説明

周波数変換器

【課題】ヘテロダイン方式においてIF信号を低い周波数に抑えつつ、さらにロスの削減を行うことを可能とした周波数変換器を提供する。
【解決手段】BPF110は、受信信号に対しRF信号周波数帯域以外の帯域を抑圧して実RF信号を出力する。局部発振器120は、所定の周波数を有する複素ローカル信号を出力する。半複素ミキサ114は、実RF信号及び複素ローカル信号の実数部を乗算して周波数変換し、実RF信号及び複素ローカル信号の虚数部を乗算して周波数変換することにより実RF信号の周波数より所定の周波数値分低い値の周波数の複素信号を出力する。複素係数SAWフィルタ116は、複素信号の実数部に対し偶対称インパルス応答によりたたみ込み積分を行い、複素信号の虚数部に対し奇対称インパルス応答によりたたみ込み積分を行うことにより正の周波数あるいは負の周波数のいずれか一方を抑圧して複素信号に対する実信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、無線送受信機等に用いられる周波数変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話機のように、受信機および送信機の両方の機能を具備する無線通信機において、受信機、すなわちダウンコンバータの機能として、通話内容およびデータ通信内容によってRF(Radio Frequency)信号を受信し、受信したRF信号を復調部に入力するための周波数に変換する機能がある。また、ダウンコンバータにおいて、目的の信号を選択するフロントエンドの方式として、RF信号をベースバンド信号に直接周波数変換するのではなく、一度中間周波数(IF:Intermediate Frequency)信号に変換するヘテロダイン方式が存在する。このヘテロダイン方式は、広帯域のフロントエンドが実現しやすいことから、近年、ソフトウェア無線機のフロントエンドのアーキテクチャーとして再注目されている。しかし、ヘテロダイン方式を広帯域に適用する場合には、広帯域化による部品等のコストの増大という問題以外に以下に示すような幾つかの技術的な問題点がある。
【0003】
図14は、RF信号をRF信号周波数より低い周波数のIF信号にダウンコンバージョンするヘテロダイン方式の周波数変換器であるダウンコンバータ10の構成を示した図である。ヘテロダイン方式のダウンコンバータでは、アンテナを経由して受信したRF信号が入力され、最初のBPF(Band Path Filter)1001によりフロントエンドを飽和させるRF信号周波数帯以外の帯域を抑圧してRF信号の周波数帯が出力される。出力された信号は、LNA(Low Noise Amplifier:低雑音増幅器)1002にて増幅される。そして、増幅された信号に対して、二段目のBPF1003により目的となるRF信号の周波数帯以外を抑圧してRF信号の周波数帯が出力される。次に、ミキサ1004によりBPF1003から出力される信号と、局所発振器(Local)1006から出力されるローカル信号とが乗算されることにより周波数変換されIF信号へ変換される。そして、BPF1005によりIF信号の周波数帯が出力される。このIF信号は、ソフトウェア無線機等ではデジタル処理によりベースバンド信号へ変換され、従来の無線受信機等ではアナログ処理により更に周波数変換されてベースバンド信号へ変換される。
【0004】
ところで、ヘテロダイン方式のダウンコンバータ10では、局所発振器1006のローカル信号の周波数を中心として、高周波側と低周波側の対称な位置の帯域は、同じ周波数帯にダウンコンバートされることになる。例えば、図15(a)に示されるように、ローカル信号の周波数(Lo)を中心として、信号SB1と信号SB2は対象の位置の周波数帯に存在する。このとき、ミキサ1004により周波数変換されると、対象の位置に存在する信号SB1のイメージ周波数信号SB1−Iと信号SB2は、同じ周波数帯にダウンコンバートされることになる。信号SB2が出力する必要のある目的信号である場合には、イメージ周波数信号SB1−Iは当該目的信号に対して障害を及ぼすことになる。
【0005】
このイメージ周波数信号の障害を取り除くために、従来では、図15(b)に示すようにIF信号の周波数を高くして、周波数変換前のRF信号にて、信号SB2の周波数とイメージ周波数信号SB1の周波数との差を大きくする。そして、BPF1003の特性をイメージ周波数信号SB1が存在する周波数帯を抑圧できるような特性としてイメージ周波数信号SB1を抑圧する手段が取られていた。これにより、図15(c)に示すように、ミキサ1004により周波数変換される際にIF信号SB2に対してイメージ周波数信号SB1−Iの影響を抑えるようにしていた。
【0006】
また、図16に示すようなIF信号をIF信号周波数より高い周波数のRF信号にアップコンバージョンするヘテロダイン方式の周波数変換器であるアップコンバータ11においても、ダウンコンバータ10と同様に、アップコンバート後に生じるIF信号のイメージ周波数信号を抑圧するため、入力されるIF信号の周波数を高くしておき、IF信号のイメージ周波数信号を抑圧する特性を有するBPF1105を備えることでRF信号に対するイメージ周波数信号を抑圧する手段が取られていた。
【0007】
しかしながら、上記のダウンコンバータ10及びアップコンバータ11に適用された手段では、IF信号の周波数をイメージ周波数信号による障害の除去のために不必要に高くする必要があり、IF段以降の構成における消費電力が増加するといった問題があった。また、逆に、IF信号の周波数を可能な限り低くしたとしても、BPF1003やBPF1105に対する要求が厳しくなり、急峻な特性のバンドパスフィルタ、あるいは2つ以上のバンドパスフィルタを用いてイメージ周波数信号を抑圧できるような特性を実現しなければならないという問題があった。また、さらに、近年の広帯域化に伴うRF信号のマルチバンド化の際には、バンドパスフィルタを複数備える必要があるが、上記のような急峻な特性のバンドパスフィルタを複数備えることはサイズやコストの面を考慮した場合に、製品化において不利になるという問題があった。
【0008】
この問題を解決する技術として、非特許文献1に示す技術が提案されている。非特許文献1に示す技術では、図17に示すような半複素ミキサ(イメージ抑圧ミキサ)1203とポリフェーズフィルタ1204を用いたダウンコンバータ12が提案されている。ダウンコンバータ12では、図18(a)に示すようなRF信号が入力された場合、図18(b)に示すように最初のBPF1201にてRF信号の周波数帯以外が抑圧され、抑圧後の信号がLNA1202によって増幅される。そして、半複素ミキサ1203にて、増幅された信号と複素ローカル信号が乗算される際に、目的信号SC2に重なるイメージ周波数信号SC1−Iが抑圧されつつ周波数変換されることになる。周波数変換された信号がポリフェーズフィルタ1204に入力されると、図18(d)に示すようにポリフェーズフィルタ1204が、負の周波数帯域を抑圧し、図18(e)に示す実IF信号がポリフェーズフィルタ1204から出力される。ポリフェーズフィルタ1204から出力される信号は、BPF1205により、IF信号の周波数帯域以外の周波数帯域が抑圧されることから、信号SC3が抑圧され、目的信号SC2と抑圧されたイメージ周波数信号SC1−Iが重なった信号が出力されることになる。
【0009】
これにより、イメージ周波数信号SC1−Iは、BPF1201の抑圧度に、半複素ミキサ1203の抑圧度が加算された状態にて抑圧され、目的信号SC2に対してイメージ周波数信号の影響を抑えることを可能としている。従って、従来のようにイメージ周波数信号の抑圧のためだけにIF信号の周波数を不必要に高くせずに、低い周波数に抑えることができ、また、イメージ周波数信号の帯域を抑圧する特性を有する図14のBPF1003のようなバンドパスフィルタも不要にしていた。
