品質制御装置およびその制御方法、品質制御プログラム、並びに該プログラムを記録した記録媒体
【課題】 トレーサビリティが困難な製造現場で、異なる工程で収集される各種データの対応付けを行う。
【解決手段】 品質制御装置10は、中間特性検査器5が計測した中間品の中間特性データと、最終特性検査器6が計測した完成品の最終特性データとを収集して記憶するデータ記憶部11と、記憶した最終特性データのデータ分布および最終特性検査器6に設定された最終特性規格値に基づいて、中間特性検査器5に設定する中間特性規格値を生成するとともに、生成した規格値を設定するように中間特性検査器5を制御する規格値生成部13とを備える。
【解決手段】 品質制御装置10は、中間特性検査器5が計測した中間品の中間特性データと、最終特性検査器6が計測した完成品の最終特性データとを収集して記憶するデータ記憶部11と、記憶した最終特性データのデータ分布および最終特性検査器6に設定された最終特性規格値に基づいて、中間特性検査器5に設定する中間特性規格値を生成するとともに、生成した規格値を設定するように中間特性検査器5を制御する規格値生成部13とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の品質を有する製品を製造するために、製造工程の制御を行う品質制御装置およびその制御方法、品質制御プログラム、並びに該プログラムを記録した記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、製品の品質を向上する取り組みが行われるとともに、各種の品質制御方法が提案されている。
【0003】
例えば、トレーサビリティを実現するために、製品の中間品や該中間品が載置される台座などに、バーコードなどの識別コードを付して管理する方法が提案されている。また、トレーサビリティを実現するために、各製造工程に投入される中間品の順番で中間品を識別する方法が提案されている。
【0004】
また、制御因子と製品特性との因果関係を完全に把握することにより、最適な製品特性を得るための制御因子を特定する方法が提案されている。また、制御因子の全ての状態を固定することにより、製品特性を維持する方法が提案されている(たとえば、特許文献2・3を参照。)。
【0005】
また、各製品特性の指標を設け、これらの指標から総合評価を行う方法が提案されている。また、製造の最終工程で製品特性の良否を判定し、不良品と判定した場合に、製造工程における制御パラメータを調整する方法が提案されている(たとえば、特許文献1を参照。)。
【特許文献1】特開平7−141005号公報(1995年6月2日公開)
【特許文献2】特開平6−110504号公報(1994年4月22日公開)
【特許文献3】特開平4−188301号公報(1992年7月6日公開)
【非特許文献1】田口玄一、吉澤正孝、「品質工学講座1/開発・設計段階の品質工学」、日本規格協会、1988年発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、識別コードを付して管理する方法の場合、製造コストが上昇するという問題がある。また、製造工程では不良品の抜取りや手直し、再投入が発生することが多い。このため、中間品の順番で中間品を識別する上記方法で中間品を正しく識別できるとは限らない。
【0007】
また、制御因子は多数存在するので、制御因子と製品特性との因果関係を完全に把握するには、多数の検証実験が必要となる。また、因果関係が複雑になればなるほど、完全な把握が困難である。また、制御因子の全ての状態を固定したとしても、観測できない因子の時間変動により、製品特性が変動することになる。
【0008】
また、各製品特性の指標から総合評価を行う方法では、製品特性同士がトレードオフの関係にあることが多いため、総合評価を行うことは困難である。また、製造の最終工程で製品特性の良否を判定する方法では、不良品を最終工程まで製造し続けるため、無駄な製造時間や材料が増えることになる。また、制御のフィードバックループの間隔も長くなる。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、トレーサビリティが困難な製造現場で、異なる工程で収集される各種データの対応付けを行う品質制御装置などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る品質制御装置は、所定の品質を有する製品を製造するために製造工程の制御を行う品質制御装置であって、中間特性検査器が計測した中間品の中間特性データと、最終特性検査器が計測した完成品の最終特性データとを収集して記憶する記憶手段と、該記憶手段が記憶した最終特性データのデータ分布と、上記最終特性検査器に設定された最終特性規格値とに基づいて、上記中間特性検査器が不良の中間品を排除するための判定基準である中間特性規格値を生成する規格値生成手段と、該規格値生成手段が生成した規格値を設定するように上記中間特性検査器を制御する規格値設定制御手段とを備えることを特徴としている。
【0011】
ここで、中間特性検査器は、製造途中の中間品の中間特性を検査し、中間特性規格値に基づいて中間品の良否を判定するものである。中間特性検査器を用いることにより、不良品は製造途中に取り除かれるため、無駄な不良品の製造時間がなくなり、制御のフィードバックループの間隔を短縮することができる。
【0012】
そして、上記の構成によると、規格値生成手段が、完成品の最終特性に基づいて、中間特性規格値を変更するので、製造工程における各種パラメータが変動しても、中間特性規格値を自動的に調整することができる。
【0013】
なお、上記規格値生成手段は、上記最終特性データのデータ分布の平均値と、上記最終特性規格値との差分に基づいて上記中間特性規格値を生成することが望ましい。さらに、上記規格値生成手段は、上記最終特性データのデータ分布の平均値と上記最終特性規格値との差分に対する、上記記憶手段が記憶した中間特性データのデータ分布の平均値と上記中間特性規格値との差分の比率が、上記最終特性データのデータ分布のバラツキ値に対する、上記中間特性データのデータ分布のバラツキ値の比率となるように、上記中間特性規格値を生成することが望ましい。
【0014】
ここで、データ分布のバラツキ値は、データ分布のバラツキの度合いを示すものであり、例えば、標準偏差、分散、半値幅などが上げられる。
【0015】
また、上記規格値生成手段は、さらに安全係数に基づいて上記中間特性規格値を生成することが望ましい。この場合、上記中間特性規格値に基づいて上記中間品を効率よく排除することができる。また、上記安全係数は、経験則に基づいて設定されることもできるが、上記最終特性規格値に基づいて上記完成品を排除する場合の廃棄コストと、上記中間特性規格値に基づいて上記中間品を排除する場合の廃棄コストとに基づいて算出されることが望ましい。
【0016】
また、上記記憶手段は、上記中間特性データおよび上記最終特性データを、計測した時刻または収集した時刻とともに記憶しており、計測した時刻または収集した時刻に、上記中間特性検査器および上記最終特性検査器同士の間で生じる無駄時間を考慮することにより、上記中間特性データおよび上記最終特性データの対応付けを行う対応付け手段をさらに備えることが望ましい。この場合、収集した中間特性データおよび最終特性データが、計測した時刻または収集した時刻と関連付けられているので、対応付け手段が、計測した時刻または収集した時刻を中間特性検査器および最終特性検査器同士の間で生じる無駄時間によって大まかな対応付けを行うことにより、中間特性データおよび最終特性データ同士の対応付けを行うことができる。
【0017】
また、上記規格値生成手段は、上記規格値設定制御手段が上記中間特性検査器を制御してから所定時間経過した後に上記記憶手段が収集した上記中間特性データおよび上記最終特性データを利用して、次の規格値の生成を行うことが望ましい。一般に機器の設定値を変更する場合、変更が完了するまで多少のタイムラグが発生する。したがって、上記の場合には、変更の途中のデータを利用しないので、より正確な制御が可能となる。
【0018】
本発明に係る品質制御装置の制御方法は、所定の品質を有する製品を製造するために製造工程の制御を行う品質制御装置の制御方法であって、上記品質制御装置は、中間特性検査器が計測した中間品の中間特性データと、最終特性検査器が計測した完成品の最終特性データとを収集して記憶する記憶手段を備えており、該記憶手段が記憶した最終特性データのデータ分布と、上記最終特性検査器に設定された最終特性規格値とに基づいて、上記中間特性検査器が不良の中間品を排除するための判定基準である中間特性規格値を生成する規格値生成ステップと、該規格値生成ステップにて生成した規格値を設定するように上記中間特性検査器を制御する規格値設定制御ステップとを含むことを特徴としている。
【0019】
上記の方法によると、規格値生成ステップにて、完成品の最終特性に基づいて、中間特性規格値が変更されるので、製造工程における各種パラメータが変動しても、中間特性規格値を自動的に調整することができる。
【0020】
なお、上記品質制御装置における各手段を、品質制御プログラムによりコンピュータ上で実行させることができる。さらに、上記品質制御プログラムをコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶させることにより、任意のコンピュータ上で上記品質制御プログラムを実行させることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明に係る品質制御装置は、規格値生成手段が、完成品の最終特性に基づいて、中間特性規格値を変更するので、製造工程における各種パラメータが変動しても、中間特性規格値を自動的に調整することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について図1〜図15に基づいて説明する。図1は、或る材料から製造される製品の品質を制御する品質制御システムの概略構成を示している。図示のように、品質制御システム1は、制御対象となる制御対象機器(計測機器)3・4と、製造途中の中間品の特性である中間特性を検査する中間特性検査器(計測機器)5と、製造された製品の最終特性を検査する最終特性検査器(計測機器)6と、各種の機器3〜6からデータを収集し、収集したデータに基づいて、制御対象機器3・4を制御するとともに中間特性検査器5における規格値を変更させる品質制御装置10とを備える構成である。
【0023】
一般に、製品7は、ワーク2に対し多数の処理工程を経て製造されるが、本実施形態では、本発明の理解を容易にするため、下記のように製造されるものとする。すなわち、ワーク2に対し、第1および第2の制御対象機器3・4がそれぞれの処理を順次行い、その後、中間特性検査器5が中間特性の検査処理を行い、その他の機器が各種の処理を行った後、最終特性検査器6が最終特性の検査処理を行うものとする。
【0024】
制御対象機器3・4のそれぞれは、品質制御装置10から制御値の設定値を取得し、取得した設定値に基づいて動作するものである。また、制御対象機器3・4のそれぞれは、上記制御値を実際に計測し、計測した計測値を品質制御装置10に送信するものである。ここで、制御値は、例えば、制御対象機器がヒータ(加熱器)であれば、温度や、該温度に対応する電圧、抵抗値など、温度を示す数値となる。
【0025】
中間特性検査器5は、品質制御装置10から規格値を取得し、取得した規格値に基づいてワーク2(中間品)の中間特性を検査するものである。また、中間特性検査器5は、検査した中間特性を品質制御装置10に送信するものである。
【0026】
中間特性検査器5が規格外と判定した中間品は、通常、中間特性を検査した直後に除外される。しかしながら、規格外と判定された中間品に対し、第2の制御対象機器4が再度処理を行うことにより容易に規格内となる可能性がある場合には、上記中間品は、第2の制御対象機器4が行う処理工程に再投入することができる。また、システムの構成上や機器の構造上、中間特性を検査した直後に除外することが困難な場合には、さらに後の工程で除外するようにしてもよい。
【0027】
最終特性検査器6は、所定の規格値に基づいて完成品の最終特性を検査するものである。このとき、規格外と判定された完成品は廃棄または修理、あるいは分解再利用され、規格内と判定された完成品は製品7として出荷される。また、最終特性検査器6は、検査した最終特性を品質制御装置10に送信するものである。
【0028】
なお、通常は、或るワーク2に対し、各機器3〜6が処理を行う時刻にタイムラグが発生する。このタイムラグを「無駄時間」と称する。図1に示される場合では、第1の制御対象機器3で処理が開始される時刻と、第2の制御対象機器4で処理が開始される時刻との間に無駄時間Td1が発生し、第2の制御対象機器4で処理が開始される時刻と、中間特性検査器5で処理が開始される時刻との間に無駄時間Td2が発生し、中間特性検査器5で処理が開始される時刻と最終特性検査器6で処理が開始される時刻との間に無駄時間Td3が発生することになる。
【0029】
なお、制御対象機器、中間特性検査器、および最終特性検査器は、1台でも複数台でもよい。また、製造に関する全ての機器が制御対象機器になるとは限らない。また、1つの機器が複数の制御対象機器を含むこともあり得る。
【0030】
品質制御装置10は、図1に示されるように、データ記憶部(記憶手段)11、スケジューラ(対応付け手段)12、規格値生成部(規格値生成手段、規格値設定制御手段)13、影響度生成部(影響度生成手段)14、影響度記憶DB(データベース)(影響度記憶手段)15、推定部16、および制御命令部(制御変更手段)17を備える構成である。この制御装置10は、例えばPC(Personal Computer)ベースのコンピュータによって構成される。
【0031】
データ記憶部11は、制御対象機器3・4のそれぞれから制御値の計測値を順次取得し、取得した計測値および取得時刻(収集した時刻)を制御データとして記憶し、中間特性検査器5から中間特性を順次取得し、取得した中間特性および取得時刻を中間特性データとして記憶し、かつ、最終特性検査器6から最終特性を順次取得し、取得した最終特性および取得時刻を最終特性データとして記憶する。また、データ記憶部11は、データの取得を開始したことをスケジューラ12に通知する。なお、取得時刻の代わりに、各機器3〜6が計測した時刻を記憶しても良い。
【0032】
スケジューラ12は、データ記憶部11に記憶された制御データ、中間特性データ、および最終特性データのうち、同じワーク2と推定されるもの同士の対応付けを、各データの取得時刻と上記無駄時間とを利用して行う。また、スケジューラ12は、制御対象機器3・4を制御する制御値の設定値を変更するタイミングと、中間特性検査器5の中間特性の規格値を変更するタイミングとを決定する。
【0033】
なお、上記対応付けは、個々のワーク2を単位として行っても良いし、所定数のワーク2、または所定時間に処理されるワーク2を単位として行っても良い。以下では、この所定数または所定時間に含まれる一連のデータを集合と称する。
【0034】
規格値生成部13は、スケジューラ12が対応付けを行った中間特性データの集合および最終特性データの集合をデータ記憶部11から読み出し、読み出した集合に基づいて中間特性の規格値を生成する。また、規格値生成部13は、生成した規格値を、スケジューラ12が決定したタイミングに基づいて中間特性検査器5に送信する。なお、規格値生成部13は、中間特性検査器5の中間特性の規格値を変更すべき場合にのみ、上記規格値を生成しても良い。さらに、規格値生成部13は、中間特性の規格値の推定値を生成し、生成した推定値を推定部16に送信する。
【0035】
影響度生成部14は、推定部16の要求に応じて影響度を生成する。ここで、影響度とは、制御値を変更したときに中間特性がどのように変動するかを示すものである。また、影響度生成部14は、生成した影響度を推定部16に送信するとともに、影響度記憶DB15に記憶させる。具体的には、影響度生成部14は、スケジューラ12が対応付けを行った制御データの集合および中間特性データの集合をデータ記憶部11から読み出し、読み出した集合に基づいて、制御データの平均値の変化量に対する、中間特性データの平均値および/または分散の変動量を算出し、正規化することにより影響度の生成を行う。なお、分散の代わりに、バラツキの程度を示す任意の指標を用いることができ、例えば標準偏差や半値幅を用いることができる。
【0036】
推定部16は、スケジューラ12が対応付けを行った中間特性データの集合をデータ記憶部11から読み出し、読み出した集合から中間特性の平均値および/または分散の変動量を、影響度記憶DB15から読み出した影響度を用いて推定する。また、推定部16は、上記変動量の推定値で、中間特性の分布を変動した場合の不良数を推定して、個々の不良数の総和で評価する。そして、不良数が最小となる場合における制御値の設定値の変更量を求めて制御命令部17に送信する。
【0037】
制御命令部17は、推定部16が求めた制御値の設定値の変更量に基づいて、制御値の設定値を変更する。また、制御命令部17は、変更した設定値を制御命令として、スケジューラ12が決定したタイミングに基づいて制御対象機器3・4にそれぞれ送信する。これにより、制御対象機器3・4における制御値の設定値が変更される。
【0038】
上記構成の品質制御システム1における処理動作を図2に基づいて説明する。図2は、品質制御システム1における処理動作の概要を示している。なお、図には示していないが、品質制御装置10が動作を開始すると、各機器3〜6から各種データをそれぞれ順次取得して記憶し続ける。
【0039】
まず、スケジューラ12は、データ記憶部11から各種データの取得を行い(ステップS10。以下、単に「S10」と記載することがある。他のステップについても同様である。)、中間特性データと最終特性データとの対応付けが可能であるか否かを判断する(S11)。
【0040】
上記対応付けが可能である場合には(S11でYES)、対応付けられた中間特性データの集合と最終特性データの集合とを用いて、規格生成部13が中間特性の規格値を生成して中間特性検査器5に送信することにより中間特性の規格値の修正を行う(S12)。一方、上記対応付けが不可能である場合には(S11でNO)、中間特性の規格値の修正を行わずに次ステップ(S13)へ進む。
【0041】
次に、スケジューラ12は、制御データと中間特性データとの対応付けが可能であるか否かを判断する(S13)。上記対応付けが不可能である場合には(S13でNO)、ステップS10に戻って上記の処理動作を繰り返す。
【0042】
一方、上記対応付けが可能である場合には(S13でYES)、中間特性データの計測値と、前回推定した中間特性データの推定値と差が所定値以上であるか否かを判断する(S14)。計測値と推定値との差が所定値以上である場合には(S14でYES)、影響度生成部14が影響度を生成して、影響度記憶DB15に記憶された影響度の更新を行う(S15)。一方、計測値と推定値との差が所定値未満である場合には(S14でNO)、影響度の更新を行わずに次ステップ(S16)へ進む。
【0043】
次に、推定部16が、中間特性データの集合をデータ記憶部11から抽出するとともに、影響度記憶DB15から影響度を取得し、抽出した中間特性データの集合と、取得した影響度とを利用して、制御値の設定値を変更したときに、中間特性データのデータ分布がどのように変動するかを推定して(S16)、不良数の推定を行う(S17)。
【0044】
次に、推定部16が、不良数が最小となるように、中間特性データの推定値(分布の変動量)を決定するとともに(S18)、対応する制御値の設定値の変更量を決定する。次に、決定した変更量に基づいて、制御命令部17が、制御値の設定値を決定し、決定した制御値の設定値を制御対象機器3・4に送信することにより、制御値の設定変更の指示を行う(S19)。その後、ステップS10に戻って上記の処理動作を繰り返す。
【0045】
