説明

呼吸用温湿度交換器の温度調整構造及びそれに用いられるジャケット

【課題】呼吸用温湿度交換器内に結露が発生するのを抑制して呼気ガスに含まれる湿気の回収率が向上して患者に供給される吸気ガスの湿気を増加させ、呼吸用温湿度交換器を長時間にわたって使用した場合でも温湿度交換能の低下や通気抵抗の増大が発生し難い呼吸用温湿度交換器の温度調整構造及びそれに用いるジャケットを提供すること。
【解決手段】ハウジング3と、患者側プラグ2Aと、呼吸回路側プラグ2Bとを備えた呼吸用温湿度交換器2の温度調整構造1であって、前記ハウジング3を気密に被覆するとともに、気管内チューブ5と患者側プラグ2Aとが接続される患者側接続部K、及び呼吸回路7と呼吸回路側プラグ2Bとが接続される呼吸回路側接続部Lで固定され、ハウジング3の周囲に外気と遮断された空間を形成するジャケット1Aを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、麻酔器、人工呼吸器等を患者に用いられるにあたって吸気ガスの温度、湿度を保持するために用いる呼吸用温湿度交換器の温度を調整する温度調整構造及びそれに用いられるジャケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
手術時に患者と麻酔器を接続して麻酔ガスの供給する場合や、患者と人工呼吸器等を接続して呼吸を補助する場合において、患者側と麻酔器又は人工呼吸器等とを気管内チューブ又は気管切開チューブを介して接続し患者に吸気ガスを供給するとともに呼気ガスを排出可能とする人工呼吸方法が実用化されている。
このように患者等に対して吸気ガスを人工的に供給する場合、人工呼吸器等から供給される吸気が乾燥しているために、患者の気管が乾燥され、粘膜等が傷付くために患者に痛みや不快感が生じる場合がある。
【0003】
そのため、気管内チューブ又は気管切開チューブと、麻酔器又は人工呼吸器等との間に湿熱蓄積体が収納された呼吸用温湿度交換器を配置して、患者の呼気ガスに含まれる湿気を保持するとともに、吸気が呼吸用温湿度交換器を反対方向に通過する際に吸気に湿気を還元して吸気に湿気が含まれるようにする技術が実用化されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開昭61−280871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように構成された呼吸用温湿度交換器は、湿熱蓄積体等の性能の向上にともない、湿熱蓄積体で呼気の湿気の約95%を回収することで、吸気ガスに湿気を安定して供給することが可能になってきている。しかしながら、呼吸用温湿度交換器内で結露する約5%の湿気は回収することが困難であるため、長時間の使用によって貯留した結露が湿熱蓄積体を目詰まりさせることにより温湿度交換能の低下や通気抵抗の増大をきたすという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、呼吸用温湿度交換器の放熱を抑制して温度を維持することで、呼吸用温湿度交換器内に結露が発生するのを抑制して呼気ガスに含まれる湿気の回収率が向上することで、患者に供給される吸気ガスの湿気を増加させ、呼吸用温湿度交換器を長時間にわたって使用した場合でも温湿度交換能の低下や通気抵抗の増大が発生し難い呼吸用温湿度交換器の温度調整構造及びそれに用いるジャケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記のような課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ハウジング内に湿熱蓄積体が設けられ、前記ハウジングに気管内チューブ又は気管切開チューブに接続自在される患者側プラグと、呼吸回路に接続自在にされる呼吸回路側プラグとを備えた呼吸用温湿度交換器の温度調整構造であって、 前記ハウジングを気密に被覆するとともに、前記気管内チューブ又は気管切開チューブと前記患者側プラグとが接続される患者側接続部、及び前記呼吸回路と呼吸回路側プラグとが接続される呼吸回路側接続部で固定され、前記ハウジングの周囲に外気と遮断された空間を形成するジャケットを備えることを特徴とする。
【0007】
