説明

噛み込み防止ソケット

【目的】 インパクトレンチでナットを弛緩するとき、ボルトから外れたものの、往々にしてナットがソケットに噛み込んでしまい、取り除きに苦慮することがある。 これに対し、軽い打撃で簡単にナットを取り除くことを目的とする。
【構成】 角ドライブ1と、内部に段差部12を挟んで上下円筒部4、5を有する肉厚円筒3と一体のソケット2、3において、中に打撃棒9、摺動体10、及び押し出しパイプ13が一体となり上下円筒部4、5を摺動する押し出し装置組立14及びばね8を組み入れ、押し出しパイプ13の端面がソケット2の端面より僅か内側に位置するようにしてから、角ドライブ1と肉厚円筒3を固着する。ナットが正常にボルトから外れた時は、ばね8の付勢力でソケットから自動的に押し出され、噛み込んだ時は、打撃棒9の頭を打撃して押し出す。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、インパクトレンチに取り付けて使用する、噛み込み防止ソケットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
1 図4に示す、実開昭59−167667ボックスドライバーによれば、先端 部から柄部の中心軸に貫通穴5を設け、中をスライドできる押し棒6とその押 し棒のフランジ7と柄の間に遊嵌するばね8で押し棒6を支持するものである 。
ナットが噛み込んで取れないときは、押し棒6を押して外すことができる。
押すことを止めるとばね8により押し棒6が自動的にバックする。
【0003】
2 図5に示す、実開昭63−182867ソケットレンチ用ソケットによれば 、噛み込んだナットをばね3の付勢力によって自動的に押し出すが、そのばね の係止方法に特徴がある。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
図4に示す従来例1はボックスドライバーであるが、同じ構造をインパクトレンチに当てはめると押し棒6が細すぎて適用できない。 例えば、インパクトレンチに図2に示す12.7mm角のソケットレンチ−ソケット JIS−B4636を使用したとすると、対象となるボルト・ナットの大きさは呼び径で8〜30mmで、図2に示す貫通穴6の直径は10mm内外と類推され、従って押し棒6の直径は約10mm以下となる。 メートル並目ねじの許容限界寸法及び公差JIS−B0209によれば、図3に示すナットのねじ山最大直径daはM10で10.8mmである。 即ち、これ以上のナットではねじ山を損傷するか、押し棒が素通しになって実用にならない。
【0005】
図5に示す従来例2のばねの付勢力では噛み込みの解消はできない。 M16,M20のような大きなナットになると、噛み込んだ摩擦力は強烈で、とてもばねのアナログ的な付勢力では解消できず、衝撃力な剪断力を必要とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
角ドライブ1の下部に境界部7があり中心に貫通穴6を有する角ドライブ1と、ソケット2と内部に上円筒部4と段差部12及び下円筒部5を有する肉厚円筒3とが一体または固着してなるソケット2、3において、上下円筒部4、5内部に打撃棒9、摺動体10、段差部11及び押し出しパイプ13よりなる押し出し装置組立14と、その上部に適宜常数のばね8を有してなる。 摺動体10が上円筒部4を摺動し、押し出しパイプ13が下円筒部5を摺動して、押し出し装置組立14が円滑な上下動をなし、また肉厚円筒3に段差部12を設け、押し出し装置14の段差部11を係止して、押し出しパイプ13の端面がソケット2の端面より僅か内側に位置するようにする。ばね8のコイルの中へ打撃棒9を挿入し、下端を摺動体10で支えた後、肉厚円筒3の上面と角ドライブ1の境界部7の下面を固着してなるものである。
【0007】
【考案の実施の形態】
インパクトレンチに噛み込み防止ソケットを装着して、図1断面図に示すように作用する。 押し出しパイプ13の下端面は、ソケット2の端面より僅かに内側にあって、ナットの挿入を容易にし、ナットがソケット2に完全に入った時には、ばね8が付勢される。 インパクトレンチで弛緩を行い、ナットが噛み込むことなく正常に緩み、ボルトから抜け出た場合には、ばね8の付勢力でナットを自動的にソケット2から押し出す。 一方、ナットがソケット2に噛み込んだ場合は、境界部7の貫通穴6より小径の棒で、上から打撃棒9の上面を打撃する。
その打撃した剪断力が噛み込み摩擦力を上回れば、ナットは抜け出る。
【0008】
【実施例】
図1の断面図に基づいて説明するが、便宜上、角ドライブ1の方向を上と呼び、ソケット2の方向を下と呼ぶこととする。 また、本考案はナットまたはボルトを対象とした堅締または弛緩に用いられるが、表現を簡略化するためにナットの弛緩について説明する。
【0009】
角ドライブ1の形状寸法は、ソケットレンチ−ソケットJIS−B4636及び/又は二面幅寸法JIS−B1002による。 角ドライブ1の下部には、図1及び図2に示すように境界部7があり、貫通穴6が明いている。
【0010】
ソケット2の形状寸法は、ソケットレンチ−ソケットJIS−B4636による。 ソケット2は肉厚円筒3と一体とし、肉厚円筒3は段差部12を境界にして上円筒部4の内径と、下円筒部5の内径を適宜に定めておく。 なお、既存のソケットを活用したい場合は、例えば、圧力配管用炭素鋼鋼管JIS−G3454のような肉厚円筒3を所定の長さに切断して下部にソケット2を固着し、段差部12を境界にして上円筒部4の内径と、下円筒部5の内径を適宜に定めて加工する。 なお、この作業手順は前後してもよく、あらかじめソケット2の中心に下円筒部5と同径の穴を明けておき、既に加工済みの肉厚円筒3と固着してもよい。
【0011】
押し出し装置組立14は打撃棒9、摺動体10、段差部11及び摺動体10に嵌入し固着された押し出しパイプ13が一体となっている。 打撃棒9の直径は、対象ナットの大きさにより異なるが、最大でもばね8のコイルを挿入しても十分な遊間があり、最小でも上部からの打撃で屈曲しない程度の太さを必要とする。
打撃棒9の高さは、後記の押し出しパイプ13がナットで押し上げられ、ばね8が付勢された時点で、打撃棒9の上面が少なくも角ドライブ1の下端より下に位置するように設定する。 なお、この打撃棒9を無くして直接摺動体10の上面を打撃するようにしてもよい。
【0012】
摺動体10は下ばね座の機能も兼ねている。 摺動体10は上円筒部4を摺動し、また押し出しパイプ13は下円筒部5を摺動して、押し出し装置組立14が円滑に上下動できるようにしている。
【0013】
押し出しパイプ13の外径及び内径は、対象ナットの大きさにより異なるが、例えば六角ナットJIS−B1181の場合は、図3に示す外径がdw、内径がdaの間で力の伝達ができるように設定する。 押し出しパイプ13の下端面がソケット2の端面より僅か内側にあるように段差部11を設け、肉厚円筒3の段差部12と係合して位置決めされている。
【0014】
適宜常数のばね8は、上端が角ドライブ1の境界部7の下面に接し、下端が摺動体10に接して配置される。 なお、上バネ座の機能を境界部7の下面で行っているが、別個に上ばね座を設けてもよい。
【0015】
ソケット2と肉厚円筒3が一体または固着してなるソケット2、3の中へ、押し出し装置組立14を挿入し、摺動体10及び押し出しパイプ13が上下円筒部4、5の中を円滑に摺動することと、端面がソケット2の端面より僅か内側にあることを確認してから、ばね8のコイルの中へ打撃棒9を入れ、下端を摺動体10で支えた後、肉厚円筒3の上面と角ドライブ1の境界部7の下面を固着する。
【0016】
【考案の効果】
噛み込みは、お互いの面同志の強力な摩擦力により発生する。 これに対して、押し出しパイプ13でナットの端面に剪断力を加えるので、軽い打撃で簡単に取り外しが出来るようになった。 作業者のイライラの解消と作業能率の向上は計り知れない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 噛み込み防止ソケットの断面図
【図2】 ソケットレンチーソケットJIS−B4636によるソケット図
【図3】 六角ナットJIS−B1181によるナット図
【図4】 従来技術1、実開昭59−167667ボックスドライバーの断面図
【図5】 従来技術2、実開昭63−182867ソケットレンチ用ソケットの断面図
【符号の説明】
1 角ドライブ
2 ソケット
3 肉厚円筒
4 上円筒部
5 下円筒部
6 貫通穴
7 境界部
8 ばね
9 打撃棒
10 摺動体
11 段差部(押し出し装置14)
12 段差部(肉厚円筒3)
13 押し出しパイプ
14 押し出し装置組立
da ナット谷の最大直径
dw ナットの最小面取り直径

