説明

哺乳類精子の保存方法

【課題】哺乳類精子を常温下にて長期間、安定に保存することのできる新たな保存方法の提供。
【解決手段】哺乳類から採取した精子をα−ヘモリジン処理して二糖類又は三糖類を細胞内に流入させた後、一定期間インキュベーションし、次いで空気乾燥することを特徴とする哺乳類精子の保存方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳類精子の保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポストゲノム時代が到来し、遺伝子の機能を明らかにするためのツールとして遺伝子改変マウス(トランスジェニック/ノックアウトマウス)の作製が飛躍的に増加している。それに伴って、これらマウスの系統(ライン)保存として精子の凍結保存が世界的に行われるようになってきた。マウス精子の凍結保存は、1990年に多田らがラフィノースを凍結保護物質として用いて世界で初めて成功して以来、中潟らによってラフィノースを用いた凍結保存法に改良が加えられ、現在では‘中潟法’として世界的に普及している(非特許文献1及び2)。また、凍結精子の状態で大学などの研究機関間で輸送する機会も増加している。
【0003】
しかし、従来の凍結保存においては、液体窒素での保存が殆どで定期的に液体窒素を補充しなければならない。また、凍結精子を輸送する際もドライシッパーなどの特殊な輸送容器に収容して運ばなければならず、液体窒素の補充も必要なため輸送における費用・労力がかなりかかるのが現状である。
更に、凍結保存後のマウス精子の生存性及び体外受精後の受精率に系統差が認められ、特に、遺伝子改変マウスの一般的な遺伝子背景であるC57BL/6Jマウスの凍結−融解後の生存率及び受精率は極めて低いことが明らかになっている(非特許文献3)。
【0004】
一方、フリーズドライしたマウス精子を用いたICSIによる産仔作出の成功例が若山らによって報告されている(非特許文献4)。この凍結乾燥による保存法も前記凍結保存法に代わり得る方法として注目されているが、比較的高価な真空乾燥機が必要であること、凍結乾燥による精子DNAの損傷が顕著であること、及び室温下での長期保存は不可能であることなどの問題がある(非特許文献5)。
【非特許文献1】Tada N.et al.,J.Reprod.Fert.,89,511−516,1990
【非特許文献2】Nakagata N.&Takesima T.,Exp.Anim.,42,317−320,1993
【非特許文献3】Thoenton CE.et al., Mamm.Genome,10,987−992,1999
【非特許文献4】Sztein JM.et al.,Biol.Reprod.,63,1774−1780,2000
【非特許文献5】Wakayama T.&Yanagimachi R.,Nat.Biotechnol.,16,639−641,1998
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、哺乳類精子を常温下にて長期間、安定に保存することのできる新たな保存方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
保存後の精子は、運動性が認められなくともICSI法(intracytoplasmic sperm injection:卵細胞質内精子注入法、顕微授精法)により受精は可能で、正常な産仔を得ることができるため、精子の保存に際しては、精子核内の染色体異常やDNA損傷を抑制することが重要である。
