説明

周期定常性を用いて信号を検知する装置及び方法

地域無線ネットワーク(WRAN)受信器は、多数のチャンネルのうちの1つの上で無線ネットワークと通信するための送受信器と、ATSC(アドバンストテレビジョン方式委員会)信号の検出器とを有する。このATSC信号検出器は、多数のチャンネルのうちATSC信号が検出されなかったチャンネルを有するサポートチャンネルリストを形成するために用いられる。ATSC信号検出器は、受信信号の少なくとも1つの周期定常性を計算し、受信信号が現存ATSC放送信号であるかを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して通信システムに関し、より具体的には、例えば地上放送、セルラー、ワイヤレス・フィディリティー(Wi−Fi)、衛星などの無線システムに関する。
【背景技術】
【0002】
IEEE802.22標準化団体にて地域無線ネットワーク(WRAN)システムが検討されている。WRANシステムは、主な目的として、都市部及び近郊部にサービスする広帯域アクセス技術の性能レベルと同等の性能レベルで、地方の遠隔地及び低人口密度の十分なサービスを受けていない商圏に対処するために、非干渉的に、TVスペクトルの不使用テレビジョン(TV)放送チャンネルを利用しようとするものである。また、WRANシステムは、スペクトルが利用可能な、より高い人口密度の地域にもサービス提供するように拡張され得るものである。WRANシステムの1つの目標はTV放送と干渉しないようにすることであるため、重要な手順は、WRANによるサービスエリア(WRANエリア)に存在する認可されたTV信号を堅牢且つ正確に検知することである。
【0003】
米国において現在、TVスペクトルは、NTSC(全国テレビジョン方式委員会)放送信号と共存するATSC(アドバンストテレビジョン方式委員会)放送信号を有する。ATSC放送信号はデジタルTV(DTV)信号とも呼ばれている。現段階で、NTSC伝送は2009年に停止されることになっており、その時には、TVスペクトルはATSC放送信号のみを有することになる。
【0004】
上述のように、WRANシステムの1つの目標は特定のWRANエリアに存在するTV信号と干渉しないことであるので、WRANシステムにおいては、ATSC放送を検出可能であることが重要である。ATSC信号を検出するための既知の一手法は、ATSC信号の一部である微小なパイロット信号を探索することである。そのような検出器は単純であり、ATSCパイロット信号を抽出するための非常に狭帯域のフィルタを備えた位相ロックループを含んでいる。WRANシステムにおいて、この手法は、単に、抽出されたATSCパイロット信号をATSC検出器が供給するかを調べることによって、放送チャンネルが現在使用されているかを確認する簡易な方法を提供する。残念ながら、この手法は、特に、非常に低い信号対雑音比(SNR)環境において正確でないものとなり得る。実際、パイロット搬送波の位置にスペクトル成分を有する帯域内に干渉信号が存在する場合、ATSC信号の誤った検出が生じ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
周期定常性を用いて信号を検知する装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
現に存在する現存放送信号が周期定常性を有する場合、それらの周期定常性は、非常に低い信号対雑音比(SNR)環境において信号検知すなわちスペクトル検知を行うために検出器によって使用され得ることを、我々は見出した。故に、そして、本発明原理に従って、装置は、多数のチャンネルのうちの1つの上で無線ネットワークと通信するための送受信器と、それらチャンネルのうちの1つ上に現に存在する現存信号を検出する検出器とを有し、該検出は現存信号の少なくとも1つの周期性の関数として実行される。
【0007】
本発明の例示的な一実施形態において、送受信器は地域無線ネットワーク(WRAN)送受信器であり、信号検出器は、受信信号の少なくとも1つの周期定常性を計算し、受信信号が現に存在する現存ATSC放送信号であるかを決定する。例として、周期定常性は信号のシンボルレート、又は信号の搬送波周波数である。
【0008】
以上に鑑み、また、以下の詳細な説明を読むことにより明らかになるように、その他の実施形態及び特徴も可能であり、本発明原理に属するものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】テレビジョン(TV)チャンネルをリストアップした表1を示している。
【図2】ATSC DTV信号のフォーマットを示す図である。
