説明

器官損傷の同定方法

この発明は、患者が、開発薬により誘導された器官損傷を有する或いはそのリスクを有するか否かを同定する方法と、開発薬により誘導された器官損傷を有する患者を治療する方法を提供するものである。特に、この発明は、患者が、パラセタモールにより誘導された肝臓損傷を有する或いはその発症リスクを有するか否かを同定する方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、患者が、開発薬により誘導された器官損傷を有する或いはそのリスクを有するか否かを同定する方法と、開発薬により誘導された器官損傷を有する患者を治療する方法を提供するものである。特に、この発明は、患者が、パラセタモールにより誘導された肝臓損傷を有する或いはその発症リスクを有するか否かを同定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バイオマーカーは、一般的な生物学的特徴の測定及び評価を、生物学的プロセス、病原性プロセス、又は、治療的な介入に対する薬理学的応答として客観的に示すものである(Hewitt et al, 2004)。体液中の臨床的に役立ち、実証されたタンパク質バイオマーカーの同定は、広範囲にわたる病理学的障害のより早朝の発見及び再分類を可能とすることから、プロテオミクスにおける最終的な到達点となる。体液のプロテオームは複雑であり(Anderson and Anderson, 2002)、これら体液のプロテオミクスは、血漿のアルブミン及び尿のTamm-Horsfallタンパク質(THP)などの大量のタンパク質は検出が容易であるが、より関心が高く、かつ、情報量が多いような、より少量のタンパク質の同定が困難であることへの挑戦である。
【0003】
多器官損傷は高死亡率を有することから、臓器損傷が発生する過程の病理学的性質を理解する必要がある。薬剤過剰投与(例えばパラセタモールの過量服用)は多臓器不全を誘導し得るものであり、パラセタモールにより誘導された臓器損傷の鍵となる媒体は転写因子c-Junである。
【0004】
パラセタモール(別名アセトアミノフェン:APAP)の慎重な又は偶発的な過剰投与は、イギリスの被毒で最も一般的なものである。例えば、1日につき約1人が、相当なAPAP過剰投与の処置のためにエジンバラ王立病院(Royal Infirmary of Edinburgh)への入院を必要とする(未発表データ)。しかし、約12%の入院では臓器損傷の何らかの程度にて発症しており、スコットランドの全域にて1年につき約50人の患者が相当なるAPAP 誘導肝臓損傷を有しており、Scottish Liver Transplant Unitに任せられるとされている(未発表データ)。APAP過剰投与は、グルタチオン・プロドラッグ(N-アセチルシステイン(NAC))によって治療されるが、この解毒剤による副作用は一般的である(約15%の患者)。大多数の患者が臓器損傷を発症しないので、我々は潜在的に有毒な解毒剤によって過剰に治療している可能性がある。
【0005】
NAC処理の必要性は、血液パラセタモール濃度で決定される。血液のパラセタモールの十分に高い濃度を有するとされたものは、凡そ20時間、静脈内へNACが投与される。一旦NAC処理が完了すると、肝損傷の程度を評価するために更なる試験が行われる。これらの試験は、血清トランスアミナーゼ・エンザイム(ALT及びAST)、血液凝固(INR)及び血清クレアチニンの測定を必要とする。このように、パラセタモール誘導された器官損傷は、現在、20時間の最小限の期間後に排除され得るものである。
【0006】
そのことに加え、NACの副作用が一般的であることから、NAC持続注入の気管を短くすることが望ましい。
【0007】
APAPを誘導された臓器損傷の既存のバイオマーカー(例えば血清アラニン・トランスアミナーゼ(ALT)、国際的な標準化された比率(INR)及びクレアチニン)は、APAP投与後に約24時間経過するまで、損傷を正確に検出または除外できない。より早朝の損傷を検出又は排除することができるなら、病院入院の数及び/又は長さを減らすことができる。
【0008】
細胞膜の構成要素を放出する真核細胞の能力は、最初にWolfによって1967年に説明され、雄弁にも「血小板塵」と呼ばれた。基本的に、全ての細胞型は小さな膜小胞を吐出するものであり、今日では微粒子又はエキソソームとして公知であり、それらは、特に細胞が活性化又はアポトーシスしているときに起こる(George et al., 1982)。
【0009】
泌尿器プロテオームは、血液よりも調査が容易であることから、多数のデータを集めることができる。腎臓の全てのネフロン部分は通常、尿に頂端膜及び細胞内液を含んでいる小さな小胞を分泌するものであり、これら小胞はエキソソームと呼ばれ、寸法は80ナノメートル未満である(Johnstone et al., 1987)。エキソソームは、これらの小胞の固有の特徴である「細胞質の側方側」に配向するものである。エキソソームは尿から分画遠心分離によって単離される、いくつかの腎臟病関連のタンパク質は液体クロマトグラフィ-タンデム型質量分析(LC-MS/MS)によって、これらのエキソソームから同定された(Pisitkun et al, 2004)。Zhouらは(2006)、尿のエキソソームを収集及び保管し、単離されるエキソソームタンパク質の量を最大のものとし、タンパク質の同定を容易とするための最適条件を決めた。泌尿器エキソソームは、疾患の間、それらの数及び組成物が変化して、臓器機能不全の指標となり得ることから、腎臟病の鍵となるバイオマーカを提供するものである。しかし、泌尿器エキソソームの変化は、血液MPを循環の変化及び腎臓機能の変化を反映したものであるかもしれないことには留意されたい。従って、泌尿器エキソソームタンパク質は、全身性疾患のためのバイオマーカーの提供するものである。尿エキソソームを単離して特徴付けることは、疾患バイオマーカーを同定する際の最初のステップとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明の目的は、上述したような従来技術の問題を取り除く又は緩和することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
患者が、開発薬により誘導された器官損傷を有する或いはそのリスクを有するか否かを同定する方法であって、該方法は、(c)患者から試料を準備するステップと、(d)該試料中のタンパク質レベルを同定するステップと、を含み、タンパク質レベルの増大は、患者が開発薬により誘導された器官損傷を有する或いはそのリスクを有することを示すことを特徴とする同定方法である。この発明は、以下の図面を参照しつつ詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】A及びBは、血液から微粒子(A)、そして尿からエキソソーム(B)を単離するプロトコールを示す。
【図2】健常な対象由来の血漿中の微粒子の循環させたフローサイトメータ分析のグラフを示す。A〜Dでは、循環MPs及びキャリブレータビーズ(2.5ml)は、非染色コントロール、単一染色FITCコントロール、単一染色PEコントロール及び二重染色選別集団の夫々について、前方散乱/側方散乱ドットプロットヒストグラムにより示される。E〜Hでは、単一染色FITCコントロール、単一染色PEコントロール及び二重染色選別集団の夫々について、X軸にFITC蛍光をプロットし、Y軸にPE蛍光をプロットした2つのパラメータヒストグラムを示す。白いドットはネガティブMP集団を示し、ピンク:単一陽性FITC集団(CD31+/ EMPs)、青:単一の陽性PE集団(CD42b+)、紫:2重陽性集団(CD31+ CD42b+/PMP)を示す。これは、二重染色選別試料におけるMP集団のイベント数及び確率を示す。
【図3】健常な個人の試料における微粒子数を示す。フローサイトメトリーにより回復したEMPs及びPMPs/血液mlの数がlog10グラフに示され、夫々の個人のEMPs及びPMPsの正確な数がバーの上方に示される。個人の試料に応じてMPsの数には多様性がある。平均EMPs = 1507567 (SEM 837934);平均PMPs = 285704 (SEM 88864);n=6。
【図4】EMPs(内皮微粒子)及びPMPs(血小板微粒子)におけるGata2発現を示す。上方のパネルは超遠心したペレットのウェスタンブロットの結果を示し、下方のパネルは、FACS後に超遠心した上清内に存在するGATA2(〜50kDa寸法)を示す。レーン1〜3:EMPs、レーン4〜6:PMPs、レーン1及び4、レーン2及び5、レーン3及び6:同一の個人から得られるEMPs及びPMPs。
【図5】健常人、パラセタモールを過剰投与して肝臓損傷を有する又は有さない患者からの尿エキソソームのc-Junのウェスタンブロットの結果を示す。A:通常の対象(赤)、パラセタモールを過剰投与され。器官損傷した患者(青)、過剰投与4時間後及び24時間後の後の器官損傷した患者(オレンジ)におけるエキソソームのタンパク質濃度、B:上方のパネルにて3人の通常の健康な対象からの試料にてc-Jun(78〜kDa)が存在することを示し、下方のパネルにて、c-Jun(78〜kDa)が存在しないネガティブコントロールを示す。C:3名のパラセタモールを過剰投与した患者の、過剰投与4及び24時間後のプールされた試料を示す。(−)肝臓損傷無し、(+)肝臓損傷有り。