本発明者は、哺乳類の精子を、受精能力を保持したまま保存する方法について種々検討したところ、哺乳類から採取した精子の細胞膜にα−ヘモリジン処理により孔を開けた後、二糖類又は三糖類を細胞内に流入させ、これを一定期間インキュベーションし、次いで空気乾燥することで、精子の染色体異常やDNA損傷を生じさせることなく、常温下でも長期間保存可能なことを見出した。そして、当該方法により保存した精子は、未受精卵に顕微授精(ICSI)することにより受精し、産仔作出可能なことを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、哺乳類から採取した精子をα−ヘモリジン処理して二糖類又は三糖類を細胞内に流入させた後、一定期間インキュベーションし、次いで空気乾燥することを特徴とする哺乳類精子の保存方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、常温下での哺乳類精子の安定な長期保存及び輸送が可能である。また、本発明方法は、哺乳類精子の保存や輸送に液体窒素やドライアイスなどのエネルギー、特殊な容器を必要としないので、安価で簡便である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明においては、先ず哺乳類から精子を採取する。ここで、本発明の保存方法の対象となる哺乳類精子は、いずれの哺乳類の精子であってもよく、哺乳類としては、例えばヒト、サル、ウシ、マウス、ラット、ウサギなどが挙げられる。なかでもマウスが好ましく、特に遺伝子改変マウスが好ましい。
【0010】
哺乳類から精子を採取する方法は、例えば哺乳類の精巣から精巣上体尾部を採取し、これを保存液中で細切すればよい。これにより、精子が保存液中に懸濁した懸濁液を調製できる。この精子懸濁液は、精巣上体尾部を細切した後、室温で5分間程度静置させ、その後、遠心分離などにより懸濁液から精巣上体尾部を除去するのが好ましい。
懸濁液中の精子数は、100〜500万/ml、特に400〜500万/mlであるのが好ましい。
【0011】
保存液は、精子の染色体異常やDNAの損傷を防ぐ点から、トリス塩酸緩衝液、Hepes緩衝液、リン酸緩衝液などの緩衝液に、EGTA、EDTAなどのキレート剤;グルコース、スクロース、ラクトース、トレハロース、ラフィノースなどの糖類を含有するのが好ましい。
保存液中のキレート剤の濃度は、50〜100mMであることが好ましい。また、保存液中の糖類の濃度は、0.5〜1.0Mであることが好ましい。
【0012】
保存液は、さらにカリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、リン酸塩などの無機塩類;Hepes、ピルビン酸等の有機酸;ペニシリン、ストレプトマイシンなどの抗生物質;各種アミノ酸、血清などを含んでいてもよい。特に、乾燥時及び保存時における精子の酸化ストレスを防ぐ点から、100〜200mMのエピガロカテキンガレート、エピカテキン、カテキン、エピガロカテキンなどの緑茶由来ポリフェノールを含有するのが好ましい。具体的には、Tris−HCl−EGTAなどの凍結保存溶液、NIM(nucleus isolation medium)、mCZB−Hepesなどの培養液が保存液として用いられる。
【0013】
次いで、精子懸濁液に6〜20μg/ml、好ましくは10〜15μg/mlのα−ヘモリジン液を加えた後、暗所・室温下にて15分間〜1時間程度静置させる。この処理により、精子細胞膜に微細孔が開く。α−ヘモリジンは、前記保存液に溶解して用いるのが、精子の染色体異常やDNAの損傷を防ぐ点から好ましい。処理後、遠心分離により上清を除去するのが好ましい。
【0014】
次いで、二糖類又は三糖類を添加した後、一定期間インキュベーションする。これにより、精子細胞膜に開いた微細孔からこれらの糖類が細胞膜内に取り込まれる。α−ヘモリジン処理後、迅速にこれらの糖類が細胞内に流入することで、精子核内の染色体異常やDNA損傷が抑制される。
ここで用いられる二糖類又は三糖類としては、例えばスクロース、マルトース、ラクトース、トレハロースなどの二糖類;ラフィノースなどの三糖類が挙げられる。これらを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。このうち、スクロース、トレハロース、ラフィノースが好ましく、特にトレハロースが好ましい。
【0015】
これらの糖類は、懸濁液中に0.2〜1.5M、好ましくは0.4〜1.2Mとなるように添加するのが好ましい。また、これらの糖類を前記保存液に溶解して用いるのが、精子の染色体異常やDNAの損傷を防ぐ点から好ましい。
