説明

呼気ガス測定装置および呼気ガス測定方法

【課題】ガスセンサーの検知面の結露を防止して呼気ガスの連続測定を可能にする呼気ガス測定装置および呼気ガス測定方法を提供する。
【解決手段】呼気50を吹き込む呼気導入口21と、呼気導入口21と連通し、吹き込まれた呼気50が流通する呼気流路20と、呼気流路20に検知面32が露出して設けられ呼気50に含まれる水溶性の所定のガス成分を検知するガスセンサー30と、検知面32を加熱気体により風乾する乾燥手段40と、を備える呼気ガス測定装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼気に含まれる所定のガス成分をガスセンサーで検知する呼気ガス測定装置および呼気ガス測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術に関しては、これまで様々な発明が提案されている。下記特許文献1には、被験者の呼気を取り込むチューブをヒータで加熱し、チューブの内壁に呼気中の水分が凝縮することを防止することのできる呼気採取装置の発明が記載されている。また、関連する技術として、下記特許文献2には、呼吸管の側面を温風で加温することにより管内の結露を防止する呼吸回路の発明が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−284488号公報
【特許文献2】特開2003−250894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の呼気ガス測定装置では、呼気の湿度によりガスセンサーの検知面が結露すると、以降の測定において誤検知が生じるため、連続測定が困難であるという問題があった。すなわち、検知面に結露した液滴に第一測定時の呼気ガス中のガス成分が溶解すると、次の第二測定時の呼気の熱によって当該ガス成分が揮発してガスセンサーにより検知される恐れがある。このため、第二測定時の呼気に含まれる当該ガス成分の濃度を正しく検知することができなくなる。
【0005】
これに対し、特許文献1に記載の装置では、呼気流路内の結露は防止されるものの、採取・測定モードをおこなうたびにパージモードを設ける必要があるため、連続測定には適していない。また、特許文献2に記載の呼吸回路の場合、呼吸管内の結露は防止されるものの、その下流にガスセンサーが設置された場合には、ガスセンサーの検知面に生じる結露を解消することはできない。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、ガスセンサーの検知面の結露を防止して呼気ガスの連続測定を可能にする呼気ガス測定装置および呼気ガス測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の呼気ガス測定装置は、呼気を吹き込む呼気導入口と、
前記呼気導入口と連通し、吹き込まれた前記呼気が流通する呼気流路と、
前記呼気流路に検知面が露出して設けられ、該検知面と接触した前記呼気に含まれる水溶性の所定のガス成分を検知するガスセンサーと、
前記ガス成分を検知している前記検知面を風乾する乾燥手段と、を備える。
【0008】
また、本発明の呼気ガス測定装置においては、より具体的な態様として、前記乾燥手段が、
外気を取り込むとともに前記外気を前記検知面に対して吹き付ける送風部と、
吹き付けられる前記外気を加熱する加熱部と、を有してもよい。
【0009】
また、本発明の呼気ガス測定装置においては、より具体的な態様として、前記呼気流路が、前記呼気導入口より吹き込まれた前記呼気を外部に排出する主流路と、前記主流路より分岐して設けられ前記呼気の一部を前記検知面に導入する支流路と、を有するとともに、
前記主流路を加熱する加熱手段が、前記主流路のうち少なくとも前記支流路の分岐部よりも上流位置に設けられていてもよい。
【0010】
また、本発明の呼気ガス測定装置においては、より具体的な態様として、前記検知面が、前記支流路に設けられたキャビティ部の内部に設けられていてもよい。
【0011】
また、本発明の呼気ガス測定装置においては、より具体的な態様として、前記乾燥手段が、
前記呼気流路における前記検知面の上流位置を加熱する加熱部と、