上記の構成によると、データ記憶部11が記憶したデータが、計測した時刻または収集した時刻と関連付けられているので、スケジューラ12が、計測した時刻または収集した時刻を上記計測機器同士の間で生じる無駄時間によって大まかな対応付けを行うことにより、計測機器の計測データ同士の対応付けを行うことができる。また、無駄時間は、スケジューラ12でのみ利用され、無駄時間を変更してもデータ記憶部11が記憶するデータへの影響が無い。したがって、無駄時間の変更を容易に行うことができる。
【0046】
また、規格値生成部13が、完成品の最終特性に基づいて、中間特性の規格値を変更するので、製造工程における各種パラメータが変動しても、中間特性の規格値を自動的に調整することができる。
【0047】
また、推定部16が、制御値の設定値を変更した場合における中間特性データのデータ分布の変動を推定し、発生する不良数を推定し、推定した不良数が最小となるような制御値の設定値の変更量を決定して、制御対象機器の制御値の設定値を変更している。これにより、製造途中で中間品を検査し、中間品の不良品の数が少なくなるように制御対象機器の制御を変更するので、制御のフィードバックループの間隔を短縮することができる。また、データ分布の変動を推定することにより、データのバラツキも考慮できるので、発生する不良数をより正確に推定することができる。
【0048】
また、影響度記憶DB15が記憶した影響度により、制御データの平均値の変化量と中間特性データのデータ分布の変動量との対応関係が判明しているので、中間特性データのデータ分布の変動量をより正確に推定でき、発生する不良数をより正確に推定することができる。
【0049】
また、中間特性の推定値が実測値とかけ離れた場合には、影響度生成部14が影響度を作成して影響度記憶DB15に記憶させるので、製造プロセスに何らかの変動が生じても、影響度を自動的に修正できる。したがって、中間特性データのデータ分布の変動量をより正確に推定でき、適切な品質の製品を製造することができる。
【0050】
なお、上記の品質制御装置10は種々のプロセスに対して適用可能である。適用可能なプロセスの一例としては、特開2002−287803に記載のセンサ素子の製造プロセスが挙げられる。この製造プロセスは、成型・研削工程(工程1)、焼成工程(工程2)、めっき工程(工程3)、電極保護層の成膜工程(工程4)、トラップ層の成膜工程(工程5)、エージング工程(工程6)、組み立て工程(工程7)、および特性検査工程(工程8)からなる。上記工程1〜6からそれぞれ成型比重、焼成比重、めっき膜厚、コート膜厚、塗布重量、およびエージング温度・添加物濃度が中間特性として取得され、上記工程8から最終特性が取得される。また、各工程で利用される装置が制御対象機器となる。
【0051】
以下、品質制御装置10における各ブロックについて、図3〜図15に基づいて詳細に説明する。
【0052】
図3は、データ記憶部11の概略構成を示している。データ記憶部11は、制御データ記憶部20および制御データ記憶DB21と、中間特性データ記憶部22および中間特性データ記憶DB23と、最終特性データ記憶部24および最終特性データ記憶DB25とを備える構成である。
【0053】
制御データ記憶部20は、制御命令部17が制御対象機器に指示した制御値の設定値と、該設定値に対して上記制御対象機器が実際に計測した計測値と、該計測値を取得した取得時刻とを制御データとして取得し、取得した制御データを制御データ記憶DB21に記憶させる。なお、制御データの取得および記憶は、制御対象機器3・4ごとに行われる。また、制御値の設定値は、制御対象機器3・4から取得しても良いし、制御命令部17から取得しても良い。
【0054】
中間特性データ記憶部22は、中間特性検査器5が検査した2つの中間特性A・Bを取得し、取得した中間特性A・Bおよび取得時刻を関連付けて中間特性データ記憶DB23に記憶させる。また、最終特性データ記憶部24は、最終特性検査器6が検査した2つの最終特性A・Bを取得し、取得した最終特性A・Bおよび取得時刻を関連付けて最終特性データ記憶DB25に記憶させる。
【0055】
図4(a)および(b)は、それぞれ制御対象機器3・4に関して、制御データ記憶DB21に記憶される制御データの一例を示している。また、同図(c)および(d)は、中間特性データ記憶DB23および最終特性データ記憶DB25に記憶される中間特性のデータの一例をそれぞれ示している。
【0056】
なお、図4に示される製造番号は、各機器が処理を行ったワーク2の通し番号である。上述のように、ワーク2は製造途中で合流したり省かれたり再投入されたりすることがあるので、各機器の製造番号が同じであっても同じワーク2に対応するとは限らない。例えば、第1制御対象の製造番号1に対応するワーク2が、第2制御対象の製造番号1に対応するワーク2と同じであるとは限らない。
【0057】
なお、中間特性検査器5が検査する中間特性は、製造途中の中間品の特性であり、最終特性検査器6が検査する以前に検査するものである。このため、中間特性は最終特性と同じ値となるとは限らない。また、本実施形態では、2種類の中間特性および最終特性を取得しているが、1種類でも良いし、3種類以上でも良い。
【0058】
次に、スケジューラ12の詳細について図5および図6に基づいて説明する。上述のように、スケジューラ12は、データ記憶部11に記憶された各種データ同士の対応付けを行い、対応付けられたデータを抽出するタイミングを決定するとともに、制御対象機器3・4を制御する制御値の設定値および中間特性検査器5における中間特性の規格値を変更するタイミングを決定するものである。また、スケジューラ12は、決定したタイミングを規格値生成部13および制御命令部17に送信する。
【0059】
図5は、スケジューラ12の概略構成を示している。図示のように、スケジューラ12は、設定部30、制御値抽出タイミング決定部31、中間特性抽出タイミング決定部32、最終特性抽出タイミング決定部33、制御値変更タイミング決定部34、および規格値変更タイミング決定部35を備える構成である。
【0060】
設定部30は、データを取得する機器間で生じる無駄時間Td1〜Td3と、余裕時間Tm1・Tm2と、対応付けた集合の期間Tsとを設定し、各部31〜35に送信する。なお、これらの値は、ユーザからキーボードなどの入力デバイスを介して取得しても良いし、記憶デバイスから取得しても良いし、他の機器から通信デバイスを介して取得しても良い。
【0061】
ここで、第1の余裕時間Tm1とは、制御値の設定値の変更や中間特性の規格値の変更を指示する時刻から、各種データから抽出する最初の取得時刻までの期間をいう。第1の余裕時間Tm1は、機器に対し設定値や規格値の変更を指示してから、実際に該変更がワーク2に反映されるまでのタイムラグを除去したり、不良の抜取りや再投入によるズレを除去したりするように設定される。
【0062】
また、第2の余裕時間Tm2とは、中間特性データから抽出する最後の取得時刻から、第1の制御対象機器3に対し制御値の設定値の変更を指示する時刻までの期間をいう。第2の余裕時間Tm2は、変更すべき設定値を求めるのに費やす処理時間を考慮して設定される。
【0063】
なお、余裕時間Tm1・Tm2と集合の期間Tsとは、ワーク2の個数で表しても良い。集合の期間Tsをワーク2の個数で表した場合、対応付けた各集合に含まれるデータ数が一定となるので、各集合の統計量の精度を概ね一致させることができる。したがって、例えば機器3〜6の何れかが一旦停止して再開した場合のように、無駄時間が変動しても、各集合を適切に対応付けることができる。
【0064】
なお、無駄時間Td1〜Td3と、余裕時間Tm1・Tm2の値を導出する方法としては、以下の3つの方法が挙げられる。すなわち、第1に、品質制御システムの設計値、すなわち各機器での処理に要する時間や、ワークが各機器間を移動する際の移動距離や移動速度の設計値より計算で導出する方法が挙げられる。第2に、試験運転を行ってワークの処理時間や移動時間を測定して実測値より導出する方法が挙げられる。第3に、実際の製造運転を行ってワークの処理時間や移動時間を測定して実測値より導出する方法が挙げられる。
【0065】
実際には、これらの方法を適宜組み合わせて導出することが望ましい。例えば、品質制御システムが稼動する前の初期設定値は第1の方法で導出し、稼動した後は第2あるいは第3の方法で微調整を行うという方法が挙げられる。
【0066】
なお、中間特性検査器5が検査する中間特性は、製造途中の中間品の特性であり、最終特性検査器6が検査する以前に検査するものである。このため、中間特性は最終特性と同じ値となるとは限らない。また、本実施形態では、2種類の中間特性および最終特性を取得しているが、1種類でも良いし、3種類以上でも良い。
【0067】
次に、スケジューラ12の詳細について図5および図6に基づいて説明する。上述のように、スケジューラ12は、データ記憶部11に記憶された各種データ同士の対応付けを行い、対応付けられたデータを抽出するタイミングを決定するとともに、制御対象機器3・4を制御する制御値の設定値および中間特性検査器5における中間特性の規格値を変更するタイミングを決定するものである。また、スケジューラ12は、決定したタイミングを各ブロック13・14・16・17に送信する。
【0068】
図5は、スケジューラ12の概略構成を示している。図示のように、スケジューラ12は、設定部30、制御値抽出タイミング決定部31、中間特性抽出タイミング決定部32、最終特性抽出タイミング決定部33、制御値変更タイミング決定部34、および規格値変更タイミング決定部35を備える構成である。
【0069】
設定部30は、データを取得する機器間で生じる無駄時間Td1〜Td3と、余裕時間Tm1・Tm2と、および対応付けた集合の期間Tsとを設定し、各部31〜35に送信する。なお、これらの値は、ユーザからキーボードなどの入力デバイスを介して取得しても良いし、記憶デバイスから取得しても良いし、他の機器から通信デバイスを介して取得しても良い。また、余裕時間Tm1・Tm2と集合の期間Tsとは、中間品の個数で表しても良い。
【0070】
ここで、第1の余裕時間Tm1とは、制御値の設定値の変更や中間特性の規格値の変更を指示する時刻から、各種データから抽出する最初の取得時刻までの期間をいう。第1の余裕時間Tm1は、機器に対し設定値や規格値の変更を指示してから、実際に該変更がワークに反映されるまでのタイムラグを除去したり、不良の抜取りや再投入によるズレを除去したりするように設定される。
【0071】
また、第2の余裕時間Tm2とは、中間特性データから抽出する最後の取得時刻から、第1の制御対象機器3に対し制御値の設定値の変更を指示する時刻までの期間をいう。第2の余裕時間Tm2は、変更すべき設定値を求めるのに費やす処理時間を考慮して設定される。
【0072】
なお、無駄時間Td1〜Td3と、余裕時間Tm1・Tm2の値を導出する方法としては、以下の3つの方法が挙げられる。すなわち、第1に、品質制御システムの設計値、すなわち各機器での処理に要する時間や、ワークが各機器間を移動する際の移動距離や移動速度の設計値より計算で導出する方法が挙げられる。第2に、試験運転を行ってワークの処理時間や移動時間を測定して実測値より導出する方法が挙げられる。第3に、実際の製造運転を行ってワークの処理時間や移動時間を測定して実測値より導出する方法が挙げられる。
【0073】
実際には、これらの方法を適宜組み合わせて導出することが望ましい。例えば、品質制御システムが稼動する前の初期設定値は第1の方法で導出し、稼動した後は第2あるいは第3の方法で微調整を行うという方法が挙げられる。
【0074】
制御値抽出タイミング決定部31は、各制御データから制御値の計測値を抽出するタイミングである制御値抽出タイミングをそれぞれ決定する。まず、設定部30から第1の無駄時間Td1、第1の余裕時間Tm1、および集合の期間Tsを取得し、スケジューラ12の動作を開始する動作開始時刻T0と、制御値の設定値の変更を指示する変更指示時刻Ti(iは1以上の整数である。)とを制御値変更タイミング決定部34から取得する。なお、以下では動作開始時刻と変更指示時刻とをまとめてTi(iは0以上の整数)とする。
【0075】
次に、制御値抽出タイミング決定部31は、動作開始時刻または変更指示時刻Tiに第1の余裕時間Tm1を加算した時刻Ti+Tm1から集合の期間Tsまでを第1の制御値抽出タイミングとして決定する。次に、第1の制御値抽出タイミングの開始時刻Ti+Tm1に第1の無駄時間Td1を追加した時刻Ti+Tm1+Td1から集合の期間Tsまでを第2の制御値抽出タイミングとして決定する。また、制御値抽出タイミング決定部31は、第2の制御値抽出タイミングの開始時刻Ti+Tm1+Td1を中間特性抽出タイミング決定部32に送信する。
【0076】
中間特性抽出タイミング決定部32は、中間特性データから中間特性を抽出するタイミングである中間特性抽出タイミングを決定する。まず、設定部30から第2の無駄時間Td2および集合の期間Tsを取得し、制御値抽出タイミング決定部31から第2の制御値抽出タイミングの開始時刻Ti+Tm1+Td1を取得する。
【0077】
次に、中間特性抽出タイミング決定部32は、第2の制御値抽出タイミングの開始時刻Ti+Tm1+Td1に第2の無駄時間Td2を追加した時刻Ti+Tm1+Td1+Td2から集合の期間Tsまでを中間特性抽出タイミングとして決定する。また、中間特性抽出タイミング決定部32は、中間特性抽出タイミングの開始時刻Ti+Tm1+Td1+Td2を最終特性抽出タイミング決定部33に送信するとともに、中間特性抽出タイミングの終了時刻Ti+Tm1+Td1+Td2+Tsを制御値変更タイミング決定部34に送信する。
【0078】
最終特性抽出タイミング決定部33は、最終特性データから最終特性を抽出するタイミングである最終特性抽出タイミングを決定する。まず、設定部30から第3の無駄時間Td3および集合の期間Tsを取得し、中間特性抽出タイミング決定部32から中間特性抽出タイミングの開始時刻Ti+Tm1+Td1+Td2を取得する。
【0079】
次に、最終特性抽出タイミング決定部33は、中間特性抽出タイミングの開始時刻Ti+Tm1+Td1+Td2に第3の無駄時間Td3を追加した時刻Ti+Tm1+Td1+Td2+Td3から集合の期間Tsまでを最終特性抽出タイミングとして決定する。また、最終特性抽出タイミング決定部33は、最終特性抽出タイミングの終了時刻Ti+Tm1+Td1+Td2+Td3+Tsを規格値変更タイミング決定部35に送信する。
【0080】
制御値変更タイミング決定部34は、第1および第2の制御対象機器3・4における制御値の設定値を変更するタイミングである第1および第2の制御値変更タイミングを決定する。まず、設定部30から第1の無駄時間Td1および第2の余裕時間Tm2を取得し、中間特性抽出タイミング決定部32から中間特性抽出タイミングの終了時刻Ti+Tm1+Td1+Td2+Tsを取得する。
【0081】
次に、制御値変更タイミング決定部34は、中間特性抽出タイミングの終了時刻Ti+Tm1+Td1+Td2+Tsに第2の余裕時間Tm2を追加した時刻Ti+Tm1+Td1+Td2+Ts+Tm2を第1の制御値変更タイミングとして決定し、第1の制御値変更タイミングTi+Tm1+Td1+Td2+Ts+Tm2に第1の無駄時間Td1を追加した時刻Ti+Tm1+2×Td1+Td2+Ts+Tm2を第2の制御値変更タイミングとして決定する。また、制御値変更タイミング決定部34は、第1の制御値変更タイミングTi+Tm1+Td1+Td2+Ts+Tm2を次回の変更指示時刻Tiとして制御値抽出タイミング決定部31および規格値変更タイミング決定部35に送信する。
【0082】
規格値変更タイミング決定部35は、中間特性検査器5における中間特性の規格値を変更するタイミングである規格値変更タイミングを決定する。まず、設定部30から第1および第2の無駄時間Td1・Td2を取得し、最終特性抽出タイミング決定部33から最終特性抽出タイミングの終了時刻Ti+Tm1+Td1+Td2+Td3+Tsを取得し、制御値変更タイミング決定部34から変更指示時刻Tiを取得する。
【0083】
次に、規格値変更タイミング決定部35は、最終特性抽出タイミングの終了時刻Ti+Tm1+Td1+Td2+Td3+Tsの後に最初に現れる変更指示時刻Tiを特定し、特定した変更指示時刻Tiに第1および第2の無駄時間Td1・Td2を追加した時刻Ti+Td1+Td2を規格値変更タイミングとして決定する。
【0084】
図6は、上記構成のスケジューラ12のタイミング動作を例示している。図示において、n〜(n+3)が付された領域が、各機器3〜6間で対応付けられた集合を示している。なお、図示の例では、第1の無駄時間Td1を2秒とし、第2の無駄時間Td2を4秒とし、かつ、第3の無駄時間Td3を20秒としている。また、第1および第2の余裕時間Tm1・Tm2を0.75秒とし、集合の期間Tsを4.5秒としている。
【0085】
スケジューラ12が動作を開始した後、制御値変更タイミング決定部34は、n番目の集合に関する変更指示時刻Tn(=t)を決定する。次に、制御値抽出タイミング決定部31は、時刻Tn+Tm1(=t+0.75)から集合の期間Ts(=4.5)までを第1の制御値抽出タイミングとして決定し、時刻Tn+Tm1+Td1(=t+2+0.75)から集合の期間Tsまでを第2の制御値抽出タイミングとして決定する。
【0086】
次に、中間特性抽出タイミング決定部32は、時刻Tn+Tm1+Td1+Td2(=t+6+0.75)から集合の期間Tsまでを中間特性抽出タイミングとして決定する。この中間特性抽出タイミングまでに制御データを抽出でき、この中間特性抽出タイミングにおいて中間特性データを抽出できるので、上述のように、抽出した制御データおよび中間特性データに基づいて、制御対象機器3・4の制御値の設定値をそれぞれ求め、求めた設定値に変更する制御命令を制御対象機器3・4にそれぞれ送信する。
【0087】
この送信するタイミングは、制御値変更タイミング決定部34が決定する。すなわち、制御値変更タイミング決定部34は、時刻Tn+Tm1+Td1+Td2+Ts+Tm2(=t+12)を第1の制御値変更タイミングとして決定し、時刻Tn+Tm1+2×Td1+Td2+Ts+Tm2(=t+14)を第2の制御値変更タイミングとして決定する。また、制御値変更タイミング決定部34は、第1の制御値変更タイミングである時刻Tn+Tm1+Td1+Td2+Ts+Tm2(=t+12)を、(n+1)番目の集合に関する変更指示事項Tn+1(=t+12)となり、以下、制御データおよび中間特性データの抽出と、制御値の設定値の変更とを繰り返す。
【0088】
一方、最終特性抽出タイミング決定部33は、時刻Ti+Tm1+Td1+Td2+Td3(=t+26+0.75)から集合の期間Tsまでを最終特性抽出タイミングとして決定する。この最終特性抽出タイミングまでに中間特性データを抽出でき、この最終特性抽出タイミングにおいて最終特性データを抽出できるので、上述のように、抽出した中間特性データおよび最終特性データに基づいて、中間特性の規格値を求め、求めた規格値に変更する制御命令を中間特性検査器5に送信する。
【0089】
この送信するタイミングは、規格値変更タイミング決定部35が決定する。すなわち、制御値変更タイミング決定部35は、最終特性抽出タイミングの終了時刻Ti+Tm1+Td1+Td2+Td3+Ts(=t+26+0.75+4.5)の後に最初に現れる変更指示時刻Ti(=t+36)を特定して、時刻Ti+Td1+Td2(=t+42)を規格値変更タイミングとして決定する。以下、中間特性データおよび最終特性データの抽出と、規格値の変更とを繰り返す。
【0090】
なお、取得データの中には、上記の対応付けに不適切なものが存在する。図14は、一般的な生産現場で生じる不適切な取得データの種類と、その原因例および内容とを示している。図示のように、不適切な取得データの種類としては、「異常値」、「再測定」、「再投入」、および「除去品」が挙げられる。
【0091】
「異常値」は、測定値が通常の値から大きく外れている場合を示している。一般に、多数のデータから統計量を算出してデータ分布を推定するには、データが平均値付近に集まっている正規分布に近いデータ分布の形状となることが望ましい。このため、上記異常値が取得データとして集合に含まれる場合、該集合のデータ分布を適切に推定することは、異常値の影響が大きくなるために困難となる。
