説明

商品紹介システム

【課題】顧客が商品に関心を抱いたと判断できる時点で自動的に商品紹介情報を表示する商品紹介システムを提供する。
【解決手段】商品陳列棚1の棚板2a〜2eには1枚ずつにアンテナ5a〜5eが配置されていて、棚板に載置された商品に付属するICタグ3が発信する電波を受信する。受信した電波を受信装置13の分析部32で分析した結果、いずれかの商品が顧客の手に取られたことが判明したときは、サーバ11はそのICタグ3が付属する商品の販売個体の紹介情報を商品紹介情報データベース22から呼び出し、画像モニター装置12に表示させる。商品陳列棚にはダミーICタグ3aが配置されており、ダミーICタグ3aが発信した電波をアンテナ5a〜5eのうち特定のものが受信したことの検知をもって、受信電波分析サイクル中の基準点とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は商品販売の場で使用される商品紹介システムに関する。
【背景技術】
【0002】
商品販売の場で、興味を引いた、あるいは購買意欲をそそられた商品があると、その商品の特徴をもっと良く知りたくなる。対面販売の場では販売員から情報を得れば良いのであるが、販売員がたまたま不在ということもある。販売員がいたとしても、その商品について知悉しているとは限らないし、消費者によっては販売員との対話が苦手という人もいる。またセルフサービス形式の売り場では販売員をつかまえること自体が容易ではない。
【0003】
そこで、販売支援ツールとして、商品情報をモニター画面上に表示するシステムが提案されている。特許文献1、2にその例を見ることができる。
【0004】
特許文献1には、商品にICタグを付しておき、その商品を購入希望者が購入希望者用端末にかざすか、あるいは販売者がその商品をレジで販売者用端末にかざすことにより、端末の画面に商品情報を表示できるようにした商品販売システムが記載されている。
【0005】
特許文献2には、対面販売を行わないディスカウントスーパーやコンビニエンスストアなどで用いられる表示装置であって、買い物客が商品を手に取ってレジに移動する途中で、商品に付されたICタグから商品コードを無線で受信すると、関連商品の案内情報を表示するようにしたものが記載されている。
【0006】
特許文献3には、ICタグの構造が開示されている。
【特許文献1】特開2006−18720号公報([0019]−[0051]、図1)
【特許文献2】特開2005−352688号公報([0009]−[0019]、図1−4)
【特許文献3】特開2005−328985号公報([0045]−[0048]、図6A、6B)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の装置では、購入希望者が商品に興味を持った場合、その商品に関する情報を表示させるためには、商品を購入希望者用端末にかざさねばならない。その仕組みを購入希望者が理解していなくてはならないし、大きめの商品だと購入希望者用端末のところまでかざしに行くのが大変である。特許文献2に記載の装置では、購買の意思決定をした商品を手に取ってレジに移動するまでの間に、手にした商品の関連商品の情報は表示されるものの、手にしている商品自体の情報は表示されないので、商品パッケージや店内POPに記されている以上の情報を得ることができない。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであって、顧客が商品に関心を抱いたと判断できる時点で自動的に商品紹介情報を表示することにより、格別の操作を顧客に強いることなく商品紹介情報を提供できる商品紹介システムを提供することを目的とする。また、顧客が商品に関心を抱いたとの判断を的確且つスピーディーに行うことのできる商品紹介システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するために本発明では、商品紹介システムを次のように構成する。すなわち販売個体毎にICタグを付属させた商品と、陳列空間に配置されたアンテナを通じて前記ICタグの発信する電波を検知する受信装置と、商品紹介情報を蓄積したサーバと、画像モニター装置とを備え、前記受信装置が特定のICタグの発信する電波を検知しなくなったことを受けて、前記サーバはそのICタグが付属する前記販売個体の紹介情報を前記画像モニター装置に表示させることを特徴している。
【0010】