前記加熱部により加熱されて前記検知面に至った前記呼気を排出する送風部と、を有してもよい。
【0012】
また、本発明の呼気ガス測定装置においては、より具体的な態様として、前記分岐部が、前記主流路の内部に向かって突出して形成されていてもよい。
【0013】
また本発明の呼気ガス測定方法は、ガスセンサーの検知面に接触した呼気に含まれる水溶性の所定のガス成分を前記ガスセンサーにて検知する検知工程と、
前記検知面を風乾する乾燥工程と、
を同時におこなうことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の呼気ガス測定方法においては、より具体的な態様として、前記乾燥工程において、前記呼気とは異なる気体を加熱して前記検知面に吹き付けてもよい。
【0015】
また、本発明の呼気ガス測定方法においては、より具体的な態様として、前記検知面に接触する前記呼気の流量よりも、前記異なる気体の吹き付け流量が少量であってもよい。
【0016】
上記発明において、ガスセンサーがガス成分を検知するとは、ガスセンサーにより当該ガス成分の濃度を定量的に測定する場合のほか、当該ガス成分が所定の閾値を超える濃度であるか否かを判定する場合を含む。
また、上記発明において、検知面を風乾するとは、検知面に付着した液体を加熱して除去する場合のほか、熱伝達により検知面を結露点以上に保温して結露を防止する場合とを含む。
また、ガス成分を検知している検知面を風乾するとは、少なくともガスセンサーにてガス成分を検知している最中に検知面を風乾することができることを意味し、ガス成分の検知中以外のタイミングにおいても検知面の風乾が可能であることを排除するものではない。
【0017】
本発明の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要もなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の呼気ガス測定装置および呼気ガス測定方法によれば、ガス成分を検知している検知面が風乾されることから、呼気の湿度により検知面が結露することがなく、また、一人または複数人の被験者の呼気を連続的に測定した場合も、先の呼気ガス中の水溶性のガス成分が検知面の近傍に残存することがなく、以降の測定における誤検知が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0020】
<第一実施形態>
図1は、本発明の第一の実施形態にかかる呼気ガス測定装置10の内部構成の一例を示す模式図である。
【0021】
はじめに、本実施形態の呼気ガス測定装置10の概要について説明する。
呼気ガス測定装置10は、呼気50を吹き込む呼気導入口21と、呼気導入口21と連通し、吹き込まれた呼気50が流通する呼気流路20と、呼気流路20に検知面32が露出して設けられ、検知面32と接触した呼気50に含まれる水溶性の所定のガス成分を検知するガスセンサー30と、ガス成分を検知している検知面32を風乾する乾燥手段40と、を備えている。
【0022】
次に、本実施形態の呼気ガス測定装置10について詳細に説明する。
呼気ガス測定装置10は、金属または樹脂などの硬質材料からなる筐体12と、筐体12の内部に形成された呼気流路20と、呼気流路20に対して検知面32が露出して設けられたガスセンサー30とを備えている。
また、筐体12の内部には、呼気ガス測定装置10の全体を制御する制御部60と、呼気ガス測定装置10に電力を供給する電源部62と、制御部60および電源部62が搭載される基板64とが収容されている。
【0023】
本実施形態の呼気ガス測定装置10では、電源部62として乾電池を用いる。これにより、筐体12は測定者が手で保持可能であり、呼気ガス測定装置10は全体として可搬性を有している。
【0024】
制御部60は、コンピュータプログラムを読み取って対応するデータ処理を実行できるように、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)またはI/F(Interface)ユニット等の汎用デバイスで構築されたハードウェアや、専用の論理回路の組み合わせよりなる。
【0025】