【0092】
「再測定」は、測定の失敗等により機器が同一のワーク2に対し再測定を行う場合を示している。この場合、同一のワーク2に対して複数の測定値が存在することになり、また、再測定前の測定値は異常である可能性が高い。したがって、再測定前の測定値が取得データとして集合に含まれる場合、該集合のデータ分布を適切に推定することは、異常値の場合と同様に困難となる。
【0093】
「再投入」は、例えば、中間特性検査器5が規格外と判定したワーク2を、第2の制御対象機器4が行う処理工程に再投入する場合を示している。この場合、再投入されたワーク2に関して、第2の制御対象機器4の取得データと、第2の制御対象機器4の後工程にある中間特性検査器5および最終特性検査器6の取得データとは存在するが、第2の制御対象機器4の前工程にある第1の制御対象機器3の取得データは存在しない。このため、機器3〜6間で対応付けられた集合に関して、各集合に含まれる取得データに対応するワーク2は、第2の制御対象機器4、中間特性検査器5および最終特性検査器6に関する集合と、第1の制御対象機器3に関する集合との間で異なることになり、各集合から算出される統計量を精度良く比較することが困難となる。
【0094】
「除去品」は、例えば、中間特性検査器5が規格外と判定したワーク2を、その検査直後に除外する場合を示している。この場合、除外されるワーク2に関して、中間特性検査器5の取得データと、中間特性検査器5の前工程にある第1および第2の制御対象機器3・4の取得データとは存在するが、中間特性検査器5の後工程にある最終特性検査器6の取得データは存在しない。このため、機器3〜6間で対応付けられた集合に関して、各集合に含まれる取得データに対応するワーク2は、第1および第2の制御対象機器3・4ならびに中間特性検査器5に関する集合と、最終特性検査器6に関する集合との間で異なることになり、各集合から算出される統計量を精度良く比較することが困難となる。
【0095】
このように、統計処理を精度良く行うためには、不適切な取得データを集合から除去することが望ましい。その一方で、不適切な取得データの種類と、対応付ける集合が前工程および後工程の何れであるかとによって、取得データを除去すべきか否かが分かれる。
【0096】
そこで、本実施形態では、各機器3〜6は、取得データに、不適切なデータの種類を示す不適切種別情報を追加して品質制御装置10に送信し、データ記憶部11に記憶している。また、品質制御装置10は、図示しない記憶部に、図15に示されるテーブルを記憶している。このテーブルは、不適切な取得データの種類と、前工程または後工程の集合と対応付ける場合に、取得データが、除去すべき無効データであるか、除去しなくても良い有効データであるかを示す情報とが格納されている。
【0097】
そして、スケジューラは、図15に示されるテーブルと、データ記憶部11に記憶される不適切種別情報とを参照して、取得データの中から無効データを除去して、取得データの集合の対応付けを行っている。これにより、不適切な取得データを、その種類と、前工程および後工程の何れに対応付けるかに応じて除去できるので、統計処理を精度良く行うことができる。なお、取得データが不適切なデータに該当しない場合には、有効データとして処理される。また、取得データが不適切なデータの複数の種類に該当する場合には、少なくとも1つが無効データに該当すると無効データとして処理される。
【0098】
次に、規格値生成部13の詳細について図7に基づいて説明する。規格値生成部13は、スケジューラ12が決定した中間特性抽出タイミングに基づいて、中間特性データ記憶DB23から中間特性データの集合を抽出するとともに、スケジューラ12が決定した最終特性抽出タイミングに基づいて、最終特性データ記憶DB25から最終特性データの集合を抽出し、抽出した集合に基づいて中間特性の規格値を生成する。また、規格値生成部13は、生成した規格値を、スケジューラ12が決定した規格値変更タイミングに基づいて中間特性検査器5に送信する。
【0099】
図7(a)および(b)は、規格値の生成動作を示すためのものである。まず、同図(a)に示されるように、抽出された最終特性Aの分布に関する平均値X ̄および標準偏差σを求める。次に、最終特性Aの分布に対する規格値の位置関係を調べるために、最終特性Aの分布の平均値X ̄と、最終特性Aの上限および下限の規格値Su・Slとの距離du・dlを、式du=Su−X ̄と式dl=X ̄−Slとから求める。また、同図(b)に示されるように、抽出された中間特性Aの分布に関する平均値Xa ̄および標準偏差σaを求める。
【0100】
次に、最終特性Aの標準偏差に対する中間特性Aの標準偏差の比率σa/σと、次式とに基づいて、最終特性Aにおける上記距離du・dlを、中間特性Aにて対応する距離dua・dlaに変換する。
dua=du×(σa/σ)=(Su−X ̄)×(σa/σ)、
dla=dl×(σa/σ)=(X ̄−Sl)×(σa/σ)。
【0101】
そして、変換した距離dua・dlaと、中間特性Aの分布に関する平均値X ̄aとを用いて、次式により中間特性Aの上限および下限の規格値Sua・Slaを求める。
Sua=Xa ̄+dua=Xa ̄+(Su−X ̄)×(σa/σ)、
Sla=Xa ̄−dla=Xa ̄−(X ̄−Sl)×(σa/σ)。
【0102】
上記の規格値の生成動作を、中間特性Bなど、中間特性A以外の中間特性に対しても繰り返すことにより、それぞれの規格値が生成される。なお、規格値が上限または下限の一方のみである場合にも同様にして規格値を生成することができる。
【0103】
ところで、理想的には、中間特性検査で不良品を全て排除すると、同じ検査項目の最終特性検査では不良品を排除することがないはずである。しかしながら、現実には、外乱要因や測定誤差が存在するために必ずしもそうならない。
【0104】
また、中間特性検査で不良品を排除したときの廃棄コストよりも最終特性検査で不良品を排除したときの廃棄コストの方が高い場合、同じ検査項目であれば中間特性検査で排除した方が全体の製造コストは低下する。
【0105】
そこで、中間特性の規格値は、最終特性の規格値よりも厳しくすることが望ましい。具体的には、規格値生成部13は、上述の式に基づいて生成した規格値を、安全係数に基づいて調整することが望ましい。
【0106】
安全係数は、従来、経験的に3〜4としていたが、最近では、品質工学で提唱されている許容差設計に基づいて算出することが行われている(例えば、非特許文献1の第2章および第3章を参照)。許容差設計は、損失関数で品質を損失に換算し、その損失を最小化する最適な許容差を算出する方法である。
【0107】
まず、最適な許容差を算出するための安全係数は下記の式で定義される。
φ=(A0/A)1/2。
ここで、φは安全係数であり、Aは中間検査で不良品を排除したときの廃棄コストであり、A0は最終検査で不良品を排除した時の廃棄コストである。
【0108】
そして、中間特性Aの上限および下限の規格値Sua・Slaは、次式のように調整される。
Sua=Xa ̄+dua/φ=Xa ̄+(Su−X ̄)×(σa/σ)/φ、
Sla=Xa ̄−dla/φ=Xa ̄−(X ̄−Sl)×(σa/σ)/φ。
【0109】
なお、本実施形態では、中間特性が、目標値に近いほど望ましい望目特性であるために上式のようになる。中間特性が、0に近いほど望ましい望小特性である場合には、中間特性の規格値は、上式のうち上限の規格値Suaのみとなる。また、中間特性が、大きいほど望ましい望大特性である場合には、中間特性の規格値は、下限の規格値Slaのみとなり、次式のように調整される。
Sla=Xa ̄−dla×φ=Xa ̄−(X ̄−Sl)×(σa/σ)×φ。
【0110】
次に、影響度生成部14の詳細について図8に基づいて説明する。上述のように、影響度生成部14は、推定部16からの要求に基づいて、制御値を変更したときに中間特性がどのように変動するかを示す影響度を生成し、生成した影響度を推定部16に送出するとともに、影響度記憶DB15に記憶させるものである。
【0111】
まず、影響度生成部14は、スケジューラ12が動作する前に、影響度の初期値を予め設定し、影響度記憶DB15に記憶しておく。この影響度の初期値は、予めテストを行うことにより、制御因子(制御値)の平均値の変更量と、それに対する中間特性の平均値およびばらつき(分散・標準偏差)の変動量とを算出することにより求めることができる。
【0112】
図8は、スケジューラ12の動作後の影響度生成部14の処理動作を示している。図示のように、まず、スケジューラ12が決定した前回および今回の第1の制御値抽出タイミングに基づいて、制御データ記憶DB21から第1の制御対象機器3(制御対象1)に関する制御データ(以下、「第1の制御データ」と称する。)の2つの集合をそれぞれ抽出する。同様に、スケジューラ12が決定した前回および今回の第2の制御値抽出タイミングに基づいて、制御データ記憶DB21から第2の制御対象機器4(制御対象2)に関する制御データ(以下、「第2の制御データ」と称する。)の2つの集合をそれぞれ抽出する。同様に、スケジューラ12が決定した前回および今回の中間特性抽出タイミングに基づいて、中間特性データ記憶DB23から中間特性の2つの集合をそれぞれ抽出する(S30)。
【0113】
次に、今回抽出された中間特性の集合の平均値を算出し(S31)、算出した平均値と、推定部16から取得した中間特性の平均値の推定値との差が所定値Dよりも大きいか否かを判断する(S32)。大きい場合には(S32でYES)、以下の処理動作を行い、大きくない場合には(S32でNO)、影響度生成部14の処理動作を終了する。
【0114】
次に、制御データの平均値に関して、前回に対する今回の変化量を算出する(S33)。すなわち、前回の第1の制御値抽出タイミングに基づいて抽出した第1の制御データ(計測値)の集合に関する平均値をX(n−1)とし、今回の第1の制御値抽出タイミングに基づいて抽出した第1の制御データ(計測値)の集合に関する平均値をX(n)とすると、第1の制御データの平均値に関して、前回に対する今回の変化量は次式で表される。
(第1の制御データの平均値の変化量)=X(n)−X(n−1)。
【0115】
次に、中間特性の平均値および分散に関して、前回に対する今回の変動量を算出する(S34)。すなわち、また、前回の中間特性抽出タイミングに基づいて抽出した中間特性Aの集合に関する平均値および分散をそれぞれY(n−1)、Z(n−1)とし、今回の中間特性抽出タイミングに基づいて抽出した中間特性Aの集合に関する平均値および分散をそれぞれY(n)、Z(n)とすると、中間特性Aの平均値および分散に関して、前回に対する今回の変動量は、それぞれ次式で表される。
(中間特性Aの平均値の変動量)=Y(n)−Y(n−1)、
(中間特性Aの分散の変動量)=Z(n)−Z(n−1)。
【0116】
次に、上記中間特性の平均値および分散の変動量を上記第1の制御データの平均値の変化量で正規化することにより、それぞれ中間特性の平均値および分散の影響度を生成する(S35)。すなわち、中間特性Aの平均値への影響度k1と、中間特性Aの分散への影響度k2とは次式で表される。
k1=(Y(n)−Y(n−1))/(X(n)−X(n−1))、
k2=(Z(n)−Z(n−1))/(X(n)−X(n−1))。
【0117】
上記の手順を用いて、第2の制御データによる影響度や、他の中間特性Bの影響度も求める。すなわち、実際には、第1の制御データによる中間特性Aの平均値および分散への影響度と、第2の制御データによる中間特性Aの平均値および分散への影響度と、第1の制御データによる中間特性Bの平均値および分散への影響度と、第2の制御データによる中間特性Bの平均値および分散への影響度とを生成することになる。
【0118】
そして、生成した影響度を推定部16に送出するとともに、影響度記憶DB15に記憶された影響度を更新させ(S36)、その後、影響度生成部14の動作を終了する。
【0119】
次に、推定部16の詳細について、図9〜図13に基づいて説明する。図9は、推定部16の概略構成を示している。図示のように、推定部16は、中間特性推定部(中間特性推定手段)40、不良推定部(不良数推定手段)41、および推定値評価部(変更量決定手段)42を備える構成である。
【0120】
中間特性推定部40は、制御値の設定値を変更したときの中間特性の平均値または標準偏差(分散)の変動量を、影響度記憶DB15から読み出した影響度を用いて推定する。不良推定部41は、中間特性推定部40が推定した変動量で中間特性の分布を変動した場合の不良数を推定して、個々の不良数の総和で評価する。推定値評価部42は、不良数が最小となる場合における制御値の設定値の変更量を求めて制御命令部17に送出する。
【0121】
図10は、上記構成の推定部16の処理動作を示している。まず、中間特性推定部40は、スケジューラ12が決定した中間特性抽出タイミングに基づいて、データ記憶部11の中間特性データ記憶DB23から中間特性データの集合を抽出する(S40)。
【0122】
次に、中間特性推定部40は、各制御対象機器3・4に関する制御値の設定値の変更量の組合せである変更パターンを生成する(S41)。図11は、上記変更パターンの一例を表形式で示している。本実施形態では、制御対象は制御対象機器3・4の2台であるから、上記変更パターンは、図11のように2次元テーブルで表される。なお、制御値の設定値の変更量の数は、効果を見込めそうな変更幅と、変更幅の許容量などから経験的に決定できるが、どのように決定しても良い。
【0123】
本実施形態では、図11に示されるように、制御対象1(制御対象機器3)および制御対象2(制御対象機器4)における上記変更量の数をそれぞれ5としている。また、制御対象1の変更幅は0.003であり、制御対象2の上記変更幅は0.005である。なお、本実施形態では、図11に示されるように、変更量に0.000、すなわち「変更しない」も含めているが、必ずしも含める必要はない。
【0124】
次に、各変更パターンについて、制御値の設定値を変更した場合の中間特性の平均値または標準偏差の推定値を求めることにより、図11に示される推定値テーブルを完成させる。具体的には、まず、影響度記憶DB15から最新の影響度を取得し(S42)、取得した影響度と制御値の設定値の変更幅(変更量)とを乗算する。これにより、制御値の設定値を変更した場合における中間特性の平均値または分散の変動量が求まる。
【0125】
なお、中間特性の平均値または分散の一方のみを利用しても良いし、両方を利用しても良い。また、バラツキを示すものとして、分散の代わりに標準偏差を用いても良い。以下では、中間特性の平均値および標準偏差を利用することにする。
【0126】
次に、抽出した現在の中間特性の平均値または分散に上記変動量を加算する。なお、分散に関しては、この後に平方根を取って標準偏差に変換する。これらの計算により、中間特性の平均値または標準偏差の推定値が、制御対象の制御値の設定値の変更量の組合せごとに求まり、図11に示される推定値テーブルが完成する(S43)。なお、図11には、平均値の推定値Xa,i,jを記載している。
【0127】
ここで、制御値の設定値の変更幅をα、中間特性Aの平均値をX ̄、中間特性Aの標準偏差をσ、中間特性Aの平均値の影響度をk1、中間特性Aの分散の影響度をk2とすると、制御値の設定値を変更したときの中間特性Aの平均値および標準偏差の推定値Xa^・σ^は次式となる。
Xa^=k1×α+X ̄、
σa^=(k2×α+σ2)1/2。
【0128】
次に、不良推定部41は、中間特性推定部40が求めた推定値を用いて、上記変更パターン毎に、変更後の中間特性の分布を作成して中間特性の不良数を推定する。具体的には、作成した中間特性の分布が変化した分だけ、規格基準(規格値)を移動させ(S44)、抽出した集合に含まれる要素(個々の中間特性)を良否判定する(S45)。
【0129】
中間特性Aの規格基準の移動は、規格値作成部13に関して上述したように次式となる。
Sua=Xa ̄+dua=Xa ̄+(Su−X ̄)×(σa/σ)、
Sla=Xa ̄−dla=Xa ̄−(X ̄−Sl)×(σa/σ)。
上述のように、Xa ̄=Xa^=k1×α+X ̄、σa=σa^=(k2×α+σ2)1/2なので、移動後の上限規格値と下限規格値は次式となる(S44)。
Sua=k1×α+X ̄+(Su−X ̄)×(k2×α+σ2)1/2/σ、
Sla=k1×α+X ̄−(X ̄−Sl)×(k2×α+σ2)1/2/σ。
【0130】
これらの規格値Sua・Slaを用いて、今回抽出された集合の中間特性Aの良否判定を行い、不良と判定されたものについては、NGフラグをデータに付与する(S45)。以上の処理を個々の中間特性について同様に実施することにより、中間特性の良否リストが作成される。図12は、上記良否リストの一例を示している。図示において、「良否」の欄に「NG」と記載されたものは、それぞれの中間特性においてNGフラグが付与されていることを示している。なお、図示の場合では、中間特性は3種類(A〜C)となっている。
【0131】
次に、推定値評価部42は、不良推定部41で求められた個々の中間特性の不良数を総和し(S46)、総和した不良数が最小となる変更パターンを選択する(S47)。ここで注意すべき点としては、NGフラグが複数の中間特性で発生した場合、不良数を総和するときに、重複してカウントすることを避ける必要がある。
【0132】
そこで、良否に関する中間特性の優先順位を予め決めておき、優先順位の高い方のNGフラグのみをカウントする。なお、優先順位の決め方はどのような方法でも構わない。例えば、図12に示される良否リストの場合、製造番号93および95でNGフラグが重複している。このとき、中間特性の優先順位をA>B>Cとすれば、不良数の総和=Aの不良数+Bの不良数+Cの不良数=2+1+0=3となる。
【0133】
なお、NGフラグは、付与された場合を1(ON)、付与されていない場合を0(OFF)とするビットデータであらわすのが望ましい。この場合は、製造番号ごとに、中間特性A〜CのNGフラグに関して論理和(OR)をとり、これをカウントすることにより不良数の総和を求めることができる。
【0134】
推定値評価部42が、上記の不良数の総和(総不良数)を変更パターンごとに行うことにより、推定値テーブルに対応する総不良数テーブルが作成される。図13は、この総不良数テーブルの一例を示しており、図11に示される推定値テーブルに対応するものである。推定値評価部42は、上記総不良数テーブルを参照して、総不良数が最小となる変更パターンを選択する。図13の場合には、制御対象1(制御対象機器3)の制御値の設定値の変更量が0.003であり、制御対象2(制御対象機器4)の制御値の設定値の変更量が0.010である組合せが総不良数15で最小となっているので、この変更パターンが選択される。
【0135】
そして、推定値評価部42は、選択した変更パターン(変更量の組合せ)を制御命令部17に送出する(S48)。また、選択した変更パターンに対応する中間特性の推定値を影響度生成部14に送出する。その後、推定部16の動作を終了する。
【0136】
なお、総不良数が最小となる変更パターンを選択した結果、制御対象1・2の何れかあるいは両方の変更量が0.000、すなわち変更不要となる場合もありうる。この場合は、当該制御対象について、変更量の制御命令部17への送出を省略してもよい。
【0137】
制御命令部17は、推定値評価部42が選択した変更パターン、すなわち制御値の設定値の変更量に関する制御対象ごとの組合せを取得し、取得した変更パターンに基づいて、各制御対象機器3・4の制御値の設定値を変更し、変更した設定値を制御命令として制御対象機器3・4にそれぞれ送信する。例えば、制御値の設定値は次式に従って変更しても良い。
(今回の制御値の設定値)=(前回の制御値の設定値)+(不良数が最小となる制御値の設定値の変更量)。
【0138】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0139】
