説明

噛合チェーン式昇降装置

【課題】垂直方向における昇降テーブルの位置決め精度を向上するとともに昇降テーブルの積載面を水平な状態に保持し、しかも、昇降テーブルの昇降位置および傾きに関する情報を高精度に検出する噛合チェーン式昇降装置を提供すること。
【解決手段】昇降テーブル110と昇降用スプロケット140と昇降駆動用噛合チェーン150と駆動源160とパンタグラフ機構170とを備え、開脚角度検出センサ180がパンタグラフ機構170に設置されている噛合チェーン式昇降装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種製造分野の製造設備、運輸分野の移送設備、医療福祉分野の介護設備、芸術分野の舞台設備などに用いて被昇降物を設置面に対して平行に進退動させる駆動装置であって、特に、噛合チェーンを進退動作の駆動媒体として採用した噛合チェーン式駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、昇降装置として、スプロケットにより相互に噛み合って一体的に昇降する一対の噛合チェーンを用いて重量物などの被昇降物を昇降移動させる昇降装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
そして、一対の噛合チェーンの上端には、被昇降物を上面に搭載する荷重支持部材が連結されている。
【特許文献1】特許第3370928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、従来の昇降装置では、被昇降物を含む荷重支持部材の重量に起因して荷重支持部材を支持する噛合チェーンがチェーン長手方向に圧縮され、さらには、この噛合チェーンの圧縮具合は被昇降物の重量等によって変動を生じるため、被昇降物の積み下ろし時に荷重支持部材の積載面の高さが一定せず、荷重支持部材と周辺機器との間におけるスムーズな被昇降物の受け渡しが阻害されることがあり、垂直方向における荷重支持部材の位置決め精度を向上させるために更なる工夫を要していた。
【0004】
また、荷重支持部材の積載面に被昇降物が偏在した状態で搭載された場合、被昇降物の重量に起因して荷重支持部材の積載面が水平面に対して傾斜して、被昇降物が荷重支持部材の積載面からズレ落ちてしまうことがあるため、荷重支持部材の積載面を水平な状態に維持するために更なる工夫を施す必要があった。
【0005】
そこで、本発明は、従来の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、垂直方向における昇降テーブルの位置決め精度を向上するとともに昇降テーブルの積載面を水平な状態に保持し、しかも、昇降テーブルの昇降位置および傾きに関する情報を高精度に検出する噛合チェーン式昇降装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る本発明は、設置面に対して平行に併置された一対の回転軸を中心に同一面内で相互に対向して反対方向に正逆回転する一対の昇降用スプロケットと、該一対の昇降用スプロケットにより水平方向から垂直方向へ偏向しながら相互に噛み合わせて一体に自立状態で上昇するとともに前記一対の昇降用スプロケットにより垂直方向から水平方向へ偏向しながら相互に噛み外れて分岐する一対の昇降駆動用噛合チェーンと、該昇降駆動用噛合チェーンの上端に設置されて一体に昇降する昇降テーブルと、前記一対の昇降用スプロケットを駆動する駆動源と、前記昇降テーブルと設置面との間に伸縮自在に設けられて昇降テーブルの昇降動作をガイドするパンタグラフ機構とを備えている噛合チェーン式昇降装置において、パンタグラフ機構を構成して伸縮させるリンク相互間の開脚角度を検出する開脚角度検出センサが、パンタグラフ機構に設置されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0007】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の構成に加えて、前記開脚角度検出センサが昇降テーブルのテーブル幅方向にそれぞれ配置されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0008】
