説明

味覚変革製品

本発明は式(I)
[式中、RはC6〜C10−アルキルまたはアルケニル基を表す]
のアルキルピリジンを、こく味または旨味の味覚を香味付けされた組成物または香味付けされた食品中で付与または補強するための、味覚付加または強化成分として用いる使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、味覚の分野に関する。より特定には、特定のアルキルピリジンを、こく味または旨味として知られる味覚を付与または補強するための味覚強化成分として用いる使用に関する。
【0002】
本発明は、上述の化合物の少なくとも1つを含有する組成物または物品にも関する。
【0003】
背景技術および先行技術
脂肪質の、魚のような、または金属質のノートを付与するための技術において、様々なアルキルピリジンが公知である。
【0004】
US5298486号(Firmenichによる)は、2段落24〜33行目において、3−ヘキシルピリジンがフルーティであり、且つ3−ヘプチルピリジンが脂肪質、金属質、且つ魚のようであることを開示している。
【0005】
3−ヘキシル、3−ヘプチル、および3−オクチルピリジンは、Firmenichから1992年にThomasおよびBassols(J. Agric. Food Chem. 1992, 40, 2236〜2243)によって報告されている。芳香成分としてのそれらの合成はEP−A−470391号内に開示されている。
【0006】
US4005227号(Firmenichによる)は、香味強化剤のためのアルキルピリジンの混合物に関する。識別されたアルキル基はメチル、エチル、プロピル、ブチルおよびフェニルである。
【0007】
US3669908号およびUS3716543号(共にIFFによる)は、アルキルピリジンが魚のようなノートを導出することも開示している。言及された化合物は、本発明において使用されるものとは全く異なる。
【0008】
しかしながら、それらの文献のいずれも、そこに記載された化合物がこく味または旨味の味覚を付与または補強するために使用できる官能特性を有することを予期、報告、または示唆していない。
【0009】
旨味(強化)分子における新規開発(New Developments in Umami (Enhancing) Molecules), Winkel et al, Chemistry & Biodiversity,第5巻 (2008), 1195〜1203ページ内に、公知の旨味変革化合物のレビューが示されている。しかしながら、本発明の化合物の示唆はない。
【0010】
こく味および旨味は現在、味覚分野において確立された記述語であり、且つ、食品の味および/または芳香を、必ずしもそれら自身の強い特徴的な味または芳香を有することなく、補足、強化、または修正することが公知である。こく味および旨味に対する要請は、スープ、ソース、風味のあるスナック、調理済み料理、および薬味を含む広範な食品のために存在する。さらには、それらはしばしば塩味の特性を有する食材を補うまたは強化することが判明しており、その結果、ナトリウムまたは塩の低減が望まれている場合に有用であることがある。
【0011】
旨味は、人間の舌の上に存在する特殊化された受容体細胞によって感知される5つの基本味の1つである。旨味は風味(savoriness)の感覚に適合し、且つ、特に肉、チーズ、および他の高タンパク食品において一般的なグルタミン酸塩の検知に適合する。旨味受容体の挙動は、なぜグルタミン酸一ナトリウム(MSG)を含有する食品がしばしば"よりこくのある"味があるのかを説明する。しかしながら、幾人かの消費者は明らかにMSGについて敏感であり、且つ、その消費の際に頭痛または他の疾患に苦しめられることがある。従って、少なくとも部分的なMSGの置き換えが望まれる。
【0012】
こく味は、"おいしさ"、"持続性"、"充実感(mouthfulness)"、"口当たり"および"濃密さ"として、様々に描写されている。それは自然に様々な食品、例えば、チーズ("熟成した"チーズ味をもたらす)、野菜の香味、特にトマト; 肉、(こくおよびより長く持続する味をもたらす); マヨネーズおよびドレッシング(酸味のノートをまろやかにできる); 脂肪低減食品(脂肪を普通に含む製品と同様のこくをもたらす); ハーブおよび香辛料; およびスープ、特に味噌汁内に存在している。
【0013】
旨味またはこく味の特性を有する成分を強化する香味および味覚を提供することが望ましい。旨味およびこく味の特性を有する成分を強化する香味および味覚を提供することがさらに望ましい。
【0014】
発明の説明
我々はこの度、驚くべきことに特定の類のピリジン誘導体を、例えば香味付け組成物または香味付けされた食品のこく味または旨味の味覚を付与または補強するための香味料または味覚強化成分として使用できることを発見した。
【0015】
従って、本発明は式(I)
【化1】

