開始温度(℃)T3、完全消色温度(℃)T4を有する。
【0061】
C1にあって温度が上昇する過程(T1→T3)では、T3に達すると、C1は変色し始め、T3より高い温度域であるT4で完全にC2となる。C2にあって温度が下降する過程(T4→T2)では、T3より低い温度T2に達すると、C2は変色し始め、T2より低い温度T1より低い温度域で完全にC1となる。つまり、T2とT3との間の温度域でC1或いはC2が選択的に保持されるヒステリシス特性を示す。
【0062】
本発明に係る水分散性粒子をインクジェット用のインクに使用する場合、T1は−50〜0℃の範囲であることが好ましく、また、T4は50〜150℃の範囲にあることが好ましい。さらに、40℃〜70℃のヒステリシス幅を有することが好ましい。
【0063】
本発明の好ましい形態においては、消色剤は、室温において半固体の状態(固溶体)になっている。そのため、昇温過程では呈色粒子は発色状態にあり、降温過程では消色状態にあるため、好ましいヒステリシス特性を得ることができる。
【0064】
[インクジェット用インク]
インクジェット用インクは、一般的に、バインダー樹脂を含む水性媒体中に色材粒子を分散し、必要に応じてpH調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、電導度調整剤、浸透剤、紫外線吸収剤、防腐剤等の添加剤を加える。これにより、所望するインクジェット記録方式に適したインク物性値を有するインクジェット用インクが得られる。
【0065】
この時、色材粒子の含有量は、インク全量に対して1〜20質量%であることが好ましく、5〜10質量%であることがより好ましい。色材粒子の含有量がインクに対して1質量%未満の場合、鮮明な熱変色性を示さないことがある。また、色材粒子の含有量がインクに対して20質量%を越える場合、消色時に色残りが発生することがあり、また、インク中の固形分が大きくなるため、ノズルの目詰まりを発生しやすくなることがある。
【0066】
バインダー樹脂は、目的とするインク浸透性の有無や材質等に応じて、エマルジョン樹脂、アルカリ可溶型樹脂、水溶性樹脂等の各種樹脂を利用することができる。また、バインダー樹脂の含有量は、インク全量に対して、1〜50質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましい。
【0067】
水や必要により含有される有機溶剤の総含有量は、インク全量に対して1〜90質量%であることが好ましい。この時、有機溶剤の量はインク全量に対して、1〜40質量%の範囲であることが好ましく、具体的な材料としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、チオグリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、N−メチル−2−ピロリドン等の含窒素化合物等の、親水性有機溶剤を使用することが好ましい。これらの有機溶剤は湿潤剤としてインクの乾燥を調整や、ノズルの目詰り防止のために、必要に応じて使用される。
【0068】
本発明の水性分散粒子をインクジェット用のインクに適用する場合、連続方式、オンデマンド方式等、汎用のインクジェット記録装置に直接収容して実用に供する他、インクカートリッジに収容し、該インクカートリッジをインクジェット記録装置にセットして実用に供することもできる。これらインクジェット記録装置により、紙、合成紙、コート紙、プラスチックシート、プラスチック、木材、金属、ガラス等の造形体、布帛、不織布等の任意の対象物に噴射させて適宜印刷像を形成して感熱変色性画像が得られる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、実施例中において部とあるのは質量部を示す。
【0070】
本実施例で使用したロイコ染料の商品名と化合物名を下記に示す。
1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノ フルオラン(1,3−Dimethyl−6−diethylamino fluoran);
6−ジエチルアミノ−ベンゾ [a]−フルオラン(6−Diethlamino−benzo [a]−fluoran);
3,7−Bis(ジメチルアミノ)−10−ベンゾイル−フェノチアジン(3,7−Bis(dimethylamino)−10−benzoyl−phenothiazine);
2−ブロモ−3−メチル−6−ジブチルアミノ フルオラン(2−Bromo−3−methyl−6−dibutylamino fluoran);
3,6−ビス(ジエチルアミノ) フルオラン−γ−(4'−ニトロ)−アニリノ ラクタム(3,6−Bis(Diethylamino) fluoran−γ−(4'−Nitro)−anilino lactam);