【非特許文献1】Hiroshi Tsurumi, Hiroshi Yoshida, Shoji Otaka, Hiroshi Tanimoto, Yasuo Suzuki, “Broadband and Flexible Receiver Architecture for Software Defined Radio Terminal Using Direct Conversion and Low-IF Principle”, IEICE TRANS. COMMUN, Vol,E83-B, No.6, June 2000, pp1246-1253.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記のポリフェーズフィルタ1204としては、一般的にパッシブ型が用いられる。パッシブ型のポリフェーズフィルタは、RCによって構成されるためにロスが大きく、正の周波数帯域については抑圧を行わずに出力するため、IF信号の周波数帯を出力するためには、IF段のBPF1205が必須の構成となる。そのため、実IF信号の出力において、ポリフェーズフィルタ1204によるロスに加えてIF段のBPF1205のロスが加わってしまうという問題があった。
【0011】
本願発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、ヘテロダイン方式においてIF信号の周波数を低い周波数に抑えつつ、さらにロスの削減を行うことを可能とした周波数変換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題を解決するために、本発明は、受信するRF信号を中間周波数へ周波数変換する周波数変換器であって、受信信号に対しRF信号周波数帯域以外の帯域を抑圧して実RF信号を出力する実係数フィルタと、所定の周波数を有する複素ローカル信号を出力する局部発振器と、前記実係数フィルタから出力される前記実RF信号及び前記局部発振器から出力される前記複素ローカル信号の実数部を乗算して周波数変換し、前記実RF信号及び前記局部発振器から出力される前記複素ローカル信号の虚数部を乗算して周波数変換することにより前記実RF信号の周波数より前記所定の周波数分離れた周波数の複素信号を出力する複素ミキサと、前記複素ミキサから出力される前記複素信号の実数部に対し偶関数に基づいて生成されるインパルス応答によりたたみ込み積分を行い、前記複素ミキサから出力される前記複素信号の虚数部に対し奇関数に基づいて生成されるインパルス応答によりたたみ込み積分を行うことにより正の周波数あるいは負の周波数のいずれか一方を抑圧して前記複素信号に対する実信号を出力する複素係数トランスバーサルフィルタと、を備えたことを特徴とする周波数変換器である。この構成により、複素ミキサにてイメージ周波数信号を抑圧しつつ低い周波数へ周波数変換でき、複素信号を実信号へ変換する際には、正の周波数あるいは負の周波数のいずれか一方を抑圧しつつ変換を行うことができる。
【0013】
また、本発明は、入力される中間周波数の信号をRF信号周波数へ周波数変換する周波数変換器であって、入力される中間周波数の実信号に対し偶関数に基づいて生成されるインパルス応答によりたたみ込み積分を行い、前記実信号に対し奇関数に基づいて生成されるインパルス応答によりたたみ込み積分を行い、正の周波数あるいは負の周波数のいずれか一方を抑圧した複素信号を出力する複素係数トランスバーサルフィルタと、所定の周波数を有する複素ローカル信号を出力する局部発振器と、前記複素係数トランスバーサルフィルタから出力される前記複素信号の実数部及び前記局部発振器から出力される前記複素ローカル信号の実数部を乗算して周波数変換し、前記複素信号の虚数部及び前記局部発振器から出力される前記複素ローカル信号の虚数部を乗算して周波数変換することにより前記入力される信号の周波数より前記所定の周波数分離れた周波数の実信号を出力する複素ミキサと、前記複素ミキサから出力される実信号に対しRF信号周波数帯以外の周波数帯域を抑圧して実RF信号を出力する実係数フィルタと、を備えたことを特徴とする周波数変換器である。この構成により、入力される実信号を、正の周波数あるいは負の周波数のいずれか一方を抑圧しつつ、複素信号に変換でき、変換した複素信号に対してイメージ周波数信号を抑圧しつつRF信号周波数へ周波数変換することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、周波数変換器は、受信信号に対しRF信号周波数帯域以外の帯域を抑圧して実RF信号を出力する実係数フィルタと、所定の周波数を有する複素ローカル信号を出力する局部発振器と、前記実係数フィルタから出力される前記実RF信号及び前記局部発振器から出力される前記複素ローカル信号の実数部を乗算して周波数変換し、前記実RF信号及び前記局部発振器から出力される前記複素ローカル信号の虚数部を乗算して周波数変換することにより前記実RF信号の周波数より前記所定の周波数値分離れた周波数の複素信号を出力する複素ミキサと、前記複素ミキサから出力される前記複素信号の実数部に対し偶関数に基づいて生成されるインパルス応答によりたたみ込み積分を行い、前記複素ミキサから出力される前記複素信号の虚数部に対し奇関数に基づいて生成されるインパルス応答によりたたみ込み積分を行うことにより正の周波数あるいは負の周波数のいずれか一方を抑圧して前記複素信号に対する実信号を出力する複素係数トランスバーサルフィルタとを備える構成とした。これにより、ヘテロダイン方式の周波数変換器においてIF信号の周波数を低い周波数に抑えることができ、IF段以降の構成による消費電力を抑えることが可能となる。また、本発明の周波数変換器と上述した従来のポリフェーズフィルタを用いたダウンコンバータの周波数変換器とを比較すると、本発明の周波数変換器では、ポリフェーズフィルタによるロス分の削減を行うことが可能となる。
【0015】
また、本発明によれば、周波数変換器に係る複素係数トランスバーサルフィルタは、SAWフィルタによって構成されるようにした。SAWフィルタはパッシブ型のフィルタであるため電力を消費しないという効果があり、また、正の周波数あるいは負の周波数を抑圧し、かつ目的信号が存在する周波数側において目的信号が存在する帯域外を抑圧するフィルタ効果を得ることが可能となる。
【0016】
また、本発明によれば、周波数変換器は、実係数フィルタと、複素ミキサとに接続されるポリフェーズフィルタを備え、ポリフェーズフィルタは、実係数フィルタから出力される実RF信号から正の周波数あるいは負の周波数のいずれか一方を抑圧して複素RF信号を生成して出力し、複素ミキサは、ポリフェーズフィルタから出力される複素RF信号の実数部及び局部発振器から出力される複素ローカル信号の実数部を乗算して周波数変換し、ポリフェーズフィルタから出力される複素RF信号の虚数部及び局部発振器から出力される複素ローカル信号の虚数部を乗算して周波数変換することにより複素RF信号の周波数より所定の周波数値分離れた周波数の複素信号を出力する構成とした。これにより、ポリフェーズフィルタが正の周波数あるいは負の周波数成分を抑圧して、複素RF信号を生成することができるため、複素ミキサによる抑圧度にポリフェーズフィルタによる抑圧度が加算された抑圧度でイメージ周波数信号を抑圧することが可能となる。
【0017】
また、本発明によれば、周波数変換器に係る局部発振器は、所定の周波数を有する実ローカル信号を出力し、複素ミキサは、ポリフェーズフィルタから出力される複素RF信号の実数部及び局部発振器から出力される実ローカル信号を乗算して周波数変換し、ポリフェーズフィルタから出力される複素RF信号の虚数部及び局部発振器から出力される実ローカル信号を乗算して周波数変換することにより複素RF信号の周波数より所定の周波数値分離れた周波数の複素信号を出力する構成とした。これにより、複素ミキサへ入力するローカル信号を実ローカル信号としていることから、複素ローカル信号を用いる場合よりも消費電力を半減させることができる。また、実ローカル信号を用いることで、実数と虚数のインバランスを気にせず、ミキサやフィルタの製造誤差などによるばらつきを抑えてイメージ周波数信号を抑圧する充分な抑圧度を得ることが可能となる。