この構成によると、アンテナがICタグの発する電波を受信できる距離を適切に設定することにより、顧客が商品の販売個体を手に取った時点で、その販売個体のICタグが発信する電波が検知されなくなるようにして、商品紹介情報を画像モニター装置に表示させることができる。商品を手に取ったということは明らかにその商品に関心を抱いたということであり、そこへタイミング良く商品紹介情報を表示することにより、商品への関心を一層深めさせ、購買意欲をかき立てることができる。また商品紹介情報の表示は顧客が意識しないうちに自動的に行われ、顧客は何ら労力を強いられることなく商品情報を手に入れることができる。
【0011】
(2)また本発明は、上記構成の商品紹介システムにおいて、前記陳列空間に複数のアンテナが配置され、前記受信装置は前記複数のアンテナの1個ずつに順次チャンネルを切り替えて前記ICタグの発信する電波を検知するものであることを特徴としている。
【0012】
この構成によると、陳列空間全体を1個のアンテナでカバーするようなことをせず、複数のアンテナで陳列空間をカバーすることにより、販売個体の数が多くてももれなく把握することができる。また受信装置が複数のアンテナの1個ずつに順次チャンネルを切り替えるので、ICタグの発信する電波を正確にキャッチし、販売個体の動きを的確に把握することができる。
【0013】
(3)また本発明は、上記構成の商品紹介システムにおいて、前記陳列空間に1個のダミーICタグを配置し、このダミーICタグが発信した電波を前記複数のアンテナのうち特定のものが受信したことの検知をもって、受信電波分析サイクル中の基準点とすることを特徴としている。
【0014】
この構成によると、多数のICタグからの電波が飛び交い、また複数の顧客の手で複数の販売個体が取り上げられるといった状況下でも、不動の電波発信源が1個存在するので、それを分析サイクルの基準点として全受信電波を常に秩序立てて分析し、顧客が商品に関心を抱いたとの判断を的確且つスピーディーに行うことが可能となる。
【0015】
(4)また本発明は、上記構成の商品紹介システムにおいて、前記アンテナは、前記販売個体を載置する陳列棚の棚板に配置されることを特徴としている。
【0016】
この構成によると、商品とアンテナとの距離が近くなり、ICタグの発信する微弱な電波を確実にキャッチできるうえ、顧客が販売個体を取り上げたという判断を誤りなく下すことができ、販売個体が取り上げられたのに商品紹介情報が表示されないとか、逆に販売個体が棚板に載ったままの状態なのに商品紹介情報が表示されるといった誤動作を抑止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、顧客が商品の販売個体を手に取り、その販売個体のICタグが発信する電波が検知されなくなることをもって、顧客がその販売個体に関心を抱いたと判断し、商品紹介情報を画像モニター装置に表示する仕組みであるから、顧客の心理に合わせてタイミング良く商品紹介情報を提供し、商品への関心を一層深めさせ、購買意欲をかき立てることができる。また陳列空間に1個のダミーICタグを配置し、このダミーICタグが発信した電波を複数のアンテナのうち特定のものが受信したことの検知をもって、受信電波分析サイクル中の基準点とするから、多数のICタグからの電波が飛び交い、また複数の顧客の手で複数の販売個体が取り上げられるといった状況下でも、不動の電波発信源の存在により、全受信電波を常に秩序立てて分析し、顧客が商品に関心を抱いたとの判断を的確且つスピーディーに行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下本発明の一実施形態を図に基づき説明する。図1は商品陳列空間の概略図、図2は商品紹介システムのブロック構成図、図3は商品陳列棚の棚板の斜視図である。
【0019】
図1には商品陳列空間に1基の商品陳列棚1が配置されている状況が描かれている。商品陳列棚1は棚板2a〜2eを有し、それぞれの棚板に商品(五十音文字を1文字ずつ付して種類の識別がなされている)を複数ずつ陳列している。販売個体は商品の種類毎に1個という設定である。なお棚板の数は図では5枚となってるが、その数に制限はなく、1枚であってもよいし、5枚以外の複数枚であってもよい。
【0020】
商品の各販売個体には1個に1個ずつICタグ3が付属する。ICタグ3は非接触タイプのものであり、無線で通信を行う。クレジットカード大のカード4にICタグ3を仕込み、そのカード4を販売個体に入れるという形で付属させているが、それ以外の手法、例えばプライスタグと一緒に販売個体に結びつけるといった手法を採用しても構わない。ICタグ3は特許文献3記載のものと同様構造であり、電波受信による共振、電磁誘導などにより微弱な信号電波を発信する。
【0021】
ICタグ3からの信号電波を受信するアンテナが棚板2a〜2eに設けられている。実施形態では棚板1枚につき1個のアンテナが設けられ、全体では5a〜5eの5個のアンテナが存在する形になっているが、棚板1枚につき複数のアンテナを配置する構成でも差し支えない。
