説明

呼吸用マスクの装着具、及び呼吸用マスク

【課題】呼吸用マスクの装着に伴う不快感を低減させる。
【解決手段】使用者の鼻孔を覆い加圧された呼吸用気体を前記鼻孔に供給する呼吸用マスクの装着具は、長手形状を有するとともに第1の端部が前記呼吸用マスクと連結される1対の連結部材と、前記連結部材の第2の端部に連結されるとともに前記使用者の耳珠内側の窪みに嵌めこまれる1対の固定部材とを有するので、使用者の頭部周囲を拘束することによる不快感を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の鼻孔を覆い加圧された呼吸用気体を前記鼻孔に供給する呼吸用マスクとその装着具に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠時に気道が閉塞して無呼吸状態になる睡眠時無呼吸症候群の治療法の1つとして、患者の睡眠時に鼻孔に392〜1961Pa程度に加圧された呼吸用気体を継続的に供給することで気道を広げ、患者の呼吸を支援するCPAP(Continuous Positive Airway Pressure)療法が知られている。
【0003】
CPAP療法では、空気を加圧して呼吸用気体を生成する機能を備えた呼吸用気体供給装置が用いられる。呼吸用気体供給装置が生成した呼吸用気体は、フレキシブルホースにより呼吸用マスクに供給される。呼吸用マスクは、特許文献1にその一例が記載されているように、これを使用する患者(以下、使用者)の鼻孔を覆うように構成される。そして、使用者は、睡眠時に呼吸用マスクを装着することで呼吸用気体の供給を受ける。
【0004】
CPAP療法による予定された治療効果を得るためには、呼吸用気体が呼吸用マスクの外部にもれないようにすることが肝要である。よって、呼吸用マスクを使用者の鼻孔周辺に密着させ、その状態で長時間固定することが求められる。かかる要望に応えるために、種々の方法が提案されている。たとえば、特許文献1や特許文献2には、ヘッドギア式の装着具が記載されている。ヘッドギア式の装着具は、ストラップを使用者の頭部周辺に縛りつけることで呼吸用マスクを固定する。また、特許文献3に記載された風邪マスク式の装着具は、ループ状のゴム紐などを耳の周囲に係合して呼吸用マスクを固定する。さらに、特許文献2には、上記装着具が接続される角度が調節可能な呼吸用マスクが記載されている。この呼吸用マスクは、装着具の接続部が回転可能に構成された角度調節機構を有し、使用者の鼻孔周辺に対する呼吸用マスクの角度を調節して、呼吸用マスクの密着度を向上させる。
【0005】
また、呼吸用気体や使用者の呼気に含まれる水分が呼吸用マスクの内壁で結露し、水滴が仰臥した使用者の顔に落下すると、使用者を不要に覚醒させる。よって、これを防ぐための方法が提案されている。たとえば、引用文献4に記載された呼吸用マスクは、外郭(フレーム)が二重に構成され、呼吸用マスクの外壁と内壁の間に断熱用の空気層を有する。これにより、呼吸用マスクの内壁の温度が外壁の温度より高く保たれ、結露が抑制される。
【0006】
さらに、使用者が呼吸用マスクを装着して横臥するときにフレキシブルホースを体で押しつぶすと呼吸用気体の供給が阻害され、治療に支障をきたす。これを防止するために、たとえば特許文献5には、フレキシブルホースと接続されるL字管を、フレームに旋回可能に設けた呼吸用マスクが記載されている。この呼吸用マスクによれば、使用者が横臥して体の下敷きになるおそれが少ない方向にフレキシブルホースを予め向けておくことができるので、フレキシブルホースを押しつぶすことを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−10311号公報
【特許文献2】特開2004−572号公報
【特許文献3】特開2004−209061号公報
【特許文献4】特開2008−119239号公報
【特許文献5】特開2004−570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来技術には、次のような種々の問題がある。まず、特許文献1や特許文献2に記載されたヘッドギア式の装着具は、ストラップで頭部周辺を圧迫するので、使用者に拘束感や圧迫感といった不快感を与えるおそれがある。また、特許文献3に記載された風邪マスク式の装着具は、使用者の耳の付け根にゴム紐が食い込んで不快感あるいは痛みが生じるおそれがある。このような不快感や痛みは良質な睡眠を妨げる要因となる。これは、不要かつ有害な覚醒を抑制して良質な睡眠を確保するというCPAP療法の治療目的を鑑みると問題となる。
【0009】
また、ストラップなどの装着具においては、睡眠中に使用者が姿勢を変えたときに、呼吸用マスクやホースが使用者の体や寝具などと接触して引っ張られ、ストラップに対し幅方向に捻じる力が作用する場合がある。すると、ストラップが捻じれて、呼吸用マスクが鼻孔周辺からずれるおそれがある。これは、治療効果の観点から問題となる。
【0010】
また、特許文献2に記載された呼吸用マスクと装着具の角度調節機構は、使用者が横臥したときに下敷きになると使用者の顔面を圧迫し、使用者に不快感を与えるおそれがある。これに加え、呼吸用マスクを装着した状態で使用者の鼻の高さや鼻孔の向きに合わせて呼吸用マスクの角度を調節しようとすると、鼻孔周辺に隙間が生じやすく、角度調節後に装着具を再度装着しなおす必要が生じるおそれがある。これは、使用者の利便性の観点から問題となる。
【0011】
さらに、特許文献4に記載された呼吸用マスクは、二重構造のフレームを製造する際のコストの増加が問題となる。たとえばブロー成型など高難度の技術により一体成型しようとすると、コスト増につながる。かといって、内壁と外壁を別々に成型してこれを組み合わせる方法を用いたとしても、部品点数の増加と組立工数の増加により、やはりコスト増を招くおそれがある。
【0012】
そして、特許文献5に記載された呼吸用マスクは、フレームとL字管とを別部品として形成してこれらを組合せるので、部品点数及び工数の増加とこれによるコスト増につながるので問題となる。また、L字管が旋回自在であると、額や口唇部にフレキシブルホースが接触して、使用者に不快感を与えるおそれもある。
【0013】
そこで、本発明の目的は、装着に伴う不快感を低減させることができる呼吸用マスクとその装着具を提供することにある。
【0014】
また、本発明の別の目的は、呼吸用マスクがずれにくい装着具を提供することにある。
【0015】
本発明の更に別の目的は、装着の際に使用者の鼻孔の角度に合わせた調節が可能であり、装着が容易な装着具を提供することにある。
【0016】
本発明の更に別の目的は、結露を抑制できる呼吸用マスクを低コストで提供することにある。
【0017】
本発明の更に別の目的は、呼吸用気体の供給が阻害されることを防止できる呼吸用マスクを低コストで提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面によれば、使用者の鼻孔を覆い加圧された呼吸用気体を前記鼻孔に供給する呼吸用マスクの装着具において、長手形状を有するとともに第1の端部が前記呼吸用マスクと連結される1対の連結部材と、前記連結部材の第2の端部に連結されるとともに前記使用者の耳珠内側の窪みに嵌めこまれる1対の固定部材が設けられる。
【0019】
本発明の第2の側面によれば、使用者に呼吸用気体を供給する呼吸用マスクの装着具において、長手形状を有するとともに第1の端部が前記呼吸用マスクと連結される1対の連結部材と、前記連結部材の第2の端部に連結されるとともに前記使用者の耳介の周囲に配置されるフレーム部とが設けられ、前記フレーム部は、前記使用者の耳の付け根に当接して付勢する付勢部を有する。
【0020】
本発明の第3の側面によれば、使用者の鼻孔を覆い加圧された呼吸用気体を前記鼻孔に供給する呼吸用マスクの装着具において、長手形状を有するとともに第1の端部が前記呼吸用マスクと連結され、前記呼吸用マスクを使用者の鼻孔周辺に固定する1対の連結部材と、前記連結部材の長手方向に延在するとともに当該連結部材より大きい剛性を有する支持部材とが設けられ、前記支持部材は前記第1の端部側で第1の幅を有しそれ以外の部分で前記第1の幅より狭い第2の幅を有する。
【0021】
本発明の第4の側面によれば、装着具を有する呼吸用マスクにおいて、前記装着具は、長手形状を有するとともに第1の端部が前記呼吸用マスクと連結され、前記呼吸用マスクを使用者の顔に固定する1対の連結部材と、前記連結部材対に設けられ、前記連結部材対より大きい剛性を有する支持部材対とを有する。そして、前記支持部材対は、前記呼吸用マスクに固定される第1の板状部材と、前記連結部材に固定される第2の板状部材とを有し、前記第1、第2の板状部材は、前記呼吸用マスクの角度調節が行われる際に角度調節の支点となる位置を回動軸として回動可能である。
【0022】
本発明の第5の側面によれば、使用者の鼻孔を覆い呼吸用気体を前記鼻孔に供給する呼吸用マスクにおいて、使用者の顔面に当接して前記鼻孔を覆う第1の部材と、前記第1の部材の少なくとも一部を覆うとともに前記第1の部材より大きい剛性を有する第2の部材とが設けられる。そして、前記第1の部材には、前記呼吸用気体を内部に取り込む第1の吸気ポートと呼気を排出する第1の排気ポートの両方、または前記第1の吸気ポートが設けられ、前記第2の部材には、前記呼吸用気体の搬送手段と接続され、前記第1の吸気ポート部分に嵌め込まれる第2の吸気ポートと前記第1の排気ポート部分が嵌め込まれ外部に連通する第2の排気ポートの両方、または前記第1の排気ポートが設けられる。そして、前記第1の部材と第2の部材の間に空洞が設けられ、あるいは、前記第1の部材が撥水性を備える。
【0023】
本発明の第6の側面によれば、使用者の鼻孔を覆い呼吸用気体を前記鼻孔に供給する呼吸用マスクにおいて、前記使用者の顔面に当接して前記鼻孔を覆う第1の部材と、前記呼吸用気体の搬送手段と所定の位置で接続され、前記第1の部材と連結されるとともに前記第1の部材より大きい剛性を有する第2の部材とが備えられる。そして、前記第1の部材と前記第2の部材との連結部分は、180度回転対称の形状を有する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の第1、第2の側面によれば、呼吸用マスクを使用者の鼻孔周辺部に固定するとともに、装着に伴う不快感を低減させることができる。
【0025】
本発明の第3の側面によれば、使用中に呼吸用マスクがずれることを防止できるとともに、装着に伴う不快感を低減させることができる。
【0026】
本発明の第4の側面によれば、装着の際に使用者の鼻の構造に合わせた調節が可能であり、装着が容易な呼吸用マスクの装着具が提供される。
【0027】
本発明の第5の側面によれば、結露を抑制できる呼吸用マスクが低コストで提供される。
【0028】
本発明の第6の側面によれば、呼吸用気体の供給が阻害されることを防止できる呼吸用マスクが低コストで提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明にかかる呼吸用マスクやその装着具が適用されるCPAPシステ ム全体の構成を説明する図である。
【図2】第1実施形態における装着具の使用状況を説明する図である。
【図3】プラグ12が耳珠内側の窪みに嵌め込まれる状況を説明する図である。
【図4】装着具14の構成を説明する図である。
【図5】固定部材としてのプラグ12の第1実施例について説明する図である。
【図6】挿入部12dの変形例について説明する図である。
【図7】固定部材としてのプラグ12の第2実施例を説明する図である。
【図8】第2実施例の使用状況を説明する図である。
【図9】第2実施例における変形例について説明する図である。
【図10】第2実施例におけるプラグ12と連結部12bとの接続構造について説明する図である。
【図11】固定部材としてのプラグ12の第3実施例について説明する図である。
【図12】プラグ12と耳掛け部13の変形例について説明する図である。
【図13】装着具の第2実施形態について説明する図である。
【図14】装着具14の使用状況について説明する図である。
【図15】付勢部130bの形状の例を説明する図である。
【図16】第2実施形態の変形例を説明する図である。
【図17】支持部材の構成を説明する図である。
【図18】パネル16の変形例を説明する図である。
【図19】支持部材としてのパネル16について説明する図である。
【図20】装着具の第4実施形態の作用を説明する図である。
【図21】板状部材160a、160bの変形例について説明する図である。
【図22】従来のヘッドギア式の装着具に、装着具の第3または第4実施形態におけるパネル16を適用した例を説明する図である。
【図23】装着具14の第1実施形態と第3実施形態とを組み合わせた場合を説明する図である。
【図24】従来の呼吸用マスクの構成を説明する図である。
【図25】フレームの構造を説明する図である。
【図26】フレーム各部の拡大図である。
【図27】クッションの構造を説明する図である。
【図28】クッションの断面を示す図である。
【図29】フレーム20とクッション30を嵌合した状態を示す断面図である。
【図30】吸気ポートと排気ポートを別々に有するフレーム20及びクッション30の構成例を示す図である。
【図31】フレーム20とクッション30の嵌合部の形状例を説明する図である。
【図32】フレーム20及びクッション30が適用される従来の呼吸用マスクの例を説明する図である。
【図33】フレーム20とパネル16の嵌合方法に関する実施例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0031】
図1は、本発明にかかる呼吸用マスクやその装着具が適用されるCPAPシステム全体の構成を説明する図である。このCPAPシステムは、CPAP療法を受ける睡眠無呼吸症候群の患者(使用者)の気道に医師の処方圧に応じて加圧した呼吸用気体を送り込むことで気道を広げ、使用者の呼吸を支援する。
