説明

唾液検査用具

【課題】 被験者の口腔内に分泌される唾液量を簡易に且つ正確に検査することが可能であって生産も容易な唾液検査用具を提供する。
【解決手段】 口腔内に挿入される挿入部と目印が記された検査部とを有する唾液吸収材からなる唾液検査用具であって、挿入部の長さが舌上に接触する長さであることを特徴とする唾液検査用具である。そして挿入部の長さは20〜60mm、挿入部の幅は2〜30mm、唾液吸収性材は短冊状であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、齲蝕のリスク評価や唾液分泌量の変化を確認するために被験者の唾液量を簡便に、精度良く検査することが可能な唾液量検査用具に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内疾患である齲蝕は歯科医師や衛生士の指導による口腔衛生の向上とフッ素配合製品の使用により減少傾向にある。しかしながら、昨今ストレスによる唾液量の減少や加齢に伴う疾患、例えば高血圧や心疾患等で服用する薬剤の中に唾液分泌量を減少させ、口腔乾燥症(ドライマウス)を誘発するものがある。これらの原因による唾液分泌量の減少により、齲蝕だけでなく、歯周病,口内炎,カンジダ症等の疾患、更には口腔内細菌が引き金となって誘発される全身疾患、例えば誤嚥性肺炎や心内膜症等が引き起こされることが知られている。
【0003】
そこでこれら口腔疾患のリスクチェックの一つとして、唾液の分泌量の低下具合を確認し、その後の治療の有効性や予防処置の効果等を判定するために唾液の分泌量や粘性を簡便に且つ安価に検査できる方法が望まれていた。
【0004】
従来、安静時の唾液量は一定時間に自然に分泌される唾液を容器に採取し、その容量をメスシリンダー等で測定する方法が一般的であった。また、刺激時の唾液量は1分間パラフィン片等を咀嚼し、一度唾液を全て廃棄した後、再度5分間ほど咀嚼して、目盛の付いたシリンダーに吐き出した唾液量を測定する方法も行われていた。しかし、これらの方法はメスシリンダー等の特殊な容器が必要であるために実際の医療現場では広く行われていない。
【0005】
そこで簡易型の唾液検査用具として、唾液の浸透速度が一定範囲内にある支持体を備えている唾液検査用具が開示された(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この唾液検査用具は、検査時に被験部位に紙が接触する面積が一定とならないことから、繰り返し検査による誤差が大きい問題があり、精度が低い方法と言える。一般に医療現場においては簡便な方法が求められるが、この方法では唾液量を正確に検査することは難しい。
【0006】
そこで以前に、本願出願人は唾液量を簡易に且つ正確に検査する方法として、短冊状の唾液吸収材の少なくとも長手方向の周囲を透明な水不透過性材料で被覆した唾液検査用具において、口腔内に挿入して唾液を吸収させる部位とその反対側の部位とにおける唾液吸収材の露出面積の割合を特定割合にすることにより正確に検査できる唾液検査用具を提案した(特許文献2参照。)。しかしながら、口腔内との接触面積を規定するためにはラミネート等の皮膜処理が必要であり、更にその皮膜に精度良く穴や切り込みを設ける必要があるので生産効率が悪いという問題があった。そこで、容易に作製可能であって、且つ安定した検査が行える唾液検査用具が求められていた。
【0007】
【特許文献1】特開2000−329763号公報
【特許文献2】特開2004−093439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
被験者の口腔内に分泌される唾液量を簡易に且つ正確に検査することが可能であって生産も容易な唾液検査用具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、従来の唾液検査用具では口腔内に挿入する部分の長さが唇でくわえる程度と短かったために、唾液の分泌に直接関係しない唇だけにしか接触していなかったり、逆に舌背下の唾液分泌線の影響を直接受けてしまう場所のみを検査していたことにより検査の精度が低くなっていることに着目した。そして略短冊状の唾液吸収材の口腔内に挿入される部位を舌上に十分に接触させるように検査を行えば、ラミネート等の皮膜処理を行わなくても正確に唾液の量や粘性を検査できることを究明して本発明を完成した。
【0010】
即ち本発明は、口腔内に挿入される挿入部と、吸収された唾液量を確認するための目印を有する検査部とからなる唾液吸収材であって、挿入部の長さが舌上に接触する長さであることを特徴とする唾液検査用具である。そして挿入部の長さは20〜60mm、挿入部の幅は2〜30mmであるとより精度の高い検査を行うことができる唾液検査用具である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る唾液検査用具は生産が容易であり、従来の唾液検査用具と同様の簡便さで正確に検査を行うことが可能な優れた唾液検査用具である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面により本発明に係る唾液検査用具の実施例について説明する。図1は本発明に係る唾液検査用具の一実施例を示す説明用斜視図である。
【0013】
