説明

周波数逓倍装置

【目的】周波数逓倍装置に関し、その目的は、ダブラーで逓倍された所望の周波数の信号のみを抽出してゲインを落とすことなく出力できる周波数逓倍装置を実現することにある。
【構成】入力信号の周波数を2倍して出力するダブラーと、インダクタンスと可変容量ダイオードが並列接続されダブラーの出力側に接続されたLC並列共振器と、該LC並列共振器を通過した信号のピーク値を検出するピーク検波器と、該ピーク検波器の出力信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、該A/D変換器の出力データに基づいて電圧変化による周波数変化分とゲイン変化分の比が小さくなるように前記可変容量ダイオードに与える逆バイアス電圧データを演算するCPUと、該CPUで演算された逆バイアス電圧データをアナログ信号に変換して前記可変容量ダイオードに与えるD/A変換器とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は周波数逓倍装置に関し、更に詳しくは、逓倍された所望の周波数の信号のみをゲインを落とすことなく出力できる装置に関する。
【0002】
【従来の技術】図9は従来の周波数逓倍装置の一例を示す回路図であり、波形発生器のクロック信号発生部の例である。図において、1は可変周波数fを持つ入力信号の入力端子であり、ダブラー2に接続されている。ダブラー2はバッファアンプ3と抵抗4の直列回路を介してLC並列共振器5の一端に接続されている。該LC並列共振器5はインダクタンス6と可変容量ダイオード7が並列接続されたものであり、可変容量ダイオード7のアノードは可変電源8に接続されるとともにコンデンサ9を介してアースに接続され、カソードは抵抗4とバッファアンプ10の接続点に接続されている。バッファアンプ10は出力端子11に接続されている。
【0003】このような構成において、入力端子1に加えられる入力信号の周波数fはダブラー2で2倍されたのちバッファアンプ3に入力される。ところで、ダブラー2の出力信号の各周波数成分に着目すると、入力信号の周波数fの基本波成分及び奇数次高調波成分はかなり抑圧されてはいるものの、そのままでは比較的大きなレベルで出力されてしまう。そこで、インダクタンス6と可変容量ダイオード7が並列接続されたLC並列共振器5を用い、可変容量ダイオード7のPN接合容量の逆バイアス電圧による変化を利用して共振点を移動させている。
【0004】これにより、共振点ではLC並列インピーダンスは理論上無限大になり、その周波数信号を出力として取り出すことができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、可変容量ダイオード7の逆バイアス電圧を所望の共振周波数に対応した値に設定しても、素子のバラツキや温度特性等によって必ずしも所望の共振周波数に設定されるとは限らない。
【0006】その結果、図10に示すように、2倍の周波数2fにおいてゲインをロスしてしまうという問題点が発生する。
【0007】本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ダブラーで逓倍された所望の周波数の信号のみを抽出してゲインを落とすことなく出力できる周波数逓倍装置を実現することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の周波数逓倍装置は、入力信号の周波数を2倍して出力するダブラーと、インダクタンスと可変容量ダイオードが並列接続されダブラーの出力側に接続されたLC並列共振器と、該LC並列共振器を通過した信号のピーク値を検出するピーク検波器と、該ピーク検波器の出力信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、該A/D変換器の出力データに基づいて電圧変化による周波数変化分とゲイン変化分の比が小さくなるように前記可変容量ダイオードに与える逆バイアス電圧データを演算するCPUと、該CPUで演算された逆バイアス電圧データをアナログ信号に変換して前記可変容量ダイオードに与えるD/A変換器とを設けたことを特徴とする。
【0009】
【作用】LC並列共振器を構成する可変容量ダイオードにはLC並列共振器を通過した信号のピーク値の検波信号に基づいて電圧変化による周波数変化分とゲイン変化分の比が小さくなるように演算された逆バイアス電圧が与えられ、LC並列共振器の共振周波数はゲインロスが小さくように設定される。
【0010】これにより、LC並列共振器を構成する素子のバラツキや温度特性等による共振周波数に対する影響を改善できる。
【0011】
【実施例】以下、図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0012】図1は本発明の一実施例を示す回路図であり、図9と同一のものには同一の符号を付けている。図において、12はダイオードを用いたピーク検波器であり、アノードはバッファアンプ10と抵抗13の接続点に接続され、カソードはコンデンサ14と抵抗15の並列回路を介してアースに接続されるとともにA/D変換器16の入力端子に接続されている。該A/D変換器16の出力端子はCPU17の入力端子に接続されている。18はD/A変換器であり、入力端子はCPU17の出力端子に接続され、出力端子はLC並列共振器5を構成する可変容量ダイオード7のアノードに接続されている。