この発明に係る呼吸用温湿度交換器の温度調整構造によれば、呼吸用温湿度交換器がジャケットにより気密に被覆されるとともに、患者側接続部及び呼吸回路側接続部でジャケットに固定されるので、呼吸用温湿度交換器全体を覆い易く、患者側接続部及び呼吸回路側接続部以外での熱伝導が抑制される。その結果、呼吸用温湿度交換器からの放熱が抑制され、呼吸用温湿度交換器の温度を容易に維持することができ、呼吸用温湿度交換器の温度を約35〜36℃に維持することでハウジング内で湿気が結露するのが抑制され、呼気ガスに含まれる湿気の回収率が向上して吸気ガスの湿気を維持することが容易になる。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の温度調整構造に用いられるジャケットであって、中央部にいずれかの前記プラグが通るための開口孔が形成されたシート状の被覆部材を備え、前記被覆部材の外周部及び前記開口孔の周囲には、すぼめることで、前記患者側接続部及び前記呼吸回路側接続部に固定するための巾着が設けられていることを特徴とする。
【0009】
この発明に係る呼吸用温湿度交換器の温度調整構造に用いられるジャケットによれば、中央部に前記プラグを通すための開口孔が形成されたシート状の被覆部材を備え、被覆部材の外周部及び開口孔の周囲には、患者側接続部及び呼吸回路側接続部に固定するための巾着が設けられているため、コード部材を引張って巾着をすぼめることで、被覆部材を呼吸用温湿度交換器に容易に固定することができる。
また、被覆部材がシート状であるため、収納性が高く取扱いが容易である。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1記載の温度調整構造に用いられるジャケットであって、中央部にいずれかの前記プラグが通るための開口孔が形成されたシート状の被覆部材を備え、前記開口孔には前記患者側又は前記呼吸回路側のいずれか一方のプラグを挿入状態で固定するための固定リングが設けられるとともに、すぼめることにより、前記患者側又は前記呼吸回路側のいずれか他方の接続部に固定するための巾着が設けられていることを特徴とする。
【0011】
この発明に係る呼吸用温湿度交換器の温度調整構造に用いられるジャケットによれば、開口孔に患者側プラグ又は呼吸回路側プラグの一方を挿入状態で固定するための固定リングが設けられているので、ジャケットをプラグに容易かつ確実に固定でき、ジャケット内の空気を外気とを容易に遮断することができる。また、巾着をすぼめることにより被覆部材を他方のプラグに容易に被せて呼吸用温湿度交換器に容易に固定することができる。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1記載の温度調整構造に用いられるジャケットであって、筒状被覆部材を備え、前記筒状被覆部材の胴部は前記ハウジングより大きく形成されるとともに、前記筒状被覆部材の開口端部には、前記開口端部を縮径して前記患者側接続部及び前記呼吸回路側接続部に固定するための弾性収縮部材又は巾着が設けられていることを特徴とする。
【0013】
この発明に係る呼吸用温湿度交換器の温度調整構造に用いられるジャケットによれば、筒状被覆部材から構成され、胴部がハウジングより大きく形成されているので、呼吸用温湿度交換器を収納し易く、呼吸用温湿度交換器と被覆部材との間に空間を形成させ易い。また、開口端部に開口端部を縮径するための弾性収縮部材又は巾着が設けられているので、呼吸用温湿度交換器を患者側接続部及び呼吸回路側接続部に容易に固定することができ、ジャケット内の空間を外気と遮断して、呼吸用温湿度交換器から外気への放熱を抑制することができる。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項1記載の温度調整構造に用いられるジャケットであって、前記ハウジングが収納自在に前記ハウジングよりも大きなサイズに成形された被覆部材を備え、前記被覆部材には、患者側プラグ及び前記呼吸回路側プラグを挿入状態で固定するための固定リングが設けられるとともに、胴部には前記呼吸用温湿度交換器を出し入れするための開口部が形成され、かつ前記開口部を閉塞するための閉塞手段が設けられていることを特徴とする。
【0015】
この発明に係る呼吸用温湿度交換器の温度調整構造に用いられるジャケットによれば、被覆部材が呼吸用温湿度交換器のハウジングよりも大きなサイズに成形され、胴部に呼吸用温湿度交換器を出し入れするための開口部が形成されているので、呼吸用温湿度交換器の出し入れを容易に行なうことができる。
