説明

喉頭鏡

【課題】腕力や熟練を要しない簡単な手技によって喉頭展開を的確に行うことができる新規な喉頭鏡を提供する。
【解決手段】先端部分が患者の口内に挿入されるブレード20と、ブレード20の後端部分に突設されたハンドル10と、ハンドル10に設けられた操作部30と、操作部30の操作によりブレード20に対して下降して患者の口蓋を押圧する押圧アーム40とを備える喉頭鏡1。なお、操作部30を、ハンドル10に並設されたグリップ31と、夫々、一端側がハンドル10に回動自在に支持されると共に他端側がグリップ31に回動自在に支持され、ハンドル10とグリップ31とで四節回転リンク機構を形成する上下一対の連結バー32a,32bとを有するものとし、ハンドル10と共に握り操作されることでハンドル10に対してグリップ31が下降するものとするとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、喉頭鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
呼吸停止の重態患者の緊急医療や麻酔医療等において気管内挿管を行う際や、喉頭やその周辺の観察、診断、治療を行う際等において、患者の喉頭展開を行うために用いられる医療器具として喉頭鏡がある。
【0003】
ここで、従来の喉頭鏡及びその使用態様の一例を図9及び図10に基づいて説明する。
【0004】
喉頭鏡100は、先端部分が患者の口内に挿入されるブレード120と、このブレード120の後端部分に突設されたハンドル110とを有するものである。なお、一般的な喉頭鏡100では、患者の体格や医療内容に応じて適したブレード120を使用できるように、ハンドル110に対して複数種類のブレード120が交換可能となっている。
【0005】
喉頭鏡100によって喉頭を展開し、気管内挿管を行うにあたっては、まず、図9に示すように、患者を仰向けの状態で寝かせ、患者の口内にブレード120を挿入し、ブレード120の先端を喉頭蓋谷に位置させる。そして、ハンドル110を引上げて(図9の矢印G参照)下顎を開かせ、十分に気管が開いたことを目視により確認する。気管が十分に開いていることを確認できたら、図10に示すように、ブレード120に沿って気管内チューブ130を挿入して気道を確保し(図10の矢印H参照)、気管内チューブ130を残して患者の口からブレードを抜き取る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の例のように喉頭鏡によって喉頭展開を行うには、強い力でハンドルを引上げなければならず、腕力を要する。また、熟練も要する。
【0007】
よって、腕力や熟練を要せずに喉頭展開を容易に行えるようにすることが望まれる。
【0008】
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであり、腕力や熟練を要しない簡単な手技によって喉頭展開を的確に行うことができる新規な喉頭鏡の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明の採った主要な手段は、
「先端部分が患者の口内に挿入されるブレードと、
該ブレードの後端部分に突設されたハンドルと、
該ハンドルに設けられた操作部と、
該操作部の操作により前記ブレードに対して下降して患者の口蓋を押圧する押圧アームと
を備えることを特徴とする喉頭鏡」
である。
【0010】
ここで、操作部としては、後述するようにハンドルと共に握り操作されるものの他、公知のジャッキのように、ネジの回動操作によって押圧アームをブレードに対して昇降させるものであってもよく、種々の構造を採用することができる。
【0011】
上記構成の喉頭鏡では、操作部の操作によってブレードに対して押圧アームを下降させ、押圧アームによって患者の口蓋を押圧すると、仰向けになった患者の口蓋は移動しないことから、押圧アームに対して相対的にブレードが上昇することになる。よって、この上昇するブレードによって容易に患者の下顎を開かせることができる。
【0012】
従って、上記構成の喉頭鏡によれば、操作部を操作してブレードに対して押圧アームを下降させるといった腕力や熟練を要しない簡単な手技によって、喉頭展開を的確に行うことができる。
【0013】
上述した手段において、