【図3】ATSC DTV信号のフォーマットを示す図である。
【図4】従来技術に係るATSCフィールド同期(シンク)検出器を示す図である。
【図5】本発明概念を理解するために用いる信号モデルを例示する図である。
【図6】本発明原理に従ったWRANシステムを例示する図である。
【図7】図6のWRANシステムにて使用される本発明原理に従ったフローチャートを例示する図である。
【図8】本発明原理に従った他のフローチャートを例示する図である。
【図9】本発明原理に従った信号検出器を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明概念以外の要素も図に示すが、それらは周知であり、詳細には説明しない。また、テレビジョン放送、受信器及びビデオエンコーディングに精通していることを想定し、ここでは、それらについて詳細に説明しない。例えば、本発明概念以外の、例えばNTSC、PAL(パル)、SECAM(セカム)、ATSC等のTV規格や、例えばIEEE 802.16、802.11h等のネットワーキングの現行勧告及び提案勧告には精通しているものと想定する。ATSC放送信号に関する更なる情報は以下のATSC規格:修正第1号及び誤植第1号A/53Cを含むデジタルテレビジョン規格(A/53)レビジョンC;及びRecommended Practice:Guide to the Use of the ATSC Digital Television Standard(A/54)に記載されている。同様に、本発明概念以外の、例えば8−VSB(eight-level vestigial sideband)、直交振幅変調(QAM)、直交周波数分割多重(OFDM)若しくは符号化OFDM(COFDM)等の伝送概念や、例えば無線周波数(RF)フロントエンド等の受信器部品若しくは例えば低雑音ブロック、チューナ及び復調器等の受信器部分、相関器、リーク積分器、及びスクエアラ(squarer)には精通しているものと想定する。同様に、本発明概念以外の、輸送ビットストリームを生成するためのフォーマット化及び符号化方法(例えば、MPEG−2システム規格(ISO/IEC13818−1)等)は周知であり、ここでは説明しない。なお、本発明概念は、それ自体はここでは説明しない従来からのプログラミング技術を用いて実装され得る。最後に、図面における同様の参照符号は類似の要素を表す。
【0011】
米国のTVスペクトルを図1の表1に示す。表1は、超短波(VHF)及び極超短波(UHF)の帯域内のTVチャンネルの一覧を提示している。各TVチャンネルに対して、対応する割当て周波数帯域の下端が示されている。例えば、TVチャンネル2は54MHzで開始し、TVチャンネル37は608MHzで開始し、TVチャンネル68は794MHzで開始し、等々である。技術的に知られているように、各TVチャンネルすなわち各帯域は6MHzの帯域を占有する。従って、TVチャンネル2は54MHzから60MHzまでの周波数スペクトル(すなわち帯域)をカバーし、TVチャンネル37は608MHzから614MHzまでの帯域をカバーし、TVチャンネル68は794MHzから800MHzまでの帯域をカバーし、等々である。本明細書において、TV放送信号は“広帯域”信号である。上述のように、WRANシステムはTVスペクトル内の不使用のテレビジョン(TV)放送チャンネルを利用する。その際、WRANシステムは、そのWRANエリアにおいてこれらのTVチャンネルの何れが実際に活動しているか(すなわち、“現に存在しているか”)を決定するために“チャンネル検知”を実行し、当該WRANシステムに実際に使用可能なTVスペクトルの部分を決定する。
【0012】
この例において、各TVチャンネルは対応するATSC放送信号に関連付けられていると仮定する。ここでは、ATSC放送信号をデジタルTV(DTV)信号とも呼ぶ。ATSC信号のフォーマットを図2及び3に示す。DTVデータは8−VSB(残留側波帯)を用いて変調され、データセグメントにて伝送される。図2はATSCデータセグメントを示している。ATSCデータセグメントは、データセグメント同期(以下、シンク)用の4個のシンボルと828個のデータシンボルとの832シンボルで構成される。図2から見て取れるように、データセグメントシンクは、バイナリの1001パターンを表す2値(バイナリ)の4シンボルのシーケンスであり、各データセグメントの先頭に挿入される。バイナリの1001パターンは、8−VSBシンボルでの[5 −5 −5 5]に対応する。多重データセグメント(313セグメント)が、合計で260,416個のシンボル(832×313)を有するATSCデータフィールドからなる。データフィールド内の最初のデータセグメントはフィールド同期(以下、シンク)セグメントと呼ばれる。図3は、フィールドシンクセグメントの構成を示しており、各シンボルは1ビットのデータ(2値)を表す。フィールドシンクセグメント内で、データセグメントシンクのすぐ後ろに、511ビットの疑似ランダム(pseudo-random)シーケンス(PN511)が続いている。PN511シーケンスの後ろには、連結された3つの相等しい、63ビットの疑似ランダムシーケンス(PN63)が存在し、2番目のPN63シーケンスは1つのデータフィールドおきに反転されている。