また、被覆部材には、患者側プラグ及び前記呼吸回路側プラグを挿入状態で固定するための固定リングが設けられているので、呼吸用温湿度交換器の固定を容易かつ確実に行なうことができ、外気との間により高い気密性を得ることが可能である。
【0016】
請求項6に係る発明は、請求項2から請求項5のいずれかに記載のジャケットであって、前記被覆部材は、2重構造になっていることを特徴とする。
【0017】
この発明に係る呼吸用温湿度交換器の温度調整構造に用いられるジャケットによれば、被覆部材が2重構造とされているので、2重構造部分に空気を封入することができ、呼吸用温湿度交換器とジャケットとの間に確実に間隙を形成させることで熱伝導を低下させて、呼吸用温湿度交換器から外気への放熱を減少させることができる。
【0018】
請求項7に係る発明は、請求項2から請求項6に記載のジャケットであって、前記被覆部材で被覆したときにできる空間に、温度調整用の流体を導入するための導入口を備えていることを特徴とする。
【0019】
この発明に係る呼吸用温湿度交換器の温度調整構造に用いられるジャケットによれば、被覆部材で被覆しているときにできる空間に、温度調整用の流体を導入するための導入口を備えているので、温度調整用の流体をジャケット内に導入して呼吸用温湿度交換器の温度を所望の温度に調整することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る呼吸用温湿度交換器の温度調整構造及びその構造に用いられるジャケットによれば、呼吸用温湿度交換器の放熱を抑制して温度を維持することで、呼吸用温湿度交換器内に結露が発生するのを抑制して呼気ガスに含まれる湿気の回収率を向上させることができる。
その結果、患者に供給される吸気ガスに含まれる湿気を維持して、呼吸用温湿度交換器を長時間にわたって使用した場合でも、温湿度交換能の低下や通気抵抗の増大を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、この発明の呼吸用温湿度交換器の温度調整構造の一実施形態を示す図であり、符号100は人工呼吸回路を、符号1は温度調整構造を、符号1Aは温度調整構造に用いられるジャケットを示している。なお、ジャケット1Aは断面で示されている。
【0022】
人工呼吸回路100は、呼吸用温湿度交換器2と、患者に接続される気管内チューブ(又は気管切開チューブ)5と、呼吸回路7と、図示しない人工呼吸器とを備えている。
呼吸用温湿度交換器2は、ハウジング3と、気管内チューブ5が接続自在とされる患者側プラグ2Aと、呼吸回路7が接続される呼吸回路側プラグ2Bとを備えており、ハウジング3内には図示しない湿熱蓄積体が設けられている。
気管内チューブ5の端部には、コネクタ5Aが形成され、コネクタ5Aを呼吸用温湿度交換器2の患者側プラグ2Aのテーパ孔に挿入して、呼吸用温湿度交換器2と接続可能とされている。
【0023】
呼吸回路7は、吸気チューブ8と、呼気チューブ9とを備えており、呼吸回路7の一方側の端部にはコネクタ7Aが形成され、呼吸用温湿度交換器2の呼吸回路側プラグ2B外周のテーパが、コネクタ7Aのテーパ孔に挿入されることで呼吸用温湿度交換器2と接続可能とされており、吸気チューブ8と呼気チューブ9とは、コネクタ7A側でひとつの流路に合流するようになっている。
また、呼吸回路7は、吸気チューブ8と、呼気チューブ9を介して、例えば人工呼吸器に接続されている。
【0024】
呼吸用温湿度交換器2の温度調整構造1は、温度調整用のジャケット1Aを備えており、ジャケット1Aは、呼吸用温湿度交換器2のハウジング3を気密に被覆するとともに、気管内チューブ(又は気管切開チューブ)5と患者側プラグ2Aとが接続される患者側接続部K、及び呼吸回路7と呼吸回路側プラグ2Bとが接続される呼吸回路側接続部Lで固定され、ハウジング3の周囲に外気と遮断された空間が形成されるようになっている。
ここで、患者側接続部Kは、概ね患者側プラグ2Aの基端部からコネクタ5Aの基端部近傍までの2点鎖線で示した部分を、呼吸回路側接続部Lは、概ね呼吸回路側プラグ2Bの基端部からコネクタ7Aの基端部近傍までの2点鎖線で示した部分であり、その全体又は一部により構成されている。
【0025】
人工呼吸回路100は、人工呼吸器側の吸気用バルブ(図示せず)が開かれると、人工呼吸器から吸気ガスIが、吸気チューブ8、呼吸用温湿度交換器2、及び気管内チューブ5を通って患者に供給され、人工呼吸器側の呼気用バルブ(図示せず)が開かれると、患者の呼気ガスEが、気管内チューブ5、呼吸用温湿度交換器2、及び呼気チューブ9を通って排出されるようになっている。