【0022】
棚板の構造を、棚板2aを例にとって説明する。図3に見られるように、棚板2aは金属製フレーム6にガラス板7を組み合わせた構成である。ガラス板7にアンテナ5aが、ガラス板7の内部に封入する、あるいはガラス板7の下面に貼り付けるなどして組み合わせられている。棚板2aの構造はこれに限られるものではなく、金属製フレーム6を省略してガラス板7だけとしたり、ガラスに代えて合成樹脂や木質の板を用いるなど、商品の特質、また商品陳列空間のねらいとする演出効果に合わせて、自由に選択することができる。棚板2b〜2eについても同様である。
【0023】
棚板2eにはダミーICタグ3aが取り付けられる。取付位置は顧客から見えない箇所がよい。また、アンテナ5e以外のアンテナとの間で出来る限り影響が及ばないことが望ましく、その意味で棚板2eの下面に取り付けるのがよい。ダミーICタグ3aの役割は後で説明する。
【0024】
商品陳列空間には、商品陳列棚1に加え、商品紹介情報の表示装置10が配置される。表示装置10は、商品紹介情報を蓄積したサーバ11と、サーバ11に接続された画像モニター装置12と、同じくサーバ11に接続した受信装置13と、これらのものを載置するラック14からなる。
【0025】
商品紹介システムのより詳しい構成を図2に基づき説明する。表示装置10のサーバ11は次の構成要素を備える。制御部20、情報出力部21、商品紹介情報データベース22、通信部23、及び入力部24である。情報出力部21は商品紹介情報データベース22から呼び出された商品紹介情報を画像モニター装置12に出力する。通信部23は外部装置(この場合は受信装置13)から信号を受け取るためのものである。入力部24は制御部へのデータ入力に用いられるものであり、キーボードやマウスで構成することができる。
【0026】
制御部20はサーバ11全体の動作を制御するものであって、マイクロコンピュータにより構成され、中央演算ユニット25、RAM26、及びROM27を有する。中央演算ユニット25は入力部24やRAM26から入力されるデータに対し、二進加算、論理演算、増減、比較などの演算を行う。ROM27は各部を動作させるための命令、判断条件、情報処理ルールなどを記憶しており、それらを必要に応じ中央演算ユニット25に提供する。
【0027】
受信装置13は次の構成要素を備える。制御部30、通信部31、分析部32、及び受信チャンネル部33である。制御部30は受信装置13全体の動作を制御するものであって、サーバ11の制御部20と同様にマイクロコンピュータで構成され、中央演算ユニット34、RAM35、及びROM36を有する。通信部31はサーバ11の通信部23と有線または無線で通信を行う。分析部32はアンテナ5a〜5eの受信結果を分析する。受信チャンネル部33は複数の受信チャンネルを備える。図にはA〜Eの5個のチャンネルが表示されており、これらにアンテナ5a〜5eが1対1対応で接続されている。
【0028】
続いて本発明商品紹介システムの動作につき説明する。受信装置13はアンテナ5a〜5eを通じてICタグ3の発信する電波を受信する。受信チャンネル部33ではアンテナ5a〜5eの1個ずつに順次チャンネルが切り替えられ、各アンテナの受信している電波が分析部32に伝えられる。
【0029】
アンテナ5aが主に受信対象とするのは商品「あ」「い」「う」「え」、アンテナ5bが主に受信対象とするのは商品「か」「き」「く」「け」、アンテナ5cが主に受信対象とするのは商品「さ」「し」「す」「せ」、アンテナ5dが主に受信対象とするのは商品「た」「ち」「つ」「て」、アンテナ5eが主に受信対象とするのはダミーICタグ3aと商品「な」「に」「ぬ」「ね」である。受信チャンネル部33でチャンネルE→D→C→B→A→Eと順次チャンネルを切り替えて一巡する間に「あ」から「ね」までの全商品のICタグ3からの電波を一度でも検知すれば、どの商品も顧客によって取り上げられていない、顧客が手を触れているかも知れないが、少なくとも棚板の上にある、ということになる。
【0030】
上記「主な受信対象」以外の商品からの電波を各アンテナが受信することがある(むしろそれが普通である)。例えば商品「あ」の電波をアンテナ5bが受信することがある。このようなことになっても全く問題はない。というのは、分析は全受信電波の差分をとることにより行われるからである。分析部32での分析の結果、特定商品からの電波がアンテナ5a〜5eのいずれにも受信されていないことが判明したならば、その商品は顧客の手に取られている、と結論づけられる。逆に言えば、アンテナ5a〜5eのいずれかが電波を受信しているかぎり、その商品は本来の置き場所から位置を変えたかも知れないが、まだ商品陳列棚1から離れていない、ということになる。