【0016】
インキュベーションの期間は、精子の染色体異常やDNAの損傷を防ぐ点から、0℃〜室温下、好ましくは4℃〜室温下にて20分間〜10日間、好ましくは30分間〜7日間行うことが好ましい。
【0017】
次いで、精子懸濁液をプレートに滴下し、空気乾燥させる。プレートとしては、特に制限されず、カルチャープレートなどの培養プレートやマイクロプレート、スライドガラスなどが挙げられる。精子懸濁液は20〜50μlずつプレート上に滴下するのが好ましい。
【0018】
精子懸濁液を空気乾燥する方法は、懸濁液中の水分が除去されればよく、例えば、天然乾燥、加熱乾燥、真空乾燥などの方法が挙げられる。なかでも、精子DNAの損傷を防ぐ点から、20〜50℃、好ましくは室温下(20〜25℃)で送風乾燥(風乾)するのが好ましい。
乾燥時間は、乾燥方法やプレートの種類、プレート上の懸濁液の量にもよるが、好ましくは30分〜2時間程度である。
乾燥後の懸濁液の水分含量は、特に制限されないが、35%以下であることが保存性の点から好ましい。
【0019】
乾燥後の精子懸濁液は、低湿度かつ低酸素雰囲気中、例えばアルミ箔やガスバリア性フィルム中でデシケータ内(室温、真空)、或いは冷蔵庫内(約4℃)で保存することが好ましい。
【0020】
このように保存された精子は、受精能力を保持しており、用時に復水させた後、未受精卵に顕微授精、好ましくはICSI法により授精させることができる。復水液としては、精子の受精能力に影響を与えないものであれば特に限定されず、例えば純水や、上記に挙げた保存液などを用いることができる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明について実施例をあげて具体的に説明するが、本発明はこれらによって何等限定されるものではない。
【0022】
実施例1[精子の乾燥保存]
(1)生後8〜16週齢のBDF1マウスより両側の精巣上体尾部を採取し、これをカルチャーディッシュ内の表1に示す各保存液1.0mlに入れ、細切することにより、精子を採取した。10分間、室温下で静置した後、精巣上体尾部を除去し、次いで精子懸濁液をマイクロチューブに移した。
(2)マイクロチューブを遠心分離(10,000rpm, 5分間, 室温)した後、上清を捨てた。次いで、精子塊に500mlの各保存液を加え、軽くピペッティングを行い、精子懸濁液を作製した。
(3)チューブ内に500mlの各保存液に溶解したα−ヘモリジン(終濃度12μg/ml)を室温下で加え、遮光した後、30分間処理した。処理後、遠心分離(10,000rpm, 5分間, 室温)して上清を捨てた。
(4)次いで、チューブに各保存液に溶解したトレハロース液200μl(0.5〜1.0M)を加え、軽くピペッティングした後、室温下にて30分間静置させた。チューブは乾燥させるまで氷中に静置しておいた。
(5)カルチャープレート(24 well、#35-3847, ファルコン社製)の各wellに精子懸濁液を50μlずつ滴下した。また、スライドガラス(micro slide glass, リングマーク、76 x 26 mm、Matsunami)上に20μlずつ滴下した。滴下後、安全キャビネット内で室温下、カルチャープレートは2時間、スライドガラスは30分間風乾させた。
風乾後、カルチャープレートをアルミホイールで包み、真空デシケータ内(室温)で保存した。また、スライドガラスは乾燥した精子懸濁液をカバーガラス(HybriSlip Hybridization Cover, 22 x 22 mm、フナコシ)で覆い、パラフィルムでシールした後、ポリエチレンバックに入れ、真空パックにし、真空デシケータ内(室温)で7日間保存した。
【0023】
比較例1
実施例1(1)、(2)と同様にして、NIM、mCZB-Hepes又はTris-HCl-EGTAをそれぞれ用いて精子懸濁液を得た後、α−ヘモリジン処理及びトレハロース添加をせずに、実施例1(5)と同様にしてカルチャープレート上で風乾させ、真空デシケータ内(室温)で7日間保存した。
【0024】
試験例1
1.[乾燥保存精子の顕微受精]