【図6】通常の尿のエキソソームのタンパク質ゲル。M:分子量マーカー。レーン1〜5は、同一の個体から、〜20μgの通常の尿エキソソームタンパク質を全て含む。ドット線は、ゲルが、分子量マーカーに基づきスライスされた位置を示し、それによりLC-MS/MS分析に供される5つの試料(A〜E)が得られた。
【図7】C-Junの免疫ブロットの結果を示す。パラセタモールの過剰投与又は敗血症により肝臓が損傷している患者の尿微粒子中のタンパク質量が増大していた。
【図8】人の尿中のCyPAに対するウェスタンブロットの結果を示す。尿10ml、健康な対象(A)、APAPによる二次的な若干の肝臓の損傷(B)、APAPによる二次的な中程度の肝臓の損傷(C)、APAPによる二次的な重度の肝臓の損傷(D)及びAPAPによる二次的な肝臓及び腎臓の損傷(B)(E)から得られる。
【図9】人の尿中のCyPAに対するウェスタンブロットの結果を示す(レーン当り10μl)。APAP誘導された肝臓の顕著な損傷を(+)にて示す。肝臓に損傷がない場合には、(−)で示す。A、B、C及びDは、年齢及び性別が一致した対象を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明は、薬の誤った又は不適当な投与量を投与された患者の身体の体液における高いレベルを示すタンパク質の観察に基づくものである。また、体液中のタンパク質量は、患者が、薬物誘導器官損傷のリスクを有する又は発症していることを示す。
【0014】
従って、第一の態様において、この発明は、患者が、開発薬により誘導された器官損傷を有する或いはそのリスクを有するか否かを同定する方法であって、該方法は、(c)患者から試料を準備するステップと、(d)該試料中のタンパク質レベルを同定するステップと、を含み、タンパク質レベルの増大は、患者が開発薬により誘導された器官損傷を有する或いはそのリスクを有することを示すことを特徴とする同定方法を提供するものである。
【0015】
ここでいう「患者」とは、投与された、或いは、薬の不適当な又は誤った投与量を投与された、又はそれらの疑いがあるものを含むものをいうものである。また、「患者」は、1つ以上の器官に損傷の臨床症状を示すもの、或いは、症状がない及び/又は薬誘導による器官損傷をリスクのあるものを言う。そのことから、この発明は、患者が、開発薬により誘導された器官損傷を有する或いはそのリスクを有するか否かを同定して、患者が更なる治療を必要としているかを特定する方法を提供することを目的としている。
【0016】
ここでいう「薬」とは、診断、処理、或いは、疾患又は状態の予防に使用される化合物又は化合物の組み合わせを言うものである。それら化合物は、薬物又は薬剤として知られている。付加的に、或いは代換的に、「薬」は、行動、意識及び/又は知覚を変化させるために対象に投与される又は対象が摂取するその他の化合物を言うものである。これら化合物は、例えば、アルコール、ヘロイン及び/又は幻覚剤(例えばLSD)を含むものである。
【0017】
例えば、本方法は、例えば、抗生物質及び/又は消炎性、解熱薬、鎮痛剤及び/又は化学療法剤などの薬によって誘導される器官損傷の例を同定するために使用することができる。一実施形態において、本発明は、例えば、パラセタモール(7V(4-ヒドロキシフェニル)エタンアミド)などの解熱薬/鎮痛薬によって誘導される器官損傷を例えば同定するために使用することができる。
【0018】
また、薬に誘導される器官損傷が、多くの時間に要することから、 薬の誤った又は不適当な投与量の投与、又は患者への投与にも関わらず、器官損傷に対する更なる治療は必要ないかもしれないことには、充分に留意されたい。しかるに、現在のプロトコールでは、薬の不適当な/誤った投与量を投与された又はその疑いのある患者は、治療され、一定期間観察のために入院することが要求されている。そのような患者は、医者が更なる治療を必要としないと判断した場合にのみ解放される。そのことから、当業者であれば、多くの場合、患者によって飲まれる薬が更なる治療を必要としている器官損傷に起因しなかったことから、観察期間は不必要であったことを知っている。このような不必要な一定期間の入院は医局員が利用できる限られた資源の相当な消耗である。
【0019】
前述のように、薬により誘導された器官損傷が明確となるのには相当の期間を要することから、一つ以上の器官に対する損傷が発症するとしても、患者には自覚症状がない。例えば、肝臓などの損傷した部分の器官部分があったとしても、患者は何ら損傷に関する症状も臨床徴候も示さないことがある。
【0020】
薬により誘導された器官の損傷の症状が現れるまで相当の期間を要することから、入院及び一定期間の観察が不可欠である。
【0021】
従って、この発明は、薬が投与、薬の不適当な又は誤った投与量を投与された患者が一つ以上の器官に損傷を受けていて、患者が更なる治療を必要としているか否かを迅速に可能とする及び/又は予想する方法を提供するものである。この方法により、不必要に一定期間の観察のために入院している患者の数が劇的に減少する。
【0022】
一実施形態において、この発明は、患者が、開発薬により誘導された器官損傷を有する或いはそのリスクを有するか否かを同定する方法であって、該方法は、(a)患者から試料を準備するステップと、(b)該試料中のタンパク質レベルを同定するステップと、を含み、タンパク質レベルの増大は、患者がパラセタモールにより誘導された肝臓損傷を有する或いはその発症リスクを有することを示すことを特徴とする同定方法を提供するものである。
【0023】
薬誘導された器官損傷は、薬自体またはそれらの代謝産物の毒作用に起因する場合がある。付加的に、又は代替的に、器官損傷は、薬又は代謝産物或いはそれらの代謝産物により起こる炎症反応によるものである。
【0024】
薬誘導された器官損傷は通常誤ったまたは不適当な投与量の投与に起因するものであり、一般に誤ったまたは不適当な投与量は過剰投与によるものである。このように、本願明細書において説明される各々の方法は、例えば、パラセタモールの過剰投与(さもなければ薬の「被毒」と称してもよい)などの薬に起因した器官損傷の例を同定するために使用することができる。
【0025】
ここでいう、「器官損傷」とは、肺(心臓)腎臓(肝臓)膵(脳)胃、(大及び/又は小)腸、及び/又は、父親泌尿器または造血制御系の1つ以上に影響を与える、器官内の1つ以上の細胞における機能欠損及び/又は細胞死を言うものである。薬誘導された器官損傷の厳しい症例では、おおよそ、器官の細胞の50%-90%は、機能を損失する又は死ぬ。
【0026】
一例として、薬誘導された肝損傷は、例えば、1つ以上の肝細胞の機能欠損及び/又はネクローシスによる肝機能の完全又は部分的な消失として特徴付けられる。肝機能の部分的な消失が何ら検出可能又は同定可能な症状を呈さないとしても、多くの場合、肝臓への損傷は、黄疸及び/又は、肝臓によって通常取り除かれる中毒性代謝産物及び化合物が血液中に取り込まれることに起因した脳への損傷である肝性脳症の発現として現れる。
【0027】
一部の患者においては、薬誘導された器官損傷は、完全なる器官損傷に進行して、健康な個人の器官がそれとして機能することを中断してしまう。時々、薬は多くの器官に損害を与え、厳しい損傷の例では、多臓器不全(MOF)を招く。
【0028】
更なる実施形態において、この発明は、患者がパラセタモールにより誘導された肝臓損傷を有する或いはその発症リスクを有するか否かを同定する方法であって、該方法は、(a)患者から試料を準備するステップと、(b)該試料中のタンパク質レベルを同定するステップと、を含み、タンパク質レベルの増大は、患者がパラセタモールにより誘導された肝臓損傷を有する或いはその発症リスクを有することを示すことを特徴とする同定方法を提供するものである。
【0029】
当業者であれば、「試料」とは、組織または生検材料の試料をいうものであることには留意されたい。また、「試料」は、全血液、血漿、血清、リンパ、尿、汗及び唾液、或いは/並びに、組織及び/又は腺分泌物などの体液の試料を含むものである。例えば、一実施形態において、試料は、体液として、好適には血漿である全血液を含むものである。より好適な実施形態では、意外なことに、試料は尿試料である。これは当業者にしてみても驚くべきことであり、尿試料のタンパク質含有量は、腎臓健康を示し得るものであった。従って、タンパク質含有量が、肝臓などのその他の器官の健康状態を示すことの発見は予期しないものであった。このように、一実施形態において、この発明は、患者の腎臓ではない器官において、薬誘導された器官損傷が起きているか否かを同定する方法を提供するものである。
【0030】
ここに開示されている試料は、微粒子及び/又はそのエキソソームを単離するプロトコールに処することができる。微粒子及び/又はエキソソームは、細胞から分泌される商法を有する。例えば、脈管系の細胞、特には、血管内皮細胞および/または器官組織を含む細胞は、微粒子及び/又はエキソソームを放出する。これら微粒子及び/又はエキソソームは、起源となるものの細胞の表層、細胞質及び/又は核由来の多様なタンパク質を更に含む。