【0032】
CPAPシステムは、医師による処方圧が入力され、処方圧に応じて空気を加圧して呼吸用気体を供給する呼吸用気体供給装置2と、呼吸用気体を搬送するフレキシブルホース4a、4bと、使用者が睡眠時に装着する呼吸用マスク8とを有する。ここではさらに、呼吸用気体を予め設定された湿度に加湿した後に呼吸用マスク8に供給する、加湿器6が示される。
【0033】
呼吸用気体供給装置2は電源が投入されると動作を開始し、加圧された呼吸用気体がフレキシブルホース4aを介してまず加湿器6に送られる。加湿器6により加湿された呼吸用気体は、フレキシブルホース4bを介して呼吸用マスク8に送られる。呼吸用マスク8は、後述する装着具により使用者の鼻孔を覆うように鼻孔周辺部に密着して固定され、呼吸用気体を使用者の鼻孔から気道に送りこむ。
【0034】
呼吸用気体供給装置2は、例えば空気を392〜1961Paの範囲における一定圧に加圧する固定圧式や、装置内に設けられた呼吸用気体の圧力センサや流量センサにより使用者の呼吸状態を監視し、呼吸状態に応じて圧力を調節する変動圧方式といった動作モードで動作する。なお、加湿器6は、鼻孔内部や咽頭部の粘膜の乾燥を防止するために用いられるが、医師の処方や使用者の好みに応じて省略してもよい。
【0035】
以下の説明では、呼吸用マスクの装着具、及び呼吸用マスクそれぞれの実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、それぞれ単独または組み合わせにより、あるいは他の組合せにより実施可能である。
【0036】
[1] 装着具の第1実施形態
図2は、第1実施形態における装着具の使用状況を説明する図である。ここでは、使用者が呼吸用マスク8を装着具14により装着したときの正面図と側面図とが示される。フレキシブルホース4bと連結され鼻孔を覆う呼吸用マスク8の両側部には、装着具14が連結される。装着具14は、長手形状を有し1つの端部が呼吸用マスク8の両側部のいずれかに連結される一対の連結部材であるストラップ10と、ストラップ10の他の端部に連結される一対の固定部材であるプラグ12とを有する。なお、以下の説明では装着時における使用者を基準として、左右、前後、及び上下の各方向を規定する。
【0037】
ここで図3に耳部の名称とともにプラグ12の使用状況を示す。プラグ12は、使用者の耳珠周辺の窪みに点線で示すように嵌めこまれる。ここで、ストラップ10を適切な長さとなるように構成することで、使用者が呼吸用マスク8を装着したときにストラップ10の長手方向に張力(矢印T1)が作用する状態となる。すると、プラグ12がかかる張力に対抗して耳珠の内側にフックされる。このようにして、装着具14は、呼吸用マスク8を使用者の鼻孔周辺部に密着した状態で固定する。
【0038】
上記のように構成される装着具14は、ヘッドギア式の装着具のように使用者の頭部を拘束し圧迫することがない。よって、肉体的な苦痛や、拘束感、圧迫感といった不快感が低減されるという効果を有する。また、ヘッドギア式と比べて装着具と接触する頭部の面積が小さい。よって、装着具との接触箇所が発汗して蒸れることによる不快感を低減できる。また、頭髪が乱れるという不便を回避できる。
【0039】
また、装着具14は、使用者が仰臥したときにヘッドギア式のように枕と接触しない。よって、使用者が寝返りをしたときに枕との摩擦で装着具と頭部の相対的な位置がずれ、その結果呼吸用マスク8の位置がずれるという事態を防止できる。呼吸用マスク8がずれると、使用者の鼻孔周辺部との密着状態が失われ、呼吸用マスク8と使用者の顔面との間に生じる隙間から呼吸用気体が漏れるため、使用者の気道に所期の量の呼吸気体が送り込まれず治療効果が薄れるだけでなく、使用者の顔に呼吸用気体がかかり不要かつ有害な覚醒を招くといった問題が生じるが、本実施形態によればかかる問題を回避できる。
【0040】
また、耳の周囲にループ状のゴム紐などの弾性部材で係止する、風邪マスク式の装着具と比べた場合に、本実施形態における装着具14は使用者に与える苦痛を軽減できる。これは、耳の周囲は痛みを感じ易い敏感な部位であり、風邪マスク式の装着具はかかる部位に食い込むことで使用者に苦痛を与えるが、耳珠内側は耳の周囲に比べ堅固な構造で痛みを感じ難い箇所であることによる。よって、本実施形態における装着具14は使用者の苦痛を軽減できる。
【0041】
さらに、本実施形態によれば、装着具を装着する際、ヘッドギア式のように後頭部に掛けるという動作を必要としない。よって、肩の稼働域に障害を有する使用者であっても、容易に呼吸用マスク8を装着することができる。
【0042】
図4は、装着具14の構成を説明する図である。図4(A)は右側の装着具14を例に、その全体の構成を示す。ストラップ10は、一例として非伸縮性の布で形成される。上述したように、ストラップ10の一方の端部は呼吸用マスク8の側部に連結され、他方の端部はプラグ12に連結される。ここで、ストラップ10を呼吸用マスク8の側部と連結する方法として、縫合や樹脂接着などで固定することが可能である。また、好ましい態様としては、図4(A)に示すように、ストラップ10の端部と呼吸用マスク8の側部とに互いに嵌合可能なバックルやフックといった嵌合部10aを設け、互いに着脱可能に構成する。そうすることで、ストラップ10と呼吸用マスク8とを分解して洗浄することができ、衛生的に保つことができる。
【0043】
一方、ストラップ10をプラグ12に連結する方法として、縫合や樹脂接着などで固定することが可能である。また、好ましい態様としては、図4(A)に示すように、ストラップ10の先端にベルクロ(登録商標)やマジックテープ(登録商標)といった公知の面ファスナ10bを設ける。そして、その先端をプラグ12に設けられるバックル12aの孔を通して折り返し、ストラップ10の表面に面ファスナ10bで係止する。そうすることで、ストラップ10全体としての長さ調節が可能になる。なお、面ファスナ10b以外にも種々の係止手段が可能である。例えば、ストラップ10の先端部とこれに対向するストラップ10の中央部とのいずれか一方に等間隔の調節孔を設け、他方に調節孔に係合する爪やボタンを設けてもよい。あるいは、ストラップ10表面の材質に係止可能な歯をバックル12a側に設けてもよい。
【0044】
さらに好ましい態様では、ストラップ10の一部、例えばバックル12aを通して折り返される部分10cを、伸縮性を有する布ゴムなどの別部材で形成する。そうすることで、ストラップ10全体における過度の伸縮性を防止しつつ、長さ調節の自由度を高めることができる。
【0045】
このようにしてストラップ10の長さを使用者の顔のサイズに適した長さに調節することができる。そして、図2、図3で説明したように、ストラップ10の長手方向における張力T1に対向してプラグ12が耳珠にフックすることで、呼吸用マスク8を使用者の鼻孔周辺部に密着させて固定することが可能となる。
【0046】
次に、プラグ12について説明する。耳珠内側の窪みに嵌め込まれるプラグ12は、耳珠の外部に露出する連結部12bによりバックル12aと連結される。好ましくは、プラグ12、連結部12bは、概ねストラップ10の中心線C(一点鎖線で表示)上に配置される。これにより、プラグ12の耳珠内側に対するフック力が分散されることなく、ストラップ10の長手方向に作用する張力に対抗できる。よって、プラグ12の脱落を防止できる。
【0047】
プラグの一点鎖線Cにおける断面を図4(B)に示す。耳珠内側の窪みに嵌め込まれるプラグ12は略半球状の形状を有する。さらに、プラグ12の底面と側面とを画するエッジE1に丸みを持たせることは、装着したときの接触を和らげ使用者の苦痛を軽減するうえで好ましい。
【0048】
また、プラグ12の直径R1を連結部12bとの接続部分の直径R2より大きくすることで、プラグ12が耳珠内側の窪みに嵌め込まれたときに耳珠内側の窪みにおける接触面積を大きくでき、フック力を増大させることができる。また、プラグ12の高さH1は、耳珠内側の窪みに収まるような高さが好ましい。そして連結部12bの耳珠から露出する部分の高さ、つまり直径R3を小さくすることが好ましい。使用者が横臥し連結部12bが枕と接触して耳珠付近を圧迫する場合に、直径R3を小さくすることで圧迫感を軽減できる。好ましい寸法の例としては、プラグ12の直径R1は13〜17mm、高さH1は5〜10mm、連結部12bの直径R3は8mm以下であるが、本実施形態はこの数値範囲に限定されるものではない。
【0049】
プラグ12は、その全体を単一の材質の一体成型により形成してもよいし、複数の材質の組み合わせにより形成してもよい。単一の材質で形成する場合、適度な弾力性、耐久性、生体適合性を有する材質が好適に用いられる。かかる材質の例として、シリコーンゴム、天然ゴム、ポリスチレンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリウレタンエラストマー、ウレタン等の低反発部材があげられる。一方、複数の材質で形成する場合、図4(C)の断面図に示すように、例えば連結部12bとプラグ12のハッチングで示す内部をナイロンなどの材質M1で形成し、外部をウレタンなどの低反発部材やシリコーンゴムなどの材質M2で被覆する。そうすることで、耳珠内側に嵌め込んだときの摩擦力を大きくでき、プラグ12の脱落を防止できる。それとともに、接触を和らげ使用者の苦痛を軽減できる。
【0050】
プラグ12の別の好ましい態様について、図3を再び参照しながら図4(A)を用いて説明する。プラグ12には、耳珠の内側の窪みに嵌め込んだときに外耳道に通じる箇所に通音孔12cとしての切欠部が設けられる。これにより、外部環境の音や目覚まし時計のアラーム音が通過する経路を確保できる。よって、使用者が装着具14を装着して睡眠中であっても非常時における外部環境の音や目覚まし時計のアラーム音を聞くことができるので、安全性が確保でき、かつ利便性が向上する。なお、音の経路を確保するためには、切欠部の代わりにプラグ12に貫通孔を設けてもよい。
【0051】
なお、装着具14の衛生確保のためには、これを分解して洗浄することが好ましいが、使用者は自ら装着具14を再度組み立てる必要がある。よって、正確かつ効率的な組み立て作業を支援するために、プラグ12にその左右を判別する判別手段が設けられる。例えば、プラグ12を拡大して図4(D)に示すと、プラグ12(ここではプラグ12に設けられる連結部12b)に突起12pを形成することで、突起の有無やその数により左右を判別することが可能になる。また、判別手段として突起以外に文字や記号、図柄を設けてもよい。
【0052】
[固定部材の第1実施例]
図5は、固定部材としてのプラグ12の第1実施例について説明する図である。図5(A)〜(D)は、プラグ12の側面方向からの外観を示す図である。図5(A)に示す例では、プラグ12は外耳道の入口付近に挿入される挿入部12dをさらに有する。挿入部12dは、すくなくともその一部が外耳道の直径と同等かそれよりもやや大きい直径を有する、略円柱形状もしくは略円錐台形状(一点鎖線で図示)に形成される。かかる挿入部12dを設けることで、プラグ12が耳珠内側の窪みに嵌合することに加え、挿入部12dの外壁と外耳道との摩擦力によりプラグ12の脱落がより高い確度で防止される。特に、連結部12bを矢印T2が示す方向に回動させるような外力が連結部12bに作用した場合に、かかる外力に連動してプラグ12は矢印T3が示す方向に回動しようとする。このとき挿入部12dを有することでその摩擦力及び抗力によってかかる回動に対抗でき、挿入部12dを設けない場合より高い確度でプラグ12の脱落を防止できる。
【0053】
また、この場合において、図5(B)に示すように、切欠部または貫通孔をプラグ12と挿入部12dの全体に設けることで、通音孔12cを確保できる。よって、睡眠時における使用者の安全性が確保され、かつ利便性が向上する。
【0054】
また、外耳道は一般的に使用者の顔の前方かつ上方に緩やかに屈曲した形状を有することを考慮し、好ましくは挿入部12dを外耳道の形状に沿って変形可能にすることで、外耳道に対する摩擦力を維持しながら使用者に違和感や圧迫感を与えることを防止できる。例えば、プラグ12をシリコーンゴムで形成した場合に、挿入部12dはこれより剛性の低い材質、例えばウレタンなどの低反発材で形成することが可能である。あるいは、プラグ12と挿入部12dをシリコーンゴムなどの同一の材質で一体成型した場合には、図5(C)に示すように、挿入部12dに直径2mm程度の空洞12eを設けることで剛性を低下させ、変形可能にしてもよい。なお、この場合、空洞が通音孔12cを兼ねる構成とすることは、形状を単純化し成型を容易にする上で好適な態様である。
【0055】
あるいは、図5(D)に示すように、プラグ12の中心CLに対し挿入部12dの中心がある程度の角度を有するように挿入部12dを設けてもよい。具体的には、一般に外耳道は使用者の顔の前方かつ上方に緩やかに屈曲しているので、挿入部12dは、装着時に使用者の顔の前方かつ上方に向けて外耳道に沿って挿入されるような角度に設けられる。
【0056】
そうすることで、挿入部12dを外耳道に沿って変形させることでプラグ12に応力が作用し、耳珠に対するプラグ12の位置が微妙にずれるといったこと防止できる。すなわち、プラグ12と耳珠との位置関係を好適に保ちつつ挿入部12dと外耳道との摩擦力が得られるので、より確実に脱落が防止される。それとともに、使用者に圧迫感を与えることを防止できる。
【0057】
図6は、挿入部12dの変形例を示す図である。挿入部12dは挿入方向に延在する軸と、挿入方向と略垂直方向に突出した複数の部位とを有する構成とすることが可能である。
【0058】