[式中、
RはC6〜C10−アルキルまたはアルケニル基を表す]
の化合物を、香味付けされた物品のこく味または旨味の味覚を付加し、強化し、改善または変革するための香味付け成分として用いる使用を提供する。
【0016】
RがC10よりも大きければ、旨味またはこく味の味覚が知覚されないことが判明している。同様に、RがC6より小さければ、旨味またはこく味が知覚されないか、または望ましくないさらなる香味が知覚され得る旨味またはこく味がある。従って、本発明の1つの利点は、該化合物が、製品の香味のプロファイルに悪影響を及ぼすことなく旨味および/またはこく味の味覚を製品に付加することである。
【0017】
好ましくは、RはC6〜C9−アルキルまたはアルケニル基を表す。なぜなら、旨味/こく味の味覚はこの範囲内で最も顕著であるからである。
【0018】
好ましくは、該化合物は2−ヘキシルピリジン、2−ヘプチルピリジンおよび2−オクチルピリジンからなる群から選択される。
【0019】
さらにより好ましい実施態様においては、式(I)による化合物の混合物を共に供給する。特に好ましいのは、C6アルキルまたはアルケニルピリジン、C7アルキルまたはアルケニルピリジン、およびC8アルキルまたはアルケニルピリジンから選択される少なくとも2つの化合物がある化合物の混合物である。最も好ましくは、2−ヘキシルピリジンと2−ヘプチルピリジンとの混合物を使用する、なぜなら、これが例外的に低いレベルで強いこく味または旨味の味覚を提供するからである。
【0020】
さらなる態様において、本発明はこく味または旨味の味覚付加成分として、式(I)
【化2】