【0031】
当業者は、上述したような微粒子及び/又はエキソソームを試料から単離する技術に精通している。例えば、試料を遠心する。好適には、試料から微粒子及び/又はエキソソームを単離するために超遠心をする。付加的或いは代替的に、血液などの試料から単離された微粒子(及び潜在的には尿からのエキソソーム)は、分離され、或いは、細胞選別技術により(すなわち、(血管内皮細胞などの)期限とする細胞型に応じた)異なる集団へと選別される。一例として、微粒子に対し、微粒子の一つ以上の化合物に結合し得る一つ以上の物質によりタグ又はラベルを付することができる。この方法によれば、微粒子は、タグ又はラベルが付された微粒子を蛍光活性化細胞選別(FACS)分析に処することにより集団へと選別(又は単離)される。好適には、微粒子の一つ以上の化合物に結合し得る物質は、(以下に示すような)検出可能な部分によりラベルされた抗体である。特定の実施形態では、フルオレッセンイソチオシアン酸塩(FITC)ラベルされたヒトのCD31抗体及びフィコエリトリン(PE)ラベルされたヒトのCD42b抗体マーカーにより、血液及び/又は血漿試料からの微粒子を区別し、異なる集団に選別する。
【0032】
従って、ここに記載の方法は、患者からの試料から微粒子及び/又はエキソソームを単離する更なるステップを含むものである。このように、この発明の更なる実施形態は、患者が薬により誘導された器官損傷を有する或いはその発症リスクを有するか否かを同定する方法であって、該方法は、(a)患者から試料を準備するステップと、(b)試料から微粒子及び/又はエキソソームを単離するステップと、(c)該微粒子及び/又はエキソソームのタンパク質レベルを同定するステップと、を含み、微粒子及び/又はエキソソームのタンパク質レベルの増大は、患者が薬により誘導された器官損傷を有する或いはその発症リスクを有することを示すことを特徴とする同定方法を提供するものである。
【0033】
好適には、集めた直後であって、試料を上述した微粒子及び/又はエキソソームの抽出プロトコールに処する前に、試料内のタンパク質要物を分解、変性及び/又は破壊を防止する化合物を試料に添加する。かかる化合物は、例えば、タンパク質分解酵素の阻害剤、別名プロテナーゼ阻害剤を含む。
【0034】
試料の全量タンパク質量において、「タンパク質」とは、一つ以上の特定の又は特異的なタンパク質を言うものである。例えば、細胞表面、細胞内、細胞質及び/又は核のタンパク質のレベルを同定することにより、薬により誘導された器官損傷を同定及び/又は予想することができる。このように、ここに記載の各方法は、特定の細胞表面、細胞内、細胞質及び/又は核のタンパク質のレベルを同定することによるものである。例えば、この発明は、例えば、マイトジェンによって活性化されるタンパク質(MAP)キナーゼ(MAPK)によって活性化されるタンパク質の転写因子であるc-Junを含む転写因子のレベルを同定することを必要とする。付加的或いは代替的に、ここに記載の方法は、シクロフィリンA(CyPA−ペプチジル・プロリル・シス/トランスイソメラーゼAまたはPPIAと称される)などの細胞内タンパク質を同定することに関する。
【0035】
このように、一実施形態において、この発明は、患者が、開発薬により誘導された器官損傷を有する或いはそのリスクを有するか否かを同定する方法であって、該方法は、(a)患者から試料を準備するステップと、(b)該試料中の転写因子及び/又は細胞内タンパク質レベルを同定するステップと、を含み、転写因子及び/又は細胞内タンパク質のレベルの増大は、患者が開発薬により誘導された器官損傷を有する或いはそのリスクを有することを示すことを特徴とする同定方法を提供するものである。
【0036】
一実施形態において、転写因子はc-Jun N末端キナーゼ(JNK)である。他の実施形態において、細胞内タンパク質はCyPAである。
【0037】
理論に束縛されることを望まないが、薬への曝露、特には例えば薬(例えばパラセタモール)の過剰投与は、MAPKの活性化につながり、かかる活性化はc-Junを活性化させてc-Junの量を増大させる。また、例えば、パラセタモールなどの薬は、顕著な細胞死を招くことから、損傷した細胞からの漏出物は、試料(例えば尿、血液など)のCyPAのような細胞内のタンパク質の供給源となることが考えられる。
【0038】
c-Jun N末端キナーゼファミリーに属する遺伝子は、転写複合体に関連する核タンパク質をコードしており、c-Junは、細胞ストレスなどの多様な刺激により誘導される活性を有するAP-1転写因子の主たる要素である。また、c-Jun N末端キナーゼは、3つの遺伝子JNKl、JNK2及びJNK3に由来する10種のアイソフォームからなり、この発明は、一つ以上のアイソフォームのレベルを同定することに関するものでることには留意されたい。
【0039】
CyPAは、多くの多様な機能を有する大量の細胞内のタンパク質である。それは、免疫抑制因子サイクロスポリン2のための第一の細胞内の薬のターゲットであって、細胞内のタンパク質のフォールディング3に重要である、ペプチジル・プロリル・シス/トランスイソメラーゼ活性を有するイムノフィリンクラスのメンバーである。CyPAはHIV4に結合し、サイクロフィリン結合薬は強力な抗HIV活性を有する。
【0040】
また、CyPAは、多くの刺激に応答して細胞内から細胞外の環境に放出される。細胞外のCyPAは炎症誘発性であり、例えば、それは炎症細胞5のための走化性剤となる。
【0041】
上述したことから、パラセタモールの薬の過剰投与された、或いはその疑いのある患者の試料、好ましくは尿試料(及びより好ましくは、それに由来するエキソソーム)において同定されるc-Junのレベルは、パラセタモールにより誘導された肝臓損傷を示す又は予想するものである。
【0042】
同様に、パラセタモールの薬の過剰投与された、或いはその疑いのある患者の試料、好ましくは尿試料(及びより好ましくは、それに由来するエキソソーム)において同定されるCyPAのレベルは、パラセタモールにより誘導された肝臓損傷を示す又は予想するものである。
【0043】
このように、一実施形態において、この発明は、患者が、パラセタモールにより誘導された肝臓損傷を有する或いはそのリスクを有するか否かを同定する方法であって、該方法は、(a)患者から試料を準備するステップと、(b)任意選択的に尿試料中から微粒子及び/又はエキソソームの単離するステップと、(c)該尿試料中の転写因子c-Jun及び/又はCyPA、或いは/並びに、ステップ(b)にて単離された微粒子及び/又はエキソソームのレベルを同定するステップと、を含み、該尿試料中の転写因子c-Jun及び/又はCyPA、或いは/並びに、ステップ(b)にて単離された微粒子及び/又はエキソソームのレベルの増大は、患者がパラセタモールにより誘導された肝臓損傷を有する或いはそのリスクを有することを示すことを特徴とする同定方法を提供するものである。
【0044】
一般的に、1mlの尿中の10ng〜10μgのc-Jun及び/又はCyPAタンパク質は肝臓への損傷を示すものである。
【0045】
当業者であれば、ここに記載の発明の方法である特定のタンパク質のレベルを同定する方法に関する技術の組み合わせに精通している。そのような技術は、例えば、タンパク質アッセイ、当業者であれば使用して、ここに援用される酵素に基づくアッセイ(Kullertz et al (1998), Clinical Chemistry, 44:3, p502-508等を参照)、以下に記載されているような免疫学的及びPCRに基づく技術を含むものである。
【0046】
検査される試料に存在するタンパク質の増大されたレベルがあるかと否かを決定するために、当業者はここに記載の方法により同定された試料中の又は同定された(すなわち、同定された全量及び/又は特定のタンパク質のレベル)と、基準試料中の又は同定された(全量及び/又は特定)タンパク質の結果と比較する。「基準試料」とは、健康な対象、すなわち(薬により或いはその他の理由により誘導された)器官損傷の無い基準試料から得られた試料である。
【0047】
付加的或いは代替的に、得られた結果は、夫々が基準試料から得られた多数の基準試料と比較される。
【0048】
従って、その他の実施形態において、この発明は、患者が、開発薬により誘導された器官損傷を有する或いはそのリスクを有するか否かを同定する方法であって、該方法は、(a)患者から試料を準備するステップと、(b)該試料中のタンパク質のレベルを同定するステップと、(c)その結果を基準試料にて同定されたレベルと比較するステップと、を含み、基準試料にて同定されたレベルに対してタンパク質のレベルが増大していることは、患者が開発薬により誘導された器官損傷を有する或いはそのリスクを有することを示すことを特徴とする同定方法を提供するものである。
【0049】
また、上述したパラセタモール誘導の肝臓損傷を同定する方法は、パラセタモール誘導肝臓損傷の無い対象から得られた基準の尿試料の結果と比較するステップを更に含むものである。
【0050】