3,3−ビス(P−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノ フタリド(3,3−Bis(P−dimethylaminophenyl)−6−dimethylamino phthalide);
2−N,N−ジベンジルアミノ−6−ジエチルアミノ フルオラン(2−N,N−dibenzylamino−6−diethylamino fluoran);
2−(2−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノ フルオラン(2−(2−chloroanilino)−6−dibutylamino fluoran);
本実施例で使用した顕色剤の化合物名を示す。
4,4'−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール、
4,4'−(2−エチルヘキサン−1,1−ジイル)ジフェノール、
2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン、
4,4'−イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、
2,2−ジアリルー4,4'−スルホニルジフェノール、である。
【0071】
本発明で使用した消色剤については、表1にまとめて示す。
【0072】
【表1】

(実施例1)
容量2リットルの四つ口フラスコに冷却管、温度計、単量体投入用500cc分液ロート、撹拌装置を取り付け、温水槽中にセットした。その四つ口フラスコに、イオン交換水400部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ(界面活性剤)4部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(界面活性剤)3部を溶解させた。次に、2−(2−chloroanilino)−6−dibutylamino fluoran(TH107保土谷化学製、ロイコ染料Black、商品名)2部、4,4'−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール(和光純薬、顕色剤、試薬名)5部、WAX−105(日油製、消色剤)30部をフラスコ内に攪拌混入し、内温を90℃になるまで昇温した。30分間攪拌を続け、その後、フラスコ内の温度を70℃にまで下げ、30分間放置し、乳化した粒子が固化することを確認した。その後、過硫酸アンモニウム(重合開始剤)0.5部を溶解させた。メタクリロニトリル2部、メタクリル酸2部、スチレン5部、からなる単量体の混合溶液を作製し、この混合溶液を分液ロートにてフラスコ内に撹拌下で3時間に亘って添加し、5時間で重合を終了した。
【0073】
得られた粒子分散液は、鮮明な黒色であり、平均粒子径0.22μm、膜厚3%、粘度3.6mPa・s(25℃、150s−1)、固形分19.5質量%であった。
【0074】
(実施例2)
容量2リットルの四つ口フラスコに冷却管、温度計、単量体投入用500cc分液ロート、撹拌装置を取り付け、温水槽中にセットした。その四つ口フラスコに、イオン交換水500部、ナフタレンスルホン酸ソーダホルマリン縮合物(界面活性剤)3部、ステアリン酸ナトリウム(界面活性剤)4部を溶解させた。次に、Vermilion−DCF(保土谷化学製、ロイコ染料Red、商品名)2部、4,4'−(2−エチルヘキサン−1,1−ジイル)ジフェノール(和光純薬、顕色剤、試薬名)5部、WAX−105(日油製、消色剤)30部をフラスコ内に攪拌混入し、内温を90℃になるまで昇温した。30分間攪拌を続け、その後、フラスコ内の温度を70℃にまで下げ、30分間放置し、乳化した粒子が固化することを確認した。その後、過硫酸カリウム(重合開始剤)0.5部を溶解させた。アクリロニトリル4部、アクリル酸3部、グリシジルメタクリレート3部、スチレン1部からなる単量体の混合溶液を作製し、この混合溶液を分液ロートにてフラスコ内に撹拌下で3時間に亘って添加し、5時間で重合を終了した。
【0075】
得られた乳化重合体の粒子分散液は鮮明な赤色であり、平均粒子径0.27μm、膜厚5%、粘度3.5mPa・s(25℃、150s−1)、固形分15.8質量%であった。
【0076】
(実施例3)