[式中、
RはC6〜C10−アルキルまたはアルケニル基を表す]
の化合物を含む香味付け組成物を提供する。
【0021】
さらに他の態様において、本発明は
i) 少なくとも1つの式(1)の化合物、または上で定義された香味付け組成物、および
ii) 食材ベース
を含む香味付け物品を提供する。
【0022】
式(I)の化合物と共に使用するために特に好ましい食材は、風味付けキューブ(savory cube)、即席スープ、缶入りスープ、保存肉、即席麺、冷凍食品または料理、ソース、香味付けされたオイルおよびスプレッド、スナックまたはビスケットを含む。
【0023】
上述の通り、本発明は式(I)の化合物を、味覚付加または強化成分として、特にこく味または旨味の味覚を付与または補強するために用いる使用に関する。本発明の特定の実施態様によれば、かかる使用は、フレーバリスト達によって非常に高く評価され、風味のある香味、例えば牛肉、鶏肉、豚肉およびシーフードにおけるこく味または旨味の味覚を付与または強化する。驚くべきことに、シーフードの用途、例えばすり身、またはシーフードブイヨンまたはスナックの香味において、式(I)による化合物が甘さの知覚および香味の寿命を強化することも判明している。それに対して、ビーフの香味において、式(I)による化合物は脂肪および牛脂ノートの知覚を強化することが判明している。
【0024】
言い換えれば、本発明は上に示された通り、香味付け組成物または香味付けされた物品の味覚特性を付加し、強化し、改善または変革する方法であって、少なくとも前記の組成物または物品に効果的な量の式(I)の化合物を添加することを含む方法に関する。本発明の文脈において、"式(I)の化合物の使用"とは、化合物(I)および香味料産業において活性成分として有利に用いられ得るものを含有する任意の組成物の使用を含む。
【0025】
他の態様において、本発明は、
i) 味覚付加または変革成分として、上記の式(I)による少なくとも1つの化合物;
ii) 香味担体および香味ベースからなる群から選択される少なくとも1つの成分;および
iii) 随意に少なくとも1つの香味補助剤
を含む、味覚変革組成物を提供する。
【0026】
"香味担体"はここで、香味付け成分の官能特性を著しく変えない範囲の、香味の観点で実質的に中性の材料を意味する。該担体は液体または固体であってよい。
【0027】
適した液体の担体は、例えば乳化系、即ち、溶剤および界面活性剤系、または香味料中で通常使用される溶剤を含む。香味料中で通常使用される溶剤の性質およびタイプの詳細な記載は出し尽くせない。適した溶剤は、例えばプロピレングリコール、トリアセチン、トリエチルシトレート、ベンジルアルコール、エタノール、植物油、またはテルペンを含む。
【0028】
適した固体の担体は、例えば吸収ゴムまたはポリマー、またはさらにカプセル化材料を含む。かかる材料の例は、壁形成材料および可塑化材料、例えば単糖類、二糖類または三糖類、天然または化工デンプン、親水コロイド、セルロース誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、タンパク質またはペクチン、またはさらに参考文献、例えばH.Scherz, Hydrokolloids:Stabilisatoren,Dickungs− und Geliermittel in Lebensmittel,Band 2 der Schriftenreihe Lebensmittelchemie,Lebensmittelqualitaet,Behr’s Verlag GmbH & Co.,Hamburg,1996内に挙げられている材料を含んでよい。カプセル化は当業者によく知られた方法であり、且つ、例えば噴霧乾燥、凝集、押出、コアセルベーションおよびその種の技術を使用して実施できる。
【0029】
"香味ベース"はここで、少なくとも1つの香味付け成分を含む組成物を意味する。
【0030】
前記の香味付け成分は、式(I)の化合物ではない。さらに、"香味付け成分"はここで、快楽的効果を付与するために香味付け調製物または組成物中で使用される化合物を意味する。言い換えれば、かかる成分は香味付け成分であるとみなされ、当業者によってよい意味で若しくは心地よく、組成物の味覚を付与できるか若しくは変革できるものであって、ただ味覚を有するだけでないとして認識されなければならない。
【0031】
ベース中に存在する香味付け相互成分の性質およびタイプはここで詳細に記載されず、当業者はその一般的な知見に基づき、且つ、意図されている使用または用途、および所望の官能効果に従ってそれらを選択できる。一般的な観点では、それらの香味付け相互成分は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペノイド、窒素または硫黄を含む複素環式化合物および精油にわたる化学種に属し、且つ、前記の芳香相互成分は天然または合成由来であってよい。それらの相互成分の多くは、いずれにせよ、参考文献、例えばS.Arctanderによる本、Perfume and Flavor Chemicals,1969,Montclair,ニュージャージー,米国、またはそのより最新の版、または同様の他の文献、並びに香味料分野における豊富な特許文献内に示されている。前記の相互成分は、様々なタイプの香味付け化合物を制御して放出することが知られる化合物であってもよいとも理解される。
【0032】
しかしながら、本発明の特定の実施態様によれば、前記の香味ベースは有利にも、少なくとも式
【化3】