請求項3に係る本発明は、請求項1または請求項2記載の構成に加えて、前記開脚角度検出センサが昇降テーブルのテーブル長手方向にそれぞれ配置されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0009】
そこで、本発明の噛合チェーン式昇降装置は、設置面に対して平行に併置された一対の回転軸を中心に同一面内で相互に対向して反対方向に正逆回転する一対の昇降用スプロケットと、一対の昇降用スプロケットにより水平方向から垂直方向へ偏向しながら相互に噛み合わせて一体に自立状態で上昇するとともに一対の昇降用スプロケットにより垂直方向から水平方向へ偏向しながら相互に噛み外れて分岐する一対の昇降駆動用噛合チェーンと、昇降駆動用噛合チェーンの上端に設置されて一体に昇降する昇降テーブルと、一対の昇降用スプロケットを駆動する駆動源と、昇降テーブルと設置面との間に伸縮自在に設けられて昇降テーブルの昇降動作をガイドするパンタグラフ機構とを備えていることにより、昇降テーブルが昇降位置に関係なく昇降用スプロケットの正逆回転に合わせて昇降可能であるので、昇降テーブルの昇降動作を等速かつ迅速に達成できるとともにチェーン収納手段と駆動部分の高い設計自由度を実現でき、加えて、以下のような特有の構成に対応した格別の効果を奏することができる。
【0010】
請求項1に係る本発明の噛合チェーン式昇降装置によれば、開脚角度検出センサがパンタグラフ機構に設置されていることにより、開脚角度検出センサによって測定されたリンク相互間の開脚角度からパンタグラフ機構の伸縮状態を検出できるため、この検出情報を基に昇降テーブルの昇降位置を制御することで垂直方向における昇降テーブルの位置決め精度を向上でき、特に、昇降テーブルの搭載面に対する被昇降物の積み下ろし時に生じがちな被昇降物を含む昇降テーブルの重量変化に起因して、チェーン長手方向への昇降駆動用噛合チェーンの圧縮具合が変化して昇降テーブルの昇降位置に変動が生じた場合、この昇降テーブルの昇降位置の変化を開脚角度検出センサが検出して、この検出情報を基に昇降テーブルの昇降位置を補正できるため、昇降テーブルの積載面の高さを一定に維持して昇降テーブルに対する被昇降物の円滑な搬出搬入を実現できる。
【0011】
さらに、開脚角度検出センサを複数箇所に配置した際には、各箇所におけるリンク相互間の開脚角度をそれぞれ測定して比較することで水平面に対する昇降テーブルの傾きを検出できるため、この検出情報を基にパンタグラフ機構を制御して昇降テーブルの積載面を水平な状態に保持して安定感のある昇降動作を達成できる。
【0012】
また、被昇降物を含む昇降テーブルの重量によってチェーン長手方向に圧縮されがちな昇降駆動用噛合チェーンや該昇降駆動用噛合チェーンを昇降させる昇降用スプロケットに対して回転型エンコーダを設置した場合と比較して、本発明の噛合チェーン式昇降装置では昇降テーブルの底面側に直接的に取り付けられたパンタグラフ機構の伸縮状態を検出できるため、昇降テーブルの昇降位置および傾きに関する情報を高精度に検出でき、精度の高い昇降テーブルの制御を実現できる。
【0013】
請求項2に係る本発明の噛合チェーン式昇降装置によれば、請求項1記載の噛合チェーン式昇降装置が奏する効果に加えて、開脚角度検出センサが昇降テーブルのテーブル幅方向にそれぞれ配置されていることにより、昇降テーブルのテーブル幅方向の両側においてパンタグラフ機構の伸縮状態をそれぞれ検出して比較することで、昇降テーブルのテーブル幅方向への傾きを検出できるため、この検出情報を基にパンタグラフ機構を制御して、被昇降物等が昇降テーブルの積載面からテーブル幅方向に落下することを防止できる。
【0014】
請求項3に係る本発明の噛合チェーン式昇降装置によれば、請求項1記載の噛合チェーン式昇降装置が奏する効果に加えて、開脚角度検出センサが昇降テーブルのテーブル長手方向にそれぞれ配置されていることにより、昇降テーブルのテーブル長手方向の両側においてパンタグラフ機構の伸縮状態をそれぞれ検出して比較することで、昇降テーブルのテーブル長手方向への傾きを検出できるため、この検出情報を基にパンタグラフ機構を制御して、昇降テーブルの安定した積載面を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の噛合チェーン式昇降装置は、設置面に対して平行に併置された一対の回転軸を中心に同一面内で相互に対向して反対方向に正逆回転する一対の昇降用スプロケットと、一対の昇降用スプロケットにより水平方向から