容量2リットルの四つ口フラスコに冷却管、温度計、単量体投入用500cc分液ロート、撹拌装置を取り付け、温水槽中にセットした。その四つ口フラスコに、イオン交換水400部、スルホコハク酸ソーダ(界面活性剤)3部を溶解させた。次に、CVL:3,3−Bis(P−dimethylaminophenyl)−6−dimethylamino phthalide(保土谷化学製、ロイコ染料Violet、商品名)2部、4,4'−イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)(和光純薬、顕色剤、試薬名)5部、WAX−7(日油製、消色剤)30部をフラスコ内に攪拌混入し、内温を90℃になるまで昇温した。30分間攪拌を続け、その後、フラスコ内の温度を70℃にまで下げ、30分間放置し、乳化した粒子が固化することを確認した。その後、過硫酸アンモニウム(重合開始剤)0.5部を溶解させた。アクリロニトリル3部、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート3部、スチレン1部、ジビニルベンゼン1部からなる単量体の混合溶液を作製し、この混合溶液を分液ロートにてフラスコ内に撹拌下で3時間に亘って添加し、5時間で重合を終了した。
【0077】
得られた乳化重合体の粒子分散液は、平均粒子径0.25μm、膜厚4%、粘度3.4mPa・s(25℃、150s−1)、固形分19.5質量%であった。
【0078】
(実施例4)
容量2リットルの四つ口フラスコに冷却管、温度計、単量体投入用500cc分液ロート、撹拌装置を取り付け、温水槽中にセットした。その四つ口フラスコに、イオン交換水500部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ(界面活性剤)1部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(界面活性剤)2部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(界面活性剤)1部を溶解させた。次に、B.L.M.B:3,7−Bis(dimethylamino)−10−benzoyl−phenothiazine(保土谷化学製、ロイコ染料Blue、商品名)2部、4,4'−イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)(和光純薬、顕色剤、試薬名)5部、WAX−7(日油製、消色剤)30部をフラスコ内に攪拌混入し、内温を90℃になるまで昇温した。30分間攪拌を続け、その後、フラスコ内の温度を70℃にまで下げ、30分間放置し、乳化した粒子が固化することを確認した。過硫酸カリウム(重合開始剤)0.4部を溶解させた。アクリロニトリル5部、メタクリル酸1部、スチレン1部、グリシジルメタクリレート2部からなる単量体の混合溶液を作製し、この混合溶液を分液ロートにてフラスコ内に撹拌下で3時間に亘って添加し、5時間で重合を終了した。
【0079】
得られた乳化重合体の粒子分散液は鮮明な青色であり、平均粒子径0.11μm、膜厚4%、粘度8.1mPa・s(25℃、150s−1)、固形分15.8質量%であった。
【0080】
(実施例5)
ロイコ染料をGreen−DCF:2−N,N−dibenzylamino−6−diethylamino fluoran(保土谷化学製、ロイコ染料Green、商品名)に、顕色剤を2,2−ジアリルー4,4'−スルホニルジフェノールに、消色剤をWAX−105(日油製、消色剤)に変えた以外は、実施例1と同様の手順で行った。
【0081】
得られた乳化重合体の粒子分散液は鮮明な青色であり、平均粒子径0.16μm、膜厚4%、粘度4.6mPa・s(25℃、150s−1)、固形分16.6質量%であった。
【0082】
(実施例6)
ロイコ染料をRed−DCF:6−Diethlamino−benzo [a]−fluoran(保土谷化学製、ロイコ染料Red、商品名)に、顕色剤を2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパンに、消色剤をWAX−105(日油製、消色剤)に変えた以外は、実施例2と同様の手順で行った。
【0083】
得られた乳化重合体の粒子分散液は鮮明な青色であり、平均粒子径0.20μm、膜厚4%、粘度3.9mPa・s(25℃、150s−1)、固形分18.2質量%であった。
【0084】
(実施例7)
ロイコ染料をPink−DCF:3,6−Bis(Diethylamino) fluoran−γ−(4'−Nitro)−anilino lactam(保土谷化学製、ロイコ染料Red、商品名)に、顕色剤を4,4'−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノールに、消色剤をWAX−105(日油製、消色剤)に変えた以外は、実施例3と同様の手順で行った。
【0085】
得られた乳化重合体の粒子分散液は鮮明な青色であり、平均粒子径0.20μm、膜厚5%、粘度4.4mPa・s(25℃、150s−1)、固形分17.6質量%であった。
【0086】
(実施例8)