[式中、
aは水素原子またはメチル基を表し、且つRbはメチル基またはエチル基、アセチル基、またはカルボニル基を含むC3〜C10−基を表す]
の化合物を含む。それらの化合物は、香味料中で肉のノートを付与することが知られている。
【0033】
特定の実施態様において、Rbは例えば、メチル、アセチル、2−フラン−カルボニル、1−メチル−3−オキソ−ブチル、1−メチル−3−オキソ−プロピル、1−エチル−3−オキソ−プロピル、1−プロピル−3−オキソ−プロピル、1,1−ジメチル−3−オキソ−プロピル、1−ペンチル−5−オキソ−ペント−3−エニル基である。特定の実施態様において、Raは水素原子である。
【0034】
化合物(II)の限定されない例は、S−(2−5−ジメチル−3−フリル) 2−フランカルボチオネート、S−(2−メチル−3−フリル) エタンチオネート、3−[(2−メチル−3−フリル)チオ]ブタナールまたは2−メチル−3−(メチルチオ)フランである。
【0035】
従って、少なくとも式(I)の化合物と少なくとも式(II)の化合物とを含む香味付け組成物もまた本発明の目的である。
【0036】
"香味補助剤"はここで、追加的に加えられる利益、例えば色、特定の耐光性、化学的安定性などを付与できる成分を意味する。香味ベースにおいて通常使用される補助剤の性質およびタイプの詳細な記載は出し尽くせない。かかる補助剤は当業者によく知られているが、前記の成分は当業者によく知られていることを述べなければならない。
【0037】
式(I)の少なくとも1つの化合物と、少なくとも1つの香味担体からなる組成物、並びに式(I)の少なくとも1つの化合物、少なくとも1つの香味担体、少なくとも1つの香味ベース、および随意に少なくとも1つの香味補助剤を含む香味付け組成物は、本発明の特定の実施態様を表す。
【0038】
非常に好ましい実施態様において、1つより多くの式(I)の化合物を組み合わせて使用する。なぜなら、こく味または旨味の味覚の相乗的な強化をこの方法で達成できることが判明しているからである。さらに、成分の組み合わせは、望ましくない香味のノートを付与せずに望ましいこく味または旨味の味覚を提供できることが判明している。
【0039】
例えば、2−ヘキシルピリジンと2−ヘプチルピリジンおよび/または2−オクチルピリジンとの混合物は、こく味または旨味の味覚を、香味に悪影響しないで導出する際に特に効果的であることが判明している。
【0040】
さらに、式(I)の化合物を、香味付けされた物品内に有利に混合して、前記物品のこく味または旨味の味覚をよい意味で付与、または変革できる。従って、さらに他の態様において、本発明は
i) 味覚付加または変革成分として、上で定義された通り、随意に香味付け組成物の一部として存在する、少なくとも1つの式(1)の化合物、および
ii) 食材ベース
を含む香味付けされた物品を提供する。
【0041】
適した食材ベース、例えば食品または飲料は、風味付けキューブ、即席スープ、缶入りスープ、保存肉、即席麺、冷凍食品および料理、すべての形態のソース、香味付けされたオイルおよびスプレッド、衣付きの揚げ物、スナックおよびビスケットを含む。式(I)による化合物が有用性を見出されている特に好ましい食材は、そこでトップノートが重要なもの、例えばシーフード、牛肉、鶏肉、野菜、チーズ、脂肪、牛脂、および/または骨髄を含む。
【0042】
明確化のために、"食材"はここで、食用製品、例えば食品または飲料を意味することに言及しなければならない。従って、本発明によって香味付けされた物品は、式(I)による1つまたはそれより多くの化合物、並びに、所望の食用製品、たとえば風味付けキューブの味覚および香味のプロファイルに相応する随意の利益剤を含む。
【0043】
食材または飲料の成分の性質およびタイプはここではより詳細に記載せず、当業者はその一般的な知見に基づき、且つ、前記の製品の性質に従ってそれらを選択できる。
【0044】
様々な上述の物品または組成物中に混合できる、本発明による化合物における割合は、広範の値に及ぶ。それらの値は香味付けされる物品の性質、および所望の官能効果、並びに、本発明による化合物が当該技術分野で通常使用される香味付け相互成分、溶剤または添加剤と混合される場合、所定のベース中での相互成分の性質に依存する。
【0045】
香味付け組成物の場合、典型的な濃度は、本発明の化合物が混合される消費者製品の質量に対して、本発明の組成物が3ppm〜50ppmのオーダー、より好ましくは5ppm〜75ppm、最も好ましくは8〜50ppmである。それより低い濃度、例えば0.001質量%〜0.5質量%のオーダーを、それらの化合物が香味付けされた物品中に混合される場合に使用でき、該パーセンテージは物品の質量に対する。
【0046】
その水準で味覚は、典型的には旨味のような、持続する、甘く且つ長引くとして、描写される。
【0047】
実施例
本発明をここで、以下の実施例を用いてさらに詳細に説明し、その際、省略形は当該技術分野における通常の意味を有し、NMRスペクトルのデータは400MHz機を用いて13Cに対してCDCl3において記録されたものであり、ケミカルシフトδは、標準としてのTMSに関してppmで示され、且つ、結合定数JはHzで表される。
【0048】
実施例1
2−ヘプチルピリジンの調製
2−ヘプチルピリジンを以下の通りに調製した。KOHを含有するチューブおよび導入漏斗を有するCO2/アセトン凝縮器を装備した200mlのフラスコ内で、NH3(100ml)を凝縮した。力強く攪拌しながら硝酸第二鉄(0.15g)を添加した。約−35℃で、ナトリウム(3.61g)を30分間に渡って徐々に導入した。この後、2−ピコリン(12.62g)を10分に渡って滴下した。該混合物をさらに20分間、攪拌し、その後、1−ブロモヘキサン(24.76g)を30分に渡って滴下した。該混合物をさらに5分間攪拌した後、それを一晩おいてアンモニアを蒸発させた。氷を添加し、且つ、混合物をエーテルを用いて3回抽出した。その有機相を塩性溶液を用いて2回洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、その後、溶剤を除去した。残留物を約120℃で蒸留した。この生成された純粋な2−ヘプチルピリジン(16.82g)は、以下の通りに特徴付けられた:

