説明

味噌の製造方法

本発明は、原料大豆を圧扁または割碎処理する段階;圧扁または割碎処理された大豆を水浸して烝煮した後冷却する段階;準備された烝煮大豆に麹菌と豆類または、穀類分を混合した後醗酵して乾燥する段階;及び乾燥された麹に、食塩、浄水を混合して熟成する段階を含む味噌の製造方法に係り、本発明によれば原料大豆を圧扁または割碎処理することによって大豆の加水時間及び烝煮時間を短縮させることができるだけでなく、大豆表面に亀裂を形成させて表面積が増加してそれにより有用微生物の大豆内栄養分活用が容易になることによって蛋白質分解酵素生成量が増加して味噌の熟成期間が短縮させられるし、味品質が優秀で生産性増大させることができる効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、味噌の製造方法及びそれから製造された味噌に係り、より詳細には原料大豆を圧扁または割碎処理する段階;圧扁または割碎処理された大豆を水浸して烝煮した後冷却する段階;準備された烝煮大豆に麹菌と豆類または穀類分を混合した後醗酵して乾燥する段階;及び乾燥された麹に、食塩、精水を混合して熟成する段階からなる味噌の製造方法及びそれから製造された味噌に関する。
【背景技術】
【0002】
味噌の種類は、醤油を漬けて醤水をすく浮かしを使う在来式味噌、麹に塩水をつりあうように注いで醤水を取らないで食べる改良式味噌、2種類方法を折衷した折衷式味噌などを挙げられる。
【0003】
在来式味噌は、大豆で麹を炊いてレンガ型または、球形でかもして自然発効させた後、食塩水に浸漬させて6〜12ヶ月熟成した後醤油を分離して固形分を熟成させて製造される。改良式味噌は、醤油を汲み出さないで味噌を主とする製造された味噌で、在来式と同じ方法で粒型で麹を炊いてアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)等の麹菌を利用して料理した汁過程を経た後浸漬過程なしで熟成させて製造される。混合式味噌は、在来式と改良式方法を折衷して製造された味噌で、太めに碎いた麹をあらかじめおいしい塩水にやや強く溶いて漬かっておいてから醤油を汲み出して残ったみそだま麹浮かしに交ぜて製造される。
【0004】
従来の通常の改良式麹の製造過程は、図1と2に例示されたように主に粒型の麹をアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)等の麹菌を利用して料理した汁過程を経た後、粉砕して塩漬過程なく熟成させて作る方法(図1参照)と、粒型の麹を粉砕しなくて食塩水に浸漬させて熟成した後醤油を分離して固形分を熟成させて作る方法(図2参照)がある。
【0005】
前記従来の味噌の製造方法において、味噌の主原料の大豆は何の加工をしないで丸い形態そのまま丸ごと使えば、大豆の内部にまで水分が浸透しにくくて、水を添加した後の水吸収が非常に困るようになるだけでなく、大豆に対する温度履歴も不均一になり、蛋白質変性度及び大豆の色が不均一になる。また、均一に膨化なった形状を得るためには原料が粉末形態であることが好ましいが、粉末形態でクッカー(cooker)などの加熱器に供給すれば、水吸収能力が高いから逆に水吸収を不均一するようにして水分の過多及び過小の分布偏差が発生することになる。また、大豆は組織がかたくて蛋白質の消化吸収を阻害するトリプシン阻害剤とヘマグルチニン(hemagglutinin)等が含まれていて加工工程中熱を加えて蛋白質変性などが必要だ。また大豆の組織を淡くして加熱時間を短縮させるために浸漬過程を経ることになるが、豆の水和速度は一般的に豆表皮組織の細孔、表面的、浸漬温度、浸漬水の塩類及び濃度などに影響を受けて、浸漬時間は、概略10時間内外で処理時間が長くて多くの労働力と時間消費を持ってきて経済的不利益を招くということと同時に、浸漬中水溶性栄養素損失の問題点がある。
【0006】
従来このような大豆の特徴的問題点を解決する方案で特許文献1及び特許文献2“植物調乳の製造方法”では植物の種子から調乳を製造するということにあって、原料種子から挟雑物を除去した後、組砕、圧扁した後加熱、乾燥、殺菌及び熱応力による細胞破壊などを目的とした熱処理(間接加熱)を実施した後スクリュープレス、フィルタープレスなどの機械的力を利用して乳脂を採取する方法が開始されている。
【0007】
また、特許文献3“大豆油の製造方法”では大豆を圧扁後焙焼することによってもうもうちょっとゴマ油と類似の香り及び味を持つことができる大豆油を製造する方法が開始されていて、特許文献4“醤油の製造方法”では大豆をあらかじめ分けて壊して皮をむいて間接加熱によって予熱して、ローラ等で圧扁などを実施して前処理した後、原料として使っている。