基板64には、ガスセンサー30で検知されたガス成分が、予め制御部60に設定された所定の閾値濃度以上である場合に警報を発するアラーム66が搭載されている。また、基板64には、ガスセンサー30による呼気50の検知動作のオンまたはオフを切り換える電源スイッチ68が筐体12の外部に設けられている。
【0026】
制御部60は、ガスセンサー30、電源部62、アラーム66および電源スイッチ68と、図示しない電源線または信号線により互いに接続されており、電力の供給および信号の授受がなされる。
【0027】
本実施形態のガスセンサー30には、いわゆる半導体ガスセンサーを用いることができる。半導体ガスセンサーは種々が提供されているが、酸素などの吸着ガスのイオンを予め吸着した酸化スズ(SnO)や酸化亜鉛(ZnO)などの多孔質体からなる半導体素子を検知面32に備えるものが広く知られている。そして、検知面32に所定のガス成分(検知ガス)が接触することで、吸着ガスのイオンが形成していた空乏層が一時的に消失して半導体素子の電気抵抗が下がる。ガスセンサー30は、かかる電気抵抗の変化を測定することにより検知ガスの濃度が所定以上であるか否かを知ることができる。
なお、多孔質体の材質や、これが含有する不純物の成分を変化させることにより、呼気50中の特定のガス成分を検知対象とすることができる。
そして、検知ガスを含まないガスによって検知面32をパージすることにより、電気抵抗は初期状態に回復する。
【0028】
したがって、呼気50に検知ガスが所定以上の濃度で含まれていた場合、かかる呼気50を呼気導入口21より吹き込んでいる間は、アラーム66が動作して警報が発せられる。そして、検知ガスの濃度が所定未満である他の気体(呼気50)を吹き込んだ場合は、アラーム66の動作は停止する。
なお、本実施形態の呼気ガス測定装置10においては、アラーム66に代えて、またはアラーム66に加えて、検知ガスの濃度を示す表示出力部をガスセンサー30に接続して設けてもよい。
【0029】
なお、本実施形態の呼気ガス測定装置10で検知するガス成分としては、一例として、アルコール、メチルメルカプタン、エチレンおよびアンモニアを例示することができる。
【0030】
本実施形態の呼気ガス測定装置10は、乾燥手段40として、外気54を取り込むとともにこれを検知面32に対して吹き付ける送風部(ファン42)と、吹き付けられる外気54を加熱する加熱部(第一ヒータ44)と、を有している。
なお、図1および後述する図3では、ファン42の図示のため、第一ヒータ44は破線にて図示している。
【0031】
ファン42は呼気流路20の内部に設けられ、電源部62より供給された電力で回転駆動される。また、ファン42のオンまたはオフは、基板64および電源部62に電気的に接続された送風スイッチ70により切り換えられる。
第一ヒータ44は、ニクロム線などの電熱線であり、電源部62から供給される電力により外気54を加熱する。第一ヒータ44への通電のオンまたはオフは、ファン42に連動して切り換えられる。
したがって、本実施形態の呼気ガス測定装置10では、送風スイッチ70を押下することにより、呼気流路20に外気54が取り込まれるとともに、これが第一ヒータ44で加熱されて加熱気体となる。
そして、かかる加熱気体は、ファン42の回転によりガスセンサー30の検知面32に吹き付けられ、これを風乾する。
【0032】
本実施形態の呼気流路20は、呼気導入口21より吹き込まれた呼気50を外部に排出する主流路22と、主流路22より分岐して設けられ呼気50の一部を検知面32に導入する支流路23とからなる。
そして、本実施形態の呼気ガス測定装置10では、主流路22を加熱する加熱手段(第二ヒータ46)が、主流路22のうち少なくとも支流路23の分岐部24よりも上流位置に設けられている。
なお、本実施形態では、呼気導入口21に近い側を上流側と呼称し、その反対側を下流側と呼称する。
【0033】
本実施形態の主流路22は、呼気導入口21から排気口28に至る直管状に形成されている。そして、主流路22に対する支管である支流路23が、主流路22の中間位置より交差方向に分岐して設けられている。
呼気導入口21に吹き込まれた呼気50は、大部分が排気口28より排気52として排出され、一部が支流路23に導入されてガス成分が検知される。
【0034】