【0049】
実施例2
2−オクチルピリジンの調製
1−ブロモヘキサンの代わりに1−ブロモヘプタンを使用した以外、2−ヘプチルピリジンと同一の方法で2−オクチルピリジンを調製した。それは以下の通りに特徴付けられた:

【0050】
実施例3
2−ノニルピリジンの調製
1−ブロモヘキサンの代わりに1−ブロモオクタンを使用した以外、2−ヘプチルピリジンと同一の方法で2−ノニルピリジンを調製した。それは以下の通りに特徴付けられた:

【0051】
実施例4
2−ウンデシルピリジンの調製
1−ブロモヘキサンの代わりに1−ブロモデカンを使用した以外、2−ヘプチルピリジンと同一の方法で2−ウンデシルピリジンを調製した。それは以下の通りに特徴付けられた:

【0052】
実施例5
2−ドデシルピリジンの調製
1−ブロモヘキサンの代わりに1−ウンデカンを使用した以外、2−ヘプチルピリジンと同一の方法で2−ドデシルピリジンを調製した。それは以下の通りに特徴付けられた:

【0053】
実施例6
4−メチル−2−ペンチルピリジンの調製
4−メチル−2−ペンチルピリジンを以下の通りに調製した:
2−ブロモ−4−メチルピリジン(2g)およびTHF(10ml)をアルゴン下で反応容器内に導入した。該容器を−78℃に冷却し、且つ、Pd(dppf)2Cl2触媒(0.18g)を添加した後、3.0Mのペンチルマグネシウムブロミド(10ml)を添加する。該反応を0℃に温め、且つ、出発材料を使いきるまで継続する。20mlの飽和した塩化アンモニウム溶液を用いて該反応を急冷し、且つ、20mlの酢酸エチルを用いて抽出した。酢酸エチル層を1Mの水性塩酸20mlを用いて抽出した。水性の酸の相を1MのNaOHを用いて中和し、且つ、20mlの酢酸エチルを用いて抽出した。酢酸エチル層を塩性溶液を用いて洗浄し、且つ、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。生成相をろ過し、且つ、回転蒸発器において凝縮し、850mgの生成物が収率44.9%で得られた。
【0054】
実施例7
アルキルピリジンの評価
以下の表に示されるアルキルピリジンを初めにプロピレングリコール溶剤内に希釈し、アルキルピリジンの10%溶液を提供して調製した。それぞれの溶液をその後、NaClの0.3%の水溶液を使用して、より良好な溶解を達成するために必要であれば加熱して、10ppm〜30ppmのアルキルピリジン濃度に希釈した。該濃度を下記の表に示す。該試料をその後、周囲温度で貯蔵した。
【0055】
習熟した8人のパネリストからなる審査員団が、味覚特性について試料をスケール0〜10で評価し、ここで0はこく味/旨味効果がないことを示し、且つ10は著しく強いこく味/旨味効果を示す。
【0056】
【表1】