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】角ドライブ1の下部に境界部7があり中心に貫通穴6を有する角ドライブ1と、ソケット2と内部に上円筒部4と段差部12及び下円筒部5を有する肉厚円筒3とが一体または固着してなるソケット2、3において、上下円筒部4、5内部に打撃棒9、摺動体10、段差部11及び押し出しパイプ13よりなる押し出し装置組立14と、その上部に適宜常数のばね8を有してなる。 摺動体10が上円筒部4を摺動し、押し出しパイプ13が下円筒部5を摺動して、押し出し装置組立14が円滑な上下動をなし、また肉厚円筒3に段差部12を設け、押し出し装置14の段差部11を係止して、押し出しパイプ13の端面がソケット2の端面より僅か内側に位置するようにする。ばね8のコイルの中へ打撃棒9を挿入し、下端を摺動体10で支えた後、肉厚円筒3の上面と角ドライブ1の境界部7の下面を固着してなる構造を有する噛み込み防止ソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【登録番号】第3049837号
【登録日】平成10年(1998)4月8日
【発行日】平成10年(1998)6月26日
【考案の名称】噛み込み防止ソケット
【国際特許分類】
【評価書の請求】有
【出願番号】実願平9−9419
【出願日】平成9年(1997)9月16日
【出願人】(594079213)新潟交通機械株式会社 (4)