分岐部24は、主流路22の内部に向かって突出して形成されている。
すなわち、主流路22の内部には分岐部24として段部27が突出して設けられている。また、分岐部24の先端にはフランジ部25が内向きに形成されて呼気流路20が縮径している。これにより、主流路22の内部で呼気50が徐冷されて唾の結露が生じた場合も、かかる唾が分岐部24から支流路23に流入することを防止する。
【0035】
ガスセンサー30の検知面32は、支流路23の内部に露出して設けられている。そして、ファン42および第一ヒータ44は、支流路23の内部、かつ検知面32よりも下流側に設けられている。
支流路23の最下流位置には、通孔29が設けられて筐体12の外部と連通している。そして、ファン42を駆動することにより、通孔29から外気54が取り込まれて第一ヒータ44により加熱される。
ここで、外気とは呼気50以外の気体をいい、筐体12の外部雰囲気のほか、筐体12内に予め貯留されていた貯留気体を呼気流路20に取り込んで用いてもよい。
【0036】
第一ヒータ44は、検知面32とファン42との間、すなわちファン42の上流側に設けられてもよく、またはファン42と通孔29との間、すなわちファン42の下流側に設けられてもよい。または、図1に示すように、ファン42を包含するようにその上流側から下流側に至るまで支流路23に巻回されてもよい。
【0037】
第二ヒータ46はニクロム線などの電熱線であり、電源部62から供給される電力により主流路22を加熱する。なお、図1に示す本実施形態の呼気ガス測定装置10では、主流路22における分岐部24よりも上流側と下流側の両方に対して第二ヒータ46が巻回されている。
第二ヒータ46によって主流路22を加熱することにより、呼気導入口21から主流路22に吹き込まれた呼気50が加温される。第二ヒータ46による主流路22の加熱温度は特に限定されないが、内部を流通する呼気50が結露温度以上となるよう40〜50℃程度とすることが好ましい。
【0038】
また、第二ヒータ46への通電は、送風スイッチ70の押下によってオンまたはオフが切り換えられる。
したがって、送風スイッチ70を押下することにより、第一ヒータ44および第二ヒータ46が通電されるとともに、ファン42が回転して呼気流路20の内部に外気54が取り込まれる。
【0039】
第一ヒータ44による外気54の加熱温度および流量は特に限定されないが、呼気50の結露温度以上、具体的には、38〜45℃程度に検知面32を保つ温度および流量であることが好ましい。なお、外気54は、検知面32を加温して結露を防止すれば足りることから、本実施形態の場合、外気54の流量は、分岐部24を通じて主流路22から支流路23に導入される呼気50の流量よりも少なく設定されている。
これにより、検知すべき所定のガス成分を含む呼気50と検知面32との接触が不十分となることはない。
【0040】
以下、呼気50を吹き込みながら送風スイッチ70を押下した場合と、呼気50を吹き込まずに送風スイッチ70を押下した場合の呼気ガス測定装置10の動作について説明する。
【0041】
まず、呼気50を吹き込みながら送風スイッチ70を押下した場合について説明する。
呼気50は第二ヒータ46に加熱されながら呼気導入口21より主流路22を通過して分岐部24に至る。
第二ヒータ46の加熱により、分岐部24においては呼気50の結露は生じない。
【0042】
分岐部24では、一部の呼気50が支流路23に導入され、その他の呼気50は排気口28より筐体12の外部に排気される。
支流路23の内部には、通孔29から取り込まれて第一ヒータ44に加熱された外気54が検知面32に対して下流側から上流側に向けて供給されている。
【0043】
支流路23に導入された呼気50は外気54と混合された状態で検知面32と接触する。
支流路23の内部は、分岐部24から流入する呼気50と、通孔29から流入する外気54とが混合されたキャビティ状態となり、呼気50のガス成分と検知面32とは良好に接触する。
このとき、第一ヒータ44で加熱された外気54と、第二ヒータ46で加熱された呼気50からの熱伝達により、検知面32には結露が生じない。
【0044】
ガスセンサー30では、検知面32における電気抵抗の変化量を測定して、これが所定以上である場合は、呼気50に含まれる所定のガス成分が閾値濃度以上であると判定する。