例えば、図6(A)に示すように、軸120dの周囲に刀の鍔のような形状の摩擦板121dを複数設けることが可能である。あるいは、図6(B)に示すように、軸120dの周囲にネジの溝を形成するように摩擦板121dを螺旋状に設けてもよい。図6(A)、(B)の場合における摩擦板121dの平面形状は、例えば図6(C)に示す円形、図6(D)に示すクローバ型、図6(E)に示すハート型など、種々の任意の形状が可能である。あるいは、摩擦板121dごとに形状を変えてもよい。そして、例えば図6(C)の円形形状の場合には切欠部や貫通孔を設けることで、通音孔12cが確保される。また、図6(D)のクローバ型や図6(E)のハート型などの場合には、切欠部や貫通孔を特段設けなくても通音孔12cとしての隙間が確保できる。図6(A)〜(E)において、好ましくは、摩擦板121dはシリコーンゴムなどの弾性を有する材質で構成される。このように構成することで、外耳道の直径に個人差があっても、挿入部12dを外耳道に挿入したときに摩擦板121dがたわんで外耳道に密着することができる。よって、外耳道に対する摩擦力が高まり、確実にプラグ12と挿入部12dの脱落を防止できる。それとともに、外耳道への接触を和らげることができ、使用者に圧迫感を与えることを防止できる。
【0059】
さらに、上記の図6(A)〜(E)に示した構成に図5(C)で示した構成を適用し、軸120dに空洞を設けることで挿入部12d全体を変形可能にしてもよい。あるいは、プラグ12の中心に対し軸120dが外耳道に沿うような角度を有するように設けてもよい。そうすることで、外耳道に対する摩擦力を維持しながら使用者に違和感や圧迫感を与えることを防止できる。このような構成とすることで、外耳道に対する摩擦力を維持しつつ外耳道に対する接触を軽減できる。よって、プラグ12の脱落を防止するとともに、使用者の違和感や圧迫感を軽減できる。
【0060】
また、プラグ12の中心と軸120dの中心をずらした構成とすることも可能である。図6(F)は、かかる構成におけるプラグ12の中心と軸120dの断面図を示す。図示するように、プラグ12の中心CLと軸120dの中心とをずらすことにより、プラグ12の耳珠に対する位置関係と軸120dを含む挿入部12dの外耳道に対する位置関係とを好適に保つことができる。
【0061】
さらにこの場合において、軸120dを例えばシリコーンゴムなどの弾性を有する材質で構成するとともに内部に空洞121hを設けることで、外耳道に沿って軸120dが変形可能とすることができる。なお、このとき軸120dに設けられる空洞121hは密閉した空間とすることで、軸120dを変形容易に構成するとともに汚れが入ることを防止できる。あるいは、図6(G)に示すように、プラグ12の中心CLに対し軸120dが外耳道に沿うように角度を有してもよい。
【0062】
このような構成とすることで、プラグ12及び挿入部12dの脱落を防止することができる。
【0063】
また、図6(F)、(G)では、摩擦板121dの直径は、先端部ほど小さくなるように構成される。一般に外耳道は先細りの形状であるので、このような構成とすることで挿入部12dの外耳道に対する摩擦力を維持しつつ外耳道に対する接触を軽減できる。よって、脱落を防止するとともに、使用者の違和感や圧迫感を軽減できる。
【0064】
[固定部材の第2実施例]
図7は、固定部材としてのプラグ12の第2実施例を説明する図である。図7(A)には、右側のプラグ12を例としてその平面図が示され、図7(B)には同側面図が示される。ここでは、理解を容易にするために、連結部12bの図示は省略される。また、図8は、第2実施例の使用状況を説明する図である。図8には、右側の耳を例として、耳の各部名称と、プラグ12が嵌め込まれた状態が点線で示される。
【0065】
まず、図7(A)、図8では、紙面の右方が前方、つまり使用者の顔面側に、紙面の左方が後方、つまり使用者の後頭部側に対応し、紙面に対する垂直方向が使用者の左右方向に対応する。第2実施例におけるプラグ12は、前後方向を長手方向とする板状片により構成され、装着したときに耳珠内側の窪みから対耳珠内側の窪みまで達する長手方向の長さLを有する。ここで、プラグ12は、たとえば前後及び/または上下に非対称な略楕円形状、好ましくは外径R´の大径部と外径r´の小径部とが前後方向に連結した空豆状の形状を有する。
【0066】
プラグ12は、耳珠の内側の窪みに係止される係止部124aに加え、長手方向において係止部124aとほぼ対向する位置に、対耳珠の内側の窪みに係止される係止部124bを有する。係止部124aは、耳珠内側の窪みの形状に沿うような上下方向及び/または左右方向に湾曲した面を有する。同様に、係止部124bは、対耳珠内側の窪みの形状に沿うような上下方向及び/または左右方向に湾曲した面を有する。更に好ましくは、プラグ12は、珠間切痕内側の窪みに係止される係止部124cを有する。係止部124cは、珠間切痕の内側の窪みの形状に沿うような上下方向及び/または左右方向に湾曲面を有する。
【0067】
図7(B)は、図7(A)における矢印Pからの側面図に対応する。図7(B)では、紙面の上方が使用者の右方向に対応し、紙面の下方が使用者の左方向、つまり頭部側に対応する。好ましい態様の一つでは、プラグ12はその側面形状において、係止部124aが外耳道の入口に向かって屈曲し、係止部124bが係止部124aと反対方向に屈曲する。つまり、プラグ12は全体として緩やかなS字形を形成する。
【0068】
上記のようなプラグ12において、長手方向における長さLの好適な寸法はたとえば13〜30mmである。また、大径部における外径R´の好適な寸法は、たとえば13〜20mmである。一方、小径部における外径r´の好適な寸法は、たとえば7〜15mmである。さらにプラグ12の厚さH´の好適な寸法は、たとえば2〜10mmである。ただし、ここに示すプラグ12の形状・寸法は一例であって、大径部、小径部が正確な円弧状であるような形状に限定されるものではない。プラグ12は、たとえば、平面や自由曲面により形成される任意の形状であってもよい。また、係止部124a、b、またはcの形状も、それぞれが耳珠、対耳珠、または珠間切痕に係止可能であれば、任意の形状とすることが可能である。
【0069】
第2実施例では、耳珠内側の窪みに係止部124aが係止されることに加え、対耳珠内側の窪みに係止部124bが係止される。よって、耳珠が小さい使用者でもプラグ12が外れ難くなる。特に、図7(B)において矢印D´で示すように、プラグ12全体を前方へ旋回させるような力が作用する場合であっても、係止部124bが対耳珠内側の窪みに係止されることで、プラグ12が外れることが防止される。この点、上記第1実施例は挿入部12dが外耳道内で係止されることでプラグ12が外れることを防止したが、第2実施例は挿入部12dを有さずに同じ効果を奏する。よって、外耳道に痛みや異物感を感じ易い使用者でも、長時間の装着に耐え得る。ただし、第2実施例における係止部124aと、上記第1実施例における挿入部12dとを併せ備えた構成とすることももちろん可能である。そうすることで、係止部124bが対耳珠内側の窪みに係止されるとともに挿入部12dが外耳道内で係止されるので、フックを更に強化することができ、より確実にプラグ12が外れることを防止できる。さらに、プラグ12は、係止部124cが珠間切痕内側の窪みに係止されることで、フック力が強化される。
【0070】
上記において、係止部124a、b、及びcが耳珠、対耳珠、及び珠間切痕それぞれの内側の窪みの形状に沿うような湾曲面を有することは、接触面積を増大させフック力を強化するうえで有利に作用する。また、係止部124aが外耳道の入口に向かって屈曲し、係止部124bが係止部124aと反対方向、つまり対耳珠内側の窪みに密着するように屈曲することによっても、耳珠内側の窪みと対耳珠内側の窪みに対する接触面積が更に増大し、フック力が強化される。
【0071】
また、第1実施例同様、プラグ12に外耳道に通じる通音用の切欠き(または孔)124dを設けることが可能である。これにより、使用者は外部環境の音を聞くことができる。よって、使用者の安全性と利便性が向上する。また、好ましい態様の一つでは、プラグ12が長手方向に伸縮性を有する。そうすることで、耳珠と対耳珠との距離に個人差がある場合であっても、同一サイズのプラグ12が装着可能となる。伸縮性を得るために、プラグ12は、たとえばシリコーンゴム、天然ゴム、ポリスチレンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリウレタンエラストマー、ウレタン等の弾性部材により一体成型され、プラグ12より大きい剛性を有する連結部12bと連結される。弾性部材がクッションとして機能することにより、使用者の苦痛を低減させるという効果も得られる。また、プラグ12が側面形状において全体としてS字形を形成するので、プラグ12が長手方向において撓み易くなり、伸縮性を備えることができる。
【0072】
図9は、第2実施例における変形例について説明する図である。図9(A)〜(D)には、プラグ12を全体として長手方向に撓みやすくして伸縮性を得る例が示される。
【0073】
図9(A)は、プラグ12の小径部に孔125aを設けた例である。図9(B)は、プラグ12の小径部に長手方向に沿って長手形状のスリット125bを設けた例である。図9(C)は、プラグ12の小径部に空洞(中空もしくは窪み)125cを設けた例である。図9(D)は、プラグ12の小径部に切欠き125dを設けた例である。
【0074】
図9(A)〜(D)では、孔125aやスリット125b、空洞125c、または切欠き125dが設けられた小径部の剛性が相対的に低下するので、その箇所でプラグ12が撓みやすくなる。よって、プラグ12は全体として撓むことで、長手方向における伸縮性を備えることができる。なお、ここで、プラグ12に設けた孔125aやスリット125b、または切欠き125dが通音孔を兼ねてもよい。
【0075】
図10は、第2実施例におけるプラグ12と連結部12bとの接続構造について説明する図である。図10(A)には、右側のプラグ12を例として、その平面図が連結部12bの一部とともに示される。図10(B)には、図10(B)におけるNN´での断面図が示される。図10(A)、(B)では、紙面の右方が前方に、紙面の左方が後方に対応する。
【0076】
ここでは、プラグ12が、内部構造12iと外部構造12oとに分割され、内部構造12iと外部構造12oは、それぞれ異なる部材で構成される。すなわち、内部構造12iは連結部12bと一体成型され、これらはナイロンなど、ある程度の剛性を有する部材で形成される。一方、プラグ12の外部構造12oは、シリコーンゴムやウレタン等の弾性部材で形成される。そうすることで、プラグ12全体としてある程度の強度を確保できるとともに、耳珠や対耳珠内側に嵌め込んだときの摩擦力を大きくでき、プラグ12の脱落を防止できる。それとともに、接触を和らげ使用者の苦痛を低減させることができる。
【0077】
ここで、プラグ12の長手方向における内部構造12iの長さL´を短くすることで、プラグ12の長手方向における外部構造12oの長さL1、L2を長くできる。そうすることで、プラグ12の長手方向における伸縮性を確保できる。
【0078】
ここで、プラグ12の長手方向における内部構造12iの長さL´の好適な寸法は、たとえば3〜15mmである。また、プラグ12の長手方向における外部構造12oの内部構造12iから前方の長さL1の好適な寸法は、たとえば0.5〜26mmである。一方、内部構造12iから後方への長さL2の好適な寸法は、たとえば0.5〜26mmである。なお、ここに示す形状・寸法は例であって、上記要件を満たす種々の形状・寸法が可能である。たとえば、係止部124a、b、及び前後方向の長さLを有していれば、上下の寸法が耳輪脚に達するような大きさであってもよい。
【0079】
さらに、第2実施例では、矢印D1が示すように、プラグ12が連結部12bとの接続部分を中心として前後方向に変形することで、前後方向の傾動動作を模擬できる。使用者の耳の角度には個人差があり、耳が比較的前方を向いた使用者もいれば、耳が比較的左右の側面方向を向いた使用者もいる。しかし、プラグ12が前後方向に傾動することで、かかる個人差に対応でき、使用者の耳の角度に依存することなく、プラグ12が予定された位置に係止される。
【0080】
好適な態様の1つでは、プラグ12の外部構造12oと内部構造12iとを互いに嵌合させることで着脱可能に構成する。そうすることで、プラグ12を分解して洗浄し、清潔を保つことができる。この場合、プラグ12の外部構造12oと内部構造12iの組合せは、左右で異なる嵌合形状を有するように構成する。たとえば、図10(C)に示すプラグ12の外部構造12oのように、嵌合部124kは上に開いたC字形状であって、前後に非対称な形状を有する。そうすることで、プラグ12と左右反対の連結部12bを嵌合させようとすると嵌合できないので、組立てミスを容易に知ることができ、正確な組立てを支援することができる。また、プラグ12の外部構造12oにおいて、嵌合部124kのC字形状に沿って通音用の切欠き(もしくは孔)124dを設けることも可能である。なお、ここに示す例に限らず、嵌合部の形状は種々可能である。左右が全く異なる形状であってももちろんよい。
【0081】
[固定部材の第3実施例]
図11は、固定部材としてのプラグ12の第3実施例について説明する図である。第3実施例は、プラグ12の脱落をより高い確度で防止するうえでさらに好ましい実施例である。第3実施例は単独で、または上述した第1、第2実施例のいずれかと同時に実施可能である。
【0082】
図11(A)に示す構成では、装着具14は、耳の周囲に係合可能な係合部材として、フック形状の耳掛け部13をさらに有する。耳掛け部13は、ストラップ10におけるプラグ12が連結される端部に連結される。好ましくは、図11(A)に示すように、耳掛け部13はプラグ12の連結部12bに連結される。そうすることで、プラグ12と耳掛け部13は例えばシリコーンゴムなどの同一の材質で一体成型により形成することができる。あるいは、プラグ12と耳掛け部13は別の材質で形成してもよいが、その場合、耳掛け部13はフック形状を維持しつつ耳周囲に掛け易いように、ある程度の弾力性と剛性とを有する材質で形成することが好ましい。かかる材質の例として、ナイロン、酢酸セルロース、セルロイド等の樹脂、あるいは、チタン、ステンレス、アルミニウム、ジュラルミン等の金属があげられる。