「前記操作部は、前記ハンドルに並設されたグリップと、夫々、一端側が前記ハンドルに回動自在に支持されると共に他端側が前記グリップに回動自在に支持され、前記ハンドルと前記グリップとで四節回転リンク機構を形成する上下一対の連結バーとを有し、前記ハンドルと共に握り操作されることで前記ハンドルに対して前記グリップが下降するものであり、
前記押圧アームは、前記グリップの下端に延設されたものである
ことを特徴とする喉頭鏡」
とするのが好適である。
【0014】
上記構成の喉頭鏡は、操作部を、ハンドルと共に握り操作されるものとして特定したものである。
【0015】
このような操作部を採用した喉頭鏡では、ハンドルを持つ片手の操作によって操作部を操作することができ、利便性に優れる。また、操作部を握る力を強めたり弱めたりすることで患者の口の開き具合を的確に調節することができ、この点からも利便性に優れる。
【0016】
上述した手段において、
「前記押圧アームは、前記グリップに着脱可能に装着されるものである
ことを特徴とする喉頭鏡」
とするのが好適である。
【0017】
押圧アームをグリップに一体的に設けてもよいが、この場合、患者の口内にブレードを挿入する際に押圧アームが邪魔になることがある。
【0018】
そこで、上記構成の如く押圧アームをグリップに着脱可能とすると、患者の口内にブレードを挿入した後に、別途、押圧アームの先端部分を患者の口内に挿入し、先端部分が患者の口内に挿入された押圧アームをグリップに装着することができる。よって、押圧アームが邪魔になることなくブレードを患者の口内に挿入できる喉頭鏡を実現することができる。
【0019】
上述した手段において、
「前記グリップは、前記ハンドルの前方に配設されており、
前記押圧アームは、患者の口蓋を押圧する先端部分が前記ブレードの真下に配置されたものであり、該先端部分と前記グリップの下端に位置する基端部分との間の中間部分が、前記ブレードの側方に迂回するように屈曲している
ことを特徴とする喉頭鏡」
とするのが好適である。
【0020】
上記構成の喉頭鏡では、押圧アームの中間部分がブレードに干渉しないように側方に迂回していることから、患者の気管が十分に開いていることを目視により確認する際や患者の気管に気管内チューブを挿入する際に、押圧アームが邪魔になることがない。
【0021】
上述した手段において
「前記押圧アームは、先端に前後方向に回動自在に設けられ、患者の口蓋に当接して該口蓋を押圧する押圧子を有するものである
ことを特徴とする喉頭鏡」
とするのが好適である。
【0022】
上記構成の喉頭鏡では、押圧アームの先端部分を構成する押圧子であり、患者の口蓋に当接して口蓋を押圧する押圧子が前後方向に回動自在であるため、押圧子を患者の口蓋になじむ姿勢で押し当てることができる。
【発明の効果】
【0023】
上述した通り、本発明によれば、腕力や熟練を要しない簡単な手技によって喉頭展開を的確に行うことができる新規な喉頭鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の喉頭鏡の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示した喉頭鏡の矢印Sからの正面図である。
【図3】操作部と押圧アームとの接続部分を示す要部拡大斜視図である。
【図4】押圧アーム先端の押圧子の要部拡大斜視図である。
【図5】操作部の要部拡大斜視図である。
【図6】図1に示した喉頭鏡を用いて喉頭展開を行う状態を示す説明図である。
【図7】図1に示した喉頭鏡を用いて喉頭展開を行う状態を示す説明図である。
【図8】図1に示した喉頭鏡を用いて喉頭展開を行う状態を示す説明図である。
【図9】従来の喉頭鏡を用いて喉頭展開を行う状態を示す説明図である。
【図10】従来の喉頭鏡を用いて喉頭展開を行う状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る喉頭鏡の実施形態としての一例を、以下、図面に従って詳細に説明する。なお、本書では、方向の表現について、便宜上、図1に示すように、矢印Sを正面視として、矢印Xを前後方向、矢印Yを左右方向、矢印Zを上下方向として説明する。
【0026】