検知面32と接触した呼気50は、分岐部24から主流路22に排出され、または通孔29を通じて外部に排出される。
【0045】
次に、呼気50を吹き込むことなく送風スイッチ70を押した場合について説明する。
ファン42の動作により通孔29より取り込まれた外気54は、第一ヒータ44で加熱されて検知面32に吹き付けられる。これにより、仮に検知面32または支流路23の内部壁面に結露が生じて液滴が付着していた場合も、かかる液滴は気化するとともに外気54によって支流路23から主流路22に吐き出される。
【0046】
一方、主流路22は第二ヒータ46により結露点以上に加熱されている。このため、支流路23から分岐部24を通じて主流路22に吐き出された気化ガスは、再度結露することなく呼気導入口21および排気口28から外部に排出される。
【0047】
このように、本実施形態の呼気ガス測定装置10によれば、水溶性の所定のガス成分を検知するガスセンサー30の検知面32を風乾する乾燥手段40を有することから、呼気50を吹き込んだ場合も検知面32およびその近傍に結露が生じない。このため、各回の検知動作の間に検知面32のパージ動作を別途設ける必要がなく、連続測定が可能となる。
また、仮に検知面32やその近傍に結露が生じて液滴が付着したとしても、加熱気体で液滴を風乾することにより、これに溶解した水溶性の検知ガスを除去することができる。すなわち、液滴の除去を自然乾燥で行った場合には、液滴に溶解した検知ガスを完全に除去することが困難であるところ、本実施形態のように加熱気体を流動させることにより、液滴およびこれに溶解した検知ガスを完全に除去することができる。
【0048】
また、ガスセンサー30に対して発熱線を直接取り付けた場合には、検知面32の温度が過剰となってガス成分の検知精度が低下する恐れがあるところ、本実施形態のように加熱気体からの熱伝達により検知面32を加温することにより検知面32の過熱が防止される。
【0049】
また、呼気ガス測定装置10は、乾燥手段40として、外気54を取り込むとともにこれを検知面32に対して吹き付けるファン42と、吹き付けられる外気54を加熱する第一ヒータ44と、を有している。これにより、検知面32は呼気50とは異なる外気54によって加熱されることとなるため、呼気50の検知動作中であるか否かにかかわらず検知面32を風乾することが可能である。
【0050】
また、加熱ガスを用いずにガスセンサー30を単に加熱した場合、加熱停止時には検知面32の表面や呼気流路20の内部に残存する呼気50が冷却されて結露が生じる恐れがある。一方、第一ヒータ44を設けずにファン42を動作させたとしても、検知面32を加温することはできないため、検知面32の表面や呼気流路20の内部に既に結露している場合は、かかる液滴を除去することができない。これに対し、本実施形態によれば、検知面32の表面や呼気流路20の内部への結露の発生を防止するとともに、発生した結露の除去が可能である。
【0051】
さらに、ファン42により外気54を検知面32に吹き付けることから、所定のガス成分と接触した検知面32が迅速にリフレッシュされる。したがって、呼気50の流入が停止または不十分となった場合には、ガスセンサー30によるガス成分の検知が終了し、アラーム66が停止する。
【0052】
また、呼気ガス測定装置10は、呼気流路20が主流路22と支流路23とからなり、主流路22のうち少なくとも支流路23の分岐部24よりも上流位置に、主流路22を加熱する第二ヒータ46が設けられている。これにより、主流路22より支流路23に導入される呼気50に結露が生じることが防止される。また、検知面32の表面や呼気流路20の内部に生じた液滴を外気54によって気化させてこれを除去するにあたり、主流路22の内部で再凝結することを防ぐことができる。
【0053】
また、本実施形態の呼気ガス測定装置10では、分岐部24が、主流路22の内部に向かって突出して形成されている。これにより、仮に主流路22の内部で呼気50に結露が生じた場合にも、これが支流路23に流入することが防がれる。また、検知面32の表面や支流路23の内部壁面の液滴を外気54により風乾した場合に、気化した液滴が分岐部24を超えて主流路22の内部で再凝結したとしても、かかる液滴が再び支流路23に流れ込むことがない。