【0013】
データセグメントシンク及びフィールドシンクはATSC放送信号の特徴(シグナチャ)信号の代表的なものである。例えば、受信した信号内のデータセグメントシンクパターンの検出は、受信信号をATSC放送信号として特定するために用いられ得る。従って、非常に低い信号対雑音比(SNR)環境においてATSC放送信号を検出する精度を高めるために、ATSC DTV信号内に埋め込まれたデータセグメントシンクシンボル及びフィールドシンクシンボルを用いて、誤報確率を低減しながら検出確率を高めることができる。図4は、従来技術に係るフィールドシンク検出器を示している。図4のフィールドシンク検出器は、ダウンコンバータ55、マッチドフィルタ60、要素65及びピーク検出器70を有する。ダウンコンバータ55は、受信信号54をアナログドメイン又はデジタルドメインにてベースバンドに周波数下方変換する(信号は、例えば、10.762MHzの公称シンボルレート又はその2倍のシンボルレートのデジタルサンプルとして存在する)。得られたベースバンド信号56はマッチドフィルタ60に与えられる。マッチドフィルタ60は、受信信号がATSC放送信号であるかを特定するよう、バイナリシーケンス、すなわち、上述のPN511、又はPN511+PN63に整合されている。例えば、4シンボルのセグメントシンクシーケンスをY0、PN511シーケンスをY1、PN63シーケンスをY2、そして63個のゼロ値シンボルを有するシーケンスをY3と表記する。そして、Z=[Y0,Y1,Y2,Y3]が、これらのシーケンスを連結したものを表すとする。Y3(全てがゼロのシーケンス)を用いる理由は、中間のPNシーケンスが1フィールドおきに反転されるからである。明らかなように、ATSC DTV信号を検出することには、例えばZ=[Y0,Y1]、Z=[Y0,Y1,Y2]又はZ=[Y0,Y1,Y3,Y3,Y2]等の別形態のシーケンスZも使用することができる。故に、マッチドフィルタ60はバイナリシーケンスZに整合されたフィルタである。すなわち、このフィルタのインパルス応答は、Zを[z(1),z(2),・・・,z(n)]と表すと、[z(n),z(n−1),・・・,Z(1)]である。なお、サンプリングレートがシンボルレートの2倍である場合、Zシーケンスは、Zシーケンスのシンボル間にゼロ値シンボルを挿入して、[z(1),0,z(2),0,z(3),・・・,0,z(n)]と変更される。マッチドフィルタ60の後、信号の振幅(65)がとられる(あるいは、より簡易に、マッチドフィルタ60の出力信号の同相成分及び直交成分をそれぞれI及びQとして、I+Qとして振幅の二乗がとられる)。この振幅値(66)はピーク検出器70に与えられ、ピーク検出器70は突出したピークが存在するかを決定する。突出したピークが存在する場合、ATSC放送信号が存在すると推測され、ピーク検出器70はATSC放送信号の存在を信号71によって指し示す。
【0014】
上述のシグナチャベース検出器手法と対照的に、我々は、現に存在する現存放送信号が周期定常性を有する場合、これらの周期定常性を検出器で用いて、非常に低い信号対雑音比(SNR)環境において検出器の性能を更に高め得ることを見出した。故に、そして、本発明原理に従って、装置は、多数のチャンネルのうちの1つの上で無線ネットワークと通信するための送受信器と、それらチャンネルのうちの1つ上の現存信号を検出する検出器とを有し、該検出は現存信号の少なくとも1つの周期性の関数として実行される。
【0015】
本発明概念を説明する前に、周期定常性に関する数学を概説する(また、例えば、G.K.Yeung及びW.A.Gardnerの「Search-Efficient Methods of Detection of Cyclostationary Signals」、IEEE Transactions on Signal Processing、第44巻、第5号、1996年5月を参照)。複素数値の時系列x(t)の周期的な自己相関は:
【0016】
【数1】