ロイコ染料をOrange−DCF:1,3−Dimethyl−6−diethylamino fluoran(保土谷化学製、ロイコ染料Orenge、商品名)に、顕色剤を4,4'−(2−エチルヘキサン−1,1−ジイル)ジフェノールに、消色剤をWAX−105(日油製、消色剤)に変えた以外は、実施例4と同様の手順で行った。
【0087】
得られた乳化重合体の粒子分散液は鮮明な青色であり、平均粒子径0.20μm、膜厚4%、粘度3.8mPa・s(25℃、150s−1)、固形分15.5質量%であった。
【0088】
(比較例1)
容量2リットルの四つ口フラスコに冷却管、温度計、単量体投入用500cc分液ロート、撹拌装置を取り付け、温水槽中にセットした。その四つ口フラスコに、イオン交換水400部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ(界面活性剤)4部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(界面活性剤)12部を溶解させた。次に、FUJI yellow 3(富士写真フイルム株式会社製、ロイコ染料、商品名)2部、フォスファノールRB410(東邦化学工業株式会社製、顕色剤、商品名)5部、WEP−8(日油・製品、消色剤、商品名)50部を撹拌しながら混合し、乳化させた。その後、フラスコ内温を90℃まで昇温し、30分間攪拌した。その後、フラスコ内の内温を70℃まで下げた。この時、フラスコ内部の乳化物は溶融状態になっていた。その後、過硫酸アンモニウム(重合開始剤)1部を溶解させた。メタクリロニトリル5部、メタクリル酸1部、スチレン5部からなる単量体の混合溶液を調製した。調製した混合溶液を分液ロートでフラスコ内に撹拌下で3時間に亘って添加し、5時間で重合を終了した。
【0089】
得られた乳化重合体の粒子分散液は鮮明な黄色であり、平均粒子径0.12μm、粘度3.5mPa・s(25℃、150s−1)、固形分17質量%であった。また、得られた分散液を、エバポレーターにより蒸発乾固させ、黄色微粉体を得た。
【0090】
(比較例2)
容量2リットルの四つ口フラスコに冷却管、温度計、単量体投入用500cc分液ロート、撹拌装置を取り付け、温水槽中にセットした。その四つ口フラスコに、イオン交換水500部、ナフタレンスルホン酸ソーダホルマリン縮合物(界面活性剤)5部、ステアリン酸ナトリウム(界面活性剤)10部、過硫酸カリウム(重合開始剤)1部を溶解させ、内温が80℃になるまで昇温した。アクリロニトリル10部、アクリル酸1部、グリシジルメタクリレート1部、スチレン10部、H−2114(山田化学株式会社製、ロイコ染料、商品名)3部、没食子酸プロピル(顕色剤)6部、エキセパールBS(花王・製品、消色剤)50部からなる混合物を混合撹拌分散させた。この混合分散体を分液ロートによりフラスコ内に撹拌下で3時間に亘って添加し、5時間で重合を終了した。
【0091】
得られた乳化重合体の粒子分散液は鮮明な緑色であり、平均粒子径0.17μm、粘度3.9mPa・s(25℃、150s−1)、固形分16.2質量%であった。また、得られた分散液を、エバポレーターにより蒸発乾固させ、緑色微粉体を得た。
【0092】
(比較例3)
容量2リットルの四つ口フラスコに冷却管、温度計、単量体投入用500cc分液ロート、撹拌装置を取り付け、温水槽中にセットした。その四つ口フラスコに、イオン交換水400部、スルホコハク酸ソーダ(界面活性剤)3部、過硫酸アンモニウム(重合開始剤)0.5部を溶解させた。リン酸ジ−n−ブチル(顕色剤)5部に、Pink535(山田化学株式会社製、ロイコ染料、商品名)4部、エキセパールMY−M(花王製・商品、消色剤)50部を加えて加熱溶解させ、溶解物をフラスコ内に撹拌混入させ、内温が80℃になるまで昇温した。アクリロニトリル14部、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート1部、スチレン5部、ジビニルベンゼン1部からなる単量体の混合溶液を調製した。得られた混合溶液を分液ロートにてフラスコ内に撹拌下で3時間に亘って添加し、5時間で重合を終了した。
【0093】
得られた乳化重合体の粒子分散液は鮮明な桃色であり、平均粒子径0.15μm、粘度3.7mPa・s(25℃、150s−1)、固形分20質量%であった。また、得られた粒子分散液をエバポレーターにより蒸発乾固させ、桃色微粉体を得た。
【0094】
(比較例4)
次に示す各原料及び質量部を用いて、比較例1と同様の手順で乳化重合体の粒子分散液を得た。また、得られた分散液をエバポレーターにより蒸発させ、橙色微粉体を得た。原料は、単量体(アクリロニトリル;16部、メタクリル酸;1部、グリシジルメタクリレート;2部、スチレン;2.5部)、触媒(過硫酸カリウム;0.4部)、顕色剤(フォスファノールRB410;8部)、ロイコ染料(Pink535;5部、Fuji Yellow 3;4部)、消色剤(エキセパールSS(花王製・製品名);50部)、界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ;20部)、ポリオキシアルキルエーテル硫酸ナトリウム;10部)、イオン交換水;500部)である。