【0031】
チャンネルEから始まりチャンネルAで終わる分析サイクルは繰り返し実行される。その過程で、受信履歴のある商品の中で特定のもの、例えば商品「あ」に付属するICタグ3からの電波が検知されていないことが判明したときには、商品「あ」は客の手に取られて商品陳列棚1から取り出されたものと判定される。この判定結果はサーバ11に伝えられ、商品「あ」の商品紹介情報が商品紹介情報データベス22から呼び出されて画像モニター装置12に表示される。
【0032】
商品「あ」を手に取ったということは明らかに商品「あ」に関心を抱いたということであり、そこへタイミング良く商品「あ」の紹介情報を表示することにより、商品「あ」への関心を一層深めさせ、購買意欲をかき立てることができる。また商品紹介情報の表示は顧客が商品「あ」を手に取るだけで、顧客が意識しないうちに自動的に行われ、顧客は何ら労力を強いられることなく商品「あ」の紹介情報を手に入れることができる。
【0033】
商品紹介情報の表示は、内容を全て表示してからでないと終了しないようにしてもよく、商品が商品陳列棚1に戻された時点で終了するようにしてもよい。なお商品を商品陳列棚1に戻す際、必ずしも元の棚板に戻す必要はない。アンテナ5a〜5eのいずれがその商品からの電波をキャッチしたとしても、商品が客の手を離れて商品陳列棚1に戻ったということには変わりがないからである。
【0034】
上記のようにチャンネルを一巡する分析サイクルの中で、どこが基準点であるのかが明確であると、分析作業を無駄なくスピーディーに行うことができる。本実施形態では、ダミーICタグ3aが発信した電波をアンテナ5eが受信したことの検知をもって基準点とする。出入りの激しい商品からの電波でなく、不動の電波発信源であるダミーICタグ3aからの電波を基準点とするので、多数のICタグ3からの電波が飛び交い、また複数の顧客の手で複数の販売個体が取り上げられるといった状況下でも、全受信電波を常に秩序立てて分析し、顧客が商品に関心を抱いたとの判断を的確に下すことができる。
【0035】
商品陳列棚1に陳列する商品の入れ替えがあった場合は、分析部32のタスクを書き換え、入れ替え後の商品を遺漏無く把握できるようにする。なお本実施形態では受信装置13に分析部32を置いているが、サーバ11の方にその役割を担わせてもよい。
【0036】
以上本発明の一実施形態につき説明したが、発明の主旨を逸脱しない範囲でさらに種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は商品販売の場で用いられる商品紹介システムとして広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】商品陳列空間の概略図
【図2】商品紹介システムのブロック構成図
【図3】商品陳列棚の棚板の斜視図
【符号の説明】
【0039】
1 商品陳列棚
2a〜2e 棚板
3 ICタグ
3a ダミーICタグ
4 カード
5a〜5e アンテナ
10 表示装置
11 サーバ
12 画像モニター装置
13 受信装置
22 商品紹介情報データベース
32 分析部
33 受信チャンネル部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
販売個体毎にICタグを付属させた商品と、陳列空間に配置されたアンテナを通じて前記ICタグの発信する電波を検知する受信装置と、商品紹介情報を蓄積したサーバと、画像モニター装置とを備え、
前記受信装置が特定のICタグの発信する電波を検知しなくなったことを受けて、前記サーバはそのICタグが付属する前記販売個体の紹介情報を前記画像モニター装置に表示させることを特徴とする商品紹介システム。
【請求項2】
前記陳列空間に複数のアンテナが配置され、前記受信装置は前記複数のアンテナの1個ずつに順次チャンネルを切り替えて前記ICタグの発信する電波を検知するものであることを特徴とする請求項1に記載の商品紹介システム。
【請求項3】
前記陳列空間に1個のダミーICタグを配置し、このダミーICタグが発信した電波を前記複数のアンテナのうち特定のものが受信したことの検知をもって、受信電波分析サイクル中の基準点とすることを特徴とする請求項1または2に記載の商品紹介システム。
【請求項4】
前記アンテナは、前記販売個体を載置する陳列棚の棚板に配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の商品紹介システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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