【0083】
このように耳掛け部13を設けることで、プラグ12の脱落をより高い確度で防止できる。あるいは、プラグ12が脱落した場合であっても、耳掛け部13により装着具14全体の脱落を防止できる。
【0084】
また、耳掛け部13の点線ABにおける断面形状を、図11(B)に示すように耳の周囲に接触する側が曲線を形成するような紡錘形状や円形にすることは、耳掛け部13が耳の周囲に食い込むことを防止するうえで好ましい態様である。そうすることで、使用者の苦痛を軽減できる。特に、紡錘形状とした場合には、使用者が横臥したときに枕などで耳を圧迫しても、図11(B)における断面形状の上部A付近の厚みが薄いので、圧迫感を軽減できる。
【0085】
また、耳掛け部13の断面の直径は一定でなくてもよい。例えば、耳の周囲に係合する際に最もフック力を発揮する中央部付近13bでは直径を大きくし、先端部13aでは直径を小さくしてもよい。そうすることで、中央部付近13bではねじれを防止してフック形状を維持し、耳周囲に掛け易いようにするとともに、耳の周囲に対する食い込みを防止できる。一方、先端部13aでは耳の周囲の形状に沿ってある程度変形可能とすることができ、耳の周囲に対する圧迫感を軽減することができる。
【0086】
また、図11(C)に示すように、プラグ12に対し矢印T4が示す方向に耳掛け部13が回動可能に構成することも可能である。例えば、プラグ12と耳掛け部13とを別部品により回動可能に組み合わせてもよいし、ある程度の弾力性を有するシリコーンゴムなどの単一材質で一体成型し、ねじることで回動可能な構成としてもよい。そうすることで、耳掛け部13を耳の周囲に係合させた後、プラグ12を回動させながら耳珠内側の窪みに嵌め込む、あるいは、プラグ12を耳珠内側の窪みに嵌め込んだ後、耳掛け部13を回動させながら耳の周囲に係合させるという動作手順により装着具14を装着できる。よって、プラグ12と耳掛け部13が回動しない場合より容易に装着具14を装着することが可能となる。なお、図11(A)〜(C)で示した耳掛け部13は、耳の周囲に対する食い込みを軽減するうえで、例えば直径3〜10mmとすることが好ましいが、本実施形態はこの数値範囲により限定されるものではない。
【0087】
さらに、図11(D)に示すように、耳掛け部13は環状であってもよい。この場合、伸縮性を有する材質で耳掛け部13を形成することで、耳の周囲に係合可能に構成される。これはいわゆる風邪マスク式の形状であるが、かかる耳掛け部13であっても、これを単独で用いた場合と比べると、本実施形態におけるプラグ12の補助的手段として用いることで使用者の苦痛を軽減できる。よって、かかる耳掛け部13を用いることで、プラグ12の脱落をより高い確度で防止できる。
【0088】
図12は、プラグ12と耳掛け部13の変形例について説明する図である。この変形例では、図12(A)に示すように、プラグ12と耳掛け部13は着脱可能な別部材で形成される。例えば、プラグ12は、適度な弾力性、耐久性、生体適合性を有する硬度40程度のシリコーン材質で形成される。一方、耳掛け部13はある程度の弾力性と剛性とを有するナイロン材質で、連結部12b、バックル12aと一体成型により形成される。そして、プラグ12に設けられた孔部122bに、耳掛け部13側の嵌合部122aが嵌め込まれて互いに装着される。
【0089】
なおここでは、プラグ12は、図6(F)または(G)で示した変形例における形状の外観が示される。この場合、図6(F)または(G)で示した空洞121hは孔部122bと連通していてもよいし、連通していなくてもよいが、連通した構成とすることで、成型を容易にすることができる。
【0090】
このように、プラグ12と耳掛け部13を着脱可能に構成することで、分解して洗浄したり、摩耗した部品ごとに交換したりすることが可能となる。よって、使用者にとっての利便性が向上する。
【0091】
また、この変形例では、耳掛け部13の先端部13aは、その拡大図が図12(B)に示されるように、直径が断続的に変化する、いわば円盤が串刺しにされた形状に形成される。そうすることで、耳掛け部13全体を同一材質で一体成型したときに、先端部13aの剛性を相対的に低下させることができる。そうすることで、中央部付近13bではねじれを防止してフック形状を維持し、耳周囲に掛け易いようにするとともに、耳の周囲に対する食い込みを防止できる。一方、先端部13aでは耳の周囲の形状に沿ってある程度変形可能とすることができ、耳の周囲に対する圧迫感を軽減することができる。
【0092】
さらに、図12(A)における横方向をX軸、縦方向をY軸、紙面と垂直方向をZ軸として、Y−Z軸における外観を図12(C)に示すと、中央部付近13bから連結部12bにかけての部分と先端部13aがY−Z軸方向に異なる角度を有するように、耳掛け部13を全体としてねじれた立体的形状に成型することが可能である。そうすることで、使用者が装着したときに、耳周囲の曲面形状に沿って耳掛け部13の形状が適合し易くなる。よって、耳掛け部13が耳周囲により確実に固定されるとともに、使用者に対する接触を和らげ苦痛を防止することができる。
【0093】
[2]装着具の第2実施形態
図13は、装着具14の第2実施形態について説明する図である。この装着具14は、ストラップ10の呼吸用マスク8に連結される端部と反対側の端部に設けられ、使用者の耳の位置で固定される。図13は、例として右耳用の装着具14を示し、紙面の右方が前方、紙面の左方が後方に対応する。
【0094】
図示するように、この装着具14は、上下が反転したU字形状に屈曲したフレーム部130aを有する。フレーム部130aは、その一端側にストラップ10と連結するためのバックル12aを有し、他端側に付勢部130bを有する。付勢部130bはフレーム部130aの内側に設けられる。フレーム部130aと付勢部130bとは全体としてヘアピンカーブを描くような形状で一体成型され、カーブ部分130cで互いに結合する。フレーム部130aと付勢部130bとは、たとえば、上記の耳かけ部13同様、ある程度の弾力性と剛性とを有する、ナイロン、酢酸セルロース、セルロイド等の樹脂、あるいは、チタン、ステンレス、アルミニウム、ジュラルミン等の金属で形成される。
【0095】
付勢部130bは、フレーム部130aの上下の長さの1/2〜3/4程度の長さを有するとともに耳の付け根の形状に概ね沿って緩やかに屈曲し、その先端はフレーム部130aから離間する。フレーム部130aと付勢部130bとは、それぞれの断面が略円形に構成される。カーブ部分130cは、その直径がフレーム部130aまたは付勢部130bの他の部分より小さく構成されて相対的に低い剛性を有する。かかる構成により、付勢部130bは、カーブ部分130cを中心として、矢印D2が示すように前後方向に傾動する。
【0096】
なお、ここでは、第1実施形態におけるプラグ12と同時に第2実施形態が実施される場合が図示されているが、第2実施形態は単独で実施可能である。また、第2実施形態を実施する際の呼吸用マスクは、鼻孔部周辺のみを覆う呼吸用マスクでもよいし、鼻孔部と口とを覆う呼吸用マスクでもよい。
【0097】
図14は、図13に示した装着具14の使用状況について説明する図である。図14では、理解を容易にするため、プラグ12の図示を省略してある。図14には、例として右の耳が示され、紙面の右方が前方、紙面の左方が後方に対応する。フレーム部130aは、耳介の周囲を迂回してこれを取り囲むように配置される。そして、付勢部130bはフレーム部130aの内側において耳の背後から耳の付け根に当接し、前方に付勢する。なお、装着具14がより確実に固定されるためには、フレーム部130a及び付勢部130bが、使用者の側頭部における耳の付け根の形状に沿うように、使用者にとって左右方向、つまり本図においては紙面と垂直方向に屈曲した形状であってもよい。
【0098】
第2実施形態によれば、フレーム部130aが耳介の周囲を迂回して取り囲むので、バックル12aに連結されたストラップ10の張力による負荷が耳の付け根に局所的にかかることを防止できる。よって、風邪マスク式の装着具においてそうであるように、ゴム紐などによる負荷が耳の付け根に局所的にかかることで痛みが生じることを防止できる。特に、耳の付け根の上端部にゴム紐が食い込んで痛みが生じることを防止できる。また、使用者が横臥したときであっても、フレーム部130aが耳と頭部との間に挟まれた状態で耳が圧迫され、耳の裏側や頭部にフレーム部130aが食い込んで痛みが生じるということを防止できる。
【0099】
そして、付勢部130bが耳の付け根全体にわたって付勢することで、確実に呼吸用マスクを固定することができる。また、耳の形や大きさに個人差がある場合でも付勢部130bと耳の付け根との隙間が生じにくく、フック力が強化される。よって、装着具がずれることでその部分が擦れて痛みが増すことを防止でき、呼吸用マスクの装着に伴う痛みや不快感を軽減できる。
【0100】
図15は、付勢部130bの形状の例を説明する図である。図15(A)は、付勢部130bの先端がフレーム部130aに接続されたループ形状を有する例である。好ましくは、付勢部130bの径がフレーム部130aの径より小さく構成される。これにより、付勢部130bにより形成されたループが撓むことで付勢を行う。図15(B)は、付勢部130bがその先端でフレーム部130aに接続されるとともに蛇腹形状を有し、蛇腹形状が伸縮することにより付勢を行う例である。図15(C)は、付勢部130bが、フレーム部130aの先端ではなく中心部でフレーム部130aと一体化する一方で先端がフレーム部130aから離間し、全体として枝分かれした形状となる例である。好ましくは、付勢部130bの径がフレーム部130aの径より小さく構成される。これにより、付勢部130bが矢印D3の方向に傾動しやすくなり、傾動することで付勢を行う。なお、フレーム部130aに対しスポンジなどの低反発素材やアルファゲル、金属製のばねなどの別部材を付勢部130bとして設ける場合も、第2実施形態に含まれる。
【0101】
図16は、第2実施形態の変形例を説明する図である。図16(A)は、バックル12aが複数のストラップ通し孔12sを有する装着具14の例である。これにより、ストラップ10の長さが段階に調節可能となり、装着時の自由度が向上する。図16(B)は、ストラップ通し孔12sの角度を変え、扇状に配置した例である。これにより、フレーム部130aに対するストラップ10の角度が変更可能になる。よって、使用者の鼻孔部と耳の位置関係における個人差に対応できる。
【0102】
図16(C)は、耳輪脚(図8参照)に係止可能な係止部130dをフレーム部130aに備えた装着具14の例である。これにより、フック力が強化される。また、図16(D)は、フレーム部130aが描くU字形状の内側にリブ130eを設けた装着具14の例である。点線FF´における断面形状が下段に示される。これにより、フレーム部130aの径を小さくして小型化・軽量化する一方で、フレーム部130bの強度を確保することができる。あるいは、リブ130eを設けるかわりに、フレーム部130aの断面が、内側(F)がすぼまった紡錘形状の断面となるように構成してもよい。ここで、リブ130eもしくは紡錘形状とした場合のエッジは、耳の付け根の上部に触れないようにこれを迂回する寸法・形状とすることで、リブ130eと耳の付け根の上部がすれて痛みが生じることを防止できる。
【0103】
なお、第2の実施形態を第1の実施形態におけるプラグ12とともに実行する場合、付勢部130bにより付勢することで、耳珠や対耳珠にかかる力を分散できる。よって、呼吸用マスクの装着にともなう使用者の苦痛や不快感を軽減することができる。
【0104】
[3]装着具の第3実施形態
第3実施形態では、装着具14は、その長手方向に沿って設けられる支持部材を有する。
【0105】
図17は、支持部材の構成を説明する図である。図17(A)は、第1実施形態における右側のストラップ10を例に、ストラップ10に設けられる支持部材を示す。ただし、第3実施形態は単独で、あるいは第1、第2実施形態、あるいは他の装着具のいずれか一つ以上と同時に実施することが可能である。また、第3実施形態を実施する際の呼吸用マスクは、鼻孔部周辺のみを覆う呼吸用マスクでもよいし、鼻孔部と口とを覆う呼吸用マスクでもよい。
【0106】
図17(A)に示すように、ストラップ10には、その長手方向に延在するとともにストラップ10より大きい剛性を有し、かつ幅方向に一定の長さを有する支持部材として、パネル16が設けられる。パネル16は、剛性に加え好ましくは耐久性を有する材質、例えばナイロン、ポリアセタール、ポリプロピレンなどで形成される。そして、ストラップ10とパネル16とは、少なくともパネル16の周縁部で縫合や樹脂接着などの方法により固定される。そして、パネル16の端部には、呼吸用マスク8の側部に対し嵌合可能な嵌合部16aが設けられる。これにより、ストラップ10はパネル16により呼吸用マスク8と連結される。
【0107】
パネル16はストラップ10の長手方向と幅方向とに一定の長さを有するとともにある程度の剛性を有するので、次のような効果を奏する。第一に、加圧された呼吸用気体が呼吸用マスク8内に供給されストラップ10の長手方向に張力が作用したときであっても、長手方向における応力によりストラップ10の伸びを防止し、使用者の鼻孔周辺部に呼吸用マスク8を密着させることができる。第二に、呼吸用マスク8をストラップ10の幅方向にねじるような外力(矢印T5で表示)が作用した場合であっても、幅方向における応力によりストラップ10のねじれを防止し、呼吸用マスク8のずれを防止できる。
【0108】