【0095】
得られた粒子は、平均粒子径0.11μm、粘度8.1mPa・s、固形分17.7質量%であった。
【0096】
(比較例5)
2−(2−クロロアミノ)−6−ジブチルアミノフルオラン(ロイコ染料)4.5部と、4,4′−(2−エチルヘキサン−1,1−ジイル)ジフェノール(顕色剤)4.0部及び2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン(顕色剤)6.0部と、カプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル(消色剤)50.0部からなる感温変色性色彩記憶性組成物と、を混合して均一に加温溶解した。
【0097】
マイクロカプセルの壁膜形成材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー25.0部をと、助溶剤として酢酸エチルを50.0部と混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散し、加温しながら攪拌した。その後、水溶性脂肪族変性アミンとしてエチレンジアミンを2.5部加え、更に攪拌を続けることによりマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。得られた懸濁液を遠心分離することにより、マイクロカプセル顔料を単離した。
【0098】
得られたマイクロカプセル顔料は、黒色から無色に変色し、平均粒子径は2.5μm、完全消色温度は57℃、完全発色温度は−20℃であった。
【0099】
(比較例6)
2−(ジブチルアミノ)−8−(ジペンチルアミノ)−4−メチル−スピロ[5H−[1]ベンゾピラノ[2,3−g]ピリミジン−5,1′(3′H)−イソベンゾフラン]−3−オン(ロイコ染料)1.5部と、4,4′−(2−エチルヘキサン−1,1−ジイル)ジフェノール(顕色剤)3.0部及び2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン(顕色剤)5.0部と、カプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル(消色剤)50.0部からなる感温変色性色彩記憶性組成物と、を混合して、均一に加温溶解した。
【0100】
壁膜形成材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー25.0部と、助溶剤として酢酸エチルを50.0部と混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散し、加温しながら攪拌した。その後、水溶性脂肪族変性アミンとしてエチレンジアミンを2.5部加え、更に攪拌を続けることによりマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。得られた懸濁液を遠心分離することにより、マイクロカプセル顔料を単離した。
【0101】
得られたマイクロカプセル顔料は、ピンク色から無色に変色し、平均粒子径は2.5μm、完全消色温度は58℃、完全発色温度は−20℃であった。
【0102】
(比較例7)
4−[2,6−ビス(2−エトキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン(ロイコ染料)3.0部と、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン(顕色剤)10.0部と、カプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル(消色剤)50.0部からなる感温変色性色彩記憶性組成物とを混合して、均一に加温溶解した。
【0103】
壁膜形成材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー25.0部と、助溶剤として酢酸エチルを50.0部とを混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散し、加温しながら攪拌した。その後、水溶性脂肪族変性アミンとしてエチレンジアミンを2.5部加え、更に攪拌を続けることによりマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。得られた懸濁液を遠心分離することにより、マイクロカプセル顔料を単離した。
【0104】
得られたマイクロカプセル顔料は、黄色から無色に変色し、平均粒子径は2.5μm、完全消色温度は55℃、完全発色温度は−20℃であった。