例えば、制御値の設定値や中間特性の規格値の変更を指示する時刻と、各機器3〜5が実際に変更を行う時刻との間には若干のタイムラグが存在すると考えられる。また、各機器3〜6が計測を行う時刻と、品質制御装置10が各種の計測値を取得する時刻との間には若干のタイムラグが存在すると考えられる。このため、スケジューラ12は、これらのタイムラグも調整して、データの対応付けやタイミングの決定を行うことが望ましい。
【0140】
また、本実施形態では、データ記憶部11は、取得時刻を記憶しているが、各機器3〜6が計測した時刻である計測時刻を各機器3から受け取って記憶しても良い。この場合、スケジューラ12は、計測時間を利用して対応付けを行うことになる。
【0141】
また、本実施形態では、2台の制御対象機器3・4と1台の中間特性検査器5とを利用しているが、制御対象機器を1台とすることもできるし、制御対象機器および中間特性検査器をさらに増やすこともできる。
【0142】
以上のように、本発明に係る品質制御装置は、所定の品質を有する製品を製造するために製造工程の制御を行う品質制御装置であって、製造工程に設けられた複数の計測機器が計測した計測データを収集し、収集した計測データを、計測した時刻または収集した時刻とともに記憶する記憶手段と、計測した時刻または収集した時刻に、上記計測機器同士の間で生じる無駄時間を考慮することにより、上記計測機器の計測データ同士の対応付けを行う対応付け手段とを備える。
【0143】
或る機器で計測された中間品は、該中間品を計測してから大体無駄時間を経過した時刻に次の機器で計測されることになる。このことから、各計測機器が計測した時刻または各計測機器から収集した時刻は、上記無駄時間によって大まかな対応付けを行うことができる。
【0144】
したがって、上記の構成によると、収集した計測データが、計測した時刻または収集した時刻と関連付けられているので、対応付け手段が、計測した時刻または収集した時刻を上記計測機器同士の間で生じる無駄時間によって大まかな対応付けを行うことにより、計測機器の計測データ同士の対応付けを行うことができる。
【0145】
また、無駄時間は、対応付け手段でのみ利用され、無駄時間を変更しても記憶手段が記憶するデータへの影響が無い。したがって、無駄時間の変更を容易に行うことができる。
【0146】
なお、上記対応付け手段は、複数の上記計測機器の所定数の計測データ同士を対応付けてもよい。この場合、各計測機器では、所定数の計測データからなる集合が形成され、複数の計測機器における上記集合同士が対応付けられることになる。これにより、対応付けた各集合に含まれる計測データの数が一定となるので、各集合の統計量の精度を概ね一致させることができる。また、計測機器が計測する期間ではなく、計測する数に基づいて集合を形成するので、例えば製造工程内の或る工程が長時間停止して再開した場合でも、各集合を適切に対応付けることができる。
【0147】
また、上記対応付け手段は、対応付けるべき計測データの中に不適切な計測データが含まれる場合には、上記不適切な計測データと、他の上記計測機器が計測した計測データであって、上記不適切な計測データに対応する計測データとの対応付けを中止することが望ましい。
【0148】
ここで、不適切な計測データとしては、測定値が通常の値から大きく外れた異常値である場合、測定の失敗等により機器が同一の中間品に対し再測定を行う場合、中間検査にて規格外と判定した中間品を上流側の工程に再投入する場合、および、中間検査にて規格外と判定した中間品をその検査直後に除外する場合の計測データが挙げられる。
【0149】
これらの不適切な計測データは、統計処理を行う上で精度を低下させる原因となる。したがって、上記の構成によると、不適切な計測データが上記対応付けに利用されないから、統計処理の精度が低下することを防止できる。
【0150】
なお、中間品を再投入する場合には、再投入された中間品に関して、再投入される工程とその下流側にある計測機器の計測データとは存在するが、再投入される工程の上流側にある計測機器の計測データは存在しない。したがって、上記製造工程内の或る工程において、中間品が再投入される場合、上記対応付け手段は、上記工程の上流側にある上記計測機器の上記中間品に関する計測データと、上記工程とその下流側にある上記計測機器の上記中間品に関する計測データとの対応付けを中止することが望ましい。
【0151】
また、中間品をその検査直後に除外する場合には、除外される中間品に関して、除去される工程とその上流側にある計測機器の計測データとは存在するが、除去される工程の下流側にある計測機器の計測データは存在しない。したがって、上記製造工程内の或る工程において、中間品が除去される場合、上記対応付け手段は、上記工程の下流側にある上記計測機器の計測データと、上記工程とその上流側にある上記計測機器の上記中間品に関する計測データとの対応付けを中止することが望ましい。
【0152】
本発明に係る品質制御装置は、所定の品質を有する製品を製造するために、製造工程に設けられた制御対象機器を制御する品質制御装置であって、上記制御対象機器に対し制御の目標値として設定される制御値の設定値と、該制御値の設定値に対し上記制御対象機器が計測した制御値の計測値である制御データと、中間特性検査器が計測した中間品の中間特性データとを収集して記憶する記憶手段と、該記憶手段が記憶した制御値の設定値を変更した場合における中間特性データのデータ分布の変動を推定する中間特性推定手段と、該中間特性推定手段が推定した中間特性データのデータ分布の変動と、中間特性規格値とに基づいて、不良数を推定する不良数推定手段と、該不良数推定手段が推定した不良数が最小となるような上記制御値の設定値の変更量を決定する変更量決定手段と、該変更量決定手段が決定した変更量に基づいて、上記制御対象機器の制御値の設定値を変更する制御変更手段とを備えることを特徴としている。
【0153】
ここで、データ分布を示す量としては、平均値、上記バラツキ値など、多種多様なものを利用することができる。
【0154】
上記の構成によると、制御値の設定値を変更した場合の中間特性データのデータ分布の変動を推定し、発生する不良数を推定している。そして、推定した不良数が最小となるような制御値の設定値の変更量を決定して、制御対象機器の制御値の設定値を変更する。
【0155】
これにより、製造途中で中間品を検査し、中間品の不良品の数が少なくなるように制御対象機器の制御を変更するので、制御のフィードバックループの間隔を短縮することができる。また、データ分布の変動を推定することにより、データのバラツキも考慮できるので、発生する不良数をより正確に推定することができる。
【0156】
なお、制御データの平均値の変化量に対する、上記中間特性データのデータ分布の変動量の度合いを示す影響度を記憶する影響度記憶手段をさらに備えており、上記中間特性推定手段は、上記記憶手段が記憶した制御値の設定値の変更量と、上記影響度記憶手段が記憶した影響度とに基づいて、中間特性データのデータ分布の変動量を推定しており、上記変更量決定手段は、上記不良数推定手段が推定した不良数が最小となるような上記制御値の設定値の変更量を決定することが望ましい。この場合、制御データの平均値の変化量と中間特性データのデータ分布の変動量との対応関係が判明しているので、中間特性データのデータ分布の変動量をより正確に推定でき、発生する不良数をより正確に推定することができる。
【0157】
また、上記変更量決定手段が決定した上記制御値の設定値の変更量に対応する上記中間特性データのデータ分布と、上記制御変更手段が制御を変更した後に上記記憶手段が収集した中間特性データの分布との間に所定以上の差が生じた場合に、上記影響度を作成して上記影響度記憶手段に記憶させる影響度作成手段をさらに備えることが望ましい。この場合、製造プロセスに何らかの変動が生じても、影響度を自動的に修正できるので、中間特性データのデータ分布の変動量をより正確に推定でき、適切な品質の製品を製造することができる。
【0158】
また、上記記憶手段は、最終特性検査器が計測した完成品の最終特性データをさらに収集して記憶しており、該記憶手段が記憶した最終特性データのデータ分布と、上記最終特性検査器に設定された最終特性規格値とに基づいて、上記中間特性検査器に設定する中間特性規格値を生成する規格値生成手段をさらに備えており、上記不良数推定手段は、上記規格値生成手段が生成した中間特性規格値を利用することが望ましい。この場合、製造プロセスに何らかの変動が生じても、中間特性規格値を自動的に修正できるので、発生する不良数をより正確に推定でき、適切な品質の製品を製造することができる。
【0159】
また、上記記憶手段は、上記制御データおよび上記中間特性データを、計測した時刻または収集した時刻とともに記憶しており、計測した時刻または収集した時刻に、上記制御対象機器および上記中間特性検査器同士の間で生じる無駄時間を考慮することにより、上記制御データおよび上記中間特性データの対応付けを行う対応付け手段をさらに備えることが望ましい。この場合、収集した制御データおよび中間特性データが、計測した時刻または収集した時刻と関連付けられているので、対応付け手段が、計測した時刻または収集した時刻を制御対象機器および中間特性検査器同士の間で生じる無駄時間によって大まかな対応付けを行うことにより、制御データおよび中間特性データ同士の対応付けを行うことができる。
【0160】
また、上記中間特性推定手段は、上記制御変更手段が制御を変更してから所定時間経過した後に上記記憶手段が収集した上記中間特性データを利用して、次の中間特性データのデータ分布を推定することが望ましい。この場合には、制御の変更途中のデータを利用しないので、より正確な制御が可能となる。
【0161】
本発明に係る品質制御装置の制御方法は、所定の品質を有する製品を製造するために製造工程の制御を行う品質制御装置の制御方法であって、上記品質制御装置は、製造工程に設けられた複数の計測機器が計測した計測データを収集し、収集した計測データを、計測した時刻または収集した時刻とともに記憶する記憶手段を備えており、計測した時刻または収集した時刻に、上記計測機器同士の間で生じる無駄時間を考慮することにより、上記計測機器の計測データ同士の対応付けを行う対応付けステップを含む。
【0162】
上記の方法によると、収集した計測データが、計測した時刻または収集した時刻と関連付けられているので、対応付け手段が、計測した時刻または収集した時刻を上記計測機器同士の間で生じる無駄時間によって大まかな対応付けを行うことにより、計測機器の計測データ同士の対応付けを行うことができる。また、無駄時間は、対応付けステップでのみ利用され、無駄時間を変更しても記憶手段が記憶するデータへの影響が無い。したがって、無駄時間の変更を容易に行うことができる。
【0163】
本発明に係る品質制御装置の制御方法は、所定の品質を有する製品を製造するために、製造工程に設けられた制御対象機器を制御する品質制御装置の制御方法であって、上記品質制御装置は、上記制御対象機器に対し制御の目標値として設定される制御値の設定値と、該制御値の設定値に対し上記制御対象機器が計測した制御値の計測値である制御データと、中間特性検査器が計測した中間品の中間特性データとを収集して記憶する記憶手段を備えており、該記憶手段が記憶した制御値の設定値を変更した場合における中間特性データのデータ分布の変動を推定する中間特性推定ステップと、該中間特性推定ステップにて推定した中間特性データのデータ分布の変動と、中間特性規格値とに基づいて、不良数を推定する不良数推定ステップと、該不良数推定ステップにて推定した不良数が最小となるような上記制御値の設定値の変更量を決定する変更量決定ステップと、該変更量決定ステップにて決定した変更量に基づいて、上記制御対象機器の制御値の設定値を変更する制御変更ステップとを含む。
【0164】
上記の方法によると、制御値の設定値を変更した場合における中間特性データのデータ分布の変動を推定し、発生する不良数を推定している。そして、推定した不良数が最小となるような制御値の設定値の変更量を決定して、制御対象機器の制御値の設定値を変更する。これにより、製造途中で中間品を検査し、中間品の不良品の数が少なくなるように制御対象機器の制御を変更するので、制御のフィードバックループの間隔を短縮することができる。また、データ分布の変動を推定することにより、データのバラツキも考慮できるので、発生する不良数をより正確に推定することができる。
【0165】
また、品質制御装置10の各ブロックは、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0166】
すなわち、品質制御装置10は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムを格納したROM、上記プログラムを展開するRAM、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである品質制御装置10の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記品質制御装置10に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0167】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フレキシブルディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0168】
また、品質制御装置10を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された搬送波あるいはデータ信号列の形態でも実現され得る。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明に係る品質制御装置は、製造工程以外にも、家電製品の制御など、種々のプロセスを制御して適切な状態を維持する装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】本発明の実施形態である品質制御装置を含む品質制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】上記品質制御装置の処理動作を示すフローチャートである。
【図3】上記品質制御装置におけるデータ記憶部の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図4】上記データ記憶部に記憶されるデータの一例を表形式で示す図であり、同図(a)〜(d)は、それぞれ第1の制御データ、第2の制御データ、中間特性データ、および最終特性データの一例を示している。
【図5】上記品質制御装置におけるスケジューラの概略構成を示す機能ブロック図である。
【図6】上記スケジューラのタイミング動作を例示するタイミングチャートである。
【図7】同図(a)は最終特性データのデータ分布を示すグラフであり、同図(b)は中間特性データのデータ分布を示すグラフであり、上記最終特性データのデータ分布に基づいて規格値が変更される様子を示している。
【図8】上記品質制御装置における影響度生成部の処理動作を示すフローチャートである。
【図9】上記品質制御装置における推定部の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図10】上記推定部の処理動作を示すフローチャートである。
【図11】上記推定部における中間特性推定部が作成する中間特性の推定値テーブルの一例を表形式で示す図である。
【図12】上記推定部における不良推定部が作成する中間特性の良否リストの一例を表形式で示す図である。
【図13】上記推定部における推定値評価部が作成する総不良数テーブルの一例を表形式で示す図である。
【図14】一般的な生産現場で生じる不適切な取得データの種類と、その原因例および内容との対応関係を表形式で示す図である。
【図15】上記不適切な取得データの種類と、前工程または後工程の集合と対応付ける場合に、取得データを無効とするか有効とするかを示す情報およびその理由との対応関係を表形式で示す図である。
【符号の説明】
【0171】
1 品質制御システム
3・4 制御対象機器(計測機器)
5 中間特性検査器(計測機器)
6 最終特性検査器(計測機器)
10 品質制御装置
11 データ記憶部(記憶手段)
12 スケジューラ(対応付け手段)
13 規格値生成部(規格値生成手段、規格値設定制御手段)
14 影響度生成部(影響度生成手段)
15 影響度記憶DB(影響度記憶手段)
17 制御命令部(制御変更手段)
40 中間特性推定部(中間特性推定手段)
41 不良数推定部(不良数推定手段)
42 推定値評価部(変更量決定手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の品質を有する製品を製造するために、製造工程の制御を行う品質制御装置およびその制御方法、品質制御プログラム、並びに該プログラムを記録した記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、製品の品質を向上する取り組みが行われるとともに、各種の品質制御方法が提案されている。
【0003】
例えば、トレーサビリティを実現するために、製品の中間品や該中間品が載置される台座などに、バーコードなどの識別コードを付して管理する方法が提案されている。また、トレーサビリティを実現するために、各製造工程に投入される中間品の順番で中間品を識別する方法が提案されている。
【0004】
また、制御因子と製品特性との因果関係を完全に把握することにより、最適な製品特性を得るための制御因子を特定する方法が提案されている。また、制御因子の全ての状態を固定することにより、製品特性を維持する方法が提案されている(たとえば、特許文献2・3を参照。)。
【0005】
また、各製品特性の指標を設け、これらの指標から総合評価を行う方法が提案されている。また、製造の最終工程で製品特性の良否を判定し、不良品と判定した場合に、製造工程における制御パラメータを調整する方法が提案されている(たとえば、特許文献1を参照。)。
【特許文献1】特開平7−141005号公報(1995年6月2日公開)
【特許文献2】特開平6−110504号公報(1994年4月22日公開)
【特許文献3】特開平4−188301号公報(1992年7月6日公開)
【非特許文献1】田口玄一、吉澤正孝、「品質工学講座1/開発・設計段階の品質工学」、日本規格協会、1988年発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、識別コードを付して管理する方法の場合、製造コストが上昇するという問題がある。また、製造工程では不良品の抜取りや手直し、再投入が発生することが多い。このため、中間品の順番で中間品を識別する上記方法で中間品を正しく識別できるとは限らない。
【0007】
また、制御因子は多数存在するので、制御因子と製品特性との因果関係を完全に把握するには、多数の検証実験が必要となる。また、因果関係が複雑になればなるほど、完全な把握が困難である。また、制御因子の全ての状態を固定したとしても、観測できない因子の時間変動により、製品特性が変動することになる。
【0008】
また、各製品特性の指標から総合評価を行う方法では、製品特性同士がトレードオフの関係にあることが多いため、総合評価を行うことは困難である。また、製造の最終工程で製品特性の良否を判定する方法では、不良品を最終工程まで製造し続けるため、無駄な製造時間や材料が増えることになる。また、制御のフィードバックループの間隔も長くなる。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、トレーサビリティが困難な製造現場で、異なる工程で収集される各種データの対応付けを行う品質制御装置などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る品質制御装置は、所定の品質を有する製品を製造するために製造工程の制御を行う品質制御装置であって、中間特性検査器が計測した中間品の中間特性データと、最終特性検査器が計測した完成品の最終特性データとを収集して記憶する記憶手段と、該記憶手段が記憶した最終特性データのデータ分布と、上記最終特性検査器に設定された最終特性規格値とに基づいて、上記中間特性検査器が不良の中間品を排除するための判定基準である中間特性規格値を生成する規格値生成手段と、該規格値生成手段が生成した規格値を設定するように上記中間特性検査器を制御する規格値設定制御手段とを備えることを特徴としている。