【0018】
また、本発明によれば、周波数変換器は、入力される中間周波数の実信号に対し偶関数に基づいて生成されるインパルス応答によりたたみ込み積分を行い、前記実信号に対し奇関数に基づいて生成されるインパルス応答によりたたみ込み積分を行い、正の周波数あるいは負の周波数のいずれか一方を抑圧した複素信号を出力する複素係数トランスバーサルフィルタと、所定の周波数を有する複素ローカル信号を出力する局部発振器と、前記複素係数トランスバーサルフィルタから出力される前記複素信号の実数部及び前記局部発振器から出力される前記複素ローカル信号の実数部を乗算して周波数変換し、前記複素信号の虚数部及び前記局部発振器から出力される前記複素ローカル信号の虚数部を乗算して周波数変換することにより前記入力される信号の周波数より前記所定の周波数分離れた周波数の実信号を出力する複素ミキサと、前記複素ミキサから出力される実信号に対しRF信号周波数帯以外の周波数帯域を抑圧して実RF信号を出力する実係数フィルタとを備える構成とした。これにより、ヘテロダイン方式の周波数変換器においてIF信号の周波数を低い周波数に抑えることができ、IF段の構成による消費電力を抑えることが可能となる。また、本発明の周波数変換器と上述した従来のポリフェーズフィルタを用いたダウンコンバータを構成する周波数変換器をIF信号をIF信号周波数より高い周波数のRF信号を変換するものとして構成した周波数変換器とを比較すると、本発明の周波数変換器では、ポリフェーズフィルタによるロス分の削減を行うことが可能となる。
【0019】
また、本発明によれば、周波数変換器に係る複素係数トランスバーサルフィルタは、SAWフィルタによって構成されるようにした。SAWフィルタはパッシブ型のフィルタであるため電力を消費しないという効果があり、また、正の周波数あるいは負の周波数を抑圧し、かつ目的信号が存在する周波数側において目的信号が存在する帯域外を抑圧するフィルタ効果を得ることが可能となる。
【0020】
また、本発明によれば、周波数変換器は、複素ミキサと、実係数フィルタとに接続されるポリフェーズフィルタを備え、複素ミキサは、複素係数トランスバーサルフィルタから出力される複素信号の実数部及び局部発振器から出力される複素ローカル信号の実数部を乗算して周波数変換し、複素係数トランスバーサルフィルタから出力される複素信号の虚数部及び局部発振器から出力される複素ローカル信号の虚数部を乗算して周波数変換することにより複素信号の周波数より所定の周波数値分離れた周波数の複素信号を出力し、ポリフェーズフィルタは、正の周波数あるいは負の周波数のいずれか一方を抑圧して複素ミキサから出力される前記複素信号に対応する実信号を出力する構成とした。これにより、ポリフェーズフィルタが正の周波数あるいは負の周波数成分を抑圧して、実IF信号を生成することができるため、複素ミキサによる抑圧度にポリフェーズフィルタによる抑圧度が加算された抑圧度でイメージ周波数信号を抑圧することが可能となる。
【0021】
また、本発明によれば、周波数変換器に係る局部発振器は、所定の周波数を有する実ローカル信号を出力し、複素ミキサは、複素係数トランスバーサルフィルタから出力される複素信号の実数部及び前記局部発振器から出力される実ローカル信号を乗算して周波数変換し、複素係数トランスバーサルフィルタから出力される複素信号の虚数部及び局部発振器から出力される実ローカル信号の虚数部を乗算して周波数変換することにより複素信号の周波数より前記所定の周波数値分離れた周波数の複素信号を出力する構成とした。これにより、複素ミキサへ入力するローカル信号を実ローカル信号としていることから、複素ローカル信号を用いる場合よりも消費電力を半減させることができる。また、実ローカル信号を用いることで、実数と虚数のインバランスを気にせず、ミキサやフィルタの製造誤差などによるばらつきを抑えてイメージ周波数信号を抑圧する充分な抑圧度を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明である周波数変換器の実施形態に係るRF信号をRF信号周波数より低いIF信号に周波数変換する周波数変換器として構成したダウンコンバータ及びIF信号をIF信号周波数より高い周波数のRF信号に周波数変換する周波数変換器として構成したアップコンバータを図面を参照して説明する。
【0023】
(本実施形態によるダウンコンバータ)
図1は、本実施形態によるダウンコンバータ1を示す概略ブロック図である。ダウンコンバータ1は、BPF(Band Path Filter)110と、LNA(Low Noise Amplifier:低雑音増幅器)112と、局所発振器120と、半複素ミキサ114と、複素係数SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタ116とを具備しており、受信したRF信号を中間周波数の信号、すなわちIF信号周波数へ周波数変換する。BPF110は、フロントエンドを飽和させるRF信号周波数帯以外の帯域を抑圧した信号を出力する。例えば、RF信号周波数帯幅を100MHzとすると、当該100MHzの帯域の信号を通過させて、それ以外の帯域を抑圧することになる。LNA112は、BPF110から出力される信号を増幅して出力する。局所発振器(Local)120は、所定の周波数であって、cosの位相を有する実数軸ローカル信号と、−sinの位相を有する虚数軸ローカル信号からなる複素ローカル信号を出力する。ここで、所定の周波数とは、RF信号周波数からIF信号周波数を減算した周波数値となる。半複素ミキサ114は、局所発振器120に接続され、乗算器であるミキサI121と、ミキサQ122とを備えており、イメージ周波数信号を抑圧しつつ、RF信号の周波数から所定の周波数離れた中間周波数の複素信号、すなわち複素IF信号を出力する。
【0024】
半複素ミキサ114において、ミキサI121は、LNA112から出力される実RF信号と局所発振器120から出力される実数軸ローカル信号とを乗算することにより、実RF信号をRF信号周波数から所定の周波数離れたIF信号周波数へ変換し、複素IF信号の実数軸成分として出力する。ミキサQ122は、LNA112から出力される実RF信号と局所発振器120から出力される虚数軸ローカル信号を乗算し、実RF信号をRF信号周波数から所定の周波数離れたIF信号周波数へ変換し、複素IF信号の虚数軸成分として出力する。
【0025】
複素係数SAWフィルタ116は、SAWで構成された複素係数トランスバーサルフィルタのフィルタ機能を有するものであり、半複素ミキサ114から出力される複素信号の負の周波数成分を抑圧し、抑圧後の複素信号を減算することにより実IF信号を出力する。
【0026】
ここで、複素係数SAWフィルタ116のフィルタ機能を一般化した複素係数トランスバーサルフィルタ、及びSAWを用いて複素係数トランスバーサルフィルタを構成した複素係数SAWフィルタ116の原理について説明する。
【0027】
(複素係数トランスバーサルフィルタ)
複素係数トランスバーサルフィルタは、2つのバンドパスフィルタから構成され、一方のバンドパスフィルタでは、入力される複素信号の実数軸信号に対して偶対称インパルス応答とのたたみ込み積分を行い、他方のバンドパスフィルタは、入力される複素信号の虚数軸信号に対して奇対称インパルス応答とのたたみ込み積分を行う。この構成により正の周波数、あるいは負の周波数のいずれか一方を抑圧し、かつ目的信号が存在する周波数側において目的信号が存在する帯域外を抑圧するフィルタ効果を得ることが可能となる。
【0028】
ここで、インパルス応答のうち複素係数トランスバーサルフィルタの実数部のインパルス応答は図3で示されるような信号であり、包絡線の中心に対して偶対称となっており、上記の偶対称インパルスに相当する。また、複素係数トランスバーサルフィルタの虚数部のインパルス応答は、図4に示されるような信号であり、包絡線の中心に対して奇対称となっており、上記の奇対称インパルスに対応する。また、偶対象インパルス応答と奇対称インパルス応答が90°の位相差を有していることから、実数軸信号と虚数軸信号に同相成分の信号が入力される場合、実数部と虚数部で90°の位相差を有する信号が出力されることになる。