垂直方向へ偏向しながら相互に噛み合わせて一体に自立状態で上昇するとともに一対の昇降用スプロケットにより垂直方向から水平方向へ偏向しながら相互に噛み外れて分岐する一対の昇降駆動用噛合チェーンと、昇降駆動用噛合チェーンの上端に設置されて一体に昇降する昇降テーブルと、一対の昇降用スプロケットを駆動する駆動源と、昇降テーブルと設置面との間に伸縮自在に設けられて昇降テーブルの昇降動作をガイドするパンタグラフ機構とを備え、パンタグラフ機構を構成して伸縮させるリンク相互間の開脚角度を検出する開脚角度検出センサがパンタグラフ機構に設置されて、垂直方向における昇降テーブルの位置決め精度を向上するとともに昇降テーブルの積載面を水平な状態に保持し、昇降テーブルの昇降位置および傾きに関する情報を高精度に検出するものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
【0016】
たとえば、本発明の噛合チェーン式昇降装置で昇降テーブルにそれぞれ配置する2組の昇降駆動用噛合チェーンは、一対の昇降用スプロケットにより水平方向から垂直方向への偏向駆動直後に相互に噛み合わせて一体に自立状態で上昇するとともに一対の昇降用スプロケットにより垂直方向から水平方向へ偏向駆動時に相互に噛み外れて分岐するものであれば、その具体的なチェーン形態は如何なるものであっても良く、例えば、ローラを有するもの、ローラを有していないもの、すなわち、ブシュのみを有するもの、チェーン幅方向に1列の単列であるもの、チェーン幅方向に2列以上の複列であるもの、あるいは、これらの組み合わせによるものなど何れであっても構わないが、チェーン幅方向に2列以上の複列であるものを採用する場合には、一対の昇降駆動用噛合チェーンの一方を構成する外歯プレートと内歯プレートが、これに対向する他方の昇降駆動用噛合チェーンを構成する外歯プレートと内歯プレートに対してチェーン幅方向の複列に亙ってそれぞれフック状に多重かつ強固に噛み合うため、昇降駆動用噛合チェーンのチェーン幅方向に生じがちな座屈を確実に抑制して優れたチェーン耐久性を実現できるので、より好ましい。
【0017】
また、前述した昇降駆動用噛合チェーンでは、内歯プレートに圧入嵌合するプレート側圧入部とプレート側圧入部より大径のスプロケット噛合部とを一体に備えたブシュを採用しても良く、このようなブシュを採用した場合には、ブシュと一体に成形されたスプロケット噛合部の特定された外周面で昇降用スプロケットと安定して接触するので、ローラ及びブシュを用いたチェーンのように昇降用スプロケットとの噛み合い時に連結ピンもしくはブシュの中心に対してローラの中心が偏在して昇降用スプロケットとの間で噛合振動や噛合騒音が発生することを防止でき、また、このようにしてブシュと昇降用スプロケットとの間での噛合振動の発生を防止することで、チェーン相互間における噛合タイミングにズレが生じることを回避できるので、このような噛合タイミングのズレに起因して発生する振動を被昇降物に与えることなく安定した昇降動作を実現できるとともに、昇降用スプロケットの回転力を効率良く昇降駆動用噛合チェーンに伝達することができる。
【0018】
さらに、昇降駆動用噛合チェーンでは、内歯プレートのブシュ間ピッチが昇降用スプロケットによる上昇駆動時に先行する内歯プレートの下方側に圧入嵌合されたブシュの中心と内歯プレートに後続する内歯プレートの上方側に圧入嵌合されたブシュの中心との相互間隔に等しくなるように設定する、すなわち、外歯プレートのピン間ピッチが内歯プレートのブシュ間ピッチにブシュの内周と連結ピンの外周との径差を加えた長さに等しくなるように設定しても良く、このようにピン間ピッチとブシュ間ピッチとを設定した場合には、被昇降物などの荷重に起因して連結ピンがブシュに対して各内歯プレート内におけるチェーン長手方向内側に偏在した際においても、チェーン長手方向に亘る各ブシュの相互間隔がそれぞれ等しくなるので、各ブシュの相互間隔が不均等である場合に昇降用スプロケットとの間で生じがちなガタツキを抑制して、昇降用スプロケットとの円滑な噛合状態を実現でき、また、前述したように上昇駆動時における各ブシュの相互間隔をそれぞれ等しくすることで、一対の昇降駆動用噛合チェーンの一方を構成する外歯プレート及び内歯プレートと他方の昇降駆動用噛合チェーンを構成する外歯プレート及び内歯プレートとの相互間におけるチェーン長手方向の位置関係、すなわち、高さ関係を半ピッチずらした状態で適切に調整できるので、チェーン相互間における円滑な噛合タイミングを実現できる。