保存後の乾燥精子について顕微授精を行った。すなわち、スライドガラス上の乾燥精子懸濁液あるいはカルチャープレートの各wellに各々100μlあるいは1mlの滅菌ミリQ水、NIM、mCZB-HepesあるいはTris-HCl-EGTAのいずれかを加え、室温下で5分間復水させた。復水後、軽くピペッティングすることにより精子懸濁液を作製し、それらをマイクロチューブに移した。
次いで、遠心分離(10,000rpm, 5分間, 室温)により上清を捨てた後、100μlのmCZB-Hepesを加え、精子を懸濁した。チューブは、ICSIをするまで氷中に静置しておいた。
ICSIは常法により行った。即ち、性腺刺激ホルモンであるPMSGとhCG各々10IUを48時間間隔で腹腔内投与することにより過排卵処理を施した生後8〜10週齢のBDF1雌マウスについてhCG投与後、約16時間目に卵管膨大部より卵丘細胞に包まれた未受精卵を採取した。これらの未受精卵と卵丘細胞の塊は、0.1%のヒアルロニダーゼを含む100mlの修正Whitten's培養液(mW)のドロップ内にて未受精卵と卵丘細胞を分離した。その後、ICSIを行うまで、未受精卵をmWにて培養した。ICSIを行うに際し、マイクロマニピュレータ(Leica社製)及びインジェクター(Eppendorf社製)の調整を行った。調整後、左右のインジェクターに接続したインスツルメントカーラー先端に各々ホールディングピペット及びインジェクションピペットを接続した。その後、倒立顕微鏡(DM IRB, ホフマンコントラスト付き、Leica社製)下にて、12% PVPを含むmCZB-Hepes 5mlに乾燥保存精子の懸濁液 2mlを加えた混合液にインジェクションピペット先端を挿入し、精子頭部を先端に引っ掛け、ピエゾドライブ(プライムテック社製)のパルスを加えることにより精子頭部と尾部を分離した。この操作を数回繰り返して精子頭部を数個、ピペット内に吸入した。次いで、顕微鏡のステージを動かして未受精卵を含むmCZB-Hepesのドロップに移り、ホールディングピペット先端に未受精卵を吸引・固定した。その後、未受精卵の透明帯にインジェクションピペット先端を密着させ、ピエゾドライブのパルスをかけることにより透明帯に穴を開けた後、未受精卵の細胞質も同様にピエゾにより穴を開け、精子頭部1個を卵細胞質内に放出した。精子頭部を含む未受精卵は、mCZB-Hepesのドロップ中に静置させた。この操作を30分以内に数回行った。ICSI後の卵子は、mWで1回洗浄後、20mlのmWドロップ内にて5日間培養した。この培養の間に受精能及び胚盤胞への発生能を確認した。なお、一部の卵子は、ICSI後24時間目に2−細胞期胚に発生したものについて、偽妊娠0.5日目のレシピエントマウス(ICR;生後9〜12週齢)の卵管内に移植した。その後、卵管移植されたレシピエントマウスは、移植後、13.5日目に安楽死させ子宮内胎児を確認した。
なお、1Mトレハロースを含むmCZB-Hepesを用いて精子懸濁液を作製後、保存しないで直ちにICSIを行ったもの;mCZB-Hepesを用いて精子懸濁液を作製後、α−ヘモリジン処理した懸濁液を保存しないで直ちにICSIを行ったもの;mCZB-Hepesを用いて精子懸濁液を作製後、保存しないで直ちにICSIを行ったものをそれぞれコントロールとした。
【0025】
2.[結果]
結果を表1に示す。
表1から明らかなように、本発明方法で保存したいずれの精子も受精率が高く、また桑実期胚及び胚盤胞への発生率は良好であった。特に、Tris-EGTAを保存液にした場合に良好であった。1Mトレハロースと0.5Mトレハロースを比べると桑実期胚への発生率では差がなかったものの、0.5Mトレハロースの方が胚盤胞への発生率は良好であった。
また、復水の際に用いる復水液について検討したところ、NIM群では、滅菌ミリQ水より同様の保存液の方が、ICSI後の胚盤胞への発生率が良好であることがわかった。一方、Tris-EGTA群においては、復水液の違いによるICSI後の受精率及び発生率には差が認められなかった。総じて、0.5Mトレハロースを含むTris-EGTA群が、ICSI後の胚盤胞への発生率が最も良好であることがわかった。