【0054】
<呼気ガス測定方法>
本実施形態による呼気ガス測定方法(本方法)について説明する。本方法は、図1に示す呼気ガス測定装置10を用いて行うことができる。
【0055】
本方法では、ガスセンサー30の検知面32に接触した呼気に含まれる水溶性の所定のガス成分をガスセンサー30にて検知する検知工程と、検知面32を風乾する乾燥工程と、を同時におこなう。
【0056】
すなわち、本方法では、呼気導入口21に呼気50を吹き込んで含有ガス成分を検知するとともに、加熱気体により検知面32における結露を防止する。
なお、本方法において、検知工程と乾燥工程が同時に行われるとは、両工程が重複して行われる瞬間を含むことを意味し、両工程の開始または終了が同時であることを必ずしも意味しない。
【0057】
本実施形態では、乾燥工程において、呼気50とは異なる気体(外気54)を加熱して検知面32に吹き付ける。
具体的には、図1に示すようにファン42の駆動により通孔29を通じて外気54を取り込み、これを第一ヒータ44で加熱して加熱気体を得る。
【0058】
ここで、本方法では、検知面32に接触する呼気50の流量よりも、外気54の吹き付け流量が少量である。これにより、呼気流路20を流通する呼気50と検知面32との接触を阻害せず、ガス成分の検知と検知面32の風乾とが両立される。
【0059】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
例えば、上記実施形態では、呼気50とは異なる気体(外気54)を呼気流路20に取り込み、これを加熱することにより検知面32を風乾するための加熱気体を得ているが、本発明はこれに限られない。
以下、第二実施形態において、呼気50自体を加熱気体に用いる態様について説明する。
【0060】
<第二実施形態>
図2は本実施形態にかかる呼気ガス測定装置10の内部構成の一例を示す模式図である。
【0061】
本実施形態の呼気ガス測定装置10は、ガス成分を検知している検知面32を風乾する乾燥手段40が、呼気流路20における検知面32の上流位置を加熱する加熱部(第二ヒータ46)と、第二ヒータ46により加熱されて検知面32に至った呼気50を排出する送風部(ファン42)とを組み合わせてなる。
【0062】
すなわち、本実施形態の呼気ガス測定装置10は、第一ヒータ44を備えておらず、また通孔29を通じて呼気50を排出する点で第一実施形態と相違する。そして、乾燥手段40としての第二ヒータ46で加熱された呼気50が、試料としてのみならず加熱気体として、ファン42により検知面32に導入される。
【0063】
呼気流路20は、呼気導入口21より吹き込まれた呼気50を外部に排出する主流路22と、主流路22より分岐して設けられ呼気50の一部を検知面32に導入する支流路23と、を有している。
そして、第二ヒータ46は、主流路22のうち少なくとも支流路23の分岐部よりも上流位置に設けられている。
【0064】
本実施形態の呼気ガス測定装置10において、呼気50を吹き込むとともに乾燥手段40を駆動した場合、第二ヒータ46で加熱された呼気50の一部は分岐部24より支流路23に取り込まれ、その他は排気52として排気口28より排気される。
支流路23に取り込まれた呼気50は、支流路23に露出した検知面32と接触してガス成分が検知された後、排気56として通孔29より排気される。
【0065】
このように、本実施形態の呼気ガス測定装置10では、第二ヒータ46により加熱されて検知面32に至った呼気50を送風部(ファン42)が排出することにより検知面32が風乾される。このため、呼気50を加熱気体として検知面32を乾燥させることができるため、検知面32に結露が生じることが防止される。
また、呼気50自体を加熱気体とする本実施形態の場合、検知面32の近傍において呼気50と外気54とが混合することがなく、検知面32とガス成分との接触が効率的に行われる。
【0066】
また、本実施形態の呼気ガス測定装置10を用いた場合も、検知面32に接触したガス成分をガスセンサー30にて検知する検知工程と、検知面32を加熱気体により風乾する乾燥工程とを同時に行う呼気ガス測定方法が実現する。
【0067】