このとき、呼気ガスEに含まれた湿気の多くは、呼吸用温湿度交換器2を通過するときにハウジング3内に設けられた湿熱蓄積体によって捕捉され、吸気ガスIが呼吸用温湿度交換器2を通じて供給されるときに吸気ガスIに還元されて、患者に供給されるようになっている。
【0026】
この実施の形態に係る呼吸用温湿度交換器2の温度調整構造1によれば、呼吸用温湿度交換器2がジャケット1Aにより気密に被覆され、ジャケット1Aが患者側接続部K及び呼吸回路側接続部Lにて呼吸用温湿度交換器2に固定されるので、呼吸用温湿度交換器2を容易に覆うことができ、ジャケット1Aと呼吸用温湿度交換器2の間に形成される空間によって呼吸用温湿度交換器2から外気への熱伝導が抑制される。その結果、呼吸用温湿度交換器2からの放熱が抑制され、呼吸用温湿度交換器2の温度を容易に維持することができる。特に、呼吸用温湿度交換器の温度を約35〜36℃に維持した場合、ハウジング3内での結露するのが抑制され、呼気ガスに含まれる湿気の回収率がほぼ100%近くまで向上して、その湿気を吸気ガスに還元することで吸気ガスの湿気を呼気ガスと同じレベルに維持することができる。
【0027】
図2は、呼吸用温湿度交換器2の温度調整構造1に用いる第1の実施形態に係るジャケット10を示す図である。
ジャケット10は、中央部に呼吸用温湿度交換器2のプラグ2A又は2Bを通すための開口孔14が形成された略円形に形成されたシート状の被覆部材12を備えており、被覆部材12の外周部には第1の巾着16が設けられ、開口孔14の周囲には第2の巾着20が設けられている。
【0028】
また、被覆部材12は、例えば、厚さが10〜200μmの変形自在なポリエチレン製のシートからなり、それらを2枚重ねにして2重構造12Bとされ、例えば、第1の巾着の径方向内方かつ第2の巾着の径方向外方に空気が封入、保持され、ジャケット10の裏表間の熱伝導が抑制されるようになっている。
2重構造としては、例えば、同じ大きさの2枚のシートを重ね合わせて第1の巾着及び第2の巾着の部分を接着又は溶着して2重構造の内部を気密にし、又は、第1の巾着の径方向内方と第2の巾着の径方向外方で接着又は溶着して、接着又は溶着部分以外に空気を保持させてもよい。
なお、被覆部材12は、内部が観察容易である点で透明であることが好適である。
【0029】
第1の巾着16は、被覆部材12の外周部に形成され周方向に配置された複数の小孔17と、この小孔17を通り被覆部材12の表側と裏側で往復する環状のコード部材18と、小孔17を通過するコード部材18の長さを変化させるための調整部18Aと、この小孔17を通過する部分のコード部材18の長さを保持するためのコードアジャスタ19とを備えており、調整部18Aを引っ張って、小孔17を通過する部分のコード部材18の長さを短くして被覆部材12の外周部を縮径することで、被覆部材12の外周部をすぼめるようになっている。
【0030】
第2の巾着20は、被覆部材12の中央部に形成された開口孔14の周囲に形成され周方向に配置された複数の小孔21と、この小孔21を通り被覆部材12の表側と裏側で往復する環状のコード部材22と、小孔21を通過するコード部材22の長さを変化させるための調整部22Aと、この小孔21を通過する部分のコード部材22の長さを保持するためのコードアジャスタ23とを備えており、調整部22Aを引っ張って、小孔21を通過する部分のコード部材22の長さを短くして被覆部材12の外周部を縮径することで、被覆部材12の開口部をすぼめるようになっている。
【0031】
巾着16、20については、被覆部材12の外周部、開口孔14の周囲に形成された複数の小孔17、21を通じて環状のコード部材18、22が被覆部材12の表側と裏側で往復する場合について説明したが、被覆部材12の外周部、開口孔14の周囲にコード部材18、22を環状に収納可能な収納筒を延在させて巾着16、20を構成してもよい。
【0032】
以下に、このジャケット10の使用方法について説明する。
まず、呼吸用温湿度交換器2の患者側プラグ2Aを開口孔14に挿入し、患者側プラグ2Aの気管内チューブ5を挿入する。
次に、第2の巾着20の調整部22Aを引っ張って、小孔21を通過する部分のコード部材22の長さを短くして被覆部材12の外周部を縮径することで、被覆部材12の開口部をすぼめて、患者側接続部Kに固定する。
【0033】