(1)注文の参照 82703、Fluka
(2)注文の参照 80221、Fluka
(3)参照 150560050、Acros Organics
(4) 製品番号 P0336、TCI Europe
(5) 品番 A12772、Alfa Aesar。
【0057】
実施例8
アルキルピリジンの混合物の評価
味覚付加組成物を以下の成分を含有して調製した:
【表2】

【0058】
該混合物をその後、プロピレングリコールを使用して希釈し、該成分の10%の活性溶液を提供した。
【0059】
実施例9
アルキルピリジンを含有するエビ香味料
海老香味料混合物を以下の成分を混合することによって調製した:
【表3】

【0060】
その後、エビ香味料混合物を0.3%のNaCl水溶液に50℃で添加し、且つ攪拌した。得られる混合物は、溶液の総質量に対して0.07質量%のエビ香味料を含有した。
【0061】
該溶液を冷却し、その後、2つの試料に分割した。第一の試料はエビ香味料混合物のみを含有した。第二の試料はさらに、0.01質量%の実施例8による香味強化混合物を含有した。
【0062】
それらの試料をその後、8人の習熟したパネリストの審査員団が試験した。第一の試料は実質的に旨味/こく味の特性が欠けていることが判明したのに対して、第二の試料はエビの香味プロファイルを補足する、長く持続する旨味のような味を導出した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、
RはC6〜C10−アルキルまたはアルケニル基を表す]
の化合物を、香味付けされた物品のこく味または旨味の味覚を付加し、強化し、改善または変革するための成分として用いる使用。
【請求項2】
RがC6〜C8−アルキルまたはアルケニル基を表す、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記の化合物が、2−ヘキシルピリジン、2−ヘプチルピリジンおよび2−オクチルピリジンからなる群から選択される、請求項1あるいは2に記載の使用。
【請求項4】
式(I)による化合物の混合物を含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
6−アルキルまたはアルケニルピリジン、C7−アルキルまたはアルケニルピリジンおよびC8−アルキルまたはアルケニルピリジンから選択される少なくとも2つの化合物を含む、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
こく味または旨味の味覚変革成分として、式(I)
【化2】

[式中、
RはC6〜C10−アルキルまたはアルケニル基を表す]
の化合物を含む香味付け組成物。
【請求項7】
i) 請求項1に定義された式(I)の少なくとも1つの化合物、または請求項6に定義された組成物、および
ii) 食材ベース
を含む、香味付けされた物品。
【請求項8】
食材ベースが、風味付けキューブ、即席スープ、缶入りスープ、保存肉、即席麺、冷凍食品または料理、ソース、香味付けされたオイルおよびスプレッド、衣付きの揚げ物、スナックおよびビスケットであることを特徴とする、請求項7に記載の香味付けされた物品。
【請求項9】
i) 味覚変革成分として、請求項1から8までのいずれか1項に定義された式(I)による少なくとも1つの化合物;
ii) 香味担体および香味ベースからなる群から選択される少なくとも1つの成分;および
iii) 随意に少なくとも1つの香味補助剤
を含む、味覚変革組成物。

【公表番号】特表2011−516058(P2011−516058A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502463(P2011−502463)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【国際出願番号】PCT/IB2009/051199
【国際公開番号】WO2009/122318
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1,route des Jeunes, CH−1211 Geneve 8, Switzerland
【Fターム(参考)】