図面中、1は本発明に係る唾液検査用具であって、唾液吸収材からなり、口腔内に挿入される挿入部1aと吸収された唾液量を確認するための目印を有する検査部1bとを有する。検査部1bは挿入部1aで吸収された唾液の量を確認するための目印を有する。目印は図1に示したような所定間隔に印字等された目盛1dであることが好ましいが、挿入部1aからの距離によって単に色分けされているだけでも良いし、例えば「多い」と記載されたラインと「少ない」と記載されたラインのみ等の簡単な目印でも良い。
【0014】
唾液吸収材は唾液を吸い上げるためのものであり、濾紙,紙タオル,吸い取り紙,加工紙等の各種の紙類や、綿,石英ウール,絹,ウール,ガラスウール,レーヨン,麻,酢酸セルロース,ニトロセルロース等の繊維類、シリカゲル,珪藻土,セルロースパウダー等の多孔質性吸着材を板状に加工したものを例示することができる。
【0015】
本発明に係る唾液検査用具においては、挿入部1aの長さが20〜60mmであることが好ましい。20mm未満であると一般的なヒトの舌先だけに接触することとなり、舌上に挿入部が十分に接触できずに検査が不正確になる虞があり本発明の効果を得難く、60mmを超えると挿入部が口腔内の奥に入りすぎて正確な検査が行い難い。また、挿入部1aの幅は2〜30mmであることが好ましく、2mm未満では正確な検査が行い難く、30mmを超えると口腔内で保持することが難しい傾向がある。なお、本発明に係る唾液検査用具の厚さは0.2〜5mm程度であることが好ましい。
【0016】
唾液検査用具は特に紙質の材料からなる略短冊状であることが生産性の面から見て好ましく、特に図1に示したように挿入部1aと検査部1bの境(1c)を折り曲がるようにしておくと、挿入部を口でくわえた際に検査部が垂れ下がるので検査者や被験者が挿入部1aと検査部1bとの境を確認し易いので口腔内への挿入深さが安定するので好ましい。また、被験者の口から検査部が垂れ下がっていると、口にくわえたまま検査人が直接目盛(1d)を確認できる利点もある。また、挿入部や検査部の幅は同一である必要はなくなく、挿入部や検査部内で幅や厚さが変化しいても良い。
【0017】
本発明に係る唾液検査用具においては、誤って検査部1bを口に挿入してしまう等の検査の失敗を避けるために、図1に示したように挿入部1aと検査部1bとの例えば先端の形状を変えておくと良い。また形状だけではなく色等も変えて良いのは勿論である。更に従来の唾液検査用具と同様に唾液吸収材に予めpH指示薬を含ませても良いし、検査部の全部または一部をポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂等でラミネートしても良い。
【0018】
<実施例1>
唾液吸収材として、濾紙(商品名:コーヒー濾紙,三木特殊製紙社製)を幅5mm×長さ100mm×厚さ0.22mmの大きさの短冊状に成形し、中央部で折り曲げ、一端を丸く成形して折り目までを挿入部とした。挿入部と反対側の端に向かって折り目から5mm毎に目盛をつけ検査部とし唾液検査用具を作製した。
【0019】
<実施例2>
唾液吸収材として、濾紙(商品名:コーヒー濾紙,三木特殊製紙社製)を幅10mm×長さ90mm×厚さ0.22mmの大きさの短冊状に成形し、端から25mmのところで折り曲げ、その端を丸く成形して折り目までを挿入部とした。挿入部と反対側の端に向かって折り目から1mm毎に目盛をつけ検査部とし唾液検査用具を作製した。
【0020】
<比較例1>
唾液吸収材として、濾紙(商品名:コーヒー濾紙,三木特殊製紙社製)を幅10mm×長さ90mm×厚さ0.22mmの大きさの短冊状に成形し、端から10mmのところで折り曲げてそこを挿入部とした。挿入部と反対側の端に向かって折り目から1mm毎に目盛をつけ検査部として唾液検査用具を作製した。
【0021】
唾液検査用具の挿入部を被験者の舌上に乗せ折り目が被験者の唇の外側に来るようにして加えさせ30秒間保持した。30秒後に口から取り出し、折り目から検査部端方向に向かって唾液が染み込んだ所までの距離を定規により計り吸い込み量とした。この検査を9回繰り返し平均値を求めた。結果を表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
上記の結果から、本発明に係る唾液検査用具は従来の唾液検査用具と比較して安定して検査が可能であることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る唾液検査用具の一実施例を示す説明用斜視図。
【符号の説明】
【0025】
1 唾液検査用具
1a 挿入部
1b 検査部
1c 境
1d 目盛

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内に挿入される挿入部(1a)と、吸収された唾液量を確認するための目印を有する検査部(1b)とからなる唾液吸収材であって、挿入部の長さが舌上に接触する長さであることを特徴とする唾液検査用具。
【請求項2】
挿入部の長さが20〜60mmである請求項1に記載の唾液検査用具。
【請求項3】
挿入部の幅が2〜30mmである請求項1または2に記載の唾液検査用具。
【請求項4】
唾液吸収性材が短冊状である請求項1〜3の何れか一項に記載の唾液検査用具。

【図1】
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