次いで、呼吸回路7のコネクタ7Aに呼吸回路側プラグ2Bを挿入し、被覆部材12を変形させて、呼吸用温湿度交換器2のハウジング3を覆うように被覆部材12の外周部をすぼめ、外周部が呼吸回路側接続部Lに固定可能とする。
引き続き、第1の巾着16の調整部18Aを引っ張って、小孔17を通過する部分のコード部材18の長さを短くして被覆部材12の外周部を縮径することで、被覆部材12の外周部をすぼめて、接続される呼吸回路側接続部Lに固定して、図3に示したように構成する。
【0034】
なお、開口孔14に呼吸回路側接続部Lを固定し、外周側で患者側接続部Kを固定してもよく、また、気管内チューブ5、呼吸回路7のコネクタ7Aを接続するタイミングは、固定に支障がない範囲で任意である。
図3において、実線で示したジャケット10は、患者側接続部K及び呼吸回路側接続部Lがともに患者側プラグ2A、及び呼吸回路側プラグ2Bのそれぞれの基端部側とされた場合を、2点鎖線で示したジャケット10は、患者側接続部K及び呼吸回路側接続部Lがともに、患者側コネクタ5A、呼吸回路側コネクタ7A近傍の場合の一例を示したものであり、患者側接続部K及び呼吸回路側接続部Lにおけるそれぞれの固定部は、この発明の趣旨に沿って概ねこれらの範囲で任意に設定することが可能である。
【0035】
第1の実施の形態に係るジャケット10によれば、中央部に呼吸用温湿度交換器2のプラグ2A又は2Bを通すための開口孔14が形成されたシート状の被覆部材12を備え、被覆部材12の外周部及び開口孔14の周囲には、患者側接続部K及び呼吸回路側接続部Lに固定するために、第1の巾着16と第2の巾着20が設けられているため、これら巾着16、20のコード部材18、22を引張って巾着をすぼめることで、被覆部材12を呼吸用温湿度交換器2に容易に固定することができる。
また、被覆部材12が2重構造12aとされているので、呼吸用温湿度交換器2と被覆部材12の外表面との間に一定の間隙を確実に保持して放熱を抑制することができる。
シート状であるため、収納性が高く、取扱いが容易である。
また、被覆部材12を透明とした場合、内部を容易に観察することができる。
【0036】
図4は、この発明の第2の実施の形態を示すものである。
この実施の形態が、前述した第1の実施形態と異なる点は、開口孔14に第2の巾着20に代えて、呼吸用温湿度交換器2の患者側プラグ2A又は呼吸回路側プラグ2Bを固定するための固定リング25を設けた点である。
他は、上記第1の実施の形態と同様である。なお、上記の実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0037】
固定リング25は、図4(b)の断面図に示すとおりであり、外側リング25Aと、内側リング25Bとを備え、開口孔14において、外側リング25Aと内側リング25Bの間に被覆部材12を挟み込んだ状態で外側リング25Aに内側リング25Bを嵌挿させることで、被覆部材12の開口孔14に固定されている。
また、内側リング25Bには、軸線に沿って呼吸器側コネクタ7Aの外周を挿入して固定するためのテーパ25Tが形成されている。
【0038】
また、固定リング25には、ジャケット10で呼吸用温湿度交換器2を覆ったときに、呼吸用温湿度交換器2とジャケット10の間に形成される空間に、温度調整用の流体(例えば、加温された空気や、その他のガス等)を導入するための導入口25Hが被覆部材12を貫通して形成されている。
この第2の実施の形態のジャケット10においては、固定リング25のテーパ25Tに呼吸器側コネクタ7Aを挿入し、その後、呼吸器側コネクタ7Aの内周に形成されたテーパに呼吸回路側プラグ2Bの外周に形成されたテーパを挿入する。
その後、被覆部材12で呼吸用温湿度交換器2を覆うとともに、第1の巾着16によって、患者側接続部Kを固定して、図5に示すように構成する。
【0039】
第2の実施の形態に係るジャケット10によれば、開口孔14に患者側プラグ2A又は呼吸回路側プラグ2Bの一方を挿入状態で固定するための固定リング25が設けられているので、ジャケット10をプラグ2A又は2Bに、容易かつ確実に固定でき、ジャケット10内の空気を外気と容易に遮断することができる。
また、固定リング25に温度調整用の流体を導入するための導入口が設けられているので、温度調整用の流体をジャケット10内に導入して、反対側の巾着部16の隙間から流出させることによって呼吸用温湿度交換器2を所望の温度に調整することができる。
【0040】