【0013】図1の各部の動作を説明する。ダブラー2は図2の(A)に示す入力信号の周波数fを(B)に示すように2倍する。このとき、入力信号の基本波成分及び奇数次高調波成分は抑圧されるもののそれらのレベルはかなり高い。そこでこれらの不必要な周波数の信号成分を取り除くために上述のようにインダクタンス6と可変容量ダイオード7が並列接続されたLC並列共振器5を利用する。
【0014】LC並列共振器5の共振点におけるインピーダンスは理論上無限になり、図3に示すように共振周波数と同じ周波数の信号は次段のバッファアンプ10に入力される。そこで、LC並列共振器5のLを固定としてD/A変換器18を介して可変容量ダイオード7に与えられる逆バイアス電圧を可変にすることによりCを可変にし、図4に示すように共振周波数を可変にする。これにより、任意の周波数に対応できる。ところが、通過信号の周波数がLC並列共振器5で作られるバンドパスフィルタの通過帯域に入っていれば出力されるが、共振周波数と必要な周波数が一致していないと上述のようにゲインロスになってしまう。
【0015】そのため、ピーク検波器12で出力信号を検波して最大ゲインを得るようにする。すなわち、ピーク検波器12で検波される出力信号のピーク値に等しい直流信号により出力信号のゲインが分かる。図5に示すピーク検波器12のカソード側A点の出力信号は図6のようになり、該出力信号のピーク値xはA/D変換器16でデジタル信号に変換されてCPU17に入力される。
【0016】CPU17は、ピーク値xに対して可変容量ダイオード7に与える逆バイアス電圧を上下させるように演算制御する。すなわち、上述のように、可変容量ダイオード7に与える逆バイアス電圧を変化させることによりLC並列共振器5の共振周波数が変化し、出力信号のゲインも変化する。そして、ある周波数範囲に入ると出力信号のゲインはほとんど変化しなくなる。そこで、図7に示すように逆バイアス電圧を変化させたときの共振周波数fと出力信号のゲインGの変化分の微分値ΔG/Δfが小さくなるようにD/A変換器18から可変容量ダイオード7に変換出力される逆バイアス電圧を調整する。なお、(A)は逆バイアス電圧を下げる場合であり、(B)は逆バイアス電圧を上げる場合である。図8は微分曲線であり、(A)は出力信号の周波数が共振周波数より小さくて逆バイアス電圧を下げた場合の微分値の軌跡を示し、(B)は出力信号の周波数が共振周波数より大きくて逆バイアス電圧を上げた場合の微分値の軌跡を示している。CPU17による逆バイアス電圧の制御動作は微分値の絶対値が図8に円で示した零近傍の所定の範囲に入った時点で停止する。
【0017】これにより、ダブラーで2倍にされた信号の中から必要な信号成分をゲインを落とすことなく抽出できる。
【0018】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明の周波数逓倍装置は、LC並列共振器を構成する可変容量ダイオードにLC並列共振器を通過した信号のピーク値の検波信号に基づいて電圧変化による周波数変化分とゲイン変化分の比が小さくなるように演算された逆バイアス電圧を与えるように構成しているので、LC並列共振器を構成する素子のバラツキや温度特性等による共振周波数に対する影響を改善でき、ゲインロスの少ない出力信号が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す回路図である。
【図2】図1のダブラーの動作説明図である。
【図3】図1のLC並列共振器の動作説明図である。
【図4】図1のLC並列共振器の共振周波数の変化説明図である。
【図5】図1のピーク検波器の動作説明図である。
【図6】図1のピーク検波器の出力信号の波形図である。
【図7】図1のCPUによる微分値制御の動作説明図である。
【図8】微分曲線の説明図である。
【図9】従来の装置の一例を示す回路図である。
【図10】ゲインの説明図である。
【符号の説明】
1 入力端子
2 ダブラー
3,10 バッファアンプ
4,13,15 抵抗
5 LC並列共振器
6 インダクタンス
7 可変容量ダイオード
9,14 コンデンサ
11 出力端子
12 ピーク検波器
16 A/D変換器
17 CPU
18 D/A変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 入力信号の周波数を2倍して出力するダブラーと、インダクタンスと可変容量ダイオードが並列接続されダブラーの出力側に接続されたLC並列共振器と、該LC並列共振器を通過した信号のピーク値を検出するピーク検波器と、該ピーク検波器の出力信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、該A/D変換器の出力データに基づいて電圧変化による周波数変化分とゲイン変化分の比が小さくなるように前記可変容量ダイオードに与える逆バイアス電圧データを演算するCPUと、該CPUで演算された逆バイアス電圧データをアナログ信号に変換して前記可変容量ダイオードに与えるD/A変換器、とを設けたことを特徴とする周波数逓倍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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