【0019】
本発明の噛合チェーン式昇降装置で用いられる開脚角度検出センサは、パンタグラフ機構を構成して伸縮させるリンク相互間の開脚角度を検出するものであれば、回転型ポテンショメータ、レゾルバ、回転型エンコーダなど如何なる態様を呈していても良い。
【0020】
そして、本発明の噛合チェーン式昇降装置は、設置面が据え置き設置形態となる床面であっても、吊り下げ設置形態となる天井面であっても昇降動作に何ら支障はなく、さらには、片持ち支持形態となる垂直壁面であっても前述した昇降動作に相当する進退動作に何ら支障はない。
また、前述したような吊り下げ設置形態、片持ち支持形態を採用した場合には、据え置き設置形態を採用した場合に用いられる昇降テーブルは必須の構成要素ではなく、他の手段を用いて被昇降物を昇降駆動用噛合チェーンの端部に直接的または間接的に取り付ければ良い。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の第1実施例である噛合チェーン式昇降装置100を図面に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の第1実施例である噛合チェーン式昇降装置の全体斜視図であり、図2は、図1から昇降テーブルとパンタグラフ機構を除いた状態の斜視図であり、図3は、図2に示す昇降用スプロケット近傍の一部拡大図であり、図4は、昇降駆動用噛合チェーンの分解組み立て状態と噛み外れ状態を示す斜視図であり、図5は、パンタグラフ機構と開脚角度検出センサを中心とした斜視図であり、図6は、駆動モータに用いられる制御手段を示す説明図である。
【0022】
まず、本発明の第1実施例である噛合チェーン式昇降装置100は、図1に示すように、重量物(図示していない)を搭載する昇降テーブル110を設置面に対して平行に昇降させるために設置するものである。
【0023】
そして、本実施例の噛合チェーン式昇降装置100は、図1乃至図4に示すように、前述した昇降テーブル110が平行に昇降する設置面に据え付けたベースプレート120と、このベースプレート120に対して平行に併置された一対の回転軸130を中心に同一面内で相互に対向して反対方向に正逆回転する一対の昇降用スプロケット140と、これらの一対の昇降用スプロケット140と噛み外れることによって昇降テーブル110を昇降する一対の昇降駆動用噛合チェーン150と、この昇降駆動用噛合チェーン150の上端に設置されて一体に昇降する前述した昇降テーブル110と、一対の昇降用スプロケット140を回転させる同期ギア群163に動力を伝達する動力伝達チェーン162と、この動力伝達チェーン162を駆動する駆動源としての駆動モータ160と、一対の昇降用スプロケット140の対向する股間領域に設けられて一対の昇降駆動用噛合チェーン150を誘導移動させるチェーン誘導プレート165と、昇降テーブル110と設置面との間に伸縮自在に設けられて昇降テーブル110の昇降動作をガイドするパンタグラフ機構170とを基本的な装置構成として備えている。
【0024】
そして、前述した一対の昇降駆動用噛合チェーン150は、昇降テーブル110に対して左右2組配置され、所謂、2本突き状態になっている。
これにより、被昇降物が昇降テーブル110上に偏在した状態で搭載されている場合や昇降テーブル110の最上昇位置近傍において昇降テーブル110の幅方向に生じがちな横揺れの虞れがある場合であっても、昇降テーブル110の左右両側にそれぞれ配置された一対の昇降駆動用噛合チェーン150が、搭載された被昇降物を含めた全荷重を二分してその負荷を分担軽減した自立状態で昇降するようになっている。
しかも、たとえ、2組配置された一対の昇降駆動用噛合チェーン150の一方が切断しても他方の一対の昇降駆動用噛合チェーン150が昇降テーブル110を落下しないように支持するようになっている。
【0025】
また、前述した動力伝達チェーン162は、駆動側スプロケット161から同期ギア群163の従動側スプロケットへ動力伝達するための2組のローラチェーンからなるものであって、所謂、2本掛け状態になっている。
これにより、駆動側スプロケット161から従動側スプロケットへ伝達する動力を二分して伝動負荷を軽減している。