【0029】
複素係数トランスバーサルフィルタは、例えば、周波数シフト法によって設計される。すなわち、予め定められた通過帯域幅Bw/2、阻止帯域減衰量ATTの実係数LPF(Low Path Filter)を設計し、この実係数LPFの係数にejωtを乗じて、中心周波数ω、通過帯域幅Bw、阻止帯域減衰量ATTのフィルタを得ることができる。具体的には、中心周波数ω=190MHz、阻止帯域減衰量ATT=35dBとし、さらに、サンプリング周波数を100MHzとするような複素係数トランスバーサルフィルタを設計することができる。これにより、190MHzの正の周波数を中心とした一定の周波数帯域以外の他の周波数帯の信号を35dB抑圧するような複素係数トランスバーサルフィルタを得ることができる。
【0030】
(複素係数SAWフィルタの原理)
次に、複素係数トランスバーサルフィルタを、複素係数SAWフィルタ116によって実現する手段について説明する。一般的に複素係数トランスバーサルフィルタを実現する手段としては、SAWフィルタの他に、スイッチドキャパシタ回路、電荷領域素子等の手段によっても実現できるが、高い周波数のトランスバーサルフィルタの実現にはSAWフィルタが適している。そこで、以下にトランスバーサル型SAWフィルタの基本原理について説明する。
【0031】
図5は、複素係数SAWフィルタ116の構造を示した図である。複素係数SAWフィルタ116は、圧電基板2005と、圧電基板2005の上に設けられた交差幅が場所ごとに異なるすだれ状電極(以下、IDT:Inter−digital Transducer:インターデジタルトランスデューサ)2001〜2004によって構成される。なお、各すだれ状の部分は電極指とも呼ばれる。
【0032】
ここで、当該複素係数SAWフィルタ116の原理について説明する。インパルス電気信号が印加された場合に弾性表面波として出力されるSAW信号のインパルス応答は、各電極指での重み関数(交差幅)W、各電極指からの距離x、弾性表面波の位相速度vによって算出され、インパルス応答の周波数伝達関数H(ω)は、次式(1)によって示される。式(1)は、重み関数Wの線形結合であり、上記の複素係数トランスバーサルフィルタの基本原理と同じ原理を有する。
【0033】
【数1】

【0034】
当該周波数伝達関数H(ω)を有する複素係数トランスバーサルフィルタは、Wとxを設計することで振幅特性と位相特性を独立に制御することができる。すなわち、トランスバーサル型SAWフィルタのWとxを設計することで所望の特性の複素係数トランスバーサルフィルタを実現することができる。
【0035】
実数軸の成分が入力される入力端Iに接続されたIDT2001は、実数部のインパルス応答、すなわち偶対称インパルス応答に対応した重み付けを行うため、包絡線の中心に対して偶対称となるように各電極指が設けられる。虚数軸の成分が入力される入力端Qに接続されたIDT2002は、虚数部のインパルス応答、すなわち奇対称インパルス応答に対応した重み付けを行うため、包絡線の中心に対して奇対称となるように各電極指が設けられる。
【0036】
IDT2003は、出力端子に接続され、実数部のたたみ込み積分を行うIDT2001の伝搬路上に設けられている。また、IDT2004も出力端子に接続され、虚数部のたたみ込み積分を行うIDT2002の伝搬路上に設けられている。この構成により、入力側のIDT2001及びIDT2002から励振される弾性表面波は互いに90°の位相差をもって伝搬され、出力側のIDT2003及び2004で受信される。IDT2003及び2004は互いに逆相になるように接続されているため、この構成によって実数成分から虚数成分が減算されることになり出力端から実RF信号が出力されることになる。
【0037】
なお、インパルス応答に対応する重み付けがされたIDT2001及びIDT2002を出力端に接続し、入力端にIDT2003及びIDT2004を設けるようにしても同様に実RF信号を出力することが可能である。
【0038】
次に、複素係数SAWフィルタ116の動作について説明する。最初に、入力端に複素RF信号が入力されると、IDT2001とIDT2002において、圧電性により機械的歪みを生じ、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)が励振され、圧電基板2005の左右方向に伝搬することになる。このとき、実数部と虚数部におけるインパルス応答と複素RF信号とのたたみ込み積分が行われつつ、SAW信号が伝搬される。IDT2001とIDT2002とから伝搬されるSAW信号は、それぞれの弾性表面波の伝搬方向に設けられたIDT2003とIDT2004によって受信され、再び電気信号に変換される。このとき、IDT2003は、RF信号の実数成分を出力し、IDT2004は、極性が逆になったRF信号の虚数成分を出力する。そして、出力端からは実数成分から虚数成分が減算された実RF信号が出力されることになる。この構成により、複素係数SAWフィルタ116は、複素IF信号の周波数帯域以外の周波数帯域を抑制しつつ、実IF信号を出力することが可能となる。
【0039】
図6は、複素係数SAWフィルタ116の他の構造であり、図5では出力端側に2つのIDT2003とIDT2004が設けられていたのに対して、出力側に接続された1つのIDT2013によって、弾性表面波を受信する構成となっている。このとき、図5の入力側の虚数部に対応するIDT2002と極性を逆にしたIDT2012を設けることで、減算処理を実現することが可能である。なお、極性を逆にするのは虚数部に限られず、実数部の極性を逆にするようにしてもよい。この構成により、出力端側のIDTが1つでよくなる。
【0040】
次に、図2を参照しつつ、ダウンコンバータ1の動作について説明する。
アンテナによって受信される実RF信号S11がRF端子から入力される。実信号S11は、図2(a)に示すような3つの信号SA1、SA2、SA3を含んでいる。ここで、出力する必要のある目的信号は信号SA2であり、信号SA2に対するイメージ周波数信号を発生させる原因となる信号は、局所発振器120のローカル信号の所定の周波数であるLoを中心として対象の位置に存在する信号SA1となる。例えば、信号SA2の中心周波数に800MHzが適用される場合に、中間周波数を190MHzとするときは、ローカル信号の所定の周波数は610MHzが適用され、その際、イメージ周波数信号を発生させる原因となる信号SA1の周波数は420MHzとなる。
【0041】
実RF信号がBPF110に入力されると、BPF110は、フロントエンドを飽和させるRF信号周波数帯以外の帯域の信号、例えば、図2(b)では信号SA1を抑圧しつつ信号S12を出力する。
【0042】
信号S12は、LNA112により増幅され信号S13として半複素ミキサ114に入力される。半複素ミキサ114に入力される信号S13は、分岐される一方の信号はミキサI121により、局所発振器120から出力される所定の周波数(Lo)を有する複素ローカル信号の実数部ローカル信号と乗算される。また、分岐された他方の信号は、ミキサQ122により、局所発振器120から出力される所定の周波数を有する複素ローカル信号の虚数部ローカル信号と乗算される。これにより、信号SA1に対するイメージ周波数信号SA1−Iが抑圧されつつ半複素ミキサ114から互いに90°の位相差を有する信号S14IとS14Qとが出力され、信号S14Iを実数軸成分とし、信号S14Qを虚数軸成分とした複素IF信号S14が得られる。
【0043】
得られた複素IF信号S14は、図2(c)のように示される。図2(c)において、信号SA1−Iは、半複素ミキサ112により周波数変換される際に生じる信号SA1に対応するイメージ周波数信号である。上記の周波数の値によって示すと、信号SA1は、−190MHzに位置しており、信号SA1−I及び信号SA2は、+190MHzに位置していることになる。