【0105】
(比較例8)
ロイコ染料として4,5,6,7−テトラクロロ−3−[4−(ジエチルアミノ)−2−エトキシフェニル]−3−(1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン(ロイコ染料)2.0部を、4,4′−(2−エチルヘキサン−1、1−ジイル)ジフェノール(顕色剤)3.0部及び2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン(顕色剤)5.0部と、カプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル(消色剤)50.0部からなる感温変色性色彩記憶性組成物と、を混合して、均一に加温溶解した。
【0106】
壁膜形成材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー25.0部と、助溶剤として酢酸エチルを50.0部とを混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散し、加温しながら攪拌した。その後、水溶性脂肪族変性アミンとしてエチレンジアミンを2.5部を加え、更に攪拌を続けることによりマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。得られた懸濁液を遠心分離することによりマイクロカプセル顔料を単離した。
【0107】
得られたマイクロカプセル顔料は、青色から無色に変色し、平均粒子径は2.5μm、完全消色温度は58℃、完全発色温度は−20℃であった。
【0108】
(シェルの膜厚)
実施例により得られた粒子分散液中の粒子は、全てシェルの膜厚が粒子径の5%以内の範囲内であった。
【0109】
(インクジェット用インクの作製)
実施例及び比較例により得られた粒子分散液又はマイクロカプセル顔料を各々冷却して発色させ、これを10部、スチレンアクリル共重合樹脂エマルジョン(商品名:NeoCryl A−1052、固形分49%、ゼネカ株式会社製)5部、エチレングリコール10部、防黴剤(商品名:プロキセルXL−2、ゼネカ株式会社製)0.2部、消泡剤(シリコン系、商品名:SN デフォーマー 381、サンノプコ株式会社製)0.1部、及び水残量(64.7部)を均質に混合し、インクジェット用インクを調製した。
【0110】
(分散安定性試験)
実施例及び比較例により得られたインクジェット用インクの粒子径を、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2100(株式会社島津製作所製)を使用して測定した。さらに、これらのインクジェット用インクについて、約半年間静置した後、再び粒子径を測定した。静置前後の粒子径を比較することにより、分散安定性を評価した。
【0111】
(ベタ画像の消色試験)
実施例及び比較例により得られた粒子分散液又はマイクロカプセル顔料を10部と、ウレタンバインダーW−5661(40%固形分、三井化学製)40部とを混合した塗工液を作製し、YBA型ベーカーアプリケーター(ヨシミツ精機株式会社製、株式会社小平製作所)を用いて、間隙幅を25μmに設定し、普通紙(リコーマイペーパー)にベタ画像を作製した。ベタ画像は約100℃に加熱したアイロンを直接押し当てられ、冷却後、画像の色の変化を目視により確認した。
【0112】
(インクジェット用インクの吐出試験及び消色試験)
実施例及び比較例により得られたインクジェット用インクを、詰め替え用インクカートリッジ(株式会社ダイコー製、エプソン用インクリフィルビギナーボックスECOTYPE−E7、型番BB−E7)に収容した。次に、このインクカートリッジをエプソン製インクジェット用プリンター(エプソンNX−201)にセットし、下記に示すコピー用紙に印字を試みた。
・コピー用紙:マイペーパー(株式会社リコー製)、紙源(株式会社リコー製)、TYPE6200(株式会社リコー製)
得られた消色試験用印刷物は室温(25℃)下で印字画像が形成されることと、55℃以上に加温することにより印字画像は消色することと、再び室温(25℃)下で使用前の状態に戻ることとを、目視により確認した。
【0113】
(評価)
各試験の結果を表2に纏めて示す。
【0114】
【表2】

分散安定性試験の評価:
○:粒子径に変化なし
×:粒子径が大きくなる
インクジェット用インクの吐出試験:
○:吐出可能
×:吐出できず
ベタ画像の消色試験及びインクジェット用インクの消色試験
○:無色に変化
×:無色に変化せず
表1より、実施例1〜8により作成された水分散性粒子を用いたベタ画像、インクジェット用インクの画像はいずれも、良好に消色された。また、水分散性粒子、インクジェットインクは分散安定性が高く、粒子径は約半年間変化がなかった。
【0115】