【0008】
本発明者らは、前記のような従来改良式味噌の製造方法の問題点を解決するために鋭意研究を繰り返した結果、大豆を圧扁処理して表面の亀裂及び表面積を広げて浸漬時間を短縮するということと同時に、大豆表面に接種された麹菌の生育に影響を与えることによって酵素生成量増加による味噌の熟成期間短縮で時間消費による経済的不利益を解決して味品質が優秀な味噌の製造方法を開発して本発明に達することになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】日本特許出願昭61−132255号
【特許文献2】日本特許出願昭61−170295号
【特許文献3】大韓民国特許出願第10−1990−0015727号
【特許文献4】大韓民国特許出願第10−2003−87450号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって本発明の目的は、原料大豆を圧扁または割碎処理して大豆表面に亀裂を形成して表面積を増加させて浸漬及び烝煮時間を短縮させる一方、麹菌の生育を活性化させて熟成期間を短縮させることができる味噌の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記のような本発明の目的は、原料大豆を圧扁または割碎処理して麹を製造してこれを従来方法で製造された麹と浸漬時間別水分含有量変化、烝煮時間による硬度変化及びおつゆを製造する時間別蛋白質分解酵素力価を比較して圧扁または割碎処理した大豆で製造された麹が浸漬及び烝煮時間が短縮されて、麹菌の適当な生育条件を提供することによって酵素生成量を増加させて麹の発効と味噌の熟成期間を画期的に短縮めさせることができることを確認することによって達成された。
【0012】
本発明は、原料大豆を圧扁または割碎処理する段階;圧扁または割碎処理された大豆を水浸した後、烝煮する段階;烝煮された大豆に麹菌と豆類または、穀類分を混合した後、醗酵して乾燥する段階;及び乾燥された麹と食塩及び精製水を混合して熟成する段階からなる味噌の製造方法を提供する。
【0013】
本発明において、前記原料大豆の圧扁処理はローラなどの装置を利用して、厚さ2ないし4mmになるようにすることが好ましい。大豆厚さが4mm以上ならば水をよく吸収できなく、表面積が大きく増加することができなくて酵素の生成量増大の効果が大きくなくて、2mm未満ならば大豆での油成分が流出して微生物生育と風味に良くなくなる。
【0014】
また、前記原料大豆の割碎処理は2等分以上で大豆の表面積を増加させることができる位なら十分だが、2ないし10等分で割碎することが好ましい。
【0015】
本発明において、前記圧扁または割碎処理された大豆は室温(25℃)で6〜14時間の間水浸して45ないし60重量%水分含量になるようにする。
【0016】
前記のような大豆の水浸は大豆組織を淡くして加熱時間を短縮するために必要で、本発明の方法により圧扁または割碎処理した大豆は浸漬時間が30分ないし1時間で水化時間がはやい結果を見せた。
【0017】
本発明において、前記水浸した大豆は常圧で100ないし150℃で20ないし40分の間烝煮した後30ないし40℃で冷却する。
【0018】
前記大豆烝煮は蛋白質の変成、軟化、殺菌をして汁製造の時微生物の生育を円滑にして、生大豆臭の除去のために必要で、通常的に烝煮時間は大豆の水分含量、烝煮温度、烝煮圧力などにより一定でないが大豆の色が濃い茶色になる時まで過度に烝煮しなくて淡い黄色、淡い茶色になる時まで烝煮することが好ましい。本発明の方法により圧扁または割碎処理した大豆は表面に発生した亀裂によって大豆内部までの熱伝達効率が優秀で常圧条件で30分内外で烝煮が可能だ。
【0019】
本発明において、前記烝煮された大豆は原料総量対比0.1ないし0.3重量%の麹菌と0.5ないし1.5重量%の豆類または、穀類分を増量剤で使って均一に混合した後醗酵して乾燥する。
【0020】