ここで、さらに好ましくは、パネル16は、呼吸用マスク8の側部と連結する端部付近で幅方向における長さと長手方向における長さとを有する平面部16bを有する。例えば、長手方向3〜15cm、幅2〜5cmのパネル16に対し、平面部16bは、長手方向に1cm以上、幅方向に2cm以上の平面領域を有するように形成される。そうすることで、幅方向におけるねじれに対する応力を大きくすることができ、ねじれをより高い確度で防止できる。ただし、平面部16bのサイズは上記数値範囲に限定されるものではない。
【0109】
また、さらに好ましい態様では、パネル16は、長手方向における一部で、呼吸用マスク8に連結される端部の幅より狭い幅を有する。具体的には、図17(A)に示すように、呼吸用マスク8に連結される端部の幅W1に対し、長手方向の中央部付近からプラグ12寄りの部分では幅W1より狭い幅W2を有する。すなわち、いわばパネル16上部がえぐられた形状を有する。
【0110】
呼吸用マスク8を使用者の鼻孔周辺部に固定させ、ずれを防止するうえでパネル16はある程度の剛性を有することが求められるが、図2に示したように使用者が装着したときには、ストラップ10は頬骨の上を通過するので、パネル16をストラップ10の全面に設けるとパネル16が頬骨に接触して苦痛を与えるおそれがある。そこでパネル16を上記のような形状にすることで、頬骨への接触を防止し(あるいは頬骨に接触したとしてもその面積を小さくし)、使用者に苦痛を与えることを防止できる。
【0111】
なお、パネル16が取り付けられるときのストラップ10の形状においては、好ましくは、ストラップ10におけるプラグ12のバックル12aを通過して折り返す部分の幅W3を、パネル16が設けられる部分の幅W4より狭くする。そして、上記のような形状を有するパネル16を、折り返されたストラップ10と重複しない位置に設ける。そうすることで、パネル16と折り返されたストラップ10とが重複しないような構成とすることができる。
【0112】
このことにより、バックル12aを通過したストラップ10の先端を折り返したときに、その先端に設けられた面ファスナ10bが係止するストラップ10の表面積を確保でき、ストラップ10の長さ調整の自由度を高めることができる。それとともに、折り返されたストラップ10の先端及び面ファスナ10bとパネル16とは互いに重複しない位置関係にあるので、ストラップ10及びパネル16全体としての厚みを薄くすることができる。そうすることで、使用者が横臥して顔の側面を枕に押し付けたときに、ストラップ10とパネル16とが顔面に食い込むことによる苦痛を防止できる。
【0113】
なおパネル16に左右を判別するための判別手段を設けることが可能である。例えばパネル16における呼吸用マスク8との嵌合部16a付近を拡大して図17(B)に示すと、パネル16に突起16pを設け、突起の有無やその数により左右を判別することが可能である。また、判別手段として突起以外に文字や記号、図柄を設けてもよい。そうすることで、装着具14を呼吸用マスク8に連結するときに容易に左右を判別できる。よって、装着具14を分解して洗浄し、使用者が再度これを組み立てる際に、効率的かつ正確な作業を支援できる。
【0114】
また、図17(C)に示すように、パネル16は、プラグ12と耳掛け部13とが併用される場合にも、ストラップ10に対して適用される。この場合、耳掛け部13によりプラグ12の脱落を防止する効果に加え、パネル16によりストラップ10のねじれを防止する効果が加わり、呼吸用マスク8をさらに確実に使用者の鼻孔周辺部に密着して固定できる。
【0115】
図18は、パネル16の変形例を説明する図である。図18(A)〜(C)は、平面部16bの形状の例を示す。図18(A)〜(C)に示すように、平面部16bは、ストラップ10を折り返したときの先端部が重ならないように、先端部に設けられる面ファスナー10bの形状に対応した任意の形状とすることができる。
【0116】
また、図18(D)は、プラグ12と連結される端部寄りで幅が広くなるパネル16の形状の例を示す。このような形状によれば、幅方向における長さを有する複数の平面部16b、16cを設けることができる。よって、図17(A)、または図18(A)〜(C)に示した場合より幅方向におけるひねりに対する応力をさらに大きくすることができる。そして、パネル16の長手方向における中心部での幅を狭くすることで、折り返されるストラップ10の先端部の面ファスナ10bがストラップ10の中央付近に係止される。よって、長さ調整の自由度を低下させることなく、ねじれを防止する効果を高めることができる。また、パネル16が頬骨に接触することを避け、使用者の苦痛を軽減できる。そして、ストラップ10とパネル16とが重複して厚みを増すことを防止でき、使用者が横臥したときにストラップ10が顔面へ食い込むことで苦痛を与えることを防止できる。
【0117】
[4]装着具の第4実施形態
第4実施形態では、装着具14は、その長手方向に沿って設けられる支持部材を有する。この支持部材は、呼吸用マスク8に固定される第1の板状部材と、前記連結部材に固定される第2の板状部材とを有し、前記第1、第2の板状部材は、回動可能に構成される。第4実施形態は単独で、あるいは第1、第2実施形態、あるいは他の装着具のいずれか一つ以上と同時に実施することが可能である。また、第4実施形態を実施する際の呼吸用マスクは、鼻孔部周辺のみを覆う呼吸用マスク8でもよいし、鼻孔部と口とを覆う呼吸用マスクでもよい。
【0118】
図19は、支持部材としてのパネル16について説明する図である。図19(A)は、右側のパネル16の平面図を示し、図19(B)は矢印P´での断面図を示す。パネル16は、呼吸用マスク8と連結される嵌合部16aを備えた第1の板状部材160aと、ストラップ10に連結される第2の板状部材160bとで構成される。板状部材160a、160bは、互いに回動軸160cにより回動可能に組合わせられる。回動軸160cは、板状部材160a(または160b)側に設けられた突起が、板状部材160b(または160a)側に設けられた孔(もしくは凹部や切欠き)に嵌め込まれて構成される。ここでは、板状部材160aと、板状部材160bの板状部材160aと重複する部分は扇形に構成され、扇の要の部分に回動軸160cが設けられる。好適な態様における板状部材160a、160bの厚さは、0.1〜3mmである。
【0119】
かかる構成によれば、板状部材160aを呼吸用マスク8と連結し、板状部材160bをストラップ10と連結することで、呼吸用マスク8とストラップ10との角度が可変となる。ここで、回動軸160cは、使用者が呼吸用マスク8を装着したときの鼻孔の下端と一致する位置に設けられるので、鼻孔の下端を中心とした呼吸用マスク8の角度調節が可能となる。このことを、図20を用いて詳述する。
【0120】
図20は、第4実施形態の作用を説明する図である。本実施形態は、鼻孔部周辺のみを覆う呼吸用マスク8と同時に実施される場合に、特に有利である。図20には、使用者の横顔が模式的に示される。ここでは、水平面を基準として、鼻孔が上むきの角度αの場合と、鼻孔が下向きの角度βの場合を代表的に示す。使用者の鼻孔の角度は概ね角度αと角度βの間の角度を有するものとする。
【0121】
呼吸用マスク8は、鼻孔部を覆い、鼻孔周辺に当接する周縁部に隙間が生じないことが望ましい。しかし、図示するように鼻孔の角度には個人差があるので、使用者の顔面に対する呼吸用マスク8の周縁部の角度(つまり呼吸用マスク8の角度)を鼻孔の角度に合わせて調節し、周縁部を鼻孔周辺に密着させる必要がある。すなわち、鼻孔の角度がαの場合には点線81で示すような角度で呼吸用マスク8を装着し、鼻孔の角度がβの場合には点線82で示すような角度で呼吸用マスク8を装着する必要がある。
【0122】
回動軸160cが鼻孔下端の位置Nbと一致する位置に設けられる本実施形態によれば、板状部材160a、bが鼻孔下端の位置Nbを中心に回動することにより、鼻孔下端の位置Nbを支点として呼吸用マスク8の角度調節を行うことができる。
【0123】
このことは、従来技術と比べて、次のような効果を有する。通常、使用者が呼吸用マスク8を装着する際には、まず、呼吸用マスク8における鼻孔下端に対向すべき位置(ここでは、鼻孔下端の対向位置という)が鼻孔下端に密着するように、ストラップ10の長さを調節する。そして、呼吸用マスク8をストラップ10により装着し、実際に呼吸用マスク8の鼻孔下端の対向位置が鼻孔下端に密着することを確認する。ここで、鼻孔周辺の少なくとも一部に呼吸用マスク8が密着していなかったり、逆に強く圧迫したりしている場合、つまり呼吸用マスク8の角度が不適切でないことが判明した場合に、呼吸用マスク8における上下方向の中心に角度調節機構を有する従来技術では、鼻孔下端の位置Nbから離れた位置Nmを回動軸として呼吸用マスク8の角度調節が行われる。よって、呼吸用マスク8における鼻孔下端の対向位置が鼻孔下端からずれ、その結果、鼻孔下端に隙間ができたり、逆に鼻孔下端が強く圧迫されたりすることになる。すると、再度ストラップ10の長さや装着位置を調節しなくてはならなくなる。このように、呼吸用マスク8の角度が不適切であることはストラップ10の長さを調節した後に判明するので、呼吸用マスク8の角度調節を行った後で、ストラップ10の長さの再調節を行う必要が生じる。
【0124】
この点、本実施形態によれば、鼻孔下端の位置Nbを支点として呼吸用マスク8の角度調節を行うので、呼吸用マスク8における鼻孔下端の対向位置がずれることがない。よって、呼吸用マスク8の角度調節を行っても、ストラップ10の長さを再調節する必要が生じない。よって、角度調節を伴う呼吸用マスク8の装着が容易となり、使用者の利便性が向上する。
【0125】
また、従来技術における角度調節機構はある程度の厚みを有するので、使用者が寝返りしたときに角度調節機構を下敷きにすると、顔が圧迫されて不快感が生じるおそれがある。この点、本実施形態によれば、角度調節機構全体を薄く形成できるので、かかる不快感を防止できる。
【0126】
なお、上述した第3実施形態で説明したパネル16は、長手方向における一部では上部がえぐられており、呼吸用マスク8に連結される端部の幅より狭い幅を有するように構成される。この構成と第4実施形態とを同時に実行する場合、好ましくは、板状部材160a、160bにおける回動軸160cは、パネル16の下端部、つまり狭い幅の部分の延長線上に設けられる。よって、板状部材160a、160bを回動させる際に、パネル16全体としての強度が確保される。
【0127】
図21は、板状部材160a、160bの変形例について説明する図である。図21(A)〜(C)では、板状部材160a、160bを回動させたときに回動位置を固定するための固定手段が示される。たとえば図21(A)は、回動軸160cを星形あるいはその他の歯車形状として、固定手段を歯車機構により構成した例である。この例では、板状部材160b側において回動軸160cを中心とする円の円弧上に配設された歯車状の突起が、板状部材160a側の回動軸160cに対応する歯車状の孔または凹部に嵌め込まれ、両者が噛み合うことで、回動位置が固定される。そして、このような歯車機構が噛み合う力よりも大きい力で板状部材160a、bが回動されると固定が解除され、別の回動位置で固定される。また、図21(B)は、板状部材160bの円周付近に突起160dを設け、板状部材160aの円周に沿って孔または凹部160eを設けた例である。この例では、回動軸160cを中心として板状部材160a、160bを回動させ、板状部材160bの突起160dと板状部材160aの孔または凹部160eを互いに係合させることで回動位置が固定される。そして、図21(C)は、板状部材160bの円周付近に突起160fを設け、一方、板状部材160aには円周に沿った円弧状の開口160gを設けることで、固定手段を構成した例である。この例では、板状部材160bに設けられた開口160gは、その周縁部に波型の部分を有する。そして、回動軸160cを中心として板状部材160a、160bを回動させるときに板状部材160bの突起160fが板状部材160aの開口160g内を移動し、波型の谷の部分に係合することで回動位置が固定される。
【0128】
図22は、従来のヘッドギア式の装着具に、第3または第4実施形態のパネル16を適用した例を説明する図である。図22に示す例は、呼吸用マスク8の両側部に連結されたストラップ100を有し、ストラップ100を使用者の頭部周囲に係止させるヘッドギア式の装着具の例である。各ストラップ100は使用者の頬骨上を通過して耳の前方で2つに分岐する。そして、分岐した端部はそれぞれ使用者の頭頂部及び後頭部で環状をなすようにして連結され、使用者の頭部周囲に係止される。
【0129】
かかる構成において、呼吸用マスク8に対しストラップ100の幅方向におけるねじれを防止するためにストラップ100の全面に剛性を有する支持部材を設けると、支持部材が頬骨に接触して使用者に痛みを与えるおそれがある。
【0130】
そこで、かかる苦痛を防止しつつストラップ100のねじれ防止を課題としたときに、本実施形態におけるパネル16をストラップ100に適用することで、使用者の頬骨に接触することを回避して使用者に苦痛を与えることを防止でき、かつストラップ100の幅方向におけるねじれを防止できる。
【0131】
このように、第3または第4実施形態は、ヘッドギア式の装着具にも適用できる。すなわち、第3または第4実施形態によれば、呼吸用マスク8の両側部に連結され、使用者の頭部周囲に係止される装着具(上述の例におけるストラップ100)に設けられる支持材材(上述の例におけるパネル16)であって、装着具の長手方向に延在するとともに装着具より大きい剛性を有し、長手方向の一部での幅が他の部分の幅より狭い支持部材が提供される。
【0132】