付加的或いは代替的に、ここに記載のかかる方法により得られた結果は、異なる器官損傷のレベルの患者における基準試料から得られた結果と比較される。当業者であればかかる試料が「ポジティブコントロール試料」であることがわかる。例えば、かかる結果は、過剰投与された器官損傷を受けていない患者、自覚症状がないが一つ以上の器官に損傷を受けている患者、及び/又は、薬の過剰投与後に症状があり、一つ以上の器官に損傷を受けている患者由来の試料から得られた結果と比較される。
【0051】
有利には、基準試料は、上述した微粒子/エキソソームの単離プロトコールに処される。
【0052】
好適には、基準試料は、患者から得られるものと同一のタイプの試料とする。一例として、患者から得られる試料が尿試料である場合には、基準試料もまた尿試料とする。
【0053】
対象が苦しむ薬により誘導される器官損傷のレベルは、現在利用可能な多数の臨床手段によって決定される。最も単純には、器官損傷及び/又は欠損は、例えば、(例えばヘモ透析による)腎臓補充療法又は呼吸不全の通気支持、或いは、末しょう血管抵抗を維持することの障害に対する血管収縮の支援などの、器官支持の臨床需要から推定されるものである。特定の組合せのスコアリング制御系、例えば、多器官機能不全スコア(Marshall, J. C, Cook, D. J., Christou, N. V., Bernard, G. R., Sprung, C. L. and Sibbald, W. J.: 1995, 'Multiple organ dysfunction score: a reliable descriptor of a complex clinical outcome.' Crit Care Med 23, 1638- 52.)や急性生理学的及び慢性健康評価スコア(Knaus, W. A., Draper, E. A., Wagner, D. P. and Zimmerman, J. E.: 1985, 'APACHE II: a severity of disease classification system.' Crit Care Med 13, 818-29)もまた有益な情報を提供する。
【0054】
好適には、試料内のタンパク質における、基準試料のレベルに対する約2〜10倍の増大は、更なる治療を必要としない薬により誘導される器官損傷のレベルを示す。更に好適は、試料内のタンパク質における、基準試料のレベルに対する約3〜9倍、好適には4〜8倍の増大は、更なる治療を必要としない薬により誘導される器官損傷のレベルを示す。一実施例において、試料内のタンパク質における、基準試料のレベルに対する約5〜7倍の増大は、更なる治療を必要としない薬により誘導される器官損傷のレベルを示す。
【0055】
それに対し、試料内のタンパク質における、基準試料のレベルに対する約8〜100倍の増大は、薬により誘導される器官損傷に対し更なる治療を必要とするレベルを示すものとすることができる。好適には、試料内のタンパク質における、基準試料のレベルに対する約10〜90倍、好適には20〜80倍の増大は、薬により誘導される器官損傷に対し更なる治療を必要とするレベルを示すものとすることができる。更なる実施形態では、試料内のタンパク質における、基準試料のレベルに対する約25〜85倍、好適には30〜70倍、より好適には35〜65倍の増大は、薬により誘導される器官損傷に対し更なる治療を必要とするレベルを示すものとすることができる。
【0056】
試料内のタンパク質レベルを同定する方法を提供することに加え、ここに記載の夫々の方法は、付加的或いは代替的に、準備される試料内の核酸のレベルを同定することを必要とする。当業者であれば試料内の核酸のレベルが、薬により誘導される器官損傷を示すタンパク質のレベルを示すことを知っていることには留意されたい。また、試料内の特定のタンパク質のレベルは、ここに記載の特定のタンパク質をコードする核酸を利用することにより同定し得るものである。一例として、提供される試料内の転写因子c-Jun及び/又はCyPAをコードする核酸を同定することができる。
【0057】
ここでいう核酸とは、デオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)を含むことを意図したものである。RNAの場合、mRNA及びtRNAを含むものである。より詳しくは、一実施形態において、この発明は、試料内のRNA、好適はmRNAのレベルの同定することを必要とする。有利には、mRNAは転写因子c-Jun及び/又はCyPAをコードする。当業者が、試料内に存在する核酸レベルを同定する方法は以下に説明する。
【0058】
当業者であれば、上述したような全量タンパク質及び/又は特定のタンパク質のレベルを同定する技術に精通している。また、以下に記載の夫々の方法には、ここに記載の夫々の方法に適用し得ることには留意されたい。
【0059】
一実施形態において、試料内の全量タンパク質の同定は、タンパク質アッセイを用いて同定する。これには、ブラッドフォードタンパク質アッセイ等のアッセイが適当である。この種のアッセイは、公知の濃度の、例えば、ウシ血清アルブミンとして準備される、標準又は基準タンパク質試料の使用をしばしば必要とする。
【0060】
特定のタンパク質のレベルを同定するためには、タンパク質に結合し得る物質を使用する、特定の免疫学的手法を使用する必要がある。この種の技術は、例えばc-Jun及び/又はCyPAなどの転写因子のタンパク質レベルを同定することに特に適している。
【0061】
一実施形態において、試験される試料と基質(またはその一部)とを接触させ、特定のタンパク質又は試料内の(c-Junなどの)転写因子及び/又はCyPAなどのタンパク質を該基質に関連付ける、結合させる及び/又は固定するステップを含む方法を提供するものである。
【0062】
適当な基質は、例えば、ガラス、ニトロセルロース、紙、アガロース及び/又はプラスチックを含むものである。プラスチック材料などの基質はマイクロタイタープレートの形状となる。
【0063】
或いは、試験に供される試料と接触する基質は、特定のタンパク質や複数のタンパク質と結合し得る物質を含む。好適には、特定のタンパク質に結合する物質は、基質(又は少なくともその一部)にも結合するものである。好適な結合物質は、例えば転写因子c-Junおよび/またはCyPAなどの特定のタンパク質に結合し得る、例えば、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体などの抗体及び/又はペプチド又は小分子である。また、この定義はここに記載の全ての結合物質に適用し得ることには留意されたい。このように、基質(またはその一部)は、試料内の特定のタンパク質及び関連する特的のタンパク質に結合し得る物質と結合又は相互作用し得る条件下にて、試験対象の試料と接触させる。
【0064】
基質又は特的のタンパク質に結合し得る物質に結合する特異的なタンパク質は、特異的なタンパク質に結合し得る更なる物質(以後、「第一の結合物質」という)に使用することにより検出される。付加的或いは代替的に、第一の結合物質は、特定のタンパク質::基質複合体、又は、特定のタンパク質及び上述したような特定のタンパク質に結合し得る物質を含む複合体に対し親和性又は結合能を有する。
【0065】
第一の結合物質は、検出を可能とする部分(以下、「検出部分」という)に接合する。例えば、第一の物質は、色素化学ルミネセンス反応により、レベルを報告する酵素に接合する。かかる接合酵素は、以下に限定されないが、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)及びアルカリフォスファターゼ(AIkP)を含む。付加的或いは代替的に、第一の結合物質は、例えば、FITC、ローダミンまたはテキサスレッドなどといったフルオロホアなどの蛍光分子に接合する。結合分子に接合し得るその他のタイプの分子は、放射性同位元素を使ってラベルされた部分を含むものである。
【0066】
或いは、特定のタンパク質に結合し得る基質又は物質に結合する任意の特定のタンパク質は、第一の結合物質に対する親和性を有する更なる結合分子(以下、「第二の結合物質」という)を用いた手段により検出される。好適には、第二の結合物質は、検出可能な部分に接合するものである。
【0067】
一つ以上の特定のタンパク質に結合する第一の結合物質(又はそれに結合する第二の結合物質)の量は、特定のタンパク質又は試験に供される試料に存在するタンパク質のレベルを示すものである。
【0068】
前述のように、本願明細書において説明される免疫学的な方法は、例えばc-Junおよび/またはCyPAなどの転写因子のレベルを同定することに特に適しており、かかる患者からの試料から提供されるレベルは、薬を誤ってまたは不適切に投与されたことによる薬により誘導される器官の損傷を示すものである。
【0069】
一実施形態において、特定のタンパク質のレベルを同定する上述の方法は、「漬棒(dip stick)」試験により行われ、試料内のc-Junおよび/またはCyPAなどの転写因子などの特定のタンパク質が、基質或いはそれに結合又は固定される結合物質に結合し得る条件下にて、基質(またはその一部)は試験される試料と接触させる。
【0070】
その他の実施形態において、かかる方法は、酵素結合抗体免疫吸着アッセイ(ELISA)などの免疫学的なアッセイの形態をとる。ELISAは、「捕獲」ELISAという形態をとることができ、試験される試料は基質に接触し、(特定のタンパク質に結合し得る)結合物質が基質に結合又は固定することにより、試料は任意の特定のタンパク質に捕獲又は結合する。或いは、試料は、試料内のタンパク質と基質との「直接」の結合を可能とする条件下にて基質に接触する。