によって定義される。これは、x(t)の遅延成分に含まれ得る周波数αの付加的な正弦波成分のフーリエ係数と解釈することができる。Rα(τ)は所与の高調波すなわち繰り返し周波数αの周期的自己相関関数とも呼ばれる。等式(1)の周期的自己相関をフーリエ変換することにより、繰り返しスペクトルとしても知られるスペクトル相関関数を得ることができる。具体的には、所与の繰り返し周波数αに対し、x(t)の繰り返しスペクトルは:
【0017】
【数2】

である。これは、周期的ウィーナー関係と呼ばれる(例えば、W.A.Gardner、「Statistical Spectral Analysis:A Nonprobabilistic Theory」、Englewood Cliffs、NJ:Prentice-Hall、1987年を参照)。α=0の縮退の場合、等式(1)及び(2)の左の項は、それぞれ、従来の自己相関関数及びパワースペクトル密度になる。信号分析における等式(1)及び(2)の測定は、繰り返しスペクトル分析と呼ばれるものを構成する。この題材の包括的な理論的取扱いは、W.A.Gardner、「Measurement of Spectral Correlation」、IEEE Transactions on Acoustics, Speech, and Signal Processing、第ASSP-34巻、第5号、1986年10月にて得ることができる。周期的自己相関を計算するため、x(t)の時変的な有限平均周期的自己相関を:
【0018】
【数3】

と定義する。大抵の有用な信号・雑音モデルにおいて、等式(3)は、十分に長い積分時間Δtでの、等式(1)にて与えられる周期的自己相関の信頼できる見積もり、すなわち:
【0019】
【数4】

をもたらす。故に、等式(4)は、(t及びτにおける)点別(pointwise)極限として、単なる等式(1)の一記述である。繰り返しスペクトルを計算することには、広く使用される手法が2つ存在し、それらは狭義では相等しいものである。繰り返しスペクトルは、以下の表現:
【0020】
【数5】

によって記述される操作によって得られることが示され得る。ただし、X1/Δf(t,ν)は、中心周波数ν及び隣接帯域幅Δfを有するx(t)の狭バンドパス成分の複素エンベロープである。これは、短時間フーリエ変換とよばれることもあり、すなわち、
【数6】

である。Sα(f)がスペクトル成分のスペクトル的に平滑化されたものの極限によって与えられること、すなわち:
【0021】
【数7】

であることも示され得る。ただし、XΔt(t,f)は1/ΔfをΔtで置換した等式(6)によって定義される。等式(5)及び(7)のデジタル実装は、等式(6)のスライディングウィンドウ複素フーリエ変換の対応する離散時間(離散時間カウンターパート)又は対応する離散周波数(離散周波数カウンターパート)を計算するFFTアルゴリズムの使用に基づく。離散周波数カウンターパートに関し、離散周波数平滑化手法が
【数8】

によって与えられる。ただし、
【数9】

である。等式(9)は、スライディング方式の離散フーリエ変換(DFT)のダウンコンバートされた出力を表す。ここで、Δf=MFはスペクトル平滑化間隔の幅であり、F=1/NTは周波数サンプリングの増分であり、Tは時間サンプリングの増分であり、Nは、Δt=(N−1)Tとして、データセグメントΔt内の時間サンプル数である。
【0022】
離散時間カウンターパートに関し、離散時間平均手法が
【数10】

によって与えられる。この場合も、1/Δf(t,f)はスライディングDFTのダウンコンバートされた出力であり、Δt=([1+M−1/K]N−1)Tはデータセグメント全体の長さであり、Δf=1/(N−1)Tはスペクトル分解能であり、Nは長さ1/Δfのデータセグメントの各々内の時間サンプル数である。
【0023】
次に、図5を参照するに、この図はバンドパス信号x(t)の同相成分を得るための信号モデルを例示している。バンドパス信号x(t)は乗算器90に与えられ、乗算器90はx(t)に2cos(2πft)を掛け合わせる。得られた出力信号はローパスフィルタ95に与えられ、ローパスフィルタ95は乗算器90からの信号をフィルタリングし、出力信号x(t)を提供する。しかしながら、位相オフセットθのため、ローパスフィルタ95の出力は同相成分及び直交位相成分の双方を含んでおり、すなわち、
【数11】