【0044】
ここで、信号SA1と信号SA1−Iの信号の強度差は、半複素ミキサ114の抑圧度による差であり、目的信号である信号SA2と比べると、BPF110による抑圧度に、半複素ミキサ114の抑圧度が加算された抑圧度に応じた差となる。例えば、BPF110が30dB程度の抑圧度を有し、半複素ミキサ114が30dB程度の抑圧度を有する場合、信号SA2と信号SA1−Iの強度差は60dB程度の差となり、イメージ周波数信号による影響を大幅に抑圧することができる。
【0045】
次に、複素係数SAWフィルタ116が、中心周波数が190MHzで設計されているとすると、複素係数SAWフィルタ116は、図2(d)の破線のようなフィルタ特性を有することになる。そして、複素IF信号S14は、複素係数SAWフィルタ116に入力されると、正の周波数に存在する信号SA2と信号SA1−Iと信号SA3は、偶対称インパルス応答とのたたみ込み積分が行われる。一方、負の周波数に存在する信号SA1は、奇対称インパルス応答とのたたみ込み積分が行われる。偶対称インパルス応答とのたたみ込み積分が行われた実数部の信号と奇対称インパルス応答とのたたみ込み積分が行われた虚数部の信号との減算が行われ、実IF信号S15が出力される。具体的には、実IF信号S15として、図2(e)で示されるような190MHzを中心周波数する目的信号帯域幅以外の周波数帯の信号が複素係数SAWフィルタ116により抑圧された信号SA2とイメージ周波数信号SA1−Iとが得られることになる。
【0046】
上記の構成により、ダウンコンバータ1は、図14に示した従来のヘテロダイン方式のダウンコンバータ10に比べて、イメージ周波数信号の抑圧のためにIF信号の周波数を不必要に高くせずに、低い周波数に抑えることができる。これにより、IF端子以降の構成による消費電力を抑えることが可能となる。また、半複素ミキサ114の抑圧度の分だけRF信号の入力段のバンドパスフィルタの仕様が緩和されることから、IF信号の周波数を低くした場合に、急峻な特性が必要となる図14のBPF1003のようなバンドパスフィルタも不要にすることが可能となる。
【0047】
また、図17に示したダウンコンバータ12と比較すると、ダウンコンバータ12では、ポリフェーズフィルタ1204により負の周波数部分を抑圧した後に実IF信号とし、当該実IF信号においてBPF1205により目的信号以外の周波数帯を抑圧している。一方、本実施形態のダウンコンバータ1では1つの複素係数SAWフィルタ116により複素IF信号から目的信号以外の周波数帯を抑圧しつつ実IF信号を出力している。そのため、本実施形態のダウンコンバータ1では、ポリフェーズフィルタ1204分のロスを削減できるとともに小型化することが可能となる。
【0048】
(本実施形態によるアップコンバータ)
次に、本実施形態によるアップコンバータ2について図7を参照して説明する。アップコンバータ2は、複素係数SAWフィルタ210と、局所発振器224と、半複素ミキサ212と、BPF214と、PA(Power Amplifier)216と、LPF(Low Path Filter)218とを具備しており、IF信号をRF信号へ周波数変換する。
【0049】
アップコンバータ2において、複素係数SAWフィルタ210は、上述した複素係数トランスバーサルフィルタの一実施形態であり、入力される実IF信号に対して負の周波数成分を抑圧しつつ、互いに90°の位相差を有する複素IF信号を出力する。局所発振器224は、所定の周波数であって、cosの位相を有する実数軸ローカル信号と、−sinの位相を有する虚数軸ローカル信号からなる複素ローカル信号を出力する。ここで、所定の周波数とは、RF信号周波数からIF信号周波数を減算した周波数値となる。半複素ミキサ212は、局所発振器224に接続され、乗算器であるミキサI221と、ミキサQ222と、加算器223とを備えており、複素係数SAWフィルタ210から出力される複素信号と複素ローカル信号とを乗算し、イメージ周波数信号を抑圧しつつ実RF信号へ周波数変換する。
【0050】
ミキサI221は、入力される複素信号の実数軸信号に対して局所発振器224から出力される実数軸ローカル信号を乗算することによりIF信号周波数から所定の周波数離れたRF信号周波数へ周波数変換する。ミキサQ222は、入力される複素信号の虚数軸信号に対して局所発振器224から出力される虚数軸ローカル信号を乗算することによりIF信号周波数から所定の周波数離れたRF信号周波数へ周波数変換する。加算器223は、ミキサI221から出力される信号からミキサQ222から出力される信号を加算し、加算により得られる実RF信号を出力する。BPF214は、RF信号周波数帯以外の帯域を抑圧する。PA216は、BPF214から出力される実RF信号を増幅する。LPF218は、実RF信号のうち高周波成分を抑圧する。
【0051】
ここで、複素係数SAWフィルタ210としては、図8に示される構造のものが適用される。図8に示す複素係数SAWフィルタ210は、圧電基板2105と、圧電基板2105の上に設けられた交差幅が場所ごとに異なるすだれ状電極2101〜2104によって構成されている。IDT2101及びIDT2102は、入力端に接続されており、インパルス電気信号が印加されると、圧電性により機械的歪みを生じ、弾性表面波が励振され、圧電基板2105の左右方向に伝搬することになる。IDT2103は、実数軸の成分を出力する出力端Iに接続され、IDT2101からの弾性表面波を受信できる位置に設けられる。また、IDT2104は虚数軸の成分を出力する出力端Qに接続され、IDT2102からの弾性表面波を受信できる位置に設けられている。実数軸の成分を出力する出力端Iに接続されたIDT2103は、実数部のインパルス応答、すなわち偶対称インパルス応答に対応した重み付けを行うため、包絡線の中心に対して偶対称となるように各電極指が設けられる。虚数軸の成分を出力する出力端Iに接続されたIDT2104は、虚数部のインパルス応答、すなわち奇対称インパルス応答に対応した重み付けを行うため、包絡線の中心に対して奇対称となるように各電極指が設けられる。この構成によって、負の周波数信号を抑圧しつつ、実IF信号を実数部と虚数部で90°の位相差を有する複素IF信号へ変換することが可能となる。
【0052】
次に、複素係数SAWフィルタ210の動作について説明する。最初に、入力端に実IF信号が入力されると、IDT2101とIDT2102において弾性表面波が励振され、SAW信号が伝搬される。IDT2101とIDT2102とから伝搬されるSAW信号は、それぞれの弾性表面波の伝搬方向に設けられたIDT2103とIDT2104によって受信され、それぞれに対応したインパルス応答に基づくたたみ込み積分が行われつつ再び電気信号に変換される。このとき、IDT2103では、複素IF信号の実数成分が出力端Iから出力され、IDT2104では、複素IF信号の虚数成分が出力端Qから出力される。この構成により、偶対称及び奇対称のインパルス応答と実IF信号とに対してたたみ込み積分を行うことで、実IF信号の負の周波数帯域を抑制しつつ、互いに90°の位相差を有する複素IF信号を出力することが可能となる。
【0053】
なお、複素係数SAWフィルタ210は、図9に示すような構成によっても実現することが可能である。図9に示す構成は、図8では入力端側に2つのIDT2101と2102が設けられていたのに対して、出力側に接続されたIDT2112及びIDT2113の両方の伝搬路に跨るように、入力側にIDT2111が設けられている点で構成が異なる。この構成により、入力端側のIDTを1つにすることができる。
【0054】
次に、図7を参照しつつアップコンバータ2の動作について説明する。
最初にIF端子から実IF信号S21が複素係数SAWフィルタ210に入力される。複素係数SAWフィルタ210が中心周波数が190MHzで設計されているとすると、複素係数SAWフィルタ210は、実IF信号において中心周波数が190MHzの周波数帯域以外の帯域を抑圧しつつ、互いに90°位相が異なる信号S22I、信号S22Qとして出力する。信号S22Iが複素IF信号の実数軸成分となり、信号S22Qが複素IF信号の虚数成分となる。