【0071】
上述した夫々のELISA法は、特定のタンパク質を「直接的」に検出するステップ又は「間接的」に検出するステップを含むものである。それらステップに関連したELISA法は、「間接ELISA法」又は「間接ELISA法」として知られている。
【0072】
「直接」ELISA法において、試験される試料は、特定のタンパク質又は試料内のタンパク質が基質及び/又はそれに結合している結合物質に結合し得る条件下にて、基質と接触させられる。任意選択的なブロッキングステップの後、(例えば、c-Jun及び/又はCyPAなどの転写因子などの)結合タンパク質は、特定のタンパク質に結合し得る物質(例えば、第一の結合物質)を用いて検出される。好適には、第一の結合物質は、検出可能な部分に接合するものである。
【0073】
「間接」ELISA法において、特定のタンパク質と第一の結合物質とを接触させた後に、第一の結合物質と親和性又は結合能を有する更なる結合物質(第二の結合物質)を使用する更なるステップを含むものである。好適には、第二の結合物質は、検出可能な部分に接合するものである。
【0074】
特定のタンパク質と結合し得る物質を使用して、体液中の試料の特定のタンパク質のレベルを同定するするその他の技術は、ウェスタンブロットやドットブロットを含むものである。ウェスタンブロットは、試料を電気泳動して、試料内のタンパク質要素などの構成要素を分離すること関するものである。一実施形態において、電気泳動される試料は、薬を誤って又は不適切に投与されたことが推定される又は投与された患者から得られた体液である。更なる実施形態では、試料は、当該試料から得られる微粒子及び/又はエキソソームを含む又はそれにより構成される。
【0075】
分離した要素は、ニトロセルロースなどの基質にトランスファーする。試料内のc-Jun及び/又はCyPAなどの転写因子などといった転写因子などの特定のタンパク質のレベルを同定するために、基質は、試料内の任意の特定のタンパク質と特定のタンパク質と結合し得る物質とが結合できる条件下にて、特定のタンパク質と結合し得る結合物質と接触させられる。
【0076】
好適には、特定のタンパク質と結合し得る物質は、検出可能な部分と接合するものである。
【0077】
或いは、基質を、特定のタンパク質と結合し得る結合物質の親和性を有する更なる結合物質と接触させる。有利には、更なる結合物質は、検出可能な部分と接合するものである。
【0078】
ドットブロットの場合、試料又はその一部は、転写因子c-Jun及び/又はCyPAなどの任意のタンパク質が基質に対し結合及び/又は固定するような基質と接触する。任意の固定又は結合したタンパク質の同定は、上述したように実施した。
【0079】
上述した任意の技術において、検出された第一又は第二の結合物質の量は、試料内の一つ以上の特定のタンパク質の割合を示すものであり、また、薬により誘導される器官損傷を示し得るものである。
【0080】
試料内の特定のタンパク質のレベルを検出及び/又は同定するためには、特定のタンパク質を一つ以上の化合物に転換する酵素を利用することが可能である。或いは、検出されるタンパク質が酵素である場合には、酵素に特異的な基質を接触させ、酵素/基質反応産物を引き起こさせることができる。両方の場合、酵素/基質反応により得られる産物のレベルは試料内の特定のタンパク質のレベルを示すものである。一例として、パラセタモールを過剰投与された患者由来の尿試料などの試料内のCyPA(ペプチジル・プロリル・シス/トランスイソメラーゼ活性)のレベルを特定するために、CyPAの酵素活性が測定された(Kullertz et al (1998)を参照)。
【0081】
転写因子c-Jun及び/又はCyPAなどの任意のタンパク質のレベルを同定する方法は、例えな、ポリメラーゼチェーリアクション(PCR)技術におけるリアルタイムPCR(或いは、定量的PCRとして知られている)などを含む。そのような技術は、体液試料内に特定の核酸配列が存在するか否か、そして、かかる核酸からの発現レベルを決定するために使用される。
【0082】
その場合に、リアルタイムPCRは、転写因子c-Jun及び/又はCyPAなどの特定のタンパク質をコードする核酸配列が試料内にあるか、そして、かかる核酸配列の発現レベルを決定するために使用される。一般的に、特定の核酸配列の発現レベルを定量するためには、逆転写PCRが使用され、適当なmRNAを相補DNA(cDNA)へと逆転写する。好適には、逆転写のプロトコールは、関心対象のmRNAを特異的に増幅するためのプライマーを使用するものである。
【0083】
一般的に、cDNAは、特定の配列に特異的にハイブリダイズするよう設計されたプライマーを用いて増幅され、PCRに使用される核酸は、蛍光又は放射性の化合物によりラベルすることができる。
【0084】
当業者であれば、ラベルされた核酸を使用して、PCRにより生産されたDNA量を定量する技術に精通している。簡単に言えば、一例として、ラベルされ、増幅した核酸は、PCRサイクル中に取り込まれたラベルされた核酸の量をモニタリングすることにより決定される。
【0085】
好適には、得られた結果は、基準試料の結果と比較される。
【0086】
ここに記載のPCR技術に関する更なる情報は、例えば、PCR Primer: A Laboratory Manual, Second Edition Edited by Carl W. Dieffenbach & Gabriela S. Dveksler: ColdSpring HarbourLaboratory Press及びMolecular Cloning:A Laboratory Manual by Joseph Sambrook & David Russell: Cold Spring Harbour Laboratory Press.に記載されている。
【0087】
試料内の特定のタンパク質のレベルを決定するその他の方法には、ノザン及び/又はサザンブロット技術がある。ノザンブロットは、試料内の特定のmRNAの量を決定するために使用することができ、また、試料内の転写因子c-Jun及び/又はCyPAなどの特定のタンパク質の量を決定するために使用することができる。簡単に言えば、当業者には公知の技術により、mRNAは試料から抽出され、電気泳動される。例えばc-Jun及び/又はCyPAなどの転写因子などの関心対象のmRNA配列に(相補して)ハイブリダイズするように設計された核酸プローブは、試料内の特定のmRNAを検出し定量するために使用される。有利には、得られた結果は、基準試料の結果と比較される。
【0088】
同様に、サザンブロットは、試料内の特定のDNAの量を決定するために使用することができ、また、特定のタンパク質をコードする核酸配列を検出するために使用することができる。簡単に言えば、核酸は試料から抽出され、断片化プロトコールに処され、電気泳動により分離され、核酸プローブによりプローブされ、特定の配列を検出するものである。例えば、核酸プローブは、転写因子c-Jun及び/又はCyPAをコードする核酸配列に(相補して)ハイブリダイズする。有利には、得られた結果は、基準試料の結果と比較される。
【0089】
付加的又は代替的に、特定のタンパク質のレベルの同定にはマイクロアレイ解析を用いて行う。そのような方法は、特定のタンパク質をコードする遺伝子を含むDNAマイクロアレイを用いて行う試料内の一つ以上の特定のタンパク質のレベルを同定するには、当業者は核酸を抽出し、好適には試料からmRNAを抽出し、cDNAが得られる逆転写PCRなどの増幅プロトコールに処する。好適には、特定のmRNA配列に特異的なプライマー配列は、例えば、MAPKタンパク質、c-Jun及び/又はCyPAをコードする配列が使用される。
【0090】
(例えばc-Jun及び/又はCyPAなどの)増幅されたcDNAは、(上述したような)任意選択的にラベルされた核酸の存在下にて、更なる増幅ステップに処される。その後、任意選択的にラベルされた増幅したcDNAは、DNAのマイクロアレイへの結合を可能とする条件下にて、マイクロアレイに接触する。この方法では、試験される試料内の一つ以上の特定のタンパク質のレベルを同定することが可能である。有利には、得られた結果は、基準試料の結果と比較される。
【0091】
ここに記載の技術に関する更なる情報は、例えば、PCR Primer: A Laboratory Manual, Second Edition Edited by Carl W. Dieffenbach & Gabriela S. Dveksler: Cold Spring HarbourLaboratory Press及びMolecular Cloning:A Laboratory Manual by Joseph Sambrook & David Russell: Cold Spring Harbour Laboratory Press.に記載されている。
【0092】
第二の態様は、薬により誘導された器官損傷を有する患者を治療する方法であって、(a)患者から提供される試料を上述した任意の方法に処するステップと、(b)薬により誘導された器官損傷の治療をするに適当な薬剤を有効量投与するステップとを含む方法を提供するものである。