である。本発明原理に従って、スペクトル検知を行うためにα=1/Tにおける繰り返しスペクトルを用いることができる。
【0024】
次に、図6を参照するに、本発明原理を組み込んだ例示的な地域無線ネットワーク(WRAN)システム200が示されている。WRANシステム200は、或る地理的地域(WRANエリア)(図6には図示せず)にサービスを提供する。大まかに言えば、WRANシステムは、1つ又は複数の加入者宅内機器(customer premise equipment;CPE)250と通信する少なくとも1つの基地局(BS)205を有する。CPE250は静止しているとしてもよい。CPE250及びBS205は何れも無線エンドポイントの代表的なものである。CPE250はプロセッサベースのシステムであり、図6に破線のボックスの形態で示したプロセッサ290及びメモリ295によって表されるような、1つ又は複数のプロセッサ及び付随するメモリを含んでいる。ここでは、メモリ295には、プロセッサ290によって実行されるようにコンピュータプログラムすなわちソフトウェアが格納されている。プロセッサ290は、1つ又は複数の格納プログラム制御プロセッサを代表するものであり、送受信器の機能に専用である必要はない。例えば、プロセッサ290はCPE250のその他の機能をも制御してもよい。メモリ295は、例えばランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)等の任意の記憶装置を代表するものであり、CPE250の内部及び/又は外部にあってもよく、また、必要に応じて揮発性メモリ及び/又は不揮発性メモリとし得る。BS205とCPE250との間でのアンテナ210及び255を介しての通信の物理層は、例示的に、送受信器285を介したOFDMベースであり、矢印211によって表されている。WRANネットワークに入るため、CPE250は先ずBS205と“結合”することを試みる。この試み中、CPE250は、送受信器285によって、CPE250の能力に関する情報を、制御チャネル(図示せず)を介してBS205に送信する。報告される能力は、例えば、最小及び最大の送信パワーと、サポートされる或いは利用可能な、送信及び受信用のチャンネルリストとを含む。それに関連し、CPE250は、そのWRANエリア内で何れのTVチャンネルが活動していないかを決定するため、本発明原理に従った“チャンネル検知”を実行する。そして、得られた、WRAN通信での使用に利用可能なチャンネルリストがBS205に提供される。BS205は、上述の報告された情報を用いて、CPE250がBS205に結合することを許すかを決定する。
【0025】
続いて図7を参照するに、本発明原理に従ったチャンネル検知を実行する際に使用される例示的なフローチャートが示されている。図7のフローチャートは、全てのチャンネル上で、あるいは、考え得る使用のためにCPE250が選択したチャンネル上のみで、CPE250によって実行され得る。好ましくは、チャンネル内に現存する信号を検出するため、CPE250は検出期間中、そのチャンネルでの送信を停止すべきである。その際、BS205は、制御メッセージ(図示せず)をCPE250に送信することによって、静寂期間をスケジュールしてもよい。段階305にて、CPE250は或るチャンネルを選択する。この例において、そのチャンネルは図1の表1に示したTVチャンネルのうちの1つであると仮定するが、本発明概念はそのように限定されるものではなく、その他の帯域幅を有するその他のチャンネルにも適用される。段階310にて、CPE250は現存する信号の存在を調べるために、選択したチャンネルをスキャンする。具体的には、(更に後述するように)CPE250は、受信信号が現存するATSC放送信号であるかを決定するために、受信信号の少なくとも1つの周期定常性を計算する。現存信号が検出されなかった場合、段階315にて、CPE250は、利用可能チャンネルリスト(周波数使用マップとも呼ぶ)上で、WRANシステムによる使用に利用可能であるとして、選択したチャンネルを指し示す。一方、現存信号が検出された場合、段階320にて、CPE250は、WRANシステムによる使用に利用可能でないとして、選択したチャンネルにマーキングする。ここでは、周波数使用マップは、図6のWRANシステムにおける使用に利用可能として、あるいは利用可能でないとして、1つ以上のチャンネル及びその部分を特定する例えば図6のメモリ295に格納された単なるデータ構造である。なお、利用可能であるとして、あるいは利用可能でないとしてチャンネルをマーキングすることは、幾多にも及ぶ方法で行われ得る。例えば、利用可能チャンネルリストは、利用可能なチャンネルのみをリストアップすることにより、効率的に、その他のチャンネルを利用可能でないとして指し示してもよい。同様に、利用可能チャンネルリストは、利用可能でないチャンネルのみをリストアップすることにより、その他のチャンネルを利用可能であるとして指し示してもよい。
【0026】
図7の段階310を実行するための例示的なフローチャートを図8に示す。段階355にて、CPE250は、選択したチャンネル上の信号をダウンコンバートし、信号x[n]を生成する。CPE250はまた、ダウンコンバートされた信号の低域通過フィルタリングを実行して、信号y[n]を生成し得る。段階365にて、(後述するように)CPE250はy[n]の少なくとも1つの周期定常性Tを計算する。段階370にて、CPE250は、計算した周期定常性Tを閾値と比較する。この閾値は実験的に決定され得る。計算された周期定常性Tが閾値より大きい場合、ATSC放送信号が存在すると推測される。一方、計算された周期定常性Tが閾値以下である場合、ATSC放送信号は存在しないと推測される。
【0027】
上述のように、段階365にてCPE250は受信信号の周期定常性Tを計算する。この例示的な実施形態において、CPE250は、ATSC放送信号である現存信号を探索するためにスペクトル検知を実行している。上述のように、ATSC放送信号においては、ATSC信号のシンボルレートをTとして、スペクトル検知を行うためにα=1/Tにおける繰り返しスペクトルが用いられる。本発明の他の一実施形態においては、繰り返しスペクトルはATSC信号の搬送波周波数であり得る。受信信号から周期定常性を抽出することには、基本的に2つの手法が存在する。1つは周期的自己相関関数を計算するものであり、他の1つは繰り返しスペクトルを計算するものである。
【0028】
周期的自己相関関数の計算によって周期定常性を抽出することには、上述のW.A.Gardner、「Measurement of Spectral Correlation」、IEEE Transactions on Acoustics, Speech, and Signal Processing、第ASSP-34巻、第5号、1986年10月の参考文献、すなわち、
【数12】