図23は、装着具14の第1実施形態と第3実施形態とを組み合わせた場合を説明する図である。ここでは、上述したストラップ10、プラグ12、耳掛け部13、及びパネル16を備えた装着具14の使用状況が示される。すなわち、呼吸用マスク8の両側部には、ストラップ10の1つの端部が連結され、他の端部はプラグ12に連結される。そして、プラグ12は、使用者の耳珠周辺の窪みに嵌めこまれて固定される。さらにストラップ10の端部には耳掛け部13が設けられ、耳掛け部13が耳周囲に係合される。
【0133】
さらに、ストラップ10には支持部材としてのパネル16が設けられる。パネル16はストラップ10の長手方向に延在するともに、呼吸用マスク8との連結部付近ではある程度の幅を有し、平面部を形成する。これにより、ストラップ10が長手方向に過度に伸縮することを防止でき、かつ幅方向のねじれを防止できる。そして、頬骨に接触する部分の幅が狭く形成されるので、使用者の苦痛を防止できる。
【0134】
このように構成される装着具14によれば、呼吸用マスク8を装着したときの苦痛や不快感を軽減するとともに、呼吸用マスク8のずれを防止できる。さらに、呼吸用マスク8の装着が容易になる。
【0135】
[5] 呼吸用マスクの第1実施形態
まず、図23を用いて呼吸用マスク8の概略構成を説明する。呼吸用マスク8は、その外郭を形成するとともにフレキシブルホース4bと連結されるフレーム20と、このフレーム20と組み合わせて用いられ、使用者の鼻孔周辺部に接触してこれを覆うクッション30とを有する。
【0136】
ここで従来の呼吸用マスクの構成について説明し、その後、本実施形態について説明する。
【0137】
図24は、従来の呼吸用マスクの構成を説明する図である。図24では、呼吸用マスクの断面図を模式的に示す。図面の下方が、仰臥した使用者の鼻孔周辺部の位置に対応する。一般的な呼吸用マスクは、呼吸用マスクの外殻をなすフレーム200と、フレーム200の開口部204周縁に設けられ使用者の鼻孔周辺部に当接するクッション300とを有する。フレーム200は、呼吸用気体が供給されるフレキシブルホース4bと接合される吸気ポート202を有する。なおここでは、仰臥した使用者の鼻孔周辺部に対し鉛直上方に吸気ポート202が設けられる場合を示す。
【0138】
かかる構成の呼吸用マスクは、開口部204により使用者の鼻孔を覆うようにして装着具により使用者の鼻孔周辺部に密着して固定される。そして、吸気ポート202から供給される呼吸用気体を、使用者の鼻孔に送りこむ。
【0139】
ここで、吸気ポート202やフレーム200は、外力が加わったり、使用者の呼吸により内部が負圧になったりすることで形状が変化し、呼吸用気体を供給するための経路が閉塞することがないように、ある程度以上の剛性を有する材質で形成される。
【0140】
一方、呼吸用気体を使用者の鼻孔に送りこむためには、フレーム200を顔面に密着させ気密状態を確保することが望ましい。しかし、剛性を有するフレーム200を顔面に押し付けると苦痛を招き、また、フレーム200の開口部204周縁の形状が使用者ごとの顔面の形状に沿っているとは限らず空隙が生じるおそれがある。よって、フレーム200の開口部202周縁に設けられるクッション300は、ある程度の柔軟性と弾力性が求められる。
【0141】
かかる要請に応えるため、フレーム200は例えばポリカーボネートにより形成される。そして、クッション300は、シリコーンゴムにより形成される。
【0142】
ところで、CPAP療法では、鼻孔内の粘膜が過度に乾燥することを避けるために、図1で示したように加湿器6を用いて呼吸用気体を加湿する場合がある。また、使用者自身の呼気は水分を含む。すると、ポリカーボネートで形成されるフレーム200は撥水性を有さないので、冬季など低温下では加湿された呼吸用気体や水分を含む呼気がフレーム200内壁で結露する場合がある。そして、使用者が仰臥している場合、結露した水滴が重力に抗しきれないほどの大きさに成長して使用者の顔に落下すると、使用者を覚醒させてしまうおそれがある。
【0143】
そこで、かかる結露対策として、フレーム200を一点鎖線で示すように二重構造として断熱空気層206を設け、フレーム200の内壁の温度を外壁の温度より高く保つことで結露を抑制する方法が提案されている。
【0144】
しかし、かかる構造のフレーム200を一体成型するためにブロー成型など高難度の技術を用いると、コスト増を伴う。また、内壁と外壁を別々に成型してこれを組み合わせる方法を用いたとしても、部品点数の増加と組立工数の増加によりコスト増を招く。
【0145】
そこで、低コストで結露を抑制可能な呼吸用マスクを提供することを目的として、本実施形態における呼吸用マスクは次のように構成される。
【0146】
使用者の鼻孔を覆い加湿された呼吸用気体を前記鼻孔に供給する呼吸用マスクは、前記呼吸用気体を内部に取り込む第1のポートを備え、使用者の顔面に当接して前記鼻孔を覆う第1の部材(クッション)と、前記呼吸用気体の搬送手段と接続され、前記第1のポート部分に嵌め込まれる第2のポートを備え、前記第1の部材の少なくとも一部を覆うとともに前記第1の部材より大きい剛性を有する第2の部材(フレーム)とを有し、前記第1の部材と第2の部材の間に空洞を有する。
【0147】
また、別の側面における呼吸用マスクは、呼吸用気体を内部に取り込む第1の吸気ポートと、呼気を排出する第1の排気ポートとを備え、使用者の顔面に当接して前記鼻孔を覆う第1の部材(クッション)と、前記呼吸用気体の搬送手段と接続され、前記第1の吸気ポート部分に嵌め込まれる第2の吸気ポートと、前記第1の排気ポート部分が嵌め込まれ外部に連通する第2の排気ポートとを備え、前記第1の部材の少なくとも一部を覆うとともに前記第1の部材より大きい剛性を有する第2の部材(フレーム)とを有し、前記第1の部材と第2の部材の間に空洞を有する。
【0148】
また、別の側面における呼吸用マスクは、前記呼吸用気体を内部に取り込む第1のポートを備え、使用者の顔面に当接して前記鼻孔を覆う第1の部材(クッション)と、前記呼吸用気体の搬送手段と接続され、前記第1のポート部分に嵌め込まれる第2のポートを備え、前記第1の部材の少なくとも一部を覆うとともに前記第1の部材より大きい剛性を有する第2の部材(フレーム)とを有し、前記第1の部材は撥水性を有する。
【0149】
さらに、別の側面における呼吸用マスクは、呼吸用気体を内部に取り込む第1の吸気ポートと、呼気を排出する第1の排気ポートとを備え、使用者の顔面に当接して前記鼻孔を覆う第1の部材(クッション)と、前記呼吸用気体の搬送手段と接続され、前記第1の吸気ポート部分に嵌め込まれる第2の吸気ポートと、前記第1の排気ポート部分が嵌め込まれ外部に連通する第2の排気ポートとを備え、前記第1の部材の少なくとも一部を覆うとともに前記第1の部材より大きい剛性を有する第2の部材(フレーム)とを有し、前記第1の部材は撥水性を有することを特徴とする。そして、好ましい態様では、前記第1の吸気ポートは前記第1の排気ポートを兼用し、前記第2の吸気ポートは前記第2の排気ポートを兼用する。
【0150】
次に、図25〜図33に従って、本実施形態における呼吸用マスクについて詳述する。
【0151】
図25は、本実施形態におけるフレームの構造を説明する図である。図25(A)はフレームの正面斜視図、図25(B)、(C)は背面斜視図を示す。図26は、フレーム各部の拡大図である。
【0152】
本実施形態におけるフレーム20は、使用者に対向する開口部24と、呼吸用気体が供給されるとともに呼気が排気される吸排気ポート22を有する。吸排気ポート22の先はL字状に屈曲してL字管28を形成する。そして、L字管28の先端は、図26(A)に示すように、フレキシブルホース4bと嵌合可能に構成される。また、L字管28内壁における吸排気ポート22に対向する箇所には、排気孔21が設けられる。これにより、使用者の呼気がフレーム20の外部に排出される。なお、フレキシブルホース4bとL字管28が呼吸用気体の搬送手段を構成する。
【0153】
また、開口部24周縁の内壁には、凹形状の嵌合溝26が設けられ、後述するようにクッション30と嵌合可能に構成される。そして、図26(B)に拡大して示すように、フレーム20の両側部にはストラップ10に設けられるパネル16の嵌合部16aと嵌合する嵌合部27が設けられる。これにより、フレーム20は両側部においてストラップ10と連結される。
【0154】
そしてフレーム20には外力により容易に変形しない程度の剛性が求められ、一例としてポリカーボネートにより一体成型される。なお、一体成型することは、部品点数の削減と低コスト化の観点から好適な態様である。
【0155】
なお、図25(C)に示すように、フレーム20の吸排気ポート22周辺部の対向する位置(例えば左右両端)に、一対の板状部22aを形成してもよい。そうすることで、後述するようにクッション30の吸排気ポートを嵌合させたときに、これを挟持してより確実に固定することができる。なおここでは、一例として半円状の板状部22aが示されるが、クッション30の吸排気ポートを挟持可能な形状であれば任意の形状とすることができる。
【0156】
図27は、クッションの構造を説明する図である。図27(A)はクッションの正面斜視図、図27(B)は背面斜視図を示す。また、図28はクッションの断面を示す図である。図28(A)は、図27(A)におけるクッション30の平面AA´における断面、図28(B)は、図27(A)におけるクッション30の平面BB´における断面を示す。本実施形態におけるクッション30は、使用者の顔面に当接する第1の膜(当接部)31、フレーム20の吸排気ポート22に嵌合される吸排気ポート32、及び、これら当接部31と吸排気ポート32とを連結する中間部33を備えている。当接部31、吸排気ポート32及び中間部33によって内部空間34が形成され、この内部空間34内にフレーム20の吸排気ポート22からの呼吸用気体が供給される。
【0157】
当接部31の略中央部には内部空間34に連通する長円状の開口部35が形成されており、この開口部35を介して使用者の鼻孔は内部空間34に臨むようになっている。当接部31と使用者の顔面との接触領域は、使用者の顔の上下方向では鼻尖から上唇までの間の範囲内に亘り、左右方向では両頬部の間の範囲内に亘る。このため、比較的に異物の接触や圧迫に対する不快感を感じ難い鼻孔周辺部のみが、当接部31との接触界面となる。したがって、敏感な鼻梁部や目の周囲部にクッション30が接触することがなく、良好な視界を確保できると共に、長時間の使用によって痒みや炎症等が生じるような事態も防ぐことができる。
【0158】
また、当接部31は、ある程度の柔軟性と弾力性を有すると共に、生体適合性を備えた材質、例えばシリコーンゴムにて薄く形成される。このため、内部空間34内に呼吸用気体を加圧供給すると、第1の膜31は外側に向かって膨張し、患者の顔面に密着する。したがって、当接部31と使用者の顔面との間から呼吸用気体が漏れることはなく、気体の漏洩による異音の発生や目への刺激等を防止することができる。また、装着具14を締めて呼吸用マスク8を患者の顔に装着した際にも、当接部31が患者の顔に与える接触圧力が緩和されるので、良好な装着感が得られる。
【0159】
また、クッション30における第1の膜である当接部31と中間部33との間には、第2の膜36が一体的に設けられている。この第2の膜36は、内部空間34の内側に突出し、かつ、当接部31に沿って環状に形成されている。そして、第2の膜36、中間部33及び吸排気ポート32は、図28(A)に示すように第1の膜である当接部31と比べて肉厚に形成されており、ある程度の剛性を有している。このため、呼吸用マスク8を患者の顔に密着させた場合にも、クッション30の形状を良好な状態のまま維持でき、しかも、第2の膜36が当接部31を内側から押さえる形になるので、当接部31の使用者の顔面への密着力をより高めることができる。特に、当接部31における開口部35の周縁部は、第2の膜36の内周縁部よりも内側に延出して形成されていることが好ましい。この場合、柔軟な当接部31のみが使用者の顔に当接するようになるので、さらに良好な装着感を得ることができる。また、かかる構成により、当接部31の内側と第2の膜36には、後に詳述するように水滴を保持可能なポケット37が形成される。
【0160】
なお、第2の膜36、中間部33及び吸排気ポート32は、それぞれ別の材料にて形成されていても良いが、部品点数の削減と低コスト化の観点からも、当接部31と同一材料にて一体成形することが好ましい。
【0161】
一方、クッション30における中間部33の外側には、フレーム20の開口部周縁の内壁に設けられる嵌合溝26に嵌合可能な凸形状の嵌合条38が、一体的に設けられる。
【0162】
図29は、フレーム20とクッション30を嵌合した状態を示す断面図である。図29(A)は、図27(A)で示した平面BB´における断面を示す。フレーム20の吸排気ポート22にはクッション30の吸排気ポート32が嵌合されるとともに、フレーム20の嵌合溝26には、クッション30の嵌合条38が嵌合される。これにより、フレーム20とクッション30は2箇所で嵌合される。そして、フレーム20の外壁を外側に膨らんだ形状となるようにあらかじめ成型することで、フレーム20とクッション30との間に空洞40が形成される。
【0163】
この空洞40が断熱空気層として機能することで、クッション30内の温度をフレーム20外の温度より高く維持でき、クッション30内における結露を抑制できる。なお、空洞40の気密性を高めるために、フレーム20側の嵌合溝26とクッション30側の嵌合条38との間にゲル剤などの接着剤を塗布してもよい。そうすることで、空洞40の断熱効果を高め、より確度良く結露を抑制することができる。
【0164】