【0093】
また、この発明により提供される方法は、既存の方法と組み合わせて、薬により誘導された器官損傷を同定することに関し、より信頼性の高く、迅速な方法として提供することも可能である。例えば、この発明は、パラセタモール、血清トランスアミナーゼ・エンザイム(ALT及びAST)、血液凝固(INR)及び血清クレアチニンなどの薬の血中濃度のアッセイと組み合わせることができる。
【実施例】
【0094】
(材料と方法)
(化学物質)
全ての化学物質は、特記されない限りはSigma(Poole,UK)から得られる。
【0095】
(対象)
健康な、男性のボランティア(24〜40才、(MREC倫理承認番号06/MRE00/67))は、エジンバラ大学のQueen's Medical Research Instituteからリクルートされた。
【0096】
(人の血液からの微粒子の単離)
健康な個人から12ml(4×3クエン酸チューブ)の人の血液が集められた。血液を4000×gにて20分間遠心して、細胞から血漿を分離した。遠心された血漿の上層の500μlを夫々のチューブから抽出し、10000rpmにて4℃で一時間遠心された(Optima(TM) TLX Ultracentrifuge, Beckman Coulter, Inc., USA)。上清は200μlの食塩水にて洗い流され、ペレットは1mlの食塩水(Braun)にて2回洗浄された。ペレットは200μlの食塩水に再懸濁され、フローサイトメトリー分析に処されるまで4℃にて保存された(図1A参照)。
【0097】
(フローサイトメトリー分析)
フルオレッセンイソチオシアネート(FITC)ラベルされた抗ヒトCD3及びPhycoerythrin(PE)ラベルされた抗ヒトCD42b抗体マーカー(BD Biosciences, San Jose, USA) (20 μl 抗体/ 100μl MP 試料)がMPパレットに添加され、室温にて、通常の振盪にて30分間培養された。フルオレッセンス活性化細胞選別(FACS)分析は、エジンバラ大学のFlow cytometry core facility, QMRIにおいてDiVaオプションを有するFACS VANTAGE(BD, San Jose, USA)により行われた。事象は、前方散乱強度及び後方散乱強度によりドットにて示されるように同定され、MPsとしてゲート制御され、1色又は2色の蛍光ヒストグラムとしてプロットされる。EMPsはCD31+CD42b-として定義され、PMPsはCD31+CD42b+として定義される。
【0098】
(対象、尿試料集め及び処理)
6名のボランティア(23〜40才、(MREC倫理承認番号06/MRE00/67))は、尿試料を滅菌された50mlのプラスチック容器に提供した。夫々の試料に対しプロテアーゼインヒビターが添加された(1mMレオペプチン50:1)。パラセタモール過剰投与後4及び24時間後の患者からの尿試料が分析された。患者6名中3名において顕著な肝臓損傷が認定された24時間後に血清アラニン・トランスアミナーゼ(ALT)が上昇していた。試料は15000gにて15分間4℃で遠心され、尿沈渣をペレット化した。「15000gの上清」は、10000rpmにて1時間4℃で遠心され、低濃度のエキソソームペレットが得られた。10000rpmの上清はデキャントされ、付加的な「15000gの上清」と置き換えられ、再度、超遠心に供された。超遠心のステップは4〜6回繰返され、15000gの上清18〜24mlからエキソソームペレットが回収される。ペレットは、50μlの単離溶液(10 mM トリエタノールアミン/ 250 mM スクロース (pH 7.6))に再懸濁される。パラセタモールを過剰投与した患者からの尿が3mlのみであることから、15000g上清を10000rpmにて1時間超遠心して、得られる尿エキソソームを最大とするようにプロトコールを変更した(図1b参照)。
【0099】
(ゲル電気泳動及びウェスタンブロット)
尿及びMPsのタンパク質の量は、BCA(登録商標)タンパク質アッセイキット(Pierce, USA)用いて、その説明書に従い決定された。20μgの通常の尿エキソソーム試料がウェル毎にロードされる。パラセタモール過剰投与試料の各ローディング量は、尿の濃度に違いによった尿のクレアチンにより標準化される。0.2MのDTT(Bio-Rad)を有するLaemmli Sample Bufferの均等量はタンパク質試料に添加され、かかる試料は95℃にて5分間加熱される。タンパク質試料は、12 % Tris-HClゲル(Bio-Rad)内を1D SDS/ポリアクリルアミドゲル電気泳動により、移動バッファー (25 mM Tris (Fisher Scientific), 192 mM グリシン及び0.1 % SDS)内にてゲル毎に25 mAで1時間、分子量マーカー(Bio-Rad)とともに流され、分離された。
【0100】
タンパク質は、冷却トランスファーバッファー(25 mM Tris, 192 mM グリシン及び20 % メタノール(BDH AnalR(登録商標)))を用いて200mAにて1時間ゲル内からポリビニルイヂン2フッ化膜(Invitrogen)へとトランスファーされる。TBST( 25 mM Tris- HCl, pH 8.0, 125 mM 塩化ナトリウム, 0.1 % Tween 20) 中にて5%のスキムドライミルク(Sainsbury's)中でブロッキングした後に、GATA 2 (1 : 200)及びc-Jun (1:200)に対するポリクローナル抗体とともに4℃にて一晩インキュベートされた。TBSTにて5分間3回洗浄した後に、膜は室温にてセイヨウワサビペルオキシダーゼ接合二次抗体(1 : 5000)とともに室温にて90分間インキュベートされた。ウェスタンブロットの全ての抗体はSanta Cruz Biotechnology, California, USAから得られた。ECLプラスウェスタンブロット検出システム(Amersham Biosciences, New Jersey, USA)及び高感応膜(Kodak)は抗体抗原反応を可視化するために使用された。
【0101】
(タンパク質ゲル染色及びインゲルトリプシン消化)
タンパク質の体積(20μg)はゲルのウェル毎にロードされることから、ゲルは100μgのタンパク質を含み、前述したように流された。次いで、ゲルは、7%の氷酢酸及び40%のメタノールにより、1時間固定される。ゲルはコロイド状のクマシーブルーにより1時間染色され、10%氷酢酸及び25%のメタノールにより30秒間脱色されられる。ゲルは同一の溶液により脱色される前に、25%メタノールによりリンスされる。ゲルは(図6に示すように)スライスされ、また、更に小さな部分へとスライスされ、タンパク抽出のステップまで-80℃にて保存される。
【0102】
全てのインキュベーションは、連続した浸透条件にて室温(22℃)で行われる。ゲル断片は15分間蒸留水によりインキュベートされる。かかる水は取り除かれ、50%アセトニトリル(ACN)に置換され、15分間インキュベートされる。ACNインキュベーションステップは繰り返され、CANは取り除かれ、100mMの重炭酸アンモニウム(Ambic)と交換されて及び5分間インキュベートされる。ゲル断片に同量のACNが添加され、更に15分間インキュベートされる。水溶液は取り除かれ、ゲル断片を60℃にて高速減圧することより完全に脱水する。次いで、試料は10mM DTT、100mM Ambic存在下にて56℃で45分間インキュベートされる。水溶液は取り除かれ、5mMのヨードアセトアミド/100mMのAmbicと交換され30℃、室温、暗所でインキュベートされる。ゲル断片は洗われ(100mMAmbic)、それから15分間のACNによってインキュベートされた。ゲル断片は高速減圧により、完全に脱水される。1M塩化カルシウム及び1M Ambicバッファーの0.1μg/μlシークエンシング・グレード・トリプシン(Pierce, USA)はゲル断片に加えられ、45分間の4℃でインキュベートされた。水溶液は取り除かれ、トリプシンを含まない同一のバッファーにより交換され、37℃にて一晩インキュベートされる。上清は取り除かれ、4℃にて保存される。ゲル断片は15分間の25mMAmbicによってインキュベートされ、次いで、ACNが加えられ、更に15分間インキュベートされた。上清は取り除かれ、一晩の上清に加えられる。そして、ペプチドは5%の蟻酸及びACNにより溶出される。プールされた上清に10 mM DTTが添加され、最終濃度を1mM DTTとなるようにし、上清は急速減圧により乾燥させられる。試料は、The Chemistry Department at The King's Buildingsに送られ、LC-MS/MSにより分析される。
【0103】
(CyPA検出)
APAPを過剰投与したRoyal Infirmary of Edinburghの患者から約50mlの尿が集められた。尿は集められ、CyPAレベルを測定する前に、−80℃にて保存される。
【0104】