【0011】
ここで、中間特性検査器は、製造途中の中間品の中間特性を検査し、中間特性規格値に基づいて中間品の良否を判定するものである。中間特性検査器を用いることにより、不良品は製造途中に取り除かれるため、無駄な不良品の製造時間がなくなり、制御のフィードバックループの間隔を短縮することができる。
【0012】
そして、上記の構成によると、規格値生成手段が、完成品の最終特性に基づいて、中間特性規格値を変更するので、製造工程における各種パラメータが変動しても、中間特性規格値を自動的に調整することができる。
【0013】
なお、上記規格値生成手段は、上記最終特性データのデータ分布の平均値と、上記最終特性規格値との差分に基づいて上記中間特性規格値を生成することが望ましい。さらに、上記規格値生成手段は、上記最終特性データのデータ分布の平均値と上記最終特性規格値との差分に対する、上記記憶手段が記憶した中間特性データのデータ分布の平均値と上記中間特性規格値との差分の比率が、上記最終特性データのデータ分布のバラツキ値に対する、上記中間特性データのデータ分布のバラツキ値の比率となるように、上記中間特性規格値を生成することが望ましい。
【0014】
ここで、データ分布のバラツキ値は、データ分布のバラツキの度合いを示すものであり、例えば、標準偏差、分散、半値幅などが上げられる。
【0015】
また、上記規格値生成手段は、さらに安全係数に基づいて上記中間特性規格値を生成することが望ましい。この場合、上記中間特性規格値に基づいて上記中間品を効率よく排除することができる。また、上記安全係数は、経験則に基づいて設定されることもできるが、上記最終特性規格値に基づいて上記完成品を排除する場合の廃棄コストと、上記中間特性規格値に基づいて上記中間品を排除する場合の廃棄コストとに基づいて算出されることが望ましい。
【0016】
また、上記記憶手段は、上記中間特性データおよび上記最終特性データを、計測した時刻または収集した時刻とともに記憶しており、計測した時刻または収集した時刻に、上記中間特性検査器および上記最終特性検査器同士の間で生じる無駄時間を考慮することにより、上記中間特性データおよび上記最終特性データの対応付けを行う対応付け手段をさらに備えることが望ましい。この場合、収集した中間特性データおよび最終特性データが、計測した時刻または収集した時刻と関連付けられているので、対応付け手段が、計測した時刻または収集した時刻を中間特性検査器および最終特性検査器同士の間で生じる無駄時間によって大まかな対応付けを行うことにより、中間特性データおよび最終特性データ同士の対応付けを行うことができる。
【0017】
また、上記規格値生成手段は、上記規格値設定制御手段が上記中間特性検査器を制御してから所定時間経過した後に上記記憶手段が収集した上記中間特性データおよび上記最終特性データを利用して、次の規格値の生成を行うことが望ましい。一般に機器の設定値を変更する場合、変更が完了するまで多少のタイムラグが発生する。したがって、上記の場合には、変更の途中のデータを利用しないので、より正確な制御が可能となる。
【0018】
本発明に係る品質制御装置の制御方法は、所定の品質を有する製品を製造するために製造工程の制御を行う品質制御装置の制御方法であって、上記品質制御装置は、中間特性検査器が計測した中間品の中間特性データと、最終特性検査器が計測した完成品の最終特性データとを収集して記憶する記憶手段を備えており、該記憶手段が記憶した最終特性データのデータ分布と、上記最終特性検査器に設定された最終特性規格値とに基づいて、上記中間特性検査器が不良の中間品を排除するための判定基準である中間特性規格値を生成する規格値生成ステップと、該規格値生成ステップにて生成した規格値を設定するように上記中間特性検査器を制御する規格値設定制御ステップとを含むことを特徴としている。
【0019】
上記の方法によると、規格値生成ステップにて、完成品の最終特性に基づいて、中間特性規格値が変更されるので、製造工程における各種パラメータが変動しても、中間特性規格値を自動的に調整することができる。
【0020】
なお、上記品質制御装置における各手段を、品質制御プログラムによりコンピュータ上で実行させることができる。さらに、上記品質制御プログラムをコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶させることにより、任意のコンピュータ上で上記品質制御プログラムを実行させることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明に係る品質制御装置は、規格値生成手段が、完成品の最終特性に基づいて、中間特性規格値を変更するので、製造工程における各種パラメータが変動しても、中間特性規格値を自動的に調整することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について図1〜図15に基づいて説明する。図1は、或る材料から製造される製品の品質を制御する品質制御システムの概略構成を示している。図示のように、品質制御システム1は、制御対象となる制御対象機器(計測機器)3・4と、製造途中の中間品の特性である中間特性を検査する中間特性検査器(計測機器)5と、製造された製品の最終特性を検査する最終特性検査器(計測機器)6と、各種の機器3〜6からデータを収集し、収集したデータに基づいて、制御対象機器3・4を制御するとともに中間特性検査器5における規格値を変更させる品質制御装置10とを備える構成である。
【0023】
一般に、製品7は、ワーク2に対し多数の処理工程を経て製造されるが、本実施形態では、本発明の理解を容易にするため、下記のように製造されるものとする。すなわち、ワーク2に対し、第1および第2の制御対象機器3・4がそれぞれの処理を順次行い、その後、中間特性検査器5が中間特性の検査処理を行い、その他の機器が各種の処理を行った後、最終特性検査器6が最終特性の検査処理を行うものとする。
【0024】
制御対象機器3・4のそれぞれは、品質制御装置10から制御値の設定値を取得し、取得した設定値に基づいて動作するものである。また、制御対象機器3・4のそれぞれは、上記制御値を実際に計測し、計測した計測値を品質制御装置10に送信するものである。ここで、制御値は、例えば、制御対象機器がヒータ(加熱器)であれば、温度や、該温度に対応する電圧、抵抗値など、温度を示す数値となる。
【0025】
中間特性検査器5は、品質制御装置10から規格値を取得し、取得した規格値に基づいてワーク2(中間品)の中間特性を検査するものである。また、中間特性検査器5は、検査した中間特性を品質制御装置10に送信するものである。
【0026】
中間特性検査器5が規格外と判定した中間品は、通常、中間特性を検査した直後に除外される。しかしながら、規格外と判定された中間品に対し、第2の制御対象機器4が再度処理を行うことにより容易に規格内となる可能性がある場合には、上記中間品は、第2の制御対象機器4が行う処理工程に再投入することができる。また、システムの構成上や機器の構造上、中間特性を検査した直後に除外することが困難な場合には、さらに後の工程で除外するようにしてもよい。
【0027】
最終特性検査器6は、所定の規格値に基づいて完成品の最終特性を検査するものである。このとき、規格外と判定された完成品は廃棄または修理、あるいは分解再利用され、規格内と判定された完成品は製品7として出荷される。また、最終特性検査器6は、検査した最終特性を品質制御装置10に送信するものである。
【0028】
なお、通常は、或るワーク2に対し、各機器3〜6が処理を行う時刻にタイムラグが発生する。このタイムラグを「無駄時間」と称する。図1に示される場合では、第1の制御対象機器3で処理が開始される時刻と、第2の制御対象機器4で処理が開始される時刻との間に無駄時間Td1が発生し、第2の制御対象機器4で処理が開始される時刻と、中間特性検査器5で処理が開始される時刻との間に無駄時間Td2が発生し、中間特性検査器5で処理が開始される時刻と最終特性検査器6で処理が開始される時刻との間に無駄時間Td3が発生することになる。
【0029】
なお、制御対象機器、中間特性検査器、および最終特性検査器は、1台でも複数台でもよい。また、製造に関する全ての機器が制御対象機器になるとは限らない。また、1つの機器が複数の制御対象機器を含むこともあり得る。
【0030】
品質制御装置10は、図1に示されるように、データ記憶部(記憶手段)11、スケジューラ(対応付け手段)12、規格値生成部(規格値生成手段、規格値設定制御手段)13、影響度生成部(影響度生成手段)14、影響度記憶DB(データベース)(影響度記憶手段)15、推定部16、および制御命令部(制御変更手段)17を備える構成である。この制御装置10は、例えばPC(Personal Computer)ベースのコンピュータによって構成される。
【0031】
データ記憶部11は、制御対象機器3・4のそれぞれから制御値の計測値を順次取得し、取得した計測値および取得時刻(収集した時刻)を制御データとして記憶し、中間特性検査器5から中間特性を順次取得し、取得した中間特性および取得時刻を中間特性データとして記憶し、かつ、最終特性検査器6から最終特性を順次取得し、取得した最終特性および取得時刻を最終特性データとして記憶する。また、データ記憶部11は、データの取得を開始したことをスケジューラ12に通知する。なお、取得時刻の代わりに、各機器3〜6が計測した時刻を記憶しても良い。
【0032】
スケジューラ12は、データ記憶部11に記憶された制御データ、中間特性データ、および最終特性データのうち、同じワーク2と推定されるもの同士の対応付けを、各データの取得時刻と上記無駄時間とを利用して行う。また、スケジューラ12は、制御対象機器3・4を制御する制御値の設定値を変更するタイミングと、中間特性検査器5の中間特性の規格値を変更するタイミングとを決定する。
【0033】
なお、上記対応付けは、個々のワーク2を単位として行っても良いし、所定数のワーク2、または所定時間に処理されるワーク2を単位として行っても良い。以下では、この所定数または所定時間に含まれる一連のデータを集合と称する。
【0034】
規格値生成部13は、スケジューラ12が対応付けを行った中間特性データの集合および最終特性データの集合をデータ記憶部11から読み出し、読み出した集合に基づいて中間特性の規格値を生成する。また、規格値生成部13は、生成した規格値を、スケジューラ12が決定したタイミングに基づいて中間特性検査器5に送信する。なお、規格値生成部13は、中間特性検査器5の中間特性の規格値を変更すべき場合にのみ、上記規格値を生成しても良い。さらに、規格値生成部13は、中間特性の規格値の推定値を生成し、生成した推定値を推定部16に送信する。
【0035】
影響度生成部14は、推定部16の要求に応じて影響度を生成する。ここで、影響度とは、制御値を変更したときに中間特性がどのように変動するかを示すものである。また、影響度生成部14は、生成した影響度を推定部16に送信するとともに、影響度記憶DB15に記憶させる。具体的には、影響度生成部14は、スケジューラ12が対応付けを行った制御データの集合および中間特性データの集合をデータ記憶部11から読み出し、読み出した集合に基づいて、制御データの平均値の変化量に対する、中間特性データの平均値および/または分散の変動量を算出し、正規化することにより影響度の生成を行う。なお、分散の代わりに、バラツキの程度を示す任意の指標を用いることができ、例えば標準偏差や半値幅を用いることができる。
【0036】
推定部16は、スケジューラ12が対応付けを行った中間特性データの集合をデータ記憶部11から読み出し、読み出した集合から中間特性の平均値および/または分散の変動量を、影響度記憶DB15から読み出した影響度を用いて推定する。また、推定部16は、上記変動量の推定値で、中間特性の分布を変動した場合の不良数を推定して、個々の不良数の総和で評価する。そして、不良数が最小となる場合における制御値の設定値の変更量を求めて制御命令部17に送信する。
【0037】
制御命令部17は、推定部16が求めた制御値の設定値の変更量に基づいて、制御値の設定値を変更する。また、制御命令部17は、変更した設定値を制御命令として、スケジューラ12が決定したタイミングに基づいて制御対象機器3・4にそれぞれ送信する。これにより、制御対象機器3・4における制御値の設定値が変更される。
【0038】
上記構成の品質制御システム1における処理動作を図2に基づいて説明する。図2は、品質制御システム1における処理動作の概要を示している。なお、図には示していないが、品質制御装置10が動作を開始すると、各機器3〜6から各種データをそれぞれ順次取得して記憶し続ける。
【0039】
まず、スケジューラ12は、データ記憶部11から各種データの取得を行い(ステップS10。以下、単に「S10」と記載することがある。他のステップについても同様である。)、中間特性データと最終特性データとの対応付けが可能であるか否かを判断する(S11)。
【0040】
上記対応付けが可能である場合には(S11でYES)、対応付けられた中間特性データの集合と最終特性データの集合とを用いて、規格生成部13が中間特性の規格値を生成して中間特性検査器5に送信することにより中間特性の規格値の修正を行う(S12)。一方、上記対応付けが不可能である場合には(S11でNO)、中間特性の規格値の修正を行わずに次ステップ(S13)へ進む。
【0041】
次に、スケジューラ12は、制御データと中間特性データとの対応付けが可能であるか否かを判断する(S13)。上記対応付けが不可能である場合には(S13でNO)、ステップS10に戻って上記の処理動作を繰り返す。
【0042】
一方、上記対応付けが可能である場合には(S13でYES)、中間特性データの計測値と、前回推定した中間特性データの推定値と差が所定値以上であるか否かを判断する(S14)。計測値と推定値との差が所定値以上である場合には(S14でYES)、影響度生成部14が影響度を生成して、影響度記憶DB15に記憶された影響度の更新を行う(S15)。一方、計測値と推定値との差が所定値未満である場合には(S14でNO)、影響度の更新を行わずに次ステップ(S16)へ進む。
【0043】
次に、推定部16が、中間特性データの集合をデータ記憶部11から抽出するとともに、影響度記憶DB15から影響度を取得し、抽出した中間特性データの集合と、取得した影響度とを利用して、制御値の設定値を変更したときに、中間特性データのデータ分布がどのように変動するかを推定して(S16)、不良数の推定を行う(S17)。
【0044】
次に、推定部16が、不良数が最小となるように、中間特性データの推定値(分布の変動量)を決定するとともに(S18)、対応する制御値の設定値の変更量を決定する。次に、決定した変更量に基づいて、制御命令部17が、制御値の設定値を決定し、決定した制御値の設定値を制御対象機器3・4に送信することにより、制御値の設定変更の指示を行う(S19)。その後、ステップS10に戻って上記の処理動作を繰り返す。
【0045】
上記の構成によると、データ記憶部11が記憶したデータが、計測した時刻または収集した時刻と関連付けられているので、スケジューラ12が、計測した時刻または収集した時刻を上記計測機器同士の間で生じる無駄時間によって大まかな対応付けを行うことにより、計測機器の計測データ同士の対応付けを行うことができる。また、無駄時間は、スケジューラ12でのみ利用され、無駄時間を変更してもデータ記憶部11が記憶するデータへの影響が無い。したがって、無駄時間の変更を容易に行うことができる。
【0046】
また、規格値生成部13が、完成品の最終特性に基づいて、中間特性の規格値を変更するので、製造工程における各種パラメータが変動しても、中間特性の規格値を自動的に調整することができる。
【0047】
また、推定部16が、制御値の設定値を変更した場合における中間特性データのデータ分布の変動を推定し、発生する不良数を推定し、推定した不良数が最小となるような制御値の設定値の変更量を決定して、制御対象機器の制御値の設定値を変更している。これにより、製造途中で中間品を検査し、中間品の不良品の数が少なくなるように制御対象機器の制御を変更するので、制御のフィードバックループの間隔を短縮することができる。また、データ分布の変動を推定することにより、データのバラツキも考慮できるので、発生する不良数をより正確に推定することができる。
【0048】
また、影響度記憶DB15が記憶した影響度により、制御データの平均値の変化量と中間特性データのデータ分布の変動量との対応関係が判明しているので、中間特性データのデータ分布の変動量をより正確に推定でき、発生する不良数をより正確に推定することができる。
【0049】
また、中間特性の推定値が実測値とかけ離れた場合には、影響度生成部14が影響度を作成して影響度記憶DB15に記憶させるので、製造プロセスに何らかの変動が生じても、影響度を自動的に修正できる。したがって、中間特性データのデータ分布の変動量をより正確に推定でき、適切な品質の製品を製造することができる。
【0050】
なお、上記の品質制御装置10は種々のプロセスに対して適用可能である。適用可能なプロセスの一例としては、特開2002−287803に記載のセンサ素子の製造プロセスが挙げられる。この製造プロセスは、成型・研削工程(工程1)、焼成工程(工程2)、めっき工程(工程3)、電極保護層の成膜工程(工程4)、トラップ層の成膜工程(工程5)、エージング工程(工程6)、組み立て工程(工程7)、および特性検査工程(工程8)からなる。上記工程1〜6からそれぞれ成型比重、焼成比重、めっき膜厚、コート膜厚、塗布重量、およびエージング温度・添加物濃度が中間特性として取得され、上記工程8から最終特性が取得される。また、各工程で利用される装置が制御対象機器となる。
【0051】
以下、品質制御装置10における各ブロックについて、図3〜図15に基づいて詳細に説明する。
【0052】
図3は、データ記憶部11の概略構成を示している。データ記憶部11は、制御データ記憶部20および制御データ記憶DB21と、中間特性データ記憶部22および中間特性データ記憶DB23と、最終特性データ記憶部24および最終特性データ記憶DB25とを備える構成である。
【0053】
制御データ記憶部20は、制御命令部17が制御対象機器に指示した制御値の設定値と、該設定値に対して上記制御対象機器が実際に計測した計測値と、該計測値を取得した取得時刻とを制御データとして取得し、取得した制御データを制御データ記憶DB21に記憶させる。なお、制御データの取得および記憶は、制御対象機器3・4ごとに行われる。また、制御値の設定値は、制御対象機器3・4から取得しても良いし、制御命令部17から取得しても良い。
【0054】
中間特性データ記憶部22は、中間特性検査器5が検査した2つの中間特性A・Bを取得し、取得した中間特性A・Bおよび取得時刻を関連付けて中間特性データ記憶DB23に記憶させる。また、最終特性データ記憶部24は、最終特性検査器6が検査した2つの最終特性A・Bを取得し、取得した最終特性A・Bおよび取得時刻を関連付けて最終特性データ記憶DB25に記憶させる。
【0055】
図4(a)および(b)は、それぞれ制御対象機器3・4に関して、制御データ記憶DB21に記憶される制御データの一例を示している。また、同図(c)および(d)は、中間特性データ記憶DB23および最終特性データ記憶DB25に記憶される中間特性のデータの一例をそれぞれ示している。
【0056】
なお、図4に示される製造番号は、各機器が処理を行ったワーク2の通し番号である。上述のように、ワーク2は製造途中で合流したり省かれたり再投入されたりすることがあるので、各機器の製造番号が同じであっても同じワーク2に対応するとは限らない。例えば、第1制御対象の製造番号1に対応するワーク2が、第2制御対象の製造番号1に対応するワーク2と同じであるとは限らない。
【0057】