【0055】
半複素ミキサ212は、複素係数SAWフィルタ210から出力される複素IF信号のうち実数軸成分の信号S22Iについては、ミキサI221により、局所発振器224から出力される所定の周波数(Lo)を有する複素ローカル信号の実数部ローカル信号と乗算される。また、複素IF信号のうち虚数軸成分の信号S22Qについては、ミキサQ222により、局所発振器224から出力される所定の周波数を有する複素ローカル信号の虚数部ローカル信号と乗算される。これにより、周波数変換によりRF信号周波数帯に生じるイメージ周波数信号が抑圧されつつ、それぞれのミキサI221とミキサQ222とから信号S23Iと信号S23Qとが出力される。加算器223は、信号S23Iから信号S23Qを加算し、実RF信号S24を出力する。
【0056】
BPF214は、入力される実RF信号に対して、RF信号周波数帯域以外の帯域を抑圧した実RF信号S25を出力する。実RF信号S25はPA216により増幅され、LPF218により高調波成分が除去されてRF端子からアンテナにより送信される。
【0057】
上記の構成により、アップコンバータ2は、図16に示すヘテロダイン方式のアップコンバータ11に比べて、イメージ周波数信号の抑圧のために、入力されるIF信号の周波数を不必要に高くせずに、低い周波数に抑えることができる。これにより、IF段の構成における消費電力を抑えることが可能となる。また、半複素ミキサ212の抑圧度の分だけRF信号の出力段のバンドパスフィルタの仕様が緩和されることから、IF信号の周波数を低くした場合に、急峻な特性が必要となる図16のBPF1105のようなバンドパスフィルタも不要にすることが可能となる。
【0058】
また、図17に示したダウンコンバータ12に対応するような構成のアップコンバータと比較した場合、本実施形態のアップコンバータ2では複素係数SAWフィルタ210により実IF信号から目的信号以外の周波数帯を抑圧しているが、ダウンコンバータ12に対応するような構成のアップコンバータでは、ポリフェーズフィルタに入力する前にIF信号周波数帯以外の周波数帯を抑圧するようなバンドパスフィルタが必要となる。そのため、本実施形態のアップコンバータ11では、ポリフェーズフィルタ分のロスを削減できるとともに小型化することができる。
【0059】
(他の実施形態によるダウンコンバータ及びアップコンバータ)
次に、本発明の他の実施形態によるダウンコンバータ3及びアップコンバータ4、並びにダウンコンバータ5及びアップコンバータ6についてそれぞれ図10、11及び図12、13を参照しつつ説明する。
【0060】
(全複素ミキサを用いたダウンコンバータ及びアップコンバータ)
図10に示すダウンコンバータ3は、BPF310、LNA312、ポリフェーズフィルタ314、局所発振器327、全複素ミキサ316、複素係数SAWフィルタ318を備えている。BPF310は、図1のBPF110に対応し、LNA312は、図1のLNA112に対応する構成である。ポリフェーズフィルタ314は、入力される実RF信号に対して負の周波数を抑圧しつつ複素RF信号として出力する。局所発振器327は、所定の周波数であって、cosの位相を有する実数軸ローカル信号と、sinの位相を有する虚数軸ローカル信号からなる複素ローカル信号を出力する。ここで、所定の周波数とは、RF信号周波数からIF信号周波数を減算した周波数値となる。
【0061】
全複素ミキサ316は、局所発振器327に接続され、ミキサII321と、ミキサIQ322と、ミキサQI324と、ミキサQQ325と、減算器323と、加算器326とから構成され、例えば、次の参考文献のFigure3.28およびFigure3.31に開示されているものが適用される(参考文献: "CMOS WIRELESS TRANSCEIVER DESIGN",Jan Crols, Michiel Steyaert,Kluwer,International Series in Engineering and Computer Science,1997)。全複素ミキサ316において、ミキサII321とミキサQI324には、局所発振器327から出力される複素ローカル信号の実数軸のローカル信号が入力され、ミキサIQ322とミキサQQ325には、局所発振器327から出力される複素ローカル信号の虚数軸のローカル信号が入力される。
【0062】
ポリフェーズフィルタ314から出力される複素RF信号の実数軸成分の信号S34Iは、ミキサII321にて、複素ローカル信号の実数軸のローカル信号と乗算され、ミキサIQ322にて、複素ローカル信号の虚数軸のローカル信号と乗算されることによりイメージ周波数信号が抑圧されつつIF信号周波数へ周波数変換される。
【0063】
ポリフェーズフィルタ314から出力される複素RF信号の虚数軸成分の信号S34Qは、ミキサQQ325にて、複素ローカル信号の虚数軸のローカル信号と乗算され、ミキサQI324にて、複素ローカル信号の実数軸のローカル信号と乗算されることによりイメージ周波数信号が抑圧されつつIF信号周波数へ周波数変換される。そして、減算器323により、ミキサII321の出力信号からミキサQQ325の出力信号が減算され、複素IF信号の実数軸成分の信号S35Iが出力される。また、加算器326により、ミキサQI324の出力信号とミキサIQ322の出力信号とが加算され、複素IF信号の虚数軸成分の信号S35Qが出力される。
【0064】
すなわち、全複素ミキサ316は、周波数変換される複素RF信号の実数軸成分と虚数軸成分の両方に対して、複素ローカル信号の実数軸成分と虚数軸成分を乗算することにより、半複素ミキサに対して高い抑圧度で周波数変換によって発生するイメージ周波数信号を抑圧することを可能としている。
【0065】
複素係数SAWフィルタ318は、図2や図3のような構造のSAWフィルタが適用され、全複素ミキサ316から出力される複素IF信号の実数軸成分の信号S35Iに対しては、偶対称インパルス応答とのたたみ込み積分が行う。一方、複素IF信号の虚数軸成分の信号S35Qに対しては、奇対称インパルス応答とのたたみ込み積分を行う。そして、偶対称インパルス応答とのたたみ込み積分が行われた実数部の信号と奇対称インパルス応答とのたたみ込み積分が行われた虚数部の信号との減算を行い実IF信号S36を出力する。
【0066】
上記の構成により、ダウンコンバータ3は、ポリフェーズフィルタ314を備えることにより、負の周波数成分を抑圧して、複素RF信号を生成することができるため、ポリフェーズフィルタ314による抑圧度に全複素ミキサ316による抑圧度が加算された抑圧度でイメージ周波数信号を抑圧することが可能となる。また、全複素ミキサ316を用いることから半複素ミキサ114を用いているダウンコンバータ1よりも高い抑圧度を得ることができる。また、全複素ミキサ316により、高い抑圧度を得られることから、トランジスタのばらつきによるイメージ抑圧比の劣化を許容することができる。そのため、全複素ミキサ316のトランジスタを小さくでき、一つ一つのトランジスタの消費電力を削減することができるため、トランジスタの使用個数は半複素ミキサに比べて増加するが、全体としての消費電力を下げることができ、同時にトランジスタの遷移周波数(fT)の低下も防ぐことが可能となる。
【0067】
次に、図11は、図10のダウンコンバータ3の構成に対応するアップコンバータ4の構成を示した図である。アップコンバータ4は、複素係数SAWフィルタ410と、全複素ミキサ412と、ポリフェーズフィルタ414と、BPF416と、PA418と、LPF420とを備えている。BPF416は、図7のBPF214に対応し、PA418は、図7のPA216に対応し、LPF420は、図7のLPF218に対応する構成である。複素係数SAWフィルタ410には、図8や図9のような構造のSAWフィルタが適用される。
【0068】