CyPAの尿中濃度は、前述したようにウェスタンブロットにより決定される。一次抗体は、1:150希釈したウサギ抗ヒト・サイクロフィリンA(USBiological、Swampscott, MA, USA)である。ゲルのレーン毎に10μlの尿がロードされた。
【0105】
結果
(フローサイトメトリー分析)
図2は、FACSを使用して選別された試料の側方散乱/前方散乱ドットプロットヒストグラムを示す。強調された2.5μmキャリブレーションビーズは、MPsの寸法を示し、MPsの全ての集団は、過去のMPs研究に基づき2.5μm寸法未満であった。EMPsは、図2(B及びF)に示すように、PMPsよりもわずかに寸法が小さく、図2(C及びD)に示すように、PMP集団の下方に位置している。単一染色したMPsは、集団の位置を同定するコントロールとして、CD31又はCD43bにより染色され、そして、両細胞表面マーカーの存在しない試料は、ネガティブコントロールとなり、非内皮細胞の血小板由来のMPsを提供する。大多数のMPsはCD31及びCD42bに対し陰性であり、これらは異なる起源及び細胞種に由来するものである。MPsの陰性のグループは、異なる集団を形成し、72.6%の試料を作り出した。EMPs及びPMPsはともに異なる寸法を有する粒子の異なる集団として同定される。パネルD及びHは、EMPs及びPMPsを選別するために二重染色した試料を示す。17%まで至る単一の陽性のCD43bMPs及びCD41+EMPsはないが、CD31+CD42bPMPsは全量の10.3%に至る。FITCラベルされたMPs量が少ないと、MPsは内皮細胞性をより起源とするものであり、CD31が多いとMPsはよりCD42+であり、血小板をより起源とするものである。
【0106】
6名の健康な個人から単離されたEMPs及びPMPsの量は、個人差が大きかった。図3は、FACSにより単離されたEMPs(A)及びPMPs(B)のlog10グラフを示す。単離されたEMPsの平均数は1507567(SEM837934)であり、単離されたPMPsの平均数は285704(SEM88864)である。
【0107】
(MPsにおけるGATA-2タンパク質発現)
転写因子GATA-2が微粒子中に存在するか否かをウェスタンブロットにより調査した。EMP及びPMP集団が選別された後、試料はMPsをペレット化するために超遠心に供された。超遠心した後のペレット及び上清の両方は保持され、GATA-2の存在を検出するためのウェスタンブロットが行われた。図4はGATA-2が上清に存在しており、一つの上清のみにおいてGATA-2が存在していたことを示しているウェスタンブロットの結果である。個人1からのEMP及びPMP試料(夫々レーン1及び4)は、その他のMP試料に比べGATA-2のレベルが大きかった。このことは、個人(夫々5516089及び380548;図3の試料4)から単離されたEMPs及びPMPsと整合している。
【0108】
(尿エキソソームレベル及びc-Jun発現)
パラセタモールを過剰投与し、器官損傷した、又はしていない患者の尿中のエキソソームタンパク質の濃度は、通常の尿と比較された。6名の通常の尿エキソソーム試料では、平均が3.54±1.22μgタンパク質/ml尿であった。パラセタモールの過剰投与4時間後に、器官損傷を示さなかった3名の患者からプールされた試料は、通常の健康な個人に比べ、約7倍のタンパク質量の増大が見られた。また、パラセタモールの過剰投与4時間後に、器官損傷を示した3名の患者からプールされた試料は、プールされた試料中のエキソソームタンパク質は37倍までの増大が見られた。過剰投与の24時間後には、器官損傷を有する患者及び有さない患者の双方において、プールされた尿試料内のエキソソームタンパク質量が同様のレベルまで減少していた(通常のレベルに対し1.5〜2.0倍)。
【0109】
タンパク質c-Junが通常の尿試料内にて検出し得るかどうか、そしてパラセタモールを過剰投与した患者においてc-Junレベルが変化するかどうかを調べるために、ウェスタンブロットが行われた。個人の通常の試料では、c-Junは、正確な分子量〜78kDaにて検出された。また、尿中微粒子におけるC-Junタンパク質の濃度は、人におけるパラセタモールにより湯道された肝臓損傷によって増大する(図7)。
【0110】
(通常の尿におけるエキソソームタンパク質)
通常の尿試料のパイロットプロテオミクスを行うために、〜100μgの通常のエキソソームがゲルにロードされ、コロイド状のクマシーブルーにより染色され、タンパク質の存在を調べた。図6は、染色されたゲルを示し、エキソソーム試料中に異なる寸法のタンパク質が存在することの証拠を提供するものである。また、最も豊富なタンパク質のバンドはゲルの部分Bであり、THPであると推定されるものである。ドット線は、LC-MS/MSによるプロテオミクス分析に供される異なる試料を準備するためのゲルが切られた位置を示す。
【0111】
(バイオマーカーとしての候補源であるEMPs)
この実験は、血液中のMPs及び尿中のエキソソームがバイオマーカーとしての候補源として使用し得るかを調査するためのものである。主たる成果は、EMPs(内皮性微粒子)がフローサイトメトリーにより単離されるが、(図3Aに示すように)単離された微粒子数は個人間差が大きく、標準的なタンパク質分析では検出することが難しいレベルのタンパク質量しか得られない。MPsの分離は、時間を要するものであり、臨床試験には効果的な方法ではない。In vitroの実験系を用いて、内皮細胞を培養して、かかる培養細胞からMPsを単離することが有効な解決策となり得るものである。これは他のグループにより成功している(Combes et al., 1999)。候補タンパク質は、そのレベルにより決定される。可能性のある候補タンパク質がin vitro研究により見つかったら、器官が機能不となっている患者において、そのタンパク質の発現レベルが変化しているかを確認する。
【0112】
(EMPs及びPMPsはともにGATA-2発現を示す)
GATA-2は、GATA-2転写因子ファミリーに属する。GATA-2は、造血現象において重要な役割を果たす。原始的造血細胞は高レベルでGATA-2を発現するが、血液細胞の異なるタイプへの細胞の成熟の過程で、そのレベルは減少する(Tsai et al, 1994)。大人の造血細胞では、GATA-2が発現し、内皮特異的な遺伝子の転写調節に重要である(Zhang et al., 1995)。GATA-2には複数の燐酸化された形態があり(Towatari et al., 1995)、図4は、EMPsとPMPsの双方に複数の形態のGATA-2があることを示している。しかし、これらの結果は、in vitroにてヒト臍の静脈内皮細胞(HUVECS)を使用して、GATA-2の同じ形が検出されることができるかどうか調べて立証される。MPs中のGATA-2をGATA-2の転写因子であるとして観察することは興味深く、このことは転写因子をin vivoでの遺伝子発現のバイオマーカーとして使用し得る可能性を示唆するものである。
【0113】
(パラセタモール過剰投与はエキソソームタンパク尿症を増大させる)
図5Aは、パラセタモールの過剰投与が、過剰投与4時間後に、エキソソームタンパク尿症を増大させることを示すものである。タンパク尿症は、器官損傷を有する患者において特に多い(〜37回、通常比較された)。過剰投与した患者の超遠心した上清は、同一の分析にて同様の尿試料を用いた場合にも、多様性を示した(データ不図示)。このことは、尿内におけるパラセタモール(アセトアミノフェン)代謝産物の存在によるものであり、かかる代謝産物はこの実験系にて使用されるBSA分析等のタンパク質分析に干渉するものである(Marshall and Williams, 1991)。かかるタンパク尿症が発症する正確な理由は解明されていない。エキソソームが腎臓から放出され、循環MPsが糸球体を経て尿に入り込んでいるかどうかも知られていない。また、薬が腎臓または血管に対する効果を有するかどうか、は決定されないままである。薬の過剰投与24時間後にはタンパク質レベルが通常に対し1.5倍まで落ちることは興味深いことであるが、このことは、肝損傷の減少又は血液のパラセタモール濃度の減少させるための臨床介入によって説明することができる。
【0114】
(薬誘導による器官損傷のマーカーとしてのCyPA)
APAP誘導器官損傷を有する患者の尿において、CyPA濃度が増大していた。図8は、健康な対象(A)、僅かな肝臓損傷(B)、中程度の肝臓損傷(C)、重症な肝臓損傷(D)及び重症な肝臓及び腎臓損傷(E)を有する患者からの尿ウェスタンブロットを示す。
【0115】
図9はAPAP誘導された肝臓損傷を有する又は有さない患者からの尿を比較したものである。病院に消化された全ての患者はAPAP過剰投与の履歴を有し、血液中にAPAP検出可能である。肝臓損傷を有する患者に関し、損傷を有さない患者の年齢及び性別を揃えるものとした。CyPAは、肝臓損傷を受けた患者において、損傷を有さない患者の年齢及び性別を揃えた患者よりも増大していた。
【0116】
(急性肝臓損傷におけるc-Junの役割)
パラセタモールの過剰投与は、イギリス及び米国(Larson et al., 2005)では急性の肝機能不全の主たる原因となっている。パラセタモール代謝と肝臓損傷とをリンクさせる経路は未だ完全に明らかとなっていない。パラセタモールの過剰投与初期には、サイトカイン及びケモカインは、その損傷(Ishida et al., 2002)及び回復(Hogaboam et al., 1999)に関係するものである。