しかも、2組配置された動力伝達チェーン162の一方が切断しても他方の動力伝達チェーン162が昇降テーブル110を落下しないように動力伝達するようになっている。
【0026】
さらに、前述した駆動源としての駆動モータ160は、公知のウォームとウォーム歯車(図示しない)で構成された減速機構を備えている。
これにより、駆動障害が生じてもウォームとウォーム歯車との間で相互の噛み合い抵抗、所謂、セルフロック機能が働くようになっている。
【0027】
なお、本実施例においては、昇降用スプロケット140を駆動する駆動源として駆動モータ160を採用しているが、その他の駆動手段、例えば、ハンドルを用いて手動で駆動力を発生させるように設定しても何ら構わない。
また、図2及び図3に示す符号161は、減速機構を備えた駆動モータ160の出力軸側に同軸配置した一対の駆動側スプロケット161であり、図3に示す符号163は、一対の動力伝達チェーン162から一対の昇降用スプロケット140へ相互に反対方向に正逆回転するように動力伝達するための同期ギア群である。
【0028】
そして、本実施例の噛合チェーン式昇降装置100では、図4に示すように、一対の昇降駆動用噛合チェーン150を誘導移動させるチェーン誘導プレート165が、一対の昇降用スプロケット140の対向する股間領域に設けられており、上昇駆動時に一対の昇降駆動用噛合チェーン150を相互に噛み合わせて一体に自立状態で上昇させるとともに、一対の昇降駆動用噛合チェーン150を相互に噛み外して分岐させるようになっている。
【0029】
さらに、前述したような減速機構を備えた駆動モータ160は、図2及び図3で示すように、昇降テーブル110の最下降位置の周辺域、すなわち、昇降テーブル110の投影傘下の領域外に離間配置されている。
【0030】
また、前述したチェーン収納手段190も、図2に示すように、駆動モータ160と同
様に、昇降テーブル110の最下降位置の周辺域、すなわち、昇降テーブル110の投影
傘下の領域外に離間配置されている。
すなわち、相互に噛み外れて分岐した一対の昇降駆動用噛合チェーン150の一方は、駆動モータ160側に配置した巻き取り型のチェーン収納ボックス191からなるチェーン収納手段190内に収納されるとともに、一対の昇降駆動用噛合チェーン150の他方は、駆動モータ160と対向する反対側に配置した直線状収納レール192からなるチェーン収納手段190内に収納されるように構成されている。
【0031】
したがって、これらの駆動モータ160やチェーン収納手段190の高さ寸法分に配慮することなく、昇降テーブル110の最下降位置を低くすること、すなわち、昇降テーブル110の低床化が可能となるため、昇降テーブル110に対して被昇降物を搬出搬入する作業負担が大幅に軽減され、昇降機構の保守メンテナンスの際に駆動モータ160やチェーン収納手段190が作業障害要因にならず安全且つ簡便なメンテナンス作業が行えるようになっている。
【0032】
また、前述したパンタグラフ機構170は、図1及び図5に示すように、リンクとしてのインナーアーム172とアウターアーム173とを交差部174を中心として相互に回動自在に交差させてなるパンタグラフ部材171を関節部175を介して上下2段形式で伸縮方向に連設して構成されている。
そして、このパンタグラフ機構170は、昇降テーブル110に対して前後2列形式で水平方向に2組配置されている。
【0033】
パンタグラフ機構170は、図1及び図5に示すように、昇降駆動用噛合チェーン150の昇降駆動に追従して伸縮するようになっており、昇降テーブル110の安定した昇降動作をガイドするように設計されている。
なお、図5に示す符号176は、前後2列形式で離間配置されたパンタグラフ機構170を相互に連結して強度を向上させる連結リブであり、図1及び図5に示す符号177は、インナーアーム172の下端を昇降動作に応じて摺動させるスライドレールである。
【0034】
さらに、本発明の第1実施例である噛合チェーン式昇降装置100で用いた一対の昇降駆動用噛合チェーン150は、図4で示すように、フック部を有する内歯プレート151と、この内歯プレート151に対してチェーン長手方向に半ピッチ分ずらして重なり合うとともにフック部を有する外歯プレート152と、内歯プレート151同士をチェーン幅方向に連結固定するブシュ153と、このブシュ153に外嵌されるローラ154と、外歯プレート152同士をチェーン幅方向に連結固定する連結ピン155とを備えており、前述したチェーン誘導プレート165に沿って水平方向から垂直方向への偏向しながら相互に噛み合わせて一体に自立状態で上昇するとともに一対の昇降用スプロケット140により垂直方向から水平方向へ偏向しながら相互に噛み外れて分岐するように配置されている。