前記段階は烝煮大豆に麹菌を接種して培養する工程で麹菌醗酵による多様な代謝産物を生産する工程だ。前記麹菌はAspergillus属、Rhizopus属、Mucor属などのかび、Saccharomyces属、Hasenula属、Torulopsis属などの酵母、Bacillus属などの細菌中どれ一つ以上を含んで使うことができる。前記麹菌は烝煮大豆の温度が生育に阻害しないほど冷却した後初期水分活性度を低くして雑菌の成長を抑制する目的で使う増量剤(分散剤)と混合して大豆頭表面に接種する。前記増量剤で使われた豆類または、穀類分は当業界で通常的に使われる豆類または、穀類の粉末として烝煮されたり糊化されたことを使うことが好ましくて、その種類には制限がない。このような過程は、通常的に36〜44時間程度でしていて本発明では24〜28時間だけ培養しても従来改良麹と類似の水準の蛋白質分解酵素が生成される結果を見せた。
【0021】
本発明において、前記乾燥された麹は食塩及び精製水を混合して熟成して最終的に味噌が得られる。
【0022】
前記食塩は精製塩、再製塩、天日塩または、加工塩で構成された群から選択された1種の食塩または、2種以上の混合食塩を使うことができる。
【0023】
このように、本発明の方法により圧扁または割碎処理された大豆は水浸及び烝煮期間短縮効果があって、表面積増加と有用微生物が大豆内栄養分活用を容易にしてつりあった生育条件を提供することによって酵素生成量を増加させて麹の発効と味噌の熟成期間を画期的に短縮させることができたし、品質が優秀で生産性を増大させることができる味噌製造が可能にした。
【発明の効果】
【0024】
以上でよく見たところのように、本発明の方法により原料大豆を圧扁または割碎処理することによって大豆の加水時間及び烝煮時間を短縮させることができるだけでなく、大豆表面に亀裂を形成させて表面積が増加してそれにより有用微生物の大豆内栄養分活用が容易になることによって蛋白質分解酵素生成量が増加して味噌の熟成期間を短縮させられるし、味品質が優秀で生産性を増大させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、従来改良麹味噌製造工程を概略的に示する図面である。
【図2】図2は、従来塩漬式改良麹味噌製造工程を概略的に示する図面である。
【図3】図3は、本発明による味噌製造工程を概略的に示する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の内容を実施例によってみて詳細に説明することにする。ただしこれら実施例は本発明の内容を理解するために提示されるということだけで本発明の権利範囲がこれら実施した例で限定されられることで解釈されられてはならない。
【0027】
実施例1:圧扁大豆を利用した麹の製造
原料大豆をローラを使って2〜4mm厚さで圧扁した後、室温(25℃)で6〜14時間の間水浸して水分含量が55ないし60w/w%になるようにした。前記水浸した大豆は120℃で30分の間烝煮した後35℃まで放冷たくて、大豆重量対比0.3%の麹菌と1.0%の大豆分を混合して、混合物を圧扁表面に噴射して接種した。培養条件は、初期24時間の間製品温度を30℃にして相対湿度を90%で維持したし、以後製品温度を25℃にして相対湿度を40%でして総36ないし40時間お吸物を製造した。
【0028】
その結果、圧扁大豆の最大水分吸収時間は60分だったし、従来の7時間対比7倍の短縮効果を確認した。烝煮時間は大豆の量及びスチーム圧力などにより一定でないが、表2の結果で短縮効果を確認した。大豆の圧扁程度は2ないし4mmが最適であり、最適圧扁条件での蛋白質分解酵素力価は従来の丸大豆対比70%向上する効果を確認した。
【0029】
圧扁大豆の加水時間及び烝煮時間は表1と表2のようだ。
【0030】
圧扁大豆を利用して製造した改良麹の蛋白質分解酵素測定結果は表3のようだ。
【0031】
実施例2:従来方法による麹の製造
大豆を水洗した後水温25℃で7時間浸漬した後120℃で烝煮した後35℃まで放冷たくて大豆重量対比0.3重量%の種おつゆと1.0重量%の大豆分を混合して大豆表面に噴射して接種した。
【0032】
培養条件は、初期24時間の間製品温度を30℃にして相対湿度を90%で維持したし、以後製品温度を25℃にして相対湿度を40%でして総36ないし40時間お吸物を製造した。
【0033】
丸大豆の加水時間及び烝煮時間は表1と表2のようだ。
【0034】
従来改良麹の蛋白質分解酵素測定結果は表3のようだ。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
実施例3:圧扁大豆を利用した味噌の製造
実施例1によって製造された改良麹(麹水分45重量%基準)と浄水、食塩をそれぞれ63.64重量%、24.36重量%、12.00重量%で混合して室温で22日間熟成させて味噌を製造した。その結果、圧扁大豆を利用して製造した味噌の成熟度が501mg%(熟成22日基準)で従来改良味噌対比52%向上したし、従来改良味噌の同一成熟度(熟成22日基準)対比2.2倍以上の熟成期間短縮効果を確認した。