この実施の形態においては、固定リング25が、呼吸器側コネクタ7Aを固定する場合について説明したが、固定リング25は患者側コネクタ5Aを固定させてもよく、また、テーパ25Tは、呼吸用温湿度交換器2の患者側プラグ2A又は呼吸回路側プラグ2Bを挿入させるとともに、外側リング25Aの外周を気管内チューブ5又は呼吸回路7のコネクタ7Aに形成されたテーパに挿入して固定する構造としてもよい。
また、上記の場合テーパ25Tのテーパの向きは、挿入されるプラグ又はコネクタの形状に対応する種々の形状、テーパ、向きに対応させることができるのはいうまでもない。
【0041】
図6は、呼吸用温湿度交換器2の温度調整構造1に用いる第3の実施形態に係るジャケット30を示す図である。
ジャケット30は、筒状被覆部材32を備え、筒状被覆部材32は、厚さが10〜200μmの変形自在とされる、例えばポリエチレン製シートを筒状に形成したものであり、筒状被覆部材32の胴部32Aは、呼吸用温湿度交換器2のハウジング3がジャケット30内に配置されたときに、ハウジング3と筒状被覆部材32との間に間隙が形成され、空間が形成されるように、内周がハウジング3よりもり大きく形成されている。
また、筒状被覆部材32には、両端に開口端部33A、33Bが形成されている。
【0042】
また、筒状被覆部材32は、2枚のシートから構成される2重構造32Bとされ、胴部32Aに空気が封入、保持されるようになっており、ジャケット30の裏表間の熱伝導が抑制されるようになっている。
2重構造としては、例えば、同じ大きさの2枚のシートを重ね合わせて開口端部33A、33Bよりも中央よりの位置を接着又は溶着して2重構造の内部を気密にされている。
なお、被覆部材12は、内部が観察容易である点で透明であることが好適である。
【0043】
筒状被覆部材32の開口端部33Aには、開口端部33Aを縮径して患者側接続部Kに固定するための巾着35が設けられており、巾着35は、開口端部33Aの周方向に延在して形成された収納筒36と、収納筒36に収納されることで開口端部33Aの周方向に保持されるコード37と、コードアジャスタ38とを備えており、コード37の調整部37Aを引っ張って開口端部33Aを縮径することで患者側接続部Kに固定自在とされている。
【0044】
また、開口端部33Bには、開口端部33Bを縮径して呼吸回路側接続部Lに固定するための弾性収縮部材40が設けられており、開口端部33Bの周方向に延在して形成された収納筒41と、収納筒41に収納されることで開口端部33Bの周方向に配置される、例えば輪ゴム等の環状弾性部材42とを備えており、環状弾性部材42は、環径が収縮する方向に付勢され、開口端部33Bを縮径して呼吸回路側接続部Lに固定自在とされている。
【0045】
以下に、このジャケット30の使用方法について説明する。
まず、呼吸回路7のコネクタ7Aに呼吸回路側プラグ2Bを挿入し、開口端部33Bを押し広げて開口端部33Bを拡径して、呼吸用温湿度交換器2の軸線を筒状被覆部材32の軸線に沿わせるようにして、呼吸用温湿度交換器2を開口端部33Bから筒状被覆部材32の内部に収納する。
呼吸回路側接続部Lに固定可能となったら、弾性収縮部材40を押し広げるのを止めて、開口端部33Bを呼吸回路側接続部Lに固定する。
【0046】
次に、患者側プラグ2Aに気管内チューブ5を挿入するとともに、患者側接続部Kと開口端部33Aの位置を合わせる。
次いで、巾着35の調整部37Aを引っ張って、開口端部33Aを縮径することで、筒状被覆部材32の開口端部33Aをすぼめて患者側接続部Kに固定して図7に示したように構成する。
【0047】
第3の実施の形態に係るジャケット30によれば、筒状被覆部材32から構成され、胴部32Aが呼吸用温湿度交換器2のハウジング3より大きく形成されているので、呼吸用温湿度交換器2を収納し易い。また、筒状被覆部材32が2重構造32Bとされており、呼吸用温湿度交換器2と筒状被覆部材32との間に確実に間隙を設けて空間を形成させ易い。
【0048】
また、開口端部33Aに開口端部33Aを縮径するための巾着35が設けられているので、呼吸用温湿度交換器2を患者側接続部K及び呼吸回路側接続部に容易に固定することができる。
また、開口端部33Bに開口端部33Bを縮径するための弾性収縮部材40が設けられているので、呼吸用温湿度交換器2を呼吸回路側接続部Lに容易に固定することができる。
【0049】