【0035】
そして、一対の昇降駆動用噛合チェーン150の一方を構成する内歯プレート151と外歯プレート152とが、これに対向する他方の昇降駆動用噛合チェーン150を構成する内歯プレート151と外歯プレート152とに対してチェーン幅方向の複列に亙ってそれぞれフック状に多重かつ強固に噛み合うようになっており、搭載された被昇降物を含めた全荷重を支持しながら自立状態で昇降する昇降駆動用噛合チェーン150にチェーン幅方向の片側に偏荷重が負荷された場合であっても過負荷状態の昇降駆動用噛合チェーン150のチェーン幅方向に生じがちな座屈を確実に抑制して優れたチェーン耐久性を確保して不慮のチェーン切断を回避している。
【0036】
そこで、本実施例の噛合チェーン式昇降装置100が最も特徴とする開脚角度検出センサ180について、図5により詳しく説明する。
まず、開脚角度検出センサ180は、図5に示すように、インナーアーム172とアウターアーム173とを相互に交差させる交差部174に設置されており、インナーアーム172とアウターアーム173との相互間の開脚角度を検出するようになっている。
【0037】
このリンク相互間の開脚角度に関する制御信号は、開脚角度検出センサ180から図6に示すような駆動モータ160の制御手段164に対して出力され、この制御手段164で昇降テーブル110の昇降位置を演算処理して、昇降駆動用噛合チェーン150を駆動する駆動モータ160に対して指令、例えば、昇降テーブル110の昇降位置の補正指令を出力するようになっている。
なお、図6に示す符号164aは、開脚角度検出センサ180からの制御信号を受けて演算処理するPLC(プログラマブルロジックコントローラ)であり、図6に示す符号164bは、一次側電源からの電力を制御するモータドライバであり、図6に示す164cは、駆動モータ160に対してブレーキ信号を出力するブレーキ回路である。
【0038】
つぎに、本発明の第1実施例である噛合チェーン式昇降装置100の昇降動作について図1に基づいて説明する。
まず、図1に示すように、昇降テーブル110が最上昇位置に達する場合は、一対の昇降駆動用噛合チェーン150が一対の昇降用スプロケット140によってチェーン収納ボックス191と直線状収納レール192からなるチェーン収納手段190からそれぞれ繰り出され、この一対の昇降駆動用噛合チェーン150が重量物からなる被昇降物(図示していない)を搭載する昇降テーブル110の全重量を支えながら減速機構を備えた駆動モータ160の出力に応じて2本掛けされた動力伝達チェーン162により等速かつ迅速に上昇するようになっている。
なお、図1及び図2に示す符号111は、昇降駆動に伴ってアウターアーム173の上端を水平方向に向けて摺動させる昇降テーブル110に凹設されたスライド機構である。
【0039】
一方、昇降テーブル110が最下降位置に達する場合は、一対の昇降駆動用噛合チェーン150が一対の昇降用スプロケット140によってチェーン収納ボックス191と直線状収納レール192からなるチェーン収納手段190へそれぞれ分岐しながら引き込まれ、一対の昇降駆動用噛合チェーン150が重量物(図示していない)を搭載する昇降テーブル110の全重量を支えながら減速機構を備えた駆動モータ160の出力に応じて2本掛けされた動力伝達チェーン162により等速かつ迅速に下降するようになっている。
【0040】
このようにして得られた本実施例の噛合チェーン式昇降装置100は、開脚角度検出センサ180がパンタグラフ機構170に設置されている。
したがって、開脚角度検出センサ180によって測定されたリンク相互間、すなわち、インナーアーム172とアウターアーム173との相互間の開脚角度からパンタグラフ機構170の伸縮状態を検出できるため、この検出情報を基に昇降テーブル110の昇降位置を制御することで垂直方向における昇降テーブル110の位置決め精度を向上でき、特に、昇降テーブル110の搭載面に対する被昇降物の積み下ろし時に生じがちな被昇降物を含む昇降テーブル110の重量変化に起因して、チェーン長手方向への昇降駆動用噛合チェーン150の圧縮具合が変化して昇降テーブル110の昇降位置に変動が生じた場合、この昇降テーブル110の昇降位置の変化を開脚角度検出センサ180が検出して、この検出情報を基に昇降テーブル110の昇降位置を補正できるため、昇降テーブル110の積載面の高さを一定に維持して昇降テーブル110に対する被昇降物の円滑な搬出搬入を実現できる。