さらに、0.5Mトレハロースを含むTris-EGTA群と、1Mトレハロースを含むmCZB-Hepesを用いて精子懸濁液を作製後、保存しないで直ちにICSIを行った群(表1中*)を比較すると、胚盤胞への発生率では若干0.5Mトレハロース/Tris-EGTA群の方が、低い傾向を示したものの、受精率及び桑実期胚までの発生率については、両者間でほとんど差を認めなかった。これにより、本発明方法によれば、精子の染色体異常やDNA損傷を生じさせることなく、室温下でも長期間保存可能なことが確認された。
【0026】
一方、比較例1で調製した乾燥精子では、NIM群で73.9%、mCZB-Hepes群で90%が受精し、これらの受精卵の内、NIM群82.4%、mCZB-Hepes群77.8%が2−細胞期胚へ発生した。しかし、ICSI後、3日間培養した際の桑実期胚までの発生率は、NIM群23.5%、mCZB-Hepes群27.8%と顕著に低下した。また、胚盤胞へ発生したものは、いずれの保存群でも認められなかった。
また、Tris-EGTA単独にて保存した精子においては、受精率93.1%、2−細胞期胚への発生率96.3%及び桑実期胚への発生率37%とNIM群及びmCZB-Hepes群に比べ高値を示す傾向が認められたが、ICSI後の胚盤胞への発生率は7.4%と低値であった。これにより、α−ヘモリジン処理及びトレハロース添加をせずに、NIM、mCZB-Hepes及びTris-EGTA単独で空気乾燥し、7日間の精子の室温保存を行った場合、いずれの群も比較的高い受精率が得られるものの、ICSI後の胚盤胞への発生率は、低率であることがわかった。
なお、mCZB-Hepes単独で精子懸濁液を作製後、保存しないで直ちにICSIを行った群(表1中**と***)は、α−ヘモリジン処理の有無に関わらず、受精率、桑実期胚までの発生率、胚盤胞への発生率はいずれも高値を示した。このことから、室温保存をしない場合は、保存液へのトレハロース添加がICSI後の卵子の桑実期胚以降の発生に影響を与えていることが示唆された。
【0027】
【表1】

【0028】
試験例2
0.5Mトレハロースを含むTris-EGTAにて7日間室温保存したマウス精子のICSI後におけるin vivo発生能を試験した。
実施例1と同様にして0.5Mトレハロースを含むTris-EGTAにてマウス精子を7日間保存した。乾燥精子をTris-EGTAあるいは滅菌ミリQ水を用いて復水し、試験例1と同様にしてICSIにより受精卵を得た。これらの受精卵を1日培養して2−細胞期胚まで発生させた後、偽妊娠0.5日目(プラグ確認日を偽妊娠0.5日とする)のレシピエントマウスの卵管に移植した。移植後、13.5日目にこれらのマウスをsacrificeし、子宮内の胎児を確認した。
その結果、表2に示すように、復水液をTris-EGTAあるいはミリQ水いずれを用いた場合にも、正常胎仔が得られ、両者間の発生率に差は認められなかった。これらの結果から、室温保存精子からでもICSI後に正常な胎仔まで発生することがわかった。
【0029】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明方法の概略を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類から採取した精子をα−ヘモリジン処理して二糖類又は三糖類を細胞内に流入させた後、一定期間インキュベーションし、次いで空気乾燥することを特徴とする哺乳類精子の保存方法。
【請求項2】
二糖類がトレハロースであり、三糖類がラフィノースである請求項1記載の哺乳類精子の保存方法。
【請求項3】
0℃〜室温下にて20分〜10日間インキュベーションを行う請求項1又は2記載の哺乳類精子の保存方法。
【請求項4】
哺乳類がマウスである請求項1〜3のいずれか1項記載の哺乳類精子の保存方法。
【請求項5】
精子を、緩衝液とキレート剤及び/又は糖類とを含有する保存液中で保存する請求項1〜4のいずれか1項記載の哺乳類精子の保存方法。

【図1】
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