アップコンバータ4では、まず、複素係数SAWフィルタ410が、入力される実IF信号を、負の周波数成分を抑圧しつつ、実数部と虚数部で90°の位相差を有する複素IF信号を生成して出力する。全複素ミキサ412は、局所発振器437から出力される所定の周波数を有する複素ローカル信号と入力される複素IF信号の実数軸と虚数軸の全ての組み合わせに対して乗算を行ってRF信号周波数へ周波数変換し、複素RF信号を出力する。ポリフェーズフィルタ414は、全複素ミキサ412から出力される複素RF信号を負の周波数成分を抑圧しつつ実RF信号へ変換する。BPF416は、入力される実RF信号に対して、RF信号周波数帯域以外の帯域を抑圧し、抑圧後の実RF信号がPA418により増幅され、LPF420により高調波成分が除去されてRF端子からアンテナにより送信される。
【0069】
上記の構成により、アップコンバータ4は、全複素ミキサ412を用いることから半複素ミキサ212を用いているアップコンバータ2よりも高い抑圧度を得ることができる。さらに、ポリフェーズフィルタ414を備えることにより、負の周波数成分を抑圧して、実RF信号を生成することができるため、全複素ミキサ412による抑圧度にポリフェーズフィルタ414による抑圧度が加算された抑圧度でイメージ周波数信号を抑圧することが可能となる。また、全複素ミキサ412により、高い抑圧度を得られることから、トランジスタのばらつきによるイメージ抑圧比の劣化を許容することができる。そのため、全複素ミキサ412のトランジスタを小さくでき、一つ一つのトランジスタの消費電力を削減することができるため、トランジスタの使用個数は半複素ミキサに比べて増加するが、全体としての消費電力を下げることができ、同時にトランジスタの遷移周波数(fT)の低下も防ぐことが可能となる。
【0070】
(実ローカル信号入力の半複素ミキサを用いたダウンコンバータ及びアップコンバータ)
次に、図12及び図13を参照しつつダウンコンバータ5とアップコンバータ6について説明する。
【0071】
図12に示すダウンコンバータ5は、BPF510、LNA512、ポリフェーズフィルタ514、局所発振器523、半複素ミキサ516、複素係数SAWフィルタ518を備えている。BPF510は、図1のBPF110に対応し、LNA512は、図1のLNA112に対応する構成である。ポリフェーズフィルタ514は、入力される実RF信号に対して負の周波数を抑圧しつつ複素RF信号として出力する。局所発振器523は、所定の周波数を有する実ローカル信号を入力する。ここで、所定の周波数とは、RF信号の周波数からIF信号の周波数を減算した周波数値である。半複素ミキサ516は、局所発振器523に接続され、ミキサI521と、ミキサQ522を備えており、イメージ周波数信号を抑圧しつつ入力される複素RF信号を複素IF信号へ周波数変換する。
【0072】
半複素ミキサ516において、ミキサI521は、ポリフェーズフィルタ514から出力される複素RF信号の実数軸成分である信号S54Iと局所発振器523から出力される実ローカル信号とを乗算することによりRF信号周波数から所定の周波数離れたIF信号周波数へ変換した信号S55Iを出力する。ミキサQ522は、ポリフェーズフィルタ514から出力される複素RF信号の虚数軸成分の信号である信号S54Qと局所発振器523から出力される実ローカル信号とを乗算することによりRF信号周波数から所定の周波数離れたIF信号周波数へ変換した信号S55Qを出力する。
【0073】
複素係数SAWフィルタ518は、図2や図3のような構造のSAWフィルタが適用され、半複素ミキサ516から出力される複素IF信号の実数軸成分の信号S55Iに対しては、偶対称インパルス応答とのたたみ込み積分が行う。一方、複素IF信号の虚数軸成分の信号S55Qに対しては、奇対称インパルス応答とのたたみ込み積分を行う。そして、偶対称インパルス応答とのたたみ込み積分が行われた実数部の信号と奇対称インパルス応答とのたたみ込み積分が行われた虚数部の信号との減算を行い実IF信号S56を出力する。
【0074】
上記の構成により、ダウンコンバータ5は、RF信号段にて、ポリフェーズフィルタ514を備えることにより、負の周波数成分を抑圧して、複素RF信号を生成することができるため、ポリフェーズフィルタ514による抑圧度に半複素ミキサ516による抑圧度が加算された抑圧度でイメージ周波数信号を抑圧することが可能となる。さらに、半複素ミキサ516へ入力するローカル信号を実ローカル信号としていることから、ダウンコンバータ1のように複素ローカル信号を用いる場合よりも消費電力を半減させることができる。また、実ローカル信号を用いることで、実数と虚数のインバランスを気にせず、ミキサやフィルタの製造誤差などによるばらつきを抑えてイメージ周波数信号を抑圧する充分な抑圧度を得ることが可能となる。
【0075】
次に、図13は、図12のダウンコンバータ5の構成に対応するアップコンバータ6の構成を示した図である。アップコンバータ6は、複素係数SAWフィルタ610と、半複素ミキサ612と、ポリフェーズフィルタ614と、BPF616と、PA618と、LPF620とを備えている。BPF616は、図7のBPF214に対応し、PA618は、図7のPA216に対応し、LPF620は、図7のLPF218に対応する構成である。複素係数SAWフィルタ610には、図8や図9のような構造のSAWフィルタが適用される。
【0076】
アップコンバータ6では、まず、複素係数SAWフィルタ610が、入力される実IF信号を、負の周波数成分を抑圧しつつ、実数部と虚数部で90°の位相差を有する複素IF信号を生成して出力する。半複素ミキサ612は、入力される複素IF信号の実数軸成分の信号と虚数軸成分の信号のそれぞれに対して、局所発振器633から出力される所定の周波数を有する実ローカル信号を乗算して、RF信号周波数へ周波数変換し、複素RF信号を出力する。ポリフェーズフィルタ614は、半複素ミキサ612から出力される複素RF信号を負の周波数成分を抑圧しつつ実RF信号へ変換する。BPF616は、入力される実RF信号に対して、RF信号周波数帯域以外の帯域を抑圧し、抑圧後の実RF信号がPA618により増幅され、LPF620により高調波成分が除去されてRF端子からアンテナにより送信される。
【0077】
上記の構成により、アップコンバータ6は、RF信号段にて、ポリフェーズフィルタ614を備えることにより、負の周波数成分を抑圧して、実RF信号を生成することができるため、半複素ミキサ612による抑圧度にポリフェーズフィルタ614による抑圧度が加算された抑圧度でイメージ周波数信号を抑圧することが可能となる。さらに、半複素ミキサ612へ入力するローカル信号を実ローカル信号としていることから、アップコンバータ2のように複素ローカル信号を用いる場合よりも消費電力を半減させることができる。また、実ローカル信号を用いることで、実数と虚数のインバランスを気にせず、ミキサやフィルタの製造誤差などによるばらつきを抑えてイメージ周波数信号を抑圧する充分な抑圧度を得ることが可能となる。
【0078】
なお、上述した複素係数トランスバーサルフィルタに用いられる偶対称インパルス応答あるいは奇対称インパルス応答は、複素係数トランスバーサルフィルタにフラットな群遅延特性が要求される場合には、厳密に偶対称あるいは奇対称である必要があるが、群遅延特性が厳密にフラットであることを要求されない場合には、偶関数あるいは奇関数に基づいて生成される際に対称性が若干失われ、ほぼ偶対称あるいはほぼ奇対称であるようなインパルス応答であってもよい。
【0079】
また、複素係数トランスバーサルフィルタ及びその一実施形態の複素係数SAWフィルタは、上述した設計により、正の周波数を抑圧し、負の周波数の目的信号の周波数帯域以外を抑圧するようにしてもよい。
【0080】
また、ポリフェーズフィルタも、設計により、負の周波数ではなく、正の周波数を抑圧するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施形態によるダウンコンバータの内部構成を示したブロック図である。