【0117】
転写因子c-Junは、AP-1転写因子の主たる構成要素であり(Bohmann et al, 1987)、細胞ストレスを含む多様な幅の刺激がAP-1活性を誘導することが知られている。細胞をサイトカイン及び環境ストレスにさらすことにより、ストレス活性化タンパク質として知られているJNKグループの活性化が起こる。アポトーシスもまた細胞ストレスであるとされ、そのことから、c-Junはアポトーシスに応答して活性化又は上方制御されると考えられるまた、JNK及びC-Junが、肝臓損傷を媒介していることを示す(Liu et al., 2002)。
【0118】
このことから、この研究では、パラセタモールを過剰投与した、肝臓損傷を有する又は有さない患者のエキソソーム試料は、c-Junの存在について検証された。コントロールとして、c-Junは、通常の健康な個人から検出され、c-Junのレベルが過剰投与した患者特には、より高レベルのアポトーシスし、c-Jun活性化の増大している肝臓損傷にて増大することが推定される。
【0119】
CyPAは、APAP過剰投与により肝臓損傷を受けた患者の尿内にて増大する。従って、CyPAはAPAP過剰投与により誘導された肝臓損傷に対する候補バイオマーカーとなる。CyPAは尿濃度の標準化が要求される程度に増大し、尿クレアチニンの補正を行うこと無く、測定を容易とする強力な候補バイオマーカーとするものである。結果から、CyPAは尿10μlでも容易に検出することができる。
【0120】
CyPAは、多様な疾患を有する人間及び動物モデル5,9〜11において、細胞外液に放出される細胞内タンパク質である。APAP毒性によるCyPA放出の機構は不明であるが、APAPが顕著な細胞ネクローシスを引き起こすことから、損傷した細胞からの漏洩が最大の供給源であると予想している。細胞外のCyPAが炎症誘発性であることから、APAP毒性にて見られる器官損傷を媒介している可能性がある。
【0121】
CyPAは、現行のマーカーがまだ充分でない場合に、器官損傷を検出し得ることから、貴重な臨床バイオマーカーとすることができる。
【0122】
(疾患バイオマーカー同定のためのツールとしてのプロテオミクス)
疾患の研究におけるプロテオミクスは、有用なツールであり、疾患を有する又は有さない個人の試料内のタンパク質を同定するために使用することができる。しかし、プロテオミクスに問題が無いわけではない。この研究では、LC-MS/MS分析に供されたゲルスライス試料の5つのうちの3つにおいて、コロイド状のクマシーブルーを多く含み過ぎているために、検出することができなかった。また、プロテオミクスにて使用される装置は、感度が極めて高く、過剰な染色により損傷をうける場合がある。分析できた2つの資料では、よくあることではあるが、何らペプチド断片が得られなかった。これらの問題は、修正され、プロトコールを僅かに変えながら実験は繰り返された。プロテオミクスの主たる問題は、非常に大量のタンパク質(例えば血漿のアルブミン及び尿のTHP)が、プロテオミクス分析に供される前に試料から取り除かれない限りは、より少ないタンパク質の検出の妨げることにある。THPは、試料に還元剤を処理することにより、そして、試料を再度超遠心することにより、取り除くことができる。THPは上清に残り、少ない量のタンパク質についてペレットを分析に供することができる(Pisitkun et al., 2004)。アルブミンは、SwellGel Albumin Removal kit from Pierce, Rockford, USAなどの商業的に利用可能なキットを用いて取り除くことができる。或いは、血清アルブミンを取り除くために、トリクロロ酢酸及びアセトンを使用することができる(Chen et al., 2005)。試料のプロテオミクス分析の前に、これら大量のタンパク質を取り除くことにより、体の健康状態及び一部の疾患の病因について有益な情報を与えるかもしれない低い濃度のタンパク質を同定し得る機会が増える。MPs及びエキソソームについて有効なタンパク質の同定が報告された。Smalleyら(2007)は、血小板MPs内ではなく、血漿MPs内にて21種のタンパク質を同定することに成功し、Zhouら(2006)は、急性の腎臓損傷に対するバイオマーカー候補を同定した。
【0123】
以上の結果、この研究から、血液からのMPs及び尿内のエキソソームは、疾患に対するバイオマーカーの候補となり得ることを発見した。エキソソームを得るためには、少量の尿が必要であり、このことは疾患を診断する際に臨床上適切である。病気の発症及び進行を示す固有の能力を有する臨床マーカーは、広範囲の疾患に対し羅病率及び死亡率を減らすことができ、プロテオミクスは、疾患の臨床診断に対し重要な役割を果たすものである。
【0124】
参考文献
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【0125】
(記載中にて番号で示された)追加参考文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者が、開発薬により誘導された器官損傷を有する或いはそのリスクを有するか否かを同定する方法であって、該方法は、
(c)患者から試料を準備するステップと、
(d)該試料中のタンパク質レベルを同定するステップと、を含み、
タンパク質レベルの増大は、患者が開発薬により誘導された器官損傷を有する或いはそのリスクを有することを示すことを特徴とする同定方法。
【請求項2】
前記器官損傷は、1種以上の抗生物質及び/又は抗炎症、解熱薬、鎮痛剤或いは/並びに化学療法剤により誘導される、請求項1に記載の同定方法。
【請求項3】
前記器官損傷は、パラセタモール(N(4-ヒドロキシフェニル)エタンアミド)によって誘導される、請求項1又は2に記載の同定方法。
【請求項4】
損傷を受けた器官が肝臓である、請求項1から3のいずれか一項に記載の同定方法。
【請求項5】
前記試料は、組織試料、生検材料及び/又は全血液から選択される体液、細胞質、血清、リンパ、尿、汗、唾液及び組織或いは/並びに腺分泌物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の同定方法。
【請求項6】
前記試料は尿である、請求項1から5のいずれか一項に記載の同定方法。
【請求項7】
前記試料は、微粒子及び/又はそれ由来のエキソソームを単離し得るプロトコールに処される、請求項1から6のいずれか一項に記載の同定方法。
【請求項8】
同定されたタンパク質のレベルを、コントロール又は基準試料にて同定されたタンパク質のレベルと比較するステップを更に具える、請求項1から7のいずれか一項に記載の同定方法。
【請求項9】
前記基準又はコントロール試料は、微粒子/エキソソーム単離プロトコールに処される、請求項8に記載の同定方法。
【請求項10】
前記試料内のタンパク質レベルを同定するステップにおいて、準備された試料中の核酸レベルを同定する、請求項1から9のいずれか一項に記載の同定方法。
【請求項11】
前記試料内のタンパク質レベルを同定するステップにおいて、免疫学的手法を用いる、請求項1から9のいずれか一項に記載の同定方法。
【請求項12】
前記試料内のタンパク質は、転写因子及び/又は細胞内タンパク質である、請求項1から11のいずれか一項に記載の同定方法。
【請求項13】
前記転写因子はc-Jun N末端キナーゼ(JNK)であり、細胞内タンパク質はサイクロフィリンA(CyPA)である、請求項12に記載の同定方法。
【請求項14】
前記核酸は、転写因子c-Jun及び/又はCyPAをコードする、請求項10に記載の同定方法。
【請求項15】
患者が、開発薬により誘導された器官損傷を有する或いはそのリスクを有するか否かを同定する方法であって、該方法は、
(a)患者から試料を準備するステップと、
(b)該試料中のタンパク質レベルを同定するステップと、を含み、
タンパク質レベルの増大は、患者がパラセタモールにより誘導された肝臓損傷を有する或いはその発症リスクを有することを示すことを特徴とする同定方法。
【請求項16】
前記タンパク質は、c-Jun N末端キナーゼ(JNK)及び/又はサイクロフィリンA(CyPA)である、請求項15に記載の同定方法。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図2I】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−538252(P2010−538252A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522447(P2010−522447)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002947
【国際公開番号】WO2009/027703
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(510055323)ユニヴァーシティ コート オブ ザ ユニバーシティ オブ エディンバラ (6)