【0041】
また、被昇降物を含む昇降テーブル110の重量によってチェーン長手方向に圧縮されがちな昇降駆動用噛合チェーン150や昇降駆動用噛合チェーン150を昇降させる昇降用スプロケット140に対して回転型エンコーダを設置した場合と比較して、本発明の噛合チェーン式昇降装置100では昇降テーブル110の底面側に直接的に取り付けられたパンタグラフ機構170の伸縮状態を検出できるため、昇降テーブル110の昇降位置に関する情報を高精度に検出でき、精度の高い昇降テーブル110の制御を実現できるなど、その効果は甚大である。
【0042】
つぎに、本発明の第2実施例である噛合チェーン式昇降装置200について、図7に基づいて以下に説明する。
ここで、本発明の第2実施例である噛合チェーン式昇降装置200における開脚角度検出センサ280以外の構成は、前述した第1実施例の噛合チェーン式昇降装置100と全く同じであるため、第1実施例の噛合チェーン式昇降装置100に関する明細書、および、図1乃至図6に示す100番台の符号を200番台の符号に読み替えることによって、開脚角度検出センサ280以外の構成についてはその説明を省略する。
【0043】
そこで、本実施例の噛合チェーン式昇降装置200が最も特徴とする開脚角度検出センサ280の具体的な形態について詳しく説明する。
すなわち、図7に示すように、開脚角度検出センサ280は、昇降テーブル210のテーブル幅方向にそれぞれ配置されており、すなわち、昇降テーブル210に対して前後一対で2組配置されたパンタグラフ機構270の交差部274に対してそれぞれ設置されており、各パンタグラフ機構270の伸縮状態を検出するようになっている。
【0044】
なお、開脚角度検出センサ280をパンタグラフ機構270の交差部274に対して設置する代わりに、パンタグラフ機構270の関節部275に対して設置しても良く、この場合にも同様の効果を得ることができる。
【0045】
このようにして得られた本実施例の噛合チェーン式昇降装置200は、開脚角度検出センサ280が、昇降テーブル210のテーブル幅方向にそれぞれ配置されている。
したがって、昇降テーブル210のテーブル幅方向の両側において各パンタグラフ機構270の伸縮状態をそれぞれ検出して比較することで、昇降テーブル210のテーブル幅方向への傾きを検出できるため、この検出情報を基にパンタグラフ機構270を制御して、被昇降物等が昇降テーブル210の積載面からテーブル幅方向に落下することを防止できるなど、その効果は甚大である。
【0046】
つぎに、本発明の第3実施例である噛合チェーン式昇降装置300について、図8に基づいて以下に説明する。
ここで、本発明の第3実施例である噛合チェーン式昇降装置300における開脚角度検出センサ380以外の構成は、前述した第1実施例の噛合チェーン式昇降装置100と全く同じであるため、第1実施例の噛合チェーン式昇降装置100に関する明細書、および、図1乃至図6に示す100番台の符号を300番台の符号に読み替えることによって、開脚角度検出センサ380以外の構成についてはその説明を省略する。
【0047】
そこで、本実施例の噛合チェーン式昇降装置300が最も特徴とする開脚角度検出センサ380の具体的な形態について詳しく説明する。
すなわち、図8に示すように、開脚角度検出センサ380は、昇降テーブル310のテーブル長手方向にそれぞれ配置されており、すなわち、パンタグラフ機構370の左右一対の関節部375に対してそれぞれ設置されており、各関節部375におけるインナーアーム372とアウターアーム373との開脚角度を検出するようになっている。
【0048】
このようにして得られた本実施例の噛合チェーン式昇降装置300は、開脚角度検出センサ380が、昇降テーブル310のテーブル長手方向にそれぞれ配置されている。
したがって、各関節部375におけるインナーアーム372とアウターアーム373との開脚角度を検出して比較することで、昇降テーブル310のテーブル長手方向への傾きを検出できるため、この検出情報を基にパンタグラフ機構370を制御して、昇降テーブル310の安定した積載面を提供できるなど、その効果は甚大である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1実施例である噛合チェーン式昇降装置の全体斜視図。