を利用することができる。τ軸にて
【数13】

のより多くのサンプルを取得するには、y[n]上で補間を行うことが必要となり得る。なお、周期的自己相関関数を計算することにはその他の手法(ここでは説明しない)も存在し得る。等式(12)に関し、スペクトル検知を行うためにα=1/Tにおける繰り返しスペクトルが用いられるので、周期的自己相関シーケンスは繰り返し周波数1/T−δ≦α≦1/T+δ(αはこの範囲内の離散値)にあり、それらは、
【数14】

で表されると仮定することができる。ただし、
【数15】

であり、Tはサンプリング間隔である。また、周波数オフセットが存在する場合、α=1/Tの周りの幾つかの繰り返し周波数にて繰り返しスペクトルを計算することが必要となり得る。
【0029】
周期的自己相関関数から周期定常性を決定することに関し、以下は、図8の段階365にて使用され得る判定統計の例である:
【0030】
【数16】

これは、シーケンス:
【0031】
【数17】

の絶対値の最大値である。
【0032】
【数18】

これは、長さWを有するウィンドウ上でのシーケンス:
【0033】
【数19】

の絶対値の和の最大値である。
【0034】
【数20】

これは、繰り返し周波数α上での、周期的自己相関シーケンスの平均値の最大値である。
【0035】
【数21】

これは、繰り返し周波数α上での、周期的自己相関シーケンスの分散の最大値である。上述のように、図8の段階365にてTの値が決定されると、得られたTの値は閾値と比較され(図8の段階370)、選択したチャンネル内に現存信号が存在するかが決定される。
【0036】
続いて、繰り返しスペクトルの計算による周期定常性の抽出に説明を移すと、この計算のために等式(8)又は等式(10)の何れかを用いることができる(以下では、等式(13)及び等式(15)のように書き換える):
【0037】
【数22】