図1に示すように、喉頭鏡1は、ハンドル10とブレード20と操作部30と押圧アーム40とを備えている。ここで、ブレード20は、従来既存のものと同様であり、ハンドル10についても、操作部30が設けられている以外は、従来既存のものと同様であり、単一のハンドル10に対して複数種類のブレード20が交換可能となっている。
【0027】
操作部30は、ハンドル10の前方に並設されたグリップ31と、夫々、一端側がハンドル10に回動自在に支持されると共に他端側がグリップ31に回動自在に支持され、ハンドル10とグリップ31とで四節回転リンク機構を形成する上下一対の連結バー32a、32bとを有するものとして構成されている。また、操作部30は、ハンドル10と共に握り操作されることでハンドル10に対してグリップ31が下降するものとして構成されている。具体的に、グリップ31は、ハンドル10に対して上下動自在(図1の矢印A参照)となっており、ハンドル10と共にグリップ31を握ると、ハンドル10に対して下降する。
【0028】
押圧アーム40は、アーム本体41と、このアーム本体41の先端部分に取付けられた押圧子44とを有するものとして構成されている。
【0029】
ここで、アーム本体41は、上端がグリップ31に連結されており、中間部分がハンドル10に沿うように後方に退避するコ字状に屈曲している。そして、アーム本体41の先端部分は、ブレード20の先端方向に向かって延出しており、この先端に球面状の押圧子44が取付けられている。
【0030】
また、図2に示すように、アーム本体41は、コ字状に屈曲する中間部分がブレード20に干渉しないように、側方(本例では向かって左側)に迂回する形態となっている。よって、この喉頭鏡1においては、正面視において、グリップ31及び押圧子44は、ハンドル10及びブレード20の軸線上に位置する一方で、押圧アーム40の中間部分は、ブレード20の側方に位置する形態となっている。
【0031】
ところで、押圧アーム40は、操作部30、より具体的にはグリップ31、に着脱可能に装着されており、図3に示すように、アーム本体41の上端部分に設けられた四角形状の嵌合突起42を、グリップ31の下端に設けられた四角形状の嵌合凹部35に嵌め込むことで、グリップ31に対して着脱可能ではあるが回動不能に装着されている。
【0032】
また、図4に示すように、押圧アーム40先端の押圧子44は、アーム本体41先端の取付け部43にボルト45及びナット46を介して取付けられており、前後方向に回動自在となっている(図1の矢印B参照)。
【0033】
操作部30が、ハンドル10、上下一対の連結バー32a、32b及びグリップ31によって四節回転リンク機構を構成するものであることは前述の通りであるが、本例では、上下一対の連結バー32a,32bの少なくとも一方において、ハンドル10への軸支位置またはグリップ31への軸支位置が変更可能となっている。これにより、ハンドル10に対するグリップ31の角度(図1の角度a参照)を、使用者が使用し易い角度に調節することができる。
【0034】
具体的に、本例では、図5に示すように、上下一対の連結バー32a,32bの夫々が、ボルト33及びナット34によってハンドル10及びグリップ31に回動自在に支持されるのであるが、上の連結バー32aのハンドル10側の軸支位置を、ハンドル10の取付け部11に設けられた複数のネジ孔12を選択することで変更できるようにしてあり、これにより、ハンドル10に対するグリップ31の角度を調節できるようになっている。
【0035】
次に、本例の喉頭鏡1を用いて喉頭展開を行う状態を説明する。
【0036】
まず、図6に示すように、患者の口内にブレード20を挿入して、ブレード20の先端を喉頭蓋谷に配置させることは、従来と同様であるが、本例の喉頭鏡1では、その後、グリップ31から取外した別途の押圧アーム40を患者の口内に挿入する(図6の矢印C参照)。すなわち、ブレード20とは別途に、押圧アーム40先端の押圧子44を患者の口内に挿入する。
【0037】
次に、図7に示すように、押圧子44を患者の口内に入れた状態で、グリップ31に押圧アーム40を装着する(図7の矢印D参照)。
【0038】
そして、図8に示すように、ハンドル10と共にグリップ31を握ると、ハンドル10に対してグリップ31が下降する(図8の矢印E参照)。そして、当然のことながら、グリップ31の下端に装着された押圧アーム40がブレード20に対して下降し、押圧アーム40先端の押圧子44によって患者の口蓋が押圧される。これにより、ブレード20が上昇して患者の下顎が開かれる(図8の矢印F参照)。