【0039】
圧扁大豆を利用して製造した改良味噌の成熟度測定結果は表4のようだ。
【0040】
実施例4:従来方法による味噌の製造
実施例2によって製造された改良麹(麹水分45重量%基準)と浄水、食塩をそれぞれ63.64重量%、24.36重量%、12.00重量%で混合して室温で22日間熟成させて味噌を製造した。
【0041】
従来の改良味噌の成熟度測定結果は表4のようだ。
【0042】
【表4】

【0043】
実験例1:改良味噌の官能検査
実施例3と4で製造された改良味噌の官能検査は、満25才〜49才主婦57人を対象に嗜好度調査を進行したことでその結果は圧扁大豆で製造した改良味噌が従来より優勢な傾向を見せたし、表5と同じだ。
【0044】
【表5】

【0045】
原料大豆を割碎し、残り条件は実施例1に記載された条件と同一に処理した時も前記実験例と類似の結果を現わした。
【0046】
結論的に、原料大豆を割碎処理した場合にも大豆の加水時間及び烝煮時間を短縮させられたし、大豆表面積が増加するということによって有用微生物の大豆内栄養分活用が容易になることによって蛋白質分解酵素生成量が増加して味噌の熟成期間が短縮させられるし、味品質が優秀で生産性増大させることができる効果があるということを確認することができた。
【0047】
前述の事項から明らかなように、本発明は、大豆の薄片化や圧壊によって味噌(大豆ペースト)を製造する方法を提供する。結果的に、有利に、大豆の水和及び調理の時間を短縮することができ、大豆の表面に亀裂を入れて表面積を増大させることができ、有益な微生物が大豆に含まれる栄養素を容易に使用可能となり、酵素産生を増大させてメジュ(meju)の醗酵期間及び味噌の熟成期間を大幅に短縮して、優れた質を有し生産効率が改善された味噌を製造することができる。
【0048】
例証目的のために本発明の好ましい実施形態が開示されているが、当業者であれば、付随の請求の範囲に開示されているような本発明の精神と範囲から逸脱することなく、様々な変形、追加及び置換が可能であることを認識するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料大豆を圧扁または割碎処理する段階;
前記圧扁または割碎処理された大豆を水浸した後、烝煮して、冷却する段階;
前記烝煮された大豆に麹菌と増量剤で豆類または、穀類分を均一に混合した後醗酵及び乾燥して麹を製造する段階;及び
前記麹に食塩と浄水を混合して熟成する段階を含む味噌の製造方法。
【請求項2】
前記圧扁または割碎処理した大豆を水浸して水分含量が45ないし60重量%になるようにして、100ないし140℃の条件で烝煮することを特徴とする請求項1に記載の味噌の製造方法。
【請求項3】
前記烝煮された大豆は、原料総量対比0.1ないし0.3重量%の麹菌と0.5ないし1.5重量%の豆類または、穀類分と混ざり合うことを特徴とする請求項1に記載の味噌の製造方法。
【請求項4】
前記麹菌は、Aspergillus属、Rhizopus属、Mucor属などのかび、Saccharomyces属、Hasenula属、Torulopsis属などの酵母、Bacillus属などの細菌のうちの一つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の味噌の製造方法。
【請求項5】
前記麹菌と混ざり合う豆類または、穀粉類は、烝煮されたり糊化された豆類または、穀粉類であることを特徴とする請求項1に記載の味噌の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか一つの項の方法で製造された味噌。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−509892(P2013−509892A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538747(P2012−538747)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【国際出願番号】PCT/KR2010/007118
【国際公開番号】WO2011/059181
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(507421681)シージェイ チェイルジェダン コーポレーション (24)