なお、上記実施の形態においては、開口端部33Aに巾着35が設けられ、開口端部33Bに弾性収縮部材40が設けられる場合について説明したが、それぞれの開口端部33A、33Bに巾着と弾性収縮部材のいずれを設けるかについては任意で定めることができる。
【0050】
図8は、呼吸用温湿度交換器2の温度調整構造1に用いる第4の実施形態に係るジャケット50を示す図である。
ジャケット50は、呼吸用温湿度交換器2のハウジング3が収納自在とされるように、ハウジング3よりも大きなサイズに成形された被覆部材52と、患者側プラグ2Aを挿入状態で固定するための固定リング55と、呼吸回路側プラグ2Bを挿入状態で固定するための固定リング57とを備えている。
【0051】
被覆部材52は、例えば、厚さ10〜200μmのポリエチレン製シートを成形した変形自在とされるものであり、被覆部材52の胴部52Aには、呼吸用温湿度交換器2を出し入れするための開口部58が形成され、かつ開口部58を閉塞するためのファスナー又は面ファスナー等(閉塞手段)59が設けられている。
また、被覆部材52は、呼吸用温湿度交換器2のハウジング3がジャケット50の内部に配置されたときに、ハウジング3と被覆部材52との間に間隙が形成され、空間が形成されるように、内周がハウジング3よりもり大きく成形され、また、2重構造52Bにより空気を保持することで保温性が向上されている。
【0052】
固定リング55、57は、前述の固定リング25と同様に構成されており、被覆部材52の両端に配置されている。
ジャケット50は、呼吸用温湿度交換器2が被覆部材52の内部に収納された状態で、呼吸用温湿度交換器2とジャケット50との間には間隙ができて、空間が形成されるようになっている。
なお、被覆部材52は、例えば、厚さ10〜200μmのポリエチレン等で製作して形状を保持し易くしてもよい。
【0053】
以下に、このジャケット50の使用方法について説明する。
まず、ジャケット50の閉塞手段59を解除して開口部58を押し広げ、開口部58から呼吸用温湿度交換器2を入れて被覆部材52の内部に収納する。
次に、呼吸器側コネクタ7Aを固定リング57に挿入して固定し、患者側プラグ2Aを固定リング55に、呼吸回路側プラグ2Bを呼吸器側コネクタ7Aに挿入することで呼吸用温湿度交換器2をジャケット50に固定し、その後、患者側プラグ2Aに気管内チューブ5を挿入する。
次いで、閉塞手段59を閉塞して、開口部58を閉じることで、ジャケット50を気密にして、温度調整構造1を構成する。
【0054】
第4の実施の形態に係るジャケット50によれば、被覆部材52が呼吸用温湿度交換器2のハウジング3よりも大きなサイズに成形され、胴部52Aに呼吸用温湿度交換器2を出し入れするための開口部58が形成されているので、呼吸用温湿度交換器2を容易に出し入れすることが可能である。
【0055】
また、被覆部材52には、患者側プラグ2A及び呼吸回路側プラグ2Bを挿入状態で固定するための固定リング55、57が設けられているので、呼吸用温湿度交換器2の固定を容易かつ確実に行なうことが可能である。
また、被覆部材52が2重構造52Bとされているので、熱の出入りが抑制され、ジャケット内の温度を維持し易い。
また、固定リング55、57に温度調整用の流体を導入、排出するための導入口を設けることもできる。
また、被覆部材52の保形性を向上させて、呼吸用温湿度交換器2と被覆部材52の間の間隙が確実に確保されるようにしてもよい。
また、被覆部材52を透明として、内部を観察し易くしてもよい。
【0056】
上記実施の形態の呼吸用温湿度交換器2の保温構造及びジャケット10、30、50は、外気の低温又は高温に対してジャケット内の温度を維持する概念である。
また、上記第1から第4の実施の形態において、被覆部材12、32、52が2重構造である場合について説明したが、被覆部材12、32、52を1重構造とすることも可能である。
また、温度調整用の流体の導入口については、設けても設けなくてもよいものであり、また、導入口の形態、位置は任意に設定することが可能であり、被覆部材12、32、52の本体に導入口を配置することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る呼吸用温湿度交換器の温度調整構造を示す図である。
【図2】本発明に係る第1の実施の形態のジャケットを示す図である。
【図3】本発明に係る第1の実施の形態のジャケットを用いた呼吸用温湿度交換器の温度調整構造を示す図である。