また、上記構成では、フレーム20側の嵌合溝26とクッション30側の嵌合条38とを嵌合させて固定できるので、装着具14を締めて呼吸用マスク8を患者の顔に密着させた際に、クッション30がフレーム20内に押し込まれることを防止できる。よって、空洞40が閉塞することを防止できる。また、クッション30をシリコーンゴム等の柔軟な材料で構成した場合には、呼吸用気体を加圧供給した際に中間部33等が僅かに膨張することになるが、この場合であっても、嵌合溝26と嵌合条38とを嵌合させているので、フレーム20とクッション30との間で位置ずれが生じることを防止できる。また、呼吸用マスク8を使用者に装着した際の接触圧は、当接部31の膨張作用により緩衝することができるが、これに加え、凸形状の嵌合条38をクッション30の他部と同様のシリコーンゴム等で形成することで、嵌合条38が圧力を緩衝するクッションとして作用する。よって、使用者の装着感をさらに向上することができる。
【0165】
なお、凹形状の嵌合溝26と凸形状の嵌合条38とを設ける代わりに、フレーム20とクッション30の外周またはその一部に、互いに係合可能な段差を設ける構成としても、上記と同じ作用効果を奏する。すなわち、フレーム20とクッション30とを係合させて固定できるので、空洞40の気密性を高めるとともに、装着具14を締めて呼吸用マスク8を患者の顔に密着させた際に、クッション30がフレーム20内に押し込まれることを防止できる。よって、空洞40が閉塞することを防止できる。また、加圧された呼吸用気体によりクッション30の中間部33が膨張したときでも、フレーム20とクッション30との間で位置ずれを防止できる。また、クッション30がフレーム20に係合することで圧力を緩衝するクッションとして作用し、使用者の装着感をさらに向上することができる。
【0166】
なお、図29(B)に示すように、クッション30に左右を判別するための突起30pを設け、突起の有無やその数により左右を判別することが可能である。また、判別手段として突起以外に文字や記号、図柄を設けてもよい。そうすることで、クッション30とフレーム20とを連結するときに容易に左右を判別できる。よって、呼吸用マスク8を分解して洗浄し、使用者が再度これを組み立てる際に、効率的かつ正確な作業を支援できる。
【0167】
ここで、本実施形態における効果を従来例との比較において説明する。まず、図24に示した従来例ではフレーム200とクッション300とを異なる材質で形成される別部材として構成し、これを組み合わせて用いる呼吸用マスク8において、さらにフレーム200を二重構造とすることで断熱空気層を形成する。これに対し図25〜図29で示した本実施形態では、フレーム20とクッション30とを異なる材質で形成される別部材として構成し、これを組み合わせて用いるときに断熱空気層としての空洞40を形成できる点で、より少ない部品点数や製造工数により結露を抑制することができる。
【0168】
さらに、上記の構成では、呼吸用マスク8の内壁全体をクッション30で構成するので、シリコーンゴムが有する撥水性を内壁全体に適用することができる。よって、クッション30内に結露により小径の水滴が生成されたとしても、クッション30との吸着力が小さいため、使用者の顔に落下するほどの大径の水滴に成長する前にマスク内に供給される呼吸用気体や患者の呼吸等の気流により外部に排出でき、使用者の顔に水滴が落下することを防止できる。そして、吸排気ポート32付近、すなわちフレーム20側の吸排気ポート22付近に排気孔21を設けたことにより、湿潤した空気の排出を促すことができる。よって、より早いタイミングで水滴の蒸発を促すことができる。
【0169】
ここで、使用者が仰臥したときに鼻孔周辺部の上方に撥水性を有さない個所が散在すると、かかる箇所では結露した水滴が成長して使用者の顔面に落下する蓋然性が大きくなる。この点、上記のように構成することで、仰臥した使用者の鼻孔周辺部の鉛直上方には、撥水性を有するクッション30の内壁と、吸排気ポート32、フレーム20の吸排気ポート22、及び排気孔21が設けられたL字管28の内壁部分が位置する。ここで、L字管28内壁は撥水性を有さないが、排気孔21が設けられたことによって、当該個所で結露が発生する蓋然性、あるいは結露した水滴が大径に成長する蓋然性を小さくすることができる。このように、クッション30の内壁で結露が生じたとしても水滴が落下するほどに成長する前にマスク内に供給される呼吸用気体や患者の呼吸等の気流により吸排気ポート32、22、を介して排気孔21から外部に排出することができる。よって、使用者の鼻孔周辺部の上方で水滴が成長する蓋然性を小さくでき、水滴の落下による覚醒を防止できる。
【0170】
さらに、使用者の鼻孔周辺部における密着性を高めるために当接部31は全体として左右方向に湾曲し、当接部31における開口部35の周縁部が第2の膜36の内周縁部よりも内側に延出して形成されるので、使用者が仰臥して装着したときに結露した水滴がクッション30の内壁を伝わって下降したとしても、当接部31の内側と第2の膜36には水滴を保持可能なポケット37が形成される。そして、当接部31の形状を左右方向に湾曲した形状とすることで、ポケット37は、下方が広がった形状を有するので、溜まった水滴を確実に保持することができる。好ましくは、ポケット37内に、スポンジや吸水ゲルなどの吸水材を備えることで、水滴をより高い確度で保持できる。よって、水滴が使用者の顔面に落下して使用者を覚醒させることを、より高い確度で防止できる。
【0171】
なお、別の態様として、フレーム20及びクッション30は吸気ポートと排気ポートを別々に有してもよい。
【0172】
図30は、吸気ポートと排気ポートを別々に有するフレーム20及びクッション30の構成例を示す図である。この構成では、クッション30の吸気ポート32aと排気ポート32bが、それぞれフレーム20の吸気ポート22aと排気ポート22bに嵌合可能に設けられる。そして、クッション30の排気ポート32b部分がクッション30全体と同様に撥水性を有するシリコーンゴムで形成される。よって、クッション30内部で結露が生じたとしても落下するほどの水滴として成長する前にこれを蒸発させ、湿潤した空気を排気ポート32bからマスク外部に排気できる。よって、結露が水滴として落下し、使用者を覚醒することを防止できる。
【0173】
なお、ここでは排気用ポート22b、32bが2つ設けられる場合を示すが、排気用ポートの数及びその配置はここに示す例に限られない。
【0174】
また、この場合にも、フレーム20とクッション30の間に断熱空気層としての空洞40を形成することで、上述したように結露を抑制する効果を奏することができる。
【0175】
[6] 呼吸用マスクの第2実施形態
呼吸用マスクの第2実施形態では、フレーム20にL字管28を一体成型して設けることで呼吸用マスク8の部品点数とコストを低減させることができる。そして、フレーム20とクッション30とが嵌合する部分、つまり吸排気ポート22、32と、嵌合溝26、嵌合条38とを180度回転対称の形状に形成する。それとともに、フレーム20とストラップ10に設けられるパネル16との嵌合部27を180度回転対称の形状に形成する。そうすることで、ユーザの好みに応じてL字管28の先端部の向きを左右どちらに向けても呼吸用マスク8を構成でき、装着具14により装着することができる。これにより、使用者が横臥したときにフレキシブルホース4bを体で押しつぶすおそれが少ない方向に予めフレキシブルホース4bを向けて呼吸用マスク8を装着できる。よって、フレキシブルホース4bを押しつぶして呼吸用気体の供給が阻害されることを防止できる。
【0176】
図31は、フレーム20とクッション30の嵌合部分の形状例を説明する図である。図31に示す形状例は、フレーム20の吸排気ポート22とクッション30の吸排気ポート32の形状例、あるいは、フレーム20の嵌合溝26とクッション30の嵌合条38の形状例である。図25〜図29で示した例は、図31(A)の楕円形状に対応する。この他にも、例えば、菱形(図31(B))、矩形(図31(C))、その他変則的な形状(図31(D))等、180度回転対称の形状であれば任意の形状とすることができる。なお、ここで真円、正方形などの90度回転対称の形状も含まれるが、90度回転対称の形状だとフレーム20とクッション30の左右方向を90度回転させた状態でも嵌合可能であるので、かかる組み立てのミスを防止するうえでは180度回転対称の形状が好適である。
【0177】
また、フレーム20側の吸排気ポート22と嵌合溝26、及びクッション30側の吸排気ポート32と嵌合条38の形状はそれぞれ同じ形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。このように構成することで、使用者が呼吸用マスク8を組み立てる際にはL字管28の方向を左右いずれに向けることができるので選択の自由度が確保され、それとともに上下方向を誤ることがない。よって、正確な組み立てが可能となる。
【0178】
このように、本実施形態によれば、低コストでフレーム20とフレキシブルホース4bとの接続方向の自由度を確保でき、使用者の利便性を向上させることができる。
【0179】
さらに、フレームとクッションの嵌合部分の形状を上記のように180度回転対象とする実施形態は、図32で示すような従来のフレームとクッションとで構成される呼吸用マスクにも適用できる。ここでは、図24の場合と異なり、吸気ポート203は左右方向を向くL字管を形成する。
【0180】
この場合、呼吸用マスクの外殻をなすフレーム200と、フレーム200の開口部204周縁に設けられ使用者の鼻孔周辺部に当接するクッション300とを有する呼吸用マスク8において、フレーム200とクッション300とを着脱可能に構成する。例えば、フレーム200の開口部の周縁とクッション300とを嵌合可能に構成する。ここで、フレーム200の開口部の周縁とクッション300との嵌合部分の形状を上記のように180度回転対称の形状に形成することで、L字管を形成する吸気ポート203の接続方向は左右どちらとも可能となる。すなわちフレーム20とフレキシブルホース4bとの接続方向の自由度を確保できるとともに、正確な組み立てが可能となる。よって、使用者の利便性を向上させることができる。
【0181】
図33は、フレーム20の嵌合部27とパネル16の嵌合部16aの組合わせに関する実施例について説明する図である。図33(A)には、フレーム20と左右のパネル16の平面図が模式的に示される。便宜上、ここでは紙面の左右にフレーム20及びパネル16の左右を対応させて説明する。また、ここでは、パネル16側の嵌合部16aが円柱状の形状を有し、一方フレーム20側の嵌合部27がこれに嵌合する溝の形状(黒塗りで示す)を有する場合について説明するが、嵌合部16aと27とが逆の形状を有していてもよい。
【0182】
この実施例では、フレーム20の嵌合部27とパネル16の嵌合部16aは、180度回転対象であって、上下が非対象に構成される。たとえば、左側の嵌合部16aの上端に円錐状の部位16rを、右側の嵌合部16aの下端に円錐状の部位16r´を設け、嵌合部27をこれらに対応した形状に構成する。
【0183】
かかる構成によれば、まずフレーム20の嵌合部27とパネル16の嵌合部16aは180度回転対象であるので、フレーム20全体を回転させてL字管28の向きを変えたときに、嵌合部27のどちらでも、左右のパネル16の嵌合部16aと嵌合させることができる。ところが、フレーム20とパネル16とを誤って表裏逆に取り付けようとすると、嵌合部27、16a嵌合形状が一致しないので組み立てることができない。パネル16の表裏を誤って組み立てると、パネル16が使用者の頬に当接して不快感を生ずるおそれがあるが、本実施例によればかかる事態を防止できる。また、表裏を示すような目印を設けた場合、使用者はこれを逐一確認することが必要となる。しかし、本実施例によれば、誤って組み立てることができないので、容易に組み立てミスを防止することができる。
【0184】
図33(B)〜(E)は、他の変形例を示す。図33(B)〜(E)では、便宜上、左側の嵌合部16a、27のみが示される。図33(B)は、嵌合部27、16aの上端に、円錐形状の変わりに半球状の部位16sを設けた例である。図33(C)は、嵌合部16aの中心から上端寄りの位置に円盤状の部位16tを設け、嵌合部27にこれと対応した開口を設けた例である。図33(D)は、嵌合部27、16aを上下に分割するとともに、上下の長さが異なるように構成した例である。図33(E)は、嵌合部27の上端に円柱状の溝に対して直角方向に鍔状の凸部16uを設け、嵌合部16a側にこれに対応した開口を設けた例である。
【0185】
なお、呼吸用マスクの第1、第2実施形態におけるフレーム20とクッション30とを有する呼吸用マスク8は、上述した装着具の第1〜第4実施形態における装着具14とともに用いてもよいし、装着具14以外の装着具、例えば従来のヘッドギア式の装着具とともに用いてもよい。いずれの場合においても、内部における結露を抑制する呼吸用マスクが低コストで実現できる。また、結露が生じたとしても、結露による水滴が睡眠中の使用者の顔に落下して覚醒させることを防止できる。さらに、使用者が横臥することでフレキシブルホース4bを体で押しつぶし、呼吸用気体の供給が阻害されるという事態を防止可能な呼吸用マスクを低コストで実現できる。
【0186】
また、上述した装着具の第1〜第4実施形態における装着具14は、睡眠時無呼吸症候群に対するCPAP療法だけでなく、他の用途にも用いることができる。例えば、緊急時における救命措置用の酸素マスクの装着具として用いることができる。その場合において、使用者の頭部周囲に係止するヘッドギア式よりも容易かつ迅速な装着が可能となる。また、装着具の第1〜第4実施形態における装着具14や呼吸用マスクの第1、第2実施形態における呼吸用マスク8は、換気不全の治療法の1つである、使用者の鼻孔周辺部に392〜1961Pa程度に加圧された呼吸用気体を間欠的に供給するNIPPV(Non-invasive Positive Pressure Ventilation)療法にも、適用可能である。NIPPV療法においては、使用者は睡眠時だけでなく日中にも呼吸用マスクの装着が必要となる。よって、より長時間にわたって呼吸用マスクの装着に伴う苦痛や不快感を低減させ、また結露の抑制や水滴としての成長を防止するうえで装着具の第1〜第4実施形態における装着具14や呼吸用マスクの第1、第2実施形態における呼吸用マスク8は好適に用いられる。