そして、呼気50の吹き込みが終了した後にも乾燥手段40を続けて駆動することにより、呼気導入口21および排気口28から外気が取り込まれ、これがファン42で支流路23に吸引されて通孔29より排気される。かかる外気は、主流路22を流通する際に第二ヒータ46で加熱されて加熱気体となる。このため、本実施形態の呼気ガス測定装置10においても、主流路22には分岐部24の上流側と下流側に対して、ともに第二ヒータ46が巻回されている。
【0068】
これにより、呼気50の検知終了後に乾燥手段40を駆動することにより、検知面32の表面を含む支流路23や呼気流路20の内部が加熱気体により掃引されて、結露した液滴が加熱乾燥される。
【0069】
<第三実施形態>
図3は本実施形態にかかる呼気ガス測定装置10の内部構成の一例を示す模式図である。
本実施形態の呼気ガス測定装置10は、第二ヒータ46を備えていない点で第一実施形態と相違する。
【0070】
また、本実施形態では、ガスセンサー30の検知面32が、支流路23に設けられたキャビティ部(第一キャビティ部261)の内部に設けられている。
【0071】
すなわち、分岐部24の下流側に設けられた支流路23は二分岐しており、突き当たりの凹部にあたる第一キャビティ部261の内部に検知面32が露出して設けられている。
【0072】
ファン42は、検知面32とは異なる第二キャビティ部262に収容されている。
【0073】
そして、本実施形態の乾燥手段40は、外気54を取り込むとともにこれを検知面32に対して吹き付ける送風部(ファン42)と、吹き付けられる外気54を加熱する加熱部(第一ヒータ44)と、を有している。
【0074】
呼気導入口21より吹き込まれた呼気50は、分岐部24にて一部が支流路23に取り込まれると、第一キャビティ部261において外気54と混合される。これにより、加熱気体である外気54により検知面32の表面および支流路23の内部における結露が防止される。そして、第一キャビティ部261に導入された呼気50中のガス成分が、検知面32との十分な接触時間をもってガスセンサー30に検知される。
【0075】
本実施形態の呼気ガス測定装置10においても、分岐部24は主流路22の内部に向かって突出して形成されている。
これにより、主流路22を加熱する第二ヒータ46を備えていない本実施形態の呼気ガス測定装置10において、主流路22内で呼気50が結露した唾が分岐部24から支流路23に侵入することを防止する。
【0076】
分岐部24には、主流路22の内部に突出した段部27の先端にフランジ部25が設けられており、主流路22内で結露した唾が分岐部24から支流路23に侵入することをさらに防止している。
図3には、フランジ部25が内向きに形成された状態を示している。かかる構成により、結露した唾は、所定高さの段部27を乗り越えるとともに、所定径のフランジ部25を伝って初めて分岐部24の内径に至ることとなるため、粘性の高い唾が支流路23に侵入することが防止される。
【0077】
なお、フランジ部25は、段部27の周囲に外向きに形成してもよい。これにより、段部27を乗り越える唾に対する、いわゆる返しとしてフランジ部25が作用するため、結露した唾が支流路23に侵入することをさらに防止することができる。
【0078】
そして、結露した唾が支流路23に侵入することを防止するとともに、第一ヒータ44で加熱された外気54にて検知面32を風乾する本実施形態によれば、主流路22を加熱せずとも検知面32の表面や支流路23の内部における呼気50の結露が防止される。
また、分岐部24に段部27およびフランジ部25が形成された本実施形態の呼気ガス測定装置10においては、仮に分岐部24の内部に唾が侵入した場合も、支流路23および主流路22に加熱気体を流通させることにより、筐体12の分解を伴わずに唾を乾燥除去することができる。
【0079】
上記各実施形態は、さらに種々の変形、改良が可能である。
例えば、加熱気体にて加熱される検知面32の表面温度を測定する温度センサーをさらに設けてもよい。具体的には、温度センサーで測定された表面温度を示すデータを制御部60に取り込み、当該温度が所定の制御温度となるよう第一ヒータ44または第二ヒータ46の通電量をフィードバック制御してもよい。そして、かかる制御温度としては、ガスセンサー30の動作温度範囲内であって、呼気50の結露温度以上とするとよい。