なお、中間特性検査器5が検査する中間特性は、製造途中の中間品の特性であり、最終特性検査器6が検査する以前に検査するものである。このため、中間特性は最終特性と同じ値となるとは限らない。また、本実施形態では、2種類の中間特性および最終特性を取得しているが、1種類でも良いし、3種類以上でも良い。
【0058】
次に、スケジューラ12の詳細について図5および図6に基づいて説明する。上述のように、スケジューラ12は、データ記憶部11に記憶された各種データ同士の対応付けを行い、対応付けられたデータを抽出するタイミングを決定するとともに、制御対象機器3・4を制御する制御値の設定値および中間特性検査器5における中間特性の規格値を変更するタイミングを決定するものである。また、スケジューラ12は、決定したタイミングを規格値生成部13および制御命令部17に送信する。
【0059】
図5は、スケジューラ12の概略構成を示している。図示のように、スケジューラ12は、設定部30、制御値抽出タイミング決定部31、中間特性抽出タイミング決定部32、最終特性抽出タイミング決定部33、制御値変更タイミング決定部34、および規格値変更タイミング決定部35を備える構成である。
【0060】
設定部30は、データを取得する機器間で生じる無駄時間Td1〜Td3と、余裕時間Tm1・Tm2と、対応付けた集合の期間Tsとを設定し、各部31〜35に送信する。なお、これらの値は、ユーザからキーボードなどの入力デバイスを介して取得しても良いし、記憶デバイスから取得しても良いし、他の機器から通信デバイスを介して取得しても良い。
【0061】
ここで、第1の余裕時間Tm1とは、制御値の設定値の変更や中間特性の規格値の変更を指示する時刻から、各種データから抽出する最初の取得時刻までの期間をいう。第1の余裕時間Tm1は、機器に対し設定値や規格値の変更を指示してから、実際に該変更がワーク2に反映されるまでのタイムラグを除去したり、不良の抜取りや再投入によるズレを除去したりするように設定される。
【0062】
また、第2の余裕時間Tm2とは、中間特性データから抽出する最後の取得時刻から、第1の制御対象機器3に対し制御値の設定値の変更を指示する時刻までの期間をいう。第2の余裕時間Tm2は、変更すべき設定値を求めるのに費やす処理時間を考慮して設定される。
【0063】
なお、余裕時間Tm1・Tm2と集合の期間Tsとは、ワーク2の個数で表しても良い。集合の期間Tsをワーク2の個数で表した場合、対応付けた各集合に含まれるデータ数が一定となるので、各集合の統計量の精度を概ね一致させることができる。したがって、例えば機器3〜6の何れかが一旦停止して再開した場合のように、無駄時間が変動しても、各集合を適切に対応付けることができる。
【0064】
なお、無駄時間Td1〜Td3と、余裕時間Tm1・Tm2の値を導出する方法としては、以下の3つの方法が挙げられる。すなわち、第1に、品質制御システムの設計値、すなわち各機器での処理に要する時間や、ワークが各機器間を移動する際の移動距離や移動速度の設計値より計算で導出する方法が挙げられる。第2に、試験運転を行ってワークの処理時間や移動時間を測定して実測値より導出する方法が挙げられる。第3に、実際の製造運転を行ってワークの処理時間や移動時間を測定して実測値より導出する方法が挙げられる。
【0065】
実際には、これらの方法を適宜組み合わせて導出することが望ましい。例えば、品質制御システムが稼動する前の初期設定値は第1の方法で導出し、稼動した後は第2あるいは第3の方法で微調整を行うという方法が挙げられる。
【0066】
なお、中間特性検査器5が検査する中間特性は、製造途中の中間品の特性であり、最終特性検査器6が検査する以前に検査するものである。このため、中間特性は最終特性と同じ値となるとは限らない。また、本実施形態では、2種類の中間特性および最終特性を取得しているが、1種類でも良いし、3種類以上でも良い。
【0067】
次に、スケジューラ12の詳細について図5および図6に基づいて説明する。上述のように、スケジューラ12は、データ記憶部11に記憶された各種データ同士の対応付けを行い、対応付けられたデータを抽出するタイミングを決定するとともに、制御対象機器3・4を制御する制御値の設定値および中間特性検査器5における中間特性の規格値を変更するタイミングを決定するものである。また、スケジューラ12は、決定したタイミングを各ブロック13・14・16・17に送信する。
【0068】
図5は、スケジューラ12の概略構成を示している。図示のように、スケジューラ12は、設定部30、制御値抽出タイミング決定部31、中間特性抽出タイミング決定部32、最終特性抽出タイミング決定部33、制御値変更タイミング決定部34、および規格値変更タイミング決定部35を備える構成である。
【0069】
設定部30は、データを取得する機器間で生じる無駄時間Td1〜Td3と、余裕時間Tm1・Tm2と、および対応付けた集合の期間Tsとを設定し、各部31〜35に送信する。なお、これらの値は、ユーザからキーボードなどの入力デバイスを介して取得しても良いし、記憶デバイスから取得しても良いし、他の機器から通信デバイスを介して取得しても良い。また、余裕時間Tm1・Tm2と集合の期間Tsとは、中間品の個数で表しても良い。
【0070】
ここで、第1の余裕時間Tm1とは、制御値の設定値の変更や中間特性の規格値の変更を指示する時刻から、各種データから抽出する最初の取得時刻までの期間をいう。第1の余裕時間Tm1は、機器に対し設定値や規格値の変更を指示してから、実際に該変更がワークに反映されるまでのタイムラグを除去したり、不良の抜取りや再投入によるズレを除去したりするように設定される。
【0071】
また、第2の余裕時間Tm2とは、中間特性データから抽出する最後の取得時刻から、第1の制御対象機器3に対し制御値の設定値の変更を指示する時刻までの期間をいう。第2の余裕時間Tm2は、変更すべき設定値を求めるのに費やす処理時間を考慮して設定される。
【0072】
なお、無駄時間Td1〜Td3と、余裕時間Tm1・Tm2の値を導出する方法としては、以下の3つの方法が挙げられる。すなわち、第1に、品質制御システムの設計値、すなわち各機器での処理に要する時間や、ワークが各機器間を移動する際の移動距離や移動速度の設計値より計算で導出する方法が挙げられる。第2に、試験運転を行ってワークの処理時間や移動時間を測定して実測値より導出する方法が挙げられる。第3に、実際の製造運転を行ってワークの処理時間や移動時間を測定して実測値より導出する方法が挙げられる。
【0073】
実際には、これらの方法を適宜組み合わせて導出することが望ましい。例えば、品質制御システムが稼動する前の初期設定値は第1の方法で導出し、稼動した後は第2あるいは第3の方法で微調整を行うという方法が挙げられる。
【0074】
制御値抽出タイミング決定部31は、各制御データから制御値の計測値を抽出するタイミングである制御値抽出タイミングをそれぞれ決定する。まず、設定部30から第1の無駄時間Td1、第1の余裕時間Tm1、および集合の期間Tsを取得し、スケジューラ12の動作を開始する動作開始時刻T0と、制御値の設定値の変更を指示する変更指示時刻Ti(iは1以上の整数である。)とを制御値変更タイミング決定部34から取得する。なお、以下では動作開始時刻と変更指示時刻とをまとめてTi(iは0以上の整数)とする。
【0075】
次に、制御値抽出タイミング決定部31は、動作開始時刻または変更指示時刻Tiに第1の余裕時間Tm1を加算した時刻Ti+Tm1から集合の期間Tsまでを第1の制御値抽出タイミングとして決定する。次に、第1の制御値抽出タイミングの開始時刻Ti+Tm1に第1の無駄時間Td1を追加した時刻Ti+Tm1+Td1から集合の期間Tsまでを第2の制御値抽出タイミングとして決定する。また、制御値抽出タイミング決定部31は、第2の制御値抽出タイミングの開始時刻Ti+Tm1+Td1を中間特性抽出タイミング決定部32に送信する。
【0076】
中間特性抽出タイミング決定部32は、中間特性データから中間特性を抽出するタイミングである中間特性抽出タイミングを決定する。まず、設定部30から第2の無駄時間Td2および集合の期間Tsを取得し、制御値抽出タイミング決定部31から第2の制御値抽出タイミングの開始時刻Ti+Tm1+Td1を取得する。
【0077】
次に、中間特性抽出タイミング決定部32は、第2の制御値抽出タイミングの開始時刻Ti+Tm1+Td1に第2の無駄時間Td2を追加した時刻Ti+Tm1+Td1+Td2から集合の期間Tsまでを中間特性抽出タイミングとして決定する。また、中間特性抽出タイミング決定部32は、中間特性抽出タイミングの開始時刻Ti+Tm1+Td1+Td2を最終特性抽出タイミング決定部33に送信するとともに、中間特性抽出タイミングの終了時刻Ti+Tm1+Td1+Td2+Tsを制御値変更タイミング決定部34に送信する。
【0078】
最終特性抽出タイミング決定部33は、最終特性データから最終特性を抽出するタイミングである最終特性抽出タイミングを決定する。まず、設定部30から第3の無駄時間Td3および集合の期間Tsを取得し、中間特性抽出タイミング決定部32から中間特性抽出タイミングの開始時刻Ti+Tm1+Td1+Td2を取得する。
【0079】
次に、最終特性抽出タイミング決定部33は、中間特性抽出タイミングの開始時刻Ti+Tm1+Td1+Td2に第3の無駄時間Td3を追加した時刻Ti+Tm1+Td1+Td2+Td3から集合の期間Tsまでを最終特性抽出タイミングとして決定する。また、最終特性抽出タイミング決定部33は、最終特性抽出タイミングの終了時刻Ti+Tm1+Td1+Td2+Td3+Tsを規格値変更タイミング決定部35に送信する。
【0080】
制御値変更タイミング決定部34は、第1および第2の制御対象機器3・4における制御値の設定値を変更するタイミングである第1および第2の制御値変更タイミングを決定する。まず、設定部30から第1の無駄時間Td1および第2の余裕時間Tm2を取得し、中間特性抽出タイミング決定部32から中間特性抽出タイミングの終了時刻Ti+Tm1+Td1+Td2+Tsを取得する。
【0081】
次に、制御値変更タイミング決定部34は、中間特性抽出タイミングの終了時刻Ti+Tm1+Td1+Td2+Tsに第2の余裕時間Tm2を追加した時刻Ti+Tm1+Td1+Td2+Ts+Tm2を第1の制御値変更タイミングとして決定し、第1の制御値変更タイミングTi+Tm1+Td1+Td2+Ts+Tm2に第1の無駄時間Td1を追加した時刻Ti+Tm1+2×Td1+Td2+Ts+Tm2を第2の制御値変更タイミングとして決定する。また、制御値変更タイミング決定部34は、第1の制御値変更タイミングTi+Tm1+Td1+Td2+Ts+Tm2を次回の変更指示時刻Tiとして制御値抽出タイミング決定部31および規格値変更タイミング決定部35に送信する。
【0082】
規格値変更タイミング決定部35は、中間特性検査器5における中間特性の規格値を変更するタイミングである規格値変更タイミングを決定する。まず、設定部30から第1および第2の無駄時間Td1・Td2を取得し、最終特性抽出タイミング決定部33から最終特性抽出タイミングの終了時刻Ti+Tm1+Td1+Td2+Td3+Tsを取得し、制御値変更タイミング決定部34から変更指示時刻Tiを取得する。
【0083】
次に、規格値変更タイミング決定部35は、最終特性抽出タイミングの終了時刻Ti+Tm1+Td1+Td2+Td3+Tsの後に最初に現れる変更指示時刻Tiを特定し、特定した変更指示時刻Tiに第1および第2の無駄時間Td1・Td2を追加した時刻Ti+Td1+Td2を規格値変更タイミングとして決定する。
【0084】
図6は、上記構成のスケジューラ12のタイミング動作を例示している。図示において、n〜(n+3)が付された領域が、各機器3〜6間で対応付けられた集合を示している。なお、図示の例では、第1の無駄時間Td1を2秒とし、第2の無駄時間Td2を4秒とし、かつ、第3の無駄時間Td3を20秒としている。また、第1および第2の余裕時間Tm1・Tm2を0.75秒とし、集合の期間Tsを4.5秒としている。
【0085】
スケジューラ12が動作を開始した後、制御値変更タイミング決定部34は、n番目の集合に関する変更指示時刻Tn(=t)を決定する。次に、制御値抽出タイミング決定部31は、時刻Tn+Tm1(=t+0.75)から集合の期間Ts(=4.5)までを第1の制御値抽出タイミングとして決定し、時刻Tn+Tm1+Td1(=t+2+0.75)から集合の期間Tsまでを第2の制御値抽出タイミングとして決定する。
【0086】
次に、中間特性抽出タイミング決定部32は、時刻Tn+Tm1+Td1+Td2(=t+6+0.75)から集合の期間Tsまでを中間特性抽出タイミングとして決定する。この中間特性抽出タイミングまでに制御データを抽出でき、この中間特性抽出タイミングにおいて中間特性データを抽出できるので、上述のように、抽出した制御データおよび中間特性データに基づいて、制御対象機器3・4の制御値の設定値をそれぞれ求め、求めた設定値に変更する制御命令を制御対象機器3・4にそれぞれ送信する。
【0087】
この送信するタイミングは、制御値変更タイミング決定部34が決定する。すなわち、制御値変更タイミング決定部34は、時刻Tn+Tm1+Td1+Td2+Ts+Tm2(=t+12)を第1の制御値変更タイミングとして決定し、時刻Tn+Tm1+2×Td1+Td2+Ts+Tm2(=t+14)を第2の制御値変更タイミングとして決定する。また、制御値変更タイミング決定部34は、第1の制御値変更タイミングである時刻Tn+Tm1+Td1+Td2+Ts+Tm2(=t+12)を、(n+1)番目の集合に関する変更指示事項Tn+1(=t+12)となり、以下、制御データおよび中間特性データの抽出と、制御値の設定値の変更とを繰り返す。
【0088】
一方、最終特性抽出タイミング決定部33は、時刻Ti+Tm1+Td1+Td2+Td3(=t+26+0.75)から集合の期間Tsまでを最終特性抽出タイミングとして決定する。この最終特性抽出タイミングまでに中間特性データを抽出でき、この最終特性抽出タイミングにおいて最終特性データを抽出できるので、上述のように、抽出した中間特性データおよび最終特性データに基づいて、中間特性の規格値を求め、求めた規格値に変更する制御命令を中間特性検査器5に送信する。
【0089】
この送信するタイミングは、規格値変更タイミング決定部35が決定する。すなわち、制御値変更タイミング決定部35は、最終特性抽出タイミングの終了時刻Ti+Tm1+Td1+Td2+Td3+Ts(=t+26+0.75+4.5)の後に最初に現れる変更指示時刻Ti(=t+36)を特定して、時刻Ti+Td1+Td2(=t+42)を規格値変更タイミングとして決定する。以下、中間特性データおよび最終特性データの抽出と、規格値の変更とを繰り返す。
【0090】
なお、取得データの中には、上記の対応付けに不適切なものが存在する。図14は、一般的な生産現場で生じる不適切な取得データの種類と、その原因例および内容とを示している。図示のように、不適切な取得データの種類としては、「異常値」、「再測定」、「再投入」、および「除去品」が挙げられる。
【0091】
「異常値」は、測定値が通常の値から大きく外れている場合を示している。一般に、多数のデータから統計量を算出してデータ分布を推定するには、データが平均値付近に集まっている正規分布に近いデータ分布の形状となることが望ましい。このため、上記異常値が取得データとして集合に含まれる場合、該集合のデータ分布を適切に推定することは、異常値の影響が大きくなるために困難となる。
【0092】
「再測定」は、測定の失敗等により機器が同一のワーク2に対し再測定を行う場合を示している。この場合、同一のワーク2に対して複数の測定値が存在することになり、また、再測定前の測定値は異常である可能性が高い。したがって、再測定前の測定値が取得データとして集合に含まれる場合、該集合のデータ分布を適切に推定することは、異常値の場合と同様に困難となる。
【0093】
「再投入」は、例えば、中間特性検査器5が規格外と判定したワーク2を、第2の制御対象機器4が行う処理工程に再投入する場合を示している。この場合、再投入されたワーク2に関して、第2の制御対象機器4の取得データと、第2の制御対象機器4の後工程にある中間特性検査器5および最終特性検査器6の取得データとは存在するが、第2の制御対象機器4の前工程にある第1の制御対象機器3の取得データは存在しない。このため、機器3〜6間で対応付けられた集合に関して、各集合に含まれる取得データに対応するワーク2は、第2の制御対象機器4、中間特性検査器5および最終特性検査器6に関する集合と、第1の制御対象機器3に関する集合との間で異なることになり、各集合から算出される統計量を精度良く比較することが困難となる。
【0094】
「除去品」は、例えば、中間特性検査器5が規格外と判定したワーク2を、その検査直後に除外する場合を示している。この場合、除外されるワーク2に関して、中間特性検査器5の取得データと、中間特性検査器5の前工程にある第1および第2の制御対象機器3・4の取得データとは存在するが、中間特性検査器5の後工程にある最終特性検査器6の取得データは存在しない。このため、機器3〜6間で対応付けられた集合に関して、各集合に含まれる取得データに対応するワーク2は、第1および第2の制御対象機器3・4ならびに中間特性検査器5に関する集合と、最終特性検査器6に関する集合との間で異なることになり、各集合から算出される統計量を精度良く比較することが困難となる。
【0095】
このように、統計処理を精度良く行うためには、不適切な取得データを集合から除去することが望ましい。その一方で、不適切な取得データの種類と、対応付ける集合が前工程および後工程の何れであるかとによって、取得データを除去すべきか否かが分かれる。
【0096】
そこで、本実施形態では、各機器3〜6は、取得データに、不適切なデータの種類を示す不適切種別情報を追加して品質制御装置10に送信し、データ記憶部11に記憶している。また、品質制御装置10は、図示しない記憶部に、図15に示されるテーブルを記憶している。このテーブルは、不適切な取得データの種類と、前工程または後工程の集合と対応付ける場合に、取得データが、除去すべき無効データであるか、除去しなくても良い有効データであるかを示す情報とが格納されている。
【0097】
そして、スケジューラは、図15に示されるテーブルと、データ記憶部11に記憶される不適切種別情報とを参照して、取得データの中から無効データを除去して、取得データの集合の対応付けを行っている。これにより、不適切な取得データを、その種類と、前工程および後工程の何れに対応付けるかに応じて除去できるので、統計処理を精度良く行うことができる。なお、取得データが不適切なデータに該当しない場合には、有効データとして処理される。また、取得データが不適切なデータの複数の種類に該当する場合には、少なくとも1つが無効データに該当すると無効データとして処理される。
【0098】
次に、規格値生成部13の詳細について図7に基づいて説明する。規格値生成部13は、スケジューラ12が決定した中間特性抽出タイミングに基づいて、中間特性データ記憶DB23から中間特性データの集合を抽出するとともに、スケジューラ12が決定した最終特性抽出タイミングに基づいて、最終特性データ記憶DB25から最終特性データの集合を抽出し、抽出した集合に基づいて中間特性の規格値を生成する。また、規格値生成部13は、生成した規格値を、スケジューラ12が決定した規格値変更タイミングに基づいて中間特性検査器5に送信する。
【0099】
図7(a)および(b)は、規格値の生成動作を示すためのものである。まず、同図(a)に示されるように、抽出された最終特性Aの分布に関する平均値X ̄および標準偏差σを求める。次に、最終特性Aの分布に対する規格値の位置関係を調べるために、最終特性Aの分布の平均値X ̄と、最終特性Aの上限および下限の規格値Su・Slとの距離du・dlを、式du=Su−X ̄と式dl=X ̄−Slとから求める。また、同図(b)に示されるように、抽出された中間特性Aの分布に関する平均値Xa ̄および標準偏差σaを求める。
【0100】