【0187】
以上説明したように、本発明によれば、呼吸用マスクを使用者の鼻孔周辺部に固定するとともに、装着に伴う苦痛や不快感を低減させることができ、使用中に呼吸用マスクがずれることを防止できる。また、本発明によれば、呼吸用マスク装着の際に使用者の鼻の構造に合わせた調節が可能にあり、呼吸用マスクの装着が容易になる。さらに、本発明によれば、低コストで呼吸用マスクの結露を抑制できる。そして、本発明によれば、呼吸用気体の供給が阻害されることを防止できる呼吸用マスクが低コストで提供される。
【符号の説明】
【0188】
2:呼吸用気体供給装置、4a、4b:フレキシブルホース、6:加湿器、8:呼吸用マスク、10:ストラップ、12:プラグ、13:耳掛け部、13a:フレーム部、13b:付勢部、14:装着具、16:パネル、160a、b:板状部材、20:フレーム、21:排気孔、22:吸排気ポート、24:開口部、26:嵌合溝、28:L字管、30:クッション、31:当接部、32:吸排気ポート、35:開口部、37:ポケット、38:嵌合条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の鼻孔を覆い加圧された呼吸用気体を前記鼻孔に供給する呼吸用マスクの装着具であって、
長手形状を有するとともに第1の端部が前記呼吸用マスクと連結される1対の連結部材と、
前記連結部材の第2の端部に連結されるとともに前記使用者の耳珠内側の窪みに嵌めこまれる1対の固定部材とを有する装着具。
【請求項2】
請求項1において、
前記固定部材は、前記連結部材の幅方向における中心線上に連結されることを特徴とする装着具。
【請求項3】
請求項1において、
前記固定部材は、前記耳珠に嵌めこまれたときに前記使用者の外耳道に対応する位置に孔または切欠部を有することを特徴とする装着具。
【請求項4】
請求項1において、
前記固定部材は、前記使用者の外耳道に挿入される挿入部をさらに有することを特徴とする装着具。
【請求項5】
請求項4において、
前記挿入部は外耳道に沿って変形可能であることを特徴とする装着具。
【請求項6】
請求項4において、
前記挿入部は前記固定部材の中心に対し所定の角度を有することを特徴とする装着具。
【請求項7】
請求項4において、
前記挿入部の中心は前記固定部材の中心に対してずれた位置にあることを特徴とする装着具。
【請求項8】
請求項1において、
前記固定部材は、前記使用者の耳珠の内側の窪みに係止される部分に当該窪みの形状に沿って湾曲した面を有することを特徴とする装着具。
【請求項9】
請求項1において、
前記固定部材は、前記使用者の対耳珠の内側の窪みに係止される部分を更に有することを特徴とする装着具。
【請求項10】
請求項9において、
前記固定部材は、前記使用者の対耳珠の内側の窪みに係止される部分に当該窪みの形状に沿って湾曲した面を有することを特徴とする装着具。
【請求項11】
請求項9において、
前記固定部材は、前記使用者の珠間切痕の内側の窪みに係止される部分を更に有することを特徴とする装着具。
【請求項12】
請求項11において、
前記固定部材は、前記使用者の珠間切痕の内側の窪みに係止される部分に当該窪みの形状に沿って湾曲した面を有することを特徴とする装着具。
【請求項13】
請求項9において、
前記固定部材は、前記使用者の耳珠の内側の窪みに係止される部分と対耳珠の内側の窪みに係止される部分との間が伸縮性を有することを特徴とする装着具。
【請求項14】
請求項9において、
前記固定部材は、前記使用者の対耳珠に係止される部分に弾性部材を有することを特徴とする装着具。
【請求項15】
請求項1において、
前記固定部材は、前記連結部材の前記第2の端部と接続される部分が傾動可能であることを特徴とする装着具。
【請求項16】
請求項1において、
前記連結部材の前記第2の端部には、前記使用者の耳の周囲に係合される係合部材がさらに連結されることを特徴とする装着具。
【請求項17】
請求項16において、
前記係合部材は所定の部位における直径と他の部位における直径が異なることを特徴とする装着具。
【請求項18】
請求項17において、
前記所定の部位は先端寄りの部位であるであることを特徴とする装着具。
【請求項19】
請求項1において、
前記連結部材は、長手方向に延在するとともに当該連結部材より大きい剛性を有する支持部材をさらに備え、
前記支持部材は前記第1の端部側で第1の幅を有しそれ以外の部分で前記第1の幅より狭い第2の幅を有することを特徴とする装着具。
【請求項20】
請求項1乃至19のいずれかに記載の装着具を備えた呼吸用マスク。
【請求項21】
使用者に呼吸用気体を供給する呼吸用マスクの装着具であって、
長手形状を有するとともに第1の端部が前記呼吸用マスクと連結される1対の連結部材と、
前記連結部材の第2の端部に連結されるとともに前記使用者の耳介の周囲に配置されるフレーム部とを有し、
前記フレーム部は、前記使用者の耳の付け根に当接して付勢する付勢部を有することを特徴とする装着具。
【請求項22】
請求項21において、
前記フレーム部は略U字形状に湾曲するとともにその一端で前記連結部材の第2の端部と連結され、他端に前記付勢部を有することを特徴とする装着具。
【請求項23】
請求項21において、
前記付勢部の先端は前記フレーム部材から離間することを特徴とする装着具。
【請求項24】
請求項21において、
前記連結部材の第2の端部に連結されるとともに前記使用者の耳珠内側の窪みに嵌めこまれる1対の固定部材を更に有することを特徴とする装着具。
【請求項25】
請求項21において、
前記フレーム部は、前記使用者の耳介の周囲を迂回することを特徴とする装着具。
【請求項26】
請求項21乃至25のいずれかに記載の装着具を備えた呼吸用マスク。
【請求項27】
使用者の鼻孔を覆い加圧された呼吸用気体を前記鼻孔に供給する呼吸用マスクの装着具であって、
長手形状を有するとともに第1の端部が前記呼吸用マスクと連結され、前記呼吸用マスクを使用者の鼻孔周辺に固定する1対の連結部材と、
前記連結部材の長手方向に延在するとともに当該連結部材より大きい剛性を有する支持部材とを有し、
前記支持部材は前記第1の端部側で第1の幅を有しそれ以外の部分で前記第1の幅より狭い第2の幅を有することを特徴とする装着具。
【請求項28】
請求項27において、
前記連結部材の第2の端部に連結されるとともに前記使用者の耳珠内側の窪みに嵌めこまれる1対の固定部材をさらに有し、
前記連結部材は、前記第2の端部を折り返して中央部に係止することで長さ調節が可能であり、
前記支持部材は、前記折り返された第2の端部と重複しないような前記連結部材における位置に備えられることを特徴とする装着具。
【請求項29】
請求項27において、
前記支持部材は、前記呼吸用マスクに固定される第1の板状部材と、前記連結部材に固定される第2の板状部材とを有し、
前記第1、第2の板状部材が回動軸を中心として互いに回動可能に設けられ、
前記回動軸が、前記支持部材が前記第2の幅で延在する延長線上に設けられることを特徴とする装着具。
【請求項30】
請求項29において、
前記第1、第2の板状部材に、当該第1、第2の板状部材を回動した位置で固定する固定手段が設けられることを特徴とする装着具。
【請求項31】
装着具を有する呼吸用マスクであって、
前記装着具は、長手形状を有するとともに第1の端部が前記呼吸用マスクと連結され、前記呼吸用マスクを使用者の顔に固定する1対の連結部材と、
前記連結部材対に設けられ、前記連結部材対より大きい剛性を有する支持部材対とを有し、
前記支持部材対のそれぞれは、前記呼吸用マスクに固定される第1の板状部材と、前記連結部材に固定される第2の板状部材とを更に有し、
前記第1、第2の板状部材は、前記呼吸用マスクの角度調節が行われる際に角度調節の支点となる位置を回動軸として回動可能であることを特徴とする呼吸用マスク。
【請求項32】
請求項31において、
前記第1、第2の板状部材の厚さが、0.1mm〜3.0mmであることを特徴とする呼吸用マスク。
【請求項33】
請求項31において、
前記第1、第2の板状部材に、当該第1、第2の板状部材を回動した位置で固定する固定手段が設けられることを特徴とする呼吸用マスク。
【請求項34】
請求項33において、
前記第1、第2の板状部材は、前記回動軸を要とする略扇形を有し、
前記固定手段は、当該扇型の円弧側に設けられることを特徴とする呼吸用マスク。
【請求項35】
請求項34において、
前記固定手段は、前記第1、第2の板状部材のいずれかの円弧に沿って配置された複数の孔と、前記第1、第2の板状部材の他方に設けられ、前記孔に係合可能な突起とを備えることを特徴とする呼吸用マスク。
【請求項36】
請求項34において、
前記固定手段は、前記第1、第2の板状部材のいずれかの円弧に設けられ、周縁部に切欠きを有する単一の孔と、前記第1、第2の板状部材の他方に設けられ、前記孔内を移動可能であるとともに前記切欠きに係合可能な突起を有することを特徴とする呼吸用マスク。
【請求項37】
請求項34において、
前記固定手段は、前記回動軸に設けられた歯車機構であることを特徴とする呼吸用マスク。
【請求項38】
請求項31乃至37のいずれかにおいて、
使用者の鼻孔を覆う呼吸用マスクであって、
前記呼吸用マスクの下端部が、当該呼吸用マスクの角度調節の際に支点となることを特徴とする呼吸用マスク。
【請求項39】
使用者の鼻孔を覆い加湿された呼吸用気体を前記鼻孔に供給する呼吸用マスクであって、
前記呼吸用気体を内部に取り込む第1のポートを備え、使用者の顔面に当接して前記鼻孔を覆う第1の部材と、
前記呼吸用気体の搬送手段と接続され、前記第1のポート部分に嵌め込まれる第2のポートを備え、前記第1の部材の少なくとも一部を覆うとともに前記第1の部材より大きい剛性を有する第2の部材とを有し、
前記第1の部材と第2の部材の間に空洞を有することを特徴とする呼吸用マスク。
【請求項40】
使用者の鼻孔を覆い加湿された呼吸用気体を前記鼻孔に供給する呼吸用マスクであって、
呼吸用気体を内部に取り込む第1の吸気ポートと、呼気を排出する第1の排気ポートとを備え、使用者の顔面に当接して前記鼻孔を覆う第1の部材と、
前記呼吸用気体の搬送手段と接続され、前記第1の吸気ポート部分に嵌め込まれる第2の吸気ポートと、前記第1の排気ポート部分が嵌め込まれ外部に連通する第2の排気ポートとを備え、前記第1の部材の少なくとも一部を覆うとともに前記第1の部材より大きい剛性を有する第2の部材とを有し、
前記第1の部材と第2の部材の間に空洞を有することを特徴とする呼吸用マスク。
【請求項41】
請求項39または40において、
前記第1の部材と前記第2の部材とは、互いに嵌合または係合することで前記空洞を密閉することを特徴とする呼吸用マスク。
【請求項42】
使用者の鼻孔を覆い加湿された呼吸用気体を前記鼻孔に供給する呼吸用マスクであって、
前記呼吸用気体を内部に取り込む第1のポートを備え、使用者の顔面に当接して前記鼻孔を覆う第1の部材と、
前記呼吸用気体の搬送手段と接続され、前記第1のポート部分に嵌め込まれる第2のポートを備え、前記第1の部材の少なくとも一部を覆うとともに前記第1の部材より大きい剛性を有する第2の部材とを有し、
前記第1の部材は撥水性を有することを特徴とする呼吸用マスク。
【請求項43】
使用者の鼻孔を覆い加湿された呼吸用気体を前記鼻孔に供給する呼吸用マスクであって、
呼吸用気体を内部に取り込む第1の吸気ポートと、呼気を排出する第1の排気ポートとを備え、使用者の顔面に当接して前記鼻孔を覆う第1の部材と、
前記呼吸用気体の搬送手段と接続され、前記第1の吸気ポート部分に嵌め込まれる第2の吸気ポートと、前記第1の排気ポート部分が嵌め込まれ外部に連通する第2の排気ポートとを備え、前記第1の部材の少なくとも一部を覆うとともに前記第1の部材より大きい剛性を有する第2の部材とを有し、
前記第1の部材は撥水性を有することを特徴とする呼吸用マスク。
【請求項44】
請求項40または43において、
前記第1の吸気ポートは前記第1の排気ポートを兼用し、前記第2の吸気ポートは前記第2の排気ポートを兼用することを特徴とする呼吸用マスク。
【請求項45】
請求項42または43において、
前記第1の部材は内壁の周縁部に水滴を保持するポケットを有することを特徴とする呼吸用マスク。
【請求項46】
請求項45において、
前記ポケットは内部に吸水材質を有することを特徴とする呼吸用マスク。
【請求項47】
使用者の鼻孔を覆い呼吸用気体を前記鼻孔に供給する呼吸用マスクであって、
前記使用者の顔面に当接して前記鼻孔を覆う第1の部材と、
前記呼吸用気体の搬送手段と所定の位置で接続され、前記第1の部材と連結されるとともに前記第1の部材より大きい剛性を有する第2の部材とを有し、
前記第1の部材と前記第2の部材との連結部分は、180度回転対称の形状を有することを特徴とする呼吸用マスク。
【請求項48】
請求項47において、
前記第2の部材は、前記呼吸用マスクを使用者の顔に固定する装着具対と両端で接続可能であり、
前記第2の部材の両端と前記装着具対との接続部対は、ともに上下非対称の形状を有し、かつ一方を180度回転したときに他方と同一形状となることを特徴とする呼吸用マスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2010−172751(P2010−172751A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112810(P2010−112810)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【分割の表示】特願2010−519287(P2010−519287)の分割
【原出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(503369495)帝人ファーマ株式会社 (159)