ただし、
【数23】

なお、繰り返しスペクトルを計算することにはその他の手法(ここでは説明しない)も存在し得る。上述のように、スペクトル検知を行うことにα=1/Tにおける繰り返しスペクトルが用いられ、且つα=1/Tの周りの幾つかの繰り返し周波数で繰り返しスペクトルを計算することが必要となり得るため、繰り返しスペクトル:
【0038】
【数24】

の離散的なサンプルが存在すると仮定することができる。ただし、
【数25】

であり、1/T−δ≦α≦1/T+δ(αはこの範囲内の離散値)である。繰り返しスペクトルの計算から周期定常性を決定することに関し、上述の判定統計と同様の判定統計、すなわち:
【0039】
【数26】

を図8の段階365にて用いることができる。上述のように、図8の段階365にてTの値が決定されると、得られたTの値は閾値と比較され(図8の段階370)、選択したチャンネル内に現存信号が存在するかが決定される。
【0040】
図9を簡単に参照するに、CPE250にて使用される受信器405の例示的な一部が(例えば、送受信器285の一部として)示されている。受信器405のうち、本発明概念に関係する部分のみが図示されている。図9に示した要素は、概して、図8のフローチャートの段階群の記載に対応している。そのようなものとして、図9に示した要素は、ハードウェアにて、ソフトウェアにて、あるいはハードウェアとソフトウェアとの組み合わせとして実装され得る。これに関連し、受信器405はプロセッサベースのシステムであり、図9に破線のボックスの形態で示したプロセッサ590及びメモリ595によって表されるような、1つ又は複数のプロセッサ及び付随するメモリを含んでいる。なお、プロセッサ590及びメモリ595は、図6のプロセッサ290及びメモリ295に対し、追加されたものであってもよいし、あるいは同一のものであってもよい。受信器405は、乗算器505、ローパスフィルタ510、少なくとも1つの周期定常性を計算するための要素525、及び閾値比較器530を有している。説明の便宜上、例えば自動利得コントロール(AGC)要素、処理がデジタルドメインである場合のアナログ−デジタル変換器(ADC)、及び更なるフィルタリング要素などの要素は図9に図示していない。本発明概念以外のこれらの要素は当業者に容易に理解されるであろう。さらに、当業者に認識されるように、処理の一部は必要に応じて複雑な信号経路を含んでいてもよい。
【0041】
上述のフローチャートにおいて、選択したチャンネルごとに受信信号504が存在し得る。受信信号r[n]は、現在の選択チャンネル(例えば、図1を参照)の関数として搬送波周波数fが選択されて、乗算器505によってダウンコンバートされる。ダウンコンバートされた信号は、ローパスフィルタ510によって低域通過フィルタリングされ、ベースバンド信号y[n]が作り出される。要素525により、上述のようにして、y[n]の少なくとも1つの周期定常性Tが計算される。閾値比較器530が、Tの値を閾値と比較することによって現存信号が存在するかを決定し、その結果を信号531によって提供する。
【0042】
上述のように、現存する信号の周期定常性を用いて、低信号対雑音比環境でATSC DTV信号の存在を高い確かさで検出することができる。しかしながら、本発明概念はそのように限定されるものではなく、周期定常性を有する如何なる信号を検出することにも適用され得るものである。例えば、本発明概念は、例えばDVB−T(Digital Video Broadcasting−Terrestrial)等、OFDM型信号の検出に適用可能である。また、本発明概念は、例えばエネルギー検出など、信号の存在を検出するためのその他の技術と組み合わされてもよい。なお、図6のCPE250との関連で本発明概念を説明したが、本発明はそのように限定されるものではなく、チャンネル検知を実行してもよい例えばBS205の受信器といったものにも適用され得る。さらに、本発明概念はWRANシステムに限定されず、チャンネル検知又はスペクトル検知を行う如何なる受信器にも適用され得る。
【0043】
以上を鑑みるに、以上の説明は単に本発明原理を例示するものであり、認識されるように、当業者は、ここでは明示的に説明されていないものの本発明原理を具現化し且つその主旨及び範囲内に入る幾多もの代替構成を考え出すことができる。例えば、別個の機能要素として説明されているとしても、それらの機能要素は1つ又は複数の集積回路(IC)にて具現化されてもよい。同様に、別個の要素として図示されているとしても、それら要素(例えば図9の要素)の何れか又は全ては、例えば図7及び8に示した段階群の1つ又は複数に対応するような付随するソフトウェアを実行する、例えばデジタル信号プロセッサ等の、格納プログラム制御プロセッサにて実装されてもよい。また、本発明原理は、例えば衛星、ワイヤレス−フィデリティ(Wi−Fi)、セルラー等、その他の種類の通信システムにも適用可能である。実際、本発明概念は固定式受信器又は移動式受信器に適用可能である。故に、理解されるように、例示した実施形態には数多くの変更を施すことが可能であり、添付の特許請求の範囲にて定められる本発明の主旨及び範囲を逸脱することなく、その他の構成が考え出され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線エンドポイントにて使用する方法であって:
多数のチャンネルのうちの1つを選択する選択段階;及び
選択したチャンネル上の信号の周期定常性を、現存信号を表す少なくとも1つの周期的性質から決定し、前記選択したチャンネル上で前記現存信号の存在を検出する決定段階;
を有する方法。
【請求項2】
前記周期的性質は前記現存信号のシンボルレートである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記現存信号はATSC信号である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記周期的性質は前記現存信号の搬送波周波数である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記決定段階は:
前記信号をベースバンド信号にダウンコンバートする段階;
前記ベースバンド信号の周期定常性を決定する段階;及び
決定された周期定常性を閾値と比較し、前記選択したチャンネル上で前記現存信号の存在を検出する段階;
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ダウンコンバートする段階は:
前記信号をダウンコンバート信号にダウンコンバートする段階;及び
前記ダウンコンバート信号を低域通過フィルタリングし、前記ベースバンド信号を生成する段階;
を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記決定段階は:
周期的自己相関関数の計算によって前記周期定常性を決定する段階
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記周期定常性は、
【数1】