【図2】同実施形態のダウンコンバータによる周波数変換の過程を説明するための図である。
【図3】同実施形態のダウンコンバータに用いられる複素係数トランスバーサルフィルタの実数部のインパルス応答を示した図である。
【図4】同実施形態のダウンコンバータに用いられる複素係数トランスバーサルフィルタの虚数部のインパルス応答を示した図である。
【図5】同実施形態のダウンコンバータに用いられる複素係数SAWフィルタ(その1)の構造を示した図である。
【図6】同実施形態のダウンコンバータに用いられる複素係数SAWフィルタ(その2)の構造を示した図である。
【図7】本発明の実施形態によるアップコンバータの内部構成を示したブロック図である。
【図8】同実施形態のアップコンバータに用いられる複素係数SAWフィルタ(その1)の構造を示した図である。
【図9】同実施形態のアップコンバータに用いられる複素係数SAWフィルタ(その2)の構造を示した図である。
【図10】本発明の他の実施形態によるダウンコンバータ(その1)の内部構成を示したブロック図である。
【図11】本発明の他の実施形態によるアップコンバータ(その1)の内部構成を示したブロック図である。
【図12】本発明の他の実施形態によるダウンコンバータ(その2)の内部構成を示したブロック図である。
【図13】本発明の他の実施形態によるアップコンバータ(その2)の内部構成を示したブロック図である。
【図14】従来技術によるヘテロダイン方式のダウンコンバータの内部構成を示した図である。
【図15】従来技術によるヘテロダイン方式のダウンコンバータの周波数変換の過程を説明するための図である。
【図16】従来技術によるアップコンバータの内部構成を示した図である。
【図17】従来技術によるポリフェーズフィルタを用いたダウンコンバータの内部構成を示した図である。
【図18】従来技術によるポリフェーズフィルタの周波数変換の過程を説明するための図である。
【符号の説明】
【0082】
1 ダウンコンバータ
110 BPF
112 LNA
114 半複素ミキサ
120 局所発振器
116 複素係数SAWフィルタ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信するRF信号を中間周波数へ周波数変換する周波数変換器であって、
受信信号に対しRF信号周波数帯域以外の帯域を抑圧して実RF信号を出力する実係数フィルタと、
所定の周波数を有する複素ローカル信号を出力する局部発振器と、
前記実係数フィルタから出力される前記実RF信号及び前記局部発振器から出力される前記複素ローカル信号の実数部を乗算して周波数変換し、前記実RF信号及び前記局部発振器から出力される前記複素ローカル信号の虚数部を乗算して周波数変換することにより前記実RF信号の周波数より前記所定の周波数分離れた周波数の複素信号を出力する複素ミキサと、
前記複素ミキサから出力される前記複素信号の実数部に対し偶関数に基づいて生成されるインパルス応答によりたたみ込み積分を行い、前記複素ミキサから出力される前記複素信号の虚数部に対し奇関数に基づいて生成されるインパルス応答によりたたみ込み積分を行うことにより正の周波数あるいは負の周波数のいずれか一方を抑圧して前記複素信号に対する実信号を出力する複素係数トランスバーサルフィルタと、
を備えたことを特徴とする周波数変換器。
【請求項2】
前記複素係数トランスバーサルフィルタは、SAWフィルタによって構成されることを特徴とする請求項1に記載の周波数変換器。
【請求項3】
前記実係数フィルタと、前記複素ミキサとに接続されるポリフェーズフィルタを備え、
前記ポリフェーズフィルタは、
前記実係数フィルタから出力される前記実RF信号から正の周波数あるいは負の周波数のいずれか一方を抑圧して複素RF信号を生成して出力し、
前記複素ミキサは、
前記ポリフェーズフィルタから出力される複素RF信号の実数部及び前記局部発振器から出力される前記複素ローカル信号の実数部を乗算して周波数変換し、前記ポリフェーズフィルタから出力される複素RF信号の虚数部及び前記局部発振器から出力される前記複素ローカル信号の虚数部を乗算して周波数変換することにより前記複素RF信号の周波数より前記所定の周波数値分離れた周波数の複素信号を出力する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の周波数変換器。
【請求項4】
前記局部発振器は、
所定の周波数を有する実ローカル信号を出力し、
前記複素ミキサは、
前記ポリフェーズフィルタから出力される複素RF信号の実数部及び前記局部発振器から出力される前記実ローカル信号を乗算して周波数変換し、前記ポリフェーズフィルタから出力される複素RF信号の虚数部及び前記局部発振器から出力される前記実ローカル信号を乗算して周波数変換することにより前記複素RF信号の周波数より前記所定の周波数値分離れた周波数の複素信号を出力する
ことを特徴とする請求項3に記載の周波数変換器。
【請求項5】
入力される中間周波数の信号をRF信号周波数へ周波数変換する周波数変換器であって、
入力される中間周波数の実信号に対し偶関数に基づいて生成されるインパルス応答によりたたみ込み積分を行い、前記実信号に対し奇関数に基づいて生成されるインパルス応答によりたたみ込み積分を行い、正の周波数あるいは負の周波数のいずれか一方を抑圧した複素信号を出力する複素係数トランスバーサルフィルタと、
所定の周波数を有する複素ローカル信号を出力する局部発振器と、
前記複素係数トランスバーサルフィルタから出力される前記複素信号の実数部及び前記局部発振器から出力される前記複素ローカル信号の実数部を乗算して周波数変換し、前記複素信号の虚数部及び前記局部発振器から出力される前記複素ローカル信号の虚数部を乗算して周波数変換することにより前記入力される信号の周波数より前記所定の周波数分離れた周波数の実信号を出力する複素ミキサと、
前記複素ミキサから出力される実信号に対しRF信号周波数帯以外の周波数帯域を抑圧して実RF信号を出力する実係数フィルタと、
を備えたことを特徴とする周波数変換器。
【請求項6】
前記複素係数トランスバーサルフィルタは、SAWフィルタによって構成されることを特徴とする請求項5に記載の周波数変換器。
【請求項7】
前記複素ミキサと、前記実係数フィルタとに接続されるポリフェーズフィルタを備え、
前記複素ミキサは、
前記複素係数トランスバーサルフィルタから出力される複素信号の実数部及び前記局部発振器から出力される前記複素ローカル信号の実数部を乗算して周波数変換し、前記複素係数トランスバーサルフィルタから出力される複素信号の虚数部及び前記局部発振器から出力される前記複素ローカル信号の虚数部を乗算して周波数変換することにより前記複素信号の周波数より前記所定の周波数値分離れた周波数の複素信号を出力し、
前記ポリフェーズフィルタは、
正の周波数あるいは負の周波数のいずれか一方を抑圧して前記複素ミキサから出力される前記複素信号に対応する実信号を出力する
ことを特徴とする請求項5または6に記載の周波数変換器。
【請求項8】
前記局部発振器は、
所定の周波数を有する実ローカル信号を出力し、
前記複素ミキサは、
前記複素係数トランスバーサルフィルタから出力される複素信号の実数部及び前記局部発振器から出力される前記実ローカル信号を乗算して周波数変換し、前記複素係数トランスバーサルフィルタから出力される複素信号の虚数部及び前記局部発振器から出力される前記実ローカル信号の虚数部を乗算して周波数変換することにより前記複素信号の周波数より前記所定の周波数値分離れた周波数の複素信号を出力する
ことを特徴とする請求項7に記載の周波数変換器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−174084(P2007−174084A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−366732(P2005−366732)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】