【図2】図1から昇降テーブルとパンタグラフ機構を除いた状態の斜視図。
【図3】図2に示す昇降用スプロケット近傍の一部拡大図。
【図4】昇降駆動用噛合チェーンの分解組み立て状態と噛み外れ状態を示す斜視図。
【図5】パンタグラフ機構と開脚角度検出センサを中心とした斜視図。
【図6】駆動モータに用いられる制御手段を示す説明図。
【図7】本発明の第2実施例である噛合チェーン式昇降装置のパンタグラフ機構と開脚角度検出センサを示す斜視図。
【図8】本発明の第3実施例である噛合チェーン式昇降装置のパンタグラフ機構と開脚角度検出センサを示す斜視図。
【符号の説明】
【0050】
100、200、300 ・・・ 噛合チェーン式昇降装置
110、210、310 ・・・ 昇降テーブル
120、220、320 ・・・ ベースプレート
130、230、330 ・・・ 回転軸
140、240、340 ・・・ 昇降用スプロケット
150、250、350 ・・・ 昇降駆動用噛合チェーン
151、251、351 ・・・ 内歯プレート
152、252、352 ・・・ 外歯プレート
153、253、353 ・・・ ブシュ
154、254、354 ・・・ ローラ
155、255、355 ・・・ 連結ピン
160、260、360 ・・・ 駆動モータ
161、261、361 ・・・ 駆動側スプロケット
162、262、362 ・・・ 動力伝達チェーン
163、263、363 ・・・ 同期ギア群
164、264、364 ・・・ 制御手段
165、265、365 ・・・ チェーン誘導プレート
170、270、370 ・・・ パンタグラフ機構
171、271、371 ・・・ パンタグラフ部材
172、272、372 ・・・ インナーアーム
173、273、373 ・・・ アウターアーム
174、274、374 ・・・ 交差部
175、275、375 ・・・ 関節部
176、276、376 ・・・ 連結リブ
177、277、377 ・・・ スライドレール
180、280、380 ・・・ 開脚角度検出センサ
190、290、390 ・・・ チェーン収納手段
191、291、391 ・・・ 巻き取り型のチェーン収納ボックス
192、292、392 ・・・ 直線状収納レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に対して平行に併置された一対の回転軸を中心に同一面内で相互に対向して反対方向に正逆回転する一対の昇降用スプロケットと、該一対の昇降用スプロケットにより水平方向から垂直方向へ偏向しながら相互に噛み合わせて一体に自立状態で上昇するとともに前記一対の昇降用スプロケットにより垂直方向から水平方向へ偏向しながら相互に噛み外れて分岐する一対の昇降駆動用噛合チェーンと、該昇降駆動用噛合チェーンの上端に設置されて一体に昇降する昇降テーブルと、前記一対の昇降用スプロケットを駆動する駆動源と、前記昇降テーブルと設置面との間に伸縮自在に設けられて昇降テーブルの昇降動作をガイドするパンタグラフ機構とを備えている噛合チェーン式昇降装置において、
前記パンタグラフ機構を構成して伸縮させるリンク相互間の開脚角度を検出する開脚角度検出センサが、前記パンタグラフ機構に設置されていることを特徴とする噛合チェーン式昇降装置。
【請求項2】
前記開脚角度検出センサが、前記昇降テーブルのテーブル幅方向にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1記載の噛合チェーン式昇降装置。
【請求項3】
前記開脚角度検出センサが、前記昇降テーブルのテーブル長手方向にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の噛合チェーン式昇降装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−1129(P2010−1129A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−161212(P2008−161212)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)