として、パラメータTによって表される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記周期定常性は、
【数2】

として、パラメータTによって表される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記周期定常性は、
【数3】

として、パラメータTによって表される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記周期定常性は、
【数4】

として、パラメータTによって表される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記決定段階は:
繰り返しスペクトルの計算によって前記周期定常性を決定する段階
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記周期定常性は、
【数5】

として、パラメータTによって表される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記周期定常性は、
【数6】

として、パラメータTによって表される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記周期定常性は、
【数7】

として、パラメータTによって表される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記周期定常性は、
【数8】

として、パラメータTによって表される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
現行信号が存在しない場合に、前記選択したチャンネルが利用可能であることを指し示すように利用可能チャンネルリストをマーキングする段階
を更に有する請求項1に記載の方法。
【請求項18】
選択されたチャンネルからベースバンド信号を提供するダウンコンバータ;及び
前記ベースバンド信号の周期定常性を、現存信号を表す少なくとも1つの周期的性質から決定し、前記選択されたチャンネル上で前記現存信号の存在を検出することに使用するプロセッサ;
を有する装置。
【請求項19】
前記周期的性質は前記現存信号のシンボルレートである、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記現存信号はATSC信号である、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記周期的性質は前記現存信号の搬送波周波数である、請求項18に記載の装置。
【請求項22】
前記ダウンコンバータに結合され、前記ベースバンド信号を提供するローパスフィルタを更に有し、
前記プロセッサは、前記周期定常性を前記ベースバンド信号から決定し、且つ決定した周期定常性を閾値と比較して、前記選択されたチャンネル上で前記現存信号の存在を検出する、
請求項18に記載の装置。
【請求項23】
前記プロセッサは、周期的自己相関関数の計算によって前記周期定常性を決定する、請求項18に記載の装置。
【請求項24】
前記プロセッサは、繰り返しスペクトルの計算によって前記周期定常性を決定する、請求項18に記載の装置。
【請求項25】
現行信号が存在しない場合に前記選択されたチャンネルが利用可能であることを指し示す利用可能チャンネルリストを格納するメモリ
を更に有する請求項18に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−520704(P2010−520704A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552655(P2009−552655)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/014577
【国際公開番号】WO2008/108797
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing 
【住所又は居所原語表記】1−5, rue Jeanne d’Arc, 92130 ISSY LES MOULINEAUX, France
【Fターム(参考)】