【図4】本発明に係る第2の実施の形態を示す図であり、(a)は、ジャケットを、(b)は、固定リングの一例を示す断面図である。
【図5】本発明に係る第2の実施の形態のジャケットを用いた呼吸用温湿度交換器の温度調整構造を示す図である。
【図6】本発明に係る第3の実施の形態のジャケットを示す図である。
【図7】本発明に係る第3の実施の形態のジャケットを用いた呼吸用温湿度交換器の温度調整構造を示す図である。
【図8】本発明に係る第4の実施の形態のジャケットを示す図である。
【図9】本発明に係る第4の実施の形態のジャケットを用いた呼吸用温湿度交換器の温度調整構造を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 温度調整構造
1A、10、30、50 ジャケット
2 呼吸用温湿度交換器
3 ハウジング
2A 患者側プラグ
2B 呼吸回路側プラグ
12、32、52 被覆部材
14、33A、33B 開口端部
25、55、57 固定リング
16、20、35 巾着手段
40 弾性収縮部材
58 開口部
59 閉塞手段
K 患者側接続部
L 呼吸回路側接続部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に湿熱蓄積体が設けられ、前記ハウジングに気管内チューブ又は気管切開チューブに接続自在される患者側プラグと、呼吸回路に接続自在にされる呼吸回路側プラグとを備えた呼吸用温湿度交換器の温度調整構造であって、
前記ハウジングを気密に被覆するとともに、
前記気管内チューブ又は気管切開チューブと前記患者側プラグとが接続される患者側接続部、及び前記呼吸回路と呼吸回路側プラグとが接続される呼吸回路側接続部で固定され、
前記ハウジングの周囲に外気と遮断された空間を形成するジャケットを備えることを特徴とする呼吸用温湿度交換器の温度調整構造。
【請求項2】
請求項1記載の温度調整構造に用いられるジャケットであって、
中央部にいずれかの前記プラグが通るための開口孔が形成されたシート状の被覆部材を備え、
前記被覆部材の外周部及び前記開口孔の周囲には、すぼめることで、前記患者側接続部及び前記呼吸回路側接続部に固定するための巾着が設けられていることを特徴とするジャケット。
【請求項3】
請求項1記載の温度調整構造に用いられるジャケットであって、
中央部にいずれかの前記プラグが通るための開口孔が形成されたシート状の被覆部材を備え、
前記開口孔には前記患者側又は前記呼吸回路側のいずれか一方のプラグを挿入状態で固定するための固定リングが設けられるとともに、
すぼめることにより、前記患者側又は前記呼吸回路側のいずれか他方の接続部に固定するための巾着が設けられていることを特徴とするジャケット。
【請求項4】
請求項1記載の温度調整構造に用いられるジャケットであって、
筒状被覆部材を備え、前記筒状被覆部材の胴部は前記ハウジングより大きく形成されるとともに、
前記筒状被覆部材の開口端部には、前記開口端部を縮径して前記患者側接続部及び前記呼吸回路側接続部に固定するための弾性収縮部材又は巾着が設けられていることを特徴とするジャケット。
【請求項5】
請求項1記載の温度調整構造に用いられるジャケットであって、
前記ハウジングが収納自在に前記ハウジングよりも大きなサイズに成形された被覆部材を備え、
前記被覆部材には、患者側プラグ及び前記呼吸回路側プラグを挿入状態で固定するための固定リングが設けられるとともに、
胴部には前記呼吸用温湿度交換器を出し入れするための開口部が形成され、かつ前記開口部を閉塞するための閉塞手段が設けられていることを特徴とするジャケット。
【請求項6】
請求項2から請求項5のいずれかに記載のジャケットであって、
前記被覆部材は、2重構造になっていることを特徴とするジャケット。
【請求項7】
請求項2から請求項6に記載のジャケットであって、
前記被覆部材で被覆したときにできる空間に、温度調整用の流体を導入するための導入口を備えていることを特徴とするジャケット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−6067(P2008−6067A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179478(P2006−179478)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000200677)泉工医科工業株式会社 (56)