【0080】
また、上記各実施形態では、支流路23の内部に検知面32およびファン42を設置する態様を例示したが、本発明はこれに限られず、呼気導入口21と排気口28を両端とする主流路22の内部に検知面32およびファン42を設置してもよい。
【0081】
また、送風部としては、上記各実施形態のようにファン42を用いる態様の他、ピストンやベローズなど進退駆動して内部のガスを送出する送風手段を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】第一の実施形態にかかる呼気ガス測定装置の内部構成の一例を示す模式図である。
【図2】第二の実施形態にかかる呼気ガス測定装置の内部構成の一例を示す模式図である。
【図3】第三の実施形態にかかる呼気ガス測定装置の内部構成の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0083】
10 呼気ガス測定装置
20 呼気流路
21 呼気導入口
22 主流路
23 支流路
24 分岐部
25 フランジ部
261 第一キャビティ部
262 第二キャビティ部
27 段部
28 排気口
29 通孔
30 ガスセンサー
32 検知面
40 乾燥手段
42 ファン
44 第一ヒータ
46 第二ヒータ
50 呼気
52,56 排気
54 外気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼気を吹き込む呼気導入口と、
前記呼気導入口と連通し、吹き込まれた前記呼気が流通する呼気流路と、
前記呼気流路に検知面が露出して設けられ、該検知面と接触した前記呼気に含まれる水溶性の所定のガス成分を検知するガスセンサーと、
前記ガス成分を検知している前記検知面を風乾する乾燥手段と、を備える呼気ガス測定装置。
【請求項2】
前記乾燥手段が、
外気を取り込むとともに前記外気を前記検知面に対して吹き付ける送風部と、
吹き付けられる前記外気を加熱する加熱部と、を有する請求項1に記載の呼気ガス測定装置。
【請求項3】
前記呼気流路が、前記呼気導入口より吹き込まれた前記呼気を外部に排出する主流路と、前記主流路より分岐して設けられ前記呼気の一部を前記検知面に導入する支流路と、を有するとともに、
前記主流路を加熱する加熱手段が、前記主流路のうち少なくとも前記支流路の分岐部よりも上流位置に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の呼気ガス測定装置。
【請求項4】
前記検知面が、前記支流路に設けられたキャビティ部の内部に設けられている請求項3に記載の呼気ガス測定装置。
【請求項5】
前記乾燥手段が、
前記呼気流路における前記検知面の上流位置を加熱する加熱部と、
前記加熱部により加熱されて前記検知面に至った前記呼気を排出する送風部と、を有する請求項1に記載の呼気ガス測定装置。
【請求項6】
前記分岐部が、前記主流路の内部に向かって突出して形成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の呼気ガス測定装置。
【請求項7】
ガスセンサーの検知面に接触した呼気に含まれる水溶性の所定のガス成分を前記ガスセンサーにて検知する検知工程と、
前記検知面を風乾する乾燥工程と、
を同時におこなうことを特徴とする呼気ガス測定方法。
【請求項8】
前記乾燥工程において、前記呼気とは異なる気体を加熱して前記検知面に吹き付けることを特徴とする請求項7に記載の呼気ガス測定方法。
【請求項9】
前記検知面に接触する前記呼気の流量よりも、前記異なる気体の吹き付け流量が少量であることを特徴とする請求項8に記載の呼気ガス測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−43915(P2010−43915A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207342(P2008−207342)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)
【Fターム(参考)】