一方、比較例は1〜8により作成されたマイクロカプセル顔料及びそのインクジェット用インクは、実施例5〜8で得られたものの消色試験の結果は良好であったが、分散安定性に低く、約半年間の静置により粒子が凝集し、粒子径が大きくなった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0116】
【特許文献1】特開2009−227956号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロイコ染料と顕色剤と消色剤とをコア成分とし、ビニル系樹脂をシェル成分とするコアシェル構造を有する粒子が分散されている分散液であって、
前記粒子は粒子径が30〜400nmであり、前記消色剤は融点が80℃以上、凝固点が20℃以下である芳香族系脂肪酸エステル化合物を含む粒子分散液。
【請求項2】
前記芳香族系脂肪酸エステル化合物は、下記の化合物のいずれか1種類もしくは2種類以上の混合物を含む、請求項1に記載の粒子分散液:
安息香酸フェニル;
安息香酸ベンジル;
1,3−プロパンジオール,2−[(ベンゾイルオキシ)メチル]−2−エチル−,ジベンゾアート;
ペンタエリトリトール テトラベンゾアート;
1,3−プロパンジオール,2,2'−[オキシビス(メチレン)]ビス[2−(ベンゾイルオキシ)メチル]−,テトラベンゾアート。
【請求項3】
前記ロイコ染料は、下記の化合物のいずれか1種類もしくは2種類以上の混合物を含む、請求項1又は2に記載の粒子分散液:
1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノ フルオラン;
6−ジエチルアミノ−ベンゾ [a]−フルオラン;
3,7−Bis(ジメチルアミノ)−10−ベンゾイル−フェノチアジン;
2−ブロモ−3−メチル−6−ジブチルアミノ フルオラン;
3,6−ビス(ジエチルアミノ) フルオラン−γ−(4'−ニトロ)−アニリノ ラクタム;
3,3−ビス(P−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノ フタリド;
2−N,N−ジベンジルアミノ−6−ジエチルアミノ フルオラン;
2−(2−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノ フルオラン。
【請求項4】
前記顕色剤は、下記の化合物のいずれか1種類もしくは2種類以上の混合物を含む、請求項1から3のいずれかに記載の粒子分散液:
4,4'−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール;
4,4'−(2−エチルヘキサン−1,1−ジイル)ジフェノール;
2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン;
4,4'−イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA);
2,2−ジアリルー4,4'−スルホニルジフェノール。
【請求項5】
前記シェルの膜厚が粒子径の5%以内である、請求項1から4のいずれかに記載の粒子分散液。
【請求項6】
前記ビニル系樹脂は、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、スルホン酸基、又はリン酸基の各官能基、並びに前記官能基から誘導される基、から選ばれる一種類以上の基を有する、請求項1から5のいずれかに記載の粒子分散液。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の粒子分散液を含むインクジェット用インク。
【請求項8】
ロイコ染料と、顕色剤と、融点が80℃以上、凝固点が20℃以下である芳香族系脂肪酸エステル化合物を含む消色剤とをコア成分とし、ビニル系樹脂をシェル成分とするコアシェル構造を有する粒子が分散されている粒子径が30〜400nmの粒子分散液の製造法であって、
前記コア成分の組成物を水系媒体中で80℃乃至100℃の温度で溶融する工程と、前記溶融する工程の前記コア成分を、前記コア成分の組成物の20質量%未満の界面活性剤を用いて乳化分散し、粒子径が30〜400nmの微粒子を形成する工程と、60℃乃至80℃の温度で前記微粒子を固化し、前記ビニル系単量体を添加することにより、該ビニル系単量体の重合反応を進行させる工程を有する分散液の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−158621(P2012−158621A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17097(P2011−17097)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】