次に、最終特性Aの標準偏差に対する中間特性Aの標準偏差の比率σa/σと、次式とに基づいて、最終特性Aにおける上記距離du・dlを、中間特性Aにて対応する距離dua・dlaに変換する。
dua=du×(σa/σ)=(Su−X ̄)×(σa/σ)、
dla=dl×(σa/σ)=(X ̄−Sl)×(σa/σ)。
【0101】
そして、変換した距離dua・dlaと、中間特性Aの分布に関する平均値X ̄aとを用いて、次式により中間特性Aの上限および下限の規格値Sua・Slaを求める。
Sua=Xa ̄+dua=Xa ̄+(Su−X ̄)×(σa/σ)、
Sla=Xa ̄−dla=Xa ̄−(X ̄−Sl)×(σa/σ)。
【0102】
上記の規格値の生成動作を、中間特性Bなど、中間特性A以外の中間特性に対しても繰り返すことにより、それぞれの規格値が生成される。なお、規格値が上限または下限の一方のみである場合にも同様にして規格値を生成することができる。
【0103】
ところで、理想的には、中間特性検査で不良品を全て排除すると、同じ検査項目の最終特性検査では不良品を排除することがないはずである。しかしながら、現実には、外乱要因や測定誤差が存在するために必ずしもそうならない。
【0104】
また、中間特性検査で不良品を排除したときの廃棄コストよりも最終特性検査で不良品を排除したときの廃棄コストの方が高い場合、同じ検査項目であれば中間特性検査で排除した方が全体の製造コストは低下する。
【0105】
そこで、中間特性の規格値は、最終特性の規格値よりも厳しくすることが望ましい。具体的には、規格値生成部13は、上述の式に基づいて生成した規格値を、安全係数に基づいて調整することが望ましい。
【0106】
安全係数は、従来、経験的に3〜4としていたが、最近では、品質工学で提唱されている許容差設計に基づいて算出することが行われている(例えば、非特許文献1の第2章および第3章を参照)。許容差設計は、損失関数で品質を損失に換算し、その損失を最小化する最適な許容差を算出する方法である。
【0107】
まず、最適な許容差を算出するための安全係数は下記の式で定義される。
φ=(A0/A)1/2。
ここで、φは安全係数であり、Aは中間検査で不良品を排除したときの廃棄コストであり、A0は最終検査で不良品を排除した時の廃棄コストである。
【0108】
そして、中間特性Aの上限および下限の規格値Sua・Slaは、次式のように調整される。
Sua=Xa ̄+dua/φ=Xa ̄+(Su−X ̄)×(σa/σ)/φ、
Sla=Xa ̄−dla/φ=Xa ̄−(X ̄−Sl)×(σa/σ)/φ。
【0109】
なお、本実施形態では、中間特性が、目標値に近いほど望ましい望目特性であるために上式のようになる。中間特性が、0に近いほど望ましい望小特性である場合には、中間特性の規格値は、上式のうち上限の規格値Suaのみとなる。また、中間特性が、大きいほど望ましい望大特性である場合には、中間特性の規格値は、下限の規格値Slaのみとなり、次式のように調整される。
Sla=Xa ̄−dla×φ=Xa ̄−(X ̄−Sl)×(σa/σ)×φ。
【0110】
次に、影響度生成部14の詳細について図8に基づいて説明する。上述のように、影響度生成部14は、推定部16からの要求に基づいて、制御値を変更したときに中間特性がどのように変動するかを示す影響度を生成し、生成した影響度を推定部16に送出するとともに、影響度記憶DB15に記憶させるものである。
【0111】
まず、影響度生成部14は、スケジューラ12が動作する前に、影響度の初期値を予め設定し、影響度記憶DB15に記憶しておく。この影響度の初期値は、予めテストを行うことにより、制御因子(制御値)の平均値の変更量と、それに対する中間特性の平均値およびばらつき(分散・標準偏差)の変動量とを算出することにより求めることができる。
【0112】
図8は、スケジューラ12の動作後の影響度生成部14の処理動作を示している。図示のように、まず、スケジューラ12が決定した前回および今回の第1の制御値抽出タイミングに基づいて、制御データ記憶DB21から第1の制御対象機器3(制御対象1)に関する制御データ(以下、「第1の制御データ」と称する。)の2つの集合をそれぞれ抽出する。同様に、スケジューラ12が決定した前回および今回の第2の制御値抽出タイミングに基づいて、制御データ記憶DB21から第2の制御対象機器4(制御対象2)に関する制御データ(以下、「第2の制御データ」と称する。)の2つの集合をそれぞれ抽出する。同様に、スケジューラ12が決定した前回および今回の中間特性抽出タイミングに基づいて、中間特性データ記憶DB23から中間特性の2つの集合をそれぞれ抽出する(S30)。
【0113】
次に、今回抽出された中間特性の集合の平均値を算出し(S31)、算出した平均値と、推定部16から取得した中間特性の平均値の推定値との差が所定値Dよりも大きいか否かを判断する(S32)。大きい場合には(S32でYES)、以下の処理動作を行い、大きくない場合には(S32でNO)、影響度生成部14の処理動作を終了する。
【0114】
次に、制御データの平均値に関して、前回に対する今回の変化量を算出する(S33)。すなわち、前回の第1の制御値抽出タイミングに基づいて抽出した第1の制御データ(計測値)の集合に関する平均値をX(n−1)とし、今回の第1の制御値抽出タイミングに基づいて抽出した第1の制御データ(計測値)の集合に関する平均値をX(n)とすると、第1の制御データの平均値に関して、前回に対する今回の変化量は次式で表される。
(第1の制御データの平均値の変化量)=X(n)−X(n−1)。
【0115】
次に、中間特性の平均値および分散に関して、前回に対する今回の変動量を算出する(S34)。すなわち、また、前回の中間特性抽出タイミングに基づいて抽出した中間特性Aの集合に関する平均値および分散をそれぞれY(n−1)、Z(n−1)とし、今回の中間特性抽出タイミングに基づいて抽出した中間特性Aの集合に関する平均値および分散をそれぞれY(n)、Z(n)とすると、中間特性Aの平均値および分散に関して、前回に対する今回の変動量は、それぞれ次式で表される。
(中間特性Aの平均値の変動量)=Y(n)−Y(n−1)、
(中間特性Aの分散の変動量)=Z(n)−Z(n−1)。
【0116】
次に、上記中間特性の平均値および分散の変動量を上記第1の制御データの平均値の変化量で正規化することにより、それぞれ中間特性の平均値および分散の影響度を生成する(S35)。すなわち、中間特性Aの平均値への影響度k1と、中間特性Aの分散への影響度k2とは次式で表される。
k1=(Y(n)−Y(n−1))/(X(n)−X(n−1))、
k2=(Z(n)−Z(n−1))/(X(n)−X(n−1))。
【0117】
上記の手順を用いて、第2の制御データによる影響度や、他の中間特性Bの影響度も求める。すなわち、実際には、第1の制御データによる中間特性Aの平均値および分散への影響度と、第2の制御データによる中間特性Aの平均値および分散への影響度と、第1の制御データによる中間特性Bの平均値および分散への影響度と、第2の制御データによる中間特性Bの平均値および分散への影響度とを生成することになる。
【0118】
そして、生成した影響度を推定部16に送出するとともに、影響度記憶DB15に記憶された影響度を更新させ(S36)、その後、影響度生成部14の動作を終了する。
【0119】
次に、推定部16の詳細について、図9〜図13に基づいて説明する。図9は、推定部16の概略構成を示している。図示のように、推定部16は、中間特性推定部(中間特性推定手段)40、不良推定部(不良数推定手段)41、および推定値評価部(変更量決定手段)42を備える構成である。
【0120】
中間特性推定部40は、制御値の設定値を変更したときの中間特性の平均値または標準偏差(分散)の変動量を、影響度記憶DB15から読み出した影響度を用いて推定する。不良推定部41は、中間特性推定部40が推定した変動量で中間特性の分布を変動した場合の不良数を推定して、個々の不良数の総和で評価する。推定値評価部42は、不良数が最小となる場合における制御値の設定値の変更量を求めて制御命令部17に送出する。
【0121】
図10は、上記構成の推定部16の処理動作を示している。まず、中間特性推定部40は、スケジューラ12が決定した中間特性抽出タイミングに基づいて、データ記憶部11の中間特性データ記憶DB23から中間特性データの集合を抽出する(S40)。
【0122】
次に、中間特性推定部40は、各制御対象機器3・4に関する制御値の設定値の変更量の組合せである変更パターンを生成する(S41)。図11は、上記変更パターンの一例を表形式で示している。本実施形態では、制御対象は制御対象機器3・4の2台であるから、上記変更パターンは、図11のように2次元テーブルで表される。なお、制御値の設定値の変更量の数は、効果を見込めそうな変更幅と、変更幅の許容量などから経験的に決定できるが、どのように決定しても良い。
【0123】
本実施形態では、図11に示されるように、制御対象1(制御対象機器3)および制御対象2(制御対象機器4)における上記変更量の数をそれぞれ5としている。また、制御対象1の変更幅は0.003であり、制御対象2の上記変更幅は0.005である。なお、本実施形態では、図11に示されるように、変更量に0.000、すなわち「変更しない」も含めているが、必ずしも含める必要はない。
【0124】
次に、各変更パターンについて、制御値の設定値を変更した場合の中間特性の平均値または標準偏差の推定値を求めることにより、図11に示される推定値テーブルを完成させる。具体的には、まず、影響度記憶DB15から最新の影響度を取得し(S42)、取得した影響度と制御値の設定値の変更幅(変更量)とを乗算する。これにより、制御値の設定値を変更した場合における中間特性の平均値または分散の変動量が求まる。
【0125】
なお、中間特性の平均値または分散の一方のみを利用しても良いし、両方を利用しても良い。また、バラツキを示すものとして、分散の代わりに標準偏差を用いても良い。以下では、中間特性の平均値および標準偏差を利用することにする。
【0126】
次に、抽出した現在の中間特性の平均値または分散に上記変動量を加算する。なお、分散に関しては、この後に平方根を取って標準偏差に変換する。これらの計算により、中間特性の平均値または標準偏差の推定値が、制御対象の制御値の設定値の変更量の組合せごとに求まり、図11に示される推定値テーブルが完成する(S43)。なお、図11には、平均値の推定値Xa,i,jを記載している。
【0127】
ここで、制御値の設定値の変更幅をα、中間特性Aの平均値をX ̄、中間特性Aの標準偏差をσ、中間特性Aの平均値の影響度をk1、中間特性Aの分散の影響度をk2とすると、制御値の設定値を変更したときの中間特性Aの平均値および標準偏差の推定値Xa^・σ^は次式となる。
Xa^=k1×α+X ̄、
σa^=(k2×α+σ2)1/2。
【0128】
次に、不良推定部41は、中間特性推定部40が求めた推定値を用いて、上記変更パターン毎に、変更後の中間特性の分布を作成して中間特性の不良数を推定する。具体的には、作成した中間特性の分布が変化した分だけ、規格基準(規格値)を移動させ(S44)、抽出した集合に含まれる要素(個々の中間特性)を良否判定する(S45)。
【0129】
中間特性Aの規格基準の移動は、規格値作成部13に関して上述したように次式となる。
Sua=Xa ̄+dua=Xa ̄+(Su−X ̄)×(σa/σ)、
Sla=Xa ̄−dla=Xa ̄−(X ̄−Sl)×(σa/σ)。
上述のように、Xa ̄=Xa^=k1×α+X ̄、σa=σa^=(k2×α+σ2)1/2なので、移動後の上限規格値と下限規格値は次式となる(S44)。
Sua=k1×α+X ̄+(Su−X ̄)×(k2×α+σ2)1/2/σ、
Sla=k1×α+X ̄−(X ̄−Sl)×(k2×α+σ2)1/2/σ。
【0130】
これらの規格値Sua・Slaを用いて、今回抽出された集合の中間特性Aの良否判定を行い、不良と判定されたものについては、NGフラグをデータに付与する(S45)。以上の処理を個々の中間特性について同様に実施することにより、中間特性の良否リストが作成される。図12は、上記良否リストの一例を示している。図示において、「良否」の欄に「NG」と記載されたものは、それぞれの中間特性においてNGフラグが付与されていることを示している。なお、図示の場合では、中間特性は3種類(A〜C)となっている。
【0131】
次に、推定値評価部42は、不良推定部41で求められた個々の中間特性の不良数を総和し(S46)、総和した不良数が最小となる変更パターンを選択する(S47)。ここで注意すべき点としては、NGフラグが複数の中間特性で発生した場合、不良数を総和するときに、重複してカウントすることを避ける必要がある。
【0132】
そこで、良否に関する中間特性の優先順位を予め決めておき、優先順位の高い方のNGフラグのみをカウントする。なお、優先順位の決め方はどのような方法でも構わない。例えば、図12に示される良否リストの場合、製造番号93および95でNGフラグが重複している。このとき、中間特性の優先順位をA>B>Cとすれば、不良数の総和=Aの不良数+Bの不良数+Cの不良数=2+1+0=3となる。
【0133】
なお、NGフラグは、付与された場合を1(ON)、付与されていない場合を0(OFF)とするビットデータであらわすのが望ましい。この場合は、製造番号ごとに、中間特性A〜CのNGフラグに関して論理和(OR)をとり、これをカウントすることにより不良数の総和を求めることができる。
【0134】
推定値評価部42が、上記の不良数の総和(総不良数)を変更パターンごとに行うことにより、推定値テーブルに対応する総不良数テーブルが作成される。図13は、この総不良数テーブルの一例を示しており、図11に示される推定値テーブルに対応するものである。推定値評価部42は、上記総不良数テーブルを参照して、総不良数が最小となる変更パターンを選択する。図13の場合には、制御対象1(制御対象機器3)の制御値の設定値の変更量が0.003であり、制御対象2(制御対象機器4)の制御値の設定値の変更量が0.010である組合せが総不良数15で最小となっているので、この変更パターンが選択される。
【0135】
そして、推定値評価部42は、選択した変更パターン(変更量の組合せ)を制御命令部17に送出する(S48)。また、選択した変更パターンに対応する中間特性の推定値を影響度生成部14に送出する。その後、推定部16の動作を終了する。
【0136】
なお、総不良数が最小となる変更パターンを選択した結果、制御対象1・2の何れかあるいは両方の変更量が0.000、すなわち変更不要となる場合もありうる。この場合は、当該制御対象について、変更量の制御命令部17への送出を省略してもよい。
【0137】
制御命令部17は、推定値評価部42が選択した変更パターン、すなわち制御値の設定値の変更量に関する制御対象ごとの組合せを取得し、取得した変更パターンに基づいて、各制御対象機器3・4の制御値の設定値を変更し、変更した設定値を制御命令として制御対象機器3・4にそれぞれ送信する。例えば、制御値の設定値は次式に従って変更しても良い。
(今回の制御値の設定値)=(前回の制御値の設定値)+(不良数が最小となる制御値の設定値の変更量)。
【0138】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0139】
例えば、制御値の設定値や中間特性の規格値の変更を指示する時刻と、各機器3〜5が実際に変更を行う時刻との間には若干のタイムラグが存在すると考えられる。また、各機器3〜6が計測を行う時刻と、品質制御装置10が各種の計測値を取得する時刻との間には若干のタイムラグが存在すると考えられる。このため、スケジューラ12は、これらのタイムラグも調整して、データの対応付けやタイミングの決定を行うことが望ましい。
【0140】
また、本実施形態では、データ記憶部11は、取得時刻を記憶しているが、各機器3〜6が計測した時刻である計測時刻を各機器3から受け取って記憶しても良い。この場合、スケジューラ12は、計測時間を利用して対応付けを行うことになる。
【0141】
また、本実施形態では、2台の制御対象機器3・4と1台の中間特性検査器5とを利用しているが、制御対象機器を1台とすることもできるし、制御対象機器および中間特性検査器をさらに増やすこともできる。
【0142】
以上のように、本発明に係る品質制御装置は、所定の品質を有する製品を製造するために製造工程の制御を行う品質制御装置であって、製造工程に設けられた複数の計測機器が計測した計測データを収集し、収集した計測データを、計測した時刻または収集した時刻とともに記憶する記憶手段と、計測した時刻または収集した時刻に、上記計測機器同士の間で生じる無駄時間を考慮することにより、上記計測機器の計測データ同士の対応付けを行う対応付け手段とを備える。
【0143】
或る機器で計測された中間品は、該中間品を計測してから大体無駄時間を経過した時刻に次の機器で計測されることになる。このことから、各計測機器が計測した時刻または各計測機器から収集した時刻は、上記無駄時間によって大まかな対応付けを行うことができる。
【0144】
したがって、上記の構成によると、収集した計測データが、計測した時刻または収集した時刻と関連付けられているので、対応付け手段が、計測した時刻または収集した時刻を上記計測機器同士の間で生じる無駄時間によって大まかな対応付けを行うことにより、計測機器の計測データ同士の対応付けを行うことができる。
【0145】
また、無駄時間は、対応付け手段でのみ利用され、無駄時間を変更しても記憶手段が記憶するデータへの影響が無い。したがって、無駄時間の変更を容易に行うことができる。
【0146】
なお、上記対応付け手段は、複数の上記計測機器の所定数の計測データ同士を対応付けてもよい。この場合、各計測機器では、所定数の計測データからなる集合が形成され、複数の計測機器における上記集合同士が対応付けられることになる。これにより、対応付けた各集合に含まれる計測データの数が一定となるので、各集合の統計量の精度を概ね一致させることができる。また、計測機器が計測する期間ではなく、計測する数に基づいて集合を形成するので、例えば製造工程内の或る工程が長時間停止して再開した場合でも、各集合を適切に対応付けることができる。
【0147】
また、上記対応付け手段は、対応付けるべき計測データの中に不適切な計測データが含まれる場合には、上記不適切な計測データと、他の上記計測機器が計測した計測データであって、上記不適切な計測データに対応する計測データとの対応付けを中止することが望ましい。
【0148】
ここで、不適切な計測データとしては、測定値が通常の値から大きく外れた異常値である場合、測定の失敗等により機器が同一の中間品に対し再測定を行う場合、中間検査にて規格外と判定した中間品を上流側の工程に再投入する場合、および、中間検査にて規格外と判定した中間品をその検査直後に除外する場合の計測データが挙げられる。
【0149】
これらの不適切な計測データは、統計処理を行う上で精度を低下させる原因となる。したがって、上記の構成によると、不適切な計測データが上記対応付けに利用されないから、統計処理の精度が低下することを防止できる。
【0150】
なお、中間品を再投入する場合には、再投入された中間品に関して、再投入される工程とその下流側にある計測機器の計測データとは存在するが、再投入される工程の上流側にある計測機器の計測データは存在しない。したがって、上記製造工程内の或る工程において、中間品が再投入される場合、上記対応付け手段は、上記工程の上流側にある上記計測機器の上記中間品に関する計測データと、上記工程とその下流側にある上記計測機器の上記中間品に関する計測データとの対応付けを中止することが望ましい。
【0151】
また、中間品をその検査直後に除外する場合には、除外される中間品に関して、除去される工程とその上流側にある計測機器の計測データとは存在するが、除去される工程の下流側にある計測機器の計測データは存在しない。したがって、上記製造工程内の或る工程において、中間品が除去される場合、上記対応付け手段は、上記工程の下流側にある上記計測機器の計測データと、上記工程とその上流側にある上記計測機器の上記中間品に関する計測データとの対応付けを中止することが望ましい。