【0039】
よって、本例の喉頭鏡1によれば、ハンドル10と共にグリップ31を握るといった簡単な操作によって、喉頭展開を的確に行うことができる。
【0040】
なお、押圧アーム40は、中間部分がブレード20の側方に迂回する形態であるため、喉頭展開によって開かれた気管を目視によって確認したり、ブレード20に沿って気管内チューブを挿入するに際して、押圧アーム40が邪魔になることはない。
【0041】
また、押圧アーム40先端の押圧子44は、前後方向に回動自在であり、しかも、底面が球面形状を呈するものであるため、患者の口蓋になじむ姿勢で口蓋に当接し、口蓋を良好に押圧することができる。
【0042】
以上、本発明に係る喉頭鏡の一例を説明したが、本発明に係る喉頭鏡は、上述の例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜の変更が可能である。
【0043】
例えば、ハンドルに操作部を一体的に設けるに限らず、図示による詳細な説明は省略するが、ハンドルに操作部を着脱可能に設けてもよい。そして、ハンドルに操作部を着脱可能に設ける態様としては、ハンドルに着脱可能に外嵌される筒状の装着筒や、ハンドルに着脱可能にネジ止めされるプレート等の適宜の部材をベースとし、このベースに操作部を組み込めばよい。このような態様によれば、既存の喉頭鏡を本発明に係る喉頭鏡に容易に改良することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 喉頭鏡
10 ハンドル
11 取付け部
12 ネジ孔
20 ブレード
30 操作部
31 グリップ
32a 連結バー
32b 連結バー
33 ボルト
34 ナット
35 嵌合凹部
40 押圧アーム
41 押圧アーム本体
42 嵌合突起
43 取付け部
44 押圧子
45 ボルト
46 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部分が患者の口内に挿入されるブレードと、
該ブレードの後端部分に突設されたハンドルと、
該ハンドルに設けられた操作部と、
該操作部の操作により前記ブレードに対して下降して患者の口蓋を押圧する押圧アームと
を備えることを特徴とする喉頭鏡。
【請求項2】
前記操作部は、前記ハンドルに並設されたグリップと、夫々、一端側が前記ハンドルに回動自在に支持されると共に他端側が前記グリップに回動自在に支持され、前記ハンドルと前記グリップとで四節回転リンク機構を形成する上下一対の連結バーとを有し、前記ハンドルと共に握り操作されることで前記ハンドルに対して前記グリップが下降するものであり、
前記押圧アームは、前記グリップの下端に延設されたものである
ことを特徴とする請求項1に記載の喉頭鏡。
【請求項3】
前記押圧アームは、前記グリップに着脱可能に装着されるものである
ことを特徴とする請求項2に記載の喉頭鏡。
【請求項4】
前記グリップは、前記ハンドルの前方に配設されており、
前記押圧アームは、患者の口蓋を押圧する先端部分が前記ブレードの真下に配置されたものであり、該先端部分と前記グリップの下端に位置する基端部分との間の中間部分が、前記ブレードの側方に迂回するように屈曲している
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の喉頭鏡。
【請求項5】
前記押圧アームは、先端に前後方向に回動自在に設けられ、患者の口蓋に当接して該口蓋を押圧する押圧子を有するものである
ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一つに記載の喉頭鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−196300(P2012−196300A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61978(P2011−61978)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(396019701)
【Fターム(参考)】