【0152】
本発明に係る品質制御装置は、所定の品質を有する製品を製造するために、製造工程に設けられた制御対象機器を制御する品質制御装置であって、上記制御対象機器に対し制御の目標値として設定される制御値の設定値と、該制御値の設定値に対し上記制御対象機器が計測した制御値の計測値である制御データと、中間特性検査器が計測した中間品の中間特性データとを収集して記憶する記憶手段と、該記憶手段が記憶した制御値の設定値を変更した場合における中間特性データのデータ分布の変動を推定する中間特性推定手段と、該中間特性推定手段が推定した中間特性データのデータ分布の変動と、中間特性規格値とに基づいて、不良数を推定する不良数推定手段と、該不良数推定手段が推定した不良数が最小となるような上記制御値の設定値の変更量を決定する変更量決定手段と、該変更量決定手段が決定した変更量に基づいて、上記制御対象機器の制御値の設定値を変更する制御変更手段とを備えることを特徴としている。
【0153】
ここで、データ分布を示す量としては、平均値、上記バラツキ値など、多種多様なものを利用することができる。
【0154】
上記の構成によると、制御値の設定値を変更した場合の中間特性データのデータ分布の変動を推定し、発生する不良数を推定している。そして、推定した不良数が最小となるような制御値の設定値の変更量を決定して、制御対象機器の制御値の設定値を変更する。
【0155】
これにより、製造途中で中間品を検査し、中間品の不良品の数が少なくなるように制御対象機器の制御を変更するので、制御のフィードバックループの間隔を短縮することができる。また、データ分布の変動を推定することにより、データのバラツキも考慮できるので、発生する不良数をより正確に推定することができる。
【0156】
なお、制御データの平均値の変化量に対する、上記中間特性データのデータ分布の変動量の度合いを示す影響度を記憶する影響度記憶手段をさらに備えており、上記中間特性推定手段は、上記記憶手段が記憶した制御値の設定値の変更量と、上記影響度記憶手段が記憶した影響度とに基づいて、中間特性データのデータ分布の変動量を推定しており、上記変更量決定手段は、上記不良数推定手段が推定した不良数が最小となるような上記制御値の設定値の変更量を決定することが望ましい。この場合、制御データの平均値の変化量と中間特性データのデータ分布の変動量との対応関係が判明しているので、中間特性データのデータ分布の変動量をより正確に推定でき、発生する不良数をより正確に推定することができる。
【0157】
また、上記変更量決定手段が決定した上記制御値の設定値の変更量に対応する上記中間特性データのデータ分布と、上記制御変更手段が制御を変更した後に上記記憶手段が収集した中間特性データの分布との間に所定以上の差が生じた場合に、上記影響度を作成して上記影響度記憶手段に記憶させる影響度作成手段をさらに備えることが望ましい。この場合、製造プロセスに何らかの変動が生じても、影響度を自動的に修正できるので、中間特性データのデータ分布の変動量をより正確に推定でき、適切な品質の製品を製造することができる。
【0158】
また、上記記憶手段は、最終特性検査器が計測した完成品の最終特性データをさらに収集して記憶しており、該記憶手段が記憶した最終特性データのデータ分布と、上記最終特性検査器に設定された最終特性規格値とに基づいて、上記中間特性検査器に設定する中間特性規格値を生成する規格値生成手段をさらに備えており、上記不良数推定手段は、上記規格値生成手段が生成した中間特性規格値を利用することが望ましい。この場合、製造プロセスに何らかの変動が生じても、中間特性規格値を自動的に修正できるので、発生する不良数をより正確に推定でき、適切な品質の製品を製造することができる。
【0159】
また、上記記憶手段は、上記制御データおよび上記中間特性データを、計測した時刻または収集した時刻とともに記憶しており、計測した時刻または収集した時刻に、上記制御対象機器および上記中間特性検査器同士の間で生じる無駄時間を考慮することにより、上記制御データおよび上記中間特性データの対応付けを行う対応付け手段をさらに備えることが望ましい。この場合、収集した制御データおよび中間特性データが、計測した時刻または収集した時刻と関連付けられているので、対応付け手段が、計測した時刻または収集した時刻を制御対象機器および中間特性検査器同士の間で生じる無駄時間によって大まかな対応付けを行うことにより、制御データおよび中間特性データ同士の対応付けを行うことができる。
【0160】
また、上記中間特性推定手段は、上記制御変更手段が制御を変更してから所定時間経過した後に上記記憶手段が収集した上記中間特性データを利用して、次の中間特性データのデータ分布を推定することが望ましい。この場合には、制御の変更途中のデータを利用しないので、より正確な制御が可能となる。
【0161】
本発明に係る品質制御装置の制御方法は、所定の品質を有する製品を製造するために製造工程の制御を行う品質制御装置の制御方法であって、上記品質制御装置は、製造工程に設けられた複数の計測機器が計測した計測データを収集し、収集した計測データを、計測した時刻または収集した時刻とともに記憶する記憶手段を備えており、計測した時刻または収集した時刻に、上記計測機器同士の間で生じる無駄時間を考慮することにより、上記計測機器の計測データ同士の対応付けを行う対応付けステップを含む。
【0162】
上記の方法によると、収集した計測データが、計測した時刻または収集した時刻と関連付けられているので、対応付け手段が、計測した時刻または収集した時刻を上記計測機器同士の間で生じる無駄時間によって大まかな対応付けを行うことにより、計測機器の計測データ同士の対応付けを行うことができる。また、無駄時間は、対応付けステップでのみ利用され、無駄時間を変更しても記憶手段が記憶するデータへの影響が無い。したがって、無駄時間の変更を容易に行うことができる。
【0163】
本発明に係る品質制御装置の制御方法は、所定の品質を有する製品を製造するために、製造工程に設けられた制御対象機器を制御する品質制御装置の制御方法であって、上記品質制御装置は、上記制御対象機器に対し制御の目標値として設定される制御値の設定値と、該制御値の設定値に対し上記制御対象機器が計測した制御値の計測値である制御データと、中間特性検査器が計測した中間品の中間特性データとを収集して記憶する記憶手段を備えており、該記憶手段が記憶した制御値の設定値を変更した場合における中間特性データのデータ分布の変動を推定する中間特性推定ステップと、該中間特性推定ステップにて推定した中間特性データのデータ分布の変動と、中間特性規格値とに基づいて、不良数を推定する不良数推定ステップと、該不良数推定ステップにて推定した不良数が最小となるような上記制御値の設定値の変更量を決定する変更量決定ステップと、該変更量決定ステップにて決定した変更量に基づいて、上記制御対象機器の制御値の設定値を変更する制御変更ステップとを含む。
【0164】
上記の方法によると、制御値の設定値を変更した場合における中間特性データのデータ分布の変動を推定し、発生する不良数を推定している。そして、推定した不良数が最小となるような制御値の設定値の変更量を決定して、制御対象機器の制御値の設定値を変更する。これにより、製造途中で中間品を検査し、中間品の不良品の数が少なくなるように制御対象機器の制御を変更するので、制御のフィードバックループの間隔を短縮することができる。また、データ分布の変動を推定することにより、データのバラツキも考慮できるので、発生する不良数をより正確に推定することができる。
【0165】
また、品質制御装置10の各ブロックは、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0166】
すなわち、品質制御装置10は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムを格納したROM、上記プログラムを展開するRAM、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである品質制御装置10の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記品質制御装置10に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0167】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フレキシブルディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0168】
また、品質制御装置10を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された搬送波あるいはデータ信号列の形態でも実現され得る。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明に係る品質制御装置は、製造工程以外にも、家電製品の制御など、種々のプロセスを制御して適切な状態を維持する装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】本発明の実施形態である品質制御装置を含む品質制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】上記品質制御装置の処理動作を示すフローチャートである。
【図3】上記品質制御装置におけるデータ記憶部の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図4】上記データ記憶部に記憶されるデータの一例を表形式で示す図であり、同図(a)〜(d)は、それぞれ第1の制御データ、第2の制御データ、中間特性データ、および最終特性データの一例を示している。
【図5】上記品質制御装置におけるスケジューラの概略構成を示す機能ブロック図である。
【図6】上記スケジューラのタイミング動作を例示するタイミングチャートである。
【図7】同図(a)は最終特性データのデータ分布を示すグラフであり、同図(b)は中間特性データのデータ分布を示すグラフであり、上記最終特性データのデータ分布に基づいて規格値が変更される様子を示している。
【図8】上記品質制御装置における影響度生成部の処理動作を示すフローチャートである。
【図9】上記品質制御装置における推定部の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図10】上記推定部の処理動作を示すフローチャートである。
【図11】上記推定部における中間特性推定部が作成する中間特性の推定値テーブルの一例を表形式で示す図である。
【図12】上記推定部における不良推定部が作成する中間特性の良否リストの一例を表形式で示す図である。
【図13】上記推定部における推定値評価部が作成する総不良数テーブルの一例を表形式で示す図である。
【図14】一般的な生産現場で生じる不適切な取得データの種類と、その原因例および内容との対応関係を表形式で示す図である。
【図15】上記不適切な取得データの種類と、前工程または後工程の集合と対応付ける場合に、取得データを無効とするか有効とするかを示す情報およびその理由との対応関係を表形式で示す図である。
【符号の説明】
【0171】
1 品質制御システム
3・4 制御対象機器(計測機器)
5 中間特性検査器(計測機器)
6 最終特性検査器(計測機器)
10 品質制御装置
11 データ記憶部(記憶手段)
12 スケジューラ(対応付け手段)
13 規格値生成部(規格値生成手段、規格値設定制御手段)
14 影響度生成部(影響度生成手段)
15 影響度記憶DB(影響度記憶手段)
17 制御命令部(制御変更手段)
40 中間特性推定部(中間特性推定手段)
41 不良数推定部(不良数推定手段)
42 推定値評価部(変更量決定手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の品質を有する製品を製造するために製造工程の制御を行う品質制御装置であって、
中間特性検査器が計測した中間品の中間特性データと、最終特性検査器が計測した完成品の最終特性データとを収集して記憶する記憶手段と、
該記憶手段が記憶した最終特性データのデータ分布と、上記最終特性検査器に設定された最終特性規格値とに基づいて、上記中間特性検査器が不良の中間品を排除するための判定基準である中間特性規格値を生成する規格値生成手段と、
該規格値生成手段が生成した規格値を設定するように上記中間特性検査器を制御する規格値設定制御手段とを備えることを特徴とする品質制御装置。
【請求項2】
上記規格値生成手段は、上記最終特性データのデータ分布の平均値と、上記最終特性規格値との差分に基づいて上記中間特性規格値を生成することを特徴とする請求項1に記載の品質制御装置。
【請求項3】
上記規格値生成手段は、上記最終特性データのデータ分布の平均値と上記最終特性規格値との差分に対する、上記記憶手段が記憶した中間特性データのデータ分布の平均値と上記中間特性規格値との差分の比率が、上記最終特性データのデータ分布のバラツキ値に対する、上記中間特性データのデータ分布のバラツキ値の比率となるように、上記中間特性規格値を生成することを特徴とする請求項2に記載の品質制御装置。
【請求項4】
上記規格値生成手段は、さらに安全係数に基づいて上記中間特性規格値を生成することを特徴とする請求項1に記載の品質制御装置。
【請求項5】
上記安全係数は、上記最終特性規格値に基づいて上記完成品を排除する場合の廃棄コストと、上記中間特性規格値に基づいて上記中間品を排除する場合の廃棄コストとに基づいて算出されることを特徴とする請求項4に記載の品質制御装置。
【請求項6】
上記記憶手段は、上記中間特性データおよび上記最終特性データを、計測した時刻または収集した時刻とともに記憶しており、
計測した時刻または収集した時刻に、上記中間特性検査器および上記最終特性検査器同士の間で生じる無駄時間を考慮することにより、上記中間特性データおよび上記最終特性データの対応付けを行う対応付け手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の品質制御装置。
【請求項7】
上記規格値生成手段は、上記規格値設定制御手段が上記中間特性検査器を制御してから所定時間経過した後に上記記憶手段が収集した上記中間特性データおよび上記最終特性データを利用して、次の規格値の生成を行うことを特徴とする請求項1に記載の品質制御装置。
【請求項8】
所定の品質を有する製品を製造するために製造工程の制御を行う品質制御装置の制御方法であって、
上記品質制御装置は、中間特性検査器が計測した中間品の中間特性データと、最終特性検査器が計測した完成品の最終特性データとを収集して記憶する記憶手段を備えており、
該記憶手段が記憶した最終特性データのデータ分布と、上記最終特性検査器に設定された最終特性規格値とに基づいて、上記中間特性検査器が不良の中間品を排除するための判定基準である中間特性規格値を生成する規格値生成ステップと、
該規格値生成ステップにて生成した規格値を設定するように上記中間特性検査器を制御する規格値設定制御ステップとを含むことを特徴とする品質制御装置の制御方法。
【請求項9】
請求項1ないし7の何れか1項に記載の品質制御装置を動作させるための品質制御プログラムであって、コンピュータを上記各手段として機能させるための品質制御プログラム。
【請求項10】
請求項9に記載の品質制御プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能な記録媒体。
【請求項1】
所定の品質を有する製品を製造するために製造工程の制御を行う品質制御装置であって、
中間特性検査器が計測した中間品の中間特性データと、最終特性検査器が計測した完成品の最終特性データとを収集して記憶する記憶手段と、
該記憶手段が記憶した最終特性データのデータ分布と、上記最終特性検査器に設定された最終特性規格値とに基づいて、上記中間特性検査器が不良の中間品を排除するための判定基準である中間特性規格値を生成する規格値生成手段と、
該規格値生成手段が生成した規格値を設定するように上記中間特性検査器を制御する規格値設定制御手段とを備えることを特徴とする品質制御装置。
【請求項2】
上記規格値生成手段は、上記最終特性データのデータ分布の平均値と、上記最終特性規格値との差分に基づいて上記中間特性規格値を生成することを特徴とする請求項1に記載の品質制御装置。
【請求項3】
上記規格値生成手段は、上記最終特性データのデータ分布の平均値と上記最終特性規格値との差分に対する、上記記憶手段が記憶した中間特性データのデータ分布の平均値と上記中間特性規格値との差分の比率が、上記最終特性データのデータ分布のバラツキ値に対する、上記中間特性データのデータ分布のバラツキ値の比率となるように、上記中間特性規格値を生成することを特徴とする請求項2に記載の品質制御装置。
【請求項4】
上記規格値生成手段は、さらに安全係数に基づいて上記中間特性規格値を生成することを特徴とする請求項1に記載の品質制御装置。
【請求項5】
上記安全係数は、上記最終特性規格値に基づいて上記完成品を排除する場合の廃棄コストと、上記中間特性規格値に基づいて上記中間品を排除する場合の廃棄コストとに基づいて算出されることを特徴とする請求項4に記載の品質制御装置。
【請求項6】
上記記憶手段は、上記中間特性データおよび上記最終特性データを、計測した時刻または収集した時刻とともに記憶しており、
計測した時刻または収集した時刻に、上記中間特性検査器および上記最終特性検査器同士の間で生じる無駄時間を考慮することにより、上記中間特性データおよび上記最終特性データの対応付けを行う対応付け手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の品質制御装置。
【請求項7】
上記規格値生成手段は、上記規格値設定制御手段が上記中間特性検査器を制御してから所定時間経過した後に上記記憶手段が収集した上記中間特性データおよび上記最終特性データを利用して、次の規格値の生成を行うことを特徴とする請求項1に記載の品質制御装置。
【請求項8】
所定の品質を有する製品を製造するために製造工程の制御を行う品質制御装置の制御方法であって、
上記品質制御装置は、中間特性検査器が計測した中間品の中間特性データと、最終特性検査器が計測した完成品の最終特性データとを収集して記憶する記憶手段を備えており、
該記憶手段が記憶した最終特性データのデータ分布と、上記最終特性検査器に設定された最終特性規格値とに基づいて、上記中間特性検査器が不良の中間品を排除するための判定基準である中間特性規格値を生成する規格値生成ステップと、
該規格値生成ステップにて生成した規格値を設定するように上記中間特性検査器を制御する規格値設定制御ステップとを含むことを特徴とする品質制御装置の制御方法。
【請求項9】
請求項1ないし7の何れか1項に記載の品質制御装置を動作させるための品質制御プログラムであって、コンピュータを上記各手段として機能させるための品質制御プログラム。
【請求項10】
請求項9に記載の品質制御プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能な記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−4428(P2006−4428A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173007(P2005−173007)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【分割の表示】特願2004−306159(P2004−306159)の分割
【原出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【分割の表示】特願2004−306159(P2004−306159)の分割
【原出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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